JP3899488B2 - 溶液製膜方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液製膜方法に関し、更に詳しくはフイルムを製膜する際に発生するガスを系外に漏洩させない溶液製膜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレート、特に57.5〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテートから形成されたフイルム(以下、TACフイルムと称する)は、その強靭性と難燃性とから写真感光材料の支持体などとして利用されている。また、TACフイルムは、光学的等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フイルムやカラーフィルタの用途に適している。
【0003】
TACフイルムは、一般的に溶液製膜方法により製造されている。溶液製膜方法は、メルトキャスト法などの他の製造方法と比較して、光学的性質や物性が優れたフイルムを製造することができる。溶液製膜方法は、ポリマーを溶剤(主に有機溶剤)に溶解してドープを調製した後に、このドープをバンドやドラムなどの支持体に流延して製膜する方法である。なお、フイルムを乾燥する際に、ドープから揮発した溶剤ガスを、環境保全あるいは経済性の観点から溶剤回収ラインにより液化させて回収している。また、溶剤回収ラインに用いられる溶剤タンクなどには、一般に安全弁が設けられている。安全弁はタンクの内圧が上がったときには、大気中に溶剤ガスを放出することでタンク内部の圧力を低下させ、また内圧が上がったときには大気を吸引し、大気圧に戻すことでタンクの破損を防止するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この安全弁から溶剤ガスを従来は大気中に放出していたので、フイルム製膜ラインから回収した溶剤の一部が漏洩するために溶剤回収量に損失を生じていた。また、放出された溶剤ガスが希薄濃度であっても、製膜ラインは連続運転しているために、溶剤ガスの排出量が増加し、環境保全の点からも問題が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、ドープを構成している溶剤から揮発した溶剤ガスを大気中に漏洩することがないようにして、溶剤の回収効率を向上させた溶液製膜方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、ガス抜き配管中に溶剤ガスが液化凝縮しても、ガス抜き配管中に液体が溜まらない溶液製膜方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶液製膜方法は、ポリマーを溶剤に溶解させたドープを流延してフイルムを製膜する製膜ラインを用いた溶液製膜方法において、前記フイルムを製膜する際に揮発した前記溶剤を、溶剤回収ラインを用いて液体として容器に回収する際に、前記容器と前記溶剤回収ライン中の負圧の箇所とを接続したガス抜き配管を用いて、前記容器中の溶剤から揮発したガスを、前記溶剤回収ラインに戻している。これにより大気中への溶剤の漏洩がなくなる。また、前記ガス抜き配管が、前記溶剤回収ラインから前記容器に向けて下り勾配に取り付けられていることが好ましい。
【0007】
前記ポリマーが、セルロースアシレートであることが好ましく、前記セルロースアシレートがセルローストリアセテートであることがより好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
[ポリマー]
本発明に用いられるポリマーは特に限定されない。しかしながら、セルロースアシレートを用いることが好ましく、特に、セルロースアセテートを使用することが好ましい。さらに、このセルロースアセテートの中では、その平均酢化度が57.5〜62.5%のセルローストリアセテートを使用することが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。本発明では、セルロースアシレート粒子を使用し、使用する粒子の90重量%以上が0.1ないし4mmの粒子径、好ましくは1ないし4mmを有する。また、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の粒子が0.1ないし4mmの粒子径を有する。さらに、使用する粒子の50重量%以上が2ないし3mmの粒子径を有することが好ましい。より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の粒子が2ないし3mmの粒子径を有する。また、セルロースアシレートの粒子形状は、なるべく球に近い形状を有することが好ましい。
【0009】
[溶剤]
本発明に用いられる溶剤としては、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などが挙げられるが、特に限定されるものではない。溶剤は、市販品の純度であれば、特に制限される要因はない。溶剤は、単独(100重量%)で使用しても良いし、炭素数1ないし6のハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類アルコール類を混合して使用してもよい。使用できる溶剤の例には、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,メチル−t−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)などが挙げられる。
【0010】
[添加剤]
本発明で用いられる添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤などがある。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他公知のいずれの可塑剤をも用いることができる。
【0011】
使用できる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物及びその他公知のいずれの紫外線吸収剤をも用いることができる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。さらに必要に応じて種々の添加剤、例えば、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤など用いることができる。
【0012】
[ドープの調製]
前記ポリマー及び添加剤を前記溶剤に仕込んだ後に、公知のいずれかの溶解方法により溶解させドープを調製する。このドープは濾過により異物を除去することが一般的である。濾過には濾紙、濾布、不織布、金属メッシュ、焼結金属、多孔板などの公知の各種濾材を用いることが可能である。濾過することにより、ドープ中の異物,未溶解物を除去することができ、製膜されたフイルム中の異物による欠陥を軽減することができる。
【0013】
また、一度溶解したドープを加熱して、さらに溶解度の向上を図ることもできる。加熱には静置したタンク内で撹拌しながら加熱する方法、多管式、静止型混合器付きジャケット配管等の各種熱交換器を用いてドープを移送しながら加熱する方法などがある。また、加熱工程の後に冷却工程を設け、装置の内部を加圧することにより、ドープの沸点以上の温度に加熱することも可能である。これらの加熱処理を施すことにより、微小な未溶解物を完全に溶解することができ、ドープの濾過の負荷軽減や、製膜されたフイルムの異物の減少をはかることができる。
【0014】
[溶液製膜方法]
溶液製膜方法は、ポリマーにTACを用いた例を示して説明するが、本発明に係る溶液製膜方法に用いられるポリマーはTACに限定されるものではない。図1には、本発明に係る溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインを示す。フイルム製膜ライン9は、仕込みゾーン10とバンドゾーン11と乾燥ゾーン12とに分けられる。仕込みゾーン10は、仕込みタンク14とポンプ15とフィルタ16とを備えている。また、仕込みタンク14には、撹拌翼17によりドープ13を均一に調製する。調製されたドープ13は、ポンプ15とフィルタ16とを介してバンドゾーン11の流延ダイ20に送られる。ドープ13は、前述したドープの調製方法により製造することが好ましい。例えば、TAC粒子と溶剤とを混合し、TAC粒子を溶剤により膨潤させた後に、可塑剤及び紫外線吸収剤などの添加剤を混合してドープを調製する。本発明において、ドープを調製する溶剤には、市販品の溶剤にフイルム製膜ライン9から回収された溶剤を混合して使用することができる。溶剤の回収については、後述する。
【0015】
バンドゾーン11には、ローラ21、22に掛け渡された流延バンド23が設けられており、この流延バンド23は、図示しない駆動装置により回転する。流延バンド23の上に流延ダイ20が設けられている。ドープ13は、仕込みタンク14からポンプ15により送液され、フィルタ16で不純物が除去された後に流延ダイ20に送られる。流延ダイ20からドープ13を流延バンド23上に流延する。ドープ13は流延バンド23で搬送されながら徐々に乾燥することで自己支持性を有し、剥ぎ取りローラ24によって流延バンド23から剥ぎ取られフイルム25が形成される。さらに、フイルム25は、テンタ26により所定の幅に引き伸ばされ、搬送されながら乾燥される。
【0016】
バンドゾーン11内では、ドープ13中の溶剤は、揮発してガスとなって熱交換器40に送り出される。バンドゾーン11内では、乾燥初期であるため多量の溶剤が揮発するため、発生したガスには多量の揮発した有機溶剤を含んでいる。このガスは凝縮器41で凝縮液化され、液体は、回収溶剤42として凝縮回収される。また、液化しなかったガスは、送風機43により熱交換器40に送られた後に加熱器44で加熱されて、再度バンドゾーン11に送られ、乾燥風として再利用される。なお、周知のようにバンドゾーン11内は必要に応じて隔壁により複数の室に分けられており、これら各室に対してガスの排出及び乾燥用ガスの送出が行なわれる。このバンドゾーン11から発生したガスを回収するラインについて、以下、第1の溶剤回収ライン30と称する。
【0017】
テンタ26から乾燥ゾーン12に送られたフイルム25は、乾燥ゾーン12内で、複数のローラ27に巻き掛けられて搬送されながら乾燥する。乾燥後のフイルム25は、巻き取り機28に巻き取られる。乾燥ゾーン12内の温度は、50〜150℃の範囲に制御されていることが、フイルム25の均一な乾燥のために好ましい。この乾燥ゾーン12でも、後に説明する第2の溶剤回収ライン31によって溶剤が回収され、乾燥風が循環される。
【0018】
フイルム25は、偏光板保護膜などの光学用フイルムとして用いることができる。この偏光板保護膜をポリビニルアルコールなどから形成された偏光膜の両面に貼付することで偏光板を形成することができる。さらに、前記フイルム上に光学補償シートを貼付した光学補償フイルム、防眩層をフイルム上に形成した反射防止膜などの光機能性膜として用いることもできる。これら製品からは、液晶表示装置の一部である液晶表示板を構成することも可能である。
【0019】
図1では、1種類のドープを単層で流延した形態を示したが、本発明の溶液製膜方法は図示した形態に限定されるものではない。例えば、流延ダイの上流側にフィードブロックを取り付け、多数のドープをそのフィードブロックに送り込み、フィードブロック内で各ドープを合流させて流延する共流延法などにも適用することが可能である。また、図1では流延用の支持体に流延ベルトを用いたが、本発明は図示した形態に限定されずに、例えば回転ドラム上にドープを流延する溶液製膜方法にも適用することが可能である。
【0020】
乾燥ゾーン12内で揮発した溶剤を含み熱風であるガス(以下、熱風ガスとも称する)50は、第2の溶剤回収ライン31を用いて処理される。熱交換器51に送り込まれた後に、送風機52により開放チャンバ53に送風される。図2に示すように、開放チャンバ53には、大気54を吸引する開口部53aが設けられており、常にその開口部53aから大気54を吸引することが可能な構造になっている。また、開口部53aはフィルタ83が取り付けられている。さらに開放チャンバ53内にはじゃま板53bが設けられており、このじゃま板53bによって吸引する大気54の量が調整される。そして、送風機55により開放チャンバ53からガス50と大気54とを吸引することにより、開放チャンバ53の下流側(送風機55側)を大気圧より低い圧力(負圧)にすることが可能となる。これら送風機52、55の間に後述するガス抜き配管73、84、85が取り付けられている。このガス抜き配管については、後に詳細に説明する。なお、本発明において用いられる開放チャンバの形態は、図示したものに限定されず、公知のいずれの開放チャンバをも用いることもできる。また、溶剤回収ライン30、31の一部を負圧状態にする装置も開放チャンバに限定されずに、ラインの一部を負圧にする機能を有する送風ファンなどを用いることも可能である。
【0021】
開放チャンバ53の下流側を負圧にするために、上流側の送風機52と下流側の送風機55とは、その送風能力が異なっているものを選択する必要がある。すなわち、開放チャンバ54にガス50を送風する送風機52よりも、ガス50と大気54とを吸引する下流側の送風機55の送風能力が大きいことが必要である。下流側に取り付けられた送風機55の気体の吐出風量が、100〜200Nm3 /min(なお、「N」は、気体のノーマル状態、0℃、1気圧を意味している)のものを用いた場合に、上流側に取り付けられた送風機52の気体の吐出風量が80〜170Nm3 /minのものを用いることが好ましい。しかしながら、本発明において、それら送風機の送風能力は、下流側の送風機の送風能力が、上流側の送風機の送風能力よりも大きければ、前述した範囲に限定されるものではない。
【0022】
また、開放チャンバ53と送風機55との間には、ガス50を冷却するための冷却器56、及びガス乾燥工程のための前処理活性炭57、除湿器58が取り付けられているが、これらは適宜省略してもよい。
【0023】
さらに、ガス50は、送風機55により吸着器59、60、61のいずれかに切替バルブ(図示しない)により選択的に送られ、ガス50中に含まれていた揮発した溶剤が吸着器59、60、61によって吸着される。また、吸着処理後のガスは、温度調節器62により所定の温度に調節された後に、送風機63により熱交換器51に送り込まれる。そして、前述した熱風ガス50と熱交換がなされ加熱された後に、さらに加熱器64によって所定の温度まで加熱され、再度、乾燥ゾーン12内に送り込まれ、乾燥風として再利用される。
【0024】
吸着器59、60、61に吸着された揮発溶剤成分は、脱着ガス70により脱着し、凝縮器71へ送り出される。脱着ガス70は凝縮器71で凝縮液化され、液体は回収溶剤として回収溶剤タンク72に送液される。また、液化しないガス成分は、再度、送風機55に送り出され、吸着器59、60、61に送り込まれ、吸着回収される。本実施形態では3基の吸着器59、60、61を用いて、これらの内の2基で吸着処理を行ない、残りの1基で脱着処理を行なっている。以下、吸着物の脱着処理が終了した時点で、それを吸着器として機能させ、吸着性が低下した吸着器を次に脱着処理する。この操作を繰り返すことで、吸着物の吸着及び脱着を連続的に行なうことができる。しかし、吸着及び脱着処理の形態は前述した方法に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0025】
回収溶剤タンク72には、回収された溶剤が揮発して発生したガスを放出するためにガス抜き配管73が取り付けられている。また、ガス抜き配管73の他端は、前述した開放チャンバ53と送風機55との間の負圧になっている箇所に接続されている。回収溶剤タンク72内の溶剤が揮発して発生したガスは、開放チャンバ53と送風機55との間が負圧のために、容易にガス抜き配管73を通り回収溶剤タンク72から排出され、送風機55に吸引される。ここがもし正圧ならば、タンク72内のガスが溶剤回収ライン31に送られず、タンク72の内圧が上がってしまい、タンク72の破損などの問題が生じるおそれがある。しかしながら、本発明では開放チャンバ53と送風機55との間を負圧にすることにより、他の装置などを用いることなく、タンク72から発生したガスを溶剤回収ライン31に戻すことが可能となる。この揮発した溶剤ガスは、再度前述した吸着器59、60、61に吸着した後に脱着ガス70により脱着する。脱着したガスは、凝縮器71により再度液化して溶剤として凝縮回収される。この液化した溶剤は、再度回収溶剤タンク72に送液される。このようにして、溶剤から揮発して発生したガスが大気中に漏洩することが阻止される。
【0026】
回収溶剤タンク72内の回収溶剤は、バルブ74の開閉操作を適宜行なうことにより溶剤処理装置75に送られる。回収溶剤は、溶剤処理装置75により精製溶剤76と廃液77とに分離される。そして、廃液77は、廃棄処理される。なお、本発明において溶剤処理装置75には、主に蒸留装置が好ましく用いられる。精製溶剤76は、前述した回収溶剤42と共に、調製器78に送り込まれ撹拌された後に仕込みタンク14に送られて、ドープ調製溶剤として再利用される。
【0027】
前述したガス抜き配管73の実施形態について図2を用いてより詳細に説明する。ガス抜き配管73は、開放チャンバ53の下流側の配管80から溶剤回収タンク72に向かって緩やかな下り勾配を持たせて取り付けられている。これにより、回収溶剤タンク72内で揮発したガス82が排出され、いわゆるガス抜きが行なわれる。なお、ガス抜き配管73は、下り勾配を持たせているため、ガス82がガス抜き配管73内で液化しても、回収溶剤タンク72内に流下してガス抜き配管73内に溜まることがなくなる。
【0028】
ガス82が、ガス抜き配管73内により溜まり難くするために、ガス抜き配管73にループ部が存在しないように取り付けることが好ましい。ガス抜き配管73にループ部が存在すると、ガス82がガス抜き配管73内で液化して回収溶剤タンク72に戻る際に、ループ部に液溜まりが生じて、ガス抜き配管73の閉塞を招くおそれが生じる場合があるからである。なお、ガス抜き配管73を垂直部73aと傾斜部73bとを組み合わせて構成しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば傾斜部のみから構成してもよい。
【0029】
図2では、ガス抜き配管73を回収溶剤タンク72に接続した例を図示して説明した。しかしながら、本発明においてガス抜き配管を接続するタンクは前述したものに限定されるものではない。図1に示すように精製溶剤タンク76、回収溶剤タンク42と溶剤回収ライン31中の負圧の部分(図1では開放チャンバ53から送風機55の間)にそれぞれガス抜き配管84、85を接続することで、それぞれのタンク中の溶剤が揮発してガスが発生しても、そのガスが大気中へ漏洩することが阻止される。この場合においても、それぞれのガス抜き配管84、85の形態は、図2に示したガス抜き配管73と同様の構成のものを用いることが好ましいが、図2に示したものに限定されるものではない。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0031】
実験のため、図1に示した回収溶剤タンク72に換えて、容積550m3 かつ定圧調整装置(1気圧)付きの実験用タンクを用いた。このタンクの容積は定圧調整装置により可変し、その内部は常に約1気圧に保たれているので、ガス抜き配管73は取付けなかった。実験用タンクに、ドープ13を調製し、その後に乾燥ゾーン12から第2の溶剤回収ライン31により回収した液体の塩化メチレン275m3 (約36万kg)を保存した。なお、この際、タンクが設置してある場所の温度は25℃であったので、タンク内の空間(275m3 )の空気には、塩化メチレンが気液平衡により気体として約500kg含まれている。
【0032】
一晩(12時間)、実験用タンクを放置したところ、タンクの設置してある場所の温度は、30℃に上昇していた。この間に、塩化メチレンは、温度上昇による気体の容積増量と、気液平衡における飽和蒸気圧が高くなり、気化量は、約870kgまで増大し、塩化メチレンの気化量は、約370kg増大した。タンク内の空気も温度上昇により、気体としての体積は増大していた。そのため、実験用タンクの定圧調整装置が稼動し、タンク内の圧力を1気圧に保つため、タンクの有効容積は、約650m3 まで増大していた。
【0033】
以上説明したように、タンク中に回収された溶剤は、常に気液平衡により若干タンク内の空気中に含まれている。また、温度上昇とともに、飽和蒸気圧が高くなるために、空気中に存在する気化した溶剤の量も増大する。そこで、本発明では、前述した定圧調整装置と同じ機能を有するガス抜き配管73が取付けられた回収溶剤タンク72を用いている。このため、大気中に溶剤が排出される前にガス抜き配管72を通り気化した溶剤を含む空気が吸引され、その空気を大気中に放出することを防止することが可能となった。例えば、前記実験では、少なくとも数100kgの塩化メチレンを含んだ空気が大気中に放出されることを防止することが可能であった。なお、空気の吸引量は、ガス抜き配管73中で断面積既知の場所で、汎用の風速計の測定値から計算して求めた。さらに、気化した溶剤の量は、前記風速計を取り付けた位置で、その空気を一部サンプリングしてガスクロマトグラフで分析を行い、予め作成してある検量線から算出した。
【0034】
また、本発明の溶液製膜方法によれば、回収溶剤タンク72内の圧力もほぼ一定圧に保つことが可能となるため、タンク設置場所が高温になり、溶剤が急激に気化することが原因であるタンクの爆発などの事故を防ぐことが可能となる。また、ガス抜き配管を下り勾配で取り付けることにより、ガス抜き配管中にガスが液化して配管を閉塞することを防ぐことも可能となる。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明の溶液製膜方法によれば、ポリマーを溶剤に溶解させたドープを流延してフイルムを製膜する製膜ラインを用いた溶液製膜方法において、前記フイルムを製膜する際に揮発した前記溶剤を、溶剤回収ラインを用いて液体として容器に回収する際に、前記容器と前記溶剤回収ライン中の負圧の箇所とを接続したガス抜き配管を用いて、前記容器中の溶剤から揮発したガスを、前記溶剤回収ラインに戻すことによって、大気中への溶剤の漏洩が阻止され、溶剤の損失が抑制される。さらに、有害物質である溶剤の大気中への放出が抑制されるため、環境保全の点からも有利な製膜方法である。
【0036】
また、前記ガス抜き配管が、前記溶剤回収ラインから前記容器に向けて下り勾配に取り付けられていることで、前記配管内に前記溶剤の液溜まりが生じることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶液製膜方法に用いられるフイルム製膜ラインの概略図である。
【図2】図1に示すガス抜き配管の接続概略図である。
【符号の説明】
9 フイルム製膜ライン
13 ドープ
20 流延ダイ
25 フイルム
30、31 溶剤回収ライン
42、72 回収溶剤タンク
52、55 送風機
53 開放チャンバ
73、84、85 ガス抜き配管
76 精製溶剤タンク

Claims (3)

  1. ポリマーを溶剤に溶解させたドープを流延してフイルムを製膜する製膜ラインを用いた溶液製膜方法において、
    前記フイルムを製膜する際に揮発した前記溶剤を、溶剤回収ラインを用いて液体として容器に回収する際に、
    前記容器と前記溶剤回収ライン中の負圧の箇所とを接続したガス抜き配管を用いて、前記容器中の溶剤が揮発したガスを、前記溶剤回収ラインに戻すことを特徴とする溶液製膜方法。
  2. 前記ガス抜き配管が、
    前記溶剤回収ラインから前記容器に向けて下り勾配に取り付けられているものであることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。
  3. 前記ポリマーが、セルロースアシレートであることを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
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