JP3911171B2 - シールド掘進機のシール構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状のスキンプレートと、このスキンプレートの少なくとも一部を構成し拡幅方向に出没可能な拡幅部材とを備えて、所定断面積の標準トンネルとその標準トンネルよりも径の大きな拡幅トンネルとを掘削するシールド掘進機のシール構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、トンネル施工工事に使用されるシールド掘進機は、シールド本体の前部に円盤状のカッタヘッドを具備し、このカッタヘッドを回転させながらシールド本体後部に設けられたシールドジャッキを伸長させて覆工材(セグメント)に反力を取りつつ切羽を掘削するように構成され、これによってシールド本体の外周部に設けられる筒状のスキンプレートと略同径のトンネルを掘削するようにされている。
【0003】
ところで、このようなシールド掘進機を用いて施工されるシールドトンネルにおいては、最近、長距離掘進および大深度化が要求されてきていることから、このシールドトンネルの途中に拡幅部を設けることが必要となってきている。従来、トンネル内に拡幅部を設ける方法としては、地上から地盤を掘削する開削工法や、拡幅トンネル専用のシールド掘進機を用いる工法などがある。
【0004】
しかしながら、前記開削工法では、地上用地を専用するほか、比較的浅い地下のトンネルの施工にしか適用できないという問題点がある。一方、前記拡幅トンネル専用のシールド掘進機を用いる工法では、シールド掘進機の分解、搬送、組立等の作業が伴うという問題点がある。このようにいずれの工法にしても、多大の工費を要するとともに、工期の長期化が避けられない。
【0005】
そこで、本出願人らは、シールド本体の前部に、所定断面積の標準トンネルとその標準トンネルよりも径の大きな拡幅トンネルとを掘削可能なカッタ装置を設けるとともに、シールド本体の外周部にある筒状のスキンプレートの一部に拡幅トンネルの拡幅方向に出没可能な拡幅部材を設けたシールド掘進機を先願発明として提案している(特願2001−40252号)。この先願発明においては、拡幅部材を出没させる際に、境界部材を用いて、スキンプレートもしくは拡幅部材と覆工材との間を塞ぐように構成されており、これによってトンネルの拡幅時もしくは縮小時に、シールド掘進機もしくは覆工材の内部への水や土砂の侵入を抑制するようにされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記先願発明においては、拡幅部材の出没動作によるトンネルの拡幅時もしくは縮小時にその摺動部における十分な止水性を確保するには、この摺動部に用いられるシール構造について種々の改善すべき課題があった。特に、拡幅部材の後端部においては、スキンプレートにおける拡幅部材との対向面に設けられるシール部材と、標準トンネル用覆工材における拡幅部材との対向面に設けられるシール部材とが会合することになり、この会合するコーナー部の止水性を如何にして確保するかという問題が残されていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、スキンプレートに対し出没可能な拡幅部材を備えて、標準トンネルと拡幅トンネルとを掘削するようにしたシールド掘進機において、拡幅部材の出没動作によるトンネルの拡幅時もしくは縮小時にその摺動部を確実に止水することのできるシールド掘進機のシール構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前記目的を達成するために、本発明によるシールド掘進機のシール構造は、
筒状のスキンプレートと、このスキンプレートの少なくとも一部を構成し拡幅方向に出没可能な拡幅部材を備えて、所定断面積の標準トンネルとその標準トンネルよりも幅の広い拡幅トンネルとを掘削するシールド掘進機のシール構造であって、
前記スキンプレートにおける前記拡幅部材との対向面に設けられそれらスキンプレートと拡幅部材との間の互いに対向する摺動面を止水する第1のシール部材と、
前記拡幅部材後端部における前記スキンプレートおよびトンネル用覆工材もしくはそのトンネル用覆工材の前端側の両側部であって前記拡幅部材と摺動する部位に取り付けられる止水部材との対向面に設けられそれら拡幅部材とスキンプレートおよび前記トンネル用覆工材もしくは前記止水部材との間の互いに対向する摺動面を止水する第2のシール部材と、
前記トンネル用覆工材もしくは前記止水部材における前記拡幅部材との対向面に設けられそれらトンネル用覆工材もしくは前記止水部材と拡幅部材との間の互いに対向する摺動面を止水する第3のシール部材とを設け、
これらシール部材を互いに接触させつつ前記拡幅部材の出没動作を行わせるように構成することを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、拡幅部材の出没動作によるトンネルの拡幅時もしくは縮小時に、拡幅部材とスキンプレートとの間の互いに対向する摺動部は第1のシール部材により、また拡幅部材とトンネル用覆工材もしくはそのトンネル用覆工材の前端側の両側部に取り付けられる止水部材との間の互いに対向する摺動部は第3のシール部材によりそれぞれ止水される。また、拡幅部材の後端部には第2のシール部材が設けられているため、これら3つのシール部材同士が隙間なく接して確実に止水されるとともに、拡幅部材後面からの止水も可能である。また、拡幅部材摺動時にその拡幅部材の後端のコーナー部(各シール部材の交差部)はシール部材同士の接触となるためシール部材が損傷することがない。
【0010】
本発明において、前記第2のシール部材は、前記第1のシール部材および第3のシール部材に比べて硬い材料で構成されるのが好ましい。このように摺動側である第2のシール部材を硬めの材料により構成してその剛性アップを図ることで、止水性能をより確実なものとすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるシールド掘進機のシール構造の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の標準トンネル掘進時の斜視図が示され、図2には、同シールド掘進機の拡幅トンネル掘進時の斜視図が示されている。
【0013】
本実施形態のシールド掘進機1は、シールド本体の前部に略円盤状のカッタヘッド2が回転可能に支持されるとともに、このシールド本体の外周部が円筒状のスキンプレート3により覆われてなる構成とされている。また、前記スキンプレート3の内側には複数本のシールドジャッキ(図示せず)が周方向に配されるとともに、このスキンプレート3の内側後部に覆工材としてのセグメント(標準トンネル用)4がリング状に順次巻き建てられ、シールドジャッキを掘進軸線方向に伸縮させてそのシールドジャッキのロッド先端にて前記セグメント4の前端面を押圧させることで掘進反力を得て、シールド掘進機1を掘進させるようになっている。なお、スキンプレート3の内側後部端にはテールシール(図示せず)が取り付けられ、このテールシールがセグメント4の外周面に摺接されることで、水および土砂等のスキンプレート3内への侵入を防ぐようにされている。
【0014】
前記カッタヘッド2は、その外周面に対して径方向に出没可能な複数個のオーバーカッタ装置5を備えている。このオーバーカッタ装置5は、カッタヘッド2の外径と略同一の断面積を有するトンネル(以下、「標準トンネル」という。)を掘削する際にはカッタヘッド2内に没入され(図1参照)、カッタヘッド2の外径よりも径の大きなトンネル(以下、「拡幅トンネル」という。)を掘削する際にはカッタヘッド2の外周面から径方向に突出される(図2参照)。
【0015】
前記スキンプレート3は、このスキンプレート3の外表面から両側方に張り出し可能な拡幅部材6を備えている。この拡幅部材6は、側部プレート6aと、この側部プレート6aの上側縁部に連設されてその側部プレート6aとスキンプレート3とを連結する上部プレート6bと、前記側部プレート6aの下側縁部に連設されてその側部プレート6aとスキンプレート3とを連結する下部プレート6cと、前記側部プレート6a、上部プレート6bおよび下部プレート6cの前側縁部に連設されて側部プレート6aとスキンプレート3とを連結する前部プレート6dと、前記側部プレート6a、上部プレート6bおよび下部プレート6cの後側縁部よりやや前方部に連設されて側部プレート6aとスキンプレート3とを連結する後部プレート6eとにより構成されている。ここで、前記側部プレート6aは、標準トンネルを掘削する際にはスキンプレート3の外表面と略面一となってスキンプレート3の一部をなし、拡幅トンネルを掘削する際にはスキンプレート3の外方へ突出してそのスキンプレート3と略平行に配置される。
【0016】
なお、前記上部プレート6b、下部プレート6cおよび後部プレート6eは、標準トンネルが掘削される際には取り外されており、拡幅トンネルが掘削される際に側部プレート6aに取り付けられる。また、前記拡幅部材6を側方に張り出して拡幅トンネルを掘削する際には、後方に拡幅トンネル用セグメント4Aが巻き建てられる。なお、本実施形態では、前記前部プレート6dは標準トンネル掘削時にも装着されているが、他のプレート6b,6c,6eと同様、標準時には未装着で、拡幅時に装着するようにすることもできる。
【0017】
図3には、拡幅部材を拡幅した状態で後方から見たシールド掘進機1の部分分解斜視図が示されている。また、図4には、図3においてスキンプレート、一側の側部プレートおよびセグメントを取り外した状態での斜視図が示されている。
【0018】
これらの図からわかるように、側部プレート6aに対し上部プレート6b、下部プレート6cおよび後部プレート6eを取着して拡幅トンネルを掘削するに際しては、セグメント4の前端側の両側部であって、前記拡幅部材6の後部プレート6eと摺動する部位にセグメント側止水板(止水部材)7が取り付けられるとともに、このセグメント側止水板7に連設される上部位置および下部位置に、左右のセグメント側止水板7同士を連結するように上部止水板8および下部止水板9がそれぞれ取り付けられる。なお、上部止水板8および下部止水板9は軸方向に分割されていても良い(図4の二点鎖線参照)。
【0019】
前記セグメント側止水板7は、前記後部プレート6eとの摺動部分における止水性を確保するために設けられる。また、前記拡幅部材6が突出方向に移動されるとき、後部プレート6eは、セグメント側止水板7、上部止水板8および下部止水板9にそれぞれ密接しながら摺動する。なお、拡幅部材6の突出時に、上部プレート6bおよび下部プレート6cがスキンプレート3に連結・固定されるとともに、後部プレート6eがセグメント側止水板7、上部止水板8および下部止水板9に連結・固定される。
【0020】
次に、前記拡幅部材6の出没動作時におけるその拡幅部材6とスキンプレート3およびセグメント4との間のシール構造について説明する。図5には、本実施形態のシールド掘進機のシール構造を示す斜視図(図3もしくは図4の部分拡大図)が示され、図6には、シール配置構成を示す詳細図として、図5のA−A線断面図が示されている。
【0021】
これらの図に示されるように、本実施形態のシールド掘進機1における拡幅部のシール構造(止水機構)は次の3種類のシール部材(第1のシール部材10、第2のシール部材11および第3のシール部材12)の組み合わせからなっている。すなわち、前記スキンプレート3の前記拡幅部材6に対向する面、言い換えれば上部プレート6bの上方、前部プレート6dの前方および下部プレート6cの下方にそれぞれ対向するスキンプレート3の端縁部には、前記拡幅部材6と前記スキンプレート3との間の互いに対向する摺動面を止水するために、略コ字状の第1のシール部材10が設けられている。また、前記拡幅部材6の前記スキンプレート3および前記セグメント4もしくはそれに準ずる部材(ここではセグメント側止水板7)に対向する面、言い換えれば上部プレート6b、側部プレート6aおよび下部プレート6cの各後端縁部には、前記拡幅部材6と前記スキンプレート3およびセグメント側止水板7との間の互いに対向する摺動面を止水するために、やはり略コ字状の第2のシール部材11が設けられている。さらに、前記セグメント4もしくはそれに準ずる部材(セグメント側止水板7)の前記拡幅部材6に対向する面、言い換えればセグメント側止水板7の前端縁部には、前記セグメント4もしくはセグメント側止水板7と前記拡幅部材6との間の互いに対向する摺動面を止水するために、略円弧状の第3のシール部材12が設けられている。
【0022】
なお、前記第2のシール部材11および第3のシール部材12は、第1のシール部材10とは異なり、拡幅部材6を拡幅させる際に装着されるものであり、通常の円形断面掘削時には装着されていない。
【0023】
前記第2のシール部材11は他のシール部材10,12よりも硬い材質にして剛性を向上させるようにされている。また、これら各シール部材10,11,12は、その使用時に摺動面に潤滑剤が塗布されるのが好ましい。
【0024】
本実施形態のシール構造によれば、拡幅部材6の出没動作によるトンネルの拡幅時もしくは縮小時に、特に拡幅部材6の後端側において、拡幅部材6の上部プレート6bおよび下部プレート6cの後端縁とスキンプレート3の端縁との間の互いに対向する摺動面同士が、第2のシール部材11と第1のシール部材10とが接触することによって止水され、かつ拡幅部材6の後部プレート6eの上端縁および下端縁とセグメント側止水板7の前端縁との間の互いに対向する摺動面同士が、第2のシール部材11と第3のシール部材12とが接触することによって止水される、つまりシール部材同士の相互接触による止水構造となっている。また、第2のシール部材11には第1のシール部材10に比べて剛性の高いものを使用している。このように、拡幅部材6の後端部にシール部材(第2のシール部材11)を配置することで、シール部材同士の相互接触により止水される構造となっており、第2のシール部材11には剛性の高いものを使用しているため変形が少なく十分な止水性を得ることができる。
【0025】
また、第1のシール部材10と第3のシール部材12とが会合するそのコーナー部にそれら両シール部材10,12のそれぞれと接触するように第2のシール部材11が配されているので、このコーナーの尖ったエッジ部が相手方のシール部材10,12に損傷を与えることがなく、このシール部材10,12の損傷による止水性能の悪化を防止することができる。こうして、水圧が高くなる環境下で拡幅動作を行っても、十分な止水性を確保することができ、標準トンネルおよび拡幅トンネルの施工工事を容易かつ確実に実施することができるという効果を奏する。
【0026】
なお、本実施形態のシール構造の効果を確認するために、拡幅部のスケールモデルを作製して実際に水圧をかけた状態で拡幅部を摺動させて止水性能を試験した。この試験に用いた装置は、図示省略するが、シールド機外部を想定した水タンクと、この水タンク内で摺動するシールド機の拡幅部と、この拡幅部を押出すジャッキとから構成し、このジャッキの拡幅ストロークを最大200mmとした。また、水タンク内は最大0.6MPaまで加圧できるようにし、その水圧を水タンク上部、中部および下部の3箇所に設置した水圧計で測定するようにした。
【0027】
試験は、水タンク内に水を入れてその水タンク内を0.6MPaまで加圧し、漏水の有無を目視にて確認した。この確認する状態は静止状態(拡幅状態、縮小状態)と拡縮動作中の2水準である。拡縮速度は20mm/min、10mm/minの2水準とし、止水シールの耐久性を確認するために摺動回数を50回とした。
【0028】
この試験の結果、
(1)静止状態において、拡幅状態および縮小状態ともに0.6MPaまで加圧しても漏水は確認されなかった。
(2)拡縮動作中において拡縮速度20mm/min、10mm/minの2水準とも漏水は確認されなかった。
(3)摺動回数50回までは拡縮速度20mm/min、10mm/minの2水準ともに漏水は確認されなかった。
【0029】
以上の試験結果により、本実施形態のシール構造は、0.6MPaまで止水できることが確認でき、本シールド掘進機1を大深度地下に用いても十分に止水効果が発揮できることが確認された。また、本シール構造には耐久性も十分にあることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の標準トンネル掘進時の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るシールド掘進機の拡幅トンネル掘進時の斜視図である。
【図3】図3は、拡幅部材を拡幅した状態で後方から見たシールド掘進機の部分分解斜視図である。
【図4】図4は、図3においてスキンプレート、一側の側部プレートおよびセグメントを取り外した状態での斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態のシールド掘進機のシール構造を示す斜視図である。
【図6】図6は、シール配置構成を示す詳細図であって、図5のA−A線断面図である。
【符号の説明】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
3 スキンプレート
4 セグメント(覆工材)
4A 拡幅トンネル用セグメント
5 オーバーカッタ装置
6 拡幅部材
6a 側部プレート
6b 上部プレート
6c 下部プレート
6d 前部プレート
6e 後部プレート
7 セグメント側止水板
8 上部止水板
9 下部止水板
10 第1のシール部材
11 第2のシール部材
12 第3のシール部材
Claims (2)
- 筒状のスキンプレートと、このスキンプレートの少なくとも一部を構成し拡幅方向に出没可能な拡幅部材を備えて、所定断面積の標準トンネルとその標準トンネルよりも幅の広い拡幅トンネルとを掘削するシールド掘進機のシール構造であって、
前記スキンプレートにおける前記拡幅部材との対向面に設けられそれらスキンプレートと拡幅部材との間の互いに対向する摺動面を止水する第1のシール部材と、
前記拡幅部材後端部における前記スキンプレートおよびトンネル用覆工材もしくはそのトンネル用覆工材の前端側の両側部であって前記拡幅部材と摺動する部位に取り付けられる止水部材との対向面に設けられそれら拡幅部材とスキンプレートおよび前記トンネル用覆工材もしくは前記止水部材との間の互いに対向する摺動面を止水する第2のシール部材と、
前記トンネル用覆工材もしくは前記止水部材における前記拡幅部材との対向面に設けられそれらトンネル用覆工材もしくは前記止水部材と拡幅部材との間の互いに対向する摺動面を止水する第3のシール部材とを設け、
これらシール部材を互いに接触させつつ前記拡幅部材の出没動作を行わせるように構成することを特徴とするシールド掘進機のシール構造。 - 前記第2のシール部材は、前記第1のシール部材および第3のシール部材に比べて硬い材料で構成される請求項1に記載のシールド掘進機のシール構造。
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