JP3905461B2 - ゼオライト膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼオライト膜の製造方法、詳しくは多孔質支持体に担持させる工程中において欠陥が発生し難く高い気体分離能を有するゼオライト膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゼオライト膜は一般的に、ゼオライト結晶が重なりあって膜状になる多結晶膜である。このゼオライト膜は結晶中に数オングストロームの細孔を有している。このため、かかる細孔を利用した分子ふるいによる気体分離、パーベーパレイション等の分離膜、メンブレンリアクター、あるいは気体センサーへの応用等が考えられている。さらにゼオライトは耐熱性、耐薬品性に優れており、また細孔径がほぼ均一であることから、上述の用途のなかでも特に高温での気体分離膜としての用途が期待されている。
【0003】
ところでゼオライト結晶単独で形成された膜は、ゼオライト結晶間のつながりが弱く機械的強度が弱いことから、分離膜として利用することは困難であった。このため従来からゼオライトを多孔質の支持体に担持させた形態での使用が検討されてきた。例えば、混合ゾルをそれ自体または仮焼してゲル化した後多孔質担持体に被覆し、同担持体を熱水中等で80〜500℃で水熱処理し、400〜1300℃で焼成して製造する方法(特公平4−80726号公報)、ゼオライト骨格金属源とアルカリ金属源と水からなる水性ゲル混合物に担体を接触させ、該水性ゲル混合物を乱流を生じさせることなく加熱等することにより、該担体上にゼオライト膜を析出させる方法(特開平6−99044号公報)、セラミックス多孔体基盤表面にアルカリ金属、ケイ素、及びアルミニウムの成分を含むゾルあるいはゲルの懸濁液を塗布し、蒸気中に曝露することによりゼオライト膜を製造する方法(特開平7−89714号公報)等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの方法は、製膜後添加した結晶化促進剤等の熱分解性の不純物を除去するために熱処理を行う。この際製膜時には無欠陥であっても、ゼオライトと支持体との熱膨張率の差あるいは熱分解性成分の燃焼に伴う膨張等により応力が発生するため、結晶粒界または支持体と結晶との界面でのクラックの発生、膜の剥離による膜欠陥等が生じる場合がある。かかる欠陥がゼオライト細孔径に比較して著しく大きい場合、これらの欠陥を介して気体が透過することとなるため、気体の十分な分離性能を得ることが困難となる。
【0005】
例えば清住らの報告(清住ら,触媒,vol.134,No.6,368(1992))によれば、支持体の表面にゼオライトの1種であるシリカライト膜を製膜した分離膜においては、気体の分離係数がクヌッセンフローから推測される値とほぼ同じ値となっている。すなわち気体の透過はクヌッセンフロー型の透過パターンを示し、シリカライトの細孔ではなく、それよりも大きな欠陥を気体が透過していることを示唆している。また化学工学会第60年会研究発表講演要旨集,N109においては、He/N2及びCO2/N2分離係数がクヌッセンフローから予測される値をわずかに越えているだけであり、支持体上に無欠陥膜が担持されているわけではなく、製膜が不十分であることが推測できる。
【0006】
一方前述の特開平7−89714号公報には、セラミックス多孔体表面に面する気孔を埋めるゼオライト膜を作製することができることが示唆されているが、該膜の具体的製法、特性等についての記載が全くない。
【0007】
そこで本発明は、製膜時あるいは熱処理中に欠陥が発生し難いゼオライト膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は機械的強度に優れた多孔質支持体の内部にゼオライト膜合成用のゾルを浸透させて結晶を生成させ、機械的強度を向上させるとともに高い気体分離能を維持したゼオライト膜を製造するための方法を提供する。かかる多孔質支持体内部に結晶が生成したゼオライト膜は、製膜後の熱処理時のゼオライトと多孔質支持体との熱膨張率の差による応力の発生や熱分解性成分の燃焼除去時の応力の発生が緩和され、欠陥の発生が防止され、高い気体分離能を有する。すなわち請求項1記載の発明は、細孔径0.03〜20μmの多孔質支持体の内部に、厚さ5μm以上のゼオライト膜を形成するのに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを浸透させ、前記多孔質支持体を水熱処理して結晶を生成させ、気体分離能を有し前記多孔質支持体の内部における厚さが5μm以上のゼオライト膜を形成するゼオライト膜の製造方法であって、前記多孔質支持体の内部における前記ゼオライト膜を、前記支持体の細孔内においてゼオライト膜合成用ゾルから水熱処理により結晶化して成長したゼオライト結晶から構成される連続膜として形成させるゼオライト膜の製造方法である。また、請求項5記載の発明は、厚さ5μm以上のゼオライト膜を内部に形成するのに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを内部に有する細孔径0.03〜20μmの多孔質支持体を水熱処理して、気体分離能を有し前記多孔質支持体の内部における厚さが5μm以上のゼオライト膜を形成する水熱処理工程を含むゼオライト膜の製造方法であって、前記多孔質支持体の内部における前記ゼオライト膜を、前記支持体の細孔内においてゼオライト膜合成用ゾルから水熱処理により結晶化して成長したゼオライト結晶から構成される連続膜として形成させるゼオライト膜の製造方法である。前記ゼオライト膜合成用ゾルとして、結晶化促進剤を含有するものを用い、前記水熱処理工程で形成したゼオライト膜を熱処理して結晶化促進剤を除去する結晶化促進剤除去工程を、前記水熱処理工程よりも後に有することができる。以下、ゼオライト膜合成用ゾルではなくゼオライト膜合成用ゲルを用いた場合について記載する箇所があるが、参考として記載したものであり、本発明のゼオライト膜の製造方法に該当しない。
【0009】
本発明の製造方法で製造されたゼオライト膜において、多孔質支持体の有効厚さが0.5mm以上であるものは好ましい。ゼオライト膜合成用原料混合物がゾルである場合には、多孔質支持体の有効厚さが0.5mm未満であると、以下に述べる理由によりゾルが多孔質支持体内に浸透していても欠陥が生じる場合がある。このため多孔質支持体の有効厚さが0.5mm以上であることは、多孔質支持体の内部に浸透させるゼオライト膜合成用原料混合物がゾルである場合に特に有用である。なおここでゾルとは、ゼオライトを形成するために加えられているシリカ、アルミナ等からなるコロイド粒子が細かく、液体中に完全に分散して流動性を示す系であり、一般に透明または半透明である。一方ゲルとは、ゾルと比較してコロイド粒子が大きいために液体が懸濁しているが、コロイド粒子間の相互作用が弱いため固化せずに流動性を保っている系をいう。ゾル、ゲルの変換はpH、原料の種類、濃度等の変化によって生じるが、一般にゼオライト合成に用いられるゲルはゾルと比較して高濃度である。
【0010】
ゼオライト膜合成用原料混合物がゲルである場合には、上記のようにコロイド粒子の濃度が高いため、ゲルと結晶化(製膜化)後の体積には大きな変化がなく、ゲルが多孔質支持体の表面から内部の所定の個所まで均一に浸透していればその後の水熱処理等により、該多孔質支持体の表面から内部の該所定の個所まで連続した無欠陥のゼオライト膜を得ることができる。
【0011】
しかしゼオライト膜合成用原料混合物がゾルである場合には、上記のようにコロイド粒子の濃度が低いため、ゲルと結晶化(製膜化)後の体積には大きな差があるため、欠陥のあるゼオライト膜が生じることがある。
【0012】
図1−(1)、図1−(2)、図1−(3)、図1−(4)は多孔質支持体内部にゼオライト膜が製膜されていく様子を示した模式図である。図1−(1)のような多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用ゾルを浸透させた後(図1−(2))、該ゼオライト膜合成用ゾル中で水熱処理を行うと、結晶化は多孔質支持体表面付近で始まる。製膜の初期段階で多孔質支持体の表面にはゼオライトが堆積して多結晶膜が形成され、多孔質支持体内部にも各所でゼオライト結晶が成長し始める(図1−(3))。この際内部への結晶成長に比較して表面での製膜が速く進行する。このため内部に連続した膜が製膜される前に表面にゼオライト膜が製膜されてしまう。かかる状態になると多孔質支持体内部のゼオライト膜合成用ゾルと外部のゼオライト膜合成用ゾルとが遮断されてしまい、多孔質支持体内部へはゼオライト膜合成用ゾルがそれ以上供給されなくなる。かかる場合多孔質支持体内部への結晶の成長は、多孔質支持体表面に膜が製膜される前に、多孔質支持体内部に浸透していたゼオライト膜合成用ゾルによってのみ行われることとなる。このため製膜に十分な量のゼオライト膜合成用ゾルが多孔質支持体内部に浸透していれば結晶が成長してやがて連続したゼオライト膜となる(図1−(4))。しかし結晶成長に十分な量のゼオライト膜合成用ゾルが多孔質支持体内部に浸透していない場合には、結晶成長が図1−(3)のような状態で停止してしまい、多孔質支持体内部に未製膜の部分が残存する場合が生ずるのである。かかる未製膜部分の残存したゼオライト膜エレメントを熱処理すると図2のように欠陥の生じやすい表面に製膜されたゼオライトにクラックが生じゼオライト膜を介しないで気体が透過する経路ができてしまい分離性能が大きく低下する原因となる場合がある。
【0013】
このような欠陥を防止するためには、多孔質支持体内部に膜合成に十分な量のゼオライト膜合成用ゾルが浸透していればよい。しかしながら合成が進むとまず多孔質支持体表面がゼオライトで覆われてしまうため外部から多孔質支持体内部へのゼオライト膜合成用ゾルの供給は行われなくなる。したがって予め多孔質支持体内部での膜合成に十分な量のゼオライト膜合成用ゾルが、多孔質支持体表面での膜合成前に多孔質支持体内部に浸透している必要がある。このため多孔質支持体内部の細孔の容積は、多孔質支持体内部にゼオライト膜を形成するのに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを蓄えるだけの細孔容積が必要となる。しかし多孔質支持体の気孔率や細孔径を大きくして多孔質支持体の細孔の容積を大きくしたとしても、ゼオライト膜が覆うべき細孔の断面積が大きくなるため効果がない。多孔質支持体内部の細孔の容積は、多孔質支持体の有効厚さを厚くすることによって大きくすることができる。ここで多孔質支持体の有効厚さとはゼオライト膜合成用ゾルに接した一方の面と該一方の面と反対側の面との間の距離をさす。例えば多孔質支持体が板状の場合はゼオライト膜合成用ゾルに接した一方の面とこれと反対側の面との距離であり、円筒状の多孔質支持体ではゼオライト膜合成用ゾルと接した内側面または外側面と、外側面または内側面との距離であり、ハニカム、マルチ形状では隣接する連通孔を仕切っている壁(多孔質支持体)の厚さをさす。したがって該一方の面のみならず該反対側の面がやはりゼオライト膜合成用ゾルと接している場合の有効厚さは、該一方の面と該反対側の面との距離の半分となる。なおマルチ形状とは例えば円柱、角柱等の多孔質支持体の内部に円柱形、角柱形等の連通孔が複数設けられたものをいう(図7参照)。
【0014】
ある一定以上の有効厚さがあれば多孔質支持体内部の膜合成に十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に蓄えることが可能となる。かかる多孔質支持体を用いてゼオライト膜を合成することにより、より再現性が高く分離性能の高いゼオライト膜を得ることができる。好ましい多孔質支持体の有効厚さは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上である。多孔質支持体の有効厚さを0.5mm以上とすることにより、多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用ゾルを浸漬させて水熱処理等を行った場合に無欠陥膜が多孔質支持体内部に製膜される。なお多孔質支持体の内部に無欠陥のゼオライト膜が合成されるには、ゼオライト膜合成用ゾルが多孔質支持体表面から0.5mm以上、より好ましくは1mm以上浸透していることが望ましい。
【0015】
本発明は多孔質支持体の内部にゼオライト膜合成用ゾルを浸透させ、多孔質支持体を水熱処理して結晶を生成させる方法により、高い気体分離能を有するゼオライト膜を形成する方法を提供する。すなわち従来は製膜は主に多孔質支持体の表面で行われ、多孔質支持体内部に結晶が生成することはなかった。このため製膜時には無欠陥の膜であっても、その後の熱処理によってクラックの発生や膜の剥離が生じやすく、高い気体分離能を示す膜を製造することが困難であった。本発明の製造方法によれば、ゼオライト膜は多孔質支持体内部に製膜されるので、製膜後の熱処理時の応力の発生が緩和され、欠陥の発生が防止され、高い気体分離能を有する。
【0016】
請求項2、請求項3、請求項4は前記ゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に浸透させるための好ましい実施態様を示している。かかる方法によってゼオライト膜合成用ゾルは多孔質支持体内部に浸透し、その後の熱処理によってもゼオライト膜は膜欠陥を生じることなく高い気体分離能を維持する。すなわち請求項2記載の発明は、請求項1記載の方法において、多孔質支持体の内部にゼオライト膜合成用ゾルを強制的に注入することにより行う製造方法である。請求項3記載の発明は、請求項2記載の方法において、ゼオライト膜合成用ゾルを高圧で多孔質支持体に対して吐出させ、多孔質支持体内部に強制的に注入する製造方法である。請求項4記載の発明は、請求項2記載の方法において、多孔質支持体の内部の気泡を脱泡操作により除去し、ゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体の内部に強制的に注入する製造方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
ゼオライト膜は気体分離性に優れているが、機械的強度が弱いため、一般に機械的強度の強い多孔質支持体表面に被覆して使用されている。しかし被覆後の熱処理による応力の発生等により膜欠陥を生じる場合が多く、ゼオライトが本来的に有する気体分離能が損なわれる結果となる。本発明では、多孔質支持体の表面でなく多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用ゾルを浸透させることにより、かかる膜欠陥が生じることを防止し、機械的強度を向上させるとともに気体分離能を維持するものである。以下本発明に係るゼオライト膜の製造方法について説明する。
【0018】
ゼオライト膜の原料となるゼオライト膜合成用ゾルには例えば以下の原料を用いることができる。すなわちシリカ源としてケイ酸ナトリウム、シリカゾル、メタケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、水ガラス、メタケイ酸カリウム、シリコンアルコキシド等、アルミナ源として硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等、アルカリ金属源として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等である。これらの中から目的とするゼオライトの種類、組成にしたがって、シリカ源、アルミナ源、アルカリ金属源を任意に選択することができる。さらに結晶化促進剤として例えば、テトラプロピルアンモニウムブロマイド(TPABr)、テトラブチルアンモニウムブロマイド等を用いることができる。なお本発明で製造するゼオライト膜はどのような組成のものであってもよい。例えばアルミナ成分を含有しない特殊なゼオライトであってもよい。またシリカ、アルミナ以外に、酸化チタン、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化イットリウム等を含有するゼオライトであってもよい。
【0019】
ゼオライト膜合成用ゾルは常法にしたがって調製される。なお、ゼオライト膜合成用ゾルではなくゼオライト膜合成用ゲルを用いることもできる(但し、この場合は、本発明のゼオライト膜の製造方法に該当しない)。例えばゼオライトA型合成用のゲルは以下の方法により調製できる。すなわちアルミン酸ナトリウム(NaAlO2、87%)を水に溶解し、これにシリカゾル(SiO2、30%)を添加する。この混合物を30分間撹拌して均一にした後水酸化ナトリウム溶液を添加すると、Na2O/SiO2=0.5、SiO2/Al2O3=4、H2O/Na2O=246なる組成を有するゲルが生成する。本発明で製造することのできるゼオライトとしては例えば、ZSM−5、シリカライト、ゼオライトA型、ゼオライトY型等どのような種類でもよい。
【0020】
本発明に係る多孔質支持体としては、連通気孔を有するものであることが必要であり、連通気孔を有していれば、例えば空孔が針状のものが連なったものであってもよい。また物性的には機械的強度が高くかつ水熱処理及びその後の熱処理において安定に存在し得る材質であることが必要であり、例えばアルミナ、ムライト、コーディライト等のセラミック、多孔質ステンレス等の金属・合金類、多孔質ガラス等を用いることができる。また多孔質支持体の形状は、その内部でゼオライトの結晶が生成するものであればよく、膜状、板体状、筒体状、ペレット状、粒子状、中空糸状、織布状、不織布状、ハニカム状等の種々の形状とすることができる。また多孔質支持体の製造方法は特に限定されず、例えばプレス成形、押出し成形、スリップキャスティング等多孔質支持体の形状にあわせて任意に選択することができる。
【0021】
ゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に浸透させるためには、多孔質支持体の有効厚さは0.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは1mmである。多孔質支持体の有効厚さが0.5mm以上であれば多孔質支持体内部の膜合成に十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを蓄えることが可能となり、多孔質支持体の表面から内部の所定の厚さまで連続した無欠陥のゼオライト膜を得ることができる。なお水熱処理等の後に多孔質支持体内部に生成したゼオライト膜の所定の厚さは特に限定はしないが、多孔質支持体表面から略0.5μm〜50μmの任意の厚さが好ましい。該膜厚はあまり薄すぎると破損しやすくなるが、破損しないならば薄い方が気体透過性がよく、略5〜30μmの任意の厚さがより好ましい。またゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に浸透させるためには、多孔質支持体の細孔径が0.03〜20μm、気孔率が10〜60%であることが好ましい。さらにより好ましくは、細孔径が0.06〜10μm、気孔率が20〜40%のものである。細孔径が0.03〜20μm及び気孔率が10〜60%である多孔質支持体は、多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用ゾルが十分浸透し、かつゼオライトによる効率的かつ容易な気体の分離を妨げることがない。
【0022】
次にゼオライトを多孔質支持体内部に浸透させる方法について説明する。従来の、ゼオライト膜合成用ゾルまたはゲルを多孔質支持体表面に塗布する方法では、多孔質支持体内部に結晶を生成する成分が浸透しないため、ゼオライトの結晶化は多孔質支持体表面でのみ進行し、製膜は主に支持体表面で行われていた。このため製膜時には無欠陥膜であっても、熱処理中にクラックの発生や膜の剥離が生じ、ゼオライト膜の有する気体分離能が損なわれていた。本方法によればこのような欠陥の発生を防止し、高い気体分離能を有するゼオライト膜を得ることができる。
【0023】
ゼオライト膜の原料となるゼオライト膜合成用ゾルを多孔質内部に浸透させることができればどのような方法でもよい。例えばやや長時間を要するが、ゼオライト膜合成用ゾル中に多孔質支持体を浸漬し、毛管凝縮作用によりゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に浸透せしめ、所定の時間放置した後水熱処理を行う方法を採用することもできる。
【0024】
しかしゼオライト膜合成用ゾルを多孔質内部に浸透させる方法としては、多孔質支持体の内部にゼオライト膜合成用ゾルを物理的に強制的に注入する方法が好ましい。強制的に注入することにより、ゼオライト膜合成用ゾルの多孔質支持体内部への浸透を短時間で効率的かつ再現性良く行うことができる。さらにゼオライト膜合成用ゾルの多孔質支持体内部への浸透量のコントロールをより容易に行うことができる。
【0025】
強制的な注入方法としては、ゼオライト膜合成用ゾルを高圧で多孔質支持体表面に対して吐出させ、その吐出圧により多孔質支持体内部に注入する方法がより好ましい。ゼオライト膜合成用ゾルを吐出させるためには例えばポンプを用いることができる。該方法による場合、その後の熱処理に耐えかつ良好な気体分離能を維持するゼオライト膜とするための条件は、ゾルの組成、多孔質支持体の材質、細孔径、気孔率等にもよるが、例えばポンプ圧約0.5〜10kgf/cm2の任意の圧力で約10分〜5時間の任意の時間吐出させるのが好ましい。かかる圧力、時間であれば、無欠陥膜を生成するに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを、有効厚さ0.5mm以上の多孔質支持体内部に浸透させることができる。
【0026】
強制的な注入のより好ましい他の方法としては、多孔質支持体の内部の気泡を脱泡操作により除去し、ゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体の内部に注入する方法がある。本方法は多孔質支持体中に存在する気泡を例えば真空ポンプ等で除去することにより、ゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に容易に浸透させるものである。より具体的には例えば次のように行うことができる。すなわち容器にゼオライト膜合成用ゾルをいれ、このゾル中に多孔質支持体を浸漬させ、容器を真空ポンプを用いて低圧、好ましくは約20mmHg以下の任意の圧力にする。かかる減圧下で約1〜10時間の任意の時間保持することにより、無欠陥膜を生成するに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを、有効厚さ0.5mm以上の多孔質支持体内部に浸透させることができる。なお上記容器は減圧下での耐性を有するものであればどのようなものであってもよい。
【0027】
前記の、ゼオライト膜合成用ゾルを高圧で吐出させる方法及び多孔質支持体の内部の気泡を脱泡操作により除去する方法によれば、短時間で効率よくかつ再現性良くゼオライト膜合成用ゾルを多孔質支持体内部に浸透させることができ、かつ浸透量を容易にコントロールすることができる。かかるゼオライト膜合成用ゾルの多孔質支持体内部への浸透後水熱処理を行い、多孔質支持体内部に結晶を生成し製膜することで、その後の熱処理等による応力の発生を緩和することができ、膜欠陥の発生を防止してゼオライトの気体分離能を維持することができる。なおゼオライト膜合成用ゾルが多孔質支持体内部に浸透すればよいのであり、ゼオライト膜合成用ゾルが多孔質支持体表面に付着していても差し支えない。またゼオライト膜合成用ゾルは多孔質支持体表面に存在する全細孔から内部に浸透することが必要である。そうでなければゼオライト膜の細孔より径の大きい多孔質支持体の細孔から気体が流出することとなり、ゼオライト膜の有する気体分離能を維持することが不可能だからである。
【0028】
ゼオライト膜合成用ゾルが内部に浸透した多孔質支持体の水熱処理は常法にしたがって行うことができる。例えば多孔質支持体を80〜500℃の任意の温度にて3〜180時間の任意の時間、単に熱水またはオートクレーブ内の熱水中に浸漬するか、流通する加熱水蒸気内に置くことにより行うことができる。さらにはゼオライト膜合成用ゾル中でそのまま水熱処理を行ってもよい。前記水熱処理の後、添加した結晶化促進剤等の熱分解性の不純物を除去するために熱処理を行う。熱処理は常法により例えば500〜1000℃の任意の温度環境で1〜10時間の任意の時間焼成することにより行う。かかる工程により多孔質支持体内部にゼオライト膜が生成する。
【0029】
上述の通り従来の多孔質支持体表面にゼオライト膜合成用ゾルまたはゲルを塗布する方法では、該熱処理時に膜欠陥等が生じるのであるが、多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用ゾルを浸透させることにより、かかる膜欠陥等が生じることを防止し、機械的強度が向上するとともに高い気体分離能を維持したゼオライト膜が得られる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、以下の実施例は本発明を何等制限するものではない。なお図3は実施例に係る、混合気体の分離試験及び純気体の透過試験を行うための多孔質支持体を組み込んだエレメント、の模式図である。
【0031】
<実施例1>
TPABr、水酸化ナトリウムを蒸留水に溶解させた溶液に、コロイダルシリカ(カタロイド(Cataloid)SI−30、触媒化成(株)製)を添加し、均一に撹拌して合成用のゾルを調製した。該ゾルの組成は0.1TPABr−0.05Na2O−SiO2−80H2Oの比とした。図3を参照して、該ゾルの入った容器に、円筒状で外側面をシールして外側面が該ゾルと接しないようにしたアルミナ多孔質支持体7(外径は10mm、内径は7mmであり多孔質支持体の有効厚さは1.5mmである。また長さは100mm、平均細孔径は約0.8μm、気孔率は33%であり、99.9%がアルミナ質である。)を浸漬し、容器内を真空ポンプで10mmHgに減圧し、6時間保持した。その後アルミナ多孔質支持体7を、該ゾルとともにオートクレーブに入れて170℃で72時間水熱処理を行い、円筒状のアルミナ多孔質支持体7の内側面8からアルミナ多孔質支持体7の内部にゼオライト膜9を製膜した。製膜後、ゼオライト膜9を担持したアルミナ多孔質支持体7を80℃の温水で洗浄し、さらに超音波洗浄し、蒸留水置換した後、100℃で24時間乾燥した。その後600℃で2時間焼成し、結晶中のTPABrを除去して試料▲1▼とした。図3は、ゼオライト膜9が内側面8からアルミナ多孔質支持体7の内部に浸透した様子を模式的に示している。ゼオライト膜9はX線回折(XRD)解析の結果、シリカライトであることが確認された。またアルミナ多孔質支持体7の破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、アルミナ多孔質支持体7の内部に結晶が生成していることが確認された。内部の結晶の厚さは内側面8から約30μmであった。またゼオライト膜9の細孔径は、X線回折の結果より約0.6nmと考えられ、これは一般的にいわれるシリカライトの細孔径とほぼ一致した。図4はゼオライト膜9が内部に浸透したアルミナ多孔質支持体7の断面のSEM像を示す図である。この試料▲1▼を用い、室温(25℃)にて、二酸化炭素、窒素混合気体の分離試験を行い、分離係数(CO2/N2)及び透過係数を測定した。すなわち図3に示すように円筒状のアルミナ多孔質支持体7の一方の開口をアクリル板10で密閉し、他方の開口をスウェージロック11を介してガスクロマトグラフに連結する。二酸化炭素10容量%、窒素90容量%の混合気体を円筒状のアルミナ多孔質支持体7の外側面側から供給し、ゼオライト膜9を透過した気体をガスクロマトグラフで分析し、次式により透過係数を算出した。
【0032】
【数1】
【0033】
ここでPは透過係数(mol/m2・s・Pa)、Qは透過量(mol)、p1は供給側圧力(Pa)、p2は透過側圧力(Pa)、Aは膜面積(m2)、tは時間(s)を表す。
【0034】
また次式により分離係数を算出した。
【0035】
【数2】
【0036】
ここでαは分離係数、Ca1は透過前のCO2濃度、Cb1は透過前のN2濃度、Ca2は透過後のCO2濃度、Cb2は透過後のN2濃度を表す。
【0037】
結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
<実施例2>
実施例1と同一の合成用ゾルを、加圧ポンプを用いて吐出圧3kgf/cm2で1時間、実施例1と同一のアルミナ多孔質支持体7の内側面8に対して吐出させ、さらに実施例1と同一の方法で製膜した。その後実施例1と同一の工程で洗浄、超音波洗浄、置換、乾燥、焼成し、試料▲2▼とした。ゼオライト膜9はXRD解析の結果、シリカライトであることが確認された。またアルミナ多孔質支持体7の破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、アルミナ多孔質支持体7の内部に結晶が生成していることが確認された。内部の結晶の厚さは内側面8から約10μmであった。またゼオライト膜9の細孔径は、X線回折の結果より約0.6nmと考えられ、これは一般的にいわれるシリカライトの細孔径とほぼ一致した。この試料▲2▼を用いて実施例1と同一の二酸化炭素、窒素混合気体の分離試験を行った。結果を表1に示す。
【0040】
<実施例3>
実施例1と同一の合成用ゾルに実施例1と同一のアルミナ多孔質支持体7を浸漬し、24時間放置し、さらに実施例1と同一の方法で製膜した。その後実施例1と同一の工程で洗浄、超音波洗浄、置換、乾燥、焼成し、試料▲3▼とした。ゼオライト膜9はXRD解析の結果、シリカライトであることが確認された。またアルミナ多孔質支持体7の破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、アルミナ多孔質支持体7の内部に結晶が生成していることが確認された。内部の結晶の厚さは内側面8から約7μmであった。またゼオライト膜9の細孔径は、X線回折の結果より約0.6nmと考えられ、これは一般的にいわれるシリカライトの細孔径とほぼ一致した。この試料▲3▼を用いて実施例1と同一の二酸化炭素、窒素混合気体の分離試験を行った。結果を表1に示す。
【0041】
<比較例1>
実施例1と同一の合成用ゾルに実施例1と同一のアルミナ多孔質支持体7を浸漬し、30分間放置し、さらに実施例1と同一の方法で製膜した。その後実施例1と同一の工程で洗浄、超音波洗浄、置換、乾燥、焼成し、試料▲4▼とした。ゼオライト膜はXRD解析の結果、シリカライトであることが確認された。またアルミナ多孔質支持体7の破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果、結晶はアルミナ多孔質支持体7の内側面8にのみ生成しており、アルミナ多孔質支持体7の内部には結晶が生成していないことが確認された。またゼオライト膜の細孔径は、X線回折の結果より約0.6nmと考えられ、これは一般的にいわれるシリカライトの細孔径とほぼ一致した。図5はゼオライト膜が内側面8にのみ存在するアルミナ多孔質支持体7の断面のSEM像を示す図である。この試料▲4▼を用いて実施例1と同一の二酸化炭素、窒素混合気体の分離試験を行った。結果を表1に示す。
【0042】
実施例1〜3の場合は、分離係数がそれぞれ3.8、3.0、2.7、とクヌッセンフローから予測される値(0.8)より非常に大きく、シリカライトの細孔での表面吸着による拡散を示唆している。また分離係数、透過係数の再現性も良く、ゼオライト膜9が気密であることが確認できる。特にアルミナ多孔質支持体7の内部の気泡を脱泡操作により除去する方法による場合が分離係数が最も高く、該方法の有効性が確認できる。
【0043】
一方比較例1の場合は、分離係数、透過係数の再現性が低く、分離係数が1に近い値となり、分離性能をほとんど示さない。すなわちアルミナ多孔質支持体1とゼオライト膜との気密性が実施例1〜3の場合と比較して小さいことを示唆している。すなわち焼成の際、ゼオライトと多孔質支持体との熱膨張率の差等により発生する応力により膜欠陥が発生しやすいことが示唆される。
【0044】
<実施例4>
実施例1の試料▲1▼を組み込んだエレメント(図3参照)を用い室温(25℃)にて、ゼオライト膜9の、二酸化炭素、窒素、酸素、ヘリウム、水素、メタン、プロパンの各純気体の透過試験を行い、透過係数比を測定した。なお透過係数比とは各純気体の透過係数の比を表す。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2から実施例1の試料▲1▼のゼオライト膜9は、種々の気体の分離に有効であることが確認できる。
【0047】
<実施例5〜12、比較例2〜6>
次に表3に示す各種形状の多孔質支持体(99.9%がアルミナ質)を用いてゼオライト膜を製膜した。
【0048】
【表3】
【0049】
TPABr、水酸化ナトリウムを蒸留水に溶解させた溶液に、コロイダルシリカ(カタロイド(Cataloid)SI−30、触媒化成(株)製)を添加し、均一に撹拌して合成用のゾルを調製した。該ゾルの組成は0.1TPABr−0.05Na2O−SiO2−80H2Oの比とした。該ゾルの入った容器に、円筒状で外側面をシールして内側面のみが該ゾルと接するようにしたアルミナ多孔質支持体(実施例5〜8、10、12、比較例2)、板状で一方の面のみが該ゾルと接するように他方の面をシールしたアルミナ多孔質支持体(実施例9、11、比較例4〜6)、マルチ形状で外側面(図7参照)をシールして内側面のみが該ゾルと接するようにしたアルミナ多孔質支持体(比較例3)を浸漬し、該容器内を真空ポンプで10mmHgに減圧し、6時間保持した。なお比較例3のマルチ形状は外径30mm、長さ100mmの円柱(多孔質支持体)の内部に内径4.5mmの円柱形の連通孔が19個設けられたものである。隣接する連通孔の有効厚さは最も薄い部分で0.4mmである。図7はマルチ形状の多孔質支持体の断面の模式図である。その後各アルミナ多孔質支持体を、該ゾルとともにオートクレーブに入れて170℃で72時間水熱処理を行い、円筒状のアルミナ多孔質支持体の内側面からアルミナ多孔質支持体の内部に、板状のアルミナ多孔質支持体の一方の面からアルミナ多孔質支持体の内部に、マルチ形状のアルミナ多孔質支持体の内側面からアルミナ多孔質支持体の内部に、それぞれゼオライト膜を製膜した。製膜後、ゼオライト膜を担持した各アルミナ多孔質支持体を80℃の温水で洗浄し、さらに超音波洗浄し、蒸留水置換した後、100℃で24時間乾燥した。その後600℃で2時間焼成し、結晶中のTPABrを除去して試料とした。各多孔質支持体に製膜されたゼオライト膜はX線回折(XRD)解析の結果、シリカライトであることが確認された。かかる各ゼオライト膜の製膜状態のSEM観察結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
(製膜性の評価基準)
○:欠陥が認められない。
【0052】
×:欠陥が認められる。
【0053】
なお欠陥とは多孔質支持体に未製膜部分があったり、クラックの発生や膜の剥離により実用不可能と認められる場合をいう。
【0054】
この結果より、多孔質支持体の有効厚さが0.5mm未満の場合には、SEM観察でも確認できるような未製膜部分や膜の剥離等の欠陥が存在する。これに対して、多孔質支持体の有効厚さが0.5mm以上であれば、ゼオライト膜は薄い部分でも10μm以上の厚さで製膜されていることが確認でき、欠陥も確認できない。またマルチ形状においては、有効厚さが0.5mm未満の部分を有し、かかる部分で膜の欠陥を生じる。
【0055】
上記の製膜された各多孔質支持体のうち実施例5、6、8、10、12、比較例4、5、6について、室温(25℃)にて、二酸化炭素、窒素混合気体の分離試験を行い、分離係数(CO2/N2)及び透過係数を測定した。すなわち円筒状の多孔質支持体については、図3に示すようにアルミナ多孔質支持体7の一方の開口をアクリル板10で密閉し、他方の開口をスウェージロック11を介してガスクロマトグラフに連結する。二酸化炭素10容量%、窒素90容量%の混合気体を円筒状のアルミナ多孔質支持体7の外側面側から供給し、ゼオライト膜9を透過した気体をガスクロマトグラフで分析し、式(数1)により透過係数を算出した。また式(数2)により分離係数を算出した。また板状の多孔質支持体については、図6に示すようにセル19内に多孔質支持体を固定して気体透過を行い分離係数、透過率を算出した。さらにマルチ形状の多孔質支持体については、図7に示すマルチ形状のアルミナ多孔質支持体22を、図3の場合と同様に、一方の開口をアクリル板で密閉し、他方の開口をスウェージロックを介してガスクロマトグラフに連結し、二酸化炭素10容量%、窒素90容量%の混合気体を円筒状のアルミナ多孔質支持体の外側面23側から供給し、分離係数、透過率を算出した。結果を表4に示す。
【0056】
表4より膜に欠陥が認められない場合は分離性能が良好であった。これに対し膜に欠陥が認められる場合は分離性能を示さない。すなわちこの欠陥を介して気体が透過していると考えられる。上記の結果から多孔質支持体の有効厚さが0.5mm以上、特に1mm以上では高い分離性能を示す膜が製膜されていることが確認できた。
【0057】
【発明の効果】
多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用のゾルを浸透させ、多孔質支持体内部にゼオライトの結晶を特定の厚さ以上で生成させることにより、その後の熱処理による膜欠陥の発生を防止することができる。すなわち従来多孔質支持体の表面にのみゼオライトを製膜した場合は、その後の熱処理によるゼオライトと多孔質支持体との熱膨張率の差等により発生する応力により膜欠陥が発生したが、単に多孔質支持体内部にゼオライト膜を生成させることにより、上記膜欠陥の発生を防止し、機械的強度を向上させるとともに高い気体分離能を維持するゼオライト膜を得ることができる。特に多孔質支持体の有効厚さが0.5mm以上である場合、この多孔質支持体内部にゼオライト膜を合成することで、完全に連続したゼオライト膜が担持され、熱処理後も欠陥が発生することなく高い分離性能を示すゼオライト膜が再現性良く得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1−(1)は多孔質支持体を表す。図1−(2)は多孔質支持体内部にゼオライト膜合成用ゾルが浸透した状態を示す。図1−(3)は多孔質支持体内部にゼオライト膜が生成を始めた状態を示す。図1−(4)は多孔質支持体内部に連続的なゼオライト膜が形成された状態を示す。
【図2】多孔質支持体表面に製膜されたゼオライトにクラックが生じた状態を示す。
【図3】本発明の実施例に係る、混合気体の分離試験及び純気体の透過試験を行うための円筒状のアルミナ多孔質支持体を組み込んだエレメント、の模式図である。
【図4】本発明の実施例に係る、アルミナ多孔質支持体と該アルミナ多孔質支持体の内部に浸透したゼオライト膜、の断面のSEM像(セラミック材料の組織)を示す写真である。
【図5】本発明の実施例に係る、アルミナ多孔質支持体と該アルミナ多孔質支持体の内側面にのみ存在するゼオライト膜、の断面のSEM像(セラミック材料の組織)を示す写真である。
【図6】本発明の実施例に係る、混合気体の分離試験及び純気体の透過試験を行うための板状のアルミナ多孔質支持体を組み込んだセル、の模式図である。
【図7】本発明の実施例に係るマルチ形状の多孔質支持体の断面の模式図である。
【符号の説明】
1、7、20 多孔質支持体
2 多孔質支持体内部の細孔
3 ゼオライト膜合成用ゾル
4、5、9、13、16、21 ゼオライト膜
6 クラック
8、12、15 多孔質支持体の内側面
10 アクリル板
11 スウェージロック
14 多孔質支持体の内部と該内部に浸透したゼオライト膜
17、18 ゼオライトの浸透していない多孔質支持体内部
19 セル
22 固定用ゴム
23 マルチ形状の多孔質支持体
24 マルチ形状の多孔質支持体の外側面
25 マルチ形状の多孔質支持体の連通孔
26 マルチ形状の多孔質支持体の内側面
Claims (6)
- 細孔径0.03〜20μmの多孔質支持体の内部に、厚さ5μm以上のゼオライト膜を形成するのに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを浸透させ、前記多孔質支持体を水熱処理して結晶を生成させ、気体分離能を有し前記多孔質支持体の内部における厚さが5μm以上のゼオライト膜を形成するゼオライト膜の製造方法であって、
前記多孔質支持体の内部における前記ゼオライト膜を、前記支持体の細孔内においてゼオライト膜合成用ゾルから水熱処理により結晶化して成長したゼオライト結晶から構成される連続膜として形成させることを特徴とするゼオライト膜の製造方法。 - 前記浸透が、前記多孔質支持体の内部に前記ゼオライト膜合成用ゾルを強制的に注入することにより行うものである、ことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 前記ゼオライト膜合成用ゾルを高圧で前記多孔質支持体に対して吐出させ、前記多孔質支持体内部に強制的に注入する、ことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 前記多孔質支持体の内部の気泡を脱泡操作により除去し、前記ゼオライト膜合成用ゾルを前記多孔質支持体の内部に強制的に注入する、ことを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 厚さ5μm以上のゼオライト膜を内部に形成するのに十分な量のゼオライト膜合成用ゾルを内部に有する細孔径0.03〜20μmの多孔質支持体を水熱処理して、気体分離能を有し前記多孔質支持体の内部における厚さが5μm以上のゼオライト膜を形成する水熱処理工程を含むゼオライト膜の製造方法であって、
前記多孔質支持体の内部における前記ゼオライト膜を、前記支持体の細孔内においてゼオライト膜合成用ゾルから水熱処理により結晶化して成長したゼオライト結晶から構成される連続膜として形成させることを特徴とするゼオライト膜の製造方法。 - 前記ゼオライト膜合成用ゾルとして、結晶化促進剤を含有するものを用い、
前記水熱処理工程で形成したゼオライト膜を熱処理して結晶化促進剤を除去する結晶化促進剤除去工程を、前記水熱処理工程よりも後に有する、ことを特徴とする請求項5記載の製造方法。
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