JP3909617B2 - ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びその成型体 - Google Patents
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びその成型体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びその成型体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を金型内に充填してスチーム等によって加熱して成型する型内成型法は、任意の形状の成型体を容易に得ることができるため、容器、緩衝材等の各種形状の成型体の製造方法として広く利用されている。このようなポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、従来、例えばポリプロピレン系樹脂粒子と発泡剤とを容器内で水等の分散媒に分散させ、樹脂粒子の軟化温度以上の温度に加熱して樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、樹脂粒子と分散媒とを容器内より低圧下に放出して樹脂粒子を発泡させる方法等によって製造されていた。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を緩衝材等の成型用に用いる場合、高発泡倍率(低密度)の発泡粒子を製造する必要があるが、上記したような方法により、特に高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する場合、発泡直後の発泡粒子相互の融着(ブロッキング)が生じ易い。このようなブロッキングを防止する目的で、従来は例えば特開昭58−101127号公報、特開昭58−168631号公報等の実施例に記載されているように、酸化アルミニウム微粉末等の分散剤を分散媒中に添加して発泡を行っていた。
【0004】
ところで、近年ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成型体は、精密機器等の緩衝材としての需要が増大してきているが、上記特開昭58−101127号公報、特開昭58−168631号公報等に記載されているような、従来から発泡粒子製造用原料として用いられていたポリプロピレン系樹脂は樹脂の剛性が高く、この結果、低密度(高発泡倍率)の発泡粒子であっても、精密機器等の緩衝材等に要求される柔軟性の高い成型体を得るための原料としては不充分であった。しかも低密度で柔軟性が不充分な従来の発泡粒子から得られる発泡粒子成型体は、機器等を梱包した際に成型体が裂けたりし易いという課題や、成型体に抜き加工等を施す際の加工性(二次加工性)が不充分という課題があった。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明者らは結晶成分の割合の少ない(融解熱量が80J/g以下と従来のものに比して小さい)ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、発泡粒子の柔軟性を改善することを検討した。しかしながら、融解熱量が80J/g以下のポリプロピレン系樹脂を用いた場合、高発泡倍率の発泡粒子を得ようとすると、ブロッキング防止のために基材樹脂中に多量の滑剤の添加が必要となり、滑剤の多量添加によって得られる発泡粒子は気泡が連続気泡化し易く、発泡粒子の成型性も低下するという問題があった。一方、ブロッキング防止のために多量の分散剤を分散媒中に添加する方法も考えられるが、得られる発泡粒子表面に分散剤が多く付着しているため、発泡粒子成型時における粒子相互の融着性が低下するという問題あった。また分散剤を多量に使用すると、分散剤を含む排水の処理に多大のコストが必要となるという問題もあった。
【0006】
更に、上記特開昭58−101127号公報、特開昭58−168631号公報等に記載されている方法のように、ジクロロジフロロメタン等のハロゲン化炭化水素を発泡剤として用いた場合には、発泡剤を含浸させた樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させる方法(一段発泡)により、高発泡倍率の発泡粒子を容易に得ることができる。しかしながら、ハロゲン化炭化水素に比べて環境負荷の小さい窒素、酸素、水素、空気、二酸化炭素等の無機ガス系発泡剤を用い、高発泡倍率の発泡粒子を得ることを目的とした場合、一段発泡によって得た発泡粒子に内圧を付与した後、スチーム等で加熱して再発泡(二段発泡)させる方法が必要な場合が多く、この二段発泡の過程においてもブロッキングが生じ易いという問題があった。このため、特に無機ガス系発泡剤を用いて優れた性状の高発泡倍率の発泡粒子を低コストで得るには、分散剤を多量に添加することなく発泡粒子相互の融着を防止できる対策が必要であった。
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリプロピレン系樹脂粒子中に、NH型のヒンダードアミン系化合物を特定量含有させておくことにより、融解熱量が80J/g以下のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子から、真の密度が0.1g/cm3 以下の高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る際に、基材樹脂中に滑剤を多量に添加しなくとも、また分散媒中に分散剤を多量に添加しなくとも、一段発泡や二段発泡の際のブロッキングを効果的に防止でき、その結果、滑剤や分散剤の多量添加による上記した従来の問題を解決できることを見出した。
【0008】
尚、本発明において用いるヒンダードアミン系化合物は、上記した特開昭58−101127号公報、特開昭58−168631号公報に記載されているブロッキングが発生し難い発泡技術において光安定剤として使用されている。しかしながら、ヒンダードアミン系化合物は、耐光性等を要求される特定の用途において添加されていたに過ぎず、本願発明が対象としているような、柔軟性に優れた発泡粒子が得られるが、ブロッキングが発生し易い傾向にある、融解熱量が80J/g以下のポリプロピレン系樹脂粒子を用いて発泡粒子を得る際のブロッキングを防止することを目的としては使用されていない。従って、従来は発泡粒子のブロッキング防止を図るためには、上記したように、高価で平均粒径0.1μm未満の酸化アルミニウム微粉末等の分散剤の添加に頼らざるを得ず、分散剤の多量添加が種々の問題を生じることは知られてはいても、ブロッキングが問題となるような状況において特定のヒンダードアミン系化合物と分散剤とを組合わせて用いるという技術は知られておらず、ブロッキング防止のために多量の分散剤であっても添加せざるを得なかったというのが現状である。
【0009】
本発明はこのような観点に鑑みてなされたもので、従来、ブロッキング防止を目的とした使用は全く顧みられていなかったヒンダードアミン系化合物を樹脂に含有させることで、少ない分散剤の使用量によってブロッキングのない高発泡倍率で柔軟性に優れた発泡粒子を得ることができる方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、無機ガス系発泡剤、あるいは30重量%以上の無機ガス系発泡剤と揮発性発泡剤との混合物からなる発泡剤を含有するポリプロピレン系樹脂粒子を、容器内において、無機物が添加された分散媒に分散して加熱軟化している状態から、容器内よりも低圧下に放出して発泡させ、真の密度が0.1g/cm3以下の発泡粒子を得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、樹脂粒子の基材樹脂が融解熱量80 J/g以下のポリプロピレン系樹脂であり、且つ樹脂粒子中に基材樹脂100重量部当たり、NH型のヒンダードアミン系化合物が0.01〜2重量部添加されていることを特徴とする。
【0011】
また本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、真の密度が0.1g/cm3以下で、表面にマイカ、カオリン、タルクから選択された 1 種または2種以上の無機物が付着しており、且つ基材樹脂100重量部当たり、NH型のヒンダードアミン系化合物が0.01〜2重量部添加されているとともに、基材樹脂が融解熱量80 J/g以下のポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする。また本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成型体は、上記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子よりなる成型体であり、食品包装用として好ましい発泡粒子成型体である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において基材樹脂としては、例えばプロピレン単独重合体や、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体等のプロピレン系共重合体の一種又は2種以上の混合物(これらを総称してポリプロピレン系樹脂と呼ぶ。)を用いることができる。プロピレン系共重合体の場合、プロピレン成分含有量が70重量%以上のものが好ましい。基材樹脂としては、上記ポリプロピレン系樹脂に、更に他の樹脂を混合して用いることもできるが、その場合、ポリプロピレン系樹脂の含有量が70重量%以上となるように配合することが必要である。
【0013】
ポリプロピレン系樹脂に混合し得る他の樹脂としては、直鎖状超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−ブテンラバー、エチレン−オクテンラバー、プロピレン−ブテンラバー等のポリオレフィン系エラストマー、ポリブテン等が挙げられ、これらは基材樹脂中の配合量が30重量%以下となるように、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
本発明において基材樹脂は融解熱量が80J/g以下であることが必要であるが、40〜75J/gであることが特に好ましい。基材樹脂が上記したポリプロピレン系樹脂と、他の樹脂との混合物の場合、融解熱量は混合物としての値である。基材樹脂の融解熱量が80J/gを超える場合、結晶成分の割合が多くなるため、得られる発泡粒子の柔軟性が低下し、真の密度が0.1g/cm3 以下という高発泡倍率(低密度)の発泡粒子であっても、それから得られる発泡粒子成型体は柔軟性に欠けたものとなり、成型体が脆くなったり二次加工性の低下をきたす。
【0015】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量測定によって得られるDSC曲線に2つの吸熱ピークが現れるような熱履歴を受けたものが好ましく、且つ高温側ピークの融解熱量が大きいほど、樹脂粒子発泡時のブロッキングが生じておらず、また二段発泡時においてもブロッキングが生じ難いため好ましい。高温側ピークの融解熱量の好ましい値は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂の種類の違いによって異なり、例えば基材樹脂がプロピレン−エチレン共重合体の場合、高温側ピークの融解熱量は10J/g以上、特に10〜20J/gが好ましく、基材樹脂がプロピレン−ブテン共重合体の場合、高温ピークの融解熱量は5J/g以上、特に5〜20J/gが好ましい。
【0016】
上記基材樹脂の融解熱量は、基材樹脂をヒートプレス(プレス温度200℃)してシートを作成し、これから5mgの試料を切取り、示差走査熱量計で10℃/分で200℃まで昇温後、10℃/分で40℃まで降温した後、再び10℃/分で200℃まで再昇温した時の、再昇温の際に得られたDSC曲線から求める。基材樹脂の融解熱量は上記DSC曲線とベースラインで囲まれる部分の面積に相当する。尚、ベースラインはDSC曲線上の80℃及び融解終了温度、それぞれに対応する点を直線で結んだ線分とする。また上記発泡粒子の高温側ピークの融解熱量は、発泡粒子約2mgを示差走査熱量計によって10℃/分で200℃まで昇温した時に得られたDSC曲線から求める。樹脂粒子の高温側ピークの融解熱量は上記DSC曲線において、前述したと同様にして求めたベースラインと、高温側ピークのDSC曲線と、高温側ピークと低温側ピークとの谷部を通り、温度を示すグラフ上の横軸に対して直交するようにベースラインへ下ろした直線とによって囲まれた部分の面積に相当する。高温側ピークの融解熱量は、発泡粒子を得る際の熱履歴に大きく影響を受ける。高温側ピークの融解熱量を大きくするためには、例えば発泡操作においてポリプロピレン系樹脂粒子を容器内において分散媒に分散させて発泡温度まで昇温する際に、(発泡温度−10℃)〜発泡温度の温度範囲で、数十分間容器内温度を一定に保てば良い。
【0017】
本発明において使用する融解熱量が80J/g以下の樹脂を製造するには、例えばメルトインデックス(MI)が1〜2g/10分、エチレン成分含有量が3重量%以上のエチレン−プロピレンランダム共重合体を有機過酸化物により分解し、MIを5〜12g/10分、分子量を15万〜20万の間に調整する等の方法が挙げられる。尚、本発明は特に上記方法により得られた樹脂を用いことに限定されるものではなく、基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂の融解熱量が80J/g以下であれば良い。
【0018】
本発明方法において用いるポリプロピレン系樹脂粒子の形状は任意であるが、通常、上記基材樹脂を押出機内で溶融した後、押出機からストランド状に押出した線状樹脂を、カッター等で切断する方法により粒子状としたものを用いることができる。ポリプロピレン系樹脂粒子は0.4〜6mgのものが好ましい。基材樹脂を押出機内で溶融する際に、必要に応じて酸化防止剤、補強材、顔料、滑剤等を添加して樹脂粒子中に含有させることができる。
【0019】
本発明において、上記ポリプロピレン系樹脂粒子中には、樹脂100重量部当たり、NH型のヒンダードアミン系化合物が0.01〜2重量部含有される。ヒンダードアミン系化合物の含有量が0.01重量部未満であると、発泡粒子のブロッキングを防止することが困難となり、2重量部を超える量を添加してもブロッキング防止効果の上での差異が生じなくなり、経済的に不利益となる。ヒンダードアミン系化合物の添加量は、好ましくは樹脂100重量部当たり、0.02〜0.5重量部である。
【0020】
上記NH型のヒンダードアミン系化合物としては、例えばコハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕等が挙げられ、これらは2種以上を混合して用いることができる。特に、高分子量のポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕や、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートが食品包装用の成型体製造に使用する場合好ましい。
【0021】
本発明において、ヒンダードアミン系化合物は上記したNH型のものであることが必要であり、NH型ではないヒンダードアミン系化合物、例えば、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピリペジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等を用いた場合には、充分なブロッキング防止効果は得られない。
【0022】
本発明方法で得られる発泡粒子や発泡粒子成型体の耐光性を高めるために、紫外線吸収剤等を添加することができるが、上記ヒンダードアミン系化合物は樹脂の光安定剤としての作用も有するため、敢えて紫外線吸収剤等を添加しなくとも耐光性に優れている。
【0023】
本発明方法において、発泡剤としては、n−ブタン、i−ブタン、n−ブタンとi−ブタンとの混合物、ペンタン等の揮発性発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス系発泡剤があげられ、無機ガス系発泡剤、あるいは無機ガス系発泡剤と揮発性発泡剤との混合物等が用いられる。二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス系発泡剤と揮発性発泡剤との混合物を用いる場合、二酸化炭素、窒素、空気等の割合は30重量%以上である。これらのうち、発泡倍率の安定性、環境への負荷の少なさから、無機ガス系発泡剤の使用、特に二酸化炭素又は空気からなる無機ガス系発泡剤の使用が好ましい。
【0024】
上記発泡剤は、例えば密閉容器内で樹脂粒子と発泡剤とを分散媒に分散させ、攪拌しながら加熱することにより樹脂粒子中に含浸させることができる。樹脂粒子と発泡剤とを分散させる分散媒としては、通常は水が用いられる。発泡剤を含浸させた樹脂粒子は、所定の温度(発泡温度)において容器内より低圧下に放出することにより発泡せしめられるが、得られる発泡粒子の真の密度が0.1g/cm3 以下、更に好ましくは0.095g/cm3 以下となるように、樹脂粒子中に含浸させる発泡剤量等を調節する。発泡粒子の真の密度が0.1g/cm3 を超える場合、その発泡粒子から得られる発泡粒子成型体は柔軟性に欠けたものとなる。
【0025】
上記発泡粒子の真の密度は、予め重量を精量した発泡粒子(数g程度を使用)を、既知容積の水を入れたメスシリンダー内の水中に沈め、容積の増加量から発泡粒子の体積を求め、予め求めておいて発泡粒子重量を、この発泡粒子体積で割って求めることができる。
【0026】
本発明において、得られる発泡粒子の発泡倍率を向上させる目的で、発泡助剤を併用することができる。発泡助剤は押出機により樹脂粒子を得る際に基材樹脂に添加して樹脂粒子中に含有させることができる。発泡助剤としては、発泡倍率向上効果が高く、得られる発泡粒子の気泡径のバラツキや気泡の微細化を生じる虞のない、水溶性無機物、例えば、硼酸亜鉛、硼砂、塩化ナトリウム等を用いることが好ましい。しかしながら、発泡粒子を食品包装用の成型体製造に用いる場合には、発泡助剤としては塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、ゼオライト、タルク、水酸化アルミニウム等の食品包装の用途に使用可能なものから選択して用いる。上記した発泡助剤の中でも塩化ナトリウムは、得られた発泡粒子の食品包装用途への利用を可能とするとともに、発泡倍率向上効果が高く、発泡粒子の気泡径のバラツキや気泡の微細化を生じる虞のない水溶性無機物であることから好適な発泡助剤であると言える。発泡助剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部当たり0.005〜0.5重量部が好ましい。
【0027】
本発明において発泡粒子のブロッキングを防止するために、上記分散媒中に分散剤として無機物を添加する。本発明において使用できる無機物としては、マイカ、タルク、カオリン、リン酸三カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化アルミニウム等、従来から分散剤として用いられている物質を使用することができる。特に、層状鉱物であるマイカ、タルク、カオリン等を用いると、無機物の添加量が特に少なくて済むため好ましい。尚、発泡工程において分散媒に溶解してしまう無機物は添加の目的を達成できないため使用し得ないことは言うまでもない。本発明方法において、樹脂粒子中に特定のヒンダードアミン系化合物を含有しない場合に比べて無機物の添加量が少なくて済む理由は定かではないが、特定のヒンダードアミン系化合物は無機物に吸着され易い性質を有し、樹脂粒子中に特定のヒンダードアミン系化合物が含有されていると、分散剤として添加した無機物が、樹脂粒子表面付近のヒンダードアミン系化合物を吸着して樹脂粒子表面に確実に付着するため、少ない分散剤の添加で効果的にブロッキングが防止できるのではないかと考えられる。また特に、無機物の中でも層状鉱物はその作用が大きいと考えられる。樹脂粒子及びそれから得られる発泡粒子表面の無機物の付着は電子顕微鏡にて直接に確認でき、蛍光X線法により定量することもできる。粒子表面への無機物の付着量はブロッキング防止、成型時の融着不良防止の点から0.05〜0.3重量%であることが好ましい。尚、分散媒中にはこの種の発泡法において、必要に応じて使用されている分散助剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤等を添加することができる。
【0028】
本発明方法において使用する基材樹脂は、融解熱量が80J/g以下であり、結晶成分の割合が少ないことと、真の密度が0.1g/cm3 以下という高発泡倍率の発泡粒子を得ることとにより、発泡粒子にブロッキングが生じ易い傾向にあるが、NH型のヒンダードアミン系化合物を樹脂粒子中に特定量含有することにより、ヒンダードアミン系化合物を含有しない樹脂粒子を用いる場合に比べ、分散剤の添加量が極めて少なくても効果的にブロッキングが防止される。例えば本発明で用いると同様のポリプロピレン系樹脂粒子から、無機ガス系発泡剤を用いて真の密度が0.1g/cm3 以下の発泡粒子を得る場合、樹脂粒子中に上記特定のヒンダードアミン系化合物が含有されていない場合には、分散剤をポリプロピレン系樹脂100重量部に対して2重量部以上添加しなければブロッキングを防止できないが、本発明方法では分散剤(無機物)の添加量が0.2〜1重量部であっても、効果的にブロッキングを防止することができる。
【0029】
本発明方法において容器内に添加する発泡剤量は、真の密度が0.1g/cm3 以下で、且つ目的とする発泡倍率(密度)の発泡粒子が得られるに必要な量の発泡剤が樹脂粒子中に含浸される量である。発泡剤の添加量は、樹脂の種類、発泡剤の種類、得ようとする発泡粒子の発泡倍率等によっても異なるが、通常、樹脂粒子100重量部当たり、発泡剤2〜10重量部である。無機ガス系発泡剤、特に二酸化炭素や空気を発泡剤として用いた場合には、容器中に多量の発泡剤を添加しても、一段発泡によって得られる発泡粒子(一段発泡粒子と呼ぶ。)の発泡倍率は、せいぜい真の密度で0.035g/cm3 程度が限度である。それ以上の発泡倍率の発泡粒子を得るには、一段発泡粒子を無機ガス系発泡剤を使用して加圧することにより発泡粒子の内部圧力を高め、発泡能を付与した後、スチーム等で加熱して二段発泡させることが必要である。この場合にもブロッキングが生じる虞れがあるが、本発明方法では二段発泡の際のブロッキングも効果的に防止される。
【0030】
本発明の食品包装用発泡粒子成型体は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、金型内に充填してスチーム等で加熱して発泡粒子を発泡させるとともに、発泡粒子相互を融着せしめる方法で成型して得ることができる。本発明の発泡粒子成型体の製造に用いる発泡粒子としては、上記方法で得られる真の密度が0.1g/cm3 以下のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いるが、上記したNH型ヒンダードアミン系化合物のうち、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕及び/又はビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを含有する樹脂粒子から得られたものを用いることが好ましい。これら2種類のヒンダードアミン系化合物を含有する樹脂粒子は、発泡粒子製造時のブロッキング防止能が特に優れているとともに、得られた発泡粒子を成型して得た発泡粒子成型体は食品包装用として食品規格に合致する安全性を有する。食品包装用発泡粒子成型体の用途としては、例えば食品類用の通い箱や包装容器、果物等の梱包材、食品と接する緩衝材等が挙げられる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。尚、以下の実施例、比較例において用いたヒンダードアミン系化合物は以下の通りである。
【0032】
▲1▼ヒンダードアミン系化合物:A
ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕
【0033】
▲2▼ヒンダードアミン系化合物:B
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
【0034】
▲3▼ヒンダードアミン系化合物:C
例えばコハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル
【0035】
▲4▼ヒンダードアミン系化合物:D
テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート
【0036】
▲6▼ヒンダードアミン系化合物:E
コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物
【0037】
実施例1〜4
酸化防止剤0.13重量%、ステアリン酸カルシウム0.075重量%を含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン成分含有量4.0重量%、融点135℃、MI=5g/10分)100重量部に対し、発泡助剤として硼酸亜鉛0.05重量部、滑剤としてエルカ酸アミド0.085重量部及び、表1に示すヒンダードアミン系化合物を同表に示す割合となるように押出機内で溶融混練し(マスターバッチ法による)、次いで押出機からストランド状に押出た後、切断して平均重量2mgの樹脂粒子を得た。尚、樹脂粒子の融解熱量を表1にあわせて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
上記のようにして得た樹脂粒子100重量部当たり、水300重量部、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.008重量部、及び表1に示す分散剤(カオリン)及び発泡剤(二酸化炭素)を、400リットルのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら表1に示す発泡温度より5℃低い温度で15分間保持し、次いで発泡温度まで昇温して15分間保持した後、オートクレーブ内に二酸化炭素を導入してオートクレーブ内の平衡蒸気圧を保持しながらオートクレーブの一端を開放して内容物を大気圧下に放出し、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子(一段発泡粒子と呼ぶ。)を得た。得られた一段発泡粒子の真の密度、ブロッキングの有無、発泡粒子の示差走査熱量測定によって得たDSC曲線から求めた高温側ピークの融解熱量を表1に示す。
【0040】
上記一段発泡粒子を大気圧下に24時間放置して養生した後、空気によって加圧して4.0kg/cm2 Gの内圧を付与した。内圧を付与した発泡粒子を、密閉容器内で0.5kg/cm2 Gのスチームによって加熱して再度発泡(二段発泡)させ、発泡倍率が約50倍の発泡粒子(二段発泡粒子と呼ぶ。)を得た。二段発泡粒子の真の密度、高温側ピークの融解熱量、平均気泡径、二段発泡時のブロッキングの有無を表1にあわせて示す。尚、実施例1〜4で得られた発泡粒子及び二段発泡粒子表面にカオリンが付着していることが、電子顕微鏡にて確認できた。
【0041】
上記一段発泡粒子、二段発泡粒子のブロッキングの有無は、
○・・・ブロッキングが殆ど認められない。
△・・・ブロッキングは生じるが、発泡粒子を解砕機にて分離できる。
×・・・融着した発泡粒子を解砕機にて分離できない。
として評価した。
【0042】
上記二段発泡粒子を300mm×300mm×50mmの金型に充填し、2.6kg/cm2 (G)のスチームで加熱して成型した。得られた発泡粒子成型体の脆性を、成型品の伸びによって以下の基準で評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0043】
発泡粒子成型体の脆性の評価
○・・・JIS K6767引っ張り試験による伸びが40%を超える。
△・・・JIS K6767引っ張り試験による伸びが35〜40%。
×・・・JIS K6767引っ張り試験による伸びが35%未満。
【0044】
比較例1〜4、6
ヒンダードアミン系化合物を含有しない樹脂粒子(比較例2〜4)、ヒンダードアミン系化合物の代わりに紫外線吸収剤(2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート)を樹脂100重量部当たり0.1重量部含有する樹脂粒子(比較例1)、NH型ではないヒンダードアミン系化合物(ヒンダードアミン系化合物:E)を表1に示す割合で含有する樹脂粒子(比較例6)を用いた点を除き、実施例1〜4と同様の操作を行った。分散剤添加量、二酸化炭素添加量及び、得られた一段発泡粒子、二段発泡粒子の性状を表1にあわせて示す。また二段発泡粒子を用いて実施例と同様にして成型して得た発泡粒子成型体の脆性の評価を表1にあわせて示す。
尚、比較例1、2及び6については一段発泡粒子に分離不能なブロッキングが生じたため、二段発泡及び発泡粒子成型体の製造は行わなかった。また比較例3については二段発泡の際に発泡粒子に分離不能なブロッキングが生じたため、発泡粒子成型体の製造は行わなかった。
【0045】
比較例5
酸化防止剤0.12重量%、ステアリン酸カルシウム0.15重量%を含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体(融解熱量83J/g、エチレン成分含有量2.3重量%、融点146℃、MI=12g/10分)100重量部に対し、発泡助剤として硼酸亜鉛0.05重量部、滑剤としてエルカ酸アミド0.085重量部を押出機内で溶融混練し(マスターバッチ法による)、次いで押出機からストランド状に押出た後、切断して平均重量2mgの樹脂粒子を得た。
【0046】
このようにして得た樹脂粒子100重量部、水300重量部、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.008重量部、表1に示す分散剤(カオリン)及び発泡剤(二酸化炭素)を、400リットルのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら表1に示す発泡温度より5℃低い温度で15分間保持し、次いで同表に示す発泡温度まで昇温して15分間保持した後、オートクレーブ内に二酸化炭素を導入してオートクレーブ内の平衡蒸気圧を保持しながらオートクレーブの一端を開放して内容物を大気圧下に放出し、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子(一段発泡粒子と呼ぶ。)を得た。得られた一段発泡粒子の真の密度、ブロッキングの有無、発泡粒子の示差走査熱量測定によって得たDSC曲線から求めた高温側ピークの融解熱量を表1に示す。
【0047】
上記一段発泡粒子を大気圧下に24時間放置して養生した後、空気によって加圧して4.0kg/cm2 (G)の内圧を付与した。内圧を付与した発泡粒子を、密閉容器内で0.7kg/cm2 (G)のスチームによって加熱して再度発泡(二段発泡)させ、発泡倍率が約50倍の発泡粒子(二段発泡粒子と呼ぶ。)を得た。二段発泡粒子の真の密度、高温側ピークの融解熱量、平均気泡径、二段発泡時のブロッキングの有無を表1にあわせて示す。
【0048】
上記二段発泡粒子を300mm×300mm×50mmの金型に充填し、3.4kg/cm2 (G)のスチームで加熱して成型した。得られた発泡粒子成型体の脆性を実施例と同様にして評価した結果を、表1にあわせて示す。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明方法は、無機ガス系発泡剤、あるいは30重量%以上の無機ガス系発泡剤と揮発性発泡剤との混合物からなる発泡剤を用いて融解熱量が80J/g以下であるポリプロピレン系樹脂粒子から真の密度が0.1g/cm3 以下という低密度の発泡粒子を得るという、ブロッキングが生じやすい条件で発泡粒子を製造する方法でありながら、樹脂粒子中にNH型のヒンダードアミン系化合物を特定量含有させたことにより、分散剤を多量に添加しなくとも一段発泡や二段発泡の際のブロッキングを効果的に防止できる。その結果、本発明の発泡粒子は、多量の滑剤や分散剤を用いて得た発泡粒子のように、発泡粒子の気泡が連続気泡化して成型時の二次発泡力が不足等の問題や、成型時の発泡粒子相互の融着不良発生等の成型性不良を防止できるとともに、分散剤を含む排水の処理コストの低減化に貢献できる。また融解熱量が80J/g以下のポリプロピレン系樹脂からなる真の密度が0.1g/cm3 以下の発泡粒子を成型して得られる発泡粒子成型体は低密度で柔軟性に優れるため、精密機器等の緩衝用等として好適であるとともに、成型体が裂けたりする虞れが少なく、打ち抜き加工等の二次加工性にも優れている。更に、特定のヒンダードアミン系化合物を含有する樹脂粒子から得た発泡粒子を成型して得られる本発明の発泡粒子成型体は、成型性不良等の不具合が防止されたものであるとともに、食品包装用としての安全性にも優れるため、食品包装容器等として好適に利用できる等の効果を有する。
Claims (4)
- 無機ガス系発泡剤、あるいは30重量%以上の無機ガス系発泡剤と揮発性発泡剤との混合物からなる発泡剤を含有するポリプロピレン系樹脂粒子を、容器内において、無機物が添加された分散媒に分散して加熱軟化している状態から、容器内よりも低圧下に放出して発泡させ、真の密度が0.1g/cm3以下の発泡粒子を得るポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法において、樹脂粒子の基材樹脂が融解熱量80J/g以下のポリプロピレン系樹脂であり、且つ樹脂粒子中に基材樹脂100重量部当たり、NH型のヒンダードアミン系化合物が0.01〜2重量部添加されていることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
- 真の密度が0.1g/cm3以下で、表面にマイカ、カオリン、タルクから選択された 1 種または2種以上の無機物が付着しており、且つ基材樹脂100重量部当たり、NH型のヒンダードアミン系化合物が0.01〜2重量部添加されているとともに、基材樹脂が融解熱量80J/g以下のポリプロピレン系樹脂であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
- 請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子よりなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
- 発泡粒子成型体が食品包装用である請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成型体。
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