JP3900843B2 - スラストころ軸受の保持器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用自動変速機やコンップレッサー等において用いられているスラストころ軸受の保持器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図8、図9に示すように、二つの保持器部材1a、1bをその中心軸CLの方向に嵌合することにより構成されていたスラストころ軸受の保持器1にあっては、一方の保持器部材1aと他方の保持器部材1bが、保持器1の中心軸CLを中心としてその軸周り方向に相対回転することを防止する必要があった。このため、従来は二つの保持器部材1a、1bを嵌合した後に内側フランジ9又は外側フランジ10にロール加締を施し、相対回転することを防止していた。
【0003】
更に、ロール加締だけでは、相対回転することを充分に防止出来ない場合には、図10、図11に示すように、保持器部材1a、1bのポケット4を外側フランジ10まで延長し、保持器部材1aのポケット4に保持器部材1bの外側フランジ10に設けた突起2を嵌合する方法が考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来方法によるロール加締を施すだけでは、組立時又は軸受使用時に過大な力が作用すると、両保持器部材1aと1bが相対回転することを防止できなかった。又、外側フランジ10の突起2を嵌合して形成する前記保持器1においては、ころ3が外側に移動して軌道輪の軌道面から外側に外れる、いわゆるオーバーハングを生じる欠点があった。
【0005】
一方、ころ3が入るポケット4を、内側フランジ9まで延長することも考えられるが、こうすると保持器1の中心軸CLに近い内側にころ3が寄ってポケットの間の柱の幅が狭くなり、保持器1の強度が低下する。このためポケット4を内側フランジ9まで延長することは困難であった。
更に、ポケット4の大きさはころ3の大きさに見合った大きさになっており、ポケット4を通じて軸受を貫流する油流量は、そのポケット4ところ3の間の間隙により限定されてしまうこととなり油流量を大きくできないという欠点もあった。
【0006】
本発明は、従来の保持器が有する上記の諸問題点に着目してなされたものである。二つの保持器部材をその中心軸の方向に嵌合することにより構成されるスラストころ軸受の保持器において、二つの保持器部材が、保持器の中心軸を中心としてその軸周り方向に相対回転することを防止することを目的とする。又、オーバーハングを生じることがなく、ポケットの間の柱の幅を確保して充分な強度の軸受とすることを目的とする。更に、ポケットを通じて軸受を貫流する油流量を大きくすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明はその目的達成のために以下のような構成をとる。
【0008】
即ち、本発明は、二つの保持器部材を、その中心軸の方向に嵌合することにより構成されるスラストころ軸受の保持器である。各保持器部材は、全体として環状をなし、中心軸に近い内側フランジ、中心軸から遠い外側フランジ、及び両フランジの各一端の間に渡り形成されたウェブとからなり、環状の各部は断面凹状をなし、ウェブには、ころが入るポケットが形成されている。各保持器部材は凹部を相互に対向させて嵌合され、保持器の径方向の断面は中空をなす。各保持器部材の内側フランジ同士及び外側フランジ同士は嵌合により密着されている。
【0009】
一方の保持器部材にあっては、ポケットから内側フランジの間にそのポケットに連続させて小窓を形成し、その小窓の幅を前記ポケット幅よりも小さくしてあり、他方の保持器部材にあっては、内側フランジの端面から中心軸方向に沿って伸び且つ前記一方の保持器部材の前記小窓に係合する突起を形成してある。両保持器部材の嵌合状態で前記突起が一方の保持器部材の小窓に係合する。
前記突起の幅は前記小窓の幅よりも小さくし、前記小窓を前記一方の保持器部材の内側フランジまで連続させることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、保持器部材1aと1bを、中心軸CLの方向に嵌合することにより構成されるスラストころ軸受の保持器1であり、保持器部材1aと1bが嵌合して密着する双方の面8は粗面とされている。
保持器部材1aと1bはそれぞれ、図8、9に示した従来例と同一の形状をしており、全体として環状をなし、中心軸CLに近い内側フランジ9、中心軸CLから遠い外側フランジ10、及び両フランジの各一端の間に渡り形成されたウェブ11とからなって、環状の各部は径方向の断面が凹状をなす。保持器部材1aと1bのそれぞれのウェブ11には、ころ3が入る窓状のポケット4が等間隔でころ3の数だけ、ころ3の軸の延長線が保持器1の中心軸CL上で交わるように同心円状に設けられている。
【0011】
保持器部材1aと1bは一方の保持器部材1aの両フランジ9、10の間隔が、他方の保持器部材1bの両フランジ9、10の間隔よりも大になっていて、保持器部材1aの内側フランジ9が保持器部材1bの内側フランジ9よりも中心軸CLに近い位置になり、且つ保持器部材1aの外側フランジ10が保持器部材1bの外側フランジ10よりも中心軸CLが遠い位置になった状態で内側フランジ9、9同士と外側フランジ10、10同士が接合されるように両保持器部材1a、1bが嵌合される。従って、保持器部材1aでは両フランジ9、10の相対面が粗面となり、保持器部材1bでは両フランジ9、10の背向面が粗面となっている。これらの粗面は各フランジに対してローレット加工を施すなどの周知の手段によって形成されるものとする。かくして両保持器部材1a、1bは凹部を相互に対向させて嵌合され、保持器1の径方向の断面は中空をなす。
【0012】
保持器部材1aと1bが嵌合して密着する双方の面8を粗面としたことにより両面の凹凸が噛合うから、外力が加えられた場合に密着する双方の面8において生じる摩擦力は大きなものになる。
従って、両保持器部材1a、1bの相対回転は防止される。尚、この実施形態では両保持器部材1a、1bがフランジ9、10とウェブ11とからなり、径方向の断面が凹状をなすものとしたが、かかる形状に限定されるものではない。
【0013】
請求項1の発明の実施の形態は、図2から図7に示される。保持器1が保持器部材1aと1bを、その中心軸CLの方向に嵌合することにより構成される点、各保持器部材1a、1bが内外のフランジ9、10とウェブ11とからなり径方向の断面が凹状をなす点は図1の実施形態と同一である。この図2以下の実施形態では、保持器部材1aにあっては、ポケット4から内側フランジ9の間に、そのポケット4に連続させて小窓5を形成し、その小窓5の幅をそのポケット4の幅よりも小さくしてある。他方の保持器部材1bにあっては、内側フランジ9に、保持器部材1aの前記小窓5に係合する突起2を形成してあり、両保持器部材1a、1bの図1と同様の嵌合により保持器部材1aの小窓5内に保持器部材1bの突起2を係合してある。保持器部材1aにあっては、ころ3はポケット4内に位置決めされ、小窓5の幅はころ3の径よりも小さいから小窓5にころ3は入らない。保持器部材1bの突起2の幅は、保持器部材1aの小窓5に係合するべくその小窓5の幅より僅かに小さくしてある。
【0014】
ここで、図2に示すように、保持器部材1a、1bがそれぞれ20個のポケット4を有する場合、保持器部材1bにおける突起2は保持器部材1aの各ポケット4の小窓5の全部に係合するように設けたが、20個のポケット4のうち一部の小窓5に係合するようにしてもよい。
図2は、針状ころが入る保持器1であるが、ころを円筒ころ、円錐ころ、球面ころなどが入る保持器とすることもできる。
【0015】
【発明の効果】
本発明は、上記のようなスラストころ軸受の保持器であるので、以下のような効果がある。
【0016】
請求項1の発明においては、一方の保持器部材の小窓に他方の保持器部材の突起が係合するから、両保持器部材の間に前記相対回転は発生しない。又、ころは保持器の中心軸から遠い外側フランジ側に移動することはないから、オーバーハングを生じることもない。 又、小窓を形成した一方の保持器部材にあっては、小窓の幅がころの径よりも小さいため、内側にころが寄ることもなく、柱の幅を確保してこれも充分な強度の軸受けとすることができる。
【0017】
更に、小窓にころが入らないため、小窓を通じて軸受を貫流する油量を増加させることができ、且つ軸受の軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態を示すもので、両保持器部材を分離した状態の中央縦断面図である。
【図2】第2の実施形態を示すもので、ころを省略した状態の平面図である。
【図3】ポケットにころが入っているときの図2の保持器のA−A線断面図である。
【図4】図3の二つの保持器部材を分離した状態の断面図である。
【図5】図3の小窓を有する保持器部材について、ポケットと小窓を拡大して内側フランジから見た斜視部分図である。
【図6】図3の突起を有する保持器部材について、突起を拡大して内側フランジから見た斜視部分図である。
【図7】二つの保持器部材において、ポケットと突起が嵌合している状態を拡大して内側フランジから見た斜視部分図である。
【図8】従来のロール加締のみ施されたスラストころ軸受の保持器のころを省略した上面図である。
【図9】ポケットにころが入っているときの図8の保持器のB−B線断面図である。
【図10】本発明に至る過程で考えられた保持器のころを省略した平面図である。
【図11】ポケットにころが入っているときの図10の保持器のC−C線断面図である。
【符号の説明】
1 保持器
1a 保持器部材
1b 保持器部材
2 突起
3 ころ
4 ポケット
5 小窓
8 保持器部材が嵌合して密着する面
9 内側フランジ
10 外側フランジ
11 ウェブ
CL 中心軸
Claims (3)
- 二つの保持器部材を、その中心軸の方向に嵌合することにより構成されるスラストころ軸受の保持器において、
それぞれの保持器部材は、全体として環状をなし、その中心軸に近い内側フランジ、中心軸から遠い外側フランジ、及び両フランジの各一端の間に渡り形成されたウェブとからなり、環状の各部は径方向の断面が凹状をなし、ウェブにはころが入るポケットが形成されており、
一方の保持器部材のウェブには、前記ポケットと内側フランジの間に前記ポケットに連続させて小窓を形成し、その小窓の幅を前記ポケットの幅よりも小さくしてあり、
他方の保持器部材には、内側フランジの端面から中心軸方向に沿って伸び且つ前記一方の保持器部材の前記小窓に係合する突起を形成したことを特徴とするスラストころ軸受の保持器。 - 前記突起の幅を前記小窓の幅よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載のスラストころ軸受の保持器。
- 前記小窓を前記一方の保持器部材の内側フランジまで連続させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスラストころ軸受の保持器。
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