JP3904271B2 - 粉体塗装ブース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、被塗物に粉体塗料を吹きつける粉体塗装機における塗装用ブースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の粉体塗装として、上方から吊り下げられた被塗物をコンベアで塗装ブース内に搬送し、この塗装ブース内に搬送された被塗物に塗装ガンで粉体塗料を吹きつけた後、被塗物をオーブン内に移送して加熱し、塗布した粉体塗料を融解して固着させる方法がある。
【0003】
前記粉体塗料の吹きつけ方法としては、被塗物に電荷を負荷した粉体塗料を塗装ガンによって吹きつける一方、被塗物には反対側の電位を保持するようにして、吹きつけた粉体塗料を被塗物に付着させる静電スプレー法が一般的である。この塗装方法において、被塗物に付着しなかった粉体塗料はオーバースプレー粉とよばれ、排気装置に接続されたフィルターで吸引回収されて再利用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常、前記粉体塗装ブースは、被塗物の出入口を設けた前壁および後壁と、前記コンベア通過用のコンベアスリットを設けた頂壁と、前記塗装ガン挿入用の開口部を設けた側壁と、前記フィルターを設けた底壁とのそれぞれを一体に成形した構成となっており、塗装作業中、ブース内からオーバースプレー粉が外部へ漏れないように、フィルターの吸引によって、塗装室の外部から内部への流れる空気流を発生させている。
【0005】
しかしながら、フィルターを塗装室内の底壁に設けた場合、塗装室の上部開口位置での吸引力が下部に比べて弱く、オーバースプレー粉が前記出入口の上部やコンベアスリットから漏れ出ることがある。
【0006】
一方、ブースの上部と下部とのそれぞれに、吸引装置を別途設けることも考えられるが、粉体塗装設備が大きく複雑になってしまい、スペースの狭い場所には設置できないという問題や、設備に多大な費用を要するという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、簡単な構造で塗装室の上部開口からオーバースプレー粉が漏れないようにして、粉体塗装におけるオーバースプレー粉の飛散を確実に防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
こうした課題を解決するため、この発明では、前述の粉体塗装ブースにおいて、前記底壁に設けたフィルターの一部を囲む吸引チャンバーを設け、この吸引チャンバーに、塗装室内の上部位置で開口する吸引口を有する吸引ダクトを接続した構成を採用したのである。
【0009】
このような粉体塗装ブースは、ブース内の上部位置に吸引チャンバーに接続された吸引ダクトの吸引口を設けたことにより、塗装室内の下部だけでなく上部においてもフィルターの吸引が行われ、この吸引によって被塗物搬送用の出入口やコンベアスリットなど、ブースの上部開口位置における空気の流速が大きくなるので、ブース開口部分からのオーバースプレー粉の粉漏れが防止される。
【0010】
前記吸引ダクトを、側壁の内面に沿って起立して設けた場合には、ブースの外部に吸引ダクトが露出しないので、余分な設置スペースを必要としないし、ブース内のデッドスペースの有効利用が図れる。
【0011】
また、前記吸引口の開口位置を可変とすることにより、被塗物の形状によって発生するブース内の空気流を調整して、被塗物に粉体塗料を均一に塗布することも可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1乃至図3に示す粉体塗装ブースは、前壁1、後壁2、頂壁3、側壁4、4および底壁5からなる。
【0013】
前壁1には被塗物の出口6が、後壁2には同入口7がそれぞれ形成されており、前記頂壁3には、被塗物の搬送コンベアが通過するコンベアスリット8が、頂壁3の長さ方向に設けられている。前記前壁1と後壁2との上部それぞれには、被塗物を搬送コンベアに吊り下げるハンガーが通過可能な隙間9が設けられている。各側壁4、4それぞれには、塗装ガンGからの粉体塗料噴射用の開口部となるスリット10が上下方向に各三箇所ずつ形成されている。底壁5には、排気装置に接続された排気ダクト11、11が被塗物の進行方向に沿って一対設けられており、各排気ダクト11、11の間には、円筒形をしたフィルター12が横向きに複数設けられている。各フィルター12の下方には、オーバースプレー粉を回収する溝13が形成されている。
【0014】
こうした各壁によって形成されるブースの内部には、図4に示すように、上方位置で開口する吸引口14を有する吸引ダクト15が起立した状態で、側壁4、4それぞれの内面に沿って各二本ずつ設けられている。吸引ダクト15は、底壁5に設けたフィルター12の一部を囲む吸引チャンバー16に接続されている。
【0015】
このブース内で塗装される被塗物は、あらかじめ正極の電荷に帯電され、図示しないコンベアにハンガーを介してつり下げられたまま、後壁2の入口7からブース内に搬送される。被塗物に塗布される粉体塗料は、側壁4、4のスリット10に取り付けた塗装ガンGによって吹きつけられる。
【0016】
被塗物に付着しなかったオーバースプレー粉は、フィルター12に吸引されて前記溝13内に落下し、図示しない塗料回収装置に回収されて、再利用に付される。被塗物の出入口6、7やコンベアスリット8などの開口部分には、フィルター12の吸引によってブースの外部から内部へ流れる空気流が発生し、この空気流によって、前記オーバースプレー粉のブース外部への漏れが防止される。
【0017】
以下、図示のブースの実施例をより詳細に説明する。まず、各側壁4、4の有する全長L1はそれぞれ6000mm、底壁5からの高さH1は3200mmに形成され、前壁1、後壁2および頂壁3の有する幅W1は、それぞれ1400mmに形成されている。前壁1および後壁2の前記出入口6、7は、それぞれ2900mmの高さH2と700mmの開口幅W2を有する。これら前壁1と後壁2との前記隙間9は、高さH3が300mm、幅W3が200mmの大きさに形成されている。また、コンベアスリット8の全長は側壁4、4と同様に6000mm、幅W4は100mmに形成されており、側壁4、4に設けられた前記スリット10は、それぞれ上下の高さH4が2900mm、幅が100mmに形成されている。
【0018】
ブース内に設けられた吸引ダクト15は、それぞれ吸引チャンバー16からの高さH5が2500mmを有する。各吸引ダクト15に形成された上下一対の吸引口14は、それぞれ上下方向に200mm開口したスリットであり、各吸引口14の上端は、上部の吸引口14が吸引ダクト15の最上位に、下部の吸引口14が吸引チャンバー16から1800mmの高さH6に位置している。
【0019】
このブースに形成される開口面積は、前記出入口6、7部分が0.7m×2.9m×2=4.06m2、これら前壁1、後壁2の上部に形成された前記開口部付分が0.2m×0.3m×2=0.12m2、コンベアスリット8部分が0.1m×6.0m=0.60m2、側壁4、4の各スリット10部分が0.1m×2.9m×6=1.74m2となり、これら面積の合計は6.52m2となる。
【0020】
こうした開口部分での空気の平均流速を0.7m/秒に設定すると、これを実現するために必要な分当たりの排気量は、6.52m×0.7m×60秒、すなわち、約270m3/分となる。
この排気量で塗装を行うと、被塗物の出入口に発生する空気の流速は、以下のようになる。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示すように、前記出入口6、7の下端位置での空気の平均流速が約0.95m/秒となるのに比べて、同上端位置での流速は小さく、特に出入口6、7の下端から1800mm以上の高さ部分では、前記流速が約0.20m/秒から0.30m/秒となる。一般に、ブース開口部分からのオーバースプレー粉の粉漏れは、前記流速が0.4m/秒未満になった場合に発生することが多く、この実施例からも明らかなように、従来のブースではオーバースプレー粉の粉漏れが著しい。
【0023】
これに対して、前記のような吸引ダクト15を設けて吸引を行った場合には、同表に示すように、空気の平均流速は、出入口6、7の下端から2900mmの最上位位置においても0.4m/秒を確保することができた。また、出入口6、7下端位置での流速は、フィルター12の一部を吸引チャンバー16によって囲むため若干小さくなるが、約0.70m/秒から0.80m/秒の流速が確保されるので、オーバースプレー粉の粉漏れには至らない。
【0024】
このように、この粉体塗装ブースは、吸引ダクト15によってブース内の上部でもオーバースプレー粉の吸引を行うようにしたので、この吸引によってブースの開口部分の上部位置に発生する空気の流速が大きくなり、オーバースプレー粉の漏れが確実に防止される。
【0025】
また、吸引ダクト15がブースの内部に設けられているので、粉体塗装装置が大型化せず、余分な設置スペースを必要としないし、ブース内のデッドスペースも有効に利用されることとなる。
【0026】
吸引ダクト15は、図5に示すように、吸引チャンバー16から側壁4、4の内面に沿って起立する可撓性ホース16によって構成することもできる。この吸引ダクト15は、図6に示すように、先端部や中間部を曲げて吸引口17の開口位置を自由に変えることができるので、被塗物の形状によって発生するブース内の空気の対流方向を調整して、被塗物に粉体塗料を均一に塗布することが可能となる。
【0027】
また、この実施例では吸引ダクト15をブースの内部に設けたが、設置スペースに余裕があれば、図7に示すように側壁4、4の外面に設け、吸引口18のみをブースの内部に開口させるようにしてもよい。さらに、吸引チャンバー16の取り付けに際しては、フィルター12を密封せずに、その一部を開放して設置してもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る粉体塗装ブースは、ブース内からのオーバースプレー粉の漏れを防止することができるので、作業中、粉体塗料がブースの外部に飛散せず、作業員の健康の安全の確保にも寄与する。
【0029】
また、ブース内のデッドスペースを有効に利用することができ、設置に際して余分なスペースを必要としないので、設置に要するコストの低減を図ることもできる。
【0030】
さらに、吸引口の開口位置を調整とすることもできるので、被塗物に粉体塗料を均一に塗布することができ、製品の品質向上にも大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る粉体塗装ブースの第一実施例を示す平面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のIII −III 線に沿った断面図
【図4】同上の一部切欠斜視図
【図5】この発明に係る粉体塗装ブースの第二実施例を示す前方からの断面図
【図6】図5に示す粉体塗装ブースの平面図
【図7】この発明に係る粉体塗装ブースの第三実施例を示す前方からの断面図
【符号の説明】
G 塗装ガン
R 塗装室
L1 側壁の全長
H1 側壁の高さ
H2 前壁および後壁の高さ
H3 前壁および後壁の上部隙間の高さ
H4 側壁のスリットの高さ
H5 吸引ダクトの高さ
W1 前壁および後壁の幅
W2 前壁および後壁の出入口の開口幅
W3 前壁および後壁の上部隙間の幅
W4 コンベアスリットの幅
1 前壁
2 後壁
3 頂壁
4 側壁
5 底壁
6 出口
7 入口
8 コンベアスリット
9 隙間
10 スリット
11 排気ダクト
12 フィルター
13 溝
14、17、18 吸引口
15 吸引ダクト
16 吸引チャンバー
Claims (3)
- 被塗物の出入口を設けた前壁および後壁と、前記被塗物の搬送用コンベアが通過するコンベアスリットを設けた頂壁と、塗装ガン挿入用の開口部を設けた側壁と、排気装置に接続され、オーバースプレー粉を吸引するフィルターを設けた底壁とからなる粉体塗装ブースにおいて、前記底壁に設けたフィルターの上面側の一部を囲む吸引チャンバーを塗装室と底壁との間に設け、この吸引チャンバーに、塗装室内の上部位置で開口する吸引口を有する吸引ダクトを接続し、塗装室の上部位置における空気の吸引流速を確保したことを特徴とする粉体塗装ブース。
- 前記吸引ダクトが、側壁の内面に沿って起立して設けられている請求項1に記載の粉体塗装ブース。
- 前記吸引ダクトに形成された吸引口の開口位置を可変とした請求項1または2に記載の粉体塗装ブース。
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