JP3901338B2 - BN−AlN積層体及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型形状にして、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性が大であるBN−AlN積層体及びそれを用いた治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化ほう素質セラミックスは、次の熱的特性、化学的安定性、電気的特性を有していることから、それらの特性を利用し、従来よりセラミックス焼成用治具等として多用されている。
【0003】
(1)熱的特性:約3000℃までは安定であり軟化することがないので、不活性雰囲気下では、2200℃付近まで使用が可能である。熱伝導性は、ステンレスと同程度であるので熱衝撃抵抗を大きくすることができ、1500℃レベルでの急加熱・急冷却を繰り返しても割れることがない。
(2)化学的安定性:有機溶媒・濃硫酸は勿論のこと、アルミニウム・鉄・銀・銅・錫・鉛・ガリウムヒ素・ガラス等の溶融物に対しても、濡れたり、反応したりしない。
(3)電気的特性:電気抵抗が極めて大きく、しかもアルミナ等の酸化物セラミックスのように高温時においても導電性を示さないので、広範囲な温度域において電気的絶縁性を有する。
(4)他特性:セラミックス中でも真比重が最も小さい部類に属するので、部材の軽量化を行いやすい。
【0004】
一方、窒化アルミニウム質セラミックスは、その高熱伝導性と高絶縁性を活かし、各種放熱用基板としての利用が進められている。特に最近では、フッ素系プラズマ・ガスに対する化学的安定性が他のセラミックス材料に比べて優れている点が注目されており、半導体製造用としてウエハプロセスに使用されるCVD装置等に治具として組み込まれている。これは、窒化アルミニウムがフッ素と反応して安定なフッ化アルミニウムを生成し、それが保護膜として作用するためといわれている。同様な作用は酸化アルミニウムでも起こるが、大面積ウエハの均一加熱も同時に行う必要があることから、高熱伝導性も併せて要求されており、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性と高熱伝導性の両特性を併せ持つ窒化アルミニウム材料が多用されるに至っている。また、このような窒化アルミニウム質セラミックスを焼成する際にも窒化アルミニウム材を治具として用いることも進められている。
【0005】
しかしながら、近年の傾向は、半導体用ないしはセラミックス焼成用の治具が大型化していることである。加えて、各種酸化膜の加工処理等にフッ素系プラズマ・ガスが多用されてきており、更なる強力なフッ素系ガスの使用が増加していることである。このような傾向に対応できる治具は今のところない。すなわち、窒化ほう素質セラミックスでは、熱衝撃性が高く軽量でもあることから、大型部材の作製は可能であるが、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性が小さい。窒化アルミニウム質セラミックスでは、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性を有するが、重量が重く、また熱衝撃性も窒化ほう素に比べて劣るため、クラックや割れが発生し易い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされてものであり、その目的はフッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性が大で、しかも大型形状のBN−AlN積層体及びそれを用いた治具を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、窒化ほう素質セラミックスと窒化アルミニウム質セラミックスとの中間層が、窒化ほう素質焼結体の多孔質体及び/又は窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体であることを特徴とするBN−AlN積層体である。また、本発明は、本発明のBN−AlN積層体で構成された治具である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0009】
窒化ほう素の熱的安定性、軽量性等と、窒化アルミニウムの耐食性等を共に活かすためには、両者の単純な混合焼結体であっては、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性が良好なものとはならない。両者の特性を活かすためには、両者の独立した層から構成すること、すなわち窒化ほう素基材表面に窒化アルミニウム層を形成させることによって可能となる。
【0010】
しかしながら、窒化ほう素と窒化アルミニウムはその熱膨張率が異なり、互いに反応物を生成しないことから、従来、両者の積層体の作製は困難であった。すなわち窒化ほう素の熱膨張率は室温付近で約−0.3〜0.5(cm/cm・℃×10−6)である一方、窒化アルミニウムのそれは約4(cm/cm・℃×10−6)であり、約10倍以上の開きがある。更に、両者は互いに不活性雰囲気下では反応せず安定であるため、単純に積層しても物理吸着の機構で接触していることから、すぐに剥離してしまう。従って、単純に積層体としても高温下の使用に耐えうる治具として用いることができない。
【0011】
本発明者らは、窒化ほう素質セラミックスと窒化アルミニウム質セラミックスとの積層体を作製する方法について種々検討した結果、両セラミックスの間に、窒化ほう素質セラミックス又は窒化アルミニウム質セラミックスからなる多孔質層を介在させた構造とすることによって、積層体の剥離強さが向上することを見いだしたものである。
【0012】
本発明で使用される窒化ほう素質セラミックスは、2000℃又はそれ以上のレベルにおいて耐熱性を保持することが必要である。このようなセラミックスは、純度96重量%以上、酸素量3重量%以下の窒化ほう素粉に硼酸カルシウム(CaO・B2O3)粉を5重量%程度添加し、成形後、1気圧下の窒素雰囲気中、温度1800〜2000℃で焼成することによって製造することができる。焼成は、ホットプレスでも可能であり、その条件は50〜150kg/cm2の加圧下、温度1700〜1900℃である。
【0013】
一方、窒化アルミニウム質セラミックスとしては、熱伝導性が高く十分に緻密化されたものが好ましい。そのようなものは、窒化アルミニウム粉100重量部に対しY2O3等の希土類酸化物やCaCO3等のアルカリ土類酸化物などの焼結助剤を2〜7重量部程度添加し、成形後、不活性雰囲気下、温度1800〜2000℃で焼成することによって製造することができる。焼結助剤量は、可及的少ない方が好ましく、その場合の焼成手段としてはホットプレスが採用される。また、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性を特に重視する場合は、窒化ほう素質セラミックス表面にAl層を蒸着・溶射等により形成後、1000℃以上の温度で窒化処理するか、又は塩化アルミニウムとアンモニアの混合ガスを用いたCVD法によって、窒化アルミニウム質セラミックス層を窒化ほう素質セラミックス表面に形成させることが好ましい。窒化アルミニウム質セラミックス層の厚みは、1mm以上であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、窒化ほう素質セラミックスと窒化アルミニウム質セラミックスを積層一体化する際、その介在物が重要となる。すなわち、両者の熱膨張率の差を緩和することができ、密着性も優れた中間層を設けることが不可欠である。
【0015】
このような中間層としては、窒化ほう素質焼結体の多孔質体及び/又は窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体である。
【0016】
中間層を窒化ほう素質焼結体の多孔質体で構成する場合は、その多孔質体の孔の中に、窒化アルミニウム質セラミックスとの界面から100μm以上の深さまでに窒化アルミニウム粒子が介入していることが望ましい。これにより、界面の密着性は大幅に改善される。多孔質体の孔径は窒化アルミニウム粒子が介入できる程度の大きさであればよく、特に限定されるものではないが、平均気孔径として20μm以上であることが好ましい。
【0017】
窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体を中間層とする場合についても、上記窒化ほう素質焼結体の多孔質体に準じた構造とすることにより、界面の密着性が向上する。この場合における窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体の平均気孔径は50μm以上とし、その中に窒化ほう素質セラミックス粒子が300μm以上の深さまで介入していることが好ましい。
【0018】
上記多孔質体を中間層とするBN−AlN積層体は、澱粉、片栗粉等の造孔剤の20〜50体積部程度を窒化ほう素粉及び/又は窒化アルミニウム粉100体積部に加えて混合し、その成形体を窒化ほう素質セラミックスに積層し、更にその上に窒化アルミニウム質セラミックスを積層してから圧着・脱脂後、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中、温度1800〜2000℃で焼成することによって製造することができる。上記中間層となる成形体表裏面に窒化ほう素質セラミックスと窒化アルミニウム質セラミックスを積層するに際しては、その中間層となる成形体の窒化ほう素質セラミックス側と窒化アルミニウム質セラミックス側のそれぞれの面に、窒化ほう素粉、窒化アルミニウム粉をそれぞれ塗布しておくことにより、多孔質体(中間層)表面層付近の気孔中に各粉末粒子が侵入しやすくなる。
【0019】
上記多孔質体からなる中間層の厚みとしては、最表面を形成する窒化アルミニウム質セラミックス層の厚み以上とすることが好ましく、特に1mm以上であることが望ましい。
【0020】
【実施例】
実施例1
平均気孔径40μmの窒化ほう素質焼結体の多孔質体からなる中間層が形成されるように、窒化ほう素粉末100体積部と造孔剤(澱粉)30体積部をボールミルで混合した後、ドクターブレード法により厚み1mmのシ−トを成形した。このシートの3枚を積層し、窒化ほう素質焼結体からなる多孔質体を形成させるための成形体とした。
【0021】
この成形体の下面に窒化ほう素粉末を塗布してから、窒化ほう素質セラミックス(厚み6mm、曲げ強度5kg/mm2)に積層し、窒素雰囲気中、温度1900℃で4時間焼成し、焼結体(300mm×100mm×9mm)を製造した。次いで、中間層表面に窒化アルミニウム質セラミックス層(厚み1mm)をCVD法で形成し、中間層が多孔質体であるBN−AlN積層体を製造した。
【0022】
CVDは、塩化アルミニウムとアンモニアの混合ガスを1torrで1500℃に保持されたチャンバーに導入し、チャンバー内に設置された上記焼結体の中間層表面に析出させた。析出速度は0.5mm/hrとした。
【0023】
得られたBN−AlN積層体を、窒化アルミニウム質セラミックス層表面のみが暴露するようにしてプラズマエッチング装置中に配置し、室温下、CF6ガスで10時間エッチング処理を行った後、積層体の重量変化を測定したところ、重量変化は認められなかった。
【0024】
実施例2
この例では、窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体(平均気孔径50μm)からなる中間層を備えてなるBN−AlN積層体を作製した。すなわち、窒化アルミニウム粉末100体積部と造孔剤(片栗粉)50体積部をボールミルにて混合した後、ドクターブレード法により厚み1mmのシ−トを成形し、その3枚を積層して、窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体を形成させるための成形体とした。
【0025】
次いで、その成形体表面に、造孔剤の含まれていない窒化アルミニウムグリーンシート層(厚み1mmで、窒化アルミニウム粉100重量部に対しイットリア粉2重量部配合されたもの)ドクターブレード法により形成させてから圧着した。更に、成形体裏面に窒化ほう素粉末を塗布した後、窒化ほう素質セラミックス(厚み10mm、BN純度96重量%)を積層し、窒素雰囲気下、温度1950℃で3時間焼成し、BN−AlN積層体を製造した。
【0026】
得られたBN−AlN積層体は、31kg/mm2の曲げ強度を示し、窒素ガス雰囲気下、温度2000℃で1時間保持した後、室温まで降温させる処理を繰り返し50回行ったが、剥離・割れの発生は認められなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化ほう素の熱的安定性、軽量性等と、窒化アルミニウムの耐食性等を備えた、フッ素系プラズマ・ガスに対する耐食性の大なる大型形状のBN−AlN積層体が提供される。
【0028】
本発明のBN−AlN積層体は、熱的安定性、軽量性、耐食性に特に優れているので、大型形状の治具として好適である。
Claims (2)
- 窒化ほう素質セラミックスと窒化アルミニウム質セラミックスとの中間層が、窒化ほう素質焼結体の多孔質体及び/又は窒化アルミニウム質焼結体の多孔質体であることを特徴とするBN−AlN積層体。
- 請求項1記載のBN−AlN積層体からなることを特徴とする治具。
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JP10728198A JP3901338B2 (ja) | 1998-04-17 | 1998-04-17 | BN−AlN積層体及びその用途 |
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JP10728198A JP3901338B2 (ja) | 1998-04-17 | 1998-04-17 | BN−AlN積層体及びその用途 |
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JPH11292648A JPH11292648A (ja) | 1999-10-26 |
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JP10728198A Expired - Fee Related JP3901338B2 (ja) | 1998-04-17 | 1998-04-17 | BN−AlN積層体及びその用途 |
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1998
- 1998-04-17 JP JP10728198A patent/JP3901338B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11292648A (ja) | 1999-10-26 |
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