JP3903747B2 - 機械的複合特性を有する鋼材及びその製造方法 - Google Patents

機械的複合特性を有する鋼材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばラインパイプを主体とする、強度と靱性とを同時に兼ね備えた機械的複合特性を有する鋼材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材、特に鋼板および鋼板から製造する溶接管では、厚肉化すると、鋼片からの総圧下率が減少するために結晶粒が微細になり難くなり、高強度および高靱性がいずれも得られ難くなる。また、高強度化するとさらに靱性が得られ難くなる傾向にある。
【0003】
一方、鋼板および鋼管に対しては、破壊防止等の観点から、肉厚が12mm以上の厚肉であって高強度および高靱性の機械的性能を有することが要求されている。特に、天然ガスや原油等を輸送するパイプラインでは操業圧力の上昇による輸送効率の向上が指向されており、操業圧力の上昇に耐えるために、従来の強度グレードのパイプ用鋼材の肉厚を増加させることが考えられている。
【0004】
さらに、高靱性化を図ることにより、耐脆性破壊性や延性破壊時の伝播防止性の向上も期待される。このため、これらと高強度とを兼ね備えた鋼板および鋼管が、施工後の安全性や操業安定性の観点から最も望まれる。
【0005】
例えば、特開平10−298707号公報には、成分と、マルテンサイトおよび下部ベイナイトの混合組織比率等とを適正な範囲に限定することにより、高靱性の高張力鋼を製造する技術が提案されており、脆性亀裂伝播停止特性および脆性破壊発生特性について開示されている。
【0006】
特開平9−209040号公報には、DWTT(Drop Weight Tear Test、以下同じ) 特性に優れた極低温用ラインパイプの製造方法についての技術が開示されている。
特開平8−209288号公報には、低温靱性の優れた溶接性高張力鋼について、脆性破壊を防止し、低S化とCa処理による高シャルピー吸収エネルギー化を図ることにより不安定延性破壊の伝播を防止する発明が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平10−298707号公報により提案された発明では、炭素当量Ceq.が0.40〜0.70% (本明細書では特にことわりがない限り、鋼組成を規定する「%」は「質量%」を意味する) と高くなるため、特にラインパイプに適用した場合には現地敷設時の周溶接性が悪化し、また電縫鋼管の製造においては製管溶接時にも溶接性が悪化してしまう。また、900MPa以上の高強度について論じている。
【0008】
また、特開平9−209040号公報に開示された発明には、靱性に影響を及ぼす肉厚を具体的に記述していないという問題点がある。すなわち、前述したように、薄肉であれば高靱性が得られることは明らかであるが、肉厚が厚くなると製造時に鋼片からの圧下率が減少するため、結晶粒が微細になり難くなって高靱性が得られ難い。また、この公報には、延性破壊の伝播停止については何ら記載されていない。
【0009】
さらに、特開平8−209288号公報により提案された発明では、Cu:0.8 〜1.2 %、Ni:0.3 〜1.0 %、Mn:1.7 〜2.0 %等のように高価な合金元素を多量に添加するとともに、焼入促進元素を添加してマルテンサイトを生成させてから焼戻し処理を行うという製造工程を経るため、製造コストが大幅に上昇するとともに製造工程も複雑化してしまうという問題がある。また、目標強度が950MPaと非常に高い。
【0010】
このように、従来の技術では、最も望まれる耐脆性破壊および延性破壊時の伝播防止のいずれをも考慮した鋼材、もしくは、高価な合金成分を添加することなく引張強度490 〜790MPaを確保した鋼材を提供することはできなかった。
【0011】
本発明の目的は、例えばラインパイプのような引張強度490 〜790MPaレベルの鋼材であって、強度と靱性とを同時に兼ね備え、耐脆性破壊性および耐延性破壊性を同時に満たす機械的複合特性を有する鋼材およびその製造方法を提供することである。
【0012】
別の観点からは、本発明の目的は、例えば490 〜790MPaレベルの引張強度を有し、耐脆性破壊性および延性破壊時の伝播防止を同時に満足し、かつ肉厚12mm以上の厚肉材であって、安全性および操業安定性がともに優れた鋼板または鋼管を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定の鋼組成を有し、肉厚12mm以上であって、ある一方向への下記各試験による下記(1) 〜(6) に規定される特性を備え、耐脆性破壊性および耐延性破壊性がともに優れることを特徴とする鋼材である。
【0014】
ただし、
(1) 引張強度490 〜790MPa
(2) シャルピー試験における延性破面率が−20℃の試験温度で98%以上
(3) シャルピー試験における吸収エネルギーが−20℃の試験温度で150J以上
(4) シャルピー試験における延性破面率が50%である温度が−40℃以下
(5) DWTT試験における延性破面率が0℃の試験温度で98%以上
(6) DWTT試験における85%FATTが−20℃以下
である。
【0015】
本発明にかかる鋼材は、C:0.04〜0.09%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.5 〜1.6 %、P:≦0.020 %、S:≦0.008 %、Al:0.005 〜0.100 %、Nb:0.010 〜0.100 %、Mo:0.02〜0.50%を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼組成を有する。
【0016】
上記鋼組成は、さらに、Ti:0.030 %以下、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、V:0.100 %以下、およびCr:0.50%以下のうちの一種または二種以上、および/またはCa:0.0080%以下を含有するものであってもよい。
【0017】
これらの本発明にかる機械的複合特性を有する鋼材は、好ましくは鋼板または鋼管、望ましくは溶接鋼管である。
別の観点からは、本発明は、鋼片を1100〜1300℃の温度域に加熱してから、圧延を750 〜900 ℃の温度域で終了し、次いで400 〜550 ℃の温度域で巻取ることによって、前述の機械的複合特性を有する鋼材を製造する方法である。
【0018】
このように、高強度厚肉材では靱性の確保が難しくなるが、本発明によれば、耐脆性破壊性および延性破壊時の伝播防止の観点から、それらの指標を規定し、かつ一般的なシャルピー試験と実際の使用環境に近くユーザーからの要求の高いDWTTによる指標を規定するのである。
【0019】
また、特に鋼板、鋼管としての使用上の安全性等の観点からも、引張強度、シャルピー試験における延性破面率および延性破面率50%の温度、吸収エネルギー、ならびにDWTT試験における延性破面率および85%FATTを同時に備えることを規定するが、従来にあって、それらを同時に備えている例はない。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる鋼材およびその製造方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では、本発明の鋼材が鋼板または鋼管である場合を例にとる。
【0021】
本発明にかかる鋼材、例えば鋼板または溶接鋼管は、ある一方向への各試験を行ったとき、以下に列記する機械特性値(1) 〜(6) を有する。
(1) 引張強度490 〜790MPa
引張試験は、破壊に達する応力を示す試験であるが、どの程度の強度が必要であるかは、ユーザの要求レベルによる。高強度として、本発明の主たる用途であるラインパイプであるAPI 規格 5L-X52 の強度下限値が489MPaのため、下限値は490MPaとした。また、強度が高くなり過ぎると、下記(2) 〜(6) 項を同時に満たすことが困難となるため、上限値を790MPaとした。
【0022】
(2) シャルピー試験における延性破面率が−20℃の試験温度で98%以上
(3) シャルピー試験における吸収エネルギーが−20℃の試験温度で150J以上
(4) シャルピー試験における延性破面率が50%である温度が−40℃以下
シャルピー試験は、試験片を切り出して加工した小型試験片を用いて、一般的に靱性を評価する試験である。
【0023】
上記(2) 項は、寒冷地で十分に脆性破壊を防止し得るかの指標であり、安全性を十分確保し得るのに延性破面率として−20℃で98%以上とした。
上記(3) 項は、寒冷地で延性破壊時の伝播防止の指標であり、割れ伝播を停止し、十分な安全性を確保し得る吸収エネルギーを−20℃で150J以上とした。
【0024】
上記(4) 項は、アラスカ等の極低温寒冷地の環境で脆性破壊に対する使用限界の指標であり、延性破面率50%の温度が−40℃以下とした。
このように、上記(2) 項〜(4) 項は、それぞれその意義が異なった指標である。
【0025】
(5) DWTT試験における延性破面率が0℃の試験温度で98%以上
(6) DWTT試験における85%FATTが−20℃以下
DWTT試験は、使用環境下に近い実肉厚での靱性を評価する試験である。
【0026】
上記(5) 項は、実肉厚の条件で常温近傍温度で十分に脆性破壊を防止し得るか否かの指標であり、安全性を十分確保し得るのに延性破面率として0℃で98%以上とした。
【0027】
上記(6) 項は、実肉厚の条件で寒冷地で脆性破壊に対する使用限界の指標であり、一般的な評価指標である85%FATTで−20℃以下とした。
このように、上記(5) 項および(6) 項は、それぞれその意義の異なった指標である。
【0028】
なお、シャルピー試験とDWTT試験とは、靱性を評価する点では同じであるが、上述したように、DWTT試験は使用環境下に近い実肉厚での靱性を評価する指標であり、ユーザからもシャルピー試験とDWTT試験とを双方を要求されることが多い。シャルピー試験が製品から切り出して試験片を加工し、実肉厚より薄くして試験に供するのに対し、DWTT試験は製品の実肉厚のまま試験に供するものである。このため、シャルピー試験とDWTT試験とを比較すると、試験において肉厚方向に塑性変形の拘束を受け易いDWTTは、延性破面率および遷移温度ともに不利である。このため、上記(2) 項に対して(5) 項は+20℃して評価することとした。
【0029】
次に、本発明にかかる鋼材の鋼組成を限定する理由を説明する。
C: 0.04 0.09
Cは、強度確保に有効な元素である。すなわち、C含有量が0.04%以上であるとNbCの生成量が確保される等の理由から強度確保ができ、一方、C含有量が0.09%以下であれば、靱性が確保される。したがって、C含有量は0.04%以上0.09%以下と限定する。
【0030】
Si 0.01 0.50
Siは、脱酸剤として使用する他、鋼の強度を確保するのに有効な元素である。含有量が0.01%未満では、これらの効果が得られない。しかし0.50%を超えると清浄性が劣化しやすい。従ってSiの含有量は0.01〜0.50%である。
【0031】
Mn 0.5 1.6
Mnは、Cと同様に強度確保に有効な元素であり、かつ靱性も向上させる。すなわち、Mn含有量が0.5 %未満であるとかかる効果が事実上認められない。一方、Mn含有量が1.6 %以下であればマルテンサイト生成による靱性劣化や、溶接時の溶接性劣化等が防止される。したがって、Mn含有量は0.5 %以上1.6 %以下と限定する。
【0032】
P: 0.020 %以下
Pは、靱性の劣化、特に遷移温度の悪化を促進する元素であるため、P含有量は少ないほうが望ましいが、極端な低下には相応のコスト上昇を伴う。P含有量は0.020 %以下と限定する。
【0033】
S: 0.008 %以下
Sは、靱性の劣化、特に吸収エネルギーを低下させる元素であるため、S含有量は少ないほうが望ましいが、極端な低下には相応のコスト上昇を伴う。そこで、S含有量は0.008 %以下と限定する。
【0034】
Al 0.005 0.100
Alは、脱酸剤として使用する元素である。含有量が0.005 %未満では、これらの効果が得られない。しかし0.100 %を超えると介在物の増加等で鋼の清浄性が劣化しやすい。従ってAlの含有量は0.005 〜0.100 %とした。
【0035】
Nb 0.010 0.100
Nbは、NbCの微細析出により組織を細粒化し、強度の確保と靱性の向上とに有効な元素である。すなわち、Nb含有量が0.010 %以上であると上記の効果が発揮され、一方、Nb含有量が0.100 %以下であれば、靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、Nb含有量は0.010 %以上0.100 %以下と限定する。
【0036】
Mo 0.02 0.50
Moは、固溶強化による強度確保と、焼入れ性に富むことによる微細なベイナイトの生成により靱性向上および強度確保とを促す元素である。Mo含有量が0.02%以上であるとかかる効果が発揮され、一方、Mo含有量が0.50%以下であれば、マルテンサイト生成に起因した靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、Mo含有量は0.02%以上0.50%以下と限定する。
【0037】
不純物はN等であり、Nの含有量は0.0100%以下が望ましい。
Ti:0.030 %以下、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、V:0.100 %以下、およびCr:0.50%以下のうちの一種または二種以上、および/ またはCa:0.0080%以下。
【0038】
本実施の形態の鋼材の基本成分は以上の通りであるが、強度をさらに高めるためには、Ti、Cu、Ni、V、およびCrを、そして靱性を高めるためにはCaを選択的に添加しても同様な効果が得られる。そこで、以下これらの任意添加元素についても順次説明する。
【0039】
Ti、Cu、Ni、VおよびCrは、いずれも、これらの上限値以下の添加量であれば、強度を上昇させる。また、これらの上限値以下の添加量であれば、靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、Ti含有量は0.030 %以下、Cu含有量は0.50%以下、Ni含有量は0.50%以下、V含有量は0.100 %以下、Cr含有量は0.50%以下と限定することが望ましい。同様の観点から、より望ましくは、Ti:0.005 %以上0.030 %以下、Cu:0.05%以上0.50%以下、Ni:0.05%以上0.50%以下、V:0.01%以上0.100 %以下、Cr:0.05%以上0.50%以下である。
【0040】
Caは、Sと結合して靱性を向上させる。すなわち、Ca含有量が0.0080%以下であれば、Ca系介在物の増加に起因した靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、Ca含有量は0.0080%以下と限定することが望ましく、同様の観点からCa含有量は0.0005%以上であることがより望ましい。
【0041】
次に、本実施の形態の鋼板、または、鋼管を製造するための鋼板についての製造条件を説明する。
本実施の形態では、上記鋼組成を有する鋼片を1100℃以上1300℃以下の温度域に加熱する。鋼片の加熱温度が1100℃以上であれば、Nbと任意添加元素であるTiおよびVとを添加する場合にも、これらの元素が充分に固溶される。一方、鋼片の加熱温度が1300℃以下であれば、オーステナイト粒の粗大化に起因して、製品段階において微細な結晶粒が得られ、靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、鋼片の加熱温度は、1100℃以上1300℃以下と限定する。
【0042】
なお、これ以外の鋼片加熱条件は、慣用の条件にしたがえばよいため、鋼片加熱条件に関するこれ以外の説明は省略する。
次に、鋼片の熱間圧延を行うが、ここで、圧延終了温度が750 ℃以上であれば熱間圧延を確実に行うことができ、一方、圧延終了温度が900 ℃以下であれば十分な歪みを導入することができ、製品段階で微細な結晶粒が得られることから靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、圧延終了温度は750 ℃以上900 ℃以下と限定する。この熱間圧延により、被圧延材である鋼板の板厚は12mm以上に仕上げられる。
【0043】
なお、これ以外の熱間圧延条件は、慣用の条件にしたがえばよいため、熱間圧延条件に関するこれ以外の説明は省略する。
熱間圧延終了後に鋼板を巻取るが、この巻取り温度が400 ℃未満であると低温変態相が生成して、強度が高くなり過ぎ靱性が劣化する。巻取り温度が550 ℃以下であれば、結晶粒を十分に微細化することができ、靱性の劣化が防止される。そこで、本実施の形態では、巻取り温度は400 ℃以上550 ℃以下と限定する。
【0044】
なお、これ以外の巻取り条件は、慣用の条件にしたがえばよいため、巻取り条件に関するこれ以外の説明は省略する。
このようにして本発明によれば鋼板が製造されるが、溶接鋼管を製造する場合には、本実施の形態により製造された鋼板を成形して溶接する、慣用の手法にしたがえばよい。
【0045】
かくして、本発明によれば、強度と靱性とを同時に兼ね備え、耐脆性破壊性および耐延性破壊性を同時に満たすことが可能な機械的複合特性を有する、例えばラインパイプを主体とする鋼材を製造することができる。これにより、従来の技術によっては開示されていない引張強度、耐脆性破壊性および延性破壊時の伝播防止を同時に満足し、かつ肉厚12mm以上の厚肉材であって、安全性および操業安定性がともに優れた鋼板または鋼管を提供できる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例を参照しながら詳細に説明する。
表1および表2には、本例において使用した鋼組成、製造条件、および機械的特性を、実施例(No.1 〜No.12)と、比較例(No.13〜No.25)とに分けて示す。
【0047】
なお、本実施例においては、引張試験及びDWTT試験はAPI に定められた方法に準じて行い、またシャルピー試験は、ASTMに定められた方法に準じて行った。ただし、引張試験及びシャルピー試験は、いずれも、JIS に定められた方法に準じて行ってもよい。
【0048】
【表1】
Figure 0003903747
【0049】
【表2】
Figure 0003903747
【0050】
表1に示すように、実施例であるNo.1〜12は、いずれも、化学成分及び圧延条件が本発明の範囲を総て満足しており、強度および靱性が良好であった。
一方、No.13 ないしNo.25 は、強度、シャルピー試験vTrs(延性破面率50%の温度を示す)、シャルピー試験S.A.、シャルピー試験吸収エネルギー、DWTTS.A.(延性破面率)、DWTT85%FATTを同時に満足することができない。
【0051】
図1は、シャルピー試験の吸収エネルギーと延性破壊時の割れ伝播長さの関係を示すグラフである。図1から、吸収エネルギーが低いと割れが発生した場合、伝播が停止せず進展し続けるが、吸収エネルギーが高いと割れの進展を止めることがわかる。吸収エネルギーが150J以上であれば、割れの進展を止め、耐延性破壊が良好である。
【0052】
図2は、S含有量とシャルピー試験の吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。図2から、S含有量が増加するにしたがい、吸収エネルギーが低下することがわかる。
【0053】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明により、耐脆性破壊性と、延性破壊時の伝播防止とを同時に満たすことができる機械的複合特性を確保できる。また、本発明により、耐脆性破壊性と、延性破壊時の伝播防止とを同時に満たすことができる機械的複合特性を兼ね備えた、例えば鋼管や鋼板等の鋼材を得ることができる。さらに、成分の限定に加えて鋼材製造の条件を限定することによって、耐脆性破壊性や延性破壊時の伝播防止性を同時に満たすことができる機械的複合特性を兼ね備えた鋼板と、溶接鋼管を製造するための鋼板の製造方法とを提供することができる。
【0054】
かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】シャルピー試験の吸収エネルギーと延性破壊時の割れ伝播長さの関係を示すグラフである。
【図2】図2は、S含有量とシャルピー試験の吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 鋼材が、質量%で、C: 0.04 0.09 %、 Si 0.01 0.50 %、 Mn 0.5 1.6 %、P:≦ 0.020 %、S:≦ 0.008 %、 Al 0.005 0.100 %、 Nb 0.010 0.100 %、 Mo 0.02 0.50 %を含有し、残部は Fe 及び不純物からなる鋼組成を有し、肉厚12mm以上であって、ある一方向への下記各試験による下記(1)〜(6)に規定される特性を備え、耐脆性破壊性および耐延性破壊性にともに優れることを特徴とするラインパイプ用鋼材。
    (1) 引張強度490 〜790MPa
    (2) シャルピー試験における延性破面率が−20℃の試験温度で98%以上
    (3) シャルピー試験における吸収エネルギーが−20℃の試験温度で150J以上
    (4) シャルピー試験における延性破面率が50%である温度が−40℃以下
    (5) DWTT試験における延性破面率が0℃の試験温度で98%以上
    (6) DWTT試験における85%FATTが−20℃以下
  2. 前記鋼組成が、さらに、質量%で、Ti:0.030 %以下、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、V:0.100 %以下、およびCr:0.50%以下のうちの一種または二種以上を含有する請求項に記載の鋼材。
  3. 前記鋼組成が、さらに、質量%で、Ca:0.0080%以下を含有する請求項またはに記載の鋼材。
  4. 前記鋼材が、鋼板または鋼管である請求項1ないしのいずれか1項に記載の鋼材。
  5. 前記鋼管が、溶接鋼管である請求項に記載の鋼材。
  6. 請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼片を1100〜1300℃の温度域に加熱してから、圧延を750 〜900 ℃の温度域で終了し、次いで400〜550 ℃の温度域で巻取ることからなる、請求項1ないしのいずれか1項に記載鋼材の製造方法。
  7. 請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼組成を有する鋼片を1100〜1300℃の温度域に加熱してから、圧延を750 〜900 ℃の温度域で終了し、次いで400〜550 ℃の温度域で巻取ることからなるただし、加熱温度1180℃、圧延仕上げ温度780℃、巻取り温度550℃で製造する場合を除く、請求項1ないしのいずれか1項に記載鋼材の製造方法。
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