JP3910378B2 - 油圧パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧パワーステアリング装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ステアリングホイールの操舵力を軽減して快適な操舵感を与えるために、油圧パワーステアリング装置が多用されてきた。この種の油圧パワーステアリング装置は、油圧シリンダで操舵力に応じた補助力を発生し、この補助力をステアリング系のラック軸に伝達するものであって、例えば特開平7−117694号「パワーステアリング装置」(以下、「従来の技術」と言う。)が知られている。
【0003】
上記従来の技術は同公報の図1及び図2に示される通り、ステアリングホイール7(番号は公報に記載されたものを引用した。以下同じ。)に加えた操舵力をステアリングシャフト6並びにラックアンドピニオン機構を介してステアリングラック14に伝達するとともに、操舵力に応じてアシスト用パワーシリンダ15が発生した補助力をステアリングラック14に伝達し、ステアリングラック14によって前輪3を操舵するようにしたステアリング装置1に関する。
【0004】
オイルポンプ19(油圧ポンプに相当)の吐出口からパワーシリンダ15までの油路に、ロータリーバルブユニット11(油路切換手段に相当)が介在する。ステアリングホイール7の操舵方向並びに操舵力に応じてロータリーバルブユニット11を切換えることで、操舵方向並びに操舵力に応じた補助力をパワーシリンダ15で発生する。このようにして、パワーシリンダ15が発生した補助力を操舵力に付加することができる。
【0005】
次に、上記従来の技術における同公報の図1を再掲して、油圧パワーステアリング装置の全体的な配置を更に説明する。
図8は従来の技術を説明するために上記従来の技術に示す図1を再掲したところの油圧パワーステアリング装置の配置図である。但し、符号は従来の技術と相違する。
【0006】
油圧ステアリング装置200は車両201の前部に配置し、ステアリングホイール202にステアリングシャフト203を介して連結したロータリーバルブユニット204と、ロータリーバルブユニット204を取付けるとともにラックアンドピニオン機構(図示せず)を収納したステアリングギヤボックス205と、ラックアンドピニオン機構のステアリングラックにタイロッド206,206を介して連結した左右の前輪207と、ロータリーバルブユニット204の駆動源となるオイルポンプ208と、オイルタンク209とからなる。
オイルポンプ208の吐出口からロータリーバルブユニット204までの油路211は、パイプやホース等の配管材212からなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記図8に示す車両201の前部にエンジン(図示せず)を搭載した場合には、エンジンの近傍にオイルポンプ208を配置する。配管材212はエンジンの近くを通す比較的長い部材であり、その長手途中をエンジンで保持することが多い。
【0008】
オイルポンプ208やエンジンの振動は、配管材212を介してロータリーバルブユニット204に伝わり、更にステアリングホイール202を介して車室内に伝わるので、車室内の騒音の要因となる。また、ステアリングホイール202に振動が伝わると、操舵フィーリング上好ましくない。
【0009】
オイルポンプ208やエンジンから配管材212を介してロータリーバルブユニット204に伝わる振動を抑制するには、配管材212の共振周波数を変える方法が考えられる。共振周波数を変えるには、配管材212に質量体を取付けたり、配管材212の長さを調整すればよい。
【0010】
しかし、配管材212に十分な重さの質量体を取付けると、質量体が大型にならざるを得ない。大型の質量体を備えた配管材212を車両201の狭いスペースに通すには限界がある。
一方、配管材212の長さを調整するには、オイルポンプ208からロータリーバルブユニット204までの距離の制約や、これらの部材204,208間の間に配置された他の部材(エンジン等)の制約がある。従って、共振周波数を変えるのに最適な配管材212の長さにするには限界がある。
【0011】
そこで本発明の目的は、油圧ポンプやエンジンから配管材を介して油路切換手段へ伝わる振動を、スペースの制約を受けることなく容易に抑制できる技術を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、油圧ポンプの吐出口から油圧シリンダまでの油路に油路切換手段を介在させ、ステアリングホイールの操舵方向並びに操舵力に応じて油路切換手段を切換えることで、操舵方向並びに操舵力に応じた補助力を油圧シリンダで発生し、補助力を操舵力に付加するようにした油圧パワーステアリング装置において、
油圧ポンプの吐出口から油路切換手段までの油路の少なくとも一部をホース等の可撓性管にて構成し、この可撓性管の外周面を隙間を有して覆うとともにその覆った部分を湾曲させたときに可撓性管の外周面に接触し得る、振動抑制管部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
可撓性管並びに振動抑制管部材を湾曲させたときに、可撓性管の外周面に振動抑制管部材の内周面が部分的に接触する。油圧ポンプから可撓性管に振動が伝わると、その振動に応じて可撓性管の外周面は微小な伸縮作用をする。伸縮する可撓性管と振動抑制管部材との接触部分には、摩擦が生ずる。接触部分での摩擦により、可撓性管の振動エネルギーを消費することができる。
さらに、接触部分は可撓性管の節の役割を果たす。一般に、振動が伝わる細長い部材に節や鍔があると、振幅が小さくなる現象が知られている。接触部分が可撓性管の節の役割を果たすことで、可撓性管の端から端へ伝わる抑制された振動の振幅を更に極めて小さくすることができる。
【0014】
このようにして、油圧ポンプから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、簡単な構成で容易に抑制することができる。
しかも、振動の伝達を抑制するために、油圧ポンプの吐出口から油路切換手段までの油路を長くする必要はない。このため、油路を車両の狭いスペース内に比較的自由に引き回すことができる。従って、油路を車両のスペースの制約を受けることなく通すことができるので、配管設計の自由度を高めることができる。
【0015】
請求項2は、可撓性管をエンジンの近傍に通すとともに、可撓性管の長手途中をエンジンにて保持させ、この保持部分よりも油路切換手段側に振動抑制管部材を設けたことを特徴とする。
可撓性管の長手途中をエンジンにて保持したときに、可撓性管には油圧ポンプの他にエンジンからも保持部分を介して振動が伝わる。これに対し、保持部分よりも油路切換手段側に振動抑制管部材を設けたので、油圧ポンプ並びにエンジンから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、容易に抑制することができる。
【0016】
請求項3は、可撓性管の長手途中に、油圧ポンプ側の第1保持部並びに油路切換手段側の第2保持部を間隔を開けて設け、これらの第1・第2保持部をエンジンにて保持し、可撓性管のうち第1保持部と第2保持部との間に振動を抑制するための質量体を設けたことを特徴とする。
可撓性管のばね定数及び質量体の質量で決定されるダンパ効果によって、第1保持部と第2保持部との間の振動を抑制することができる。従って、油圧ポンプ並びにエンジンから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、より抑制することができる。
【0017】
請求項4は、振動抑制管部材を第2保持部と油路切換手段との間に設けたことを特徴とする。
エンジンで保持する第1・第2保持部よりも油路切換手段側に振動抑制管部材を設けたので、油圧ポンプ並びにエンジンから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、容易に抑制することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る油圧パワーステアリング装置の模式図であり、この油圧パワーステアリング装置10は、車両のステアリングホイール21から操舵車輪33,33に至るステアリング系20と、このステアリング系20に補助力を加える補助力付加機構40とからなる。
【0019】
上記油圧パワーステアリング装置10は、ラック軸28の両端から操舵力を取り出すようにしたエンドテイクオフ型操舵装置であり、基本的な構成・作用については、上記従来の技術(特開平7−117694号「パワーステアリング装置」)と同じものであるが、その概要並びに本発明に係る特徴部分について、以下に説明する。
【0020】
ステアリング系20は、ステアリングホイール21にステアリングシャフト22及び自在軸継手23,23を介して入力軸24を連結し、入力軸24にトーションバー25を介して出力軸26を連結し、出力軸26にラックアンドピニオン機構27を介してラック軸28を連結し、ラック軸28の両端に左右のタイロッド31,31及びナックル32,32を介して左右の操舵車輪(前輪)33,33を連結したものである。
【0021】
トーションバー25は、文字通りトルクに対して正確にねじれ角が発生するメンバーであって、入力軸24と出力軸26との間での相対ねじり変位を発生する弾性部材である。ラックアンドピニオン機構27は、出力軸26に形成したピニオン34に、ラック軸28に形成したラック35を噛み合わせたギヤ機構である。
運転者がステアリングホイール21を操舵することで、この操舵力によりラックアンドピニオン機構27及び左右のタイロッド31,31を介して、左右の操舵車輪33,33を操舵することができる。
【0022】
補助力付加機構40は、ステアリングホイール21に加えた操舵方向並びに操舵力に応じて油路切換手段50を切換えることで、操舵方向並びに操舵力に応じた補助力を油圧シリンダ60で発生し、補助力をラック軸28を介して操舵力に付加するようにしたものである。
【0023】
油路切換手段50は、油圧ポンプ42の吐出口42bから油圧シリンダ60までの油路、すなわちシリンダ駆動油路71に介在した機構であり、油圧供給ポート51と、2つのシリンダポート(第1シリンダポート52並びに第2シリンダポート53)と、リターンポート54と、車速応動制御油圧が供給される図示せぬコントロールポートとを備えた、ロータリーバルブユニットである。
【0024】
油圧供給ポート51は、油圧シリンダ60の駆動源となる油圧ポンプ42の吐出口42bに、供給油路73を介して接続する接続口である。第1・第2シリンダポート52,53は、油圧シリンダ60に第1・第2シリンダ油路74,75を介して接続する接続口である。リターンポート54は、油路切換手段50からオイルを戻すために、リターン路76を介してオイルタンク41に接続する接続口である。コントロールポートについては省略する。
【0025】
油圧シリンダ60は、ラック軸28に一体的に取付けたピストン61と、ピストン61が往復動し得るシリンダ62と、シリンダ62内をピストン61にて隔てた2つの油室(第1油室63並びに第2油室64)と、からなるパワーシリンダである。
第1油室63は第1シリンダ油路74を介して第1シリンダポート52に接続し、第2油室64は第2シリンダ油路75を介して第2シリンダポート53に接続する。
【0026】
以上の説明から明らかなように、シリンダ駆動油路71は、油圧ポンプ42の吐出口42bから油路切換手段50までの油路、すなわち供給油路73と、第1・第2シリンダ油路74,75とからなる。なお、72はオイルタンク41から油圧ポンプ42の吸引口42aまでの吸引油路である。
【0027】
次に、油圧パワーステアリング装置10の作用を説明する。
ステアリングホイール21に加えた操舵方向並びに操舵力に応じて、トーションバー25がねじれる。ステアリングホイール21に発生した、ねじれ方向並びにねじれ角に応じて、油路切換手段50に内蔵したバルブが切換わり、第1シリンダポート52と第2シリンダポート53とを切換えるとともに、バルブ開度が変化する。
【0028】
例えば、ステアリングホイール21を左へ操舵すると、そのときの左操舵方向並びに操舵力に応じてトーションバー25がねじれ、そのねじれ方向並びにねじれ角に応じて、油路切換手段50が切換わる。オイルタンク41のオイルは、吸引油路72→油圧ポンプ42→供給油路73→油路切換手段50→第1シリンダポート52→第1シリンダ油路74の経路で第1油室63に流れ、その油圧によってピストン61を図左へ移動させる。このようにして、ラック軸28に図左方向への補助力(アシスト軸力)を付加する。
【0029】
一方、第2油室64内のオイルはピストン61で押出され、第2シリンダ油路75→第2シリンダポート53→油路切換手段50→リターン路76の経路でオイルタンク41に戻る。
ステアリングホイール21を右へ操舵した場合には、上記作用と逆経路でオイルが流れて、ラック軸28に図右方向への補助力を付加することができる。
【0030】
以上を要約すれば、電動パワーステアリング装置10は、車両のステアリングホイール21に加えた操舵力をラックアンドピニオン機構27を介してラック軸28に伝達するとともに、操舵力に応じて油圧シリンダ60が発生した補助力をラック軸28に付加し、このラック軸28によって操舵車輪33,33を操舵するようにしたものである。従って、ステアリング系20の操舵力に油圧シリンダ60の補助力を付加した複合力によって、操舵車輪33,33を操舵することができる。
【0031】
図2は本発明に係る油圧パワーステアリング装置の配置図であり、油圧ステアリング装置10を車両81の前部に配置し、ステアリングホイール21にステアリングシャフト22を介して油路切換手段50を連結し、油路切換手段50にステアリングギヤボックス82を取付け、ステアリングギヤボックス82に上記図1に示すラックアンドピニオン機構27並びにラック軸28を収納するとともに油圧シリンダ60を取付けたことを示す。
【0032】
ステアリングギヤボックス82は車幅方向に細長く延びる部材であり、その一端近傍にオイルタンク41並びに油圧ポンプ42を配置する。第1・第2シリンダ油路74,75、リターン路76並びに吸引油路72は、少なくとも一部がホース等の可撓性管である。なお、83は油路切換手段50のコントロールポートに車速応動制御油圧を供給する車速センサユニットである。
ところで、車両81の前部には図示せぬエンジンをも配置しており、このエンジンの近傍に油圧ポンプ42を配置する。
【0033】
図3は本発明に係る油圧ポンプ並びにエンジン周りの平面図であり、車両81の前部にエンジン85をも配置し、このエンジン85の近傍に油圧ポンプ42を配置するとともに、エンジン85の近傍に供給油路73を沿わせて通したことを示す。
車両81の狭いスペースに供給油路73を通すので、エンジン85に供給油路73を沿わせることになる。このため、供給油路73にはストレート部分(直線部分)や湾曲部分ができる。
【0034】
供給油路73は、一部を可撓性管93とし、この可撓性管93をエンジン85の近傍に通すとともに、可撓性管93の長手途中に、油圧ポンプ42側の第1保持部101並びに油路切換手段50側の第2保持部102を、所定の間隔を開けて設けるようにしたものである。可撓性管93のうちストレート部分93bに第1・第2保持部101,102を設ける。これらの第1・第2保持部101,102をステー103,104を介してエンジン85にて保持させ、この保持部分よりも油路切換手段50側に、すなわち第2保持部102と油路切換手段50との間に振動抑制管部材106を設ける。
【0035】
図4は本発明に係る供給油路の側面図であり、上述のように供給油路73の少なくとも一部をホース等の可撓性管93としたことを示す。
詳しく説明すると、供給油路73は、上記図3に示す油圧ポンプ42の吐出口42bに接続するフランジ91と、フランジ91に一端を取付けた第1パイプ92と、第1パイプ92の他端に一端を取付けた可撓性管93と、可撓性管93の他端に一端を取付けた第2パイプ94と、第2パイプ94の他端に取付けた接合ねじ部(雄ねじ部)95と、からなる。
【0036】
図5(a),(b)は本発明に係る供給油路の要部詳細図であり、(a)は可撓性管93周りの断面構成を示し、(b)は(a)のb−b線断面構成を示す。可撓性管93並びに振動抑制管部材106は、ホースのように湾曲させることが可能な真円形断面の細長い可撓性の管である。第1・第2保持部101,102は、可撓性管93を挿入した環状部材であり、可撓性管93に対してフリー又は接着等で取付けることができる。
【0037】
(a)に示すように、可撓性管93の他端の孔にニップル96を圧入するとともに、可撓性管93の外周部分を圧着金具97にて圧着し、さらに、ニップル96に第2パイプ94の一端をろう付け等にて接合することで、可撓性管93の他端に第2パイプ94の一端を取付けることができる。可撓性管93の一端に第1パイプ92(図4参照)の他端を取付ける構成も同様である。
【0038】
さらに、(a)及び(b)に示すように、可撓性管93の外径よりも大きい孔径の振動抑制管部材106に可撓性管93の他端側を挿入することで、可撓性管93の外周面93aを隙間Gpを有して振動抑制管部材106にて覆うことができる。
【0039】
また、振動抑制管部材106の一端部に圧着金具97を挿入するとともに、振動抑制管部材106の内周面に圧着金具97の外周面を接着等で取付けることで、可撓性管93の他端に振動抑制管部材106の一端部を取付けることができる。ここで、可撓性管93の中心に対して振動抑制管部材106を同心に取付ける。
振動抑制管部材106の他の部分、すなわち第2保持部102側の端部は、可撓性管93に対して接着等により部分的に固定されている。しかし、可撓性管93に対してフリーであっても差し支えない。
【0040】
図6(a),(b)は本発明に係る可撓性管並びに振動抑制管部材の湾曲部分の要部詳細図であり、(a)は可撓性管93の外周面93aを振動抑制管部材106で覆った部分を湾曲させたことを示し、(b)は(a)のb−b線断面構成を示す。
可撓性管93を振動抑制管部材106で覆った部分を湾曲させると、(b)に示すように可撓性管93並びに振動抑制管部材106はほぼ楕円状に弾性変形する。この状態において、可撓性管93の外周面93aに振動抑制管部材106の内周面106aが、部分的に接触し得る。この接触部分を107,107と言うことにする。
【0041】
次に、上記構成の可撓性管93並びに振動抑制管部材106の作用について、図3及び図6に基づき説明する。
図6において、振動抑制管部材106を湾曲させると、可撓性管93のうち振動抑制管部材106で覆った部分も湾曲する。この結果、可撓性管93の外周面93aに振動抑制管部材106の内周面106aが接触部分107で部分的に接触する。
【0042】
図3において、油圧ポンプ42やエンジン85から可撓性管93に振動が伝わると、その振動に応じて可撓性管93の外周面93aは微小な伸縮作用をする。伸縮する可撓性管93と振動抑制管部材106との接触部分107,107には、摩擦が生ずる。接触部分107,107での摩擦により、可撓性管93の振動エネルギーを消費することができる。
さらに、接触部分107,107は可撓性管93の節の役割を果たす。一般に、振動が伝わる細長い部材に節や鍔があると、振幅が小さくなる現象が知られている。接触部分107,107が可撓性管93の節の役割を果たすことで、可撓性管93の端から端へ伝わる抑制された振動の振幅を更に極めて小さくすることができる。
【0043】
このようにして、油圧ポンプ42やエンジン85から可撓性管93を介して油路切換手段50へ伝わる振動を、簡単な構成で容易に抑制することができる。しかも、エンジン85で保持する第1・第2保持部101,102よりも油路切換手段50側に振動抑制管部材106を設けたので、油圧ポンプ42並びにエンジン85から可撓性管93を介して油路切換手段50へ伝わる振動を、容易に抑制することができる。
【0044】
さらには、振動の伝達を抑制するために供給油路73を長くする必要はない。このため、供給油路73を車両81の狭いスペース内に比較的自由に引き回すことができる。従って、車両81のスペースの制約を受けることなく可撓性管93を通すことができるので、配管設計の自由度を高めることができる。
【0045】
図7は本発明に係る供給油路の変形例図であり、上記図3に対応する構成図である。
変形例の供給油路73は、可撓性管93のうち、第1保持部101と第2保持部102との間のストレート部分93bに質量体111を設けたことを特徴とする。質量体111は、可撓性管93の振動を抑制する、ほぼ円筒状のウエイトである。質量体111の孔に可撓性管93を通して接着等で取付けることができる。
【0046】
可撓性管93のばね定数及び質量体111の質量で決定されるダンパ効果によって、第1保持部101と第2保持部102との間の振動を抑制することができる。従って、油圧ポンプ42並びにエンジン85から可撓性管93を介して油路切換手段50へ伝わる振動を、より抑制することができる。
しかも、振動抑制管部材106及び質量体111を併用するので、比較的小さい質量体111ですむ。従って、車両81のスペースに可撓性管93を通すのに、スペースの制約をほとんど受けずにすむ。
【0047】
さらには、この変形例においても、振動抑制管部材106を第2保持部102と油路切換手段50との間に設けたことを特徴とする。エンジン85で保持する第1・第2保持部101,102よりも油路切換手段50側に振動抑制管部材106を設けたので、油圧ポンプ42並びにエンジン85から可撓性管93を介して油路切換手段50へ伝わる振動を、容易に抑制することができる。
【0048】
なお、上記本発明の実施の形態において、可撓性管93並びに振動抑制管部材106の材質、径、厚み、長さは任意である。
また、供給油路73は、少なくとも一部を可撓性管93にて構成したものであればよく、その範囲については任意である。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、油圧ポンプの吐出口から油路切換手段までの油路の少なくとも一部をホース等の可撓性管にて構成し、この可撓性管の外周面を隙間を有して振動抑制管部材で覆ったので、その覆った部分を湾曲させたときに、可撓性管の外周面に振動抑制管部材の内周面が部分的に接触し得る。
油圧ポンプから可撓性管に振動が伝わると、その振動に応じて可撓性管の外周面は微小な伸縮作用をする。伸縮する可撓性管と振動抑制管部材との接触部分には、摩擦が生ずる。接触部分での摩擦により、可撓性管の振動エネルギーを消費することができる。
【0050】
さらに、接触部分は可撓性管の節の役割を果たすことができる。一般に、振動が伝わる細長い部材に節や鍔があると、振幅が小さくなる現象が知られている。接触部分が可撓性管の節の役割を果たすことで、可撓性管の端から端へ伝わる抑制された振動の振幅を更に極めて小さくすることができる。
【0051】
このようにして、油圧ポンプから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、簡単な構成で容易に抑制することができる。
しかも、振動の伝達を抑制するために、油圧ポンプの吐出口から油路切換手段までの油路を長くする必要はない。このため、油路を車両の狭いスペース内に比較的自由に引き回すことができる。従って、油路を車両のスペースの制約を受けることなく通すことができるので、配管設計の自由度を高めることができる。
【0052】
請求項2は、可撓性管の長手途中をエンジンにて保持させ、この保持部分よりも油路切換手段側に振動抑制管部材を設けたので、油圧ポンプの振動の他に、エンジンの振動が保持部分を介して可撓性管に伝わっても、振動抑制管部材にて容易に抑制することができる。
【0053】
請求項3は、可撓性管の長手途中に、油圧ポンプ側の第1保持部並びに油路切換手段側の第2保持部を間隔を開けて設け、これらの第1・第2保持部をエンジンにて保持し、可撓性管のうち第1保持部と第2保持部との間に振動を抑制するための質量体を設けたので、可撓性管のばね定数及び質量体の質量で決定されるダンパ効果によって、第1保持部と第2保持部との間の振動を抑制することができる。従って、油圧ポンプ並びにエンジンから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、より一層抑制することができる。
【0054】
請求項4は、第2保持部と油路切換手段との間、すなわち、エンジンで保持する第1・第2保持部よりも油路切換手段側に振動抑制管部材を設けたので、油圧ポンプ並びにエンジンから可撓性管を介して油路切換手段へ伝わる振動を、容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る油圧パワーステアリング装置の模式図
【図2】本発明に係る油圧パワーステアリング装置の配置図
【図3】本発明に係る油圧ポンプ並びにエンジン周りの平面図
【図4】本発明に係る供給油路の側面図
【図5】本発明に係る供給油路の要部詳細図
【図6】本発明に係る可撓性管並びに振動抑制管部材の湾曲部分の要部詳細図
【図7】本発明に係る供給油路の変形例図
【図8】従来の油圧パワーステアリング装置の配置図
【符号の説明】
10…油圧パワーステアリング装置、21…ステアリングホイール、42…油圧ポンプ、42b…油圧ポンプの吐出口、50…油路切換手段、60…油圧シリンダ、71…油圧ポンプの吐出口から油圧シリンダまでの油路(シリンダ駆動油路)、73…油圧ポンプの吐出口から油路切換手段までの油路(供給油路)、81…車両、85…エンジン、93…可撓性管、93a…可撓性管の外周面、101…保持部分としての第1保持部、102…保持部分としての第2保持部、106…振動抑制管部材、106a…振動抑制管部材の内周面、111…質量体、Gp…隙間。
Claims (4)
- 油圧ポンプの吐出口から油圧シリンダまでの油路に油路切換手段を介在させ、ステアリングホイールの操舵方向並びに操舵力に応じて前記油路切換手段を切換えることで、操舵方向並びに操舵力に応じた補助力を油圧シリンダで発生し、補助力を操舵力に付加するようにした油圧パワーステアリング装置において、
前記油圧ポンプの吐出口から前記油路切換手段までの油路の少なくとも一部をホース等の可撓性管にて構成し、
この可撓性管の外周面を隙間を有して覆うとともにその覆った部分を湾曲させたときに可撓性管の外周面に接触し得る、振動抑制管部材を設けたことを特徴とする油圧パワーステアリング装置。 - 前記可撓性管をエンジンの近傍に通すとともに、可撓性管の長手途中をエンジンにて保持させ、この保持部分よりも前記油路切換手段側に前記振動抑制管部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の油圧パワーステアリング装置。
- 前記可撓性管の長手途中に、前記油圧ポンプ側の第1保持部並びに前記油路切換手段側の第2保持部を間隔を開けて設け、これらの第1・第2保持部をエンジンにて保持し、前記可撓性管のうち前記第1保持部と前記第2保持部との間に振動を抑制する質量体を設けたことを特徴とする請求項1記載の油圧パワーステアリング装置。
- 前記振動抑制管部材を、前記第2保持部と前記油路切換手段との間に設けたことを特徴とする請求項3記載の油圧パワーステアリング装置。
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