JP3905619B2 - 廃棄物の熱分解炉および該熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置 - Google Patents

廃棄物の熱分解炉および該熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に有機物および水分を含有する廃棄物を焼却処理するのに先立って廃棄物中の有機物を熱分解するための廃棄物の熱分解炉、および該熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、都市ゴミ等の有機物を含有する廃棄物はその大部分が焼却処分されているが、通常このような廃棄物を焼却する際には、理論的に必要とされる量の2倍以上の空気を供給して、廃棄物を十分に完全燃焼させるようにしている。ところが、このように焼却の際に供給する空気量が多いと、排ガスの量も多くなって排ガス処理設備も大きくなるのは勿論、廃熱回収の効率も低下し、非経済的となる。そこで、このような欠点を補うために、廃棄物を焼却処理するのに先立って廃棄物中の有機物を熱分解することが行われており、これにより有機物は熱分解排ガス、チャー、およびタールに分解されて理論空気量の1.2倍〜1.4倍程度の空気で完全燃焼可能となるため、経済的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような有機物を含有する廃棄物は、同時に多量の水分をも含有しているのが一般的であり、しかもその水分量も一定ではなく、20%〜60%程度の範囲で変動する。従って、かかる廃棄物中の有機物を熱分解するには、有機物の分解熱に加えて水分の顕熱および蒸発熱が必要となり、また有機物の熱分解温度を維持するためには、これら水分の顕熱および蒸発熱をも含めた熱を与え続ける必要があり、しかも変動する水分量に応じて加熱量も変化させなければならない。ここで、このような廃棄物に熱を与えるための加熱方法としては、例えば流動層のように加熱媒体を循環させる方法や間接加熱方法、あるいは廃棄物中の有機物の一部を燃焼させる方法等があるが、いずれにしても上述のような変動の大きな水分量に対応して加熱量を変化させるには運転が煩雑となり、却って非経済的な結果となる。
【0004】
本発明は、このような背景のもとになされたもので、廃棄物に含有される水分量の変動に影響を受けることなく、安定して廃棄物中の有機物の熱分解を行うことが可能な廃棄物の熱分解炉を提供し、さらにかかる熱分解炉を備えて、より効率的な廃棄物の処理を図ることが可能な廃棄物の処理装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、炉内に形成される流動層によって廃棄物中の有機物を熱分解する廃棄物の熱分解炉であって、上記炉内を、炉底部に配設された分散板との間に間隔を開けて設けられる隔壁によって複数の流動室に分割し、これらの流動室のうち一の流動室においては、上記炉内に供給された上記廃棄物を乾燥させる乾燥流動層部を形成する一方、他の一の流動室においては、上記乾燥流動層部により乾燥された廃棄物を熱分解する熱分解流動層部を形成し、上記乾燥流動層部には、低酸素濃度の流動用気体を供給する一方、上記熱分解流動層部には、上記乾燥流動層部よりも高い酸素濃度の流動用気体を供給することを特徴とする。
【0006】
従って、廃棄物は、乾燥流動層部において乾燥させられて水分が除去された後、熱分解流動層部において有機物が熱分解させられるため、この熱分解の際の加熱量が水分量の変動に影響を受けることはなく、ほぼ廃棄物の処理量に比例するので、熱分解温度の管理が容易となり、安定した有機物の熱分解を図ることが可能となる。また、上記乾燥流動層部と熱分解流動層部とは、炉内を隔壁によって分割することにより画成される複数の流動室にそれぞれ形成されるものであるから、例えば熱分解炉とは別に乾燥装置を設ける場合等に比べて経済的である。しかも、両流動層部は上記隔壁と分散板との間を介して連通していて、乾燥流動層部において乾燥させられた廃棄物がそのまま直ぐに熱分解流動層部に供給されるので、乾燥させられた高温の廃棄物が熱分解流動層部に供給される途中で発火してしまったりするのが避けられるとともに、この廃棄物の有する熱を熱分解に有効に利用することができる。
【0007】
ここで、上記乾燥流動層部には、低酸素濃度の流動用気体を供給する一方、上記熱分解流動層部には、上記乾燥流動層部よりも高い酸素濃度の流動用気体を供給することにより、乾燥流動層部における廃棄物の発火をより確実に防止することができるとともに、熱分解流動層部においては有機物の部分燃焼を促して熱分解に必要な熱量を十分に確保することが可能となる。また、上記隔壁と分散板との間の間隔は、上記分散板から上記流動層のフリーボード部までの高さよりも小さく、かつ上記乾燥流動層部により乾燥された廃棄物の最大粒子径よりも大きく設定されるのが望ましく、これにより、廃棄物は乾燥流動層部から熱分解流動層部に円滑に供給される一方、乾燥流動層部において廃棄物を乾燥した水分含有量の高い流動用気体が熱分解流動層部に流れ込んで安定した熱分解に影響を及ぼすような事態を防止することができる。
【0008】
一方、本発明の廃棄物の処理装置は、上記構成の熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置であって、第一には、上記乾燥流動層部から排出される乾燥排ガスと上記熱分解流動層部から排出される熱分解排ガスとを混合して燃焼する燃焼装置を備え、この燃焼装置から排出される燃焼排ガスを、少なくとも上記乾燥流動層部に流動用気体として供給することを特徴とする。しかるに、これら乾燥排ガスおよび熱分解排ガスのうち特に熱分解排ガスは高カロリーであって、これらを燃焼させることにより高温でしかも低酸素濃度の燃焼排ガスが得られるので、この燃焼排ガスを乾燥流動層部の流動用気体として利用することにより、乾燥流動層部における廃棄物の発火をさらに確実に防ぎつつ、効率的な乾燥を促すことが可能となるとともに、熱分解炉からの排気が直接的に処理装置外に排出されるのを避けることができる。また、これに併せて、上記燃焼排ガスに空気を混合して酸素濃度を調節した上で、上記熱分解流動層部にも流動用気体として供給することにより、熱分解流動層部における有機物の部分燃焼を制御して熱分解温度を安定的に維持することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の廃棄物の熱分解炉の一実施形態を示すものである。本実施形態の熱分解炉1は略箱体状をなしており、その炉内の底部には水平方向に分散板2が取り付けられている。そして、この分散板2上には流動層3が形成されるとともに、分散板2の下部は流動用気体が導入される加圧室4とされている。また、この熱分解炉1の水平方向一端側(図1において左側)の壁部5には、消石灰等が混合されて組成調整された廃棄物Aが供給される供給口6が設けられるとともに、他端側(図1において右側)には熱分解された廃棄物Aが排出される排出口7が設けられており、炉内に供給された廃棄物Aは、流動層3を形成する硅砂等の流動用媒体とともに上記流動用気体によって流動しつつ、上記分散板2上を図中に矢線で示す移送方向Sに向けて移送されることとなる。
【0010】
なお、本実施形態では、分散板2の上方から上記排出口7にかけて粉体圧抑制板8が設けられている。この粉体圧抑制板8は、流動層3を形成する上記流動用媒体および廃棄物Aの粒子のうち、流動層3の下部を流動する粒径や密度の大きな粒子が、排出口7の近傍において粒径や密度の小さな粒子により形成される充填層からの粉体圧を受けて上記移送方向Sへの移動が阻害されるのを防止し、各粒子の滞留時間の均一化を図るために設けられたものであり、本実施形態では分散板2の排出口7側の上方から排出口7内を通ってその下端に延びるように配設され、上記移送方向S側に向けて全体的に下方に傾斜するとともに、分散板2の上記他端の直上において鈍角に曲折させられている。
【0011】
また、図2は上記分散板2の断面を示す拡大図であるが、本実施形態ではこの図2に示されるように、分散板2には多数の空気導入口9…が、それぞれ上記移送方向Sに直交する方向に延びるように、かつ該移送方向Sには互いに間隔を置いて形成されているとともに、分散板2上には各空気導入口9…を覆うように半円筒状のキャップ10が、同じく移送方向Sに直交する方向に敷設されている。そして、このキャップ10には、その敷設方向に適当間隔をおいて複数のノズル11…が、それぞれ上記移送方向S側を向いて、かつ分散板2に対する傾斜角θが30°以下となるように斜め上方に傾斜した方向に形成されている。さらに、上記移送方向Sに互いに隣接するキャップ10同士の間には、分散板2の上面から移送方向後方側のキャップ10の上部にかけて、上記傾斜角θと等しい角度で斜め上方に傾斜するように板状のジャンプ台12が配設されている。
【0012】
なお、上記ノズル11の形状は、その断面が円形のものでもよく、また上記敷設方向に延びる長円状や楕円状、あるいは長方形状や台形状のものであってもよく、さらに流動層3の各部分においてノズル11の断面形状を変えるようにしてもよい。さらにまた、上記半円筒状のキャップ10と板状のジャンプ台12に代えて、例えば図3に示すようにノズル11とジャンプ台12とが形成された断面「へ」の字型の板材よりなるキャップ13を分散板2上に敷設したり、あるいは図4に示すように分散板2自体を階段状に形成してノズル11とジャンプ台12とを設けるようにしてもよい。ただし、これらのノズル11…は、分散板2の平面視において千鳥状等に配置されて均一に分散形成されるのが望ましく、また、上述のように分散板2自体を階段状に形成したりする場合などには、ジャンプ台12も同様に均一に分散形成されるようにしてもよい。
【0013】
一方、当該熱分解炉1の炉内には、上記移送方向Sについてその略中央部に、分散板2との間に間隔を開けて移送方向Sに直交するように隔壁14が設けられており、これによって炉内は、隔壁14を挟んで移送方向Sに並ぶ2つの流動室15,16に分割されている。そして、これに伴い上記流動層3も、上記供給口6側、すなわち上記移送方向Sの後方側の流動室15に形成される乾燥流動層部17と、上記排出口7側、すなわち移送方向S側の流動室16に形成される熱分解流動層部18とに分割させられている。ここで、上記分散板2から隔壁14の下端までの間隔は、分散板2から上記各流動層部17,18の上部のフリーボード部19,20までの高さよりも小さく、かつ上記乾燥流動層部17によって乾燥された廃棄物Aの最大粒子径よりも大きく設定されており、従って隔壁14の下端は各流動層部17,18に埋没するように配設されることとなる。
【0014】
また、上記分散板2の下の上記加圧室4にも、上記隔壁14の位置に合わせて隔壁21が設けられており、この隔壁21によって加圧室4は、上記乾燥流動層部17の下方の乾燥用ガス加圧室22と、上記熱分解流動層部18の下方の熱分解用ガス加圧室23とに分割され、さらに各加圧室22,23にはそれぞれ流動用気体の供給口24,25が設けられていて、互いに独立して流動用気体が供給されて分散板2から各流動層部17,18に噴出されるようになされている。そして、上記乾燥流動層部17の下方に配設される乾燥用ガス加圧室22には、低酸素濃度の乾燥用ガスBが供給される一方、上記熱分解流動層部18の下方に配設される熱分解用ガス加圧室23には、上記乾燥用ガスBよりも高酸素濃度に調整された熱分解用ガスCが供給されている。また、熱分解炉1の天井部26は、図1に示すように上記各流動室15,16ごとに上記移送方向Sに向けて山型をなす三角屋根状に形成されており、その頂部にはそれぞれ乾燥排ガス排出口27および熱分解排ガス排出口28が設けられている。
【0015】
次に、図5は、このように構成された熱分解炉1を備えた本発明の廃棄物の処理装置の一実施形態を示すものである。この図5に示すように、本実施形態の処理装置において上記熱分解炉1の乾燥排ガス排出口27から排出された乾燥排ガスDは、乾燥排ガスサイクロン31によって除塵され、次いで空気Eが混合されてその酸素濃度が調整された後、本実施形態における燃焼装置としてのアフターバーナ32に供給される。なお、上記乾燥排ガスサイクロン31において乾燥排ガスDから取り除かれたダスト分は、熱分解炉1の上記流動室15の乾燥流動層部17に戻される。また、熱分解炉1の上記熱分解排ガス排出口28から排出された可燃性の熱分解排ガスFは、熱分解排ガスサイクロン33によって除塵された後に上記アフターバーナ32に供給され、酸素濃度が調整された上記乾燥排ガスDとともに燃焼させられる。
【0016】
そして、こうして得られた燃焼排ガスGは、熱交換器等の排熱回収装置34によって熱回収された後に2つに分岐させられ、一部はそのまま送風機35によって供給量が自動制御されながら熱分解炉1の乾燥用ガス加圧室22に上記乾燥用ガスBとして供給されるとともに、過剰分は排気Hとして排出される一方、残りは空気Iが混合させられて酸素濃度が調整された後、送風機36によって熱分解炉1の熱分解用ガス加圧室23に上記熱分解用ガスCとして供給される。従って、これにより、本実施形態においては上述したように、熱分解炉1において乾燥流動層部17に流動用気体として供給される乾燥用ガスBは低酸素濃度とされる一方、熱分解流動層部18に流動用気体として供給される熱分解用ガスCは、この乾燥用ガスBよりも高酸素濃度に設定されることとなる。
【0017】
一方、熱分解炉1の熱分解流動層部18において熱分解されて上記排出口7から排出された廃棄物Aの粒子および流動用媒体は、スクリューコンベア37によって風力分級機等の分級装置38に供給され、廃棄物Aの粒子のうち比較的粒径の小さい粒子より成る小粒子Jおよび上記流動用媒体を含む中間粒子Kと、廃棄物Aの粒子のうち比較的粒径の大きい粒子より大粒子Lとに分級される。そして、上記小粒子Jと中間粒子Kとは、分級装置38の分級ガスとともに第1分級ガスサイクロン39に供給されて分離させられ、中間粒子Kは上記乾燥流動層部17に戻される一方、小粒子Jは上記分級ガスとともにさらに第2分級ガスサイクロン40により分離させられ、次いで溶融炉41に供給されて空気Mにより燃焼、溶融させられる。また、第2分級ガスサイクロン40において小粒子Jが除塵された分級ガスは、排気Nとして排出される。
【0018】
さらに、本実施形態では、上記熱分解排ガスサイクロン33において熱分解排ガスFから分離されたダストOも、上記廃棄物A中のアルカリあるいはアルカリ土類成分と反応して生成された該ダストN中の塩類が脱塩処理装置42によって脱塩された後、上記溶融炉41に供給されて小粒子Jとともに溶融させられるようになされている。さらにまた、この溶融炉41から排出された排ガスは、上記アフターバーナ32から排出された燃焼排ガスGと混合されて上記廃熱回収装置34に送られ、熱分解炉1の乾燥流動層部17および熱分解流動層部18の流動用気体として利用される。
【0019】
しかるに、このように構成された廃棄物Aの熱分解炉1および該熱分解炉1を備えた廃棄物Aの処理装置において、熱分解炉1の供給口6から乾燥流動層部17に供給された廃棄物Aは、この乾燥流動層部17において分散板2から噴出される上記乾燥用ガスBにより、流動用媒体とともに流動させられて乾燥させられる。そして、こうして乾燥処理された廃棄物Aが、隔壁14と分散板2との間を通って隣接する熱分解流動層部18に供給され、ここで熱分解用ガスCにより流動させられて有機物が熱分解されるため、上記構成の熱分解炉1によれば、上記供給口6から供給される廃棄物Aに含有される水分量に関わらず、廃棄物Aの処理量に略比例した加熱量で有機物の熱分解を行うことができ、これにより熱分解流動層部18における熱分解温度の管理が容易となって、廃棄物Aの水分量の変動が著しい場合でも、安定した有機物の熱分解を促することが可能となる。
【0020】
また、上記熱分解炉1においては、その炉内に隔壁14を設けることによって流動層3が上記乾燥流動層部17と熱分解流動層部18とに分割されており、従って、熱分解炉1とは別に廃棄物Aの乾燥装置を設ける場合等に比べ、経済的であるとともに、乾燥流動層部17において乾燥された廃棄物Aが、そのまま隔壁14と分散板2との間を通って熱分解流動層部18に供給されるので、乾燥させられて高温となった廃棄物Aが熱分解流動層部18に供給される途中で発火してしまったりするような事態を防止することができる。さらにまた、かかる高温の廃棄物Aが有する熱量を、熱分解流動層部18における有機物の熱分解に利用することも可能となり、より効率的な熱分解を促すことができるという利点も得られる。
【0021】
しかも、本実施形態では上述のように、上記隔壁14と分散板2との間の間隔が、分散板2から流動層3の各流動層部17,18のフリーボード部19,20までの高さよりも小さく、かつ上記乾燥流動層部17により乾燥された廃棄物Aの最大粒子径よりも大きく設定されており、これにより、廃棄物Aは隔壁14と分散板2との間を通って乾燥流動層部17から熱分解流動層部18に円滑に供給される一方、乾燥流動層部17において廃棄物Aを乾燥した水分含有量の高い流動用気体や乾燥排ガスDが熱分解流動層部18に流れ込んで安定した熱分解に影響を及ぼすような事態を防止することができる。すなわち、上記間隔が分散板からフリーボード部19,20までの高さよりも大きいと、乾燥流動層部17の水分含有量の高い流動用気体や乾燥排ガスDが熱分解流動層部18に流入し、水分の顕熱や蒸発熱によって熱分解温度が低下してしまうおそれがあり、逆に上記間隔が廃棄物Aの最大粒子径よりも小さいと、この隔壁14と分散板2との間で詰まりが生じるおそれがある。
【0022】
さらに本実施形態の廃棄物Aの熱分解炉1および処理装置では、熱分解炉1の乾燥流動層部17に流動用気体として供給される乾燥用ガスBが、上記乾燥排ガスDおよび空気Eと熱分解排ガスFとをアフターバーナ32により燃焼させた燃焼排ガスGであって、通常3vol%程度の低酸素濃度であるとともに、特に有機物の熱分解生成物である熱分解排ガスFは高カロリーであるので、その燃焼排ガスGは排熱回収装置34によって熱回収された後でも500℃程度の高温であり、従ってかかる燃焼排ガスGを乾燥用ガスBとして供給することにより、乾燥流動層部17における廃棄物Aの発火等も確実に防止することができるとともに、一層効率的な乾燥を図ることができる。ただし、本実施形態の処理装置では、このように乾燥排ガスDと熱分解排ガスFとを燃焼させた燃焼排ガスGを乾燥用ガスBとして供給しているが、廃棄物Aの乾燥には250℃〜350℃程度の比較的低温の気体でも十分であるので、本発明の熱分解炉においては、例えば他の設備で熱回収した後の排ガスを利用することも可能である。
【0023】
また一方、本実施形態では、熱分解流動層部18に流動用気体として供給される熱分解用ガスCにも上記燃焼排ガスGが利用されており、しかもこの燃焼排ガスGに空気Iが混合させられることにより、上記乾燥用ガスBよりも高い酸素濃度とされている。従って、このような熱分解用ガスCを供給することにより、熱分解流動層部18においては乾燥流動層部17とは逆に有機物の部分燃焼を促すことができ、これによって熱分解に必要な熱量や熱分解温度を維持することが可能となる。しかも、本実施形態の処理装置では、上述したように低酸素濃度である燃焼排ガスGに空気Iを混合することによって、上記熱分解用ガスCの酸素濃度を比較的正確かつ容易に所定の濃度に調節可能であるので、熱分解流動層部18における部分燃焼を確実に制御して一層安定した有機物の熱分解を図ることができる。ただし、このような部分燃焼は、高カロリーの熱分解生成物を得るためには抑えられるのが望ましく、従って熱分解用ガスCの温度は、室温から500℃程度までの範囲が使用可能であるものの、より高温であることが望ましい。
【0024】
さらにまた、本実施形態の処理装置では、熱分解炉1の排出口7から排出された廃棄物Aおよび流動用媒体が、分級装置38によって小粒子Jおよび中間粒子Kと大粒子Lとに分級させられ、さらに小粒子Jと中間粒子Kとは第1分級ガスサイクロン39によって分離させられて、中間粒子Kは上記乾燥流動層部17に戻される一方、小粒子Jは第2分級ガスサイクロン40によって分級ガスから分離させられ、溶融炉41に供給されて燃焼、溶融させられる。従って、本実施形態によれば、流動層3の流動用媒体を多く含む中間粒子Kについては、これを再び流動層3の流動用媒体として再利用することができる一方、廃棄物Aが熱分解されて生成したチャーを主とする高カロリーの小粒子Jが供給されることにより、溶融炉41においては効率的な溶融処理を図ることが可能となる。
【0025】
しかも、本実施形態では、熱分解流動層部18から排出された熱分解排ガスF中の塩化物、チャー、およびその他の無機物からなるダストOも、熱分解排ガスサイクロン33によって分離され、さらに脱塩処理装置42によって脱塩処理がなされた後、溶融炉41に供給されて、チャーは燃焼し、無機物は溶融させられる。従って、溶融炉41における溶融処理の一層の効率化を図ることができるとともに、ダストO中に含まれる塩類によって溶融炉41の寿命が短縮されるような事態を防止することができる。ただし、本実施形態では上述のように小粒子Jと中間粒子Kとを第1分級ガスサイクロン39によって分級して、中間粒子Kは乾燥流動層部17に、また小粒子Jは溶融炉41に供給するようにしているが、例えば熱分解炉1から排出された排出物中における小粒子Jがあまり多くないような場合には、第2分級ガスサイクロン40を設けることなく、第1分級ガスサイクロン39によって小粒子Jと中間粒子Kとを分級ガスから分離して、これらを合わせて乾燥流動層部17に供給するようにしてもよい。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例を挙げて、その効果について実証する。本実施例では、図1および図2に示した実施形態の熱分解炉1を備えた図5の廃棄物Aの処理装置を用いて、有機分47wt%、無機分9wt%、水分44wt%で発熱量2000kcal/kgの廃棄物A250kg/hrに対し、水を2時間ごとに添加量を0,50,100kg/hrで増大させて添加したものを、この熱分解炉1に供給し、その際の熱分解流動層部18における炉内温度および熱分解排ガスFの発熱量を測定した。従って、供給される廃棄物Aの水分含有量は44wt%〜60wt%の間で変化し、また廃棄物Aの発熱量は2000kcal/kg〜1430kcal/kgの間で変化することとなる。この結果を図6に実線で示す。また、比較例として、上記熱分解炉1において熱分解流動層部18だけが形成された熱分解炉を用いて、上記と同じ廃棄物Aに同じ添加量で水を添加したものを供給して熱分解を行い、その際に炉内温度を一定に保つように送風機36によって熱分解用ガスCの供給量を調節しながら、炉内温度および熱分解排ガスFの発熱量の変化を測定した。この結果を図6に破線で示す。
【0027】
ただし、これら実施例および比較例においては、流動用媒体として平均粒径330μmの硅砂を静止層高500mmで張り込み、特に実施例においては隔壁14の下端から200mmの高さまで張り込んだ。また、実施例において乾燥流動層部17には、酸素濃度3.2vol%で500℃の燃焼排ガスGを乾燥用ガスBとして、送風機35により供給量を580Nm3/hr〜1130Nm3/hrで自動制御して流動用媒体の温度が略100℃となるようにした。一方、実施例および比較例において熱分解流動層部18には、上記燃焼排ガスGに空気Iを混合して酸素濃度6.6vol%に調整した500℃の熱分解用ガスCを送風機36により供給した。なお、熱分解排ガスFの発熱量は、熱分解排ガスサイクロン33から排出された熱分解排ガスFをガスクロマトグラフィーにより分析した結果である。
【0028】
しかるに、図6の結果より、まず乾燥流動層部17を備えない比較例においては、廃棄物Aの水分含有量を増大させると、この水分を昇温させるための顕熱および蒸発熱によって熱分解流動層部18における炉内温度が低下してしまうので、これを一定に保持するためには、熱分解用ガスCへの空気混入量を多くして部分燃焼を促進させなければならず、これに伴い、生成された熱分解排ガスFの発熱量は低下することとなる。ところが、これに対して本発明の実施例によれば、廃棄物Aの水分含有量を増大させても、廃棄物Aは乾燥流動層部17において十分に乾燥された後に、熱分解流動層部18に供給されて熱分解されるので、熱分解流動層部18における炉内温度が変化することはなく、従って熱分解排ガスFの発熱量も一定に保持することができた。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、炉内を隔壁によって分割して、供給された廃棄物を乾燥させる乾燥流動層部と、廃棄物を熱分解する熱分解流動層部とを形成することにより、廃棄物中の水分含有量の変動に関わらず、熱分解温度を維持して安定した有機物の熱分解を促すことができ、これにより発熱量が一定した熱分解排ガスやチャーを生成して、その後の燃焼、溶融処理の安定化、効率化を図ることが可能となるとともに、熱分解炉とは別に乾燥装置を設けたりする場合に比べて経済的であり、しかも乾燥した廃棄物が発火したりするおそれが少なく、運転の管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の熱分解炉の一実施形態を示す図である。
【図2】 図1に示す実施形態の分散板2の拡大断面図である。
【図3】 分散板2の変形例を示す拡大断面図である。
【図4】 分散板2の他の変形例を示す拡大断面図である。
【図5】 本発明の廃棄物の処理装置の一実施形態を示す図である。
【図6】 本発明の実施例と比較例とにおいて、廃棄物Aの水分含有量を変動させた際の熱分解流動層部18の炉内温度および熱分解排ガスFの発熱量の変動を示す図である。
【符号の説明】
1 熱分解炉
2 分散板
3 流動層
4 加圧室
6 廃棄物Aの供給口
7 廃棄物Aの排出口
14,21 隔壁
15,16 流動室
17 乾燥流動層部
18 熱分解流動層部
19,20 フリーボード部
22 乾燥用ガス加圧室
23 熱分解用ガス加圧室
32 アフターバーナ(燃焼装置)
38 分級装置
41 溶融炉
42 脱塩処理装置
A 廃棄物
B 乾燥用ガス
C 熱分解用ガス
D 乾燥排ガス
E,I,M 空気
F 熱分解排ガス
G 燃焼排ガス

Claims (4)

  1. 炉内に形成される流動層によって廃棄物中の有機物を熱分解する廃棄物の熱分解炉であって、上記炉内は、炉底部に配設された分散板との間に間隔を開けて設けられる隔壁によって複数の流動室に分割されており、これらの流動室のうち一の流動室においては、上記炉内に供給された上記廃棄物を乾燥させる乾燥流動層部が形成される一方、他の一の流動室においては、上記乾燥流動層部により乾燥された廃棄物を熱分解する熱分解流動層部が形成され、上記乾燥流動層部には、低酸素濃度の流動用気体が供給される一方、上記熱分解流動層部には、上記乾燥流動層部よりも高い酸素濃度の流動用気体が供給されることを特徴とする廃棄物の熱分解炉。
  2. 上記隔壁と分散板との間の間隔は、上記分散板から上記流動層のフリーボード部までの高さよりも小さく、かつ上記乾燥流動層部により乾燥された廃棄物の最大粒子径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の熱分解炉。
  3. 請求項1または請求項2に記載の熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置であって、上記乾燥流動層部から排出される乾燥排ガスと上記熱分解流動層部から排出される熱分解排ガスとを混合して燃焼する燃焼装置を備え、この燃焼装置から排出される燃焼排ガスを、少なくとも上記乾燥流動層部に流動用気体として供給することを特徴とする熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置。
  4. 上記燃焼排ガスに空気を混合して酸素濃度を調節し、上記熱分解流動層部に流動用気体として供給することを特徴とする請求項3に記載の熱分解炉を備えた廃棄物の処理装置。
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