JP3906686B2 - 多重グリッド光学システム及びその製造方法及びイオンスラスタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、宇宙航行体に搭載して推力を発生するために用いられるイオンスラスタの多重グリッド光学システムとその製造方法に関する。
【0002】
宇宙航行体に搭載する推進システムは、種々の宇宙航行体の制御を実現するために使用される。
例えば衛星においては、軌道上昇(低軌道から静止軌道等高軌道への軌道の上昇)、軌道制御(衛星軌道の傾斜、ドリフト及び偏心等の補正)、姿勢制御(衛星のロール、ピッチ及びヨー軸周りの姿勢誤差の補正等)等に使用される。
【0003】
推進システムは搭載推進剤を加速することで得られる運動量を宇宙航行体に与えることによって制御に必要な速度増分を生成する。化学推進器が推進剤を燃焼させ燃焼圧を速度に変換し推力を発生するのに対し、電気推進器は推進剤をプラズマ化し、電気力で加速することにより推力を発生する点に特徴がある。
【0004】
例えばイオンスラスタは推進剤を電離して生成したイオンを高電界により静電加速する。その際、イオン速度は数十km/sec程度に達する。
【0005】
例えばキセノンを1kVで静電加速した場合、イオンの速度は38km/secになる。このように電気推進器では推進剤の加速が大きいことが推進剤単位流量当りの推力である比推力の高さを生み出している。
【0006】
例えばイオンスラスタの比推力は1500秒〜5000秒であり、化学推進器の〜400秒に比較して極めて大きい。
【0007】
一方、電気推進器の短所は推力の低さである。
電気推進器は電気力を与えるための高出力エネルギー源及び電力変換装置や制御装置が必要であり、これらは推力が大きくなる即ち発生電力が大きくなると共に大型化し、重量増となる。
【0008】
そこで現状実用化されている電気推進器の推力は例えばイオンスラスタでは2〜200mN程度である。この推力の低さから地上からの打ち上げ等高い重力傾斜のある空間での使用は適さないし、必要な速度増分を得るためには長時間の推力発生が必要となる。
【0009】
しかし、高い比推力は搭載推進剤質量の大幅な低減、それに伴う打上コストの低減、ペイロードの増加と多大なメリットがあるため、宇宙空間の非常に低い重力場下で、様々な適用がなされている。例えば、衛星軌道での並進及び回転摂動の修正(例えば静止衛星の南北軌道保持)、衛星の軌道上昇、深宇宙探査機の主推進機等に実用化されている。
【0010】
【従来の技術】
図4は宇宙航行体に搭載して推力を発生する従来のイオンスラスタを示す図であり、1はイオンスラスタ、2は中和器、3はプラズマ生成室、4は推進剤供給口、5は主陰極、6は磁石、7は磁極、8は陽極、9は磁力線、10はスクリーングリッド、11は加速グリッド、12は減速グリッド、13は推進剤、14は電子、15はイオン、16はプラズマ、17はイオンビーム、18は中和器電子である。
【0011】
また、図5はグリッドの摩耗を説明する図であり、19は磨耗前のスクリーングリッド、20は磨耗したスクリーングリッド、21は摩耗前の加速グリッド、22は摩耗した加速グリッド、23は減速グリッド、24はイオン放出面、25はイオンビーム、26は抽出されたイオン、27はスクリーングリッドに衝突するイオン、28はスパッタリングされた原子、29は未収束イオン、30は推進剤中性粒子、31は電荷交換イオン、32は高速の中性粒子である。なお、16は図4と同じものである。
【0012】
次にイオンスラスタの動作について、図4を用いて説明する。
まず中和器2を点火し、電子を発生できる状態とする。
プラズマ生成室3内に推進剤供給口4から流量を制御されたキセノン等のイオン化される推進剤13を導入し、プラズマ生成室3をガス雰囲気とする。
次に主陰極5から電子14を放出すると共に、陽極8に高電圧を印加することで主陰極5―陽極8間に放電を発生させる。
【0013】
ここで、主陰極5から供給された電子14は磁石6と磁極7によってプラズマ生成室3に形成された磁力線9に拘束され、いわゆるラーマー運動をしながら、プラズマ生成室3内のガス密度とガス−電子間の衝突断面積によって決まる平均自由行程程度飛行すると推進剤ガス粒子13と衝突し、イオン化する。
【0014】
放電が発生すると同時にプラズマ生成室3にはプラズマ16が生成する。
その後、プラズマ生成室3全体及びスクリーングリッド10を正の高電位に浮かすと共に、加速グリッド11に負の高電位を印加する。この時プラズマ生成室3と同電位のスクリーングリッド10と加速グリッド11からなるイオン引出系が形成する正電界によりプラズマ16からイオンビーム17が引き出さ、イオンビーム17が引き出されると同時にイオンビーム17が形成する正の空間電位により中和器2から中和器電子18が供給される。
【0015】
その結果、イオンスラスタが搭載された宇宙航行体は電気的に中性の状態に保たれる。イオンスラスタは上述したいろいろな用途において、宇宙航行体の制御に必要な速度増分を得るために長時間の推力発生を要求される。
【0016】
近年のミッションの長期化と宇宙航行体の大型化により、イオンスラスタの長寿命化が益々必要となってきた。イオンスラスタの寿命の指標となるのは推力と総推力発生時間の積であるトータルインパルスである。
【0017】
例えば軌道上寿命10年、軌道上初期質量3トンの典型的な静止衛星の場合、その南北軌道制御に必要なトータルインパルスは約1×106N−secである。例えば、推力20mNのイオンスラスタを使用すると、約15,000時間の推力発生が必要である。
【0018】
宇宙環境を模擬した真空チャンバによるキセノンを推進剤とするイオンスラスタの地上寿命試験により、イオンスラスタの寿命限定要因はイオンビーム抽出用グリッドの摩耗であることが分った。
【0019】
特に、スクリーングリッドの摩耗が致命的であり、最終的に破損に至ると、放電室からプラズマが漏洩し、スクリーングリッドと加速グリッドが短絡、グリッドに電圧印加が不能即ちビーム噴射不能となった。また加速グリッドも摩耗し、開口孔径が広がっていく。
その結果、プラズマ生成室の中性粒子密度低下に伴う放電電圧の上昇や引出し電界強度の低下に伴うイオンビーム電流値の低下を引起こした。
【0020】
グリッドの摩耗を図5を用いて説明する。
イオンビーム噴射中、プラズマ生成室にはプラズマ16が形成されており、スクリーングリッドには正の高電圧(例えば1kV)が、加速グリッドには負の高電圧(例えば−500V)が印加されている。
【0021】
スクリーングリッド開口部には加速グリッド電界が浸透しており、凹状のイオン放出面24が形成されている。
【0022】
グリッド近傍に存在する粒子の動きは次の通りである。
イオン放出面24から引き出されたプラズマ16中のイオン26の大部分は加速グリッド開口、減速グリッド開口を通過し、イオンビーム25として抽出される。またプラズマ16中のイオンの中にはスクリーングリッドに衝突するものがある。スクリーングリッドに衝突したイオン27はスパッタリング現象によりスクリーングリッドの構成原子28を弾き出す。
【0023】
スクリーングリッドは摩耗前の形状19から形状20へ徐々に摩耗していく。収束が不十分な一部のイオン29は加速グリッドに衝突し、加速グリッドの摩耗を引起こす。またごく僅かな一部の抽出されたイオンは漏洩している推進剤中性粒子30と電荷交換を起こし、自らは高速の中性粒子32となり、電荷交換した中性粒子は遅い電荷交換イオン31となる。
【0024】
電荷交換イオン31は発生場所のポテンシャルと加速グリッド電位の差のエネルギーを有し、加速グリッドに衝突する。加速グリッドは摩耗前の形状21から形状22へ徐々に摩耗していく。
なお、減速グリッドは加速グリッドの電荷交換イオンによる下流面の摩耗を防止するために設けられるもので殆ど摩耗しない。
【0025】
スクリーングリッドの摩耗はプラズマ生成室に面する面が板厚方向に摩耗し、開口孔側面の摩耗は殆ど無い。それはイオン放出面の形状が凹状であり、イオンビームを収束させるため、開口部の側面にイオンが衝突しないためである。
【0026】
一方、加速グリッドの摩耗は開口孔側面と減速グリッドに対向する面に起こる。これは加速グリッドの摩耗を主として引起こすのは電荷交換イオンであり、大部分の電荷交換イオンは加速グリッドより下流で生成するためである。
【0027】
推進剤がキセノンの場合、スクリーングリッドの摩耗は放電電圧が40V程度以上で顕著になる。これは、放電電圧が40V前後でプラズマ中の二価イオンの比率が高まり、約100eV程度のエネルギーを有するイオンがスパッタリングを引起こすためである。放電電圧はスクリーングリッド摩耗の指標となる。
放電電圧はプラズマ生成室内に形成される磁場構造やプラズマ生成室径、中性粒子密度により異なる。
【0028】
電子衝撃型イオンスラスタの場合、磁場構造はKaufman型と呼ばれる発散磁場型、カスプ型に分けられるが、発散磁場型の方が放電電圧が高くなり易い。
また、プラズマ生成室径は小さい方が放電電圧が高くなり、特にプラズマ生成室径が12cm程度以下の発散磁場型イオンスラスタは放電電圧が35〜45Vとなることが多い。
【0029】
また中性粒子密度は低い方が放電電圧が高くなる。そこで、加速グリッドの開口孔径をスクリーングリッド開口孔径の50〜70%に設計してコンダクタンスを低下させ、プラズマ生成室内の中性粒子密度を高める手段が取られている。
【0030】
なお、これはスクリーングリッド開口の引出し電界の向上にも効果がある。
しかし、加速グリッドの開口孔径は長時間動作で摩耗により広がってくる。加速グリッドの開口径の広がりと供に放電室内中性粒子密度が低下し、放電電圧は徐々に上昇傾向となる。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】
宇宙航行体の寿命を担保し、ミッションを達成するためには、イオンスラスタの推力発生が長時間に渡って安定に行われなければならないが、そのためにはイオンスラスタのイオンビームを抽出する多重グリッド光学システムの長寿命化が必要である。
【0032】
特開昭63−212777号公報には、グリッド等の表面がTaC(炭化タンタル)、TiC(炭化チタン)あるいはAl2O3(アルミナ)であることを特徴としたイオンエンジンが開示されている。
【0033】
TaC、TiCあるいはAl2O3はグリッド材料として最もよく使用されるモリブデンに比較して、スパッタ率が低く、スパッタリングに対して耐性がある。従ってモリブデングリッドの表面にコーティングするとグリッドの寿命を延ばすことができる。
【0034】
しかし、スクリーングリッドの表面に耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングする場合、スクリーングリッドの形状に起因する問題が発生する。スクリーングリッドはイオンビームを効率的に抽出するために厚みを薄く、開口径を大きくすることが望ましい。
【0035】
そこで例えばプラズマ化学気相蒸着法(CVD(Chemical Vapor Deposition)法)で成膜すると、材料ガスプラズマがプラズマ生成室に面する面と同時に開口孔側面にも入り込むため、開口側面にもプラズマに接する面と同程度の厚みのセラミックがコーティングされる結果となる。
【0036】
その結果、開口径の縮小化即ちイオンビーム抽出面積の低下が発生する。
開口径の縮小したスクリーングリッドを用いたイオンスラスタはイオンビーム電流値が低下、即ち推力が低下する問題点があった。
【0037】
推力の低下はビーム噴射をその分長くする必要があるため不利である。
また、推力を上昇させるために放電電圧を上昇させてプラズマ密度を高める手段も採られるが、放電電圧の上昇によりスクリーングリッドの摩耗が早まり、スクリーングリッド寿命が短くなるため長寿命化には適さない。
【0038】
本発明は係る問題点を解決するためになされたもので、推力の低下を引起こすこと無く、長寿命化を実現するイオンビーム抽出用多重グリッド光学システムを提供するものである。
【0039】
【課題を解決するための手段】
この発明の多重グリッド光学システムは、イオンスラスタにおける複数の開口を有するスクリーングリッドと前記スクリーングリッドから間隔を隔てられ、
前記スクリーングリッドの開口にほぼ対向する位置に開口を有する加速グリッドと前記加速グリッドから間隔を隔てられ、前記加速グリッドの開口にほぼ対向する位置に開口を有する減速グリッドから構成されるイオンスラスタにおけるプラズマ生成室からイオンビームを発生させる多重グリッド光学システムであって、前記スクリーングリッドの前記プラズマ生成室に面する面に耐スパッタリング性セラミック膜がコーティングされており、ビーム抽出用開口の側面には前記耐スパッタリング性セラミック膜が殆ど堆積していないスクリーングリッドと前記加速グリッドのビーム抽出用開口の側面及び前記減速グリッドに面する面に耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングされている加速グリッドからなるものである。
【0040】
また、耐スパッタリング性セラミック膜が炭化チタンであっても良い。
【0041】
なお、この発明のイオンスラスタは、イオンビームを抽出し、推力を発生するイオンスラスタにおいて、開放端部を有し、イオン化可能なガスを導入するチャンバと、
前記ガスを導入するガス供給口と、電子ビームを前記チャンバに注入するように配置した電子源と、前記チャンバ内に位置し、前記電子ビームを加速し、前記ガスをイオン化するために電圧を印加する陽極と、前記チャンバ近傍に位置し、前記イオン化を増強するために前記チャンバ内に磁場を発生するように構成された磁場形成システムと、前記イオンビーム近傍に中和用の電子ビームを注入するように配置した中和装置と、前記開放端部に配置したイオンビーム抽出用の多重グリッド光学システムから構成されるものである。
【0042】
さらに、この発明の多重グリッドの製造方法は、イオンスラスタの多重グリッド光学システムにおけるスクリーングリッド製造方法であって、スクリーングリッドのイオンビーム抽出用開口に金属性のピンを挿入し、耐スパッタリング性セラミック膜を成膜するものである。
【0043】
【発明の実施の形態】
実施の形態
図1はこの発明の実施の形態によるプラズマ生成室に面する面のみに耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングしたスクリーングリッドとビーム抽出用開口の側面及び減速グリッドに面する面に耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングされている加速グリッドを有するグリッド光学システムの構成を示す図であり、33は耐スパッタリング性セラミック膜である。なお、10〜12は従来技術の図4の説明と同じものである。
【0044】
多重グリッド光学システムは、イオンスラスタ1における複数の開口を有するスクリーングリッド10とスクリーングリッド10から間隔を隔てられ、スクリーングリッド10の開口にほぼ対向する位置に開口を有する加速グリッド11と加速グリッド11から間隔を隔てられ、加速グリッド11の開口にほぼ対向する位置に開口を有する減速グリッド12から構成されるイオンスラスタ1におけるプラズマチャンバからイオンビーム25を発生させる多重グリッド光学システムであって、スクリーングリッド10のプラズマチャンバに面する面に耐スパッタリング性セラミック膜33をコーティングされており、ビーム抽出用開口の側面には耐スパッタリング性セラミック膜33が殆ど堆積していないスクリーングリッド1と加速グリッド11のビーム抽出用開口の側面及び減速グリッド12に面する面に耐スパッタリング性セラミック膜33をコーティングされている加速グリッド11からなる多重グリッド光学システムであって、特に耐スパッタリング性セラミック膜33はTiCであるものである。
【0045】
また、イオンスラスタ1は、開放端部を有し、イオン化可能なガスを導入するチャンバと、前記ガスを導入するガス供給系と、電子ビームを前記チャンバに注入するように配置した電子源と、前記チャンバ内に位置し、前記電子ビームを加速し、前記ガスをイオン化するために電圧を印加する陽極8と、前記チャンバ近傍に位置し、前記イオン化を増強するために前記チャンバ内に磁場を発生するように構成された磁場形成システムと、前記イオンビーム17近傍に中和用の電子ビームを注入するように配置した中和装置と、前記開放端部に配置したイオンビーム17抽出用の多重グリッド光学システムから構成されるイオンスラスタ1であって、多重グリッド光学システムはスクリーングリッド10のプラズマチャンバに面する面に耐スパッタリング性セラミック膜33をコーティングされており、ビーム抽出用開口の側面には耐スパッタリング性セラミック膜33が殆ど堆積していないスクリーングリッド10であり、加速グリッド11はビーム抽出用開口の側面及び減速グリッド12に面する面に耐スパッタリング性セラミック膜33をコーティングされている加速グリッド11である多重グリッド光学システムであるものである。
【0046】
また図2はスクリーングリッドに耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングする際のグリッド開口マスキング方法を示した図であり、34は基体グリッド、35はマスキングピン、36はマスキングピン保持部、37はマスキングピン高さ調整部、38はスペーサ、39は保護カバーである。なお、33は図1の説明と同じものである。
【0047】
スクリーングリッドの製作方法を図2を用いて説明する。
碗状の曲面を形成したモリブデン製の薄板円板に、複数のイオン抽出用開口を機械加工もしくは放電加工等で形成することで基体グリッド34を製作する。
基体グリッド34をグリッドと同じ曲率を有しグリッド開口部と同じ位置に開口孔加工したマスキングピン保持部36と基体グリッド34と同様の曲率を有したマスキングピン高さ調整部37に凹面を外向きにセッティングする。
これは凹面がプラズマ生成室に面する面となるからである。
【0048】
マスキングピン保持部36及びマスキングピン高さ調整部37は例えばグラファイト等から機械加工により作製する。基体グリッド34をセッティング後、マスキングピン35をグリッド開口及びマスキングピン保持部36に挿入する。
マスキングピン保持部36はマスキングピン35のズレや脱落を防止するためのものである。
【0049】
マスキングピン35はステンレスや銅等の金属からなる円筒形状を有するものであり、グリッド開口径より0〜50μm小さい径を有する。マスキングピン35を開口に挿入すると、グリッドと同じ曲率を有するマスキングピン保持部36によりグリッド開口からの突出長は全ての開口において同じとなる。
【0050】
スペーサ38でマスキングピン35が基体グリッド34から1mm程度突出するように高さ調整する。保護カバー39は基体グリッド35の開口孔以外の外周を成膜から保護するためのものである。基体グリッド34の開口にマスキングピン35を挿入した状態で、例えばプラズマCVD法により耐スパッタリング性セラミック膜33の成膜を行う。
【0051】
また、図3は加速グリッドに耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングする際の保持方法を示した図であり、40はグリッド保持部である。なお、33は図1と同じ、34、39は図2と同じものである。
【0052】
加速グリッドのコーティング方法を図3を用いて説明する。
スクリーングリッドと同様に製作した基体グリッドをグリッド保持部40に保護カバー39と共に凸面を外向きにして取付けるが、これは減速グリッドと対向する面が凸面であるためである。
【0053】
このように保持後、例えばプラズマCVD法にて耐スパッタリング性セラミック膜33の成膜を行うと、基体グリッドの凸面と開口孔側面に成膜される結果となる。基体グリッドの凹面には材料ガスプラズマが入り込まないため、基体グリッドの凹面には成膜されない。
【0054】
イオンスラスタ1の多重グリッド光学システムにおけるスクリーングリッド10の製造方法であって、スクリーングリッド10のイオンビーム25抽出用開口に金属性のピンを挿入し、耐スパッタリング性セラミック膜33を成膜することを特徴とするスクリーングリッド製造方法である。
【0055】
上述の製作方法で炭化チタンのコーティングを施したスクリーングリッドについて、孔径を測定すると共に本実施例の多重グリッド光学システムを塔載したイオンスラスタのイオンビームの抽出試験を実施した。なお、基体グリッドの開口孔径は2.28mm、孔数は2,149穴、板厚0.4mmで、コーティング膜厚は0.1mmである。
【0056】
測定結果及び試験結果を表1に示す。
比較例として開口孔をマスキングピンを挿入しない状態で炭化チタンをコーティングしたスクリーングリッドの測定結果とイオンビーム抽出試験結果を示し、加速グリッドは本実施例と同じである。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の比較から上述の製作方法を採れば耐スパッタリング性セラミック膜を成膜してもスクリーングリッドの開口孔径は殆ど低下しないこと、またイオン電流抽出性能が優れたグリッド光学システムが構成できることが分る。
【0059】
以上の実施例ではイオンスラスタの外向きに凸の曲率を有する多重グリッド光学システムに関して示したが、曲率の無い多重グリッド光学システムであっても、イオンスラスタの内向きに凸の曲率を有する多重グリッド光学システムにも適用できる。
【0060】
また本発明はプラズマ生成室径が12cm程度以下の発散磁場型イオンスラスタの長寿命化に特に効果が有るが、これより大口径のイオンスラスタにもカスプ型イオンスラスタに適用しても長寿命化の効果が有る。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、スクリーングリッドの開口孔径を維持したまま、耐スパッタリング性セラミック膜をプラズマに接する面にコーティングしているため、推力の低下を招くこと無く、スクリーングリッドの長寿命化が図れ、本スクリーングリッドをイオンスラスタに用いると長寿命化の効果が有る。
【0062】
本発明のスクリーングリッド製造方法に依れば、スクリーングリッドの開口孔径を維持したまま、耐スパッタリング性セラミック膜をプラズマに接する面にコーティングしたスクリーングリッドが従来の工程を大幅に変更することなく作製でき、産業上非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示す多重グリッド光学システムの構成例を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態を示すスクリーングリッド製作方法例を示す図である。
【図3】 この発明の実施の形態を示す加速グリッド製作方法例を示す図である。
【図4】 従来のイオンスラスタの構成例を示す図である。
【図5】 グリッドの摩耗を説明する図である。
【符号の説明】
1 イオンスラスタ、 2 中和器、 3 プラズマ生成室、 4 推進剤供給口、 5 主陰極、 6 磁石、 7 磁極、 8 陽極、 9 磁力線、 10 スクリーングリッド、 11 加速グリッド、 12 減速グリッド、 13 推進剤、 14 電子、 15 イオン、 16 プラズマ、 17 イオンビーム、 18 中和器電子、 19 摩耗前のスクリーングリッド、 20 摩耗したスクリーングリッド、 21 摩耗前の加速グリッド、 22 摩耗した加速グリッド、 23 減速グリッド、 24 イオン放出面、 25 イオンビーム、 26 抽出されるイオン、 27 スクリーングリッドに衝突するイオン、 28 スパッタリングされた原子、 29 未収束イオン、 30 推進剤中性粒子、 31 電荷交換イオン、 32 高速の中性粒子、 33 耐スパッタリング性セラミック膜、 34 基体グリッド、 35 マスキングピン、 36 マスキングピン保持部、 37 マスキングピン高さ調整部、 38 スペーサ、 39 保護カバー、 40 グリッド保持部
Claims (4)
- 複数のビーム抽出用開口を有するスクリーングリッドと、
前記スクリーングリッドから間隔を隔てられ、前記スクリーングリッドのビーム抽出用開口にほぼ対向する位置にビーム抽出用開口を有する加速グリッドと、
前記加速グリッドから間隔を隔てられ、前記加速グリッドのビーム抽出用開口にほぼ対向する位置にビーム抽出用開口を有する減速グリッドとから構成され、イオンスラスタにおけるプラズマ生成室からイオンビームを発生させる多重グリッド光学システムであって、
前記スクリーングリッドは、ビーム抽出用開口の側面には前記耐スパッタリング性セラミック膜が堆積せず、前記プラズマ生成室に面する面に耐スパッタリング性セラミック膜がコーティングされるように成膜されており、
前記加速グリッドは、ビーム抽出用開口の側面及び前記減速グリッドに面する面に耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングされていることを特徴とする多重グリッド光学システム。 - 耐スパッタリング性セラミック膜が炭化チタンであることを特徴とする請求項1記載の多重グリッド光学システム。
- イオンビームを抽出し、推力を発生するイオンスラスタにおいて、
開放端部を有し、イオン化可能なガスを導入するチャンバと、
前記ガスを導入するガス供給口と、
電子ビームを前記チャンバに注入するように配置した電子源と、
前記チャンバ内に位置し、前記電子ビームを加速し、前記ガスをイオン化するために電圧を印加する陽極と、
前記チャンバ近傍に位置し、前記イオン化を増強するために前記チャンバ内に磁場を発生するように構成された磁場形成システムと、
前記イオンビーム近傍に中和用の電子ビームを注入するように配置した中和装置と、
前記開放端部に配置したイオンビーム抽出用の多重グリッド光学システムから構成され、
前記多重グリッド光学システムとして、請求項1記載の多重グリッド光学システムを用いたことを特徴とするイオンスラスタ。 - 複数のビーム抽出用開口を有するスクリーングリッドと、
前記スクリーングリッドから間隔を隔てられ、前記スクリーングリッドのビーム抽出用開口にほぼ対向する位置にビーム抽出用開口を有する加速グリッドと、前記加速グリッドから間隔を隔てられ、前記加速グリッドのビーム抽出用開口にほぼ対向する位置にビーム抽出用開口を有する減速グリッドとから構成された、イオンスラスタの多重グリッド光学システムの製造方法であって、
前記スクリーングリッドのイオンビーム抽出用開口に金属性のピンを挿入した状態で耐スパッタリング性セラミック膜を成膜し、前記プラズマ生成室に面する面に耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングする工程、
前記加速グリッドのビーム抽出用開口の側面及び前記減速グリッドに面する面に耐スパッタリング性セラミック膜をコーティングする工程、
により成膜加工されることを特徴とする多重グリッド光学システムの製造方法。
Priority Applications (1)
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