JP3907732B2 - 水性エマルション中でのポリクロロプレンの製造方法 - Google Patents

水性エマルション中でのポリクロロプレンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、カルボン酸からなる界面活性剤の存在を必要としないエマルション系の存在下で、(コ)ポリクロロプレンラテックスを水性エマルション中で製造するラジカル製法に関する。
(コ)ポリクロロプレンラテックスは、乳化剤の存在下で古典的なエマルション重合法により製造されている。
重合をアルカリ性媒体中で行なう場合、乳化剤は一般的にロジンのアルカリ塩を含んで成る。しかし、幾つかの応用分野、例えば溶剤を含む接着剤を等においては、非常に大量のロジンの存在は、金属イオンの存在下で相の分離を引き起こすことがあるので、好ましくない。
例えばクロロプレンを不飽和カルボン酸と共重合させるために、酸媒体中での重合が必要な場合には、対応する樹脂酸の pKaのためにロジンを使用することはできない。この場合、他のイオン系界面活性剤、例えばスルホン酸塩または硫酸塩基を含む界面活性剤を使用しなければならない。
【0002】
特許FR−A−2 333 818は、モノマー100重量部に対して3〜6重量部のイオン系乳化剤を、0.5〜6重量部の非イオン系乳化剤と共に使用する、ポリクロロプレンの濃縮ラテックスの製造方法を記載している。この比較的大量の、硫酸塩またはスルホン酸塩型のイオン系乳化剤には幾つかの欠点がある。事実、重合の際、発熱反応の制御が困難であり、発生する熱が重合設備の熱伝達容量を超えることがある。水相中のモノマー濃度が高い程、反応の制御がより微妙になる。他方、多くの用途では、貯蔵、取り扱い、および輸送の問題が軽減されるので、固体含有量の高い、好ましくは少なくとも55%の、ラテックスが望ましい。
現在知られている様に、非イオン系界面活性剤を併用することにより、エマルションを安定化させ、ゲル化点を下げることができる。しかし、上記の文献では、イオン系乳化剤の量は重合性モノマーの3%以上にすべきである。さらに、大量の非イオン系物質を使用すると、反応速度および重合体の粒子径分布の制御が悪影響を受ける。硫酸塩またはスルホン酸塩型イオン系乳化剤を非常に大量に使用することのもう一つの欠点は、重合体を分離するために冷却によりラテックスを不安定にすることが、不可能ではないにしても、難しいことである。
他方、場合により、多価金属イオンの存在下でコロイドの安定性が不十分なために、ラテックス自体(またはイオン系界面活性剤の存在下で)を使用できないことがある。仕上げ、含浸(例えば繊維)、水性糊の処方の様なある種の用途では、Ca++、Zn++、Al+++ または組成物中に存在することがある他のイオンの存在下で、ラテックスが早期に凝固しない方が好ましい。
【0003】
特許FR−A−2 231 725は、ラテックス系組成物中に存在する電解質または他の物質、例えば酸化亜鉛、を加えても凝固しないポリクロロプレンラテックスを製造できる方法を開示している。上記の方法では、クロロプレンは、ポリビニルアルコールの存在下で、カルボン酸セッケンを含まないエマルション中で重合される。得られるラテックスは、コロイドの加水分解のために貯蔵中に不安定であり、その上、ポリビニルアルコールが配合された製品の耐水性を低くしている。このことは、床の仕上げの様な用途では問題となる。
特許EP−A−457642は、貯蔵安定性および多価金属イオンに対する耐性を有するラテックスの製造方法であって、乳化系が、(a)少なくとも1種の非カルボキシル化イオン系界面活性剤および(b)HLB値が3単位以上異なる、少なくとも2種類のイオン系界面活性剤を含んで成ることを特徴とする方法を記載している。上記の方法で得られるラテックスは貯蔵安定性があり、金属イオンに対する耐性を有するが、化学的安定性が良くない、すなわち配合の際に導入される各種の成分に対して敏感である。
【0004】
本発明は、上記の欠点を解決することを目的としている。より詳しくは、本発明は、貯蔵安定性があり、多価金属イオンに対する耐性を有し、化学的安定性が高く、接着特性が改良されたラテックスを得ることができる、クロロプレンの(共)重合方法に関する。
本発明の方法の別の利点は、生産性および安全性が向上することである。
これらの利点は、少なくとも1種のラジカル開始剤、および(a)少なくとも1種の非カルボキシル化イオン系界面活性剤(Ea1)および(b)HLB数値が3単位以上異なる非イオン系界面活性剤(Eb1)および(Eb2)の少なくとも2種類を含んで成る乳化系の存在下で、水性エマルション中でのクロロプレンの単独重合および/またはクロロプレンと50重量%までの他の共重合可能なモノマーの混合物の共重合により(コ)ポリクロロプレンラテックスを製造する方法であって、
重合体含有量が組成物に対して0〜100乾燥重量%である(コ)モノマー/重合体の組成物(画分f1 )、および
本方法で使用する(Ea1)の総量の10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の量の非カルボキシル化イオン系乳化剤(Ea1)、
本方法で使用する(Eb1)の総量の2〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の量の、低い方のHLB値を有する非イオン系乳化剤(Eb1)、および
本方法で使用する(Eb2)の総量の0〜25重量%、好ましくは0重量%の量の、高い方のHLB値を有する非イオン系乳化剤(Eb2)
を含んで成る乳化系
を含む水性エマルションを製造する第一工程(A)、および
工程(A)の水性エマルションに、(コ)モノマーの残りの画分f2 (f1 +f2 =100重量部)および乳化系の残りを供給し、重合を進行させる第二工程(B)
を含んで成ることを特徴とする本発明の方法により達成される。
【0005】
本発明の方法の本質的で、新規な特徴の一つは、この方法が、特殊な乳化系および特別な出発混合物が製造される特別な技術を使用していることである。この技術は、試薬M1 の組成物である混合物を製造し、続いてM1 と同一であるか、または異なった試薬M2 の別の組成物を供給するが、M1 とM2 は異なっているのが好ましい。
とりわけこの有利な技術により、驚くべきことで、予期せぬことに、先行技術の欠点が無く、高度の化学的安定性および接着特性を有する(コ)ポリクロロプレンを製造することができる。
この方法は様々な様式で実行することができる。
好ましい、ただし本発明を限定しない実施態様によれば、工程(A)では、使用するコモノマーの画分f1 の部分的または全体的な(共)重合を、上に規定する工程(A)の乳化系の存在下で、転化率が少なくとも1%、好ましくは3〜80%、さらに好ましくは3〜10%に達するまで行なう。
上記の、(コ)モノマーの一部の重合は所望により行なう。したがって、工程(A)のf1 (コ)モノマーだけからなる反応混合物を除外してはならない。
所望により上記好ましい形態と組み合わせることができる別の実施態様では、工程(A)を単純に、所望の(共)重合体の種類と同一であるか、または異なった、好ましくは同一の種類の(共)重合体からなる種(シード)を使用して実行する。
この方法は、工程(A)で存在する(コ)モノマーの画分f1 が、モノマーの合計f1 +f2 の1〜50重量%、好ましくは20〜40重量%であることを特徴とするのが有利である。
【0006】
乳化系に関する限り、本発明の重要な必要条件により、工程(A)の乳化系は、100重量部の量の(コ)モノマーに対して、
−100重量部あたり0.1〜1.0重量部、好ましくは0.5〜0.7重量部の乳化剤(Ea1)、
−0.1〜1.0重量部、好ましくは0.2〜0.7重量部の、好ましくはHLBが11以下である乳化剤(Eb1)、
−0〜0.5重量部、好ましくは0重量部の、好ましくはHLBが11以上である乳化剤(Eb2)
を含んで成る。
さらに、工程(A)および(B)の全体で使用する乳化系の総量は、好ましくは下記の通りである(やはり100重量部の(コ)モノマーに対して)。
−0.6〜3重量部、好ましくは1〜2.5重量部の(Ea1)、
−0.5〜4重量部、好ましくは1〜2.5重量部の、好ましくはHLBが11以下である(Eb1)、
−0.5〜4重量部、好ましくは1〜3重量部の、好ましくはHLBが11以上である(Eb2)。
【0007】
実際には、工程(A)で、反応器にモノマーの一部f1 および/または(コ)ポリクロロプレンラテックス、水および乳化系を入れて出発エマルションを形成する。モノマーおよび所望により使用する、予め形成した(コ)ポリクロロプレンの濃度は、一般的にエマルションの総重量の30〜70重量%である。重合は、ラジカル開始剤および連鎖移動剤の存在下で行なう。この段階では、上記のエマルションは反応器の総容積の3〜40%、さらに好ましくは10〜30%を占める。
工程(A)は、所望の転化率、重合温度およびモノマーの反応性に応じて、数秒間〜数分間行なう。所望の転化率が約ゼロである場合、または(コ)ポリクロロプレンラテックスを使用する場合、工程(A)は数秒間で終わる。転化率が3〜10%、重合温度が35℃である場合、工程(A)の持続時間は3〜40分間、より好ましくは15〜30分間である。
工程(A)の最後に得られる反応媒体に、残りのモノマー(画分f2 )および残りの乳化系を供給する(工程B)。
【0008】
工程(B)の試薬混合物の供給は、連続式またはバッチ式で、好ましくは連続式で、所望の転化度に応じて調整できる一定または様々な流量で行なうことができる。
当業者は、工程(B)におけるモノマーおよび乳化系の供給流量を所望の転化度に応じて調整することができる。
この様にして、重合温度35℃では、工程(B)における残りのモノマー画分f2 および残りの乳化系の供給は、200〜400分間、好ましくは250〜350分間かかる。供給流量、したがって反応混合物に導入するモノマーの量を変えることにより、その時のモノマー/重合体の重量比を制御することができる。反応系の他の成分はモノマーに同時に、または別に、好ましくは同時に、加える。
残りのモノマー画分f2 を供給した後、モノマーの転化度は50%を超え、一般的に80%を超えている。したがって重合(工程C)は、総転化度が60%以上になるまで、好ましくは90%を超えるまで続行するのが好ましい。
クロロプレンと他の種類のモノマーを共重合させる場合、様々なモノマーの比率は出発反応媒体中(工程A)および供給流中(工程B)で異なっていてよい。この決定は明らかに当業者に任されている。しかし、より有利な実施態様では、コモノマー/クロロプレンの比率は、例えば工程Aで、0.01〜0.05であるのが好ましい。
【0009】
クロロプレンと共重合可能なモノマーは、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸、例えばアクリル酸およびメタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ビニル酢酸、アクリル(2−カルボキシメチル)酸、不飽和カルボン酸のエステルおよびニトリル誘導体、特にアルキル基が1〜6個の炭素原子を有するアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、共役ジオレフィン、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1−クロロブタジエン、2,3−ジクロロブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、ビニルエステル、エーテルおよびケトン、例えば酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル、メチルビニルケトン、および硫黄である。
ラテックスを得るための本発明の好ましい実施態様では、クロロプレンを、モノマーに対して20重量%からの量のα−β不飽和カルボン酸と共重合させる。「モノマー」の表現は、クロロプレン、不飽和カルボン酸、および所望により少なくとも1種の他の、遊離カルボキシル基を含まない不飽和モノマーの総量を意味する。特に好ましいのはアクリル酸およびメタクリル酸(AMA)であり、AMAの量は所望によりモノマーの総量に対して20重量%まで、好ましくは10重量%までである。
本発明の方法により、コモノマー、特にメタクリル酸、の含有量が、先行技術のバッチ式製法で、同じ原料で得られるコモノマー含有量よりも高い共重合体を得ることができる。
【0010】
イオン系界面活性剤(Ea1)の存在は、エマルションの物理−化学的安定性に不可欠である。この界面活性剤は、陰イオン系であると共に、酸に対して安定しているのが有利である。非カルボキシル化界面活性剤(Ea1)の例としては、硫酸またはリン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム誘導体、例えばアルキル硫酸エステル、アリール硫酸エステル、アルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸エステル、アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル、アルキルアリールリン酸エステル、アルコキシエチルスルホン酸エステル、アルコキシエチルホスホン酸エステルのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩がある。これらの界面活性剤のアルキル基は、通常、8〜25個の炭素原子を有する中または長鎖基である。代表的な界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、またはスルホン酸ナトリウムパラフィン、およびナトリウムイソチオネートがある。
陰イオン系界面活性剤と共に、少なくとも2種類の、HLB値が少なくとも3単位異なる非イオン系界面活性剤を使用する(Eb1、Eb2)。HLB値(親水性−親油性バランス)は良く知られており、等式HLB=E/5により計算できるが、ここでEは親水性単位の重量%である("Encyclopedia of emulsion technology", Vol.1-Basic Theory-Paul Becher(1983), 217-220頁参照)。非イオン系界面活性剤のHLB値の差は3単位より大きいのが好ましい。2種類の非イオン系界面活性剤(Eb1)および(EB2)は本来親油性(Eb1)(HLB<11)または親水性(EB2)(HLB>11)でよい。
【0011】
非イオン系界面活性剤(Eb1、Eb2)の選択に関しては、“Surfactant Science Service"-Vol.19-John Cross編集(1987), 3-28頁を参照するとよい。例として、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン モノ−、ジ−およびトリアルキルフェノール、特にポリオキシエチレン脂肪アルコール、カルボン酸のポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレンエステル、特にポリオキシエチレンのラウリン酸エステル、ステアリン酸エステルまたはオレイン酸エステルの様な脂肪酸のエステル、ポリオキシプロピレン モノ−、およびジ−グリセリド、ポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン脂肪酸のアルキルアミド、ソルビトールまたはポリオキシエチレンソルビトールののエステル、特にモノラウリン酸ソルビトール、ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビトール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体を挙げることができる。
3種類の異なった分子に対応する3種類の界面活性剤(Ea1、Eb1、Eb2)の使用を説明した。無論、当業者には、イオン系界面活性剤および2種類の非イオン系界面活性剤(Eb1、Eb2)の一方を、2つの機能を合わせ持つ単一の分子で置き換えられることは明らかである。12モルのエチレンオキシドを含むラウリルアルコール、例えばStepan Europa のPolystep B 23 、を使用することができる。
総量(イオン系界面活性剤+非イオン系界面活性剤)は、モノマー100重量部あたり1.6〜11部、好ましくは3〜8部である。
【0012】
本発明の方法は、単一の反応器中で実行できるが、幾つかの反応器を使用することもできる。
重合は、通常のエマルション中重合の技術により、ラジカル開始剤および連鎖移動剤および/または元素状硫黄の存在下で行なう。
フリーラジカル開始剤としては、通常の有機過酸化物またはレドックス系を使用することができる。連鎖移動剤または変性剤は、ヨードホルム、アルキルキサントゲンジスルフィド、アルキルメルカプタンまたは他の有機硫黄化合物、から選択することができる。
本発明の効果的な実施態様に、分散剤、例えばホルムアルデヒドとナフタレンスルホン酸の縮合生成物、の存在は必要ない。しかし、少量の上記物質を、重合の前、最中、または後に加えることができる。
重合温度は、好ましくは10〜70℃、より好ましくは30〜50℃である。重合を酸性媒体中で行なう場合、エマルションのpHは、鉱酸または有機酸、例えば酢酸、を使用して所望の値に調整することができる。反応中の発熱性およびpH変動は、電解質の添加により調整することができる。
所望の転化率に達したら、通常の抑制剤を加えて重合を停止させる。残留モノマーを除去し、所望により酸化防止剤化合物を加えた後、ラテックスをそのまま保存するか、または公知の方法のいずれかにより、例えば高温または低温ドラム上で凝固させ、洗浄し、乾燥させることにより、ゴムを分離することができる。
【0013】
化学的安定性に加えて、場合によりある程度の粘性が得られるので、本発明の方法には幾つかの他の利点がある、すなわち、
a)生産性の増加。重合時間はほとんど同等であるが、例えば重合を10m3 反応器でバッチ式で行なう場合、バッチ式による従来型の重合の後、約9m3 のラテックスが得られるのに対し、本発明の方法では、9.8m3 のラテックスを得ることができる。
b)安全性がより高い。クロロプレンは毒性が極めて高く、引火性であり、空気と爆発性の混合物を形成することが良く知られている。そのため、クロロプレンの重合開始時には、反応器中のクロロプレンの量が非常に多いので、特に注意を要する。先行技術のバッチ製法では、反応開始時に、装填量の少なくとも約50%のモノマーがあり、したがって、10m3 反応器では少なくとも5m3 のクロロプレンがある。本発明の方法では、最初にモノマーの総量(f1 +f2 )に対して最大50%のモノマー(f1 )があり、したがって10m3 反応器中にあるクロロプレンは最大でも2m3 である。
【0014】
これらのラテックスの最も重要な用途は、接着剤の製造である。クロロプレンとα−β不飽和酸の共重合体のラテックスは、例えばポリウレタン発泡材料や膨脹させたポリスチレンのパネルの様なセルロース系基材の上に金属シートを接着するのに使用される。このラテックスは、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたは他の充填材、例えばクレーやクリート(crete) 、を含む組成物中にも問題なく配合することができる。上記の特徴の一つにより、これらの目的も本発明の一部を構成する。
これらのラテックスは、建築業界に、建材および/または不透過性付与材料、例えばセメント(例えばセメントスラブの仕上げ、または装飾スラブの製造用)、アスファルト、等、の添加剤として効果的に使用することができる。
本発明はさらに、
あらゆる種類の支持体、特に重合体発泡材料型支持体、のライニング用組成物、
接着剤、あるいは
建材および/または不透過性付与材料、特にセメント、アスファルト、仕上げ組成物または類似の製品
における活性成分としての、これらのラテックスの使用にも関する。
【0015】
下記の実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。すべての実施例において、部数および百分率は、他に指示がない限り、重量で表示する。
Ca++イオンに対する安定性の測定

供試ラテックス20グラムを150mlのビーカーに入れる。塩化カルシウムの10%水溶液を滴下してラテックスに、ガラス棒で攪拌しながら加える。凝固物が形成されるまでに加えたミリリットル数を測定する。100ml加えた後にも凝固し始めない場合は、測定を中止する。
機械的安定性の測定
供試ラテックスを水で40重量%濃度まで希釈する。消泡剤5グラムを加え、ラテックスを10,000回転/分で30分間攪拌する。次いで、予め秤量した100メッシュの篩を使用してラテックスを濾過する。濾過後、篩を140℃で30分間乾燥させ、秤量する。結果を、ラテックス100グラムあたりの乾燥残留物の重量%で表示する。
乾燥抽出物
予め秤量した試料から、真空オーブン中、145℃で水分および他の揮発性化合物を除去することにより、ラテックスの乾燥成分の含有量を測定する。乾燥抽出物は、試料の初期重量に対する重量%で表示する。
化学的安定性
接着剤組成物の様々な成分を攪拌しながら加え、ラテックスの安定性を観察する。成分は下記の通りである。
Figure 0003907732
配合接着剤の製造および貯蔵中に不安定化がない場合、試験は陽性とする。
ラテックスの不安定化がある場合、試験は陰性とする。
【0016】
実施例1
使用する界面活性剤は、Emulsogen EP(Hoechst のスルホン化第2級n−アルカン)、Genapol OX 030(Hoechst の、炭素原子2〜15個の鎖長を有する脂肪アルコール+エチレンオキシド3モルを基剤とするポリグリコールエーテル、HLB=8)、Sapogenat T 300 (Hoechst の、エチレンオキシド30モルを含むトリブチルフェノールポリグリコールエーテル、HLB=17)である。
反応器に
−クロロプレン(CP) 30部
−メタクリル酸(AMA) 0.90部
−Emulsogen EP(Ea1) 0.60部
−Genapol OX 030(Eb1) 0.30部
−Sapogenat T 300 (Eb2) 0.00部
−水 22部
−n−DDM 0.02部
を入れる。
重合は、35℃、窒素雰囲気中、pH4.5で、過硫酸ナトリウムの4%水溶液からなる開始剤の適当な流量を調整しながら行なう(工程A)。
転化率が6.5%に達した時(30分間)、下記の物質を一定流量で300分間の間に反応器に送る(工程B)。
−クロロプレン(CP) 65部
−メタクリル酸(AMA) 4.1部
−Emulsogen EP(Ea1) 1.4部
−Genapol OX 030(Eb1) 1.7部
−Sapogenat T 300 (Eb2) 1.5部
−水 48部
−n−DDM 0.48部
上記の成分を加えた後、転化率は85%である。重合反応を90分間続ける(転化率=99%)(工程C)
ブチルカテコール0.01部およびフェノチアジン0.003部を含むクロロプレンのエマルションを加えて重合を停止させる。炭酸ナトリウムを加えてpHを7.00に調節し、次いで残留モノマーを蒸気流中で除去する。ストリッピング後のラテックスは固体含有量(乾燥抽出物)が58%である。
反応器の汚れは無い。
ラテックスの安定性は上記の様に測定する。
−機械的安定性 <0.1
−Ca++に対する安定性 >100
−化学的安定性 優れている
【0017】
例1C、比較例2 C 〜5C、10Cb〜11Cbおよび実施例6〜9
重合をバッチ製法で行なう比較例10Cbおよび11Cbを除いて、他の重合はすべて実施例1と同様に、工程Aをバッチ式で、工程Bを連続供給により行なう。例1C比較例2C〜5Cおよび10Cb〜11Cbおよび実施例6〜9、および関連する結果を表2および3に示す。
表2 1C 2C 3C 4C 5C
工程A(バッチ)
CP 30 30 30 30 30
AMA 1.5 0.9 0.9 0.9 0.9
Ea1=EP 0.6 0.6 0.6 0.4 1
Eb1=OX 030 0.3 0.3 -- 0.3 0.3
Eb2=T 300 -- 0.5 -- -- --
水 22 22 22 22 22
n−DDM 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02
工程B(連続)
CP 65 65 65 65 65
AMA 3.5 4.1 4.1 4.1 4.1
Ea1=EP 1.4 1.4 1.4 1.6 1
Eb1=OX 030 1.7 1.7 2 1.7 1.7
Eb2=T 300 1.5 1 2 1.5 1.5
水 48 48 48 48 48
n−DDM 0.48 0.48 0.48 0.48 0.48
温度 35℃ 35℃ 35℃ 35℃ 35℃
反応抑制 180' 30' なし 180' なし
転化率 -- -- 90% -- 90%
表2A
1C 2C 3C 4C 5C
乾燥抽出物 -- -- 50% -- 50%
時間 -- -- 9h -- 9h
汚れ -- -- なし -- あり
機械的安定性 -- -- <0.1 -- なし
Ca++に対する安定性 -- -- >100 -- なし
化学的安定性 -- -- なし -- --
表3
6 7 8 9 10Cb 11Cb
工程A(バッチ)
CP 30 30 30 30 98 95
AMA 0.9 0.9 0.9 0 2 5
Ea1=EP 0.5 0.6 0.6 0.5 2 2
Eb1=OX 030 0.3 0.5 0.3 0.3 1.25 1.25
Eb2=T 300 0 0 0.2 0 1.25 1.25
水 22 22 22 22 65 65
n−DDM 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02
工程B(連続)
CP 65 65 65 65 -- 0
AMA 4.1 4.1 4.1 0 -- 0
Ea1=EP 1.4 1.4 1.4 1.4 -- 0
Eb1=OX 030 1.7 1.7 1.7 1.7 -- 0
Eb2=T 300 1.5 1.5 1.5 1.5 -- 0
水 48 48 48 48 -- 0
n−DDM 0.48 0.48 0.48 0.48 -- 0
温度 (℃) 35 35 35 35 45 45
反応抑制 10 なし 15 15 -- 120
転化率 98% 98% 98% 98% 94% 99%
表3A
6 7 8 9 10Cb 11Cb
乾燥抽出物 (%) 57 57 57 53 61 --
時間 8 8 8.25 8 9 --
汚れ なし なし なし なし なし --
機械的安定性 <0.1 0.1 <0.1 <0.1 <0.1 --
Ca++に対する安定性 >100 >100 >100 >100 >100 --
化学的安定性 優 優 弱 なし --
【0018】
実施例1および〜9、および例1C、比較例2C〜5C、10Cbおよび11Cbに対する考察
1Cは、特定の実験条件下で、工程Aの混合物中のAMAの量は、クロロプレン30部あたり1.5部未満であるのが好ましいことを示している。比較例2Cおよび実施例8は、実施例の条件下で、HLB>11を有する非イオン系軟化剤(Eb2)を工程Aで大量に使用しないのが好ましいことを示している。事実、その様な界面活性剤が存在すると重合が阻害されることがある。
比較例3Cは、工程Aの混合物中に、スルホン化された物質(Ea1)およびHLB<11の非イオン系物質(Eb1)が存在するのが好ましいことを示している。Genapol OX 030(Eb1)が存在しない場合、重合はより困難であり(最終的な転化率がより低くなる)、生成物は化学的に安定しない。
最初の混合物における、界面活性剤(Ea1)Emulsogen EP(スルホン化)に関する限り、その量が少ない場合(比較例4C)、重合阻害が長くなる。量が多い場合、小さな粒子が形成され、その結果、反応器が汚れ、固体の含有量が限られる。
実施例9は、AMAの総量は3重量部を超えるのが好ましいことを示している。
比較例10Cbおよび11Cb(バッチ製法)に関して、比較例10Cbのラテックスは化学的に不安定であり、比較例11Cbの場合は製法が機能しない。
【0019】
実施例13−実施例1のラテックスの接着剤特性
13.1評価試験
T1=初期接着強度 綿/綿
試験は次の様に行なう。
a)試料の調製
それぞれの試験用に、下記の織物片を裁断する(番号1471原料−生地29x116、重量380 g/m2 、Gaillard et Cie.: 201 Avenue Andre Maurois- B.P. N °7-76360 Barenton- Tel.16.35.91.25.74) :
−2x15cm 3枚
−2.5x15cm 3枚
−短い方の側部から10cmの所に基準点の記号を付ける。
b)接着
−3組の織物試料をシリコーン処理した紙の上に粘着テープで重ね合わせ、
−接着剤の第一層を塗布し、
−10分間乾燥させ、
−接着剤の第二層を塗布し、
−20分間乾燥させ、
−試料を重ね、3組を6バールの圧力(マノメーターで表示)で30秒間プレスに通し、
−23℃で1時間の保存および23℃で48時間の保存の後、脱離試験を行なう。
c)ダイナモメーター試験
−これらの試験は、3試料クリップを有し、トローリーの降下速度が5m/mnであるInstron ダイナモメーターで行なう。
d)結果の表示
−記録計で曲線の平均値を取り、kg/cm で表示する。すなわち表示された値を6で割る。
【0020】
T2=せん断強度 木/木
a)試料の種類
試料は、ブナの木(心材)で調製する。上記の試料は、相対湿度50±5%の雰囲気中に少なくとも15日間保存してから使用する。これらの条件下で、試料の水分は10%になる。
試料の寸法は、長さ100mm、幅20mm、厚さ5mm、接着表面積400mm2 である。
b)接着剤塗布−操作手順
メチルエチルケトンを含浸させた清浄な布で試料を乾燥させる。
塗布の前に、試料を15分間乾燥させる。
−塗布
接着剤ラテックス=平らな12mmブラシで1層。接着剤溶剤=2層。
堆積した湿った接着剤の重量:150 g/m2
−接着:塗布後20分間。
−圧迫:2 kg/cm2 で30秒間。この圧力は接着剤接続部における有効圧力である。
−試験前の調整:組み立てた試料を温度23℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に保存する。
2種類の試験を、一方は調整から4時間後に、他方は調整から8日後に行なう。
c)ダイナモメーター試験
−3試料クリップを有し、トローリーの降下速度が5m/mnであるInstron ダイナモメーターで行なう。
d)結果の表示
−記録計で曲線の平均値を取り、kg/cm で表示する。すなわち表示された値を6で割る。
13.2結果
接着剤の特性に関する限り、実施例1のラテックスの初期接着強度、綿/綿、は1.5kg/cm で、23℃で48時間後には6.3kg/cm であるが、比較例10Cbのラテックスでは対照的に、対応する初期値が0.8kg/cm であり、23℃で48時間後には5.5kg/cm である。
実施例1のラテックスのせん断強度、木/木、は23℃で4時間後には14.3 kg/cm2 、8日後には21.5 kg/cm2 であるのに対し、実施例10Cbのラテックスは上記の値がそれぞれ10.8および14.5 kg/cm2 である。

Claims (15)

  1. 少なくとも1種のラジカル開始剤、および
    (a)少なくとも1種の非カルボキシル化イオン系界面活性剤(Ea1)と、
    (b)HLB数値が3単位以上異なる非イオン系界面活性剤(Eb1)および(Eb2)の少なくとも2種類を含んで成る乳化系、
    の存在下で、水性エマルション中でのクロロプレンの単独重合および/またはクロロプレンと50重量%までの他の共重合可能なモノマーの混合物の共重合により(コ)ポリクロロプレンラテックスを製造する方法であって、
    重合体含有量が組成物に対して0〜100乾燥重量%である(コ)モノマー/重合体組成物の画分f1、および
    (1)本方法で使用する(Ea1)の総量の10〜50重量%の量で、かつ(コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に0.5〜0.7重量部の量の非カルボキシル化イオン系乳化剤(Ea1)、
    (2)本方法で使用する(Eb1)の総量の2〜30重量%の量で、かつ(コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に0.2〜0.7重量部の量の、低い方のHLB値を有する非イオン系乳化剤(Eb1)、および
    (3)本方法で使用する(Eb2)の総量の0〜25重量%の量で、かつ(コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に0〜0.5重量部の量の、高い方のHLB値を有する非イオン系乳化剤(Eb2)
    を含んで成る乳化系、
    を含む水性エマルションを調製する第1工程(A)、および
    前記工程(A)の水性エマルションに、前記(コ)モノマー/重合体組成物の残りの画分f2 (f1 +f2 =100重量部)および前記乳化系の残りを供給し、重合を進行させる第2工程(B)、を含んで成り、
    本方法で使用する前記乳化系の総量が、(コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に、
    0.6〜3重量部のEa1と、
    0.5〜4重量部のEb1と、
    0.5〜4重量部のEb2と、を含んでなる、方法。
  2. 工程(A)で、使用するコモノマーの画分f1 の部分的または全体的な(共)重合を、請求項1に記載の工程(A)の乳化系の存在下で、転化率が少なくとも1%に達するまで行なう、請求項1に記載の方法。
  3. 所望の(共)重合体と同一であるか、または異なったタイプの(共)重合体からなる種を使用する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 工程(A)で存在する(コ)モノマー/重合体組成物の画分f1 が、反応混合物の1〜50重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. (コ)モノマーから(共)重合体への総転化率が少なくとも60%になるまで重合を続行する工程(C)を含んで成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 工程(A)において、乳化系が、
    (コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に0.5〜0.7重量部の乳化剤 (Ea1)、
    (コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に0.2〜0.7重量部で、HLBが11以下である乳化剤(Eb1)、および
    (コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に0〜0.5重量部で、HLBが11以上である乳化剤(Eb2)、
    を含んでなり、かつ
    前記乳化系の総量が、(コ)モノマーの総量を100重量部とした場合に、
    0.6〜3重量部のEa1と、
    0.5〜4重量部で、HLBが11以下であるEb1と、
    0.5〜4重量部で、HLBが11以上であるEb2と
    を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. モノマーがクロロプレンからなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. モノマーがクロロプレンおよび20重量%までの量のα,β−不飽和カルボン酸の混合物である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. モノマーがクロロプレンおよび10重量%までの量のα,β−不飽和カルボン酸の混合物である、請求項8に記載の方法。
  10. α,β−不飽和カルボン酸がメタクリル酸である、請求項8または9に記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる(コ)ポリクロロプレンラテックスを含んで成ることを特徴とする接着剤。
  12. 建築材料のための添加剤であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる(コ)ポリクロロプレンラテックスを含んで成ることを特徴とする添加剤。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる(コ)ポリクロロプレンラテックスの、
    あらゆる種類の支持体のライニング用組成物としての使用。
  14. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる(コ)ポリクロロプレンラテックスの、接着剤組成物としての使用。
  15. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により得られる(コ)ポリクロロプレンラテックスの、建材用組成物としての使用。
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