JP3908717B2 - 大気汚染物質の除去方法 - Google Patents

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Description

この発明は、高速道路や幹線道路及びその周辺、病院内の手術室や集中治療室の空間、厨房及び倉庫、冷蔵庫等の食品関連設備内、ハウスシック症候郡の原因となる新築の家屋等を始めとした大気中への汚染物質の発生が想定される種々の環境下において、光触媒酸化チタンを用いて悪臭物質の分解脱臭、有害物質の分解除去、及び病原菌の殺菌等を行って大気中の大気汚染物質を除去する方法に係り、特にアナタース型結晶とルチル型結晶との比率が制御された光触媒酸化チタンを用いて大気中の大気汚染物質を除去する大気汚染物質の除去方法に関する。
近年、空気中に飛散する悪臭や有害物質を分解して除去したり、あるいは、排水処理や浄水処理等を行うための環境浄化材料として、更には、種々の基材の表面に優れた親水性を付与するための親水性付与剤として、温度、pH値、ガス雰囲気、毒性等の反応条件の制約が少なく、しかも、高活性で取扱が容易であることから、光触媒活性を有する酸化チタン(チタニア)が着目されており、例えば、アルデヒド、メルカプタン、アンモニア、各種のアミン類等の悪臭物質や有害物質の分解脱臭や、NOX、SOX、PCB、ダイオキシン、有機ハロゲン化合物、有機リン化合物、界面活性剤等の有害物質の分解除去や、各種の菌類や藻類等の殺菌・藻処理等の用途を始めとして、建築材料や土木材料等の親水性処理等の多くの用途に応用されている。
そして、このような酸化チタンを工業的に製造する方法については、大別すると、精製した四塩化チタンの水溶液を高温(800〜1,000℃)の酸素雰囲気下に噴霧して四塩化チタンを酸化し、酸化チタン粒子を得る気相法と、水酸基を有する酸化チタン前駆体を製造してこの酸化チタン前駆体を500℃以上で焼成する液相法とが知られている(清野 学著技報堂出版発行「酸化チタン−物性と応用技術」pp18-27(1991.6.25))。
しかしながら、前者の気相法においては、得られる製品が既に酸化チタン粒子であることから、光触媒として利用する際にその目的に応じて種々の剤形や形態に加工する、いわゆる二次加工がし難いという問題があり、また、液相法においては、酸化チタン前駆体の状態で種々の剤形や形態に加工することができ、二次加工が容易ではあるが、500℃以上で焼成する際に酸化チタン前駆体における酸化チタンの結晶形態が比較的光触媒活性の高いアナタース型から比較的光触媒活性の低いルチル型に転移し、これらアナタース型結晶とルチル型結晶の存在比率が変化し、焼成時に光触媒活性が低下するという問題がある。
ところで、酸化チタンが高い光触媒活性を発現する原因については必ずしも明らかではないが、純粋なアナタース型の酸化チタンと純粋なルチル型の酸化チタンとを用い、それぞれの混合割合を変えて触媒組成物を調製し、光触媒活性を評価した結果、アナタース型酸化チタンとルチル型酸化チタンとが混在し、その混合状態が光触媒活性を支配する重要な因子になっていることが報告されている(触媒 Vol.45, No.1, pp35-37(2003))。
しかしながら、アナタース型結晶とルチル型結晶の比率が制御された酸化チタンを工業的に製造するための方法については知られていない。
清野 学著技報堂出版発行「酸化チタン−物性と応用技術」pp18-27(1991.6.25) 触媒 Vol.45, No.1, pp35-37(2003)
そこで、本発明者らは、酸化チタン前駆体を500℃以上の温度で焼成して得られ、種々の剤形や形態に加工する際の二次加工が容易であり、しかも、アナタース型結晶とルチル型結晶との比率が制御された光触媒酸化チタンを用い、大気中に含まれる悪臭物質、有害物質、及び病原菌等の大気汚染物質を酸化分解することについて鋭意検討した結果、酸化チタン前駆体スラリー中に酸性水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の溶解領域に降下させると共にチタン原料を追加する操作と、この操作で得られたチタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の析出領域に上昇させる操作とからなるpHスイング操作を少なくとも3回以上繰り返して酸化チタン前駆体を調製し、この酸化チタン前駆体を500℃以上の高温で焼成して得られたアナタース型結晶とルチル型結晶との比率が制御された光触媒酸化チタンを用いることにより、大気中に含まれる大気汚染物質を効率良く酸化分解することができることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、500℃以上の高温で焼成して得られ、光触媒として用いる際に要求される種々の剤形や形態に二次加工することが容易であって、アナタース型結晶とルチル型結晶との比率が制御された光触媒酸化チタンを用い、大気中に含まれる悪臭物質、有害物質、及び病原菌等の大気汚染物質を効率良く酸化分解することができる大気汚染物質の除去方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、チタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸基を有する酸化チタン前駆体を製造し、次いでこの酸化チタン前駆体を高温で焼成して光触媒用酸化チタンを製造するに際し、上記酸化チタン前駆体の製造時にはチタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸基を有する酸化チタン前駆体を析出させた後、得られた酸化チタン前駆体スラリー中に、酸性の原料水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の溶解領域に降下させると共に原料を追加投入する操作と、この操作で得られたチタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の析出領域に上昇させる操作とからなるpHスイング操作を少なくとも3回以上7回以下の範囲で繰り返すと共に、焼成後に光触媒として利用するのに必要な形状に二次加工し、また、この酸化チタン前駆体の焼成時には焼成温度500℃以上600℃以下の条件下で行い、上記酸化チタン前駆体製造時のpHスイング操作の回数と酸化チタン前駆体焼成時の温度及び時間とを制御することにより製造され、アナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)が1.7〜11.5の範囲内であって、BET表面積が42m 2 /g以上である光触媒用酸化チタンを用い、大気中の大気汚染物質を酸化分解することを特徴とする大気汚染物質の除去方法である。
本発明において、酸化チタン前駆体を製造する際に用いられるチタン原料については、特に制限は無く、例えば、チタンの塩化物、弗化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、蓚酸塩、フッ酸塩、ケイ酸塩、ヨウ素酸塩等のチタン塩、チタン酸、チタンのオキソ酸塩及びチタンのアルコキシド類等を挙げることができ、好ましいものとしては、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、三塩化チタン、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、オルトチタン酸、メタチタン酸、四臭化チタン、四弗化チタン、三弗化チタン、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム等を挙げることができる。これらのチタン原料は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上の混合物として使用することもできる。
また、この酸化チタン前駆体の製造に用いる酸性水溶液や塩基性水溶液としては、例えば、四塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、三塩化チタン、四臭化チタン、四弗化チタン、三弗化チタン等の他に、硝酸、塩酸、硫酸等の酸性水溶液や、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の塩基性水溶液を挙げることができ、これらの酸性水溶液及び塩基性水溶液についても、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上の混合物として使用することもできる。これらの酸性水溶液及び塩基性水溶液は、上記のチタン原料のみでは所定のpH値に制御できない場合には、チタン原料と共に用いて、pH値を最適に制御することにも用いられる。
更に、酸化チタン前駆体を製造する際に用いる溶媒は、基本的には水であるが、特に制限されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、ジオキサン等の水溶性有機溶剤の水溶液等を用いることもできる。
ここで、この酸化チタン前駆体を製造する際の反応条件については、製造時の水系溶媒中におけるチタン濃度が酸化チタン換算で通常0.1〜15wt%、好ましくは0.5〜10wt%であるのがよく、また、反応温度が常温から300℃、好ましくは常温から180℃、より好ましくは常温から100℃であり、また、反応圧力は原則的に常圧(0MPa)であり、使用する溶媒系と反応温度の条件下で液相を維持する圧力があれば十分である。
本発明においては、チタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸基を有する酸化チタン前駆体を析出させた後、得られた酸化チタン前駆体スラリー中に、酸性水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の溶解領域に降下させる操作と、この操作で得られたチタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の析出領域に上昇させる操作とからなるpHスイング操作を3回以上7回以下の範囲で繰り返す必要がある。このpHスイングの繰返し回数が多いほど、500℃以上600℃以下で焼成した際のアナタース型結晶からルチル型結晶への転移が抑制され、得られた光触媒酸化チタンにおけるアナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)が大きくなる。
ここで、具体的なpHスイング操作の方法は、チタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸基を有する酸化チタン前駆体を析出させ、得られた酸化チタン前駆体スラリー中に、酸性水溶液の添加と塩基性水溶液の添加とを交互に行って、酸化チタン前駆体の溶解領域であるpH3.5以下、好ましくは0.5≦pH≦2.0と酸化チタン前駆体の析出領域であるpH7以上、好ましくは7.0≦pH≦8.5との間をスイングさせるものである。また、酸性水溶液の添加後には微細な粒子が溶解消失するに十分な時間、通常3〜60分、好ましくは5〜20分間保持し、塩基性水溶液の添加後には粒子成長に十分な熟成時間、通常3〜30分、好ましくは5〜15分間保持して熟成時間を設けるのがよい。
本発明の酸化チタン前駆体は、上記のpHスイング操作によって得られた酸化チタン前駆体スラリーをろ過し、必要により脱水・乾燥し、また、必要により洗浄して得られるものであり、この際に、酸化チタン前駆体を固形物基準で含水量10〜200wt%、好ましくは50〜100wt%にまで脱水あるいは乾燥され、必要により洗浄を行う場合は、湿潤ケーキを再度水に分散して濾過する操作を繰り返すことによって洗浄することができる。洗浄の際は、この操作を好ましくは1〜3回繰り返すことで合成時に生じた水酸化チタン以外の化合物を除去することができる。こうして得られた酸化チタン前駆体は、次いで光触媒として用いる際に要求される種々の剤形や形態に二次加工される。
この酸化チタン前駆体の二次加工については、特に制限されるものではなく、例えば、湿潤ケーキのまま所望の形状に成形して焼成することや、湿潤ケーキを所望の濃度に水等の溶媒中に分散させて塗布した後に焼成すること等を例示することができ、これらの使用形態は応用される製品の必要に応じて様々な形態で利用することが可能である。特に、光触媒酸化チタンを大気に曝すことで悪臭物質、有害物質、及び病原菌等の大気汚染物質を効率良く酸化分解するためには、大気との接触、及び光を受光する幾何表面積が大きなことが好ましく、タイルやパネル等の形状に酸化チタン前駆体を成形したり、そのような形状のチタニア以外の材料からなる基材に酸化チタン前駆体を塗布等の方法によって固定加工することが効果的である。この際、基材等の表面に酸化チタン前駆体を固定する手段については特に制限はなく、酸化チタン前駆体を分散せた溶液を塗布あるいは噴霧してもよく、あるいは酸化チタン前駆体を成形した固体を基材等の表面に接着するようにしてもよい。また、ハウスシック症候群の原因物質であるホルムアルデヒド等の分解等を目的に、一般の家庭等で使用する場合は、陶磁器、人形等の意匠性を有する置物等の形状に酸化チタン前駆体を成形することも可能であり、そのような形状の基材に酸化チタン前駆体を塗布等の方法によって固定加工することも可能である。
このように二次加工して得られた光触媒用酸化チタン前駆体は、次に、更に温度40〜350℃、好ましくは80〜200℃で0.5〜24時間、好ましくは0.5〜5時間乾燥した後、温度500℃以上600℃以下で0.5〜48時間、好ましくは1〜5時間焼成され、光触媒として用いる酸化チタンとされる。この焼成温度については、高くなればなるほどアナタース型結晶(An)がルチル型結晶(Ru)に転移し、アナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)が低下する傾向があるので、光触媒酸化チタンとして望まれるアナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)に応じて、適当な焼成温度と時間を選択するのがよい。
本発明により、アナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)が50%以上で高い光触媒活性を有する酸化チタンを製造する場合には、pHスイングの繰返し数を5回以上、好ましくは7回以下とするのがよく、また、焼成温度については、更に好ましくは550〜600℃とするのがよい。
また、本発明においては、上記のように、焼成前に前駆体を焼成後に光触媒として利用するのに必要な形状に予め二次加工することが必要である。このように、焼成前に前駆体を予め二次加工することにより、種々の剤形や形態への二次加工が容易になるだけでなく、アナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)の制御も可能になって、優れた光触媒活性も達成することができる。
本発明において、上記のようにして得られた光触媒酸化チタンを用いて大気中の大気汚染物質を酸化分解する際に、この光触媒酸化チタンに供する光源については、確実に光触媒酸化チタンをバンド・ギャップより大きなエネルギーを持つ光(およそ380nm以下の波長を持つ光)で照射できればよく、具体的には、太陽光や、バンド・ギャップより大きなエネルギーを持つ人工的光源等を挙げることができ、悪臭物質、有害物質、及び病原菌等の大気汚染物質の除去が必要な環境に応じて大気汚染物質除去方法の具体的な適用操作を考慮して適宜選択できる。
本発明の大気汚染物質の除去方法は、例えば、高速道路や幹線道路及びその周辺、病院内の手術室や集中治療室等の空間、厨房及び倉庫、冷蔵庫等の食品関連設備内、ハウスシック症候郡の原因となる新築の家屋等を始めとした大気汚染物質の発生が想定される種々の環境下において、NOX、SOX等の酸化物、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類等の有害有機化合物、メルカプタン、アンモニア、各種のアミン類等の悪臭物質、及び病原菌、ウイルス等の有機体等といった大気中に含まれる大気汚染物質を効率良く分解して除去するのに適している。
本発明の大気汚染物質の除去方法は、光触媒として用いる際に要求される種々の剤形や形態に二次加工することが容易であるだけでなく、製造時のpHスイング操作の繰返し数によって、500℃以上の高温で焼成した後にアナタース型結晶とルチル型結晶との比率が制御された光触媒酸化チタンを用いるので、高活性であり、悪臭物質や有害物質、更には病原菌等といった大気汚染物質の発生が想定される種々の環境下においてこれらの大気汚染物質を効率良く分解して除去することができる。
実施例及び試験例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
〔実験例1〜21〕
純水で製造した氷を粉砕して容器に入れ、この容器内に四塩化チタン(TiCl4)500gを添加して粉砕した氷と混合し、更に容器内に純水を添加して溶液全体を1,000mlとし、四塩化チタン水溶液(溶液A)を調製した。
また、28wt%-アンモニア水を同量の純水で希釈し、14wt%-アンモニア水(溶液B)を調製した。
次に、35Lの反応容器に純水20Lを入れて75℃まで加熱し、更に撹拌下に上記溶液Aの500mlを添加して混合した。得られた溶液のpH値は1.1であった。
続いて、反応容器中には撹拌下に上記溶液Bの710mlを一度に添加した。得られた溶液はpH値8.5となり、この操作により溶液中に酸化チタン前駆体が析出し、溶液はスラリー状になった。
このようにして得られた酸化チタン前駆体スラリーに、撹拌下に500mlの溶液Aを添加し、pH値を1.1に低下させて5分間保持し、次いで撹拌下に720mlの溶液Bを添加し、pH値を8.5に上昇させて5分間保持するpHスイング操作を表1に示す回数だけ繰り返し、酸化チタン前駆体スラリーを得た。
各実験例1〜21の酸化チタン前駆体スラリーを濾過し、酸化チタン前駆体の湿潤ケーキを得た後、各湿潤ケーキをそれぞれ20Lの純水中に分散させて30分間撹拌した後再び濾過する洗浄操作を3回実施し、湿潤ケーキ中に残存する塩化アンモニウムを除去した。
得られた各実験例1〜21の湿潤ケーキを120℃で3時間乾燥し、各実験例1〜21の酸化チタン前駆体を得た。
上記実験例1〜21で得られた各酸化チタン前駆体について、空気流通下にそれぞれ表1に示す温度及び時間の条件で焼成し、冷却した後に粉砕して各実験例1〜21の酸化チタン粉末を得た。
得られた各実験例1〜21の光触媒酸化チタンについて、窒素吸着によりBET表面積(m2/g)を測定すると共に、水銀圧入法ポロシメトリーにより細孔分布測定〔細孔容積(cc/g)及び平均細孔径(nm)〕を行い、更にX線回折計(PHLIPS社製XPERT SYSTEM/APD-1700)を用いてX線回折(XRD)パターンを測定し、各酸化チタン粉末中におけるアナタース型結晶(An)の最強干渉ピークの強度IAnとルチル型結晶(Ru)の最強干渉ピークの強度IRuから、一般的に用いられる次の(1)式からアナタース型結晶の含有量(重量%)を求め、アナタース型結晶の含有量とルチル型結晶の含有量の和を100としてルチル型結晶の含有量を求めた。またこれらから、アナタース型結晶の比率(An/Ru)を計算した。
アナタース型結晶含有率(重量%)=100/[1+1.265(IRu/IAn)]……(1)
これらの結果を表1に示す。
〔試験例1〕
〔NO光触媒分解反応試験(気相試験)〕
また、上記各酸化チタン粉末について、下記のNO光触媒分解反応試験(気相試験)を行い、光触媒活性を調べた。
耐熱性と光透過性に優れた石英ガラス製反応セル(容量:73.3cm3)内に上記各実験例1〜21の光触媒酸化チタン100mgを入れ、大気中で吸着水の多くが脱離する523Kまで徐々に昇温させ、更に723Kまで昇温させた後、同温度で3時間排気させた。酸素処理は液体窒素トラップで精製した酸素を接触部に20Torr以上導入し、723Kで2時間行った。その後、室温に戻し、再びゆっくりと473Kまで昇温させ、同温度で2時間排気した。
以上の前処理をした後、反応セル内に反応ガスであるNOを5Torrの圧になるまで導入し、275Kで光触媒酸化チタンに紫外光(UV-27フィルター使用;λ>270nm)を照射し、未反応物のNOや反応生成物であるN2Oを液体窒素でトラップしてガスクロマトグラフィー(島津製作所社製GC-12A,14A;Porapack Q+S,2m+2m)で定性及び定量し、また、トラップされない反応性生成物のN2とO2をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製GC-12A,14A;モレキュラーシーブ5A,6m)で定性及び定量し、1μmol中に生成したN2とN2Oの量を求めた。
結果を表1に示す。
Figure 0003908717
表1に示す結果から明らかなように、pHスイングの繰返し回数が多くなればなるほど、500℃以上で焼成して得られる光触媒酸化チタンにおけるアナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)が大きくなり、比較的高い光触媒活性が発現する。また、焼成温度が高くなるにつれてアナタース型結晶(An)がルチル型結晶(Ru)に転移してルチル型結晶の比率が高くなり、光触媒活性も低下する傾向がある。
本発明の大気汚染物質の除去方法によれば、単に光触媒として用いる際に要求される種々の剤形や形態に二次加工することが容易であるばかりでなく、500℃以上の高温で焼成した際にアナタース型結晶とルチル型結晶との比率が制御され、結果として光触媒活性が制御された光触媒酸化チタンを用いるので、高活性であり、悪臭物質や有害物質、更には病原菌等といった大気汚染物質の発生が想定される種々の環境下においてこれらの大気汚染物質を効率良く分解して除去することができる。

Claims (8)

  1. チタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸基を有する酸化チタン前駆体を製造し、次いでこの酸化チタン前駆体を高温で焼成して光触媒用酸化チタンを製造するに際し、上記酸化チタン前駆体の製造時にはチタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸基を有する酸化チタン前駆体を析出させた後、得られた酸化チタン前駆体スラリー中に、酸性の原料水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の溶解領域に降下させると共に原料を追加投入する操作と、この操作で得られたチタン含有酸性水溶液に塩基性水溶液を添加してpH値を酸化チタン前駆体の析出領域に上昇させる操作とからなるpHスイング操作を少なくとも3回以上7回以下の範囲で繰り返すと共に、焼成後に光触媒として利用するのに必要な形状に二次加工し、また、この酸化チタン前駆体の焼成時には焼成温度500℃以上600℃以下の条件下で行い、上記酸化チタン前駆体製造時のpHスイング操作の回数と酸化チタン前駆体焼成時の温度及び時間とを制御することにより製造され、アナタース型結晶(An)とルチル型結晶(Ru)との比率(An/Ru)が1.7〜11.5の範囲内であって、BET表面積が42m2/g以上である光触媒用酸化チタンを用い、大気中の大気汚染物質を酸化分解することを特徴とする大気汚染物質の除去方法。
  2. 酸化チタン前駆体の溶解領域のpH値が3.5以下であり、酸化チタン前駆体の析出領域のpH値が7以上である請求項1に記載の大気汚染物質の除去方法。
  3. チタン含有酸性水溶液が四塩化チタン水溶液である請求項1又は2に記載の大気汚染物質の除去方法。
  4. 酸化チタン前駆体の製造時の二次加工が、焼成後に光触媒として利用するのに必要な形状に成形する成形加工である請求項1〜3のいずれかに記載の大気汚染物質の除去方法。
  5. 酸化チタン前駆体の製造時の二次加工が、大気に曝される基材に酸化チタン前駆体を固定して行う固定加工である請求項1〜4のいずれかに記載の大気汚染物質の除去方法。
  6. 固定加工が、溶液中に酸化チタン前駆体を分散して調製した塗布液を塗布した後に乾燥する塗布操作により行なわれる請求項5に記載の大気汚染物質の除去方法。
  7. 光触媒酸化チタンに供する光源が、太陽光又はバンド・ギャップより大きなエネルギーを持つ人工的光源である請求項1〜6のいずれかに記載の大気汚染物質の除去方法。
  8. 大気中の大気汚染物質が、NOX、SOX、有害有機化合物、悪臭物質、及び有機体からなる群より選ばれた1種又は2種以上である請求項1〜7のいずれかに記載の大気汚染物質の除去方法。
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