JP3909686B2 - 画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法を利用した画像形成方法に関し、特に、優れた帯電特性を有するトナーを用いて、高い転写効率とかぶりのない画像を提供する画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法を利用した画像形成方法には従来から様々な方法が提案されている。これらの画像形成方法に適用される現像方式としては、大別して乾式現像法と湿式現像法とがあり、乾式現像法においてはさらに一成分現像方式と二成分現像方式とに分けられる。いずれの方式においても、用いられるトナーは、現像される静電荷像の極性に応じて正または負の電荷を有する必要がある。
【0003】
トナーに電荷を保有するためには、荷電制御剤を添加することが最も効果が大きく、その中でも無色あるいは白色のものはカラートナーにおいて必要不可欠である。これら無色あるいは白色の荷電制御剤としては、例えば、特公昭55−42752号公報、特開昭61−69073号公報、特開昭61−221756号公報、特開平9−124659号公報等に記載されているサリチル酸誘導体の金属塩化合物や、特開昭57−111541号公報に記載されている芳香族ジカルボン酸金属塩化合物等があるが、これらは環境に懸念のあるクロム化合物であったり、カラートナーに必要な無色あるいは白色性が不十分であった。
これらの問題を解決するため、中心金属として4価金属であるジルコニウムに注目し、特に4価の陽イオン体、オキソ錯体である2価の陽イオン体とサリチル酸、又はサリチル酸誘導体との各種化合物による検討が行われた。これによると、レジンとの分散性が良好で、電子写真用トナーに良好な帯電性を付与できる無色の荷電制御剤が見出されたものの、特に高温高湿環境での帯電量の低下という問題が残っている。
【0004】
さらに、特許第3135507号公報、特許第3154088号公報においては、金属化合物と無機イオンとカルボン酸誘導体の比率の検討がなされたり、特開2001−66830号公報ではジルコニウム原子と芳香族カルボン酸の構成単位の検討がなされたりしている。これらにより、高温高湿下でも高い摩擦帯電量が維持できるようになったが、キャリアの帯電量が低い場合に現像剤の帯電量分布がブロードとなり、かぶりを生じるという問題が解決されていない。
また、特開2000−147828号公報では、非結晶性または低結晶性の芳香族化合物の金属塩のX線回折を規定することで、再転写が改善されたものの、非結晶性または低結晶性の荷電制御剤では、トナー製造時の混練工程による熱やせん断エネルギーにより構造が変化してしまい、狙いの品質を出すためには生産の条件がかなり限定されたり、現像剤の耐久性に関しては、キャリアを汚染するため現像剤の劣化につながるなどの欠点がある。
このように、特性、品質を全てにおいて満足する荷電制御剤が得られていないため、環境変化やキャリアの帯電量変化に対応して、常にかぶり等がなく転写効率の高い良好な画像を提供する画像形成方法が確立されていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点に鑑み、本発明は、高温高湿環境下やキャリアの帯電量が低い場合であっても良好な帯電性を示すトナーを用い、転写効率の高い優れた画像が得られる画像形成方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
トナーの帯電量を調整するために添加される荷電制御剤の機能は、既述のように高い帯電性を付与することはもちろんのことであるが、同時にシャープな帯電量分布、及び高温高湿あるいは低温低湿の環境変動に対する帯電量の安定性を付与することにある。そのために、荷電制御剤の結晶状態と機能について鋭意検討した結果、上記機能発現のためには、荷電制御剤がジルコニウムと芳香族オキシカルボン酸とからなるジルコニウム化合物であって、その結晶面が同一面で成長していることが必要であることが明らかとなり、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、外部より帯電部材に電圧を印加し像担持体に帯電を行う帯電工程と、帯電している像担持体に静電荷像を形成する静電潜像形成工程と、静電荷像をトナーによって現像してトナー画像を形成する現像工程と、外部より転写部材に電圧を印加し、トナー画像を記録材上に転写する転写工程と、トナー画像を記録材上に加熱定着する定着工程と、転写後の像担持体表面をクリーニング部材でクリーニングするクリーニング工程とを有する画像形成方法において、前記現像工程で用いるトナーは、少なくともバインダー樹脂と、着色剤と、荷電制御剤とを含有するトナーであって、前記荷電制御剤は、ジルコニウムと芳香族オキシカルボン酸からなるジルコニウム化合物であり、X線回折において、ブラッグ角2θの主要ピークAが5.5度±0.3度にあり、回折強度が2000〜15000cpsの範囲にある結晶状態にある化合物である画像形成方法である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成方法において、前記荷電制御剤のブラッグ角2θの主要ピークが、メインピークA:5.5度±0.3度、サブピークB:31.6度±0.3度にあり、ピークA及びBの強度比A/Bが3〜25の範囲にある画像形成方法である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像形成方法において、前記荷電制御剤の平均粒径が0.2〜4.0μmである画像形成方法である。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法において、前記荷電制御剤は、イオン交換水に1.5×10−4g/cm3の濃度で抽出したときの導電率が5〜20S/cmである画像形成方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成方法において、前記荷電制御剤が、バインダー樹脂100重量部に対し0.5〜5重量部添加される画像形成方である。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法において、前記バインダー樹脂は、酸価が20mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を50〜100重量%含有する画像形成方法である。
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成方法において、前記荷電制御剤が、ジルコニウムと3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸からなるジルコニウム化合物である画像形成方法である。
【0009】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成方法において、前記帯電工程は、前記帯電部材を前記像担持体に接触させて帯電を行う画像形成方法である。
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成方法において、前記転写工程は、前記像担持体上のトナー画像を、転写装置を介して記録材へ静電転写する工程であり、該転写装置は、静電転写の際に前記像担持体と当接する画像形成方法である。
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成方法において、前記クリーニング部材がクリーニングブレードである画像形成方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の画像形成方法が適用される画像形成装置の概略構成図である。図1のデジタル複写機は、周知の電子写真方式を用いるものであり、内部にドラム状感光体1を備えている。感光体1の周囲には矢印Aで示す回転方向に沿って、電子写真複写工程を実施する帯電手段2、露光手段3、現像手段4、転写手段5、クリーニング手段6および定着手段10が配置されている。
露光手段3は、複写機上面の原稿載置台7に置かれた原稿を、読み取り手段8によって読み取り、読み取られた画像信号を基に感光体1上に静電潜像を形成する。
感光体1上に形成された静電潜像は、現像手段4によってトナー像化され、そのトナー像が給紙装置9から給送されてくる記録材に転写手段5によって静電転写される。トナー像が載った記録材は、定着手段10に搬送、定着された後に、機外へ排出される。
一方、未転写部や汚れの付着した感光体1はクリーニング手段6によりクリーニングされ次の作像ステップに入る。
【0011】
本発明の画像形成方法に用いられるトナーは、少なくともバインダー樹脂と、着色剤と、荷電制御剤とを含有する。以下、荷電制御剤について説明する。
荷電制御剤は、ジルコニウムと芳香族オキシカルボン酸からなるジルコニウム化合物であって、X線回折において、以下の結晶状態を示すものである。CuKα特性X線に対するブラッグ角2θの主要ピークが、ピークA:5.5度±0.3度にあり、回折強度がスキャンスピード0.5〜4度/分において2000〜15000cpsの範囲にある。一般的に、X線回折測定では、結晶性物質はブラッグの回折条件により結晶面間隔に応じて固有の回折ピークが表れ、その回折強度は結晶状態、結晶化度に依存しており、結晶化による硬度もある範囲においては結晶化度に依存している。2θピークA:5.5度±0.3度は、芳香族オキシカルボン酸を配位子として有するジルコニウム化合物に起因するピークである。この回折強度が2000cps未満では、ジルコニウム化合物の結晶性が低いため、トナー製造時の混練工程による熱やせん断エネルギーにより、ジルコニウム化合物内の結合の切断が起こりやすくなり、構造の変化を起こしてトナー帯電性を低下させてしまう。特に、高温高湿環境において顕著に帯電量の低下が発生する。また、回折強度が15000cpsを超えると負極性が増大し、凝集力が増大するため、他材料との分散性が不十分となりシャープな帯電量分布が得られなくなる。以上より、ジルコニウムと芳香族オキシカルボン酸からなるジルコニウム化合物のCuKα特性X線に対するブラッグ角2θの主要ピークが、ピークA:5.5度±0.3度にあり、回折強度がスキャンスピード0.5〜4度/分において2000〜15000cpsの範囲にあることで、荷電制御剤としてトナーに高い帯電性を付与し、シャープな帯電量分布を与えることが可能となる。
【0011】
さらに、荷電制御剤のCuKα特性X線に対するブラッグ角2θの主要ピークが、少なくともメインピークA:5.5度±0.3度、サブピークB:31.6度±0.3度にあり、ピークA及びBの強度比A/Bが3〜25の範囲にあることにより、高温高湿及び低温低湿での環境変動に対しても、トナーの帯電を安定的に行うことができ、帯電量の安定性がさらに良好となる。サブピークBが31.6度±0.3度にあることは、結晶の面間隔が2.8553〜2.8914Åであることに相当するものであり、結晶間の電子密度が大きいことを示す。これにより、結晶は水分子と水素結合しにくくなり、高温高湿環境における帯電量の低下を抑制するものである。ここで、ピークの強度比A/Bが3未満であると、高温高湿環境における帯電量安定性に十分な効果がなく、また、25を超えるとメインピークAに由来する単結晶性の性質が不十分となり、多結晶性となるため、帯電量分布がブロードになりやすい。
【0012】
芳香族オキシカルボン酸としては、公知のものが使用可能であるが、下記の一般式(1)で表される化合物が、帯電付与能力の点から好ましい。
【0013】
【化1】
但し、R1、R2及びR3は、各々水素原子、塩素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルコキシ基のいずれかを表す。
【0014】
さらに、帯電付与能力の観点から、具体的に以下の化合物が好ましい。
【0015】
【化2】
【0016】
この中でも、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸が、高温高湿下での帯電量の低下と現像スリーブの汚染を抑制できる点において特に好ましい。
【0017】
荷電制御剤の平均粒径は、0.2〜4.0μmであることで、トナー中の分散性がさらに良好になり、シャープな帯電量分布が得られると共に、経時でのキャリアや現像スリーブへの汚染を防止できる。平均粒径は、レーザー回折式粒度測定装置によって測定できる。平均粒径が4.0μmを超えると、他材料との分散性が不十分となりトナー中で凝集体の状態のまま存在するものが残存し、シャープな帯電量分布が得にくくなる。また、平均粒径が0.2μm未満であると、かさが増大し、トナー製造工程において原材料を供給するホッパーが詰まりやすいなどの不具合が生じやすい。
【0018】
また、荷電制御剤は、イオン交換水に1.5×10−4g/cm3の濃度で抽出したときの導電率が5〜20S/cmであることが好ましい。導電率がこの範囲にあることで、トナーの負帯電性をさらに高くすることができる。導電率が5S/cm未満であると、極性が小さいために十分な負帯電性が得られず、20S/cmを超えると電荷がリークしやすい。
【0019】
トナーに含有されるバインダー樹脂としては、従来より公知の樹脂が全て使用される。例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂などが挙げられるが、特にポリエステル樹脂を用いる事が好ましい。
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られる。使用されるアルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1,4−ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン、及びビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。また、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。ポリエステル樹脂のTgは58〜75℃が好ましい。
また、以上の樹脂は単独で使用することも可能であるが、二種類以上併用しても良い。また、これら樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合いずれも使用できる。
【0020】
荷電制御剤は、上記バインダー樹脂100重量部あたり0.5〜5重量部含有することがよい。0.5重量部未満では十分な負帯電性が得られず、5重量部を超えると現像スリーブを汚染するなどの不具合が生じやすい。
【0021】
さらに、上記バインダー樹脂がポリエステル樹脂を50〜100重量%含有し、該ポリエステル樹脂の酸価が20mgKOH/g以下であることがよい。ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲であることにより、ポリエステル樹脂に含まれる遊離状態のカルボキシル基が電子受容性を有するため、トナーの負帯電性を向上することができる。酸価が20mgKOH/gを超えると、高温高湿下でのトナーの帯電安定性が悪化する。
【0022】
トナーに含有される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料の全てが適用される。具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、オイルブラック、アゾオイルブラックなど特に限定されない。着色剤の使用量は1〜10重量部、好ましくは3〜7重量部である。
【0023】
また、トナーには、定着時の離型性を向上させるためワックス成分を使用することも可能である。例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のようなポリオレフィンワックスや、キャンデリラワックス、ライスワックス、カルナウバワックス等の天然ワックスが使用可能である。
ワックス成分の添加量は0.5〜10重量部が好ましい。
【0024】
トナーには、必要に応じてその他、添加剤を添加する事も可能である。添加剤としては、シリカ、酸化アルミニウム類、酸化チタン類を例示することができる。高流動性を付与する事を主目的する場合には、疎水化処理シリカあるいはルチル型微粒子酸化チタンとして、平均一次粒径が0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.1μmの範囲ものから適宜選択でき、特に有機シラン表面処理シリカあるいはチタニアが好ましく、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%の割合で使用される。
【0025】
また、本発明を乾式二成分現像方式の現像工程を有する画像形成方法に適用する場合には、現像剤に使用するキャリアとして、ガラス、鉄、フェライト、ニッケル、ジルコン、シリカ等を主成分とする、粒径30〜1000μm程度の粉末、または、該粉末を芯材としてスチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等をコーティングしたものから適宜選択して使用することが可能である。
【0026】
以下に、トナーの製造方法を示す。
トナーの製造方法は、少なくともバインダー樹脂、帯電制御剤及び着色剤を含む現像剤成分を機械的に混合する工程と、溶融混練する工程と、粉砕する工程と、分級する工程とを有する製造方法が適用できる。また、機械的に混合する工程や溶融混練する工程において、粉砕または分級する工程で得られる製品となる粒子以外の粉末を戻して再利用する製造方法も含まれる。ここで言う製品となる粒子以外の粉末(副製品)とは、溶融混練する工程後、粉砕工程で得られる所望の粒径の製品となる成分以外の微粒子や粗粒子や、引き続いて行われる分級工程で発生する所望の粒径の製品となる成分以外の微粒子や粗粒子を意味する。このような副製品を、混合工程や溶融混練する工程で、原料と好ましくは副製品1に対しその他原材料が99、ないしは副製品50に対しその他原材料が50の重量比率で混合するのが好ましい。
【0027】
少なくともバインダー樹脂、帯電制御剤および着色剤、副製品を含む現像剤成分を機械的に混合する混合工程は、回転させる羽による通常の混合機などを用いて通常の条件で行えばよく、特に制限はない。
以上の混合工程が終了したら、次いで混合物を混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、一軸、二軸の連続混練機や、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが重要である。具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考に行うべきであり、軟化点より低温過ぎると切断が激しく、高温過ぎると分散が進まない。
以上の溶融混練工程が終了したら、次いで混練物を粉砕する。この粉砕工程においては、まず粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際、ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
この粉砕工程が終了した後に、粉砕物を遠心力などにより気流中で分級し、もって所定の粒径、例えば平均粒径が5〜20μmのトナーを製造する。
【0028】
また、トナーを調製する際には、トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、以上のようにして製造されたトナーに、さらに先に挙げた疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。外添剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるが、ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。外添剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中または漸次外添剤を加えていけばよい。もちろん、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。はじめに強い負荷を、次に比較的弱い負荷を与えても良いし、その逆でも良い。使用できる混合設備の例としては、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。
【0029】
以上により製造されるトナーは、高い帯電性を有し、同時にシャープな帯電量分布、及び高温高湿での環境変動に対する帯電量の安定性が極めて良好である。従って、このような特性を有するトナーを使用した本発明の画像形成方法により、トナーの帯電量分布がシャープであるため転写効率が高く、かぶりの無い良好な画像を提供することができる。
【0030】
さらに、近年オゾンの発生を低減化するために、帯電工程、転写工程、クリーニング工程は、感光体と接触させて行う方式が有効に使用されており、帯電ローラーや帯電ブレード、転写ベルト、クリーニングブレードなどが使用されているが、これらの部材を用いる不具合として、直接感光体に接触するために、トナーが融着するという問題が発生しやすい。しかし、本発明の画像形成方法においては、トナーはそのような不具合を発生しないため好ましい。これは、もともとトナーの帯電量分布がシャープであるために、逆帯電トナーの発生量が少なく、転写効率が高いため、感光体上の転写残トナーの発生量が少ないことがあげられる。また、トナー融着のメカニズムの1つとして、トナー表面に凝集体として存在している荷電制御剤が遊離して付着し、これが核となって融着が進行するケースがある。しかしながら、本発明の画像形成方法においては、トナーは荷電制御剤の他材料への分散性が良好であるため、トナー表面に凝集体として存在せず、融着の核とならないため、帯電工程、転写工程、クリーニング工程がそれぞれ接触方式であっても、トナーの融着が発生しない。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。尚、以下の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
実施例に先立ち、本実施の形態における荷電制御剤の物性測定方法を以下に示す。
<X線回折>
X回折装置(日立製作所社製;RINT1100)を使用し、CuKα線を用いて次の条件により測定した。
X線管球:Cu、管電圧:50kV、管電流:30mA、スキャンスピード:2度/分
<平均粒径>
容器中にイオン交換水10cm3を用意し、その中に界面活性剤、例えば和光純薬社製のコンタミノンを2〜3滴添加し、そこへ荷電制御剤0.01gを加えて、超音波分散機にて1分間分散したものを分散液として、レーザー回折式粒度測定装置(島津製作所社製;SALID)を使用して測定した。
<導電率>
容器中にイオン交換水20cm3を用意し、荷電制御剤0.003gを精秤して加え、超音波分散機にて10分間分散後、10時間放置し、その後上澄み液を15cm3採取して導電率計にて測定した。
【0033】
(実施例1〜10)
<荷電制御剤1>
5−メトキシサリチル酸20〜30部と25%水酸化ナトリウム水溶液20〜30部を水300〜400部に溶解し、5〜15℃/分の昇温速度で50℃に昇温し、攪拌しながらオキシ塩化ジルコニウム15〜25部を水80〜100部に溶解した溶液を滴下した。同温度で1時間攪拌後、5〜15℃/分の速度で室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液5〜8部を加え、pH7.5〜8.0に調整した。析出した結晶をろ過、水洗、乾燥して20〜35部のジルコニウム化合物の白色結晶を得た。
それぞれの荷電制御剤のX線回折、平均粒径、導電率の測定結果を表1に示す。
【0034】
<トナー処方>
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体 100重量部
カーボンブラック(三菱化学(株)社製;#44) 10重量部
カルナウバワックス 5重量部
荷電制御剤1 表1記載の重量部
以上の処方で、二軸エクストルーダーを用いて混練し、粉砕、分級し、平均粒径6〜8μmとした。その後、ヘンシェルミキサーを用い、シリカ微粉末(クライアントジャパン社製;R−972)を混合しトナーを得た。
【0035】
上記で得たトナーと、平均粒径50μmのフェライト粒子にシリコーン樹脂をコートしたキャリアとを4.0%のトナー濃度で混合し、現像剤を作製した。各現像剤を用い、トナーの物性測定を以下の要領で行った。これらの結果を表1に示す。
<トナーの帯電量>
ブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製;TB−200)を使用して、高温高湿(30℃、90%)、常温常湿(25℃、65%)にてトナーの帯電量を測定した。
<帯電量分布の半値幅>
イースパートアナライザーを使用して現像剤の帯電量を測定し、その分布から半値幅を算出した。
【0036】
また、上記現像剤を用いて以下の画像評価試験を行った。その結果も表1に併せて示す。
リコー社製imagio420にて、常温常湿環境(18〜27℃、30〜70%)で初期画像と50,000枚複写画像をとった後、現像剤の帯電量、帯電量分布を測定した。また、以下の要領で、画像の転写効率、現像スリーブの汚染の測定と、かぶりを評価した。なお、リコーimagio420は帯電ローラー、転写ベルト、クリーニングブレードを搭載している。
<かぶり>
かぶりは以下の基準で総合的に判断した。
A:非常に良好。かぶりなし。
B:良好。わずかにかぶり発生
C:可能。かぶり発生しているが現実的には問題なし。
D:悪い。かぶりひどい。
<転写効率>
10cm×10cmの正方形のべた画像を形成する条件で画像形成を行う。この時の転写前の感光体上のトナー量W1と、転写後の記録材上のトナー量W5から、下記式により転写効率を算出する。
転写効率(%)=(W5/W1)×100
<現像スリーブ汚染>
現像スリーブの汚染評価は以下の基準で総合的に判断した。
ランク1:非常に良好。トナー汚れなし。
ランク2:良好。わずかにトナー汚れ発生
ランク3:可能。トナー汚れ発生しているが、特に画像に問題なし。
ランク4:悪い。トナー汚れ発生し、画像のクロべたに抜けが発生する。
【0037】
(実施例11、12)
バインダー樹脂の処方を、実施例11では、ポリエステル樹脂(酸価20mgKOH/g)100重量部とし、実施例12では、スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体50重量部、ポリエステル樹脂(酸価20mgKOH/g)50重量部とした以外は、実施例1〜10と同様にしてトナーを作製し、物性測定、ならびに画像評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例13〜15)
バインダー樹脂の処方を、スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体20重量部、ポリエステル樹脂(酸価15mgKOH/g)80重量部とし、以下に示す荷電制御剤2を用いた以外は、実施例1〜10と同様にしてトナーを作製し、物性測定、ならびに画像評価試験を行った。結果を表1に示す。
<荷電制御剤2>
3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸30〜40部と25%水酸化ナトリウム水溶液15〜28部を水300〜400部に溶解し、5〜15℃/分の昇温速度で50℃に昇温し、攪拌しながらオキシ塩化ジルコニウム15〜26部を水70〜120部に溶解した溶液を滴下した。同温度で1時間攪拌後、5〜15℃/分の速度で室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液5〜9部を加え、pH7.5〜8.0に調整した。析出した結晶をろ過、水洗、乾燥して20〜40部のジルコニウム化合物の白色結晶を得た。
【0039】
(比較例1〜5)
<荷電制御剤3>
5−メトキシサリチル酸5〜28部と25%水酸化ナトリウム水溶液5〜22部を水350〜450部に溶解し、50℃に昇温し、攪拌しながらオキシ塩化ジルコニウム10〜12部を水90部に溶解した溶液を滴下した。同温度で0.5時間攪拌後、1〜3℃/分の速度で室温まで冷却し、25%水酸化ナトリウム水溶液約6部を加え、pH7.5〜8.0に調整した。析出した結晶をろ過、水洗、乾燥して20〜30部のジルコニウム化合物の白色結晶を得た。
それぞれの荷電制御剤のX線回折、平均粒径、導電率の測定結果を表2に示す。
【0040】
<トナー処方>
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体 80重量部
ポリエステル樹脂(酸価12mgKOH/g) 20重量部
カーボンブラック(三菱化成社製;#44) 10重量部
カルナウバワックス 4重量部
荷電制御剤3 表2記載の重量部
以上の処方で、二軸エクストルーダーを用いて混練し、粉砕、分級し、平均粒径6〜8μmとした。その後、ヘンシェルミキサーを用い、シリカ微粉末(クライアントジャパン社製;R−972)を混合しトナーを得た。
上記で得たトナーと、平均粒径50μmのフェライト粒子にシリコーン樹脂をコートしたキャリアとを4.0%のトナー濃度で混合し、現像剤を作製した。各現像剤を用い、実施例1〜10と同様にして、物性測定、ならびに画像評価試験を行った。これらの結果を表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1には、実施例1〜15の結果をまとめた。荷電制御剤のX線回折におけるブラッグ角2θが5.5度±0.3度のピークA強度が、2000〜15000の範囲にある実施例1〜15では、いずれもトナーの帯電量が高く、高温高湿下での帯電量の低下も問題なく、また、50,000枚後の帯電量分布の半値幅も小さいことから、均一で良好な帯電特性を有していることが分かった。得られる画像は、50,000枚後であっても、かぶりが実用上問題ないCレベル以上で、転写効率も90%以上の高い値を示し、現像スリーブの汚れも画像に問題のない3レベル以上であった。
また、メインピークA:5.5度±0.3度とサブピークB:31.6度±0.3度の強度比A/Bが3〜25の範囲にある実施例3〜15では、高温高湿環境におけるトナーの帯電を良好にすることができた。
荷電制御剤の平均粒径が0.2〜4.0μmの範囲にある実施例5〜15では、トナー中での分散性が良好になりトナーの帯電量分布がさらに改善され、画像のかぶりもBランク以上とする効果が得られた。
荷電制御剤をイオン交換水に抽出したときの導電率が、5〜20(S/cm)の範囲にある実施例7〜15では、トナーの帯電量を一層増大させることができ、転写効率を向上させる効果が得られた。
荷電制御剤の添加量がバインダー樹脂100重量部に対し0.5〜5重量部の範囲にある実施例9〜15では、さらにトナーの帯電量を増大させ、転写効率を向上させることができた。
また、実施例11〜15に示すように、バインダー樹脂中に酸価が20mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を50〜100重量%含有させることでもトナーの帯電量増大と、転写効率の向上効果が得られることが分かった。
さらに、荷電制御剤に3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸を用いた実施例13〜15では、高温高湿環境においても高いトナー帯電量を示し、帯電量分布も極めてシャープで、かぶりも発生せず、転写効率も極めて高く、したがって現像スリーブの汚れもない優れた画像品質が得られることがわかった。
尚、上記実施例1〜15において、帯電ローラー、転写ベルト、クリーニングブレードへのトナー融着、固着の発生がないことも確認した。
【0044】
一方、表2には、比較例1〜5の結果をまとめた。荷電制御剤のX線回折におけるブラッグ角2θが5.5度±0.3度のピークA強度が、2000〜15000の範囲にない比較例1〜5では、いずれもトナーの帯電量が低く、また、50,000枚後の帯電量分布の半値幅が大きいことから、帯電特性にばらつきが生じていることがわかった。得られる画像は、50,000枚後の画像で、かぶりがDランクで、転写効率も88%以下と低く、現像スリーブの汚れも4ランクで、画像に影響を及ぼすほどであった。
比較例1では帯電ローラーが汚れており、汚れ部分の周囲の画像が特にかぶりが多く発生していた。また、比較例5は転写ベルトの両端が汚れていることを確認した。
【0045】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明により、ジルコニウムと芳香族オキシカルボン酸からなるジルコニウム化合物であって、所定の結晶状態である化合物を荷電制御剤として含有するトナーを用いることで、転写効率が高く、かぶりが無く、現像スリーブ汚染が無い、高品質な画像を与える画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法が適用される画像形成装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 感光体(像担持体)
2 帯電手段
3 露光手段
4 現像手段
5 転写手段
5a 転写ベルト
6 クリーニング手段
6a クリーニングブレード
10 定着手段
Claims (10)
- 外部より帯電部材に電圧を印加し像担持体に帯電を行う帯電工程と、
帯電している像担持体に静電荷像を形成する静電潜像形成工程と、
静電荷像をトナーによって現像してトナー画像を形成する現像工程と、
外部より転写部材に電圧を印加し、トナー画像を記録材上に転写する転写工程と、
トナー画像を記録材上に加熱定着する定着工程と、
転写後の像担持体表面をクリーニング部材でクリーニングするクリーニング工程とを有する画像形成方法において、
前記現像工程で用いるトナーは、少なくともバインダー樹脂と、着色剤と、荷電制御剤とを含有するトナーであって、
前記荷電制御剤は、ジルコニウムと芳香族オキシカルボン酸からなるジルコニウム化合物であり、X線回折において、ブラッグ角2θの主要ピークAが5.5度±0.3度にあり、回折強度が2000〜15000cpsの範囲にある結晶状態にある化合物である ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1に記載の画像形成方法において、
前記荷電制御剤は、ブラッグ角2θの主要ピークが、メインピークA:5.5度±0.3度、サブピークB:31.6度±0.3度にあり、ピークA及びBの強度比A/Bが3〜25の範囲にある ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1又は2に記載の画像形成方法において、
前記荷電制御剤は、平均粒径が0.2〜4.0μmである ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記荷電制御剤は、イオン交換水に1.5×10−4g/cm3の濃度で抽出したときの導電率が5〜20S/cmである ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記荷電制御剤は、バインダー樹脂100重量部に対し0.5〜5重量部添加される ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記バインダー樹脂は、酸価が20mgKOH/g以下のポリエステル樹脂を50〜100重量%含有する ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記荷電制御剤は、ジルコニウムと3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸からなるジルコニウム化合物である ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記帯電工程は、前記帯電部材を前記像担持体に接触させて帯電を行う ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記転写工程は、前記像担持体上のトナー画像を、転写装置を介して記録材へ静電転写する工程であり、該転写装置は、静電転写の際に前記像担持体と当接する ことを特徴とする画像形成方法。 - 請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成方法において、
前記クリーニング部材は、クリーニングブレードである ことを特徴とする画像形成方法。
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