JP3901921B2 - 構造物破砕装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は構造物破砕装置に関し、より詳しくは、建物や煙突その他の構造物を破砕して解体する構造物破砕装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の構造物破砕装置としては、図9に示すように、第1アーム204と第2アーム205とを有するブーム203の先端に圧砕機201を取り付けたものが知られている。第1アーム204の根元側端部はピン(図示せず)を介して、操作者が乗るベースマシン202に取り付けられている。第1アーム204の先端に第2アーム205がピン207を介して取り付けられ、さらに第2アーム205の先端に圧砕機201がピン208を介して取り付けられている。第1アーム204の起伏の角度は油圧ジャッキ211によって、第1アーム204と第2アーム205とがなす角度は油圧ジャッキ212によって、第2アーム205と圧砕機201とがなす角度は油圧ジャッキ213によって、それぞれ可変されるようになっている。圧砕機201の捻り方向の回転は第2アーム205の先端に取り付けられた油圧モータ214によって行われ、圧砕機201の開閉は油圧ジャッキ215によって行われる。操作者は、油圧ジャッキ211,212,213,215および油圧モータ214を遠隔操作することによって、第1アーム204、第2アーム205および圧砕機201の姿勢を適宜変えながら、建物等の構造物206を挟むにように圧砕機201を移動させて、圧砕機201を閉じて構造物206を圧砕または切断する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構造物破砕装置では、操作者は構造物206の破砕されるべき箇所(被破砕部)を遠くから見ているため、圧砕機201によって被破砕部を捉えるのが難しいという問題がある。このため、例えば、被破砕部が圧砕機(の圧砕刃)201の間に入っていないにもかかわらず、圧砕機201を閉じてしまうことがある(いわゆる「空噛み」)。逆に、圧砕機201が被破砕部から十分に離れていると誤認して、圧砕機201を勢い良く被破砕部の方へ移動させてしまい、圧砕機201を被破砕部に衝突させてしまうことがある。その場合、被破砕部が粗く割れて大きい塊が落下したり、アーム204,205が破損したり、ベースマシン202が転倒するなど、事故を招くおそれがある。また、これらの結果、操作者は破砕作業をゆっくりと進めざるを得ず、破砕作業の能率が悪くなる。
【0004】
この問題は、解体すべき構造物が高層建築物や煙突などであって、被破砕部が高い位置になればなるほど深刻になる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、被破砕部を容易かつ確実に捉えることができる構造物破砕装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の構造物破砕装置は、
ベースマシンに、望遠鏡式に伸縮可能なブームを起伏可能に取り付けてなるクレーンと、
上記ブームの先端に、この先端に対して相対移動しないように、かつ取り外し可能に連結されている基台部と、
この基台部に対して起伏可能に取り付けられ、一つの関節を有するアーム部と、
このアーム部の先端に対して起伏可能に取り付けられ、構造物を破砕する圧砕機と、
上記基台部上に取り付けられ、上記構造物の被破砕部を上記アーム部の左斜め後ろから撮像するように配置されているテレビカメラとを備え、
上記テレビカメラが撮像した映像を表示するモニタ部が設けられるとともに、このモニタ部に表示される映像が見える位置に、上記アーム部および圧砕機の動作を操作する遠隔司令部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
なお、「望遠鏡式に伸縮可能」とは、一方向に細長くかつ互いに太さが異なる複数の筒状要素を備え、太い要素の内側に細い要素が長手方向に沿って入り込んで収縮する一方、太い要素の内側から細い要素が長手方向に沿って突出して伸張し得ることをいう。
【0008】
この請求項1の構造物破砕装置では、望遠鏡式に伸縮可能なブームの先端に、基台部とアーム部を介して、構造物を破砕する圧砕機が取り付けられている。構造物の被破砕部が高い位置にある場合、操作者は、上記クレーンを操作してブームを伸張させることによって、アーム部および圧砕機を上記被破砕部の高さに応じた高い位置に持ち上げることができる。このとき、上記ブームの先端の基台部上に取り付けられたテレビカメラが、上記構造物の被破砕部を上記アーム部の左斜め後ろから撮像する。したがって、操作者は、破砕作業中、このテレビカメラによる映像出力に基づいて、圧砕機から構造物の被破砕部までの距離を、視覚を通じて感覚的に把握できる。したがって、圧砕機を被破砕部のところまで迅速に移動させることができる。また、圧砕機によって、被破砕部を容易かつ確実に捉えることができ、そして圧砕または切断できる。このようにした場合、例えば、被破砕部が圧砕機(の圧砕刃)の間に入っていないにもかかわらず、圧砕機を閉じてしまうこと(いわゆる「空噛み」)がなくなる。また、圧砕機が被破砕部から十分に離れていると誤認して、圧砕機を勢い良く被破砕部の方へ移動させてしまい、圧砕機を被破砕部に衝突させてしまうようなことがなくなる。この結果、被破砕部が粗く割れて大きい塊が落下したり、アーム部が破損するなどの事故を招くおそれがなくなる。特に、この構造物破砕装置では、上記テレビカメラが上記構造物の被破砕部を上記アーム部の左斜め後ろから撮像し、モニタ部が上記テレビカメラが撮像した映像を表示する。したがって、モニタ部に表示さ れる映像出力は、操作者がバックホウ(最も一般的なショベル型掘削機の一つ)に乗っているときの目線で見るものと同じになる。したがって、操作者は、上記モニタ部に表示される映像を見ながら、バックホウに乗って破砕作業を行っているかのような慣れた感覚で、遠隔司令部によって上記アーム部および圧砕機の動作を操作することができる。これらの結果、操作者は破砕作業を迅速に進めることができ、破砕作業の能率が高まる。
【0009】
なお、操作者は、上記クレーンを操作してブームを収縮させることによってアーム部および圧砕機を低い位置に降ろすことができ、低い位置での破砕ができる。このときブームは望遠鏡式に自ら収縮するので、作業スペースが少なくて済む。
【0010】
請求項2に記載の構造物破砕装置は、請求項1に記載の構造物破砕装置において、上記テレビカメラの上記基台部に対する位置が可変されるように、上記テレビカメラは上記基台部に対する角度を変更可能な脚部を介して上記基台部上に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の構造物破砕装置は、請求項1に記載の構造物破砕装置において、上記遠隔司令部は、上記アーム部および圧砕機の動作に併せて、上記ブームの高さと上記ベースマシンに対するブームの起伏を操作するようになっていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の構造物破砕装置は、請求項1に記載の構造物破砕装置において、上記モニタ部および遠隔司令部は共通の操作室に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、上記操作室は地上レベルに存在するのが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の構造物破砕装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、一実施形態の構造物破砕装置100と、破砕すべき構造物としての高さH=55mの煙突101とを示している。
【0016】
この構造物破砕装置100は、概略、車両をなすベースマシン1と、望遠鏡式に伸縮可能なブームを有する400t吊り油圧クレーン2と、構造物を破砕するためにブーム(以下、これを符号2で表す)の先端3に着脱自在に取り付けられた破砕機構5を備えている。
【0017】
ブーム2は、一方向に細長い断面矩形の複数のブーム要素2a,2b,…,2eを備えている。そして、最も太いブーム要素(これを「基本ブーム要素」と呼ぶ。)2aの内側に、太さが順に小さく設定された残りのブーム要素2b,…,2eが太さの順に入り込んで、長手方向に関して収縮する。一方、長手方向に関して伸張するときは、基本ブーム要素2aから残りのブーム要素2b,…,2eが長手方向に順次スライドして突出する。この例では、ブーム2の長さは最長で51.2mになるように設定されている。基本ブーム要素2aの根元側端部はピン(図示せず)を介してベースマシン1上に回動自在に取り付けられている。この基本ブーム要素2aとベースマシン1との間には、ブーム2の起伏角度を可変するためのブーム起伏ジャッキ4が設けられている。ブーム起伏ジャッキ4のシリンダ4a側の端部はピン76を介してベースマシン1上に回動自在に取り付けられる一方、ブーム起伏ジャッキ4のロッド4b側の端部はピン77を介して基本ブーム要素2aの上部に回動自在に取り付けられている。したがって、ブーム起伏ジャッキ4を伸縮させることによって、基本ブーム要素2a、ひいてはブーム2全体の起伏角度を可変することができる。
【0018】
図2に示すように、上記破砕機構5は、ブーム先端3に取り付けられた基台部6と、この基台部6に対して起伏可能に取り付けられた一つの関節を有するアーム部7と、このアーム部7の先端に取り付けられた破砕部としての圧砕機8を備えている。
【0019】
基台部6は、上下一対をなす略矩形の平板6a,6bと、それらの平板6a,6bを縦方向につなぐ複数の連結板6c,6dとを、強度を持たせるために接合して構成されている。基台部6の下面には略半円状の取付部61,62、基台部6の上面には略三角形の取付部63がそれぞれ突出して設けられている。基台部6の取付部61,62とブーム先端3に対応して設けられた略半円状の取付部3a,3bとがピン78,79を介して係止される結果、基台部6はブーム先端3に対して相対移動しないように、かつ取り外し可能に連結されている。
【0020】
アーム部7は、基台部6側に配された第1アーム71と、この第1アーム71の先端にピン83を介して回動自在に取り付けられた第2アーム72を備えている。第1アーム71の根元側端部はピン80を介して基台部6上の取付部63の頂に回動自在に取り付けられている。この第1アーム71と基台部6との間には、基台部6に対する第1アーム71の起伏角度を可変するための第1アーム起伏ジャッキ41が設けられている。第1アーム起伏ジャッキ41のシリンダ41a側の端部はピン81を介して基台部6上の取付部63の根元に回動自在に取り付けられ、第1アーム起伏ジャッキ41のロッド41b側の端部はピン82を介して第1アーム71の略中央部に回動自在に取り付けられている。したがって、第1アーム起伏ジャッキ41を伸縮させることによって、基台部6に対する第1アーム71の起伏角度を可変することができる。
【0021】
第1アーム71の先端にピン83を介して取り付けられているのは、第2アーム72のうち長手方向に関して一方の端部(ピン84が通されている端部)から全長の略1/4に位置する部分である。第2アーム72と第1アーム71との間には、第1アーム71と第2アーム72とが作る関節の角度を可変するための第2アーム起伏ジャッキ42が設けられている。第2アーム起伏ジャッキ42のシリンダ42a側の端部はピン84を介して第2アーム72の上記端部に回動自在に取り付けられ、第2アーム起伏ジャッキ42のロッド42b側の端部はピン83を介して第1アーム71の略中央部に回動自在に取り付けられている。したがって、第2アーム起伏ジャッキ42を伸縮させることによって、第1アーム71と第2アーム72とが作る関節の角度を可変することができる。
【0022】
圧砕機8は、第2アーム72に連結された略台形状のリスト部材49と、このリスト部材49の先端側の面に枢着された略U字状の支持部材50と、一対の圧砕刃51,52と、圧砕刃51,52を駆動する破砕部開閉ジャッキ45を備えている。
【0023】
リスト部材49は、一つのコーナ部においてピン89を介して第2アーム72の先端に回動自在に取り付けられている。リスト部材49のもう一つのコーナ部は、ロッド46を介して、破砕部起伏ジャッキ43のロッド43b側の端部に連結されている。破砕部起伏ジャッキ43のロッド43b側の端部にはまた、別のロッド47を介して、第2アーム72の先端近傍部分が連結されている。これらのロッド46,47およびロッド43bは、それぞれの端部でピン88,87,86を介して取り付けられているお陰で回動の自由度を残している。破砕部起伏ジャッキ43のシリンダ側43a側の端部はピン85を介して第2アーム72の根元近傍部分に回動自在に取り付けられている。したがって、破砕部起伏ジャッキ43を伸縮させることによって、図示の平面内で、第2アーム72とリスト部材49とが作る関節の角度を可変することができる。
【0024】
支持部材50は、圧砕刃51,52の内側略中央部をピン92,93を介して回動自在に支持している。圧砕刃51,52は、ピン92,93近傍の位置に鉄筋を切断するための鋭利な刃53,54を有するとともに、先端近傍の位置に木やコンクリートを圧砕するための粗い刃55,56を有している。
【0025】
破砕部開閉ジャッキ45は、圧砕刃51,52のアーム側端部の間に配置されている。この破砕部開閉ジャッキ45は、シリンダの両端からそれぞれロッドが突出する両ロッドシリンダからなっている。シリンダ45aが支持部材50に固定され、各ロッド45bの先端はピン90,91を介して圧砕刃51,52のアーム側端部に回動自在に連結されている。したがって、この破砕部開閉ジャッキ45を収縮・伸張させることによって、圧砕刃51,52を開閉させることができる。
【0026】
また、リスト部材49には、支持部材50をリスト部材49に対して捻り方向(手首を捻るのに相当する方向)に回転させるための破砕部回転モータ44が搭載されている。したがって、この破砕部回転モータ44を駆動することによって、圧砕刃51,52を支持部材50や破砕部開閉ジャッキ45と一体に捻り方向に回転させることができる。
【0027】
このような破砕機構5の構成により、基台部6に対する第1アーム71の起伏角度、第1アーム71と第2アーム72とが作る関節の角度、第2アーム72とリスト部材49が作る関節の角度、圧砕機8の捻り回転角度を必要に応じて様々に変えることができる。したがって、構造物のうち破砕されるべき部分(被破砕部)に対して様々な角度からアタックできる。例えば、上方へ向かって突出している煙突の端部には上方からアタックでき、また、水平方向へ突出しているスラブには水平方向からアタックできる。したがって、破砕作業の効率を高めることができる。
【0028】
なお、この実施形態では、既述の第1アーム起伏ジャッキ41、第2アーム起伏ジャッキ42、破砕部起伏ジャッキ43、破砕部回転モータ44、破砕部開閉ジャッキ45が、作動油の供給を受けて破砕機構5の対応部分を駆動する油圧駆動手段を構成している。
【0029】
上記圧砕機8の支持部材50の側面には、第1のテレビカメラ30と距離計35が、それぞれこの圧砕機8の指向方向へ向けて取り付けられている。第1のテレビカメラ30は、この圧砕機8の指向方向を撮像する。第1のテレビカメラ30の視野30aはこの圧砕機8の指向方向を中心として広がっている。距離計35は、この圧砕機8上の基点から構造物の破砕されるべき箇所(被破砕部)103までの距離を計測する。詳しくは図7に示すように、距離計35は、被破砕部103の面103aへ向けてレーザ光35aを出射して、この距離計35の前面と被破砕部103の面103aとの間の距離L1を検出する。そして、この距離L1から、基点としての鋭利な刃53,54の前端53a,54aと距離計35の前面との間の距離L2を差し引いて、得られた距離lを表すデータを出力する。なお、基点は、支持部材50の前端50aとすることもできる。図8(a)に示すように、第1のテレビカメラ30による映像P1の中に、矩形の距離表示部D1を設けてこの距離lが表示されるので、操作者は、圧砕機8を被破砕部103へ接近させる間、この距離表示部D1の表示に基づいて、圧砕機8上の基点から被破砕部103までの距離lを正確に知ることができる。また、その映像P1の中に、レーザ光35aの照射スポットが見られるので、操作者は圧砕機8がどこを指向しているのかを容易に知ることができる。
【0030】
なお、この例では、第1のテレビカメラ30、距離計35は、図6(a)に示すように支持部材50の互いに反対側の側面に取り付けられているが、図6(b)に示すように支持部材50の同じ側の側面に取り付けられていてもよい。
【0031】
図2中に示すように、基台部6上には、さらに油圧切替部31と、遠隔操作部32と、第2のテレビカメラ34が搭載されている。地上レベルにある油圧供給部12から油圧本管20を通して供給された作動油は、基台部6上に取り付けられた油圧切替部31を経由する。この油圧切替部31と、第1アーム起伏ジャッキ41、第2アーム起伏ジャッキ42、破砕部起伏ジャッキ43、破砕部回転モータ44、破砕部開閉ジャッキ45との間には、それぞれ往復用の油圧配管22a,22b;23a,23b;24a,24b;25a,25b;26a,26b(これらを一般に符号21で表す。)が設けられている。油圧本管20は一対の往復配管20a,20bからなる。遠隔操作部32は地上の遠隔指令部16から遠隔指令を受けて、その指令に基づいて油圧切替部31を制御する。この油圧切替部31によって作動油が各油圧配管21へ分配され、各油圧配管21を通して第1アーム起伏ジャッキ41、第2アーム起伏ジャッキ42、破砕部起伏ジャッキ43、破砕部回転モータ44、破砕部開閉ジャッキ45へ供給される。これにより、第1アーム起伏ジャッキ41、第2アーム起伏ジャッキ42、破砕部起伏ジャッキ43、破砕部回転モータ44、破砕部開閉ジャッキ45が駆動される。このようにした場合、ブーム2に沿って長々と設ける配管は油圧本管20(往復配管20a,20b)だけとなる。したがって、配管の規模を小さくできる。
【0032】
第2のテレビカメラ34は、脚部39を介して基台部6上に取り付けられている。この第2のテレビカメラ34は、アーム部7によって遮られない角度34aから被破砕部103近傍を撮影して、その映像を無線方式で送信する。したがって、操作者は、圧砕機8を被破砕部103へ接近させる間、この第2のテレビカメラ34による映像出力に基づいて、圧砕機8から被破砕部103までの距離を、視覚を通じて感覚的に把握できる。この第2のテレビカメラ34の位置は、基台部6に対する脚部39の角度を変えることによって可変できるようになっている。この例では特に、第2のテレビカメラ34が被破砕部103をアーム部7の左斜め後ろから撮像するように配置されている。このようにした場合、第2のテレビカメラ34による映像P2は、例えば図8(b)に示すように、操作者がバックホウに乗っているときの目線(これを「バックホウ目線」と呼ぶ。)で見るものと同じになる。したがって、操作者は、バックホウに乗って破砕作業を行っているかのような慣れた感覚で操作を行うことができる。
【0033】
また、この映像P2の中にも、矩形の距離表示部D1を設けて、距離計35によって得られた圧砕機8上の基点から被破砕部103までの距離lが表示される。したがって、操作者は、圧砕機8を被破砕部103へ接近させる間、この距離表示部D1の表示に基づいて、圧砕機8上の基点から被破砕部103までの距離lを正確に知ることができる。
【0034】
図1に示すように、ブーム先端3には、上記破砕機構5に加えて、泡発生器33が取り付けられている。泡発生器33は、破砕作業中に構造物の被破砕部へ向けて泡や水を放出して、粉塵の発生を抑える。
【0035】
ベースマシン1が存在する地上レベルには、図示しない油タンクおよび油圧ポンプを有する油圧供給部12と、この油圧供給部12に必要な電力を供給する発電機11と、操作室13が置かれている。油圧供給部12は、油圧ポンプの動作によって油タンクから作動油を、ブーム2に沿って設けられた油圧本管20へ供給する。操作室13には、第1のテレビカメラ30や第2のテレビカメラ34が撮影した映像を表示するモニタ(表示装置)14と、ブーム2の高さや起伏、破砕機構5の動作などを操作者が無線方式で操作するための遠隔指令部16が設けられている。モニタ14は、第1のテレビカメラ30による映像P1と第2のテレビカメラ34による映像P2とを切り替えて表示するようになっていても良いし、同時に表示するようになっていても良い。
【0036】
図3、図4、図5は遠隔指令部16の本体160をそれぞれ上方、手前、右側方から見たところを示している。遠隔指令部16は、破砕機構5の各部の姿勢を制御するためのジョイスティック161,162,163と、無線ユニット164と、アンテナ165と、泡吹き付けスイッチ166と、高圧水吹きつけスイッチ167と、電源スイッチ168を備えている。泡吹き付けスイッチ166、高圧水吹きつけスイッチ167、電源スイッチ168は、いずれもトグルスイッチからなり、操作者の手が意図しないのに当たって誤動作が生じないように、それぞれ両側がカバー176,177,178で保護されている。なお、本体160には、取っ手181,182、吊り手183,184が設けられている。
【0037】
操作者がジョイスティック161を奥側(A側)へ倒すと、第1アーム起伏ジャッキ41が収縮して、第1アーム71が倒れる(基台部6に対する第1アーム71の起伏角度が小さくなる)。逆に、ジョイスティック161を手前側(B側)に倒すと、第1アーム起伏ジャッキ41が伸張して、第1アーム71が起き上がる(基台部6に対する第1アーム71の起伏角度が大きくなる)。ジョイスティック161を左側(C側)に倒すと、破砕部起伏ジャッキ43が伸張して、圧砕機8が下を向く。逆に、ジョイスティック161を右側(D側)に倒すと破砕部起伏ジャッキ43が収縮して、圧砕機8が上を向く。
【0038】
操作者がジョイスティック162を奥側(A側)へ倒すと、第2アーム起伏ジャッキ42が伸張して、第1アーム71と第2アーム72とが作る関節の角度(内角)が小さくなる。逆に、ジョイスティック162を手前側(B側)に倒すと、第2アーム起伏ジャッキ42が収縮して、第1アーム71と第2アーム72とが作る関節の角度(内角)が大きくなる。ジョイスティック162を左側(C側)に倒すと、破砕部回転モータ44が圧砕機8を被破砕部へ向かって捻り方向左回りに回転させる。逆に、ジョイスティック162を右側(D側)に倒すと、破砕部回転モータ44が圧砕機8を被破砕部へ向かって捻り方向右回りに回転させる。
【0039】
また、操作者がジョイスティック163を奥側(A側)へ倒すと、圧砕機8が閉じる。ジョイスティック163が中立位置にあれば、圧砕機8は開いた状態になる。なお、ジョイスティック162の頂部にはボタンスイッチ169が設けられており、圧砕機8は、操作者がこのボタンスイッチ169を押すことによっても閉じ得るようになっている。
【0040】
各ジョイスティック161,162,163は、操作者の手が離れるとスプリングによって中立位置に自動的に復帰する。
【0041】
無線ユニット164は、アンテナ165を介して無線方式でブーム先端3の遠隔操作部32と通信を行うための手段である。この遠隔指令部16と遠隔操作部32との間では、破砕機構5の姿勢の制御に関する指令、第1および第2のテレビカメラ30,34の映像信号、距離計35による計測結果その他の情報がやり取りされる。
【0042】
操作者が泡吹き付けスイッチ166、高圧水吹きつけスイッチ167を奥側に倒すと、ブーム先端3の泡発生器33から泡や高圧水が被破砕部へ向けて放出される。逆に、泡吹き付けスイッチ166、高圧水吹きつけスイッチ167を手前側に倒すと、泡や高圧水の放出は停止する。
【0043】
操作者が電源スイッチ168を奥側に倒すと、この遠隔指令部16の電源がオンされる。逆に、電源スイッチ168を手前側に倒すと、この遠隔指令部16の電源がオフされる。破砕作業中は、電源スイッチ168はオン状態とされる。
【0044】
当業者ならば分かるように、この遠隔指令部16は一般的なバックホウの操作盤と同じ仕様になっている。したがって、操作者は慣れた感覚で操作を行うことができる。
【0045】
実際に、例えば図1に示したような煙突101を解体する場合、操作者15は、遠隔指令部16を操作して、ブーム2を伸張させる。これによって、煙突の頂部102を破砕できるように、破砕機構5を高い位置に持ち上げる。さらに、第1のテレビカメラ30や第2のテレビカメラ34から送られてくる映像をモニタ14によって見ながら遠隔指令部16を操作して、破砕機構5における、基台部6に対する第1アーム71の起伏角度、第1アーム71と第2アーム72とが作る関節の角度、第2アーム72とリスト部材49が作る関節の角度、圧砕機8の捻り回転角度を必要に応じて変える。これにより、上方へ向かって突出している煙突の端部102に対して上方からアタックできるようにし、煙突の端部102を圧砕刃51,52で挟み、圧砕刃51,52を閉じて煙突の端部102を圧砕または切断する。そして、順次下方へ向かって破砕作業を進行させる。なお、破砕作業中に、泡発生器33によって被破砕部103へ向けて泡や水を放出して、粉塵の発生を抑える。
【0046】
破砕作業中、操作者は、図8(a),(b)中に示した距離表示部D1の表示に基づいて、圧砕機8上の基点から被破砕部103までの距離lを正確に知ることができる。また、第1のテレビカメラ30による映像P1の中に、レーザ光35aの照射スポットが見られるので、操作者は圧砕機8がどこを指向しているのかを容易に知ることができる。また、操作者は、第2のテレビカメラ34による映像P2に基づいて、圧砕機8から被破砕部103までの距離を、視覚を通じて感覚的に把握できる。しかも、第2のテレビカメラ34による映像P2は操作者がバックホウ目線で見るものと同じになっており、また、遠隔操作部16は一般的なバックホウの操作盤と同じ仕様になっているので、操作者は、バックホウに乗って破砕作業を行っているかのような慣れた感覚で操作を行うことができる。
【0047】
これらの結果、操作者は、圧砕機8によって、被破砕部103を容易かつ確実に捉えることができ、そして圧砕または切断できる。このようにした場合、例えば、被破砕部103が圧砕機8(の圧砕刃51,52)の間に入っていないにもかかわらず、圧砕機8を閉じてしまうこと(いわゆる「空噛み」)がなくなる。また、圧砕機8が被破砕部103から十分に離れていると誤認して、圧砕機8を勢い良く被破砕部103の方へ移動させてしまい、圧砕機8を被破砕部103に衝突させてしまうようなことがなくなる。この結果、被破砕部103が粗く割れて大きい塊が落下したり、アーム部7が破損するなどの事故を招くおそれがなくなる。これらの結果、操作者は破砕作業を迅速に進めることができ、破砕作業の能率を高めることができる。
【0048】
被破砕部103の高さが低くなれば、ブーム2を収縮させることによって破砕機構5を低い位置に降ろしてくる。これにより、低い位置での破砕ができる。このときブーム2は望遠鏡式に自ら収縮するので、作業スペースが少なくて済む。
【0049】
この実施形態では、油タンクおよび油圧ポンプを有する油圧供給部12と、発電機11とが地上レベルに置かれているものとしたが、これに限られるものではない。上記ブーム先端3または基台部6に、油圧切替部31に加えて、油タンクおよび油圧ポンプを有する油圧供給部と、この油圧供給部に必要な電力を供給する発電機を搭載しても良い。または、発電機に代えて、基台部6に原動機とこの原動機に燃料を供給する燃料タンクを搭載して、油圧供給部の油圧ポンプを駆動するようにしても良い。このようにした場合、基台部6上で作動油を供給できるので、ブーム2に沿って配管を長々と設ける必要がなく、配管の規模を小さくできる。また、予めそのような破砕機構5を用意しておけば、構造物破砕装置を構成するとき、ブーム2にその破砕機構5を取りつけるだけで良く、配管作業を行う必要がない。また、そのような破砕機構5を或るブーム2から別のブームに付け替える場合も同様に、配管作業を行う必要がない。したがって、利便性が高まる。
【0050】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の構造物破砕装置によれば、被破砕部を容易かつ確実に捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態の構造物破砕装置と、破砕すべき構造物としての煙突を示す図である。
【図2】 上記構造物破砕装置の破砕機構を詳細に示す図である。
【図3】 遠隔操作部を上方から見たところを示す図である。
【図4】 遠隔操作部を手前側から見たところを示す図である。
【図5】 遠隔操作部を右側方から見たところを示す図である。
【図6】 圧砕機上の第1のテレビカメラと距離計の取り付け態様を示す図である。
【図7】 上記距離計による計測の仕方を説明する図である。
【図8】 第1のテレビカメラによる映像と第2のテレビカメラによる映像を示す図である。
【図9】 従来の構造物破砕装置を示す図である。
【符号の説明】
2 ブーム
5 破砕機構
6 基台部
7 アーム部
8 圧砕機
30 第1のテレビカメラ
34 第2のテレビカメラ
35 距離計
100 構造物破砕装置
103 被破砕部
Claims (4)
- ベースマシンに、望遠鏡式に伸縮可能なブームを起伏可能に取り付けてなるクレーンと、
上記ブームの先端に、この先端に対して相対移動しないように、かつ取り外し可能に連結されている基台部と、
この基台部に対して起伏可能に取り付けられ、一つの関節を有するアーム部と、
このアーム部の先端に対して起伏可能に取り付けられ、構造物を破砕する圧砕機と、
上記基台部上に取り付けられ、上記構造物の被破砕部を上記アーム部の左斜め後ろから撮像するように配置されているテレビカメラとを備え、
上記テレビカメラが撮像した映像を表示するモニタ部が設けられるとともに、このモニタ部に表示される映像が見える位置に、上記アーム部および圧砕機の動作を操作する遠隔司令部が設けられていることを特徴とする構造物破砕装置。 - 請求項1に記載の構造物破砕装置において、
上記テレビカメラの上記基台部に対する位置が可変されるように、上記テレビカメラは上記基台部に対する角度を変更可能な脚部を介して上記基台部上に取り付けられていることを特徴とする構造物破砕装置。 - 請求項1に記載の構造物破砕装置において、
上記遠隔司令部は、上記アーム部および圧砕機の動作に併せて、上記ブームの高さと上記ベースマシンに対するブームの起伏を操作するようになっていることを特徴とする構造物破砕装置。 - 請求項1に記載の構造物破砕装置において、
上記モニタ部および遠隔司令部は共通の操作室に設けられていることを特徴とする構造物破砕装置。
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