JP3910677B2 - ステレオカメラの調整装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1組のステレオカメラから出力される各々の画像信号の感度のバラツキを電気的に調整するステレオカメラの調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、画像による三次元計測技術として、2台のカメラ(ステレオカメラ)で対象物を異なる位置から撮像した1対の画像の相関を求め、同一物体に対する視差からステレオカメラの取り付け位置や焦点距離等のカメラパラメータを用いて三角測量の原理により距離を求める、いわゆるステレオ法による画像処理が知られている。
【0003】
このステレオ法による画像処理では、ステレオカメラから得られた2つの画像信号を順次シフトしながら画素毎の差の絶対値の総和を計算し、2つの画像信号が一致した位置を求めるようにしているため、各カメラの出力特性は極力一致していなければならない。
【0004】
このため、従来では、先に本願出願人によって提出された特開平5−114099号公報や特開平5−265547号公報に開示されているように、各カメラの出力特性の違い等に起因する相互の画像信号のバラツキを電気的に補正するため、画像信号のゲインやオフセット量を変更するルックアップテーブル(LUT)をROM上に構成して備えており、2台のカメラからの各々のアナログ画像信号を対応するA/Dコンバータによってデジタル信号に変換した後、A/Dコンバータからのデジタル画像信号をLUTによって調整し、後処理のステレオ画像処理におけるマッチング精度を確保するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記LUTは、2台のカメラと処理ユニットとをセットにして出力特性が一致するよう、予め製造時に調整してROMにデータを書き込んで作成するようになっており、それに係わる工数及び調整装置が必要となって製造コストの増大を招く。また、2台のカメラと処理ユニットとを一対一で調整する必要があることから、製造工程に制約が生じる。
【0006】
さらに、ステレオカメラ及び処理ユニットを装備する前の製造段階で出力特性を合わせることは、経年変化による画像信号の劣化、カメラのイメージセンサやアンプ等の半導体素子の周囲温度変化によるオフセットやドリフト等に対応できないことを意味する。そのため、ステレオマッチングの際に2台のカメラからの画像がミスマッチしてしまい、画像処理結果の精度が大幅に低下する虞がある。この場合、LUTを再設定するためには、装置全体をメーカに持ち込む必要があり、ユーザーにとって不便極まりない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、装置の稼働状態で感度調整を可能として製造時の調整工数を削減することができるとともに、半導体素子の経年変化や周囲温度変化による画像信号の感度変化に対処することのできるステレオカメラの調整装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、1組のステレオカメラから出力される2系統の画像信号における互いの感度のズレを補正するステレオカメラの調整装置であって、上記ステレオカメラからの画像信号の感度のデータを変更し、オンボードでデータ書き換え可能なルックアップテーブルと、上記ステレオカメラからの画像内に輝度基準となる特定の対象物の画像領域を設定し、上記ステレオカメラの稼働状態で、該領域の画像データに基いて上記2系統の画像間の相関を直線近似及び曲線近似で求め、直線近似に基いて画像全体の感度を調整した後、曲線近似に基いて上記ルックアップテーブルのデータを書き換える調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記調整手段は、上記対象物に備えた発光装置を制御して上記対象物の輝度を可変する機能を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発明において、上記調整手段は、上記対象物の画像領域をパターンマッチングによって自動的に探索する機能を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1,2,3のいずれか一に記載の発明において、上記調整手段によって制御され、上記ステレオカメラから出力される2系統のアナログ画像信号の輝度バランスを補正するゲインコントロールアンプを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3,4のいずれか一に記載の発明において、上記ステレオカメラが車両搭載のステレオカメラであり、上記対象物が車体に固定されたオーナメントであることを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明では、1組のステレオカメラから出力される2系統の画像信号における互いの感度のズレを補正するため、画像信号の感度のデータを変更するルックアップテーブルを備えており、ステレオカメラからの画像内に輝度基準となる特定の対象物の画像領域を設定し、ステレオカメラの稼動状態で、画像領域の画像データに基いて2系統の画像間の相関を直線近似及び曲線近似で求め、直線近似に基いて画像全体の感度を調整した後、曲線近似に基いてルックアップテーブルのデータをオンボードで書き換える。
【0014】
このルックアップテーブルのデータ書き換えに際しては、対象物に備えた発光装置を制御して対象物の輝度を可変する、あるいは、対象物の画像領域をパターンマッチングによって自動的に探索すると言った機能を追加することが望ましい。また、感度調整の際に、ステレオカメラから出力される2系統のアナログ画像信号の輝度バランスを補正するゲインコントロールアンプを制御しても良い。さらには、上記ステレオカメラが車両搭載のステレオカメラのとき、車体に固定されたオーナメントを基準となる特定の対象物としても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図9は本発明の実施の第1形態に係わり、図1は感度調整装置のブロック図、図2はCCDカメラの取り付けを示す説明図、図3は画像取り込みタイミングを示す説明図、図4はGCAのコントロール電圧対ゲイン特性図、図5はLUTの初期データマップの説明図、図6はオーナメント画像データを示す説明図、図7は基準及び比較画像データの散布図、図8は書き換え後のLUTデータマップの説明図、図9は感度調整ルーチンのフローチャートである。
【0016】
図2において、符号1は、例えば電荷結合素子(CCD)等のイメージセンサを内蔵したシャッタースピード可変のCCDカメラであり、このCCDカメラ1、及び、このCCDカメラ1と同期が取られ、シャッタースピード可変のCCDカメラ2が互いのレンズ1a,2aの光軸が平行となるようにステー3の両端に固定され、同一の領域を異なる視点から撮像するステレオ撮像系を構成している。尚、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
【0017】
上記ステレオ撮像系を構成する2台のCCDカメラ1,2は、画像信号の感度のバラツキを電気的に補正する感度調整装置10を介してステレオ画像処理装置40に接続されるようになっており、上記感度調整装置10で感度調整された1組の画像がステレオ画像処理装置40に読み込まれ、ステレオマッチングにより2つの画像の一致度が評価されて物体の三次元位置の算出や画像認識等が行われる。
【0018】
図1に示すように、上記感度調整装置10には、CCDカメラ1,2の各系統に対応して、各CCDカメラ1,2からのアナログ画像を後段の入力レンジに合わせるためのアナログインターフェース11,12、アナログ画像を所定の輝度階調(例えば256階調のグレースケール)のデジタル画像に変換するA/Dコンバータ13,14、各CCDカメラ1,2のイメージセンサの出力特性の相違等に起因する相互の画像信号のバラツキを補正するために画像信号のゲインやオフセット量を変更するルックアップテーブル(LUT)15,16、各LUT15,16のアドレスバスを切り換えるアドレスセレクタ17,18、各LUT15,16のデータバスを切り換えるデータセレクタ19,20が備えられている。また、各アナログインターフェース11,12には、画像信号のゲインを変えるゲインコントロールアンプ(GCA)11a,12aがそれぞれ内蔵されている。
【0019】
さらに、上記感度調整装置10には、上記LUT15,16からの出力データを読み込んで上記CCDカメラ1,2の出力特性を計測し、上記GCA11a,12aに対する制御信号をD/Aコンバータ31,32を介して出力するとともに、上記LUT15,16に対するデータ書き換えを所定周期で行う感度調整値演算装置30が備えられている。この感度調整値演算装置30は、マイクロコンピュータからなり、上記アドレスセレクタ17,18、及び、上記データセレクタ19,20を介して上記LUT15,16に接続される。
【0020】
すなわち、上記アドレスセレクタ17,18、及び、上記データセレクタ19,20は、上記感度調整値演算装置30によって切り換えられ、通常の画像処理時には、アドレスセレクタ17,18を介してA/Dコンバータ13,14からのデータがLUT15,16に入力されるとともに、データセレクタ19,20を介してLUT15,16からのデータが感度調整値演算装置30及びステレオ画像処理装置40に出力される。そして、ステレオ画像処理装置40で、ステレオマッチングにより2つの画像の一致度が評価され、物体の三次元位置の算出や画像認識等が行われることになる。
【0021】
この通常の画像処理時には、各CCDカメラ1,2から、例えば水平同期信号及び垂直同期信号に同期したNTSC映像信号等の画像信号が出力され、アナログインターフェース11,12へ入力されると、アナログインターフェース11,12では、交流信号であるCCDカメラ1,2からの画像信号のオフセットを補償してレベル調整を行い、GCA11a,12aで、D/Aコンバータ31,32からのコントロール電圧すなわち感度調整値演算装置30からの制御データに応じて画像信号のゲインを調整する。このゲイン調整は、例えば、図4に示すようなコントロール電圧(CONT)対ゲイン(Gain)特性で行われる。
【0022】
上記GCA11a,12aの出力は、図3に示すようなタイミングで、1フィールドだけA/Dコンバータ13,14によりサンプリングされてデジタルデータに変換される。そして、このA/Dコンバータ13,14からのデジタルデータがアドレスセレクタ17,18を介してLUT15,16にアドレスデータとして入力され、該当アドレスに設定されているデータが参照されてデータセレクタ19,20を介してステレオ画像処理装置40に出力される。
【0023】
上記LUT15,16は、オンボードでデータを書換え可能なEEPROM等によって構成されるデータ変換テーブルであり、感度調整装置10の製造時に、図5に示すように、入力と出力とが同じになる特性データが書き込まれている。従って、初期状態では、LUT15,16からは、アドレスセレクタ17,18から入力されたデータが変更されることなく同じ値を持って出力される。
【0024】
また、上記LUT15,16からの出力データは、同時に感度調整値演算装置30にも出力される。この感度調整値演算装置30では、CCDカメラ1,2からのデータを比較的長時間にわたって随時蓄積し、その蓄積データを分析する。そして、分析が終了すると、分析結果として、GCA11a,12aを制御するための補正ゲインデータをD/Aコンバータ31,32を介してGCA11a,12aへ出力してCCDカメラ1,2からの画像信号のゲインを変更し、また、A/Dコンバータ13,14のサンプリング期間外のタイミングでアドレスセレクタ17,18及びデータセレクタ19,20を切り換え、LUT15,16のデータを適正値に書き換える。
【0025】
尚、本形態では、CCDカメラ1で撮像した画像を基準画像、CCDカメラ2で撮像した画像を比較画像とした場合、CCDカメラ1側(基準画像側)におけるGCA11a及びLUT15は初期設定のままで、CCDカメラ2側(比較画像側)におけるGCA12aのゲイン変更及びLUT16のデータ書き換えを行う。
【0026】
以下、上記感度調整値演算装置30による感度調整処理について、図9の感度調整ルーチンのフローチャートに従って説明する。
【0027】
このルーチンでは、CCD1,2で撮像した1組の画像に対し、輝度データの基準となる特定の対象物として、既知の位置に固定されている対象物を採用し、その固定対象物の画像データに基づいて感度調整が行われる。まず、ステップS101において、対象物の画像内の特定領域のデータの平均値を、CCDカメラ1,2の両系統ともにサンプルデータとして算出する。
【0028】
例えば、2台のCCDカメラ1,2からなるステレオ撮像系を、感度調整装置10及びステレオ画像処理装置40とともに自動車等の車両に搭載し、CCDカメラ1,2で撮像した1組の画像を処理して車外の対象までの距離を求め、求めた距離の情報に基づいて道路形状の認識や立体物の認識等を行なう場合、車体前縁付近のボンネット上に設けられているオーナメント等を輝度データの基準となる特定の対象物とする。そして、図6に示すように、オーナメント画像内の特定部分に該当する領域に対し、画素毎の輝度データを基準画像及び比較画像の両系統とも集計して平均値を求める。
【0029】
次いで、ステップS102へ進み、輝度データの入力レンジ(例えば、00〜FF)の全範囲に分散するサンプルデータが獲得されたか否かを調べる。そして、サンプルデータを近似処理するのに十分にデータが分散していないときには、ルーチンを抜ける。また、近似処理に十分な分散データが得られたとき、ステップS103へ進んで、基準画像のゲインに対する比較画像のゲインのズレに応じてGCA12aのゲインを補正するための近似直線と、LUT16のデータを新しい調整データに書き換えるための近似曲線とを算出する。
【0030】
その後、ステップS104以降へ進み、CCDカメラ1から出力される画像信号の感度にCCDカメラ2から出力される画像信号の感度を合わせるための処理を行う。すなわち、まず、ステップS104で、CCDカメラ2からの画像信号のゲインを、入力レンジの全範囲に渡って一律に調整するため、GCA12aに対する補正ゲインデータを算出し、D/Aコンバータ32を介してGCA12aへコントロール電圧として出力する。
【0031】
次に、ステップS105へ進み、入力レンジの全範囲に渡って一律に調整されたゲインでの近似曲線上の値を求め、この値によるLUT16のデータ書き換えを、A/Dコンバータ14のサンプリング期間外のタイミングでアドレスセレクタ18及びデータセレクタ20を切り換えて行い、処理を終了する。
【0032】
例えば、図7に示すように、10個程度のデータで入力レンジの全範囲に渡って分散するデータを獲得できた場合、CCDカメラ1側の基準画像のデータとCCDカメラ2側の比較画像のデータとの相関を直線近似及び曲線近似で求める。そして、まず近似直線により、比較画像の全体のゲインを調整する。図7の散布図に示す例では、基準画像よりも比較画像の方がゲインが高いため、CCDカメラ2側のGCA12によって比較画像のゲインを一律に小さくするよう補正する。
【0033】
この一律のゲイン補正では、全てのポイントで基準画像と比較画像とのゲインが一致する訳ではなく、例えば、最初から基準画像と比較画像とでゲインが合っているポイントAでは、比較画像側の該当するデータも小さくされてしまう。従って、さらに、変換された全体ゲインに応じて近似曲線を図8に示すように変換し、この変換された近似曲線に従ってLUT16のデータを書き換えることで、精密にゲイン調整を行う。
【0034】
すなわち、図7の散布図の例では、比較画像と基準画像とで一致しているポイントAに対し、比較画像側では先のGCA12aによる一律の補正でデータが小さくされ、例えば図8のポイントBでのデータとしてLUT16へ入力される。このため、ポイントBでのゲインを高くして基準画像側のデータと一致するよう、上述の変換された近似曲線に従ってLUT16のデータを書き換える。他のポイントについても同様であり、このLUT16のデータ書き換えにより、比較画像側の最終的なゲインを基準画像側のゲインに一致させることができる。
【0035】
尚、この場合、若干精度が落ちるものの、GCA12aの近似直線によるゲイン変更を行わず、図7に示される近似曲線によるLUT16のデータ書き換えのみによるゲイン調整としても良い。
【0036】
これにより、CCDカメラ1,2の感度バランスを自動的に調整することができ、ユニット製造時の感度調整が不要になるばかりでなく、2台のCCDカメラ1,2と処理ユニットとを一対一で組み合わせる必要がなくなる。従って、製造時の調整作業に係わる工数を削減することができるとともに、製造工程上の制約を解消し、製造コストを低減することができる。
【0037】
また、ユニット稼働状態で感度調整データを随時更新できることから、CCDを初めとする半導体素子の周囲温度の相違による感度のアンバランスや経年変化による劣化や感度アンバランスを解消することができ、常に安定した精度の良い画像データを得ることができる。
【0038】
図10〜図13は本発明の実施の第2形態に係わり、図10は感度調整装置のブロック図、図11は入力レンジが狭い場合の基準及び比較画像データの散布図、図12はPWM制御信号のタイムチャート、図13は感度調整ルーチンのフローチャートである。
【0039】
感度調整のためにサンプルされたデータを近似処理するには、サンプルデータが入力レンジ内で広く分散していることが重要である。しかしながら、広い輝度範囲で分布するサンプルデータを得ることが困難な場合がある。特に、対象物の輝度が走行環境や天候に大きく左右される車両搭載のステレオ撮像系では、図11に示すように、サンプルデータが一部の輝度に偏ってしまい、直線近似も曲線近似も不可能となる場合がある。
【0040】
このため、本形態は、基準となる特定の対象物に積極的に輝度差を与えることでサンプルデータを確実に分散させて近似処理精度を向上するものであり、本形態の感度調整装置10Aは、図10に示すように、第1形態の感度調整装置10における感度調整値演算装置30を、基準対象物に組み込んだランプやLED等の発光装置を制御し、基準対象物の輝度を可変制御する機能を追加した感度調整値演算装置30Aとする。図10においては、発光装置としてのLED50を基準対象物に組み込み、LED50を抵抗Rを介して感度調整値演算装置30Aに接続している。
【0041】
上記感度調整値演算装置30Aによる図13の感度調整処理では、第1形態の感度調整処理に対し、サンプルデータの輝度分布が偏って広く分散するデータが得られないとき、基準対象物に組み込んだLED50に発光制御信号出力し、基準対象物の輝度を変化させるステップS106〜S108の処理を追加する。
【0042】
すなわち、ステップS101で対象物の画像データを取り込んで特定領域のデータの平均値を算出し、ステップS102で、入力レンジの全範囲に分散するサンプルデータが獲得されか否かを調べ、近似処理に十分な分散データが得られたときには、ステップS103〜S105で第1形態と同様の近似処理を行ってGCA12aのゲイン変更及びLUT16のデータ書き換えを行い、サンプルデータを近似処理するのに十分にデータが分散していないとき、ステップS102からステップS106へ分岐し、サンプリング開始から所定時間が経過しているか否かを調べる。
【0043】
そして、サンプリング開始後、所定時間が経過していないときには、上記ステップS106からステップS107へ進み、LED50へ発光制御信号を出力してLED50を発光させる。この発光制御信号は、例えば、パルス幅変調(PWM)制御信号を用い、サンプリング開始後、所定時間内では、デューティ比を50%に固定してLED50を一定の輝度で発光させる。
【0044】
一方、未だ近似処理に十分な分散データが得られず、サンプリング開始から所定時間が経過したときには、上記ステップS106からステップS108へ進み、データが不足する輝度領域側に向けてPWM制御信号のデューティ比を段階的あるいはリニアに変更してLED50の通電時間を変化させ、基準対象物の輝度データが入力レンジの全範囲(00〜FF)に分散するようにする。
【0045】
図10におけるLED50は、PWM制御信号が0(ローレベル)で通電され、PWM制御信号が1(ハイレベル)で非通電となる。従って、図12に示すように、基準対象物を明るくする場合には、PWM制御信号のデューティ比を小さくし、基準対象物を暗くする場合には、PWM制御信号のデューティ比を大きくする。
【0046】
これにより、外界の照度変化があまりなく、基準対象物自体の輝度が偏ってしまうような場合にも、入力レンジの全範囲に分散したデータを得ることができ、近似処理の精度を向上することができる。
【0047】
図14及び図15は本発明の実施の第3形態に係わり、図14はオーナメント検索を示す説明図、図15は感度調整ルーチンのフローチャートである。
【0048】
前述の第1,2形態においては、画像フィールド内の輝度基準となる対象物の位置を予め設定しておき、その位置の領域内のデータを初めから対象物内のデータとみなして処理を行っている。このような場合、画像フィールドに対する対象物の位置を正確に設定する必要があり、煩雑である。また、対象物の位置ズレの影響を受けないようにするためには、サンプル領域を狭く設定しなければならず、サンプル領域が狭いと、その領域内のデータの平均値の質が低下する。
【0049】
このため、本形態では、画像内の輝度基準となる対象物を、図14に示すようなパターンマッチングにより自動的に抽出し、画像に対する対象物の相対的位置ズレに対処する。すなわち、第2形態の感度調整値演算装置30Aの感度調整処理に対し、本形態では、図15に示すように、ルーチンの最初にステップS100を追加し、この最初のステップS100で検索エリアを設定し、検索エリア内での2次元パターンマッチングを行うことにより、基準対象物の位置を確定させて特定する。
【0050】
例えば、基準対象物としてのオーナメントの正確な位置がわかっていない場合には、図14に示すように、大体の検索ウィンドウを設定し、この検索ウィンドウ内のデータと予め記憶している検索パターンとの差を取りながら検索ウィンドウを画像原点(図14の画像左上隅)側から順次シフトさせ、差が最小値となる位置をオーナメントの位置とする。
【0051】
そして、基準対象物の位置を特定した後、ステップS101以降へ進み、基準対象物の画像データを取り込んで特定領域のデータの平均値を算出し、近似処理に十分な分散データが得られたとき、近似処理を行ってGCA12aのゲイン変更及びLUT16のデータ書き換えを行い、近似処理に十分な分散データが得られないときには、基準対象物に組み込んだ発光装置を制御して基準対象物の輝度データが入力レンジの全範囲に分散するようにする。尚、第1形態の感度調整値演算装置30の感度調整処理に対し、ステップS100を追加しても同様である。
【0052】
本形態では、輝度データの基準となる対象物の位置がずれても対象物を自動的に検出することができ、基準対象物を設定する際の選択の自由度を増すことができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、1組のステレオカメラから出力される2系統の画像信号における互いの感度のズレを補正するため、画像信号の感度のデータを変更するルックアップテーブルを備え、ステレオカメラからの画像内に輝度基準となる特定の対象物の画像領域を設定し、ステレオカメラの稼動状態で、画像領域の画像データに基いて2系統の画像間の相関を直線近似及び曲線近似で求め、直線近似に基いて画像全体の感度を調整した後、曲線近似に基いてルックアップテーブルのデータをオンボードで書き換えるため、装置の稼働状態で感度調整を可能として製造時の調整工数を削減してコスト低減に寄与することができるとともに、半導体素子の経年変化や周囲温度変化による画像信号の感度変化に対処することができ、常に安定した精度の良い画像データを得ることができる。
【0054】
また、ルックアップテーブルのデータ書き換えに際しては、特定の対象物に備えた発光装置を制御して対象物の輝度を可変することで、外界の照度変化があまりなく、対象物自体の輝度が偏ってしまうような場合にも、入力レンジの全範囲に分散したデータを得て近似処理の精度を向上することができ、さらに、対象物の画像領域をパターンマッチングによって自動的に探索することで、対象物の位置がずれても対象物を自動的に検出することができ、対象物を設定する際の選択の自由度を増すことができる等優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態に係わり、感度調整装置のブロック図
【図2】同上、CCDカメラの取り付けを示す説明図
【図3】同上、画像取り込みタイミングを示す説明図
【図4】同上、GCAのコントロール電圧対ゲイン特性図
【図5】同上、LUTの初期データマップの説明図
【図6】同上、オーナメント画像データを示す説明図
【図7】同上、基準及び比較画像データの散布図
【図8】同上、書き換え後のLUTデータマップの説明図
【図9】同上、感度調整ルーチンのフローチャート
【図10】本発明の実施の第2形態に係わり、感度調整装置のブロック図
【図11】同上、入力レンジが狭い場合の基準及び比較画像データの散布図
【図12】同上、PWM制御信号のタイムチャート
【図13】同上、感度調整ルーチンのフローチャート
【図14】本発明の実施の第3形態に係わり、オーナメント検索を示す説明図
【図15】同上、感度調整ルーチンのフローチャート
【符号の説明】
1,2 …CCDカメラ(ステレオカメラ)
10 …感度調整装置
11a,12a…ゲインコントロールアンプ
15,16 …ルックアップテーブル
30 …感度調整値演算装置

Claims (5)

  1. 1組のステレオカメラから出力される2系統の画像信号における互いの感度のズレを補正するステレオカメラの調整装置であって、
    上記ステレオカメラからの画像信号の感度のデータを変更し、オンボードでデータ書き換え可能なルックアップテーブルと、
    上記ステレオカメラからの画像内に輝度基準となる特定の対象物の画像領域を設定し、上記ステレオカメラの稼働状態で、該領域の画像データに基いて上記2系統の画像間の相関を直線近似及び曲線近似で求め、直線近似に基いて画像全体の感度を調整した後、曲線近似に基いて上記ルックアップテーブルのデータを書き換える調整手段とを備えたことを特徴とするステレオカメラの調整装置。
  2. 上記調整手段は、上記対象物に備えた発光装置を制御して上記対象物の輝度を可変する機能を有することを特徴とする請求項1記載のステレオカメラの調整装置。
  3. 上記調整手段は、上記対象物の画像領域をパターンマッチングによって自動的に探索する機能を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のステレオカメラの調整装置。
  4. 上記調整手段によって制御され、上記ステレオカメラから出力される2系統のアナログ画像信号の輝度バランスを補正するゲインコントロールアンプを備えたことを特徴とする請求項1,2,3のいずれか一に記載のステレオカメラの調整装置。
  5. 上記ステレオカメラが車両搭載のステレオカメラであり、上記対象物が車体に固定されたオーナメントであることを特徴とする請求項1,2,3,4のいずれか一に記載のステレオカメラの調整装置。
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