JP3899941B2 - 電磁式リニアアクチュエータおよび回路しゃ断器のリモート操作装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路しゃ断器(配電用回路しゃ断器)の開閉操作用として好適な電磁式リニアアクチュエータ、および該電磁式リニアアクチュエータでしゃ断器の操作ハンドルを駆動する回路しゃ断器のリモート操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
頭記した回路しゃ断器のリモート操作装置として、駆動モータに減速歯車,送りねじ機構,あるいはラック/ピニオン機構を組合せ、モータの回転を直線運動に変換して回路しゃ断器の操作ハンドルをON,OFF位置に切換えるようにした方式のものが従来より製品として実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記した従来の回路しゃ断器用リモート操作装置は、製作コスト,および取扱い面で次記のような難点がある。すなわち、
(1)ギヤードモータとねじ式,あるいはラック・ピニオン式の伝動機構を用いているために構造が複雑で大形化し、かつ製品価格も高い。
【0004】
(2)また、ハンドル操作により回路しゃ断器をON,OFF,リセット操作するにはかなり大きな力を要することから、リモート操作装置に使用するギヤードモータは減速比が大きく、このために停電時などに回路しゃ断器をOFFに切換えるには、リモート操作装置を組付けたまま手動で回路しゃ断器をOFF位置に操作することが困難である。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は遠隔制御で回路しゃ断器をON,OFF,リセット操作するリモート操作装置などの用途に好適な電磁式リニアアクチュエータ、および該電磁式リニアアクチュエータを採用した回路しゃ断器のリモート操作装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
配線用回路しゃ断器などでは、その操作ハンドルと連繋する接点開閉機構はトグルリンク機構,開閉ばね,ラッチ機構を組合せた構成になる。ここで、リモート操作装置を用いて回路しゃ断器のハンドルをON,OFF,リセット位置に駆動する際に要する操作力(=操作ハンドルの反力)は、前記した接点開閉機構との関連からOFF操作<ON操作<リセット操作の関係となり、特に回路しゃ断器がトリップ動作した後にハンドルをトリップ位置からリセット位置に操作して接点開閉機構のラッチをリセットさせる際には、ストロークの後半で大きな反力が加わるようになる(なお、ハンドルの反力−変位特性については図7(b)で後述する)。
【0007】
そこで、本発明では、前記したリモート操作装置に採用する電磁式リニアアクチュエータについて、回路しゃ断器をON,OFF,リセット操作する際にハンドルを介してリニアアクチュエータに作用する反力−変位特性に対応して、OFF側のストローク後半で推力が増加する推力−変位特性を持たせるようにするものとし、具体的には、上記目的を達成するために、本発明の電磁式リニアアクチュエータを次記のように構成するものとする。
【0008】
(1)左右側面に永久磁石を付設した可動子と、該可動子を挟んでその両側に対向配置したE字形磁性コア,および該磁性コアの中央脚に巻装した励磁コイルからなる左右一対の電磁石との組合せからなり、前記E字形磁性コアの中央磁極と一方の外側磁極との間の距離を、中央磁極と他方の外側磁極との間の距離よりも小さく設定し、前記励磁コイルに流す励磁電流の方向を切換えて可動子を二つの動作位置の間で反転動作させるように構成する(請求項1)。
【0009】
(2)前項(1)において、E字形磁性コアの外側磁極に、その終端から突き出して可動子の端面と対峙する突起状磁極を設ける(請求項2)。
(3)前項 (1) において、前記E字形磁性コアの外側磁極と該磁極に対峙する可動子磁極の磁極面、もしくはE字形磁性コアの外側磁極面のみを可動子の移動方向に対して傾斜させるように構成する(請求項3)。
【0010】
(4)左右側面に二組の永久磁石を付設した可動子と、該可動子を挟んでその両側に対向配置したE字形磁性コア,および該磁性コアの中央脚に巻装した励磁コイルからなる左右一対の電磁石との組合せからなり、前記励磁コイルに流す励磁電流の方向を切換えて可動子を二つの動作位置の間で反転動作させるようにした電磁式リニアアクチュエータにおいて、前記可動子の一方の外側磁極側に付設した永久磁石の磁極強さを、他方の外側磁極側に付設した永久磁石よりも大に設定する(請求項4)。
【0011】
(5)前項(4)において、可動子を挟んで向かい合う永久磁石の磁極を異極性に設定する(請求項5)。
【0012】
上記構成の電磁リニアアクチュエータにおいて、電磁石の励磁コイルに流す電流の方向を切換えると、電磁石と可動子の磁極間に働く磁気推力の向きが反転して可動子が一方の動作位置から反対側の動作位置に移動するように反転動作する。ここで、可動子を挟んでその両側に電磁石を配置した構成により電磁石2基分に相応した大きな駆動力が確保できるとともに、動作時には左右の電磁石と可動子との間でその移動方向と直角方向に働く磁気吸引力が互いに相殺し合うので、これにより可動子を移動方向に案内支持するガイド機構に加わる摩擦力が低減する。また、可動子の継鉄を挟んで向かい合う永久磁石の一方をN極,他方をS極に設定することで、継鉄は断面積が小さくても磁気飽和することがなく、これによりアクチュエータの小型化が図れる。
【0013】
また、本発明による回路しゃ断器のリモート操作装置は、前記の電磁式リニアアクチュエータの可動子を回路しゃ断器の操作ハンドルに連繋させ、励磁コイルの通電制御によるリニアアクチュエータの反転動作で回路しゃ断器をON,OFF,リセット位置に切換え操作する(請求項6)ものとする。
【0014】
かかる構成で、電磁式リニアアクチュエータに外部から回路しゃ断器のON,OFF,リセット指令を与えると、その信号に対応してリニアアクチュエータの可動子が移動動作し、回路しゃ断器の操作ハンドルをON,OFF,リセット位置に切換える。また、このリモート操作装置はギヤードモータとねじ式,ラック・ピニオン式伝動機構を組み合わせた従来装置に比べて部品点数も少なく、かつ構造も単純で安価に製作できる。しかも、回転を直線運動に変換する歯車機構などを用いないので、停電中でもリモート操作装置を回路しゃ断器に組付けたまま、手動で回路しゃ断器のハンドルをOFF位置に切換え操作できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示の実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
まず、本発明の電磁式リニアアクチュエータの構成を図1に示す。この実施例では、電磁式リニアアクチュエータ1が、可動子2と、その左右側面に取付けた永久磁石3と、可動子2を挟んでその左右両側の対称位置に配した左右一対の電磁石とから構成されている。ここで、電磁石はE字形磁性コア4,5と各磁性コア4,5の中央脚4a,5aにボビン6aを介して巻装した励磁コイル6とからなる。また、永久磁石3はその長手方向に着磁されたものであり、図示例では左側の永久磁石と右側の永久磁石とで磁極の極性(N,S極)を逆極性に設定し、かつ可動子2に付設した永久磁石3のN−S磁極間の距離(可動子2の全長)をA、電磁石のE字形磁性コア4,5における中央磁極(中央脚4a,5a)と外側の磁極(外脚4b,4c,および反対側の外脚5b,5c)との間の距離をBとして、B<Aとなるように設定されている。なお、図示してないが、可動子2はガイド棒,レールなどのガイド機構を介して動作方向(図示の上下方向)へスライド可能に案内支持されている。
【0016】
かかる構成において、可動子2が図示の実線位置にあって励磁コイル6が非励磁の状態では、永久磁石3とE字形磁性コア4,5との間に働く磁気力により可動子2はこの位置に吸引保持されている。この状態から励磁コイル6に直流電流を流すと、E字形磁性コア4,5の中央脚4a,5a,および外脚4b,4cおよび5b,5cの磁極面には励磁コイル6の電流方向に対応した起磁力によってN,S極が現れ、永久磁石3のN,S極との間で磁気反発力,吸引力が作用するようになる。
【0017】
ここで、左側の磁性コア4はその中央極4aがN極,外脚4b,4cがS極となるように、また右側の磁性コア5はその中央極5aがS極、外脚5b,5cがN極となるように各磁性コア4,5に巻装した励磁コイル6の電流方向を制御すると、永久磁石3との間に働く磁気反発力,吸引力により可動子2が図示実線の動作位置から上方に駆動されて鎖線で示す動作位置に移動する。また、この状態から励磁コイル6に流す電流の向きを切換えて磁極の極性を反転させると、可動子2は鎖線位置から元の実線位置に戻るように反転動作する。つまり、励磁コイル6に流す電流の向きが反転するたびに、可動子2が反転動作して一方の動作位置から他方の動作位置に移動する。
【0018】
この場合に、図示構成のように可動子2を挟んで電磁石の磁気コア4,5を左右対称位置に対向させたことにより、励磁コイル6の通電により可動子2に働く駆動力は個々の磁性コアとの間に作用する磁気推力の2倍となる。しかも、磁気コア4,5と可動子2の永久磁石3との間に働く可動子移動方向と直角方向の磁力は互いに打ち消し合って相殺されるので、これにより可動子2はガイド棒,ガイドレールなどの案内機構との間に大きな摩擦抵抗を受けずにスムーズに移動させることができる。
【0019】
〔実施例2〕
図2は本発明の応用実施例を示すものである。この実施例においては、可動子2が継鉄(磁性体)2aに対して、その左右側面に図示のようにN,S極を厚さ方向に着磁した2枚の永久磁石3a,3bが上下端に振り分けて互いに逆極性となるように取付けてある。また、可動子2の両側に配した電磁石のE字形磁性コア4,5および励磁コイル6は図1と同様な構成になる。なお、この実施例では可動子2の上端側では永久磁石3aのN極が、下端側では永久磁石3bのS極が磁性コア4,5にそれぞれ対向しており、この極性に合わせて操作時には磁性コア4,5の励磁コイル6に流す電流の向きを制御するようにしている。
【0020】
この構成では、可動子2の継鉄2aが永久磁石3aと3bに跨がる磁路を形成しており、磁性コア4,5の励磁コイル6に流す電流の向きを切り換えることにより、可動子2との間に働く磁気推力の向きが反転して可動子2が一方から他方の動作位置に移動する。なお、図3はこの実施例で励磁コイル6を励磁した状態での磁力線分布を表している。
【0021】
〔実施例3〕
次に、前記実施例2を改良した本発明の他の実施例を図4に示す。この実施例は、先記実施例2と比べて可動子2の左右側面に付設した永久磁石3a,3bの極性が次のように設定されている。すなわち、可動子継鉄2aの右側に付設した上下の永久磁石3a,3bは図2と同じ極性であるが、左側に付設した永久磁石は右側の永久磁石と逆極性となるように設定されており、継鉄2aを挟んで左右の永久磁石のN極とS極が対面している。
【0022】
この構成によれば、継鉄2aを磁路としてその左側の上下に配した永久磁石の間の磁束と、右側の上下に配した永久磁石の間の磁束とは逆向きで相殺し合うため、継鉄2aの断面積を縮小しても磁気飽和の影響を受けることがなく、アクチュエータを小型化するのに有利となる。
〔実施例4〕
図5は本発明の電磁式リニアアクチュエータの他の実施例を示すものである。この実施例においては、可動子2の継鉄2aを断面I字形としてその上下端を磁極部2cとし、継鉄2aの中央部分には永久磁石に代えて励磁コイル7を巻装した構成になり、この可動子2を挟んでその左右両側には先記の各実施例と同様にE字形磁性コア4,5の中央脚4a,5aに励磁コイル6を巻装した電磁石を配置してリニアアクチュエータを構成している。
【0023】
かかる構成で可動子2の励磁コイル7に電流を流すと、その電流の向きに応じて可動子2の上下磁極2bにN,S極が現れ、電磁石の磁性コア4,5との間で電磁吸引力,反発力が作用する。これにより前記実施例1,2と同様に可動子2に上方,あるいは下方の電磁推力が作用して可動子2が二つの動作位置間で移動動作する。
【0024】
なお、この実施例では、励磁コイル6および7の通電を絶つとコイル起磁力が零となって可動子2はコイルによる磁力の影響を受けない状態となる。したがって、後記のように当該リニアアクチュエータを回路しゃ断器のリモート操作装置に適用すれば、停電でリモート操作装置が動作しない状況下でも、磁気的な拘束力は小さいため回路しゃ断器のハンドルを手動操作で楽に切り換えることができる。
【0025】
〔実施例5〕
次に、前記した電磁式リニアアクチュエータを採用して構成した本発明の回路しゃ断器のリモート操作装置,およびその遠隔操作制御回路の原理的な構成を図6(a),(b)に示す。図6(a)において、8は回路しゃ断器、9は回路しゃ断器のリモート操作装置である。該リモート操作装置9は、電磁式リニアアクチュエータ1、および該リニアアクチュエータの永久磁石付き可動子2に結合した凹形のアタッチメント10との組立体からなり、しゃ断器ケースに装着した状態でアタッチメント10を回路しゃ断器8のハンドル8aの頭に係合させている。なお、リニアアクチュエータ1の可動子2はガイド棒1aでスライド可能に案内支持されている。また、リモート操作装置9におけるアクチュエータの励磁コイル6には、直流電源11と切換スイッチ12を組合せたリモート制御回路13が配線14を介して接続されている。なお、図6(b)は操作ハンドル8aのON,OFF,トリップ,リセットの各位置を表した図である。
【0026】
かかる構成において、リモート制御回路13側で切換スイッチ12を介して回路しゃ断器8のリモート操作装置9に操作指令を与えると、リモート操作装置9に組み込んだリニアアクチュエータ1の励磁コイル6が励磁され、その励磁電流の向きに対応して可動子2が反対側の動作位置に駆動されるとともに、この可動子2の動きに操作ハンドル8aが従動して回路しゃ断器8がON,OFF,リセット操作される。
【0027】
次に、リモート操作装置9のリニアアクチュエータに図2の電磁式リニアアクチュエータを採用し、このリモート操作装置9を使って回路しゃ断器8をON,OFF,リセット操作する場合を例に、そのON側,OFF側の操作行程でリニアアクチュエータに発生する電磁推力を図7(a)の推力−変位特性で表し、また図7(b) には回路しゃ断器8をON,OFF,リセットする際にハンドルに加わる反力−変位特性を表す。各図において、横軸は電磁式リニアアクチュエータにおける電磁石のE字形磁性コアの中心を基点とした可動子の移動(ON,OFF方向)の相対位置(distance)を、縦軸には力 (force)と方向(ON側:+,OFF側:−)を表している。なお、この推力−変位特性,および反力−変位特性は発明者等がシミュレーション手法で求めたものである。
【0028】
ここで、図7(a)の特性線Aは電磁石を励磁して可動子をON方向に駆動する際に発生する推力を、特性線Bは電磁石を逆方向に励磁して可動子をOFF,リセット方向に駆動する際に発生する推力を、特性線Cは電磁石が非励磁状態での永久磁石の磁力による推力を表しており、電磁石を励磁した場合の推力はON,OFF方向とも相対位置0,つまり可動子が電磁石の磁性コアの中心に相対位置している場合に最大となっている。
【0029】
一方、図7(b)において、特性線Dは回路しゃ断器のハンドルをON操作する際にハンドルを介してリモート操作装置の電磁式リニアアクチュエータに加わる反力を、特性線EはOFF操作する際の反力を、また特性線Fは回路しゃ断器がトリップ動作した後にハンドルをトリップ位置からリセット位置に向けてOFF側に移動する際に加わる反力を表している。この特性図から判るように、回路しゃ断器をON,OFF,リセット操作する際に加わる反力の大きさは、OFF操作<ON操作<リセット操作の関係にある。また、ON操作,OFF操作時の反力は相対位置のほぼ中央に集中しているのに対し、リセット操作時の反力は中央から外れたOFF操作ストロークの後半に集中している。これは、ハンドルをトリップ位置からリセット位置に移動して接点開閉機構のラッチをラッチ受けに係合させる際に、ばね力がOFF位置を過ぎるあたりから反力として加わるためである。
【0030】
上記した反力−変位特性は回路しゃ断器に特有なものであり、このような負荷条件の下でリモート操作装置を使って回路しゃ断器のハンドルをON,OFF,リセット位置に操作するには、この反力−変位特性を上回るリモート操作装置の推力(機械的な出力)が必要となる。
ところで、図7(a)で表した推力−変位特性と図7(b)の反力−変位特性を比べた場合に、推力はON,OFF操作行程のいずれでもピークが相対位置0付近にあるのに対して、反力はOFF操作行程での後半にピークがあり、推力−変位特性と反力−変位特性との間の整合性が低い。したがって、このままでリセット操作の反力を上回る大きな推力をリモート操作装置で発生させるには、電磁式リニアアクチュエータの電磁石に大きな電流を供給してその起磁力を高める必要がある。しかしながら、アクチュエータの電磁石に大きな電流を流すにはその電流容量が増して鉄心,コイルの大形化を招くほか、図7(b)のON,OFF位置への操作に対応する反力(特性線D,E)に対してはアクチュエータの推力(特性線A,B)が過剰となって電力の利用効率が低下する。
【0031】
かかる点、次に述べる本発明の実施例によれば、図6のリモート操作装置9に採用する電磁式リニアアクチュエータ1について、その推力−変位特性と反力−変位特性との整合化を図り、OFF側に操作するストローク後半で推力を増加させることができ、これにより先記のように電流容量の大きな電磁石を使わずに、小型,小容量の電磁式リニアアクチュエータでも回路しゃ断器のON,OFF,リセット操作に十分対応させることができる。
【0032】
〔実施例6〕
図8(a),(b)は本発明の電磁式リニアアクチュエータの他の実施例を示すものである。この実施例においては、その基本構成は図2,あるいは図3に示したものと同様であるが、電磁石のE字形磁性コア4,5に関しては、その中央脚4a,5aと一方の外側脚4b,5bとの間の間隔d1に対して、他方の外側脚4c,5cとの間の間隔d2 が小(d1>d2)に設定されている。なお、図示は可動子2が磁性コア4,5の中心に相対位置した状態を表しており、図6との対応で回路しゃ断器のON操作時には可動子2を左側に駆動し、OFF操作,リセット操作時には可動子2を右側に駆動するものとする。また、これに合わせて磁性コア4,5の中央脚4a,5aを中央磁極、左側脚4b,5bをON側磁極、右側脚4c,5cをOFF側磁極と定義する。
【0033】
かかる構成により、磁性コア4,5の各磁極と可動子2に付設した永久磁石3a,3bとの相対位置の関係から、図8(b)の特性図で表すように電磁石励磁コイル6の非励磁状態での永久磁石3a,3bによる推力−変位特性は特性線Cで表すように推力の反転する位置が中心位置0よりOFF側に変位している。これにより、永久磁石による推力がバイアス推力として作用し、励磁コイル6を励磁した状態での推力−変位特性線A,Bは、先に述べた図7(b)の特性線のパターンと比べて推力のピークが左右に移るようになる。特に、OFF側に操作する行程では、その特性線Bのピークが中心位置よりもストロークの後半側に移行しており、これによりストローク全域でも推力が回路しゃ断器をOFFおよびリセット操作する際に加わるハンドルの反力特性線E,Fを上回るようになる。
【0034】
したがって、リモート操作装置に組み込んだ電磁式リニアアクチュエータとして、その電磁石の励磁コイル6に供給する電流を必要以上に大きくすることなしに、回路しゃ断器を確実にON,OFF,リセット操作でき、これによりリモート操作装置の小型化,および消費電力の軽減化が図れる。
〔実施例7〕
図9(a),(b)は本発明の他の実施例を示すものである。この実施例においては、図9(a)で示すようにリモート操作装置として必要な可動子2の移動ストロークを確保した上で、電磁石のE字形磁性コア4,5において、OFF側磁極に対応する右側脚4c,5cにはその終端から可動子2の移動側に突き出して可動子の端面と対峙するように突起4d,5dが形成されている。
【0035】
これにより、可動子2をOFF側に駆動するストローク行程で、可動子2の先端が前記突起4d,5dに近づくと突起との間に磁気吸引力が働き、図9(b)の特性線Bで表すようにOFF操作行程でのストローク後半で推力が大きくなり、特性線Fで表すリセット操作の反力を上回るようになる。
〔実施例8〕
図10(a),(b)は本発明の他の実施例を示すものである。この実施例においては、図10(a)で示すように可動子2の継鉄2aには、右側端に先細りとなる角度θのテーパー部2cを形成してここに永久磁石3aが取付けてある。また、前記テーパー部2cに対向して磁性コア4,5のOFF側脚4c,5cには内側に角度θのテーパー状磁極面4e,5eが形成されている。
【0036】
これにより、可動子2をOFF側に駆動するストローク行程で、可動子2の永久磁石3aと磁性コア4,5のテーパー状磁極面4e,5eとの間に作用する磁吸引力のうち、可動子移動方向と平行なベクトル成分が大きくなってその分だけ有効推力が増大する。この結果、図10(b)の特性線Bで表すようにOFF操作行程でのストロークの後半で推力が大きくなり、特性線Fで表すリセット操作の反力を上回るようになる。
【0037】
〔実施例9〕
図11は前記実施例8の応用実施例を示すものであり、この実施例では磁性コア4,5のOFF側脚4c,5cにのみ内側に角度θのテーパー状磁極面4e,5eが形成され、可動子2側にはテーパー部が形成されてない。
この実施例でも、可動子2をOFF側に駆動するストローク行程で、可動子2の永久磁石3aと磁性コア4,5のテーパー状磁極面4e,5eとの間に作用する磁吸引力の可動子移動方向と平行なベクトル成分が大きくなって有効推力が増大し、実施例8と同様な効果を奏する。
〔実施例10〕
図12は本発明の他の実施例を示すものである。この実施例においては、可動子2の左右両端に付設した2組の永久磁石3a,3bについて、OFF側の永久磁石3aの長さをL1,ON側の永久磁石3bの長さをL2 としてL1 >L2 に設定し、OFF側に付設した永久磁石3aの磁極強さを、ON側に付設した永久磁石3bよりも大にしている。この構成により、可動子2をOFF側に駆動する行程で発生する推力がストロークの後半で増加し、先記の各実施例と同等な効果を奏することが確認されている。
【0038】
なお、前記した実施例6〜10は単独で用いても回路しゃ断器のリモート操作装置としての操作機能に効果を発揮するが、特に図8に示した実施例6の構成に図9〜図12に示した構成のいずれかを併用することにより、より一層の機能向上が期待できる。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の電磁式リニアアクチュエータでは、永久磁石を付設した可動子を挟んで、その左右両側に固定子として励磁コイルを巻装した一対のE字形磁性コアを対称に配置して構成したことにより、磁性コアとの間で可動子の移動方向と直角方向に作用する磁力を互いに打ち消し合いつつ、移動方向には大きな磁気推力で可動子を駆動することができるとともに、回路しゃ断器に特有な反力−変位特性とリニアアクチュエータの推力−変位特性とを整合性を高めてリモート操作装置の小型化,消費電力の低減化が図れる。
【0040】
また、当該リニアアクチュエータを採用して構成した回路しゃ断器リモート操作装置によれば、ギヤードモータ,送りねじ機構などで構成した従来装置と比べて部品点数も少なく,かつ構造も単純で安価に製作でき、また停電などで回路しゃ断器を手動で切換え操作する必要がある場合でも、リモート操作装置を組付けたまま手動で回路しゃ断器のハンドルを操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1に係る電磁式リニアアクチュエータの構成斜視図
【図2】本発明の実施例2に係る電磁式リニアアクチュエータの構成斜視図
【図3】図2の構成による電磁石の励磁状態の磁力線分布図
【図4】本発明の実施例3に係る電磁式リニアアクチュエータの構成斜視図
【図5】本発明の実施例4に係る電磁式リニアアクチュエータの構成斜視図
【図6】本発明の実施例5に係る回路しゃ断器のリモート操作装置の構成図であり、(a) はリモート操作装置,およびそのリモート制御回路図、(b) は回路しゃ断器のハンドルの各操作位置を表す図
【図7】図6のリモート操作装置に対する動作特性図であり、(a) は図2の電磁式リニアアクチュエータの推力−変位特性図、(b) は回路しゃ断器のON,OFF,リセット操作に伴う反力−変位特性図
【図8】本発明の実施例6に係る電磁式リニアアクチュエータの説明図であり、(a) は構成図、(b) は動作特性図
【図9】本発明の実施例7に係る電磁式リニアアクチュエータの説明図であり、(a) は構成図、(b) は動作特性図
【図10】本発明の実施例8に係る電磁式リニアアクチュエータの説明図であり、(a) は構成図、(b) は動作特性図
【図11】本発明の実施例9に係る電磁式リニアアクチュエータの構成図
【図12】本発明の実施例10に係る電磁式リニアアクチュエータの構成図
【符号の説明】
1 電磁式リニアアクチュエータ
2 可動子
2a 継鉄
2b 磁極部
2c テーパー部
3,3a,3b 永久磁石
4,5 E字形磁性コア
4a,5a 中央脚
4b,5b 外側脚(ON側)
4c,5c 外側脚(OFF側)
4d,5d 突起
4e,5e テーパー磁極面
6,7 励磁コイル
8 回路しゃ断器
8a 操作ハンドル
9 リモート操作装置
13 リモート制御回路
Claims (6)
- 左右側面に永久磁石を付設した可動子と、該可動子を挟んでその両側に対向配置したE字形磁性コア,および該磁性コアの中央脚に巻装した励磁コイルからなる左右一対の電磁石との組合せからなり、前記E字形磁性コアの中央磁極と一方の外側磁極との間の距離を、中央磁極と他方の外側磁極との間の距離よりも小さく設定し、前記励磁コイルに流す励磁電流の方向を切換えて可動子を二つの動作位置の間で反転動作させるようにしたことを特徴とする電磁式リニアアクチュエータ。
- 請求項1記載の電磁式リニアアクチュエータにおいて、E字形磁性コアの外側磁極に、その終端から突き出して可動子の端面と対峙する突起状磁極を設けたことを特徴とする電磁式リニアアクチュエータ。
- 請求項1記載の電磁式リニアアクチュエータにおいて、前記E字形磁性コアの外側磁極と該磁極に対峙する可動子磁極の磁極面、もしくはE字形磁性コアの外側磁極面のみを可動子の移動方向に対して傾斜させたことを特徴とする電磁式リニアアクチュエータ。
- 左右側面に二組の永久磁石を付設した可動子と、該可動子を挟んでその両側に対向配置したE字形磁性コア,および該磁性コアの中央脚に巻装した励磁コイルからなる左右一対の電磁石との組合せからなり、前記励磁コイルに流す励磁電流の方向を切換えて可動子を二つの動作位置の間で反転動作させるようにした電磁式リニアアクチュエータにおいて、前記可動子の一方の外側磁極側に付設した永久磁石の磁極強さを、他方の外側磁極側に付設した永久磁石よりも大に設定したことを特徴とする電磁式リニアアクチュエータ。
- 請求項4記載の電磁式リニアアクチュエータにおいて、可動子を挟んで向かい合う永久磁石の磁極を異極性としたことを特徴とする電磁式リニアアクチュエータ。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の電磁式リニアアクチュエータの可動子を回路しゃ断器の操作ハンドルに連繋させ、励磁コイルの通電制御によるリニアアクチュエータの反転動作で回路しゃ断器をON,OFF,リセット位置に切換え操作することを特徴とする回路しゃ断器のリモート操作装置。
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