JP3909821B2 - 電気泳動表示装置 - Google Patents

電気泳動表示装置

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気泳動表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
低消費電力化、あるいは目への負担軽減などの観点から反射型表示装置への期待が高まっている。これまでに、反射型表示装置の一つとして例えば米国特許3,668,106号に記載されているような電気泳動表示装置が知られている。この電気泳動表示装置は、帯電した電気泳動粒子および絶縁性液体からなる分散液を収納するセルと、このセルを挟んで対峙する一組の電極とを有し、この電極を介して分散液に電場を印加することによって、電気泳動粒子をその帯電極性と逆極性の電極上に移動させて表示を行うものである。
【0003】
電気泳動粒子の対比色は、色素を溶解させた前述の絶縁性液体が担っている。より詳細には、電気泳動粒子が観測者に近い第1の電極の表面に付着する場合は、電気泳動粒子の色が観測され、一方、電気泳動粒子が観測者から遠い第2の電極の表面に付着する場合は、電気泳動粒子の色は絶縁性液体に隠蔽されると共に絶縁性液体の色が観測され、1セルで2色を選択表示するものである。このような電気泳動装置は例えば、広視野角、高コントラスト、低消費電力という利点を備えている。
【0004】
一方、電気泳動表示装置を用いてカラー画像を表示する試みが為されている。
【0005】
例えばUSP6,017,584号には、同極性に帯電し、色毎に帯電量の異なる3種類の電気泳動粒子を分散させたセルを1画素とし、各電気泳動粒子の電気泳動速度の違いを利用して、セルの最観測面側に所望の色の電気泳動粒子を付着させる技術が開示されている。しかしながら、各色の電気泳動粒子には帯電量分布が存在するため、全ての電気泳動粒子を色毎に制御することは現実的には困難であり、その結果混色が発生し、鮮明な色を表示することが困難である。
【0006】
また、特開2000−35769号公報に記載された表示装置では、絶縁性液体の色がイエローのセル、マゼンタのセル、シアンのセルそれぞれに白色の電気泳動粒子を分散させており、この3つのセルを1画素として使用している。
【0007】
この場合、画素に白色を表示する場合には各セルに白を表示させ、所望の色を表示させる場合には所定のセルのみ絶縁性液体の色を表示させ他のセルには白を表示させる。この表示装置では1セル内での混色を防止することができる。
【0008】
しかしながら、このセルで黒を表示する場合には、3セルに絶縁性液体の色を表示させ、減法混色により黒を表示するため黒の色再現性は低いという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、白表示、色表示が可能な電気泳動表示装置で黒表示を行うと黒の色再現性が悪かった。
【0010】
本発明は、白、黒の色再現性が良好で、カラー画像の表示も可能な電気泳動表示装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気泳動表示装置は、第1基板表面に2次元に配列した複数の第1電極と、第2基板表面に形成され、前記第1電極にそれぞれ対向して配列した複数の第2電極と、前記第1基板および前記第2基板の間に前記第1電極に対応して2次元に配列され、正帯電した第1電気泳動粒子及び負帯電した第2電気泳動粒子とが分散した分散液を保持する複数の分散液保持領域と、前記分散液保持領域間に形成された第3電極と、前記各電極に、画素信号に応じて電圧を供給する電圧制御部とを有し、前記電圧制御部は、前記第1電極に供給する電圧をV1、前記第2電極に供給する電圧をV2、前記第3電極に供給する電圧V3とした時、V1>V3>V2を満たす電圧を供給することで前記正帯電した第1電気泳動粒子の色を表示する第1状態、V2>V3>V1を満たす電圧を供給することで前記負帯電した第2電気泳動粒子の色を表示する第2状態、V1>V3、V2>V3を満たす電圧を供給することで前記分散液の色を表示する第3状態、V1<V3、V2<V3を満たす電圧を供給することで前記分散液の色を表示する第4状態間を、前記第1状態から前記第2状態又は前記第3状態、前記第2状態から前記第1状態又は前記第4状態、前記第3状態から前記第1状態又は前記第2状態、前記第4状態から前記第1状態又は前記第2状態に、それぞれ駆動させることで色表示を変化させることを特徴とする。
【0013】
前記電圧V3は定電圧であることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の電気泳動表示装置を示す図であり、(a)はその一部を分割して示した斜視図、(b)は層構造を具体的に示す断面図である。
【0016】
下部基板1上には複数の下部電極2(2a、2b、2c)が形成されており、上部基板3上には上部電極4(4a、4b、4c)が形成されている。下部基板1と上部基板3とは、それぞれの下部電極2とそれぞれの上部電極4とが対向するように配置されている。下部基板1および上部基板3表面には、さらに誘電体層5が形成されている。
【0017】
なお、ここでは、上部基板3側を電気泳動表示装置の観測面としているため、上部基板3および上部電極4は透光性の材料を使用している。
【0018】
下部基板1の下部電極2が形成されていない領域及び上部基板3の上部電極4が形成されていない領域には支持壁6が形成されており、この支持壁6に支持されて側部電極7が配置されている。側部電極7は、上部電極と下部電極との対向部分に開口が形成された共通電極である。
【0019】
そして、対向する電極間、例えば下部電極2aと上部電極4aの間、下部電極2bと上部電極4bの間、下部電極2cと上部電極4cの間には、一対の誘電体層5及び支持壁6で形成される分散液保持領域(以下、セルと呼ぶ)が形成される。したがって、下部基板1と上部基板3との間には、下部電極2に対応する2次元に配列された複数のセルが形成される。
【0020】
各セルには、絶縁性分散媒10中に正帯電した白の電気泳動粒子9および負帯電した黒の電気泳動粒子8を分散させた分散液11が保持される。また、絶縁性分散媒10は色素が溶解された着色分散媒であり、隣接する3つのセルにはイエロー、シアン、マゼンタの異なる色の絶縁性分散媒がそれぞれ保持され、本実施形態ではこの3つのセルを1画素としている。
【0021】
側部電極7には定電圧を供給する電源(図示せず)が接続されている。下部電極2a、2b、2c、上部電極4a、4bおよび4cにはそれぞれ個別に制御された電圧を印加する駆動回路(図示せず)が接続されており、上部電極および下部電極には画像信号に応じた制御電圧が供給される。
【0022】
下部基板1および上部基板3は、その表面に形成される複数の下部電極2あるいは上部電極4間を絶縁するように、少なくともその表面が絶縁性であるものが使用される。また、下部基板1あるいは上部基板3のうち電気泳動表示装置の観測面側に配置される基板は透光性の材料が使用される。
【0023】
下部電極2及び上部電極4のうち観測面側に配置される電極は、透光性の導電性材料が使用され、例えばITO層や、膜厚1μm以下のSnO2などの導電層が使用される。他方の電極は導電性材料であれば特に制限されずに用いることができる。
【0024】
側部電極7も導電性材料であれば特に制限されずに用いることができる。また、図1では支持壁6と同形状の側部電極7を示したが、各セルに隣接して少なくとも1つの側部電極が配置されていれば、特にその形状は制限されない。
【0025】
支持壁6は側部電極7を支持すると共に、隣接するセル間での分散液11の移動を防止するためのものである。通常、誘電体材料が使用され、また、電極を保持するための強度を付加するために、幅5μm〜50μm程度のものを形成する。
【0026】
誘電体層5は、支持壁6と共にセルを形成する材料である。誘電体層5を形成することで、電気泳動粒子が下部電極2あるいは上部電極4に不可逆的に付着するのを防止することができ、特に観測面側に誘電体層5を配置することが有効である。特にフッ素樹脂等の電気泳動粒子との付着性の低い材料を使用することが望ましい。その膜厚は0.1μm〜5μm程度にすることが好ましい。膜厚が5μmよりも大きいと表示層にかかる電界が弱くなる恐れがあり、0.1μmよりも小さいと均一な誘電体層を形成することが困難になる。また、誘電体層5を形成しない場合には、支持壁6は直接下部基板1および上部基板2に形成され、支持壁6と両基板とでセルは形成される。
【0027】
セルのサイズは、通常10μm×10μm×10μm〜300μm×300μm×300μm程度に設計する。300μm×300μm×300μmよりも大きいと電気泳動粒子が電極間を電気泳動するのに時間がかかり、セルの表示色を変化させるのに必要な時間が長くなる。さらに、画素のサイズが大きくなり、表示装置で表示される画像の精度が低下する。また10μm×10μm×10μmよりも小さなサイズにすることは製造の面から困難である。
【0028】
絶縁性分散媒10は、2種類の電気泳動粒子を分散・保持するものであり、電界に応じて電気泳動粒子を電気泳動させるために絶縁性の液体に所望の色の染料(色素)が溶解したものが使用される。絶縁性の液体としては例えば石油系溶媒が使用され、具体的にはイソパラフィンやイソプロパノールが使用される。また、電気泳動粒子の分散性を高めるために、界面活性剤を添加しても良い。
【0029】
電気泳動粒子は、正極性に帯電した粒子と負極性に帯電した粒子との2種類の帯電粒子が使用される。2種類の帯電粒子のうち、一方は白の粒子が、他方は黒の帯電粒子が使用される。例えば、樹脂と、白又は黒の顔料との混合物が使用でき、帯電極性は樹脂の種類や帯電制御剤を添加することで制御することができる。
【0030】
電気泳動粒子のサイズは通常平均粒径0.1μm〜10μm程度の粒子が使用される。平均粒径が10μmよりも大きいと電気泳動粒子の電気泳動速度が遅くなり、セルの表示色を変化させるのに必要な時間が長くなる。また0.1μmよりも小さいと、電極周辺に集めた際に固く凝集し、再び移動させる際に分散しない恐れがある。
【0031】
次に、この電気泳動表示装置による表示方法について説明する。
【0032】
まず、各セルに表示する色を制御する方法の一例を図2を用いて具体的に説明する。なお、図中の符号は図1と同じものを示している。
【0033】
前述したように側部電極7には常時一定の共通電圧が印加されており、ここでは25Vの電圧が印加している。また、下部電極には0Vあるいは50Vのいずれかの制御電圧が画像信号に応じて印加する。上部電極にも0Vあるいは50Vのいずれかの制御電圧が画像信号に応じて印加する。
【0034】
(1)白表示
例えば、セルに白を表示する場合、図2(A)に示すように負帯電した黒の電気泳動粒子8を上部電極4側(観測面側)に移動させずに、正帯電した白の電気泳動粒子9のみを上部電極4側(観測面側)に移動させる。
【0035】
ここでは、上部電極4に供給する電圧を0V、下部電極2に供給する電圧を50Vとする。その結果、図2(A)に示すように正帯電した白の電気泳動粒子9はセルの上部電極4側に電気泳動し、黒の電気泳動粒子8はセルの下部電極2側に電気泳動する。したがって、上部電極側から観測するとセルには白の電気泳動粒子が視認される。
【0036】
(2)黒表示
セルを黒に表示する場合、図2(B)に示すように正帯電した白の電気泳動粒子9を上部電極側4に移動させずに、負帯電した黒の電気泳動粒子8のみを上部電極2側に移動させる。
【0037】
ここでは、上部電極4に供給する電圧を50V、下部電極2に供給する電圧を0とする。その結果、図2(B)に示すように負極性の黒の電気泳動粒子8はセルの上部電極4側に電気泳動し、白の電気泳動粒子9はセルの下部電極2側に電気泳動する。したがって、上部電極側から観測するとセルには黒の電気泳動粒子8が視認される。
【0038】
(3)色表示
次に、セルに色(分散媒の色)を表示する場合について説明する。この場合、色表示する前のセルの表示が白の場合と、黒の場合とで異なる。
【0039】
まず、セルが図2(A)に示すように白表示されている状態から色表示に変化させる場合は、図2(C)に示すように、下部電極2上の黒の電気泳動粒子8を保持し、上部電極4側の白の電気泳動粒子9を側部電極7近傍に移動させる。ここでは上部電極4の電圧を50Vに変化させ、下部電極2に供給する電圧を50Vに維持する。その結果、上部電極4側から観測するとセルには絶縁性分散媒10の色が視認される。
【0040】
次に、セルが図2(B)に示すように黒表示されている状態から色表示に変化させる場合は、図2(D)に示すように、下部電極2上の白の電気泳動粒子9を保持し、上部電極4近傍の黒の電気泳動粒子8を側部電極7近傍に移動させる。ここでは上部電極4の電圧を0に変化させ、下部電極2供給する電圧を0Vで維持する。その結果上部電極側から観測するとセルには絶縁性分散媒10の色が視認される。
【0041】
以上の駆動タイミングをまとめたものを図3に示す。
【0042】
白色表示と黒色表示は下部電極、上部電極の電位を入れ替えるだけで、双方向に遷移可能である。しかし、溶媒色表示に関しては、白色表示から溶媒色表示への遷移、黒色表示から溶媒色表示への遷移で電圧のかけ方が異なっている。
また、2種類ある溶媒色表示から、白色表示もしくは黒色表示へは各々遷移可能で、特に問題は無い。
【0043】
この各表示状態への遷移を考慮すると、表示装置の駆動方法として2通り考えられる。第1の方法は、書換前の表示データをメモリなどに保持しておき、それを参照して書換後の電圧印加の値を決める方法である。すなわち、絶縁性分散媒の色表示の時に、下部電極と上部電極を0Vにするか、50Vにするかを、書換前のデータで決めることになる。この方法だと、書換動作が速く、動画表示が可能であるが、書換前の表示データを保持すること、および書換前のデータを参照にして書換後の電圧値を決める回路が必要なこと等、駆動回路は複雑になる。第2の方法は、絶縁性分散媒の色表示への遷移を一通りに決めることである。具体的には、書換時には必ず白表示にしてから、再度白表示または黒表示、溶媒色表示に遷移することである。この方法だと、書換前の表示データを保持する必要がないので、回路構成は簡易になる。しかし、書換動作が前者の方法と比較して長くなること、書換ごとに白が表示されることから動画表示には不利になる。
【0044】
これら、書換方法は、表示装置としての目的を考慮して決定すればよい。PCやPDA等動画も表示する場合は前者の方法を採用し、看板や公告など動画よりも静止画を表示する場合が多い時は後者の方法を取ればよい。
【0045】
以上、上部電極への供給電位V2および下部電極への供給電位V1を50Vあるいは0Vとし、側部電極に固定電位25Vを印加する系で説明したが、この電位に限らず、一般的に示せば、正帯電電気泳動粒子色:(V3−V1)×(V3−V2)<0かつV3−V1>0負帯電電気泳動粒子色:(V3−V1)×(V3−V2)<0かつV3−V1<0分散媒色:(V3−V1)×(V3−V2)>0のいずれかを満たすV1、V2およびV3を印加するように電圧制御することでセルの表示色の制御が可能である。
【0046】
前述したように、本実施形態の電気泳動表示装置は、3セルで1画素を構成している。以下、各画素に表示される色の制御方法について図4を用いて説明する。
【0047】
図4は、電気泳動表示装置を観測面側から見た時の概念図である。
【0048】
図4(a)は、9×2個のセルの電気泳動表示を示している。前述したように、1画素は3つのセルから構成されている。イエローの色素を溶解した絶縁性分散媒を使用したセルY、マゼンタの色素を溶解した絶縁性分散媒を使用したセルM、シアンの色素を溶解した絶縁性分散媒を使用したセルCからなる画素を並べて1画素を構成し、9×2個のセルによって3×2個の画素A〜Fを構成している。
【0049】
図4(b)には、図4(a)に示した電気泳動表示装置の9×2個のセルに表示させる色を示した図であり、画素Aに白、画素Bに黒、画素Cにイエロー、画素Dにマゼンタ、画素Eにシアン、画素Fにオレンジ系の混合色を表示させる場合の各セルの表示色を示している。
【0050】
図4(b)に示すように、画素に白を表示する場合、画素Aに示すように1画素を構成する3つのセル全てに白を表示する。すなわち、上部電極側に白の電気泳動粒子のみを電気泳動させる。また、画素に黒を表示させる場合は画素Bに示すように1画素を構成する3つのセル全てにおいて、上部電極側に黒の電気泳動粒子のみを電気泳動させて黒を表示する。
【0051】
画素にイエローを表示する場合、画素Cに示すようにセルYには絶縁性分散媒の色(イエロー)を表示させ、セルM及びセルCは、白の電気泳動粒子を上部電極側に電気泳動させて白を表示させる。同様に、画素にマゼンタを表示する場合は画素Dに示すようにセルMに絶縁性分散媒の色を表示させ、セルY,セルCには白を表示し、画素にシアンを表示する場合は画素Eに示すようにセルCに絶縁性分散媒の色を表示させ、セルY,セルMには白を表示する。
【0052】
また、1画素中の3セルのうち、2つのセルに絶縁性分散媒の色を表示し、残りのセルに白を表示することで、前記2つのセルの混色を画素に表示することも可能である。例えば画素Fに示すように、セルYにイエロー、セルMに白、セルCにシアンを表示すると、画素Fにはイエローとシアンの混色となるオレンジ系の色が表示される。
【0053】
図5に1画素に、白、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、黒、シアン(C)、白の順番で表示を行う時の、この画素を構成するセルY、セルMおよびセルCに隣接する上部電極、下部電極、側部電極への駆動電圧パターンを示す。
【0054】
前述した電気泳動表示装置の作製方法を、図1を参照して以下に説明する。
【0055】
下部基板1として厚さ1mmの透明なガラス板を準備し、この下部基板1表面に80μm×80μm、厚さ0.3μmの下部電極2を、電極間隔20μmで1000×1000個を2次元的に配列して形成すると共に、各下部電極2および駆動回路を接続する配線(図示せず)を形成した。下部電極2の材料としてはITOを用い、下部電極2と配線の形成は既知のTFT製造工程を用いて形成した。
【0056】
下部基板1の下部電極2が形成された面に、透明フッ素樹脂からなる誘電体層5を形成した。この誘電体層5はディップコートにより厚さ0.5μmに形成した。
【0057】
誘電体層5表面に厚さ20μmのポリイミド層を形成し、さらにポリイミド層表面に厚さ20μmの銅層を形成し、銅層表面に下部電極部の直上部分のみに開口を有するマスクパターンを形成した。その後、マスクパターンの開口部のみ銅層をエッチングし、マスクパターンを除去して側部電極7を形成した。さらに、側部電極7をマスクパターンとして利用してポリイミド層をエッチングして、支持壁6(下部基板1側のみ)を形成した。
【0058】
厚さ1mmの透明なガラス板を上部基板3として準備し、電極材料をITOとし、膜厚を0.1μmとしたことを除き、下部電極2と同様にして複数の上部電極と配線とを上部基板3表面に形成した。さらに、上部電極4が形成された面に、透明フッ素樹脂からなる誘電体層5をそれぞれ形成した。この誘電体層はディップコートにより厚さ0.5μmに形成した。
【0059】
次に、上部基板3表面にポリイミド層を形成し、上部電極4の直上のみに開口部を有するマスクパターンを作製した後エッチングを行ない、開口部のポリイミドを除去して支持壁6(上部基板側のみ)を作製した。
【0060】
また、分散液は、以下の通りにして調整した。まず、酸化チタンをポリエチレンでコートした白の電気泳動粒子9(平均粒径1μm)と、カーボンをアクリル系樹脂でコートした黒の電気泳動粒子8(平均粒径1μm)とを準備し、絶縁性液体10としてのイエロー、マゼンタあるいはシアンの色素が溶解した3種類のイソパラフィン液中に、両電気泳動粒子8,9をそれぞれ分散させた。各分散液中に分散する2種類の電気泳動粒子の量は、それぞれ10wt%とした。さらに、電気泳動粒子の分散性を高めるために、微量の界面活性剤を添加した。
【0061】
このようにして得られた分散液に電界を形成して電気泳動粒子の帯電極性を確認したところ、白の電気泳動粒子9は正極性に帯電し、黒の電気泳動粒子8は負極性に帯電していることが分かった。
【0062】
前述した、下部基板1と上部基板3とをそれぞれの電極面が対向するようにして位置合わせをして接合した後に、各セルに、分散液を注入した。なお、配列した複数のセルの横方向にはイエロー、マゼンタ、シアン、イエロー…の順に分散液を注入し、縦方向には同じ色の分散液を注入した。
【0063】
さらに、各電極と接続された配線および、側部電極6をCPUによって制御された電源に接続することで、電気泳動表示装置を完成した。
【0064】
図5に示す電圧を各電極に供給したところ、白、イエロー、マゼンタ、黒、シアンおよび白の順で色彩を変化させることが可能であった。
【0065】
また、上述の説明では支持壁は上部基板側と下部基板側とで2つに分けて形成したが、例えば下部基板側にまとめて一つに形成しても可能である。例えば、下部基板表面から、ポリイミド、銅、ポリイミドの順で形成し、順に上からエッチングして側部電極を挟んだ支持壁をまとめて形成する。エッチングによる加工では、底の方(下部電極側)に行くほど開口部が狭くなるが、上部電極側(観測面側)の開口を設計値にすることができれば、観測者から見えない第1の基板の方は開口が多少狭くなっても構わない。
【0066】
(第2実施形態)
第1実施形態では、側部電極を支持する支持壁に隣接するセル間の分散液の移動を防止する機能を持たせたが、マイクロカプセルをセルとして使用し、隣接するセル間の分散液の移動を防止した例を説明する。
【0067】
図6は、本実施形態に係る電気泳動表示装置の断面図である。なお、図1と同一構成のものは同一符号で示し、その説明は省略する。
【0068】
分散液11は、図示するように、マイクロカプセル12内に収納されている。また、側部電極6を支持するための支持壁6は、下部基板1側にのみ配置されており、下部基板3側には必要としない。
【0069】
このように、マイクロカプセル12内に分散液11を封入することで、セルに接合部分が無くなり、より確実に隣接するセル中に分散液が移動することを防止することができる。また、各セルへの分散液の封入を簡便に行うことが可能になる。
【0070】
この電気泳動表示装置の作製方法を説明する。
【0071】
第1の実施形態と同様にして、下部基板1表面に下部電極2、誘電体層5および支持壁6を形成する。その後、支持壁6によって形成された凹部にマイクロカプセルを印刷技術などによって配列する。また、第1の実施形態と同様にして上部電極4および誘電体層5を表面に形成した上部基板3をマイクロカプセル上に配置する。例えば、上部基板1と下部基板3との間に適当なサイズのスペーサを配置して両基板の間隔を所望の値とすることが可能であり、また、両基板間のセルが形成されていない領域に紫外線硬化樹脂などにより固めることも可能である。
【0072】
ここで、分散液を封入したマイクロカプセルの製法の一例として、コアセルベーション法を採用した方法を具体的に説明する。
【0073】
まず、第1の実施形態で使用したものと同じ分散液11重量部を、純水100重量部、乳化剤2重量部と共にホモジナイザーで攪拌して乳化する。この乳化した混合液を、40℃の5%ゼラチン−アラビアゴム水溶液に滴下し、この水溶液中に粒状の分散液を分散させた。さらに攪拌しながら10%酢酸を滴下し、この混合液のpH3.5になった時点で酢酸の滴下を終了させた。酢酸を滴下することで、ゼラチンとアラビアゴムとが反応して、粒状の分散液の表面に高分子層が形成される。
【0074】
その後、混合液の温度を5℃まで下げ、37%ホルマリンを滴下し、さらに10%NaOH水溶液をpH8.5になるまで滴下し、高分子層を硬化させた。その後、純水で洗浄し、1μmのフィルターでろ過し、透明高分子被膜で包含された平均粒径80μmのマイクロカプセルを得た。
【0075】
このようにして得られたマイクロカプセルを前述したようにして得られた下部基板表面の支持壁によって形成された凹部に配列した。また、前述したようにして得られた上部基板を、60μmのスペーサを介して下部基板上に押し当て、さらに、基板間の配列されたマイクロカプセルの周囲に紫外線硬化樹脂を充填して硬化させた。
【0076】
さらに、各電極と接続された配線および、側部電極6をCPUによって制御された電源に接続することで、電気泳動表示装置を完成した。
【0077】
図5に示す電圧を各電極に供給したところ、白、イエロー、マゼンタ、黒、シアンおよび白の順で色彩を変化させることが可能であった。
【0078】
分散液を封入したマイクロカプセルの製法は、コアセルベーション法に限らず、界面重合法、insitu重合法、液中硬化被膜法、有機溶液系からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁法、スプレードライング法など既知の手法を、記録媒体の用途、形態などに応じて適宜選択することが出来る。
【0079】
また、マイクロカプセルの被膜も、ゼラチン−アラビアゴムの他に、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂等の縮合系ポリマー、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、メチルメタクリレート−ビニルアクリレート共重合体などの三次元架橋ビニルポリマーなどの熱硬化性樹脂などを適宜用いることが出来る。
【0080】
また、上記の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂から選択される二種以上を用いて、マイクロカプセル13を構成する多層の被膜を形成しても良い。この場合、マイクロカプセル13の熱安定性を向上させる観点から、被膜の最外殻には熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。
【0081】
また、マイクロカプセルの殻の材料に基板側の誘電体層10、11と同じ特性を備える周知の材料を選択することで、誘電体層10、11を省略することが可能である。
【0082】
以上、本発明の電気泳動表示装置について実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において適宜変更可能である。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、白および黒の色再現性が良好で、カラー画像の表示も可能な電気泳動表示装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の電気泳動表示装置を示す図。
【図2】 各セルに表示される色の制御を説明するための図。
【図3】 各セルの駆動を説明するためのタイミング図。
【図4】 画素に表示される色に対する、各セルの表示状態を示す図。
【図5】 画素に表示する色に対する、各セルの駆動を説明するためのタイミング図。
【図6】 本発明の第2実施形態の電気泳動表示装置を示す図。
【符号の説明】
1…下部基板
2…下部電極
3…上部基板
4…上部電極
5…誘電体層
6…支持壁
7…側部電極
8…負帯電の電気泳動粒子
9…正帯電の電気泳動粒子
10…絶縁性分散媒
11…分散液
12…マイクロカプセル

Claims (2)

  1. 第1基板表面に2次元に配列した複数の第1電極と、
    第2基板表面に形成され、前記第1電極にそれぞれ対向して配列した複数の第2電極と、
    前記第1基板および前記第2基板の間に前記第1電極に対応して2次元に配列され、正帯電した第1電気泳動粒子及び負帯電した第2電気泳動粒子とが分散した分散液を保持する複数の分散液保持領域と、
    前記分散液保持領域間に形成された第3電極と
    前記各電極に、画素信号に応じて電圧を供給する電圧制御部とを有し、
    前記電圧制御部は、前記第1電極に供給する電圧をV1、前記第2電極に供給する電圧をV2、前記第3電極に供給する電圧V3とした時、V1>V3>V2を満たす電圧を供給することで前記正帯電した第1電気泳動粒子の色を表示する第1状態、V2>V3>V1を満たす電圧を供給することで前記負帯電した第2電気泳動粒子の色を表示する第2状態、V1>V3、V2>V3を満たす電圧を供給することで前記分散液の色を表示する第3状態、V1<V3、V2<V3を満たす電圧を供給することで前記分散液の色を表示する第4状態間を、前記第1状態から前記第2状態又は前記第3状態、前記第2状態から前記第1状態又は前記第4状態、前記第3状態から前記第1状態又は前記第2状態、前記第4状態から前記第1状態又は前記第2状態に、それぞれ駆動させることで色表示を変化させることを特徴とする電気泳動表示装置。
  2. 前記電圧V3は定電圧であることを特徴とする請求項記載の電気泳動表示装置。
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