JP3899262B2 - 撮像装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、撮像装置に係わり、特に、手振れを検出する撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の振動検出装置として、撮像装置内の任意の軸に対応して各々設けられ、対応する軸廻りの撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する角速度センサなどを用いるものが知られている。一般的に、このような角速度センサ自体は、振動に対して微少な電圧しか出力しないため、増幅回路を用いて必要な電圧を出力するような構成をとっていた。
【0003】
上記増幅回路の増幅率は、補正可能な最大振れ量と角速度センサの感度とから振動信号の振幅範囲を求める。そして、求めた振幅範囲と、A/D変換器などの振動信号の検知手段のダイナミックレンジとに基づき、決定している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図8は、横薄型(オペラグラス型)の撮像装置を数人のモニターが撮影したときの振れ角をプロットしたグラフで、実際に撮影した時の手振れの様子を示している。なお、上記撮像装置は、図9に示すように、光学系2開口部が設けられている面と直交する面上に、撮像指示を与えるレリーズボタン4が設けられている。横軸は時間、縦軸は振れ角を示し、図8(A)は、図9に示すように、レリーズボタン4の操作方向と一致するY軸廻りの振れ角、図8(B)は、撮像装置1の光学系2の光軸方向であるZ軸及び上記Y軸に直交するX軸廻りの振れ角を示している。同図から、X軸廻り、すなわち鉛直方向の振れ角が明らかに大きいことが分かる。このように、撮像装置内の軸には、大きな振れが生じる傾向にある軸もあれば、小さな振れしか生じない傾向にある軸もある。
【0005】
しかしながら、従来の振動検出装置において、増幅回路は、対応する軸に関係なく、全角速度センサに対して同一のものが用いられている。このため、大きな振れが生じる傾向にある軸に対応する増幅回路は、検知手段のダイナミックレンジ全体を使用する、比較的大きい増幅振動信号を常に出力している。一方、小さな振れしか生じない傾向にある軸に対応する増幅回路は、検知手段のダイナミックレンジの一部しか使用しない、比較的に小さい増幅振動信号を常に出力している。このため、小さな振れしか生じない傾向にある軸廻りの振動信号ほど、S/N比が悪くなるという問題があった。
【0006】
また、撮影者によって常に大きな振れを起こす人もいれば、あまり振れを起こさない人もいる。しかしながら、従来の振動検出装置においては、増幅回路は、振れ量に関係なく、その増幅率が固定されている。このため、常に大きな振れを起こす人が撮影したときは、増幅回路からは、検知手段のダイナミックレンジ全体を使用する、常に比較的大きい増幅振動信号を出力される。一方、小さな振れしか起こさない人が撮影したときは、増幅回路からは、検知手段のダイナミックレンジの一部しか使用しない、比較的小さな増幅振動信号しか出力されない。このため、小さな振れしか生じない傾向にある人が撮影するほど、そのS/N比が悪くなるという問題があった。
【0007】
さらに、手振れ補正は、検出された手振れ量に応じて手振れを打消す方向に撮像装置の構成要素の一部を駆動する補正駆動機構を備えることを基本としているが、この補正駆動機構には補正レンズ系を移動させるもの、可変頂角プリズムを駆動制御するもの、反射板を駆動制御するもの、CCD等の固体撮像素子を駆動制御するもの等がある。
【0008】
上述した手振れ補正を行うものであって、上記構成要素の一部の駆動量を、検出した振れ量だけでなく、撮像光学系の焦点距離にも基づいて、決定するものが特開2000−206580号公報に開示されている。この特開2000−206580号公報の手振れ補正付き撮像装置は、焦点距離が長くなるに従って、駆動量を大きくしている。通常、採用する補正駆動系によって最大駆動量は決定されるので、焦点距離が長くなるに従って、補正可能な最大振れ量が小さくなる。
【0009】
しかしながら、従来の振動検出装置においては、増幅回路は、焦点距離に関係なく、その増幅率が固定されている。このため、焦点距離が長くなるほど、その焦点距離における補正可能な最大振れ量に応じた振動信号の増幅信号が小さくなり、S/N比が悪くなると言う問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、常に高い精度で撮像装置の振れ量を検出することができる撮像装置を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、撮像装置に備えられている撮影開始を指示する操作が行われるレリーズボタンの操作方向と一致する第1の軸とは異なる方向の軸に対する軸回りの前記撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する一の振動検出手段と、前記第1の軸に対する軸回りの前記撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する他の振動検出手段と、前記一の振動検出手段と前記他の振動検出手段とが出力する各振動信号をそれぞれ増幅する複数の増幅手段とを備え、前記他の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率は、前記一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率よりも大きい値に予め定められていることを特徴とする撮像装置に存する。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、一の振動検出手段が、撮像装置に備えられている撮影開始を指示する操作が行われるレリーズボタンの操作方向と一致する第1の軸とは異なる方向の軸に対する軸回りの撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する。
【0013】
他の振動検出手段が、第1の軸に対する軸回りの撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する。
【0014】
複数の増幅手段が、一の振動検出手段と他の振動検出手段とが出力する各振動信号をそれぞれ増幅する。
【0015】
他の振動検出手段が出力する振動信号を増幅する増幅手段の増幅率は、一の振動検出手段が出力する振動信号を増幅する増幅手段の増幅率よりも大きい値に予め定められている。
【0016】
従って、小さな振れが発生する第1の軸に対応する増幅手段の増幅率を、大きな振れが発生する第1の軸とは異なる方向の軸に対応する増幅手段の増幅率より大きな値に定めることにより、小さな振動信号しか出力さない場合であっても、大きな増幅率を有する増幅手段によって、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができる。
【0017】
請求項記載の発明は、請求項1記載の撮像装置であって、前記複数の増幅手段は、当該増幅率が可変であり、前記振動信号の大きさに基づき、前記増幅手段の増幅率を変更する増幅率変更手段をさらに備えることを特徴とする撮像装置に存する。
【0018】
請求項記載の発明によれば、複数の増幅手段は、その増幅率が可変である。増幅率変更手段が、振動信号の大きさに基づき、増幅手段の増幅率を変更する。
【0019】
従って、振動検出手段から出力される振動信号の大きさに応じて、増幅変更手段が増幅手段の増幅率を変更することにより、振動検出手段から、小さい振動信号が出力されても、増幅率が大きな値に変更された増幅手段により、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができる。
【0020】
請求項記載の発明は、請求項2記載の撮像装置であって、前記増幅率変更手段は、前記振動信号の大きさが小さくなるに従って、前記増幅手段の増幅率が大きくなる方向に変更することを特徴とする撮像装置に存する。
【0021】
請求項記載の発明によれば、増幅率変更手段は、振動信号の大きさが小さくなるに従って、増幅手段の増幅率が大きくなる方向に変更する。従って、小さい振動信号が出力されても、増幅率が大きな値に変更された増幅手段により、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができる。
【0022】
請求項記載の発明は、請求項3記載の撮像装置であって、前記増幅手段により増幅された前記振動信号を検知する検知手段をさらに備え、前記増幅率変更手段は、前記検知された振動信号の大きさが、予め定めた閾値以下となる毎に、当該閾値となる大きさの前記振幅信号が、前記検知手段の検知可能な最大値より小さい値に増幅されるように、前記増幅率を変更することを特徴とする撮像装置に存する。
【0023】
請求項記載の発明によれば、検知手段が、増幅手段により増幅された振動信号を検知する。増幅率変更手段が、検知された振動信号の大きさが、予め定めた閾値以下となる毎に、当該閾値となる大きさの振幅信号が、検知手段の検知可能な最大値より小さい値に増幅されるように、増幅率を変更する。従って、大きさが閾値となる振動信号が、検知手段の検知可能な最大値より小さい値に増幅されるように、増幅率を変更することにより、検知手段により検知できない程、大きい値に増幅されることがない。
【0024】
請求項記載の発明は、請求項2記載の撮像装置であって、前記増幅率変更手段は、前記撮像装置内に備えられた光学系の焦点距離に基づいて、前記増幅手段の増幅率を変更することを特徴とする撮像装置に存する。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、増幅率変更手段が、撮像装置内に備えられた光学系の焦点距離に基づいて、増幅手段の増幅率を変更する。
【0026】
従って、短焦点距離時は増幅器の増幅率を長焦点距離より下げたりするなど、焦点距離に応じて増幅率を変えることにより、長焦点距離の補正可能な最大の振れ以上の振れが生じても、短焦点距離時には増幅率を下げているため、その振れに応じた振動信号の増幅信号が飽和することがなく、検知することができるようになるため、補正駆動できるようになり補正機構の最大補正駆動量も活用できるようになる。
【0027】
請求項記載の発明は、請求項5記載の撮像装置であって、前記増幅率変更手段は、前記焦点距離が遠ざかるに従って、前記増幅手段の増幅率が大きくなる方向に変更することを特徴とする撮像装置に存する。
【0028】
請求項記載の発明によれば、増幅率変更手段が、焦点距離が遠ざかるに従って、増幅手段の増幅率が大きくなる方向に変更する。従って、短焦点距離時は増幅器の増幅率を長焦点距離より下げたりすることにより、長焦点距離の補正可能な最大の振れ以上の振れが生じても、短焦点距離時には増幅率を下げているため、その振れに応じた振動信号の増幅信号が飽和することがなく、検知することができるようになるため、補正駆動できるようになり補正機構の最大補正駆動量も活用できるようになる。
【0029】
請求項記載の発明は、請求項2〜6何れか1項記載の撮像装置であって、前記増幅率変更手段が、前記他の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最大値は、前記一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最大値より大きい、及び/若しくは、前記他の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する前記増幅手段の増幅率の可変範囲における最小値は、前記一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する前記の増幅手段の増幅率の可変範囲における最小値より高くなるように、前記複数の増幅手段の増幅率を変更することを特徴とする撮像装置に存する。
【0030】
請求項7記載の発明によれば、他の振動検出手段が出力する振動信号を増幅する幅手段の増幅率の可変範囲における最大値を、一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最大値より大きくし、及び/若しくは、他の振動検出手段が出力する振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最小値を、一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最小値より高くする。
【0031】
って、各軸に対応した最適な可変範囲を持つ増幅手段を用いることができ、必要のない範囲まで増幅率の可変可能な増幅手段を用いる必要がない。
【0032】
請求項記載の発明は、請求項2〜7何れか1項記載の撮像装置であって、前記増幅手段により増幅された前記振動信号と、前記増幅率変更手段により変更された前記増幅率とに基づき、振れ量を演算する演算手段をさらに備えることを特徴とする撮像装置に存する。
【0033】
請求項記載の発明によれば、演算手段が、増幅手段により増幅された振動信号と、増幅率変更手段により変更された増幅率とに基づき、振れ量を演算する。従って、正確に振れ量を演算することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
第1実施形態
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の振動検出装置を組み込んだ撮像装置の一実施の形態を示す図である。
図中、符号5、6は角速度センサ(=振動検出手段)、符号8は角速度センサ5、6からの振動信号を増幅する増幅部、符号13はCCD等の撮像素子7を含む撮像部を示す。
【0035】
角速度センサ5(=一の振動検出手段)は、撮像装置のX軸廻りの振れ角に応じた振動信号を出力し、角速度センサ6(=他の振動検出手段)は、撮影装置のY軸廻りの振れ角に応じた振動信号を出力する。なお、Y軸は、撮像開始指示を与えるレリーズボタンの操作方向と一致する軸であり、X軸は、撮像素子7に光学像を結像する光学系2の光軸方向及び上記操作方向と直交する軸である。増幅部8によって増幅された各振動信号は、演算処理部9に送られる。
【0036】
演算処理部9は、上記増幅された振動信号を入力し、ディジタル値に変換するA/D変換器9b(=検知手段)、プログラムに従って、X軸及びY軸廻りの振れ角に応じた手振れ補正量を算出する処理などを行うCPU9c、CPU9cが行うプログラムなどを格納した読出専用メモリであるROM9d、CPU9cでの各種の処理過程で利用するワークエリアなどを有する読出書込自在のメモリであるRAM9e及びCPU9cが算出した手振れ補正量を出力するための出力インタフェース(以下、出力I/Fと略記する)9fとを有し、これらが図示しないバスラインによって相互接続されている。
【0037】
上記演算処理部9から出力される手振れ補正量は駆動制御部10に送られ、駆動制御部10は、この手振れ補正量に応じて、補正部11、12を駆動させる。この結果、撮像素子7は、手振れを軽減させる方向へ変位されることになる。
【0038】
補正部11はX軸廻り方向の振れを補正する方向へ駆動、また補正部12はY軸廻り方向の振れを補正する方向へ駆動される。この一連の手振れ補正動作は露光中に繰り返し行われ、手振れ状態で露光されても手振れのない画像が撮像部13から得られる。尚、検知手段としてのAD変換器9bが演算処理部9に含まれるものとしたが、別途外部に設けてもその効果は同じである。
【0039】
次に、上述した増幅部8の具体的な回路構成について、図2を参照して説明する。同図に示すように、増幅部8は、角速度センサ5及び6の出力である振動信号に含まれるドリフト成分を除去するハイパスフィルタ81X及び81Y、振動信号を差動増幅する増幅回路82X(一の増幅手段)及び増幅回路82Y(=他の増幅手段)から構成されている。尚、図4の角速度センサ5及び6のVoutは振動信号の出力端子、Vrefは角速度センサ5及び6に供給される電源電圧の約1/2の電圧を発生し、差動増幅用の基準電圧を出力する端子である。
【0040】
X軸廻りの振動信号を増幅する増幅回路82Xは、差動増幅回路OP10、ゲイン設定抵抗R11、帰還抵抗R12、この帰還抵抗R12と伴にローパスフィルタを構成するフィルタコンデンサC11から構成され、その増幅率は以下に示す式(1)で表される。
増幅率=1+R12/R11 …(1)
【0041】
Y軸廻りの振動信号を増幅する増幅回路82Yも、増幅回路82Xと同様に、差動増幅回路OP00、ゲイン設定抵抗R01、帰還抵抗R02、この帰還抵抗R02と伴にローパスフィルタを構成するフィルタコンデンサC01から構成され、その増幅率は以下に示す式(2)で表される。
増幅率=1+R02/R01 …(2)
【0042】
従来からこの増幅回路82X及び82Yは、同一特性の回路構成が取られていた。すなわち、R11=R01、R12=R02、故にX軸廻り増幅率(1+R12/R11)=Y軸廻り増幅率(1+R02/R01)とされていた。
【0043】
本願では、図8に示すように、撮像装置のレリーズボタンの操作に起因する手振れ角が大きいことに着目し、レリーズボタンの操作方向及び光学系2の光軸方向と直交する軸(X軸)以外の軸(Y軸)廻りの増幅率を、レリーズボタンの操作方向及び光学系2の光軸方向と直交する軸 (X軸)廻りの増幅率より高くしている。このようにすることにより、角速度センサ6のように、小さな振れしか生じない傾向にある他の軸(Y軸廻り)に対応して設けられ、小さな振動信号しか出力さない場合であっても、大きな増幅率を有する増幅回路82Yによって、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができる。
【0044】
増幅回路82X及び82Y中の各抵抗は、前記増幅率の式よりR12/R11<R02/R01となるが、R02とR12はローパスフィルタの一部を構成する為に同一抵抗値が好ましく、R11>R01とするのが好ましい。
【0045】
なお、上述した第1実施形態においては、X軸廻り及びY軸廻りについて述べたが、これらの軸に限らず、撮像装置内の任意の軸であればなんでもよい。この場合、小さな振れが発生する軸に対応する増幅回路の増幅率を、大きな振れが発生する軸に対応する増幅回路の増幅率より大きな値に定めたりして、各軸がどの程度の振れが生じる傾向にあるか事前に計測し、その傾向に応じた各々異なる値に各増幅手段の増幅率を定めれば、角速度センサが、小さな振れしか生じない傾向にある軸に対応して設けられ、小さな振動信号しか出力さない場合であっても、大きな増幅率を有する増幅回路によって、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができる。
【0046】
第2実施形態
ところで、X軸廻りの通常の手振れ量、すなわち角速度センサ5の出力である振動信号は1mV程度の振幅レベルを有し、この信号を増幅回路82Xで約400倍に増幅し、基準電圧Vrefを振幅中心した0V〜3.3Vの振幅範囲を有する増幅信号として演算処理部9内のA/D変換器9bに入力している。通常このA/D変換器9bは3.3Vの電源供給を受け、3.3Vのダイナミックレンジを有しており、通常の手振れ量に対しては約1/8のダイナミックレンジしか活用していないことになる。
【0047】
これは、図8からも理解されるように撮影者でその振れ特性が大きく変わること、補正量を越えた振れに対してもその挙動を監視するために上記増幅率やダイナミックレンジ範囲に設定している。その為、通常の手振れ量ではA/D変換器9bや増幅回路82X及び82Yのダイナミックレンジの一部のみ使用したS/Nの悪い検知系を構成することになり、検知精度を向上する為に、検知精度の高い高価なAD変換器9bが求められた。
【0048】
本願は増幅された振動信号の振幅レベルで増幅回路の増幅率を変化させることで、検知精度の低いA/D変換器9bでも、ダイナミックレンジを有効活用したS/Nの良い検知系を構成するものである。
図3は説明の簡略化の為、2段階の可変増幅率を有する増幅部8の具体的な回路構成を示す。図2で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し、その説明も省略する。
【0049】
03及びR13は増幅率を変更する為に、抵抗R01及びR11に並列に接続されたゲイン設定抵抗で、ここではR03=R01及びR13=R11、すなわち増幅率が2倍に変更可能な設定としている。S00及びS10は増幅率を変更する為のアナログスイッチである。アナログスイッチS00、S10のオンオフは、演算処理部9により制御される。ゲイン設定抵抗R03、R13と、アナログスイッチS00、S10と、演算処理部9とにより、請求項中の増幅率変更手段を構成する。
【0050】
図3の演算処理部9で実行される、振幅信号の振幅レベルで増幅回路の増幅率を変化させる動作について、CPU9cの処理手順を示す図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、操作者により手振れ補正撮影モードが選択されると、初期設定動作として増幅率の低い増幅率1を選択し、増幅率フラッグに1を書き込み(ステップS1)、アナログスイッチをオフさせる(ステップS2)。ステップ1及び2の動作は一義的に決めたもので、増幅率の高い増幅率2を選択し、アナログスイッチをオンさせてもその効果は同じである。
【0051】
次にレリーズボタンが押されるのを監視、待機するループ動作を継続する(ステップS3)。レリーズスイッチが押されるとA/D変換器9bから振動信号をデジタル化した検知電圧Wを読み取り(ステップS4)、次に検知電圧Wから1.65Vを減算し、その絶対値を求める|(W−1.65)|の演算を行い、結果をZレジスタに格納する(ステップS5)。この操作は、振動信号が基準電圧1.65Vを振幅中心とした信号であり、絶対値を取ることで振れ振幅を得るものである。
【0052】
次に現在の増幅率設定を確認し(ステップS6)、増幅率1の場合はステップS7へ、増幅率2の場合はステップS11へ移行する。増幅率の低いステップS7では、Zレジスタに格納された振れ振幅が0.4V以上であれば現状の増幅率を維持し、検知電圧W相当の振れ補正を行う補正駆動を行う(ステップS10)。振れ振幅が0.4V未満であれば、増幅率が低いと判断し、増幅率フラッグに2を書き込み(ステップS8)、アナログスイッチをオンさせた後(ステップS9)、補正駆動を行う(ステップS10)。
【0053】
増幅率の低いステップS11では、Zレジスタに格納された振れ振幅が1.2V以下であれば現状の増幅率を維持し、検知電圧Wの増幅率補正を行うステップS14に移行する。振れ振幅が1.2Vを超えている場合は、増幅率が高いと判断し、増幅率フラッグに1を書き込み(ステップS12)、アナログスイッチをオフさせた後(ステップS13)、検知電圧Wの増幅率補正を行うステップS14に移行する。
【0054】
ステップS14では、増幅率2が増幅率1の2倍の増幅率を有するため、振れ振幅を1/2倍する演算処理が行われ、補正された検知電圧W相当の振れ補正を行う補正駆動を行う(ステップS10)。以上動作は、露光中に繰り返し行われ、手振れ量が露光中に変化しても最適な増幅率で振れ量が検知される増幅率変換を行う。図4のフローチャートはX軸もしくはY軸廻りの片チャンネルの制御フローで、実際にはX軸及びY軸の独立した制御フローが並行もしくはシリーズに実行される。
【0055】
図5は、図4のZレジスタに格納された振れ振幅と増幅率の変化を模式的に示した図で、増幅率1では0.4Vが閾値となり、増幅率2では1.2V、増幅率1換算で0.6Vが閾値となって増幅率が切り換えられる。この0.4Vと0.6Vでヒステリシス特性を持たせ、増幅率変更時のチャッタリング動作や煩雑な変更の発生を防止している。説明の都合上、上記0.4Vや0.6V、1.2Vとしたが、本願はこの電圧値に囚われるものではない。
【0056】
以上のように、角速度センサ5及び6から出力される振動信号の大きさが小さくなるに従って、増幅回路82X及び82Yの増幅率を大きな値に変更することにより、角度センサ5及び6から、小さい振動信号が出力されても、増幅率が大きな値に変更された増幅回路82X及び82Yにより、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができる。
【0057】
また、上述した振動検出装置においては、増幅率1のとき、Zレジスタに格納された振れ振幅が0.4Vを下回ったとき、増幅率を2倍にしている。従って、増幅率1のとき振れ振幅が0.4Vに増幅された振動信号は、この増幅率の変更により、振れ振幅が0.4×2=0.8Vとなる振動信号に増幅される。つまり、増幅率が大きい値に変更されても、振動信号は、A/D変換器9bにより変換可能な最大振れ振幅1.65Vを越えて増幅されることがないようになっている。
【0058】
さらに、上述した振動検出装置において、増幅回路82X及び82Yを構成する抵抗は、R13=R11>R03=R01となるように設定されている。このように設定すれば、増幅回路82Yの増幅率の変動範囲における最高値(アナログスイッチS00をオンしたときの増幅率)及び最低値(アナログスイッチS00をオフしたときの増幅率)を、増幅回路82Xの増幅率の変動範囲における最高値(アナログスイッチS10をオンしたときの増幅率)及び最低値(アナログスイッチS10をオフしたときの増幅率)より高い値にすることができる。このようにすれば、各軸に対応した最適な可変範囲を持つ増幅回路を用いることができ、必要のない範囲まで増幅率の可変可能な増幅回路を用いる必要がない。
【0059】
第3実施形態
図6は、図3のゲイン設定抵抗R01、R03、R11、R13とアナログスイッチS00、S10を汎用のデジタルポテンショメータVR00、VR10に置き換え、ほぼリニアに増幅率が可変できる構成としたものである。演算処理部9からは、3線シリアル信号等で抵抗値設定のコマンドが送られる。
【0060】
図6において、増幅回路82X、82Yの最低増幅率は動作時の焦点距離値に比例するものとし、各焦点距離における増幅率の増減は、A/D変換器9bで検知された検知電圧Wで変更されるものとした。これは、特開2000−206580号公報で開示された、補正駆動量V、焦点距離f、振れ角θとした場合の関係式V=Kfθ(ここでKは変換係数)から、補正駆動量Vの最大値はほぼ一定であり、焦点距離が短い場合は大きな振れ角でも補正できるが、焦点距離が長い場合は小さな振れ角しか補正出来ないからである。
【0061】
すなわち、焦点距離が短い場合は増幅率を下げて、大きな振れ角をも検出できるようにする必要があるからである。焦点距離が長い場合も最低増幅率を下げてもかまわないが、振れを検知しても補正駆動範囲外の振れ角のため検知が無意味な上、最適増幅率への収束に制御の時間を必要とする。
【0062】
デジタルポテンショメータの商品例として、最大10kΩを256ステップで刻めるものがある。この場合、最低0Ωから約40Ωステップで最大10kΩまでその抵抗値を変更できるものである。
【0063】
このデジタルポテンショメータを用いた、ズーム比(焦点距離)と増幅率範囲、抵抗値の関係模式図を図7に示す。図7の領域A及びBが増幅率の可変範囲で、領域Cは増幅率の設定範囲外である。図7は光学系2の焦点距離(ズーム比)は 35mm 〜350mm(10倍ズーム)の例を示している。G10はズーム比10(最長焦点距離)時の最低増幅率で、従来技術での固定で設定される増幅率である。
【0064】
領域AはA/D変換器9bで検知された検知電圧Wの振幅レベルに応じて、増幅率を可変増大させたS/Nの改善領域である。領域Bは、ズーム比の減少に比例して最低増幅率を下げることで、A/D変換器9bによりA/D変換可能な振動信号を拡大させた領域である。ズーム比1の増幅率であるG1はズーム比10の増幅率であるG10の1/10に設定されている。領域Cは振動信号を検知できても補正駆動範囲外の領域を示す。
【0065】
以上の構成の振動検出装置によれば、短焦点距離時は増幅器の増幅率を長焦点距離より下げたりするなど、焦点距離に応じて増幅率を変えることにより、長焦点距離の補正可能な最大の振れ以上の振れが生じても、短焦点距離時には増幅率を下げているため、その振れに応じた振動信号の増幅信号が飽和することがなく、検知することができるようになるため、補正駆動できるようになり補正機構の最大補正駆動量も活用できるようになる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、小さな振れが発生する第1の軸に対応する増幅手段の増幅率を、大きな振れが発生する第1の軸とは異なる方向の軸に対応する増幅手段の増幅率より大きな値に定めることにより、小さな振動信号しか出力さない場合であっても、大きな増幅率を有する増幅手段によって、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができるので、常に高い精度で撮像装置の振れ量を検出することができる撮像装置を得ることができる。
【0067】
請求項記載の発明によれば、振動検出手段から出力される振動信号の大きさに応じて、増幅変更手段が増幅手段の増幅率を変更することにより、振動検出手段から、小さい振動信号が出力されても、増幅率が大きな値に変更された増幅手段により、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができるので、常に高い精度で撮像装置の振れ量を検出することができる撮像装置を得ることができる。
【0068】
請求項記載の発明によれば、小さい振動信号が出力されても、増幅率が大きな値に変更された増幅手段により、その振動信号を大きな値に増幅することができ、S/N比向上を図ることができるので、常に高い精度で撮像装置の振れ量を検出することができる撮像装置を得ることができる。
【0069】
請求項記載の発明によれば、大きさが閾値となる振動信号が、大きさが閾値となる振動信号が、検知手段の検知可能な最大値より小さい値に増幅されるように、増幅率を変更することにより、検知手段により検知できない程、大きい値に増幅されることがないので、常に高い精度で撮像装置の振れ量を検出することができる撮像装置を得ることができる。
【0070】
請求項記載の発明によれば、短焦点距離時は増幅器の増幅率を長焦点距離より下げたりするなど、焦点距離に応じて増幅率を変えることにより、長焦点距離の補正可能な最大の振れ以上の振れが生じても、短焦点距離時には増幅率を下げているため、その振れに応じた振動信号の増幅信号が飽和することがなく、検知することができるようになるため、補正駆動できるようになり補正機構の最大補正駆動量も活用できるようになる撮像装置を得ることができる。
【0071】
請求項記載の発明によれば、短焦点距離時は増幅器の増幅率を長焦点距離より下げたりするなど、焦点距離に応じて増幅率を変えることにより、長焦点距離の補正可能な最大の振れ以上の振れが生じても、短焦点距離時には増幅率を下げているため、その振れに応じた振動信号の増幅信号が飽和することがなく、検知することができるようになるため、補正駆動できるようになり補正機構の最大補正駆動量も活用できるようになる撮像装置を得ることができる。
【0072】
請求項記載の発明によれば、各軸に対応した最適な可変範囲を持つ増幅手段を用いることができ、必要のない範囲まで増幅率の可変可能な増幅手段を用いる必要がないので、コストダウンを図った撮像装置を得ることができる。
【0073】
請求項記載の発明によれば、正確に振れ量を演算することができる撮像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の振動検出装置を組み込んだ撮像装置の一実施の形態を示す図である。
【図2】 第1実施形態における増幅部8の詳細な構成を示す図である。
【図3】 第2実施形態における増幅部8の詳細な構成を示す図である。
【図4】 第2実施形態におけるCPU9cの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】 Zレジスタに格納された振れ振幅と増幅率の変化を模式的に示した図である。
【図6】 第3実施形態における増幅部8の詳細な構成を示す図である。
【図7】 デジタルポテンショメータを用いた、ズーム比(焦点距離)と増幅率範囲、抵抗値の関係模式図である。
【図8】 数人のモニターが撮影したときの手振れの様子をプロットしたグラフの一例である。
【図9】 図8について手振れをプロットした軸を説明するための図である。
【符号の説明】
1 撮像装置
5 角速度センサ(一の振動検出手段)
6 角速度センサ(他の振動検出手段)
82X 増幅回路(一の増幅手段)
82Y 増幅回路(他の増幅手段)

Claims (8)

  1. 撮像装置に備えられている撮影開始を指示する操作が行われるレリーズボタンの操作方向と一致する第1の軸とは異なる方向の軸に対する軸回りの前記撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する一の振動検出手段と、
    前記第1の軸に対する軸回りの前記撮像装置の振れに応じた振動信号を出力する他の振動検出手段と、
    前記一の振動検出手段と前記他の振動検出手段とが出力する各振動信号をそれぞれ増幅する複数の増幅手段とを備え、
    前記他の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率は、前記一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率よりも大きい値に予め定められている
    ことを特徴とする撮像装置。
  2. 請求項1記載の撮像装置であって、
    前記複数の増幅手段は、当該増幅率が可変であり、
    前記振動信号の大きさに基づき、前記増幅手段の増幅率を変更する増幅率変更手段をさらに備えることを特徴とする撮像装置。
  3. 請求項2記載の撮像装置であって
    前記増幅率変更手段は、前記振動信号の大きさが小さくなるに従って、前記増幅手段の増幅率が大きくなる方向に変更する
    ことを特徴とする撮像装置。
  4. 請求項3記載の撮像装置であって、
    前記増幅手段により増幅された前記振動信号を検知する検知手段をさらに備え、
    前記増幅率変更手段は、前記検知された振動信号の大きさが、予め定めた閾値以下となる毎に、当該閾値となる大きさの前記振幅信号が、前記検知手段の検知可能な最大値より小さい値に増幅されるように、前記増幅率を変更する
    ことを特徴とする撮像装置
  5. 請求項2記載の撮像装置であって、
    前記増幅率変更手段は、前記撮像装置内に備えられた光学系の焦点距離に基づいて、前記増幅手段の増幅率を変更する
    ことを特徴とする撮像装置
  6. 請求項5記載の撮像装置であって、
    前記増幅率変更手段は、前記焦点距離が遠ざかるに従って、前記増幅手段の増幅率が大きくなる方向に変更する
    ことを特徴とする撮像装置
  7. 請求項2〜6何れか1項記載の撮像装置であって、
    前記増幅率変更手段が、前記他の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最大値は、前記一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する増幅手段の増幅率の可変範囲における最大値より大きい、及び/若しくは、前記他の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する前記増幅手段の増幅率の可変範囲における最小値は、前記一の振動検出手段が出力する前記振動信号を増幅する前記の増幅手段の増幅率の可変範囲における最小値より高くなるように、前記複数の増幅手段の増幅率を変更する
    ことを特徴とする撮像装置。
  8. 請求項2〜7何れか1項記載の撮像装置であって、
    前記増幅手段により増幅された前記振動信号と、前記増幅率変更手段により変更された前記増幅率とに基づき、振れ量を演算する演算手段を
    さらに備えることを特徴とする撮像装置。
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