JP3909406B2 - Ni基合金材の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はNi基合金材の製造方法に関し、更に詳しくは、微細で、粒径のばらつきが小さい結晶粒組織を有するNi基合金材を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば火力発電所に設置されるガスタービンには、スピンドルボルトと呼ばれる長尺ボルトに複数枚の翼車板を連結した構造のものがある。そして、上記スピンドルボルトの構成材料としては、インコネル718に代表されるNbを含有するNi基合金を使用することが検討されている。
【0003】
その場合、用いるNi基合金には、その再結晶粒が微細であり、かつ粒径のばらつきが小さい組織、すなわち再結晶粒の整細粒化組織になっていることが強く求められている。具体的には、ASTM E112で規定する結晶粒度が、平均値で#7以上で、かつ最大値で#4以上であることが要求されている。
ところで、Ni基合金材は、通常、所定組成の鋳塊を熱間鍛造して製造されている。その1例を次に説明する。
【0004】
まず、鋳塊を分塊鍛造して鋼片としたのち固溶化処理を行って組織を均一化する。ついで、細径加工と結晶粒を微細化するために、その処理材に熱間鍛造を行い、更に仕上げ鍛造を行う。そして、仕上げ鍛造後の鍛造材に固溶化処理を行って組織の均一化と再結晶粒を析出させ、必要に応じては更に時効処理を行って全体の製造工程を終了する。
【0005】
そして、上記した一連の製造工程において、次のような処理を施して微細な再結晶粒組織を形成することが知られており、そして実施されている(USP No. 3,660,177を参照)。
上記先行技術で開示されている処理方法は、前工程の熱間鍛造で製造された鍛造材に熱処理を施すことにより、当該鍛造材の母相の結晶粒界に微細なδ相を析出させる方法である。
【0006】
このδ相は、Ni3Nbから成る金属間化合物であって、針状のウィドマンステッテン組織形状をしており、前工程の熱間鍛造時に結晶粒界に蓄積された加工歪みエネルギのサイトを起点として前記結晶粒界に析出する。
そして、このδ相は結晶粒界に分布することにより、後工程における固溶化処理などの熱処理時に再結晶粒の成長を抑制するピン止め効果を発揮する。その結果、再結晶粒の粗大化は抑制され、得られるNi基合金材の再結晶粒組織は微細粒状態を維持する。
【0007】
なお、このような効果を発揮するδ相の析出工程の実施に際しては、前記した仕上げ鍛造工程とその直前の熱間鍛造工程の間に配置されるのが通例である。そして、δ相が析出している材料を更に鍛造して当該δ相を微細に切断することにより、微細なδ相を母相内に均一分散させ、ピン止め効果をより有効に発揮させて微細な再結晶粒組織を形成することも行われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、Ni基合金材の一連の製造工程において、δ相の析出・分散工程を介挿することにより、結晶粒組織の微細化を実現することはできる。
しかしながら、微細化実現のための条件がそのまま結晶粒の粒径ばらつきを小さくするための条件として適用できるわけではないという問題がある。
【0009】
したがって、例えば前記したスピンドルボルトの場合のように、ASTM E112で規定する結晶粒度の平均値が#7以上で、かつ最大値が#4以上であることを要求されているような整細粒化した再結晶粒組織のNi基合金材を製造する際に、上記したδ相の析出・分散工程を採用したとしても、結晶粒の微細化の条件の外に、結晶粒の粒径ばらつきを小さくするための条件を確立することが必要になる。
【0010】
本発明は、δ相の析出・分散工程の介挿を前提とするNi基合金材の製造方法において、再結晶粒の微細化と同時に再結晶粒の粒径ばらつきを小さくすることができる、すなわち再結晶粒の整細粒化を実現することができるNi基合金材の製造方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、C:0 . 08質量%以下,Si:0 . 35質量%以下,Mn:0 . 35質量%以下,Ni:50 . 00〜55 . 00質量%,Cr:17 . 00から21 . 00質量%,Mo:2 . 80〜3 . 30質量%,Al:0 . 20〜0 . 80質量%,Ti:0 . 65〜1 . 15質量%,Nb+Ta:4 . 75〜5 . 50質量%,P:0 . 015質量%以下,S:0 . 015質量%以下,Cu:0 . 30質量%以下,Co:1 . 00質量%以下、B:0 . 006質量%以下から成るNi基合金の鋳塊に分塊鍛造を行い、ついで温度980±10℃で固溶化処理を行なったのち、表面加工温度800〜900℃で鍛錬比1 . 6以上の熱間鍛造を行って製造された熱間鍛造材に温度915±10℃の熱処理を行って、Ni3Nbから成るδ相を母相に析出させる工程(以下、工程A1という);
得られた処理材に温度900℃以下で鍛錬比2以上の仕上げ鍛造を行って、前記δ相の切断片が母相に分散する鍛造材にする工程(以下、工程A2という);および、
前記鍛造材に固溶化処理を行う工程(以下、工程A3という);
を備えていることを特徴とするNi基合金材の製造方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、ASTM E112で規定する結晶粒度が平均値で#7以上であり、かつ最大値が#4以上になっているNi基合金材を製造する方法である。
まず、本発明の工程図の1例Aを図1に示す。この工程Aは、後述する熱間鍛造材に熱処理を施して当該熱間鍛造材の結晶粒界にδ相を析出させる工程A1と、得られた処理材に後述する仕上げ鍛造を行う工程A2と、得られた仕上げ鍛造材に後述する固溶化処理を行う工程A3とで構成されている。
【0014】
ここで、工程Aを実施するための素材である熱間鍛造材は、図1の工程Bによって製造される。その工程Bは、所定組成のNi基合金の鋳塊を分塊鍛造する工程B1と、得られた鋼片に後述する固溶化処理を行う工程B2と、得られた処理材に後述する熱間鍛造を行う工程B3とで構成されている。
上記した工程Bと工程Aは、連続する工程として組み立てられていてもよく、また、工程Bと工程Aはそれぞれ別置された工程となっていてもよい。以後、全体の工程は、図1で示したように、工程Bと工程Aが連続して接続されているものとして本発明の製造方法を説明する。
【0015】
まず、例えば真空アーク溶解法で上記した組成の合金溶湯を溶製したのちその鋳塊を製造する。
その場合、Ni基合金としてはNbを含有するものであることが必要であり、具体的には、インコネル718などをあげることができる。
ついで鋳塊に分塊鍛造を行う工程B1を実施する。そのときの鍛造温度は次のように設定することが好ましい。すなわち、分塊鍛造開始時点ではδ相の固溶温度以上の温度で行い、分塊鍛造終了時点ではδ相の固溶温度と再結晶温度との間の温度となるような態様である。
【0016】
工程B1終了後、鋼片は、次に工程B2に移送され、そこで固溶化処理が行われ、分塊鍛造時に蓄積された歪みの除去と結晶粒の整細粒化が行われる。
このときの固溶化温度は、工程B1における鍛錬比を勘案して決められるが、概ね、970〜990℃であればよく、また1.0〜1.5時間程度の処理時間であればよい。
【0017】
ついで工程B3に移送され、そこで熱間鍛造して工程Aの素材である熱間鍛造材が製造される。
この工程B3は、鍛造材の細径加工工程である。同時に、結晶粒をより微細化し、その結晶粒界に加工歪みエネルギを蓄積させて、後述するδ相の析出サイトを形成する工程である。
【0018】
工程B3における鍛造材の表面加工温度は800〜900℃に設定され、また鍛錬比は1.6以上に設定される
表面加工温度が800℃より低い場合は鍛造時にワレ、カケなどが発生しやすく、逆に表面加工温度が900℃より高くなると、結晶粒の粗大化のような不都合が生ずるからである。
【0019】
また、鍛錬比が1.6より小さい熱間鍛造の場合は、結晶粒をより微細化することは不充分であり、また結晶粒界におけるδ相の析出サイトの形成量も少なくなるため、目的とする再結晶粒が整細粒化したNi基合金材の製造が困難になる。
このような工程Bを経由することにより、工程Aの素材である熱間鍛造材が製造される。
【0020】
この熱間鍛造材は、まず、工程A1で熱処理される。この過程で工程B3で形成されたδ相の析出サイトには、そこを起点としてδ相が析出する。
このときの温度は905〜925℃に設定されることが必要である。処理温度が905℃より低い場合は、δ相が析出しなかったり、または析出量が少なかったりして本発明の目的が果たせなくなる。逆に処理温度が925℃より高い場合でも、δ相の析出量が少なくなるような不都合が生ずる。
【0021】
熱処理時間が短すぎると同じくδ相の析出量は減少する。概ね24〜36時間程度であればよい。
工程A1の終了後、処理材は工程A2に移送され、そこで仕上げ鍛造が行われる。
この工程A2では、δ相が破壊・切断され、当該δ相は微細で粒形状をした切断片となって母相内に均一分散し、同時に加工歪みが蓄積される。
【0022】
すなわち、工程A2はδ相に加工歪みを与えてそれを破壊する工程である。そのため、工程A2における鍛造温度は、処理材の表面加工温度が900℃以下となるように設定され、また鍛錬比は2以上に設定される。
表面加工温度を900℃より高くすると、母相の塑性変形も起こるようになるため、析出しているδ相に有効に加工歪みが付与できなくなる。すなわち、δ相の切断が起こりづらくなる。また、鍛錬比を2より小さくすると、同じくδ相の切断が困難となる。
【0023】
得られた仕上げ鍛造材は、次に工程A3に移送され、そこで固溶化処理が施される。
この工程A3では、工程A2で蓄積された加工歪みエネルギにより、工程A1で形成された微細な結晶粒の再結晶化が起こる。しかし、結晶粒界に形成され、母相内に均一に分散する微細なδ相の切断片がピン止め効果を発揮するので、粗大な再結晶粒の成長は抑制される。
【0024】
この工程A3における固溶化温度は、975℃近辺に設定することが好ましい。理由は明確ではないが、得られたNi基合金材における結晶粒度の平均値が揃っており、整細粒化の向上が図られるからである。
このようにして、目的とするNi基合金材が製造される。得られるNi基合金材は、ASTM E112で規定する結晶粒度が、平均値で#7以上であり、かつ最大値が#4以上であって、その再結晶粒は微細であり、かつ粒径のばらつきが小さいものになっている。
【0025】
なお、上記した工程A3に続けて、更に620℃で8時間の時効処理を行い、更に続けて720℃で8時間の時効処理を行ってもよい。
【0026】
【実施例】
C:0.04質量%,Si:0.1質量%,Mn:0.005質量%,Ni:53質量%,Cr:18質量%,Mo:3質量%,Al:0.5質量%,Ti:1質量%,Nb+Ta:5.2質量%から成るインコネル718相当品の鋳塊を真空アーク溶解法で製造した。
【0027】
この鋳塊に対し、表1で示した条件を適用して各種の棒材を製造した。そして、それら棒材における表面部,中心部、および表面から1/4の深さの箇所の結晶粒度をASTM E112で規定する方法で測定した。以上の結果を一括して表1に示した。
【0028】
【表1】
Figure 0003909406
【0029】
表1から次のことが明らかである。
実施例1と比較例1を対比して明らかなように、両者とも、工程Bの条件,δ相の析出処理(工程A1)の条件、および固溶化処理(工程A3)の条件はいずれも同じであり、仕上げ鍛造(工程A2)の条件のみが異なっているにもかかわらず、実施例1の結晶粒度は比較例1の結晶粒度に比べて微細であり、しかも粒径のばらつきが小さい。
【0030】
このことから、実施例1の場合のように、仕上げ鍛造を低温で行うと、工程A1で析出していたδ相の切断が進んでその切断片が母相内に分散し、再結晶粒の成長に対するピン止め効果を有効に発揮していることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれは、再結晶粒がASTM E112で規定する結晶粒度で平均値#7以上、かつ最大値#4以上になっていて、整細粒化した再結晶粒組織を有するNi基合金材を製造することができる。
これは、熱間鍛造材の結晶粒界にδ相を析出させたのち、本発明の条件下で仕上げ鍛造を行って、当該δ相を微細化して母相全体に分散せしめ、そのことにより、固溶化処理時におけるピン止め効果を有効に発揮させることによってもたらされる効果である。
【0032】
本発明の製造方法における上記効果は、通常の鍛造機を用いても実現することが可能である。しかし、被鍛造材を4方向から高速で鍛造することができる高速4面鍛造機を用いると、例えば工程A2における仕上げ鍛造時に、δ相への低温歪みを短時間で、しかも相対的に低温下で有効に与えることができるので、高い生産性の下で目的とするNi基合金材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の概略を示す工程図である。

Claims (3)

  1. C:0 . 08質量%以下,Si:0 . 35質量%以下,Mn:0 . 35質量%以下,Ni:50 . 00〜55 . 00質量%,Cr:17 . 00から21 . 00質量%,Mo:2 . 80〜3 . 30質量%,Al:0 . 20〜0 . 80質量%,Ti:0 . 65〜1 . 15質量%,Nb+Ta:4 . 75〜5 . 50質量%,P:0 . 015質量%以下,S:0 . 015質量%以下,Cu:0 . 30質量%以下,Co:1 . 00質量%以下、B:0 . 006質量%以下から成るNi基合金の鋳塊に分塊鍛造を行い、ついで温度980±10℃で固溶化処理を行なったのち、表面加工温度800〜900℃で鍛錬比1 . 6以上の熱間鍛造を行って製造された熱間鍛造材に温度915±10℃の熱処理を行って、Ni3Nbから成るδ相を母相に析出させる工程;
    得られた処理材に表面加工温度900℃以下で鍛錬比2以上の仕上げ鍛造を行って、前記δ相の切断片が母相に分散する鍛造材にする工程;および、
    前記鍛造材に固溶化処理を行う工程;
    を備えていることを特徴とするNi基合金材の製造方法。
  2. 仕上げ鍛造および熱間鍛造は、いずれも、高速4面鍛造機を用いて行われる請求項1のNi基合金材の製造方法。
  3. 得られたNi基合金材の結晶粒度は、ASTM E112で規定する結晶粒度で、平均値が#7以上、かつ最大値が#4以上になっている請求項1または2のNi基合金材の製造方法。
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