JP3904771B2 - 二室型湿式排煙脱硫装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイラなどの燃焼装置から排出される排ガス中の二酸化硫黄(SO2)を除去する湿式排煙脱硫装置に係わり、特に、吸収塔内部への仕切板の設置によって、排ガスが上向きに流れる上昇流領域と下向きに流れる下降流領域の二つの気液接触部に分けられた二室型の脱硫装置において、下降流領域でのガス偏流を防止できるガス整流機能を備えた二室型湿式排煙脱硫装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
火力発電所等において、化石燃料の燃焼に伴って発生する排煙中の硫黄酸化物、中でも特にSO2は、大気汚染・酸性雨等の環境問題における主原因の一つであり、近年地球的規模で排煙脱硫装置の普及が望まれている。
【0003】
現在の脱硫システムは石灰石−石膏法による湿式法が主流を占めており、中でも最も実績が多く信頼性の高いスプレ方式が世界的にも多く採用されている。このスプレ式脱硫装置は脱硫性能が高く、基本技術はほぼ確立されている。
【0004】
しかしながら、湿式排煙脱硫装置は高価であるため、未だ発展途上国などでの普及率は低い。したがって、世界的に脱硫装置の普及率を高めるためには、脱硫装置の設備費および運転費の大幅な低減が必要である。
【0005】
従来技術のスプレ方式を採用し、低コスト化を図った二室型の湿式排煙脱硫装置の公知例を図6に示す。
この湿式排煙脱硫装置は、主に吸収塔本体1、入口ダクト2、出口ダクト3、仕切板4、吸収液循環ポンプ5〜6、循環タンク7、攪拌機8、空気吹込み管9、ミストエリミネータ10、吸収液抜出し管11、上昇流領域12、下降流領域13、スプレヘッダー14〜15、スプレノズル16〜17、多孔板19、吸収塔天井壁の傾斜壁面20等から構成される。
【0006】
スプレノズル16および17は、ガス流れに対して直交する断面内に複数個設置されており、更にガス流れ方向に複数段設置されている。また、攪拌機8及び空気吹込み管9は、吸収液が滞留する循環タンク7に設置され、ミストエリミネータ10は出口ダクト3内に設置される。
【0007】
図示していないボイラから排出される排ガスは、図示していない脱硫ファンにより入口ダクト2から吸収塔本体1にほぼ水平方向に導入され、出口ダクト3から排出される。
【0008】
スプレ方式による吸収塔の多くは、排ガスと吸収液を向流接触させるために、吸収塔下部から導入した排ガスを塔頂部から排出させるが、本従来技術は吸収塔本体1内に仕切板4を設置し、出口ダクト3を入口ダクト2とほぼ同じ高さに設けているため、入口ダクト2から導入された排ガスは、仕切板4に遮られ、上昇流領域12を上昇し、塔頂部で反転した後、多孔板19を通過し、下降流領域13を下降する。
【0009】
この間、上昇流領域12および下降流領域13では、吸収液循環ポンプ5、6から送られる炭酸カルシウムを含んだ吸収液が、それぞれの領域に設けられたスプレノズル16、17から噴射され、吸収液と排ガスの気液接触が行われる。
【0010】
このとき吸収液は排ガス中のSO2を選択的に吸収し、亜硫酸カルシウムを生成する。亜硫酸カルシウムを生成した吸収液は一旦循環タンク7に溜まり、酸化用攪拌機8によって攪拌されながら、空気吹込み管9から供給される空気中の酸素により亜硫酸カルシウムが酸化され、硫酸カルシウム(石膏)を生成する。
【0011】
炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク7内の吸収液の一部は、吸収液循環ポンプ5、6によって再びスプレノズル16、17に送られ、一部は吸収液抜き出し管11より図示していない廃液処理・石膏回収系へと送られる。また、スプレノズル16、17からの噴射によって微粒化された吸収液の中で、液滴径の小さいものは排ガスに同伴されるが、出口ダクト3に設けられたミストエリミネータ10によって捕集される。
【0012】
図6に示す従来技術は、出口ダクト3が入口ダクト2とほぼ同じ低い高さに設けられているため、ミストエリミネータ10および出口ダクト3の支持鉄骨が低く簡易なものになり、また、図示していない熱交換器(再加熱側)に接続するためのダクトの長さも短くて済む。
【0013】
しかしながら、二室型の吸収塔の場合、上昇流領域12を上昇した排ガスは塔頂部で反転し、下降流領域13に導入されるため、塔頂部での排ガスの慣性力により、排ガスは下降流領域13の出口ダクト3側に流れやすくなり、図7に示すようにガス流れは大きく偏流する。ガス偏流が生じると下降流領域13での脱硫性能が低下することになる。
【0014】
また、図7から分かるように下降流領域13の仕切板側では大きな渦が発生している。渦が生じると吸収塔の圧力損失が高くなり、図示していない脱硫ファンの動力を増加させることになる。
【0015】
したがって、下降流領域13入口でのガス偏流を防止する手段を講じる必要がある。この点に関して、従来技術では多孔板19を設置することで整流しようとしているが、下降流領域13のガス流速を高めた場合、多孔板19を用いると圧力損失が急激に増加し、また、亜硫酸カルシウムや石膏によるスケーリングの問題も生じやすくなる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、二室型吸収塔の排ガスが下向きに流れる下降流領域入口でのガス流れに関して、吸収塔の圧力損失の急増とスケーリングなどの問題を発生させることなくガス偏流を防止することに関して十分考慮されておらず、脱硫ファン動力が増加する問題があった。
【0017】
本発明の課題は、脱硫ファン動力を増加させることなく、下降流領域でのガス偏流を抑制することで脱硫性能の低下を防止し、信頼性が高く、安定した運転が可能な二室型湿式排煙脱硫装置を得ることにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、吸収液を貯留する循環タンクの上側に、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを入口ダクトからほぼ水平方向に導入し、出口ダクトからほぼ水平方向に排出する排ガス流路を有し、その排ガス流路を入口ダクト側と出口ダクト側の二室に分割するための天井側に開口部を有した仕切板を設けることで、入口ダクトから導入される排ガスが上向きに流れる上昇流領域と、天井側の開口部で反転した後に出口ダクトに向けて下向きに排ガスが流れる下降流領域を形成し、それぞれの領域に設置したスプレノズルから噴射される吸収液と排ガスを接触させて、排ガス中の硫黄酸化物を処理する吸収塔を備えた二室型湿式排煙脱硫装置において、吸収塔の天井壁面と下降流領域側壁面との間に傾斜壁面を設け、鉛直方向又はほぼ鉛直方向に立てた少なくとも一枚のガイドプレートを下降流領域入口の前記傾斜壁面近傍に設置し、前記傾斜壁面に最も近いガイドプレートの上端から傾斜壁面までの最短流路幅を、隣接するガイドプレート間の最短流路幅、及び前記仕切板と該仕切板に最も近いガイドプレートとの最短流路幅より狭くする二室型湿式排煙脱硫装置によって達成される。
【0020】
また、本発明の二室型湿式排煙脱硫装置は、仕切板上端から傾斜壁面に延ばしたほぼ垂線上に複数のガイドプレートの上端を合わせ、仕切板上端から傾斜壁面までの流路幅をL0、傾斜壁面に最も近いガイドプレート上端から傾斜壁面までの流路幅をL1としたときに、L1/L0=0.2以下にすることが望ましい。また本発明の二室型湿式排煙脱硫装置は、下降流領域にスプレノズルを一以上設置し、該スプレノズルのうち少なくとも一つのスプレノズルの吸収液噴射方向を上向きとすることが望ましい。
【0021】
【作用】
本発明の二室型湿式排煙脱硫装置は、下降流領域入口の傾斜壁面側の流路を他の流路に比べて絞っているため、排ガスの慣性力によって下降流領域の塔壁側に多く流れようとする排ガスの流れを抑制することができる。また、ほぼ鉛直方向に立てた複数のガイドプレートを下降流領域の入口の傾斜壁面近傍に設置しているため、塔頂部を反転し下降流領域に斜めに流入しようとする排ガスの流れを鉛直方向に矯正することができる。
【0022】
また、仕切板上端から傾斜壁面に延ばした垂線上にガイドプレートの上端を合わせているため、塔頂部を出口ダクト側に向けてほぼ水平方向に流れようとする排ガスの流れを徐々にガイドプレート内に流し込むことができるため、排ガスが流れにくい下降流領域の仕切板側にも渦を巻くことなく排ガスを流すことが可能である。また、下降流領域に設置されたスプレノズルからは吸収液が上向きに噴射されるため、スプレノズルの上方に位置するガイドプレートには、その吸収液が常時衝突することになり、平板表面を常に濡れた状態に維持することができるため、スケーリングの発生を確実に防止することが可能となる。
【0023】
したがって、下降流領域のスプレ部ではガス偏流が抑制されるため、脱硫性能の低下を招くことはない。また、下降流領域における渦の発生も防止されるため、脱硫ファンの動力も低減される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、下降流領域の上部にガイドプレートを設置した本発明の実施の形態の吸収塔の側面図を示したものである。図2は図1の吸収塔におけるガイドプレートの各平板の長さを揃えた例である。
【0025】
図3は図2の吸収塔の下降流領域の最上段のスプレノズルを上向きに設置した例である。図4は本発明を適用した場合の吸収塔塔頂部から下降流領域入口にかけてのガス流れを示したものである。図5は吸収塔内の下降流領域入口でのガス変動率に及ぼすL1/L0の影響を示す。
【0026】
図1から図4において、符号1〜17は図6に示す従来技術の装置と同一のものを示す。鉛直方向に立てた複数の平板から構成されるガイドプレート18が従来技術にない新しい構成である。
【0027】
図1に示す吸収塔は、下降流領域13の上側に3枚の平板からなるガイドプレート18を並列設置し、下降流領域13入口の傾斜壁面側の流路を他の流路に比べて絞り、仕切板4上端から傾斜壁面20に延ばした垂線上に各ガイドプレート18の上端を合わせ、各ガイドプレート18の下端を仕切板4の上端とほぼ同一の高さになるように配置している。また各ガイドプレート18の平面が鉛直方向を向くように配置している。
【0028】
入口ダクト2より吸収塔内に導入された排ガスは、上昇流領域12を上昇した後、塔頂部で反転し、下降流領域13に流入するが、図1に示す例では、下降流領域13入口の傾斜壁面側の流路を他の流路に比べて絞っているため、排ガスの慣性力によって下降流領域13の塔壁側に多く流れようとする排ガスの流れが抑制される。
【0029】
また、ほぼ鉛直方向に立てた複数のガイドプレート18を下降流領域13の入口の傾斜壁面近傍に設置しているため、塔頂部を反転し下降流領域13に斜めに流入しようとする排ガスの流れの方向を鉛直方向に矯正することができる。
【0030】
また、仕切板4上端から傾斜壁面20に延ばした垂線上にガイドプレート18の上端を合わせているため、塔頂部を出口ダクト3側に向けてほぼ水平方向に流れようとする排ガスの流れを徐々にガイドプレート18内に流し込むことができるため、排ガスが流れにくい下降流領域13の仕切板4側にも渦を巻くことなく排ガスを流すことが可能である。
【0031】
したがって、下降流領域13のスプレ部ではガス流れが整流され、偏流による脱硫性能の低下を防止できるため、高い脱硫性能を維持するために吸収液循環量を多くし、吸収液循環ポンプ5および6の動力を増加させる必要はない。また、下降流領域13の仕切板4側における渦の発生も防止されるため、吸収塔本体1の圧力損失が低下し、図示していない脱硫ファンの動力も低減できる。
【0032】
さらに、ガイドプレート18が設置される塔頂部には、上昇流領域12のスプレノズル16から噴射された液滴の一部が排ガスに同伴されて飛散してくるため、ガイドプレート18の表面に、その液滴が衝突し、スケーリングが生じやすい条件になっているが、ガイドプレート18の平面をすべて鉛直方向に向けているため、衝突した液滴が流れやすく、また高速で通過する排ガスによっても衝突した液滴は吹き飛ばされるため、スケーリングの発生を防止できる。
【0033】
なお、図1に示す例では、ガイドプレート18に平板を用いているが、ガイドプレート18の上端が入口ダクト2側に曲がっていても図1の例と同等の効果が得られるものである。
【0034】
図2に示す実施の形態は、ガイドプレート18における各平板の長さを揃えた点で図1に示した例と異なる。そして仕切板4上端から傾斜壁面20に延ばした垂線上に各ガイドプレート18の上端を合わせているので、各ガイドプレート18の下端も仕切板4側から出口ダクト3側に向けて段階的に上方に配置される。
【0035】
図2のガイドプレート18のガス流れの整流に関する作用は図1に示すガイドプレート18と同じであり、図1におけるものと同様の効果が得られる。
【0036】
図2に示すガイドプレート18は出口ダクト3に向けて斜めに流入しようとする排ガスの流れを強制的に鉛直方向に矯正する力は図1のそれに比べて若干弱いが、その分ガイドプレート18部での圧力損失が下がり、さらに図示していない脱硫ファンの動力を低減することができる。また、ガイドプレート18の長さが短くて済むため、各平板を支持する鉄骨なども簡素化され、設備費の低減が図れる。
【0037】
図3に示すガイドプレート18の例は、図2に示すものと同じものを用いるが、下降流領域13の最上段のスプレノズル17の吸収液噴霧方向を上向きにして設置した点で図2に示した例と異なる。
【0038】
下降流領域13の最上段に上向きに設置されたスプレノズル17からは吸収液が上向きに噴射されるため、スプレノズル17の上方に位置するガイドプレート18には、その吸収液が常時衝突することになり、平板表面を常に濡れた状態に維持することができるため、スケーリングの発生を確実に防止することが可能となる。
【0039】
また、図5には仕切板4上端から傾斜壁面20までの流路幅をL0、傾斜壁面20に最も近いガイドプレート18上端から傾斜壁面20までの流路幅をL1としたときの下降流領域13入口でのガス変動率に及ぼすL1/L0の影響を示す。
【0040】
ガス変動率は、ガスの偏流の度合を表す値であり、標準偏差を平均流速で割ったものである。L1/L0は下降流領域13入口でのガス変動率に大きく影響しており、L1/L0を0.2以下にすればガス変動率を最も小さい15%程度に抑えることができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、二室型吸収塔の下降流領域でのガス偏流を防止できるため、脱硫性能が低下せず、循環ポンプ動力を低減することが可能である。また、下降流領域の仕切板近傍での渦の発生も防止できるため、吸収塔の圧力損失が低くなり、脱硫ファンの動力を低減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による実施の形態であり、吸収塔内の下降流領域の上部にガイドプレートを設置した吸収塔の側面図を示したものである。
【図2】 図1の実施の形態におけるガイドプレートの各平板の長さを揃えた例である。
【図3】 図2の実施の形態において下降流領域の最上段のスプレノズルを上向きに設置したものである。
【図4】 本発明を適用した場合の塔頂部から下降流領域入口にかけてのガス流れを示したものである。
【図5】 本発明を適用した場合の下降流領域入口でのガス変動率に及ぼすL1/L0の影響を示す。
【図6】 従来技術の二室型湿式排煙脱硫装置における吸収塔の側面図である。
【図7】 従来技術の塔頂部から下降流領域入口にかけてのガス流れを示したものである。
【符号の説明】
1 吸収塔本体 2 入口ダクト
3 出口ダクト 4 仕切板
5、6 吸収液循環ポンプ 7 循環タンク
8 攪拌機 9 空気吹込み管
10 ミストエリミネータ 11 吸収液抜出し管
12 上昇流領域 13 下降流領域
14、15 スプレヘッダー 16、17 スプレノズル
18 ガイドプレート 19 多孔板
20 傾斜壁面
Claims (3)
- 吸収液を貯留する循環タンクの上側に、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを入口ダクトからほぼ水平方向に導入し、出口ダクトからほぼ水平方向に排出する排ガス流路を有し、その排ガス流路を入口ダクト側と出口ダクト側の二室に分割するための天井側に開口部を有した仕切板を設けることで、入口ダクトから導入される排ガスが上向きに流れる上昇流領域と、天井側の開口部で反転した後に出口ダクトに向けて下向きに排ガスが流れる下降流領域を形成し、それぞれの領域に設置したスプレノズルから噴射される吸収液と排ガスを接触させて、排ガス中の硫黄酸化物を処理する吸収塔を備えた二室型湿式排煙脱硫装置において、
吸収塔の天井壁面と下降流領域側壁面との間に傾斜壁面を設け、
鉛直方向又はほぼ鉛直方向に立てた少なくとも一枚のガイドプレートを下降流領域入口の前記傾斜壁面近傍に設置し、
前記傾斜壁面に最も近いガイドプレートの上端から傾斜壁面までの最短流路幅を、隣接するガイドプレート間の最短流路幅、及び前記仕切板と該仕切板に最も近いガイドプレートとの最短流路幅より狭くする
ことを特徴とする二室型湿式排煙脱硫装置。 - 仕切板上端から傾斜壁面に延ばしたほぼ垂線上に前記各ガイドプレートの上端を合わせ、仕切板上端から傾斜壁面までの流路幅をL0、傾斜壁面に最も近いガイドプレート上端から傾斜壁面までの流路幅をL1としたときに、L1/L0=0.2以下にすることを特徴とする請求項1に記載の二室型湿式排煙脱硫装置。
- 下降流領域にスプレノズルを一以上設置し、該スプレノズルのうち少なくとも一つのスプレノズルの吸収液噴射方向を上向きとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の二室型湿式排煙脱硫装置。
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