JP3911122B2 - 車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クッション性に優れかつ簡単に成形できると共に製作コストも低廉になし得る車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、従来から知られる車椅子であってその前側に取着されるキャスターの車輪は、その硬質合成樹脂製のリムの外周に硬度約75〜80(JISAコード)のエラストマーのみからなるタイヤ部をインサート成形により一体に成形している。この車輪は耐磨耗性に優れ寿命が長い反面、弾力性に乏しいことからクッション性に劣るため、路上を走行する際に段差があると、その振動が直接車椅子に乗っている者の身体に伝わり、極めて乗り心地が悪いという課題がある。
【0003】
そこで、この課題を解決するため、例えば、通常の自転車の車輪と同じように硬質合成樹脂製のリム外周に空気を注入できるチューブを巻回すると共に該チューブに更にゴム製のタイヤ本体を被着してタイヤ部を形成した車椅子、または、硬質合成樹脂製のリムをその軸部と直交する面内で二分割して形成し、一方、タイヤ部を熱硬化性ウレタン発泡体により成形し、前記二分割したリムを互いに合体させるとき、該リムの外周に前記タイヤ部を嵌合してタイヤ部を組付けるようにした車椅子が開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記各タイヤ部は弾力性があることからクッション性は満足されるものの、前者の車椅子のタイヤ部にあっては、構造が複雑でチューブを巻回した後更にタイヤ本体を巻回するといった面倒な作業を強いられ、成形が面倒であるばかりか製作コストも高くなっている。しかも、使用上においては、空気が減る度毎にチューブに空気を入れ直さなければならない面倒な手間が掛かるという課題がある。また、後者の車椅子のタイヤ部にあっても、一対の半割リムを金型でそれぞれ別個に成形し、タイヤ部も別途金型で成形しなければならず、更にはこれら一対の半割リムとタイヤ部を組付けるといった面倒な作業を強いられることから、成形に多くの工程を必要とし、引いては製作コストも高くなっている。更には、使用上において、リムの外周面とタイヤ部の内周面との間に滑り摩擦が生じてタイヤ部が空回りを起こし、タイヤ部が磨耗してガタが生じ走行に支障を来たすといった課題がある。
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、成形が簡単であって製作コストも低廉になし得、更には長期に亘る耐久性を備えた車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明に係る車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪は、リムの外周面にその円周方向に沿って基端側が細幅にまた外周先端側が太幅に形成される凸条環部を一体に周設し、前記細幅部にその周方向に沿って横孔を貫設すると共に前記太幅部の外周面にはその周方向に沿って突畝環部を周設し、前記リムの外周にタイヤ部を一体に成形し、該タイヤ部は前記凸条環部の太幅部の外周に前記突畝環部を内包するようにしてインサート成形される内層環部と該内層環部の外周面を覆い且つ前記各横孔に入り交絡するようにして前記リムの外周にインサート成形される外層環部との二重構造をなし、前記内層環部は弾力性に優れた素材からなり、前記外層環部は耐磨耗性に優れた素材からなる構成とした。このように、タイヤ部が弾力性に優れた内層環部と耐磨耗性に優れた外層環部との二重構造からなるので、クッション性・耐磨耗性に優れる。また、二重構造のタイヤ部が一体成形よりなるので、成形が簡単であって製作コストが低廉になし得る。
【0006】
具体的には、前記内層環部はスチレン系またはオレフィン系のエラストマーからなり、外層環部は硬硬度、例えば硬度約75〜80(JISAコード)、のエラストマー又は同程度の硬度のポリウレタン樹脂からなる構成が選ばれる。
【0007】
また、前記内層環部は軟硬度、例えば硬度約35〜50(JISAコード)、の合成ゴムからなり、外層環部は硬硬度、例えば硬度約75〜80(JISAコード)、のエラストマー又は同程度の硬度のポリウレタン樹脂からなる構成が選ばれる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪について説明するが、このうち車椅子の車輪の実施の形態を図面と共に説明する。
【0009】
図1は本発明に係る車輪を装着した車椅子の斜視図、図2はキャスターの分解斜視図、図3は同側面断面図、図4は同正面断面図である。車椅子1は左右に配した一対の枠状の支持部材2,2が折り畳み可能に組み合わされ、両支持部材2,2の後部に立設した主杆3,3に後輪4,4とその操作輪5,5とが軸支される。一方、前記支持部材2,2の前部寄りに垂設した支持杆6,6の下端の固定材6aにキャスター7,7の支軸8が挿入固定させて取り付けられる。前記支持部材2,2に設けた水平杆9,9には座シート10の両端が支持され、前記主杆3,3の上部に背もたれシート11の両端が支持されている。また、主杆3,3の上端に介護者が車椅子1を押すための握り部12,12が設けられ、前記支持部材2,2の前端下部に足乗せ板13,13が設けられる。14,14は各後輪4,4を停止させるブレーキバーである。
【0010】
前記キャスター7は、車輪15と該車輪15を回転自在に軸支させるフォーク16から概略構成される。該フォーク16は硬質の合成樹脂の射出成形により一体に形成され、筒状体17の下端から左右一対のアーム18,18が突出され、各アーム18,18の先端部にそれぞれ車輪15を軸支させる軸孔19,19が設けられている。そして、前記筒状体17の内側で上下両端部にそれぞれころがり軸受20が嵌合され、これらの各ころがり軸受20を介して前記支軸8が回転自在に軸支される。
【0011】
前記車輪15は、リム21の外周にタイヤ部22が一体に形成され、リム21の内側に放射状に形成したスポーク23の中心に軸筒24が設けられ、該軸筒24を貫通する軸孔25の左右両端にころがり軸受26,26の外輪を嵌合させる軸受孔27,27が軸孔25より大径に設けられる。
【0012】
28,28は一端に鍔部29,29を設けた鍔付カラーであり、筒部30の長さが前記ころがり軸受26の幅より若干短かく設定される。31はころがり軸受26,26の内側で軸孔25に介在させる円筒形のスペーサであり、該スペーサ31の長さは軸受孔27,27に嵌合させたころがり軸受26,26の間隔に合致するように設定される。そして、軸孔25内にスペーサ31を介在させた状態で軸孔25の両端に設けた軸受孔27,27にそれぞれころがり軸受26,26の外輪を嵌合させて、該各ころがり軸受26,26の軸挿通孔32,32に鍔部29がそれぞれ外向きになるように鍔付カラー28,28を嵌挿して、スペーサ31と連通させる。尚、前記鍔付カラー28及びスペーサ31は耐摩耗性を備えたエンジニアリングプラスチックで形成すると寸法加工がしやすくなる。
【0013】
33は車輪15を軸支する支軸であり、先端に設けたねじ部34にナット35を螺締するようにしている。36,36はプレーンワッシャ、37はスプリングワッシャである。
【0014】
次に、キャスター7の組み立てを順を追って説明する。まず、フォーク16のアーム18,18の間に前記した鍔付カラー28,28とスペーサ31とを連通させた車輪15を挟持させ、一方のアーム18の外側にプレーンワッシャ36を重ねて軸孔19に支軸33を挿通させ、さらに該支軸33を車輪15のころがり軸受26に嵌挿した鍔付カラー28,スペーサ31及び鍔付カラー26の順に挿通させ、ついで他方のアーム18の軸孔19に挿通し、プレーンワッシャ36及びスプリングワッシャ37を嵌挿させてから、支軸33先端のねじ部34にナット35を螺締して図3、図4に示すように組み立てられる。
【0015】
しかして、前記キャスター7のタイヤ部22は、図3に示すように内層環部38と該内層環部38の外周面を覆う外層環部39の二重構造をなし、前記内層環部38は弾力性に優れた素材からなり、また外層環部39は耐磨耗性に優れた素材からなる。更に、詳しく説明すると、前記リム21の外周面には中央の円周方向に沿って凸条環部40が一体に周設されている。該凸条環部40は基端側が細幅に、また外周先端側が太幅に形成されており、細幅部40aにはその周方向に沿って横孔41が貫設されている。また、前記太幅部40bの外周面にはその周方向に沿って断面T字条の突畝環部42が周設されている。
【0016】
前記内層幹部38は、例えばスチレン系またはオレフィン系のエラストマーが選ばれ、前記凸条環部40の太幅部40bの外周に突畝環部42を内包するようにしてインサート成形される。内層幹部38は横断面が略円形状をなし,その中心が凸条環部40の中心線と一致するようになっている。スチレン系またはオレフィン系のエラストマーは、弾力性に優れる。
【0017】
一方、前記外層環部39は、例えば硬度約75〜80(JISAコード)の硬硬度のエラストマーが選ばれ、前記内層環部38の外周面を覆うようにしてリム21の外周に同じくインサート成形される。外層環部39は横断面が略卵型をなし、この中心も凸条環部40の中心線と一致するようになっている。また、外層環部39は各横孔41内に入り込み交絡している。該硬度約75〜80(JISAコード)のエラストマーは、引張強度、耐磨耗性に優れる。これにより、タイヤ部22が内層環部38と外層環部39との二重構造をなす。
【0018】
このように、タイヤ部22は内層環部38の優れた弾力性により所望のクッション性が与えられ、外層環部39の優れた引張強度、耐磨耗性により磨耗が防止され、また、外層環部39が各横孔41内に交絡していることから、リム21の外周面とタイヤ部22の内周面との間に滑り摩擦が生ずることが無く、長い耐久性が発揮される。しかも、リム21の成形とこれに内層環部38をインサートする成形と更にこれに外層環部39をインサートする成形と三工程で成形が可能となるので、その成形が極めて簡単となる。
【0019】
本実施の形態の他、前記内層環部38を例えば硬度約35〜50(JISAコード)の軟硬度の合成ゴム、また外層環部39を硬度約75〜80(JISAコード)の硬硬度エラストマーから成形するようにしても良い。また、前記内層環部38を例えばスチレン系またはオレフィン系のエラストマー又は硬度約35〜50(JISAコード)の軟硬度の合成ゴム、また外層環部39を例えば硬度約75〜80(JISAコード)の硬硬度のポリウレタン樹脂から成形するようにしても良い。この硬硬度のポリウレタン樹脂は耐磨耗性・耐熱性に優れる。このようにしても本発明の目的・効果は十分達成することができる。なお、内層環部38や外層環部39は前記のものに限らず、優れた弾力性または優れた引張強度、耐磨耗性を備えたものであれば、他の素材のものでも良いこと勿論である。
【0020】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明に係る車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪は、タイヤ部が内層環部と該内層環部の外周面を覆う外層環部との二重構造をなし、前記内層環部はスチレン系またはオレフィン系のエラストマー等の弾力性に優れた素材からなり、また外層環部は硬硬度のエラストマー等の耐磨耗性に優れた素材からなるので、優れたクッション性と長期に亘る耐久性を兼ね備えることができ、しかも成形が簡単であり製作コストも低廉になし得るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車輪を装着した車椅子の斜視図。
【図2】 キャスターの分解斜視図。
【図3】 同側面断面図。
【図4】 同正面断面図。
【符号の説明】
1 車椅子
15 車輪
22 タイヤ部
38 内層環部
39 外層環部
40 凸条環部
40a 細幅部
40b 太幅部
41 横孔
42 突畝環部
21 リム
Claims (3)
- リムの外周面にその円周方向に沿って基端側が細幅にまた外周先端側が太幅に形成される凸条環部を一体に周設し、前記細幅部にその周方向に沿って横孔を貫設すると共に前記太幅部の外周面にはその周方向に沿って突畝環部を周設し、前記リムの外周にタイヤ部を一体に成形し、前記タイヤ部は前記凸条環部の太幅部の外周に前記突畝環部を内包するようにしてインサート成形される内層環部と該内層環部の外周面を覆い且つ前記各横孔に入り交絡するようにして前記リムの外周にインサート成形される外層環部との二重構造をなし、前記内層環部は弾力性に優れた素材からなり、また前記外層環部は耐磨耗性に優れた素材からなることを特徴とする車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪。
- 前記内層環部はスチレン系またはオレフィン系のエラストマーからなり、また前記外層環部は硬硬度のエラストマー又は硬硬度のポリウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪。
- 前記内層環部は軟硬度の合成ゴムからなり、また前記外層幹部は硬硬度のエラストマー又は硬硬度のポリウレタン樹脂からなる請求項1記載の車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪。
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Publications (2)
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JP2000348745A Expired - Lifetime JP3911122B2 (ja) | 2000-11-15 | 2000-11-15 | 車椅子、乳母車、ベビーカー、荷物運搬用台車、又は自転車のいずれかに用いられる車輪 |
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-
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- 2000-11-15 JP JP2000348745A patent/JP3911122B2/ja not_active Expired - Lifetime
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