JP3900614B2 - 位相差フィルムおよびこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、耐久性が改良された位相差フィルムおよびこれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平 5-196819 号公報には、フィルム面内の屈折率とフィルム厚み方向の屈折率が異なる位相差フィルムが開示されている。この位相差フィルムに使用されている無機層状化合物は、その単位結晶層が平面構造であるため、単独でまたは樹脂との混合状態で透明樹脂基板上に製膜した場合、単位結晶層が透明樹脂基板の表面に対して平行でかつ面内の向きはランダムに配向する。この結果この位相差フィルムは、フィルム面内の屈折率が厚み方向の屈折率よりも大きい屈折率構造を有し、フィルム面内のレターデーション値がフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さい光学特性を示すようになる。
【0003】
等方性透明樹脂基板上に製膜した無機層状化合物層は、面内のレターデーション値がほぼ0nmでかつ厚み方向のレターデーション値の方が大きいという光学特性を有する。そして光学特性のパラメータである厚み方向のレターデーション値〔R’=(nXY−nZ)・d(nXY:フィルム面内の平均屈折率、nZ:厚み方向の屈折率、d:フィルムの厚み)〕を所定の値に容易に制御でき、大面積で均一な位相差フィルムを作製することができる。この位相差フィルムは、垂直配向ネマチック(VAN)型液晶表示装置や90度捩じれネマチック(TN)型液晶表示装置の視野角特性の改良に用いることができる。
【0004】
また、透明樹脂基板として負の屈折率異方性を有するポリスチレンなどの一軸配向性フィルム上に無機層状化合物層を直接製膜する方法や、等方性透明樹脂基板上に無機層状化合物層を製膜した後に粘着剤を用いて負の屈折率異方性を有するポリスチレンなどの一軸配向性フィルムと貼合する方法などにより、フィルム面内のレターデーション値(R)と遅相軸を傾斜軸として40度傾斜して測定したレターデーション値(R40)の比(R40/R)を0.9〜1.1の範囲に制御することができ、これを用いて超捩じれネマチック(STN)型液晶表示装置の視野角特性を改良することもできる。
【0005】
さらに、透明樹脂基板として正の屈折率異方性を有するポリカーボネートなどの一軸配向性フィルム上に無機層状化合物層を直接製膜する方法や、等方性透明樹脂基板上に無機層状化合物層を製膜した後に粘着剤を用いて正の屈折率異方性を有するポリカーボネートなどの一軸配向性フィルムと貼合する方法などにより、R40/R を1.1よりも大きい範囲に制御することができ、これを用いてベンド配向ネマチック(πセル)型液晶表示装置やハイブリッド配向ネマチック(HAN)型液晶表示装置などの光学的複屈補償(OCB)型液晶表示装置の視野角特性を改良することもできる。
【0006】
この位相差フィルムの製造には、透明樹脂基板上への無機層状化合物層の形成のし易さや光学特性の発現性、力学的特性などの点から、水溶性樹脂と無機層状化合物とを組み合わせて用いるのが好ましく、中でもポリビニルアルコールまたはその誘導体と水膨潤性無機層状化合物を含む水分散液を透明樹脂基板上に塗布して製膜する方法が好ましく用いられている。
【0007】
しかしながら、特開平 5-196819 号公報に開示されているポリビニルアルコールまたはその誘導体と水膨潤性無機層状化合物の水分散液を透明樹脂基板上に製膜した位相差フィルムは、光学特性において優れるものの、偏光板と液晶セルの間に位相差フィルムを挟んで粘着剤で貼合した状態での高温、高湿度環境下において、ポリビニルアルコールまたはその誘導体と水膨潤性無機層状化合物からなる層が透明樹脂基板から剥離するという耐久性不良を生じることがある。
【0008】
この耐久性不良は、主に水溶性樹脂と水膨潤性無機層状化合物という親水性の化合物を用いているために、高湿度環境下で多量の水を吸収して透明樹脂基板よりも大きな体積膨張を生じるとともに、界面での水溶性樹脂の軟化による密着力の低下が起こっていることに起因していると考えられる。
【0009】
また無機層状化合物を用いた位相差板としては、ハンドブック オブ オプティックス[Handbook of Optics(W. G. Driscoll et al., Optical Society of America, McGraw-Hill, USA, 1978)] の第10−108頁、セクション57および58に記載されているように、雲母の結晶をその劈開性を利用して適当な厚みの板とした面内のレターデーション値(R)がλ/4等となるようにしたものが知られている。しかし、結晶の劈開性を利用しているため、液晶表示装置などに用いることができる広い面積で均一なものを得ることは困難である。また、単一の結晶からなり面内のレターデーション値と厚み方向のレターデーション値(R’)の比が一定であるため、R’を任意の値に設計しようとした場合にRが一意的に決定され、特にR’が数百nmと大きくなった場合にRが50nmを超えるようになるなど、Rを小さいままとしてR’を任意に制御することもできない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体を用いることで、耐久性に優れ、フィルム面内のレターデーション値がフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さく、かつ広い面積で光学特性が均一な位相差フィルムを開発することができ、本発明を完成するに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は次のとおりである。
(1)スメクタイト族の粘土鉱物と4級アンモニウム化合物を複合化したものであって、有機溶媒に分散可能な少なくとも1種類の有機粘土複合体、および疎水性樹脂を含み、有機粘土複合体と疎水性樹脂の組成比が重量比で1:2〜10:1である層を少なくとも1層有する位相差フィルム。
(2)フィルム面内のレターデーション値が50nm以下でかつフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さい上記(1)の位相差フィルム。
(3)有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層が透明樹脂基板の少なくとも片面に形成されてなり、フィルム面内のレターデーション値が50nm以下でかつフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さい上記(1)の位相差フィルム。
(4)上記(1)、(2)または(3)の位相差フィルムを少なくとも1枚用いてなる液晶表示装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
有機粘土複合体は、層状構造を有する粘土鉱物と有機化合物を複合化したものである。層状構造を有する粘土鉱物は通常、その表面にSi−O、Si−OHあるいはAl−OHの酸素原子または水酸基が存在し、さらに結晶層間は交換性陽イオンとその水和イオンで占められている。この酸素原子や水酸基と有機化合物を反応させることで複合化する方法や、交換性陽イオンを有機陽イオンと交換して複合化する方法により有機粘土複合体とすることができる。
【0013】
粘土鉱物の一種であるスメクタイト族や膨潤性雲母は、結晶構造の四面体層内のSiをAlやFe(III)と、八面体層内のAlをSiやFe(III)と、八面体内のMgをLiと同形置換しており、その結果生じた負の層電荷を結晶層間のNa+ やK+、Ca2+、Mg2+ 、Al3+などの交換性陽イオンで補っている。これらの粘土鉱物は、単位結晶層同士の結合が比較的弱いために、層間が広がり易く、水などに分散させた場合にコロイド状を呈するまで単位結晶層間が膨潤して水中でゾルを形成し、陽イオン交換能を示すようになる。有機化合物との複合化にはこの陽イオン交換が有効であり、スメクタイト族は他の粘土鉱物に対して層電荷が比較的小さく容易にゾルを形成でき、陽イオン交換能が高いため、複合体の生成に好ましく用いられる。また、スメクタイト族は透明性にも優れており、位相差フィルムに用いるものとして好ましい。そこで本発明では、スメクタイト族の粘土鉱物を用いる。
【0014】
スメクタイト族に属するものとしては、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイトなどや、これらの置換体、誘導体および混合物などが例示できる。これらの中でも、化学合成されたものは、不純物が少なく透明性に優れるなどの点から位相差フィルムに好ましく用いられる。特に粒径を小さく制御した合成ヘクトライトは、可視光線の散乱が抑制されるために好ましく用いられる。
【0015】
有機化合物としては、例えば、粘土鉱物の酸素原子や水酸基と反応できる化合物、交換性陽イオンと交換可能なイオン性の化合物などが挙げられるが、陽イオン交換が容易であることなどから、本発明では4級アンモニウム化合物を用いる。4級アンモニウム化合物は通常、陽イオンとして導入され、このような陽イオンとしては、ジメチル・ジオクタデシル・アンモニウムイオン、ジメチル・ベンジル・オクタデシル・アンモニウムイオン、トリオクチル・メチル・アンモニウムイオンなどのようにアルキル基やベンジル基を有したものや、メチル・ジエチル・ポリオキシプロピレン(重合度:25)・アンモニウムイオンなどのように長鎖の置換基を有したものなどが例示される。これらの4級アンモニウム化合物は、粘土鉱物の陽イオン交換容量に対して当量用いることが望ましいが、製造に際しては、陽イオン交換容量に対して0.5〜1.5倍量の範囲で添加しても構わない。
【0016】
これらの有機粘土複合体は、4級アンモニウム化合物を適当に選択することにより、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き低極性の芳香族炭化水素類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類の如き高極性の溶媒など、各種有機溶媒に容易に分散可能とすることができる。
【0017】
このようにして得られる有機溶剤に分散可能な有機粘土複合体は、これを用いて位相差フィルムとした場合の耐湿熱性に優れた効果を発揮するものであるが、複合化する有機化合物によっては高温の環境下で変色するものもあり、変色が発生するものについてはその程度を許容範囲内に抑えることが望ましい。液晶表示装置に本発明の位相差フィルムを適用する場合、通常位相差フィルムは1枚または2枚使用される。1枚で変色の許容範囲を満たすことが望ましいが、2枚用いた場合でも許容範囲を満たすことがより望ましい。ここで変色の許容範囲とは、L*a*b* 表色系(JIS Z−8729)における試験前の色と80℃の温度環境下で1000時間経過した後の色の色差ΔE* が5以下であることを指す。
【0018】
上記のようにして得られる有機溶剤に分散可能な有機粘土複合体は通常疎水性であり、有機溶媒中で分散するとコロイド状を呈するまで単位結晶層を膨潤させることができ、適当な基板上に塗布し、乾燥させて製膜することで、単位結晶層を配向させることができ、位相差フィルムとして用いることができるようになる。有機粘土複合体からなる層を基板上に製膜する際の分散液中の有機粘土複合体の濃度は、なるべく高い方が層の厚みを大きくできるため好ましいが、高濃度になりすぎるとゲル化などが発生し、製膜性が悪くなるため、通常2〜20重量%の範囲で用いられる。これらの有機粘土複合体は、複数を混合して用いることもできる。
【0019】
また、基板上への形成のし易さや光学特性の発現性、力学的特性などの点から、有機粘土複合体は疎水性樹脂と組み合わせて用いられる。本発明に用いる疎水性樹脂としては、有機粘土複合体を分散できる有機溶媒に溶解できるものであれば特に制限はないが、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの低極性の有機溶剤に溶解するものが、好ましく用いられる。このような疎水性樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどのポリビニルアセタール樹脂、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂が例示される。また、有機粘土複合体は通常疎水性であるが、なかには極性溶媒に分散可能なものもあり、これらを用いる場合には、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース系樹脂以外に、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などを用いる こともできる。さらに、これらの樹脂の複数を混合して用いることもできる。
【0020】
有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体と疎水性樹脂の組成比は、重量比で1:2〜10:1の範囲であることが、有機粘土複合体と疎水性樹脂からなる層の割れ防止などの力学的特性の向上のために好ましい。また分散液の固形分濃度は、作製した分散液が作製後数日間にわたりゲル化したり白濁したりしない範囲であれば特に制限はないが、通常有機粘土複合体と疎水性樹脂の合計の固形分濃度が3〜15重量%の範囲で使用される。最適な固形分濃度は、有機粘土複合体と疎水性樹脂の組成比により異なるため、組成比毎に設定される。また、基板上に製膜する際の塗布性を向上させるための粘度調整剤や、疎水性や耐久性をさらに向上させるための架橋剤などの添加剤を加えてもよい。
【0021】
位相差フィルムとして用いる場合、製膜した基板から剥離して単独のフィルムとして用いることができるが、透明基板を用いて透明基板上に製膜した状態のままで用いることもできる。製膜する基板が平板状の場合、有機粘土複合体の単位結晶層はその層状構造を平板面に平行にかつ面内の向きはランダムに配向する。したがって、フィルム面内の屈折率がフィルム厚み方向の屈折率よりも大きい屈折率構造を示すようになる。この屈折率異方性により、フィルム面内のレターデーション値が50nm以下でかつフィルム面内のレターデーション値がフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さな位相差フィルムとして用いることができる。
【0022】
透明樹脂基板としては、等方性透明樹脂基板を用いることができる。等方性透明樹脂基板を用いる場合は、フィルム面内のレターデーション値がフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さい位相差フィルムとなる。このような透明樹脂基板としては、配向が小さく均一性に優れた50〜200μmの厚みを有するフィルムであれば特に制限はないが、フィルム面内のレターデーション値が20nm以下に制御されたフィルムが好ましい。このようなフィルムとしては、溶剤キャスト法により作製されたセルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリサルフォン系フィルム、アクリル系フィルムや、低残留応力の精密押し出し法により製膜したアクリル系フィルムなどが例示でき、中でも溶剤キャスト法により製膜したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
【0023】
また、透明樹脂基板として負の屈折率異方性を有する一軸配向性フィルムを用いた場合には、フィルム面内のレターデーション値(R)と遅相軸を傾斜軸として40度傾斜して測定したレターデーション値(R40)の比(R40/R)が0.9〜1.1である位相差フィルムとなり、STN型液晶表示装置の視野角特性の改良用フィルムとして用いることができる。このような透明樹脂基板としては、負の屈折率異方性を有するポリスチレン系樹脂やアクリル系樹脂を溶剤キャスト法により製膜した後に一軸延伸して得ることができる一軸配向性フィルムを例示できるが、レターデーションの発現のし易さからポリスチレン系樹脂を用いることが好ましい。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体などを例示することができる。
【0024】
さらに、透明樹脂基板として正の屈折率異方性を有する一軸配向性フィルムを用いた場合には、R40/R が1.1よりも大きい位相差フィルムとなり、OCB型液晶表示装置などの視野角特性の改良フィルムとして用いることができる。このような透明樹脂基板としては、正の屈折率異方性を有するポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂やポリサルフォン系樹脂を溶剤キャスト法により製膜した後に一軸延伸して得ることができる一軸配向性フィルムを例示できるが、レターデーションの発現のし易さや延伸のし易さから、ポリカーボネート系樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
本発明の位相差フィルムは、VAN型液晶表示装置、TN型液晶表示装置、STN型液晶表示装置やOCB型液晶表示装置の視野角特性の改良に用いることができるが、適用する液晶表示装置により最適な厚み方向のレターデーション値(R’)が得られるように、有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体と疎水性樹脂を含む層の製膜後の厚みを制御する。この厚みは、有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体の光学特性や有機粘土複合体と疎水性樹脂の組成比にもよるが、通常1〜50μmの範囲に設定される。
【0026】
有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層と透明基板との密着性をさらに強化するために、透明基板上にアンカーコート層を設けたり、透明基板の表面にコロナ処理などの表面処理を施したりする手段が、好ましく用いられる。アンカーコート層としては、有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む分散液を基板上に均一に塗布することができ、密着力を向上できるものであれば特に制限はないが、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。
【0027】
有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体と疎水性樹脂からなる層を透明樹脂基板上に製膜する方法や、アンカーコート層を透明樹脂基板上に製膜する方法は、特に制限されるものではなく、ダイレクト・グラビア法、リバース・グラビア法、ダイコート法、コンマコート法、バーコート法などのコート法を用いることができる。中でも、コンマコート法、バックアップロールを用いないダイコート法などが、厚み精度に優れるため好ましく用いられる。
【0028】
このようにして作製した本発明による位相差フィルムは、透明性に優れており、通常は液晶表示装置に用いるために必要な80%以上の光線透過率を有するものである。
【0029】
本発明の位相差フィルムを液晶表示装置に適用するにあたっては、この位相差フィルム少なくとも1枚を液晶表示装置の偏光板と液晶セルの間に配置すればよく、視野角を改良するための光学特性として1枚で不足する場合は2枚を積層して配置してもよく、また視野角特性の対称性を確保するために上下の偏光板と液晶セルの間に上下各1枚に分割して配置してもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層で構成した位相差フィルムは、フィルム面内のレターデーション値がフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さいものとなり、しかもこの位相差フィルムは、光学特性に優れるのみならず、高温、高湿度環境下において剥離などの不具合が発生せず、耐久性に優れている。また、本発明の位相差フィルムを用いることで、視野角特性に優れるだけでなく、耐久性にも優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、サンプルの測定、評価は以下の方法により実施した。
【0032】
(A)位相差フィルムの光線透過率:
(株)島津製作所製の分光光度計UV2200を用いて測定した。
【0033】
(B)位相差フィルムのフィルム面内のレターデーション値:R
(株)ニコン製の偏光顕微鏡オプチフォト−ポルを用いて、波長546nmの単色光でセナルモン法(Senarmont Method)により測定した。
【0034】
(C)フィルム厚み方向のレターデーション値:R’
フィルム面内のレターデーション値R、遅相軸を傾斜軸として30度傾斜して測定したレターデーション値R30 、位相差フィルムの厚みd、および位相差フィルムの平均屈折率(1.5 とした)を用いて、以下の式(1)〜(3)からコンピューター数値計算によりnx、nY およびnZ を求め、次いで式(4)によりR’を算出した。
R=(nx−nY)×d (1)
R30=(nX−nY')×d/cos(φ) (2)
(nX+nY+nZ)/3=1.5 (3)
R’=((nX+nY)/2−nZ)×d (4)
ここで
φ=sin-1〔sin(30°)/1.5〕=19.471°
nY'=nY×nZ/(nY 2×sin2(φ)+nZ 2×cos2(φ))1/2
【0035】
(D)耐熱変色性試験:
位相差フィルム2枚を粘着剤でガラス板に貼合したものについて加熱試験を行い、加熱試験前後で、C光源、2度視野での色相L*a*b* を測定した。すなわち、(株)ミノルタ製の色彩色差計CT−210を用い、初期のL*0a*0b*0と80℃の環境下で1000時間放置後のL*1a*1b*1を測定し、以下の式を用いて計算した色差ΔE* の値により、耐熱変色性を評価した。
ΔE*=〔(L*1−L*0)2+(a*1−a*0)2+(b*1−b*0)2〕1/2
【0036】
(E)耐湿熱性試験:
偏光板(商品名 SK−1842AP7、住友化学工業(株)製)と液晶セルの間に、粘着剤を用いて位相差フィルム1枚を貼合したもの(125mm×95mm、偏光フィルムの吸収軸および、位相差フィルムに面内のレターデーション値がある場合には位相差フィルムの遅相軸が、長辺を基準として反時計回りに45°となるようにする)について、温度60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置して、有機溶媒に分散可能な有機粘土複合体を含む層と透明樹脂基板との界面で剥離などの不具合を生じないかを観察した。
【0037】
実施例1
疎水性樹脂(商品名 デンカブチラール#3000−K、電気化学工業(株)製)を1.75重量%、有機粘土複合体1(商品名 ルーセンタイトSTN、コープケミカル(株)製)を3.94重量%および有機粘土複合体2(商品名 ルーセンタイトSPN、コープケミカル(株)製)を1.31重量%、トルエンを65.1重量%、塩化メチレンを18.6重量%、アセトンを9.3重量%含む有機溶剤分散液(以下、分散液Aと称す)を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名 フジタックSH−80、富士写真フィルム(株)製)を等方性透明樹脂基板とし、この基板上に分散液Aを乾燥後の膜厚が約6μmとなるようにバーコータを用いて塗布し、85℃オーブン中で乾燥して、本発明による位相差フィルムを得た。このフィルムの光学特性および耐久性試験結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名 フジタックSH−80、富士写真フィルム(株)製)をコロナ処理したものを等方性透明樹脂基板とし、この基板上に、実施例1で用いたのと同じ分散液Aを乾燥後の膜厚が約17μmとなるようにコンマコータを用いて塗布し、85℃で乾燥して、本発明による位相差フィルムを得た。このフィルムの光学特性および耐久性試験結果を表1に示す。
【0039】
実施例3
実施例2の有機粘土複合体と疎水性樹脂からなる層の乾燥後の厚みを約48μmとする以外は実施例2と同様にして、本発明による位相差フィルムを得た。このフィルムの光学特性および耐久性試験結果を表1に示す。
【0040】
実施例4
厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名 フジタックSH−80、富士写真フィルム(株)製)の片面にアンカーコート層としてアクリル系のUV硬化性樹脂を約5μmの厚みで形成したものを等方性透明樹脂基板とし、この基板のアクリル系樹脂層上に、実施例1で用いたのと同じ分散液Aを乾燥後の膜厚が約16μmとなるようにバーコータを用いて塗布し、85℃オーブン中で乾燥して、本発明による位相差フィルムを得た。このフィルムの光学特性および耐久性試験結果を表1に示す。
【0041】
実施例5
疎水性樹脂(商品名 デンカブチラール#3000−K 電気化学工業(株)製)を2.50重量%、有機粘土複合体1(商品名 ルーセンタイトSTN、コープケミカル(株)製)を5.63重量%および有機粘土複合体2(商品名 ルーセンタイトSPN、コープケミカル(株)製)を1.87重量%、トルエンを63.0重量%、塩化メチレンを18.0重量%、アセトンを9.0重量%含む有機溶剤分散液(以下、分散液Bと称す)を調製した。実施例2で用いたのと同じコロナ処理が施された基板上に、分散液Bを乾燥後の膜厚が約11μmとなるようにバーコータを用いて塗布し、85℃オーブン中で乾燥して、本発明による位相差フィルムを得た。このフィルムの光学特性および耐久性試験結果を表1に示す。
【0042】
比較例1
水膨潤性無機層状化合物である合成ヘクトライト(商品名 ラポナイトXLS、Laporte社製)を 3.7重量%、およびポリビニルアルコール(商品名 ポバール103、(株)クラレ製:ケン化度98.5%、重合度300)を4.4重量%含む水分散液を調製した。厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名 フジタックSH−80、富士写真フィルム(株)製)を表面ケン化処理したものを等方性透明樹脂基板とし、この基板上に、上で調製したポリビニルアルコールと水膨潤性無機層状化合物を含む水分散液を、乾燥後の膜厚が約16μmとなるようにバーコータを用いて塗布し、100℃オーブン中で乾燥して、フィルム面内のレターデーション値がフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さな位相差フィルムを得た。このフィルムの光学特性および耐久性試験結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
Claims (12)
- スメクタイト族の粘土鉱物と4級アンモニウム化合物を複合化したものであって、有機溶剤に分散可能な少なくとも1種類の有機粘土複合体、および疎水性樹脂を含み、有機粘土複合体と疎水性樹脂の組成比が重量比で1:2〜10:1である層を少なくとも1層有する位相差フィルム。
- スメクタイト族の粘土鉱物が、ヘクトライト、モンモリンナイトもしくはベントナイトまたはその置換体もしくは誘導体である請求項1記載の位相差フィルム。
- 疎水性樹脂がポリビニルアセタール樹脂またはセルロース系樹脂である請求項1または2記載の位相差フィルム。
- 疎水性樹脂がポリビニルブチラールである請求項3記載の位相差フィルム。
- フィルム面内のレターデーション値が50 nm 以下でかつフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さい請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層が透明樹脂基板の少なくとも片面に形成されてなり、フィルム面内のレターデーション値が50 nm 以下でかつフィルム厚み方向のレターデーション値よりも小さい請求項1〜4のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 透明樹脂基板が等方性透明樹脂基板である請求項6記載の位相差フィルム。
- 等方性透明樹脂基板が溶剤キャスト法により製膜したトリアセチルセルロースフィルムである請求項7記載の位相差フィルム。
- 有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層が、透明樹脂基板の少なくとも片面にアンカーコート層を介して形成されている請求項6〜8のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層が、表面をコロナ処理した透明樹脂基板の少なくとも片面に形成されている請求項6〜8のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 有機粘土複合体および疎水性樹脂を含む層の厚さが1〜50μmである請求項1〜10のいずれかに記載の位相差フィルム。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の位相差フィルムを少なくとも1枚用いてなる液晶表示装置。
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---|---|---|---|
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