JP3909845B2 - 光機能素子の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ光を利用した光情報処理、光加工技術、光通信技術、光計測制御等々の分野で利用する、LiNbO3単結晶基板の分極反転構造を利用して光を制御する光機能素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的な強誘電体単結晶として知られているニオブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶(以下適宜LNと略記する)は、主に表面弾性波素子の基板として使用されている。この結晶は、大口径で組成均質性の高い単結晶が比較的安価で供給可能である。さらに、可視から赤外の広い波長域で透明であり、数十kV/mm程度の高電界を加えることで室温でも強誘電体分極を反転することが可能なことから、近年、分極反転構造を利用した非線形光学素子や電気光学素子など各種光機能素子の基板としても注目されている。
【0003】
特に、近年では、近赤外波長の半導体レーザを非線形光学効果により半波長の青色光に変換する導波路型の光第二高調波発生(SHG)素子の開発が期待されており、なかでも、光ディスクの高密度記録・再生用光源として、LNなどの無機強誘電体単結晶の分極を周期的に反転した構造の素子を用いた波長変換素子は最も良く研究されている。この波長変換素子は疑似位相整合(QuasiPhase Matching; QPM)方式によるもので、基本波と高調波の伝搬定数の差を周期構造で補償して位相整合をとる方式である。
【0004】
この方式では、高い波長変換効率が得られること、出力光の平行ビーム化・回折限界集光が容易であること、適用できる材料や波長に制限がないことなど、多くの優れた特徴を持っている。QPMのための周期構造としては、SHG係数(d33係数)の符号を周期的に反転した構造が高い波長変換効率を得る上で最も有効であり、強誘電体結晶ではd係数の正負は強誘電体分極の極性に対応するので、強誘電分極ドメインを周期的に反転させる構造の形成技術が重要である。
【0005】
この方式を用いて、公知文献(L.E.Myers et al., Optics Letters, 21, p591,1996)にあるように、LN単結晶に約21kV/mmの電界を加え、周期反転構造を作成した、QPM方式によるパラメトリック発振の波長変換素子が報告されている。さらに、公知文献(A.Harada et al., Optics Letters, 22,p805,1997)にあるように、コロナ放電法を用いMgO を添加したLN単結晶に4.75ミクロンの周期で分極反転構造を形成して、波長946nmのレーザ光から473nmの青色SHG光を高効率で変換したSHGレーザについても報告されている。
【0006】
また、電気光学効果を利用した光学素子においては、例えば、公知文献(M. Yamada et al., Appl.Phys.Lett., 69,p3659,1996)によると、強誘電体結晶であるLN単結晶に高電圧を印加することで、結晶中にレンズやプリズム状の分極反転構造を形成し、これを通過したレーザ光を電気光学効果を利用して偏向する光素子やシリンドリカルレンズ、ビームスキャナー、スイッチなどが新しい光素子として注目され、LN単結晶も基板材料として有望とされている。
【0007】
これまでに報告された、強誘電体LN単結晶の分極反転構造を利用した波長変換素子や電気光学素子は、いずれの場合にも基板結晶としては、市販されている無添加またはMgO添加のコングルエント組成のLN単結晶が用いられてきた。
【0008】
この理由は、これまで、入手可能なLN単結晶は、工業的な面から安価で大口径の育成が可能なチョクラルスキー法で育成されたコングルエント組成の結晶に限られているためである。LN結晶では、ストイキオメトリ組成(化学量論組成または以下定比組成とよぶ)とコングルエント組成(一致溶融組成)は一致しないことは、温度-組成比の相関図(相図)から良く知られている。
【0009】
コングルエント組成のみが融液組成と結晶組成とが一致し、結晶全体にわたって均一組成の結晶を育成することが出来る組成であるため、現在、各種用途に製造、使用されているLN単結晶の組成は、Li2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が約0.485(Li/Nbのモル比は約0.94)のコングルエント組成である。
【0010】
このため、従来のコングルエント組成LN単結晶は、Nb成分が過剰であるため、数%に達するNbイオンがLiイオンを置き換えている(アンチサイト欠陥)し、Liイオンサイトにやはり数%の空位欠陥をもたらしている。この影響は表面弾性波素子応用としては深刻でないとしても、光学素子応用には無視することはできない。このため、光機能素子応用への基板として、不定比の欠陥を減らした定比に近い組成を持つ結晶の開発が望まれていた。
【0011】
相図からわかるように、例えば、LN単結晶の場合、Li濃度が定比よりも高い組成の融液から定比に近い組成の結晶が析出できる。しかし、従来から、大口径のLN結晶を工業的に大量生産する手段として使用されているチョクラルスキー法を用いて定比組成結晶を育成しようとした場合には、結晶の析出に伴ってLi成分の過剰分が坩堝内に残されることになり、融液のLiとNbの組成比が徐々に変化するため、育成開始後すぐに融液組成比は共晶点に至ってしまう。このため、結晶の固化率はわずか10%程度に制限され、析出した結晶の品質も光機能素子応用に使用できるものではなかった。
【0012】
本発明者等は、従来の市販されているコングルエント組成のLN結晶と異なる新規物質として、コングルエント組成の不定比欠陥濃度を大幅に低減したLi2O /(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.495〜0.50(Li/Nbのモル比は約0.98〜1.00)の定比組成に近いニオブ酸リチウム単結晶の発明をなし、特許出願した(特開平10-45497号公報)。また、この新規結晶に関して下記のように文献報告した。
【0013】
この不定比欠陥を低減して高品質結晶を開発する手段として、本発明者等は、例えば、公知文献(K. Kitamura et al., Journal of Crystal Growth 第116巻、1992年発行、第327〜332頁、または北村健二他、応用物理、第65巻、第9号1996年発行第931〜935頁)において、原料を連続的に供給しながら育成する方法(以後原料連続供給二重るつぼ法と略記する)を提案している。
【0014】
例えば、定比組成に近いLN単結晶の育成においては、具体的には、育成融液のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率をLi成分の過剰の0.56〜0.60とし、るつぼを二重構造にして内側のるつぼから定比組成に近いLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.498〜0.502(Li/Nbのモル比は約0.99〜1.01)のLN結晶も引き上げることができた。
【0015】
引き上げている結晶の重量を随時測定することで成長レートを求め、そのレートで結晶と同じ定比組成の成分の原料粉末を外るつぼと内るつぼの間に連続的に供給するという方法を用いることで、長尺の結晶育成が可能となり、原料供給量に対して100%の結晶固化率が実現されている。
【0016】
また、本発明者等による最近の公知文献(北村健二他、日本結晶成長学会誌、第25巻、第3号、1998年発行、第A4頁)によれば、上記の定比組成に近い無添加のLN単結晶(Li/Nbモル比で0.98〜1.0)では、分極反転に要する印加電界が従来の1/5程度で済むことを報告した。すなわち、従来のコングルエント組成結晶における数%の不定比欠陥(アンチサイト欠陥や空位欠陥)の存在が、LN結晶が本来有する光学特性や、周期的な分極構造を作成するのに必要な印加電圧を高くしている可能性があることを報告している。
【0017】
さらに、本発明者等による最近の公知文献(Y. Furukawa et al., Journal of Crystal Growth 第211巻、2000年発行、第230〜236頁)によれば、定比組成に近い組成の結晶では、従来のコングルエント組成結晶の耐光損傷性を向上させるために5mol%以上必要とされていたMg等の添加量は1mol%程度の少量の添加でも、十分に耐光損傷性が向上できることを報告している。
【0018】
この場合、MgがLiサイトも置換するのでMgの添加量が増えるに従いLi/Nbモル比は無添加の結晶に較べて小さくなり、得られた結晶のLi/Nbモル比は0.95〜1.0となっている。このように、ストイキオメトリック組成LNはコングルエント組成LNに対し、わずかなモル分率の変化であるが、化学量論比に近づくに従いその結晶特性は大幅に異なる。特に、結晶のLi/Nbのモル比が0.95〜1.01の範囲で従来のコングルエント組成の結晶とは大きく異なる光学特性を有する。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
強誘電体単結晶の基板上に分極反転構造を形成し、分極反転部を通過する光の非線形光学効果や電気光学効果との相互作用を利用した光機能素子を実現する上で最も重要な技術は、数個〜数百個にも及ぶ数ミクロンから数十ミクロンサイズの分極反転構造を精度良くかつ均一に作成することである。
分極反転構造の形成方法として、電子ビーム照射法や電圧印加法がよく知られており一般的によく使用されている。これら光機能素子では分極反転部を光を通過させて使用するために、特に、それぞれの分極反転境界部に光学的歪みがあると素子全体としては非常に大きな光学的な不均一性を引き起こしてしまうため、高効率の素子が実現できなくなる。
【0020】
分極反転境界部には光学的歪みが発生し、10-3〜10-4以上の非常に大きな屈折率変化が生じる。これが通過レーザ光の散乱をもたらし、これによって素子動作も理想条件からずれるため素子効率が低下するという大きな問題があることが、公知例(V.Gopalan et al., J.Appl. Phys.第80巻, 1996年, 6104頁)において指摘されている。
【0021】
このため、前記の公知文献(L.E.Myers et al., Optics Letters, 21, p591,1996)にあるように、LN単結晶に約21kV/mmの電界を加え、周期反転構造を作成した後に、結晶を120℃で1時間加熱し光学的歪みを緩和させなければならないことが報告されている。
【0022】
また、前記公知文献(M. Yamada et al., Appl.Phys.Lett., 69,p3659,1996)によると、強誘電体結晶であるLN単結晶に高電圧を印加することで、結晶中にレンズやプリズム状の分極反転構造を形成した光学素子においても、電圧印加による分極反転構造の形成後に熱処理が必要で、この場合には、結晶基板を500℃に大気中で加熱し5時間も熱処理することが、分極反転部の光学的歪みを除去するために不可欠であることが報告されている。
【0023】
従来の電圧印加法では、通常、zカットのコングルエント組成のLN単結晶を用い、結晶の片面に周期電極を、反対面に一様電極を設けて、試料を室温または200℃程度までに加熱し、電極を通じてパルス電圧を印加することで周期電極直下の部分をz軸方位に向けて分極反転させている。従来のコングルエント組成のLN単結晶の場合には、分極反転に必要な印加電界は21kV/mm以上と高電圧が必要とされている。
【0024】
このような分極反転技術は、キュリー温度以下の温度で強制的に分極の方向、すなわち結晶中のNbやLiイオンの位置を変えるわけである。LN単結晶において分極反転に必要とされる高電界が、光学的歪みを引き起こす直接の原因であるとは必ずしも言えないことがわかっている。
【0025】
すなわち、前記公知文献(A. Harada et al., Optics Letters, 22,p805,1997)において、MgO を5モル%添加したコングルエント組成のLN単結晶では分極反転に必要とされる電界が通常のコングルエント組成より約1/5程度に小さくなるが、この材料を用いた場合でも、コロナ放電法を用いてMgOを添加したLN単結晶に4.75ミクロン周期で分極反転構造を形成したSHGレーザを作成する場合には、光学的歪みを除去するために約500℃で3時間加熱することが必要とされることが報告されている。
【0026】
このような従来のコングルエント組成LN結晶を基板に用い、基板上に分極反転構造を形成した素子の分極反転境界を偏光顕微鏡で観察すると、図1の(a) に様子を示したように大きな光学的歪みがすべての分極反転境界部において観察された。さらに分極反転部を横切るように使用するレーザ光を通過させると数%から十数%もの非常に大きな光の伝搬ロスが観察された。このような分極反転境界における光学的歪みの発生は、大きな光の伝搬ロスの問題だけではなく、この光学的歪みを緩和するための光機能素子の製作における余分な熱処理工程を必要とさせることにもなる。
【0027】
さらに大きな問題は、歪み除去のための熱処理中に、単一分極基板の一部に電圧印加法などで一旦形成された数ミクロンサイズの分極反転部で、焦電効果が発生し結晶が破壊したり、反転分極のサイズや位置がほんのわずかであるが変化させることである。この変化は高効率の素子を再現性良く作成するうえで大きな問題となった。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記従来の問題を解決するため、強誘電体単結晶としてLN単結晶の特性究明を鋭意継続していたところ、定比組成に近い組成のLN単結晶は、分極反転構造を形成しても分極反転境界部での光学的歪や光の伝搬ロスが非常に小さく、これを基板に用いることで分極反転構造を持つ光機能素子として優れた特性を有することを見いだした。
【0029】
すなわち、本発明は、(1)強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子の製造方法であって、該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることにより、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、前記分極反転構造を形成直後の該分極反転部を通過させた該光の伝搬ロスを2%以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記2%以下の値をさらに低減させることを特徴とする光機能素子の製造方法、である。
【0030】
また、本発明は、(2)強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子の製造方法であって、該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることにより、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、分極反転境界部の屈折率変化が1×10 −4 以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記1×10 −4 以下の値をさらに低減させることを特徴とする光機能素子の製造方法、である。
【0031】
また、本発明は、(3)両面光学研磨された厚み0.30mm〜3.0mmの強誘電体単結晶基板の一部に、3〜4kV/mmの電界を印加する電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、非線形光学効果を利用して周期的反転分極構造を持つ単結晶内に入射したレーザの波長変換を行う光波長変換素子の製造方法であって、該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることにより、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、該分極反転構造を形成直後の分極反転部を通過させた光の伝搬ロスが2%以下、かつ、分極反転境界部の屈折率変化が1×10 −4 以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記2%以下の値、かつ、前記1×10 −4 以下の値をさらに低減させることを特徴とするレーザの波長変換素子の製造方法、である。
【0032】
また、本発明は、(4)両面光学研磨された厚み0.20mm〜2.0mmの強誘電体単結晶基板の一部に、2.5〜5kV/mmのパルス状の電圧を印加する電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、電気光学効果を利用してプリズムまたはレンズ形状に反転した分極構造を持つ単結晶内に入射されたレーザ光の偏向または集光を制御する光機能素子の製造方法であって、該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることによって、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施していない、または、100℃以下の温度で熱処理を施さないで、該分極反転構造を形成直後の分極反転部を通過させた光の伝搬ロスが2%以下、かつ、分極反転境界部の屈折率変化が1×10 −4 以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記2%以下の値、かつ、前記1×10 −4 以下の値をさらに低減させることを特徴とするレーザ光の偏向または集光を制御する光機能素子の製造方法、である。
【0033】
また、本発明は、(5)前記強誘電体単結晶基板は、原料連続供給二重るつぼで育成されることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法、である。
【0034】
また、本発明は、(6)前記強誘電体単結晶基板は、原料連続供給二重るつぼで育成したMg、Zn、Sc、Inから選ばれる少なくとも一つの元素を0.1〜4.8モル%ドーピングして含有するLi/Nbのモル比が0.95〜1.00の範囲のLiNbO結晶であることを特徴とする上記(5)に記載の方法、である。
【0035】
本発明者らは、強誘電体単結晶の分極反転構造を利用した光機能素子における素子性能や分極反転制御性の問題点は単結晶基板にあることを突き止めた。本発明は、強誘電体単結晶の分極反転構造を利用した光機能素子用途として、ある組成範囲にあるLN結晶単結晶基板に着目した点にある。Li/Nbのモル比が0.95〜1.01の範囲であるニオブ酸リチウム単結晶が従来の材料の特性と異なり、分極反転構造を利用した光機能素子材料の品質を大幅に向上させることが可能になった。これを利用することで、光機能素子の特性も飛躍的に向上することが明らかになった。
【0036】
今回見いだされた分極反転特性についても、このモル分率を有するLN単結晶特有の効果である。定比組成に近いLN単結晶は、原料連続供給二重坩堝法によって、最近ようやく光学的に均質な基板作製が可能になった結晶であり、その光学特性については、未だ総てが明らかにされていない。
【0037】
特にこれらの結晶の分極反転境界の光学特性については、本発明者らが初めて明らかにしたものである。また、この特性を利用した光機能素子特性の大幅な向上については、さらに未開拓な分野であった。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に本発明の光機能素子として用いられるLN単結晶の製造方法と物性を示す。市販の高純度Li2O、Nb2O5の原料粉末を準備し、Li2O:Nb2O5の比が0.54:0.46〜0.60:0.40のLi成分過剰原料を混合した。また、Li2O:Nb2O5=0.50:0.50の定比組成原料を混合した。次に、1ton/cm2の静水圧でラバープレス成形し、それぞれを約1050℃の大気中で焼結し原料棒を作成した。また、混合済みの定比組成原料を連続供給用原料として、約1150℃の大気中で焼結し、粉砕し、大きさが50ミクロン以上500ミクロンのサイズの範囲で分級した。
【0039】
次に、二重るつぼ法による単結晶育成に際して、作成したLi成分過剰原料からなる原料棒を内側および外側るつぼに予め充填し、次にるつぼを加熱してLi成分過剰な融液を作成した。Mg添加の効果を確認する実験では、この充填の際に、市販の高純度MgCO3を内側および外側るつぼに予め0.1〜4.8mol%の範囲で充填した。
【0040】
次に、原料連続供給型二重坩堝法を用いて定比組成に近いLN単結晶の育成を行った。二重るつぼ内のLi成分過剰組成の融液に種結晶を漬け、定比組成に近い、すなわち、不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得た。不定比欠陥の密度や構造を精密に制御するために、結晶化した成長量に見合った量のLi2O/(Nb2O5+Li2O)のモル分率が0.50の化学量論組成比の原料を外側坩堝に自動的に供給しながら結晶を育成した。
【0041】
ここで、育成に用いた坩堝は白金でできており、外側るつぼは直径125mm高さ70mm、内側るつぼは直径85mm高さ90mmとした。この場合にも融液組成を均一化させるために育成に際して坩堝を3rpmの速度で種結晶と反対方向に回転させた。育成条件は結晶回転速度を15rpm、引き上げ速度は0.5mm/hで一定とし、育成雰囲気を大気中とした。約1週間の育成により直径約49〜52mm、長さ約65〜75mmの大きさで、クラックのない無色透明のLN結晶体を得た。
【0042】
得られた全ての結晶に関して、結晶の上部、中心、下部の3ヶ所から試料を切り出しLi/Nbモル比を化学分析より求めた。化学分析では組成比の絶対値を精度良く求めるために、非常に慎重に組成を分析した。分析は同一試料について数カ所の異なる分析装置を用いて評価した結果の平均値として求めた。その結果、LN単結晶の場合、定比に最も近い組成ではLi/Nbモル比が0.99〜1.01であった。
【0043】
一方、Mgを添加した結晶ではMgがLiやNbサイトを置換していくので、Mgの添加量が増えるに従いLi/Nbモル比は変化し、得られた結晶のLi/Nbモル比は0.95より大きく1.0より小さい範囲にあった。Mg以外にZn、Sc、Inを添加した場合には元素の種類によって結晶内での偏析係数は異なるため、添加量に対する結晶内含有量は異なるものの、いずれの添加元素においても、添加元素がLiやNbサイトを置換していくので、添加元素の添加量が増えるに従いLi/Nbモル比は変化し、得られた結晶のLi/Nbモル比は0.95より大きく1.0より小さい範囲にあった。
【0044】
一方、キュリー温度測定による組成評価においては、予め定比組成に調合し1150℃で焼結した定比組成の標準焼結試料のキュリー温度は1200℃であることを確認し、この値と上記原料連続供給二重るつぼで育成したLN単結晶のキュリー温度を比較した。キュリー温度測定によるLi/Nbモル比の評価結果も化学分析の結果とほぼ一致し、また、1本の結晶内での結晶組成の均質性も極めて良いことを確認した。
【0045】
次に、単一分域化状態にあるLN単結晶から大きさが35mm×35mm×40mmのブロック状試料を切り出し、メカノケミカル研磨により表面研磨を行った。試料の光学的均質性をマッハツエンダー干渉法により評価したところ、マクロな欠陥や光学的に不均一な部分は見られず、試料内の屈折率変化は1×10-5以下が得られ光学的均質性に優れていることが確認された。
【0046】
従来から市販されてきたコングルエント組成のLN単結晶基板は単結晶育成技術の制約から多量のNb成分が過剰のものである。Li/Nbモル比が0.94であるため数%にもおよぶ多量の不定比欠陥を含んでいる。一方、本発明者等は、原料連続供給二重坩堝法によってLi成分過剰の融液から結晶を育成し、より定比組成に近いLi/Nbモル比が0.95〜1.01のLN単結晶が育成でき、Nb成分過剰による不定比欠陥濃度を低減した単結晶が光機能素子基板として優れた特性を示すことを初めて明らかにしたものである。
【0047】
すなわち、従来の結晶における過剰なNbにより形成される多量の不定比欠陥が、分極反転構造を利用する光機能素子応用にとって大きな問題を引き起こすことを見い出した。この欠陥の存在によって、分極反転に必要な印加電圧と自発分極の関係を示すヒステリシス曲線は非対称的になり、分極反転には数十kV/mmの高電界が必要とされ、しかも分極反転を行うと分極反転境界部には大きな光学的歪みと光の伝搬ロスが導入されることが分かった。さらに、不定比欠陥が多く結晶内部で欠陥が不均一に分布しており欠陥濃度が高いような箇所では分極反転がピンニングされやすいために、より大きな光学的歪みが蓄積され結晶の破壊の原因になることが明らかになった。
【0048】
図1は、LN単結晶を基板に用いて、両面光学研磨された厚み0.5mmの基板1、4上に電圧印加法により周期的分極反転部2、5を形成した後に、分極反転部2、5を偏光顕微鏡で詳細に観察した様子の一例を示している。分極反転の周期は約3〜4μmとし、波長850nm帯の基本波に対して擬似位相整合するように設計した。
【0049】
図1(a)は、従来のコングルエント組成のLN単結晶を基板に用いた場合の様子である。図1 (b)は、基板に上述した定比組成に近い組成のLN単結晶を用いた場合の様子である。両者の違いは明らかで、図1(a)では、分極反転部に非常に大きな光学的歪みがあるのが観察されたのに対し、図1(b)では、偏光顕微鏡下で光は均一に透過し光学的歪みは観察されなかった。
【0050】
さらに、結晶基板にさまざまな形状と大きさの分極反転構造を形成し、基板の違いによる分極反転境界部での光学的歪みを観察し、レーザ干渉法により分極反転境界での屈折率の大きさを評価すると従来結晶では8×10-3〜3×10-4と非常に大きな屈折率変化が観察された。一方、本発明での結晶基板を用いた光機能素子では、熱処理を行わなくても光学的歪みは屈折率変化で1×10-4以下が得られることが確認された。
【0051】
さらに図2は、室温〜200℃付近の温度で電子ビーム照射法および電圧印加法で周期的分極反転構造を形成した、長さ5mm、厚さ0.5mmの各種組成のLN単結晶の両端面を鏡面研磨し、分極反転部を伝搬していく光が結晶内部で散乱や光学的歪みなどで引き起こされる光の伝搬ロスの大きさを評価した結果を示したグラフである。
【0052】
同一組成の試料であっても、分極反転構造の作成時の印加電圧、電極の形状、電極材質、温度などによって光の伝搬ロスにはばらつきが見られた。Li/Nbモル比が0.94のコングルエント組成結晶では、光の伝搬ロスは4〜8%と非常に大きいことが分かった。これに対して、Li/Nbモル比が0.98〜1.01と定比に近い無添加のLN単結晶や、3モル%程度のMgOを含むLi/Nbモル比0.95のLN単結晶など多くの結晶で光の伝搬ロスが2%以下が得られ、中には0.1%以下の光の伝搬ロスの小さい良質な分極反転構造を形成できる結晶も得られた。
【0053】
さらに図3は、室温付近の温度で電子ビーム照射法および電圧印加法で周期的分極反転構造を形成した、長さ5mm、厚さ0.5mmの結晶の分極反転部を通過していく光の伝搬ロスが熱処理によってどれだけ低減できるかを示したグラフである。
【0054】
従来のコングルエント組成結晶を用いると分極反転構造の形成後は、散乱や光学歪みなどの影響により光の伝搬ロスは非常に大きく、コングルエントLN結晶では、かなり高温度に基板を加熱してやらないと光の伝搬ロスが下がらない結果が得られた。これに対して、本発明の定比組成に近いLN単結晶を基板に用いた場合には高温での熱処理をしなくても光の伝搬ロスは小さく光機能素子の性能向上が期待できることが明らかであるが、熱処理をする場合、図3に示すように、光の伝搬ロスをさらに小さくする効果が認められる 100 ℃以下の温度で熱処理を施すだけで十分である。
【0055】
LN単結晶では、キュリー温度より高温の常誘電相において、LiとNbイオンは電気的中性位置に配置しているが、キュリー温度以下の強誘電相ではLiおよびNbイオンが+zもしくは-z方向に少しずれる。このイオンのずれの方向によってドメインの正負の分極方向が決定されている。分極反転構造を持つ光機能素子では、高電界を加えることでこのイオンを低温で強制的に移動させることが必要になる。
【0056】
一致溶融組成の不定比欠陥が多い場合にはLiサイトに入った過剰のNbを移動させることは容易ではないため、分極反転には大きな印加電圧が必要となる。さらに、高電圧を印加して強制的に分極を反転させるわけであるから、分極反転境界部には大きな光学的歪みが導入されると考えられる。現状では、本発明で見られた光学的歪みや光の伝搬ロスの低減の原因について、結晶の反転電圧や内部電界の大きさだけでは十分な説明ができているわけではない。
【0057】
しかしながら、不定比欠陥を多量に含む従来のコングルエント組成結晶よりも、不定比欠陥を1桁以上低減した定比組成に近いLN単結晶が分極反転素子の基板として優れることは明らかである。このことから、強誘電体単結晶基板として定比組成に近い組成のLN単結晶を用いることで、分極反転構造を形成しても分極反転境界部での光学的歪みを示さず、分極反転境界部での光学的歪みを除去するための加熱工程なしに、分極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以下が得られるため、分極反転制御性に優れ、レーザ光の散乱がなく光の伝搬ロスが小さく光機能素子として優れた特性を有する。
【0058】
【実施例】
以下実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
LN単結晶を光波長変換素子に適用した場合の特性について説明する。図4は定比組成に近い単結晶(Li/Nbモル比が0.98〜1.01の無添加LN単結晶)を基板に用いて、基板上に周期的分極反転構造を形成したQPMデバイスの概略構成図である。両面光学研磨された厚み0.30mm〜3.0mmの基板6の+z面に櫛形電極と平行電極をパターニングした。周期は約3.2μmで、波長約850nmの基本波に対して擬似位相整合するように設計された。上記組成の結晶基板の−z面は、電極を全面に蒸着した。櫛形電極と平行電極の間、および櫛形電極と−z面の裏面電極に、それぞれ3〜4kV/mm程度の従来のコングルエント結晶より1/5程度の低い電界を印加して、絶縁破壊なしに周期的分極反転幅8で分極反転領域を形成した。
【0059】
本実施例においては周期状分極反転構造の分極反転部を偏光顕微鏡で詳細に観察したが光学的歪みは見られなかった。また、分極反転部に波長可変レーザ9からレンズ10を介して照射したレーザ光を通過させたが、レーザ光の散乱は全く観察されず、このため、熱処理は全く不要で、しかも高効率の波長変換が得られた。用いたLN結晶は予め分極状態は非常に均一化されている。結晶に周期状の分極反転構造を形成する際にも、定比組成に近いLN単結晶においては、結晶の均一性に優れているため、均一な分極反転構造の形成が可能になる。
【0060】
このように、従来のコングルエント組成のLN結晶を基板として用いたときに見られた問題は解決されていた。さらに、分極反転構造を形成した後、結晶を取り外し、断面となる結晶のy面を研摩、フッ酸・硝酸の混合液でエッチングして、分極の反転の様子を調べた。周期分極反転幅比その分極の形は印加電圧のパルス幅や電流を最適化することで、試料全体にわたり周期分極の分極反転幅比を理想的な比に精度よく作成することができていることが確認された。
【0061】
周期分極反転構造の形成は厚みが1mm以上の試料についても同様に高精度に形成が可能であった。しかも光学的歪みは見られず、伝搬損失も0.2%以下と非常に少なかった。これらの厚い試料では、特に、分極反転構造の形成後の熱処理が不要なことは大きなメリットとなった。これは、1mm以上の厚さを持つ試料では、部分的な結晶のマクロな欠陥や、電極の不均一、熱的な不均一があると、光学的歪みを除去する熱処理中に分極反転境界部が容易に移動したり、焦電効果で結晶が破壊してしまう問題があったからである。このため、本実施例で作成された光学的均一性と分極反転制御性に優れた光機能素子は、特に光の伝搬ロスの小さなことが要求される内部共振器型の波長変換素子として最適であると考えられる。
【0062】
QPM-SHGデバイスの特性の評価は基本波として、波長可変高出力Tiサファイヤレーザ(波長850nm)を用いて行い、高効率の光波長変換が確認できた。その様子を図5に示す。従来のコングルエント組成LN結晶を基板に用いた場合、熱処理前ではほとんど効率良い波長変換は得られない。熱処理により波長変換効率が改善される様子が見られたが、本発明の光素子ではより高い波長変換効率が得られている。
【0063】
この理由は、光の伝搬ロスが小さいことが大きな理由として考えられる。さらに、基板の非線形光学定数が大きいことに加え、光学的歪みがなく、かつ熱処理不要のため分極反転構造の完全性がより高いことも高性能な光機能素子が得られるのに寄与していると考えられる。
【0064】
また、ここでは、850nm付近の近赤外光の基本波に対して青色光を発生するQPM-SHG素子を作成した実施例に付いて詳しく述べたが、本発明によれば、基本波がこの二つの波長に限ることはなく、LN単結晶が透明でかつ位相整合が可能である波長域に関して適用することが可能である。
【0065】
さらに、LN単結晶の分極構造を周期的に反転させ、可視から近赤外域の波長を持った入射レーザの波長を短波長化あるいは長波長化させる本発明の光機能素子は第二高調波発生素子に限らず、光パラメトリック発振素子や差周波、和周波発生素子をはじめ、光スイッチや光変調器など分極反転構造を利用する高性能光素子を実現することが可能である。その応用も、さらにはリモートセンシング、ガス検知をはじめとする応用分野や、波長ミキサーやパルス成形素子などの光通信分野への適用も可能である。
【0066】
ここでは、強誘電体単結晶基板の一部にキュリー温度以下の温度において分極反転構造を形成する実施例として、電圧印加法を用いたLN単結晶の光機能素子について説明したが、キュリー温度以下の温度における分極反転構造を形成する方法として、電子ビーム走査照射法であっても同様の効果が得られる。
【0067】
実施例2
定比組成に近い (Li/Nbモル比が0.98〜1.01の無添加LN単結晶)を基板に用いて、レンズやプリズム状の分極反転構造を作製し電気光学効果を利用した偏向素子や、シリンドリカルレンズ、ビームスキャナー、スイッチなどの光素子を製作した。
【0068】
図6および図7は、それぞれレンズ14およびプリズム19状の分極反転構造を作成し、作成した電気光学効果を利用して単結晶内に入射されたレーザ光を制御するフォーカシングおよびスキャンニングを行う光機能素子の概略構成図である。直径1.5インチ、厚み0.2〜2.0mm、両面研摩されたz-カットの上述したLN単結晶11、16を準備し、両z面に厚さ約200nmのAl電極をスパッタリングにより形成し、リソグラフを用いて、レンズ14やプリズム19状パターンを形成した。その後、+z面にパルス状の印加電圧15、20を約2.5〜5KV/mmで印加し分極を反転させた。
【0069】
本実施例においては分極反転部を偏光顕微鏡で詳細に観察したが光学的歪みは見られなかった。また、半導体レーザ12、17により分極反転領域13、18にレーザ光を通過させたが、レーザ光の散乱は全く観察されず、このため、熱処理は全く不要で、しかも光機能素子が得られた。用いたLN結晶は予め分極状態は非常に均一化されている。さらに結晶の端面を鏡面研磨仕上げを行い、レーザ光の入出射面とした。
【0070】
試作した分極反転構造による屈折率の反転構造を形成したLN単結晶の電気光学効果を利用した光素子の性能は、レンズやプリズム状の分極反転構造の設計や分極反転構造の作製プロセスの精度、および材料の持つ電気光学定数の大きさで決定された。本実施例のレンズやプリズム状パターンの分極反転構造で、特筆すべきことは分極反転境での光の伝搬ロスと光学的歪みがなく、かつ分極反転性の制御が非常に容易であることから良好な素子特性が得られ、光機能素子の駆動効率が向上したことである。
【0071】
従来の一致溶融組成のLN結晶では反転周期が短くなり反転構造が複雑になると、精度の良いレンズやプリズム状の分極反転構造の作製は困難で、かつ熱処理が必要であった。これに対し、定比組成に近いLN単結晶を、分極反転構造を利用した光機能素子用途として用いることにより、光機能素子の高精度な分極反転構造の形成が可能であった。
【0072】
さらに、本結晶は一致溶融組成の結晶よりも大きな電気光学定数r33を有しているので、より小さな動作電圧でより優れたデバイス性能が得られた。例えば偏向素子の場合には約600V/mmの電界で約6℃と大きな偏向角が得られた。また、約100V/mm近傍で動作するレンズや、約500V/mmでのスイッチング動作も得られた。
【0073】
ここでは、強誘電体単結晶基板の一部にキュリー温度以下の温度において分極反転構造を形成する実施例として、電圧印加法を用いたLN単結晶の光機能素子について説明したが、キュリー温度以下の温度における分極反転構造を形成する方法として、電子ビーム走査照射法であっても同様の効果が得られる。
【0074】
【発明の効果】
以上詳しく述べたように、本発明によれば、強誘電体単結晶基板の一部に、キュリー温度以下の温度において、電子ビーム走査照射法、または電圧印加法を用いて分極反転構造を形成し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子において、強誘電体単結晶としてLi/Nbのモル比が0.95〜1.01の範囲の定比組成に近い組成のLN単結晶を用いることによって、2%以下の所望の値の光の伝搬ロスが得られ、自発分極の方向反転に伴う分極反転境界部での光学的歪みを除去するための加熱工程なしに、分極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以下を得ることができるため、分域境界で歪みがなく、かつ光学的均質性と分極反転制御性とに優れた素子が実現できるため、光機能素子特性の大幅な向上が期待できる。
【0075】
これにより、本発明は、レーザ光を利用した光情報処理、光加工技術、光通信技術、光計測制御等々の分野での光機能素子の実用化を促進させる大きな効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【図1】LN単結晶基板に周期分極反転構造を形成後、+z面を透過偏光観察した外観図であり、(a)は、従来のコングルエント組成LN結晶基板、(b)は、定比組成に近いLN結晶基板を示す。
【図2】結晶組成と分極反転部を伝搬した結晶内部の光の伝搬ロスの関係を示したグラフ。
【図3】熱処理温度と分極反転部を通過した結晶内部の光の伝搬ロスの関係を示したグラフ。
【図4】本発明の一実施例の光波長変換素子を示す概念図。
【図5】基本入力光とSHG光出力の関係を示したグラフ。
【図6】本発明の一実施例の集光素子を示す概念図。
【図7】本発明の一実施例の偏向素子を示す概念図。
【符号の説明】
1.コングルエント組成LN単結晶基板+z面
2.周期的分極反転部
3.光学歪み
4.定比組成に近いLN単結晶基板+z面
5.周期的分極反転部
6.定比組成に近いLN単結晶基板
7.分極反転領域
8.周期的分極反転幅
9.波長可変レーザ
10. レンズ
11. 定比組成に近いLN単結晶基板
12. 半導体レーザ
13. 分極反転領域
14. レンズ
15. 印加電圧
16. 定比組成に近いLN単結晶基板
17. 半導体レーザ
18. 分極反転領域
19. プリズム
20. 印加電圧

Claims (6)

  1. 強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子の製造方法であって、
    該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることにより、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、前記分極反転構造を形成直後の該分極反転部を通過させた該光の伝搬ロスを2%以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記2%以下の値をさらに低減させることを特徴とする光機能素子の製造方法。
  2. 強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子の製造方法であって、
    該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることにより、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、分極反転境界部の屈折率変化が1×10 −4 以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記1×10 −4 以下の値をさらに低減させることを特徴とする光機能素子の製造方法。
  3. 両面光学研磨された厚み0.30mm〜3.0mmの強誘電体単結晶基板の一部に、3〜4kV/mmの電界を印加する電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、非線形光学効果を利用して周期的反転分極構造を持つ単結晶内に入射したレーザの波長変換を行う光波長変換素子の製造方法であって、
    該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることにより、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、該分極反転構造を形成直後の分極反転部を通過させた光の伝搬ロスが2%以下、かつ、分極反転境界部の屈折率変化が1×10 −4 以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記2%以下の値、かつ、前記1×10 −4 以下の値をさらに低減させることを特徴とするレーザの波長変換素子の製造方法。
  4. 両面光学研磨された厚み0.20mm〜2.0mmの強誘電体単結晶基板の一部に、2.5〜5kV/mmのパルス状の電圧を印加する電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、電気光学効果を利用してプリズムまたはレンズ形状に反転した分極構造を持つ単結晶内に入射されたレーザ光の偏向または集光を制御する光機能素子の製造方法であって、
    該単結晶としてLiNbO結晶を用い、該LiNbO結晶のLi/Nbのモル比を0.95〜1.01の範囲とすることによって、該分極反転構造を形成した後の該LiNbO結晶の光学的歪みを緩和するための熱処理を施さないで、該分極反転構造を形成直後の分極反転部を通過させた光の伝搬ロスが2%以下、かつ、分極反転境界部の屈折率変化が1×10 −4 以下の所望の値まで低減させるか、または、該分極反転構造を形成した後に100℃以下の温度で前記熱処理を施すだけで、前記2%以下の値、かつ、前記1×10 −4 以下の値をさらに低減させることを特徴とするレーザ光の偏向または集光を制御する光機能素子の製造方法。
  5. 前記強誘電体単結晶基板は、原料連続供給二重るつぼで育成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記強誘電体単結晶基板は、原料連続供給二重るつぼで育成したMg、Zn、Sc、Inから選ばれる少なくとも一つの元素を0.1〜4.8モル%ドーピングして含有するLi/Nbのモル比が0.95〜1.00の範囲のLiNbO結晶であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
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