JP3907111B2 - 釣竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、釣竿の竿尻近くの、握り部にできる位置の外周部を交換可能に構成した釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
釣人の好みや、天候や釣りの状況に応じて、グリップの交換が容易にできることは望ましい。釣竿の握り部が着脱可能な構造が下記特許文献1に開示されている。これには、竿杆本体の上に柔軟部材であるグリップ部材を直接に套嵌し、竿杆本体に尻栓を螺着する際にその後端部を前後で挟み込む構造等が開示されている。
【特許文献1】
実用新案登録第2529120号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、上記文献のグリップ部材の装着構造では、グリップ部材後端部のみを前後に狭持しているだけであり、釣竿使用中のグリップ部材の前後方向へのグリップ部材全体移動は防止できるものの、グリップ部材本体部内面や前端部は全くのフリーであるため、グリップ部材の弾性変形による前後移動も大きい上に、回転方向の規制力は後端部の挟持による摩擦抵抗だけである。従って、釣竿を捩るようにして投擲操作をする等の場合に、竿杆本体に対してグリップ部材が捩られ、握持性が非常に不安定となり、釣竿操作が意図通りにならない。
【0004】
依って本発明は、釣竿の竿尻近くの、握り部にできる位置の外周部を容易に交換可能にすると共に、釣竿操作が安定して行えることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑みて本発明は、竿尻近くの竿杆本体に、その前側領域に対して小径となる段差を設けた小径領域を設け、該小径領域は竿杆本体の後端にまで至っており、該後端には本体側係合部を設けており、竿杆本体と同程度以上の硬さを有して小径領域の外側に被せられると共に、その内径は前記前側領域の段差境界の外径よりも小さく、その後端部には前記本体側係合部と係合して相対回転の規制される筒側係合部を有する筒体が設けられ、少なくとも筒体の前端と段差壁面との間か筒体の後端と尻栓との間に、弾性部材を介在させ、竿杆本体の後端部に装着した尻栓によって筒体を長手方向に押圧させるか、又は、竿杆本体の段差壁面付近の小径領域外周に、前側が大径となるように傾斜したテーパ部を設け、装着した尻栓によって筒体を前記テーパ部に押圧させることを特徴とする釣竿を提供する。
筒体が竿杆本体と同程度以上の硬さを有するとは、ゴム等の柔軟部材のグリップ部材と比較して述べており、厳密に解釈すべきではない。筒体が、例えば繊維強化樹脂や通常の合成樹脂等で成形されていれば、同程度の硬さである。
【0006】
筒体は、その内径が段差の外側外径よりも小さいため、この段差壁によって前方移動が規制されると共に、弾性部材を介したり、上記テーパ部に押圧させつつ尻栓によって筒体を押圧するため、筒体は小径領域において前後移動が規制される。また、筒体の後端部には、凸又は凹の竿杆本体側係合部と係合して相対回転の規制される凹又は凸の筒側係合部を有するため、竿杆本体に対して回転が規制される。しかも、筒体は竿杆本体と同程度以上の硬さを有しているため、この筒体領域を(直接に、又は柔軟部材を接着固定して)握持した場合に、種々の竿操作を行っても筒体は回動が防止されており、また、前後にも実質的にガタつかない。従って、竿操作が非常に安定する。
【0007】
請求項2では、前記筒体の外側面に対し、柔軟部材内面を接着固定した請求項1記載の釣竿を提供する。
上記回動も前後移動もできない筒体に対して、柔軟部材の内面を接着固定していれば、握った場合や肘を当てた場合等に触感が向上すると共に、接着により筒体と一体化された柔軟部材は前後方向にも周方向にも規制されるため、竿操作が安定する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る釣竿の竿尻近くの部分縦断面図、図2はそのB部の拡大図、図3はB部の他の形態例の図、図4は図1の釣竿の筒体の一部としての筒部材の竿後方側から見た端面図、図5は図4の筒部材と共に使用されて筒体を構成するリング部材を竿先方向から見た端面図、図6は図5の矢視線F−Fによる断面図である。合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維で強化した繊維強化樹脂製竿杆本体(元竿本体)10の竿尻近くの領域、即ち、グリップ部や、前後にグリップがある場合は後側グリップ部と呼ばれる部位に、段差壁10Dを設けてその後部領域を後端に至るまで、段差壁の前側領域と比較して小径であって、ストレート状小径領域10Sに形成している。この小径領域の長さは、150mm程度が好ましく、100〜200mmくらいが一般的である。
【0009】
この小径領域10Sに、繊維強化樹脂や通常の(構造材としての)合成樹脂によるストレート状の筒部材12を外側に被せている。筒部材前端の内径は前記段差壁の前側領域外径よりも小さく、筒部材はこの段差壁を乗り越えることはできない。一例であるが、竿杆本体段差壁の前側領域の肉厚は1.3〜1.7mm、小径領域10Sの肉厚は1mm、段差壁10Dの高さ(段差)は略0.3〜0.7mm、筒部材12の肉厚は略0.3〜0.7mmである。筒部材12の肉厚は小径領域10Sの肉厚よりも薄くする。好ましくは、小径領域の肉厚は筒部材の肉厚の2倍以上、更に好ましくは3倍以上にする。
【0010】
この筒部材は竿杆本体に対して着脱自在にするため、その内径は小径領域の外径よりも大きく製造する。しかし、ガタつきを防止するために、直径差で0.01〜0.03mm程度が好ましい。これにより、筒部材を小径領域に被せた場合、筒部材外周は段差壁の前側領域外周に対して殆ど面一になるが、面一でなくてもよく、また、前記直径差がもう少し大きくてもよい。この場合、製造コストが低減できる。
【0011】
この筒部材前端と段差壁10Dとの間に弾性部材16、例えば、Oリングを介在させ、後述の尻栓20を螺着させることによって筒部材を前後方向に押圧保持する。この場合のOリングは押圧されて変形しても、前側領域外周の高さ以下に収まるような大きさを選定するとよい。
【0012】
筒部材前端と段差壁10Dとの間に弾性部材を介在させない形態例を図3に図示している。段差壁近くの小径領域10S上に、前方の径が大きくなる形態のテーパ部11を設け、筒部材前端の内径側を押し当てるようにして筒部材の前後移動を規制保持する。この場合、薄肉の筒部材12前端部には押し広げる力が作用するため、前端部外周にステンレス、アルミ、真鍮等の金属製口金を装着して、割れを防止することが好ましい。これは同時に外観向上にも繋がる。
【0013】
竿管本体小径領域10S後端部には、この例では180度反対側に2ヶ所の凹部10K,10K’が形成されており、これが本体側係合部となる。一方、筒部材12の後端部には、図5と図6に図示する、繊維強化樹脂や通常の(構造材としての)合成樹脂や金属によるリング部材14を固定している。リング部材の前半部は筒部材後端部の外側に被さる大きさの環状部となっており、後半部の内周部に、180度反対側に2ヶ所の凸部14K,14K’が設けられており、これら凸部は前記凹部10K,10K’に丁度係合できる。これら凸部と凹部は、夫々対応していればよく、個数は1個以上任意である。
【0014】
上記リング部材14を筒部材12の後端部に接着固定等によって一体化させる。又は、筒部材の後端部にも、図4に示す凹部と同様な切欠き凹部を設け、この切欠き凹部にリング部材の凸部14K,14K’を係合させて、回転方向のみを互いに拘束してもよい。こうして、筒部材の後端部に凸部14K,14K’からなる筒側係合部を有することになる。このリング部材14が装着された筒部材12を、竿杆本体10の小径領域10S外側に、後方から挿入させて、筒側係合部14K,14K’を本体側係合部10K,10K’に係合させる。こうして、筒部材は竿杆本体に対して相対回転が防止規制される構造となる。リング部材14を無くして、筒部材の後端部に凸部14K,14K’と同様の筒側係合部を直接に設けてもよい。
【0015】
尻栓20は、構造材としての合成樹脂による尻栓本体20Aに頭部20Bを被着させた構造であり、尻栓本体外周に雄ネジが設けられており、一方、竿杆本体の小径領域後端部内周には雌ネジが設けられており、ここに螺着させるが、圧入方式としてもよい。この場合、尻栓と竿杆本体との間から水が侵入することを防止するためと緩み止めのために、その間にOリング22を介在させる。このOリング22は筒部材12の後端部に装着されたリング部材14の筒側係合部14K,14K’を押圧し、その結果、筒部材を前方に押圧保持する。Oリング16,22の一方は無くすることもでき、例えばOリング22を無くする場合は、筒側係合部14K,14K’を尻栓本体のフランジ部で押圧することによって筒部材を押圧保持する。Oリング16を無くする場合は、筒部材前端は段差壁10Dに押し当てられる。
【0016】
以上の構成により、筒部材12はその後端部が回転も前後移動もできない構造であると共に、筒部材12は既述の材料で形成されていて竿杆本体10と同程度の硬さを有するため、既述文献のグリップ部材のようにこれを把持した竿操作によって捩れ変形するようなことが防止される。また、筒部材はその前端部が段差壁10D又はOリング16、或いはテーパ部11に押し当てられているため、その摩擦力によって円周方向への回転も防止されており、更に筒部材の保持が安定する。
【0017】
筒部材はその外周面に各種模様を施していたり、スクリーン印刷等によって滑り止め凹凸等を設けていてもよい。その他、図7に示すような環状の凹凸条を滑り止めとして形成した天然や人工のゴム部材やコルク材、発泡性樹脂のEVA、又は革等の柔軟部材による筒状グリップ部材18を筒部材12の外側に被せ、これらを接着固定すると共に、筒部材12の後端部に既述のリング部材14を装着した交換グリップ部品を竿杆本体小径領域に装着してもよい。また、図8に示すように、多数の凸部を設けた交換グリップ部品としてもよい。更には、図9に示すように、縦方向に延伸する凹凸条を設けた交換グリップ部品としてもよい。図9の形態では、雨天時に排水性がよいため滑り難い。
【0018】
図10を参照して、記述の薄肉筒部材12を繊維強化樹脂で製造する場合の方法を説明する。薄肉故、潰れを防止する観点から、最内周に強化繊維が円周方向に指向するようにプリプレグ12Aを、中間には、強化繊維が長手方向に指向するようにプリプレグ12Bを、最外周に、再び強化繊維が円周方向に指向するようにプリプレグ12Cを、夫々巻回して成形する。又は、強化繊維が±の2つの傾斜方向に指向した2枚のプリプレグを重ねたり、或いは±の2つの傾斜方向に指向するように強化繊維を編んだ網状プリプレグ等によって形成すれば、強化繊維が軸長方向指向のプリプレグ12Bを無くすることもできる。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、釣竿の竿尻近くの、握り部にできる位置の外周部を容易に交換可能にすると共に、釣竿操作が安定して行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る釣竿の後端部近くの部分縦断面図である。
【図2】図2は、図1のB部の拡大図である。
【図3】図3は、図2に代わる構造図である。
【図4】図4は、竿杆本体後端部の後面図である。
【図5】図5は、リング部材の正面図である。
【図6】図6は、図5の矢視線F−Fによる断面図である。
【図7】図7は、交換部品の一形態図である。
【図8】図8は、交換部品の他の形態図である。
【図9】図9は、交換部品の他の形態図である。
【図10】図10は、薄肉筒部材の成形方法説明図である。
【符号の説明】
10 竿杆本体
10D 段差壁
10K,10K’ 凹部(本体側係合部)
10S 小径領域
12 筒部材
14 リング部材
14K,14K’ 凸部(筒側係合部)
16,22 Oリング(弾性部材)
20 尻栓
Claims (2)
- 竿尻近くの竿杆本体に、その前側領域に対して小径となる段差を設けた小径領域を設け、該小径領域は竿杆本体の後端にまで至っており、該後端には凸又は凹の本体側係合部を設けており、
竿杆本体と同程度以上の硬さを有して小径領域の外側に被せられると共に、その内径は前記前側領域の段差境界の外径よりも小さく、その後端部には前記本体側係合部と係合して相対回転の規制される凹又は凸の筒側係合部を有する筒体が設けられ、
少なくとも筒体の前端と段差壁面との間か筒体の後端と尻栓との間に、弾性部材を介在させ、竿杆本体の後端部に装着した尻栓によって筒体を長手方向に押圧させるか、又は、竿杆本体の段差壁面付近の小径領域外周に、前側が大径となるように傾斜したテーパ部を設け、装着した尻栓によって筒体を前記テーパ部に押圧させる
ことを特徴とする釣竿。 - 前記筒体の外側面に対し、柔軟部材内面を接着固定した請求項1記載の釣竿。
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