JP3897418B2 - 蒸気サイクルシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、動力と熱を共に発生させるガスエンジン等を備えるとともに、このガスエンジン等から発生する排熱を利用して蒸気を生成し、この蒸気から動力を取り出す蒸気サイクルを備えたコージェネレーションシステムにおける、効率改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
コージェネレーションシステムの一翼をなす蒸気サイクルは、以下のような機器系を備えて構成される。即ち、蒸気サイクルは、高圧蒸発器、蒸気タービン、所謂復水器(復水手段の一種)、給水ポンプを、記載順にサイクル内に備え、このサイクル内を動作媒体である水が相変化を伴いながら移動して動作する。ここで、上記復水器においては、蒸気タービンから排出れる低圧蒸気が飽和水に復水される。このような復水過程において、従来、他の水以外の物質が復水に寄与する構成とはされていなかった。即ち、復水器内は、凝縮した飽和水からなる液相と、蒸気が充満した気相とからなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記構造の復水器を備えた蒸気タービンでは、蒸気は復水器内の圧力まで膨張できるが、その圧力は復水器での熱交換する冷却水の温度でほぼ決まってしまう。従って、この圧力が膨張限界の圧力となっている。
一方、上記のようなコージェネレーションシステムにおいては、例えは、動力源及び高温熱源としてのガスエンジンの排熱で、蒸気タービン用の高圧蒸気を生成するのであるが、この場合、利用されてきた熱は排ガスの高温部分のみであり、いわゆる、高圧蒸発器で利用されて低温化したエンジン排ガスの保有する余熱に関しては、従来、捨てられていた。さらに、ガスエンジンからの排熱としては、ジャケット冷却水等が有する熱があるが、このような熱は、その温度が低いため、従来、利用されず、捨てられていた。
【0004】
本願発明の目的は、従来捨てられていた、低温側の熱を有効利用することがきる蒸気サイクルシステムを得るとともに、このような蒸気サイクルシステムを備えてコージェネレーションシステムを構築し、効率の高いシステムを得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明による高温熱源より受熱して高圧蒸気を生成する高圧蒸発器と、前記高圧蒸発器で生成された蒸気を受け入れて動作する蒸気タービンと、前記蒸気タービンより排出される低圧蒸気を復水させる復水手段を備えるとともに、前記復水手段からの復水を前記高圧蒸発器に供給する給水ポンプとを備えた蒸気サイクルシステムの特徴構成は、以下の通りである。
即ち、前記復水手段を、蒸気タービンからの低圧蒸気を臭化リチウム水溶液と接触させて吸収凝縮させる復水器と、この復水器で生成される臭化リチウム希水溶液を受け入れるとともに、中温熱源より受熱して臭化リチウム希水溶液を再生濃縮する再生器と、この再生器で生成される臭化リチウム濃水溶液を復水器に戻す濃溶液戻り路とを備え、さらに、再生器に於ける再生濃縮処理により生成される蒸気を受け入れて、低温熱源の冷熱により凝縮させる凝縮器を備え、
この凝縮器で得られる凝縮水を給水ポンプに対する給水として供給するものとするのである。
【0006】
この構成のシステムにおいては、従来型の復水器が備えられていた部位に、臭化リチウム水溶液を吸収液とする復水器と、この復水器で生成される希溶液から溶液の再生処理により蒸気を取り出す再生器とが備えられ、この再生器で生成される濃溶液が先の復水器に濃溶液戻り路を介して戻される。ここで、このような再生操作にあたっては、所謂、高圧蒸発器が必要とする温度域よりも低い温度(中温熱源と称する)の熱を利用することができる。従って、この再生器で、従来捨てられていた、高圧蒸気発生後のガスエンジン排ガス、あるいはエンジンジャケット冷却水等を利用することができる。
一方、再生器で希溶液から分離された蒸気は、凝縮器で凝縮され、給水ポンプに送られて、従来通りの蒸気サイクルに戻り、動作を続ける。
【0007】
さて、蒸気タービンで得られる仕事は、所謂、エンタルピー落差Δiであるが、これは断熱変化を仮定すると、ガスの圧力をp、その比容積をvとした場合∫pdvとなり、図2に示すpv線図斜線部の面積となる。そして、本願にあっては、復水器が臭化リチウム水溶液を備えた構成となっているため、復水器内の圧力が下がり、蒸気タービンに於ける入口圧力を同一とすると、出口圧力が低くなるため、結果的に、膨張量が増加して、タービン出力を増すことができる。即ち、システムを全体的に見た場合にあっては、従来捨てられていた比較的低温側の排熱を利用して、蒸気タービンから取り出せる動力を増加させることが可能となっている。
【0008】
さらに、上記の構成にあって、凝縮器と給水ポンプとの凝縮水流路とは別に、この凝縮水流路から分岐して、凝縮器側から圧力調整機構と低温蒸発器とを記載順に備えた第2凝縮水流路を設け、前記復水器の気相部と前記低温蒸発器の気相部とを連通連結する低圧連通路を設け、低温蒸発器に於ける蒸発により奪熱される冷水が流れる冷水流路を低温蒸発器に備え、蒸気タービンからの低圧蒸気の復水器への通路を、連通、連通遮断状態自在に構成する。
この構成は、基本的には、先に説明した蒸気サイクルシステムに備えられる復水器と再生器を、従来型の吸収式冷水器として使用することを目的としたものである。この構成の場合は、蒸気タービンからの低圧蒸気を、本願の復水器に供給することは行わない。
上記蒸気タービンから復水器への低圧蒸気の移流を遮断した状態にあっては、上記の復水器と再生器との間にあっては、臭化リチウム水溶液の濃度変化を伴った循環構造がすでに、形成されている。この場合も、再生器にあっては、所定の熱源を利用する。そして、再生器で生成される蒸気は凝縮器へ送られ比較的圧力の高い飽和水とされる。その後、第2凝縮水流路に存する圧力調整機構を介して、飽和水を低圧状態で低圧蒸発器におくる。この低圧蒸発器には、冷水流路が備えられており、低圧蒸発器で発生する飽和水の蒸発により冷水流路内の流体を低下させて、所謂、冷水を生成することができる。一方、低圧蒸発器で生成された低圧蒸気は、低圧連通路を介して本願の復水器に返すことにより、所謂、吸収式冷凍サイクルを形成することができる。
従って、この構成にあっては、本来、蒸気タービンの効率向上に寄与するために備えられる復水器と再生器とを、有効に利用して、蒸気タービンが働かない状態で、冷水を生成することが可能となる。
【0009】
さて、先の冷水を生成する構成においては、再生器の熱源として、所謂、中温側の熱源を使用する例を示したが、この場合、蒸気タービンの駆動を必ずしも必要とするものではないため、この蒸気タービンに本来おくるべき高温高圧蒸気を再生器の熱源として利用し、奪熱の後、凝縮器に投入し、サイクル内に戻すことで、高圧蒸発器、再生器、凝縮器、圧力調整機構、低圧蒸発器を介する冷凍サイクル、及び高圧蒸発器、再生器、凝縮器、給水ポンプを経るサイクルを移動する流体も有効に利用できる。
このような構成を採ろうとする場合は、上記の構成にさらに、高圧蒸発器からの蒸気を再生器の熱源として導くとともに、奪熱された蒸気を凝縮器内に導く蒸気路を備えることで、これを実現できる。
【0010】
これまでの説明にあっては、主に、蒸気サイクル側の構成に関して説明したが、コージェネレーションシステム全体としての構成に関しては、上記した高温熱源が、エンジン排ガスが保有する排熱であることが好ましい。
このような排熱は、比較的温度が高く(400℃〜700℃)であるため、蒸気タービンを駆動するための高圧蒸気を充分に生成することができるためである。
【0011】
一方、高圧蒸発器において、高温熱源として使用された後のエンジン排ガスが保有する余熱を、再生器で使用される中温熱源として使用することが好ましい。このような排熱は、温度が(100℃〜200℃)であるため、再生の用に供することができるためである。
【0012】
さらに、再生器で使用される中温熱源として、水冷式エンジンにおける水冷過程を経て加熱された状態にある水冷水が保有する熱を使用することが好ましい。このような排熱は、温度が(80℃〜100℃)であるため、再生の用に供することができるためである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本願の実施の形態例を図に基づいて説明する。
図1には、蒸気タービン1の効率向上のための基本となる形態例が示されている。
このシステムは、都市ガスを燃料とするガスエンジン2と備えるとともに、このガスエンジン2から排出される排ガスの熱を利用して、高圧蒸発器3により高圧蒸気を生成し、この蒸気でタービン1を働かせて、動力回収をおこなう構成のものである。
図1に示すように、ガスエンジン2は、都市ガスの供給を受けて動作し、発電の用に供される。このガスエンジン2から、高温の排ガスが排ガス路4へ放出される。この排ガス路4は、その下流側で高圧蒸発器3に於ける高温熱源として利用される。
一方、同じく、ガスエンジン2には、ジャケット冷却水が供給されるとともに、冷却を終え加熱された冷却水が冷却水流路5へ放出される。この冷却水流路5は、その下流側で再生器6に於ける中温熱源として利用される。
以上の構成により、ガスエンジン側から、本願独特の蒸気サイクルシステム側へ、高温の熱と中温の熱とが、別々に、供給される。
【0014】
次に、蒸気サイクルシステム側に関して説明する。
これまで説明してきたように、このサイクルは、基本的には、従来の蒸気サイクルと同様に、高温熱源より受熱して高圧蒸気を生成する高圧蒸発器3と、高圧蒸発器3で生成された蒸気を受け入れて動作する蒸気タービン1と、蒸気タービン1より排出される低圧蒸気を復水させる復水手段100を備えるとともに、この復水手段100からの復水を高圧蒸発器3に供給する給水ポンプ7とを備えて構成されている。
ここで、高温熱源とは、この実施形態の場合、ガスエンジン排ガスである。
【0015】
さて、次に復水手段100の構成であるが、これは、蒸気タービン1からの低圧蒸気を臭化リチウム水溶液と接触させて吸収凝縮させる復水器101と、この復水器101で生成される臭化リチウム希水溶液を受け入れるとともに、中温熱源より受熱して臭化リチウム希水溶液を再生濃縮する再生器6と、再生器6で生成される臭化リチウム濃水溶液を復水器101に戻す濃溶液戻り路102とを備えて構成されるとともに、再生器6に於ける再生濃縮処理により生成される蒸気を受け入れて、低温熱源の冷熱により凝縮させる凝縮器103を備え、この凝縮器103で得られる凝縮水を前記給水ポンプ7に対する給水として供給する構成とされている。当然、凝縮器103には冷却水が供給されて冷却の用に供される。
ここで、中温熱源とは、この実施形態の場合、ガスエンジンジャケット冷却水である。
【0016】
従って、この蒸気サイクルシステムにおいては、蒸気タービン1の膨張が、臭化リチウム水溶液を吸収液として備えた復水器101内の圧力まで行われるため、効率の向上が図れる。この場合にあって、ガスエンジン2からの中温排熱(具体的にはジャケット冷却水が保有する熱)が有効に利用されることは、いうまでもない。
【0017】
上記の基本となる形態例にあっては、主に、蒸気タービン1の運転を目的とする構成に関して説明したが、例えば、夏期に冷水を取り出すことを目的として、さらに、システム内に備えられる復水器101、再生器6、凝縮器103を利用するものとするこの場合、蒸気タービンの運転は意図しない。
このような場合の構成例を図3に示した。同図においては、理解を容易にするため、図1に対応させて要部のみを示している。不要な蒸気タービン関連に関しては、二点鎖線で仮想的に示した。復水器101と再生器6との間に於ける連結構成、再生器6から凝縮器103への蒸気側の連結構成は、図1のものと同一である。
さて、この構成にあっては、図1の構成に加えて、凝縮器103と給水ポンプ7との凝縮水流路80とは別に、この凝縮水流路80から分岐して凝縮器側から圧力調整機構9と低温蒸発器10とが記載順に備えられた第2凝縮水流路8が設けられている。この分岐部には、流量制御可能な3方弁が備えられ、両流路8,80へ送られる流量割合を調整できる。さらに、復水器101の気相部と低温蒸発器10の気相部とを連通連結する低圧連通路11が設けられており、この流路11は、冷水の生成運転状態にあって連通接続状態とされる。一方、低温蒸発器10に於ける蒸発により奪熱される冷水が流れる冷水流路12が低温蒸発器10に備えられている。また、蒸気タービン1からの低圧蒸気の復水器101への通路は、連通、連通遮断自在に構成され、冷水を得る運転状態にあっては、これが遮断される。
この構成にあっては、復水器101、再生器6、凝縮器103、圧力調整機構9、低圧蒸発器10との間で冷凍サイクルを形成することができ、中温熱源を熱源として、低圧蒸発器10で冷水を得ることができる。
この構成にあって、図3に示すように、高圧蒸発器3からの蒸気を再生器6の熱源として導くとともに(ここで、高圧蒸気は再生器6内の気相もしくは液相に混合されることはない)、奪熱された蒸気を凝縮器内に導く(ここで、低圧低温化した蒸気は凝縮器内の気相もしくは液相に混合される)蒸気路13を備えた構成としておくと、高温熱源からの熱も利用することができる。
【0018】
〔別実施の形態例〕
(イ) 上記の形態例にあっては、中温熱源として、エンジンジャケットの冷却水が、本来の目的であるエンジン冷却後に加熱されて保有している熱を利用したが、他の排熱を利用してもよい。
このような例としては、高温蒸発器3で高圧蒸気の生成に使用され、奪熱された後に、ガスエンジン排ガスが保有する余熱も、同様に中温熱源として使用することができる。
(ロ) 上記の実施の形態例にあっては、蒸気サイクルに対する熱源側としてガスエンジン2が設備される例を示したが、このような熱源側としては、所謂、蒸気タービンで使用できる高圧蒸気発生可能な高温熱源と、この高温熱源より低温側で従来廃棄されていた温度(80℃以上)の範囲にある中温熱源を得られるものであれば任意のものでよい。即ち、ディーゼルエンジン、スターリングエンジンン等が考えられる。
【0019】
【発明の効果】
従って、以上の方法により、エンジンのジケット冷却水等の高圧蒸気発生に直接役立たない熱源を利用して、蒸気タービンの出力を増加させることができる。さらに、吸収液に吸収式冷凍機で一般に使用される臭化リチウムを用いることで、安価且つ信頼性の高いシステムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の蒸気サイクルシステムの構成を示す図
【図2】蒸気タービンに於ける断熱変化に対応するpv線図
【図3】冷水発生状態にある本願蒸気サイクルシステムの構成を示す図
【符号の説明】
1 蒸気タービン
2 ガスエンジン
3 高圧蒸発器
4 排ガス路
5 冷却水流路
6 再生器
7 給水ポンプ
8 第2凝縮水流路
9 圧力調整機構
10 低温蒸発器
11 低圧連通路
12 冷水流路
13 蒸気路
80 凝縮水流路
100復水手段
101復水器
102濃溶液戻り路
103凝縮器

Claims (5)

  1. 高温熱源より受熱して高圧蒸気を生成する高圧蒸発器と、前記高圧蒸発器で生成された蒸気を受け入れて動作する蒸気タービンと、前記蒸気タービンより排出される低圧蒸気を復水させる復水手段を備えるとともに、前記復水手段からの復水を前記高圧蒸発器に供給する給水ポンプとを備えた蒸気サイクルシステムであって、
    前記復水手段が、
    前記蒸気タービンからの低圧蒸気を臭化リチウム水溶液と接触させて吸収凝縮させる復水器と、前記復水器で生成される臭化リチウム希水溶液を受け入れるとともに、中温熱源より受熱して前記臭化リチウム希水溶液を再生濃縮する再生器と、前記再生器で生成される臭化リチウム濃水溶液を前記復水器に戻す濃溶液戻り路とを備え、前記再生器に於ける再生濃縮処理により生成される蒸気を受け入れて、低温熱源の冷熱により凝縮させる凝縮器を備え、
    前記凝縮器で得られる凝縮水を前記給水ポンプに対する給水として供給するとともに、
    前記凝縮器と前記給水ポンプとの間の凝縮水流路とは別に、前記凝縮水流路から分岐して、前記凝縮器側から圧力調整機構と低温蒸発器とを記載順に備えた第2凝縮水流路を設け、前記復水器の気相部と前記低温蒸発器の気相部とを連通連結する低圧連通路を設け、前記低温蒸発器に於ける蒸発により奪熱される冷水が流れる冷水流路を前記低温蒸発器に備え、前記蒸気タービンからの低圧蒸気の前記復水器への通路を、連通、連通遮断自在に構成した蒸気サイクルシステム。
  2. 前記高圧蒸発器からの蒸気を前記再生器の熱源として導くとともに、奪熱された蒸気を前記凝縮器内に導く蒸気路を備えた請求項1に記載の蒸気サイクルシステム。
  3. 前記高温熱源が、エンジン排ガスが保有する排熱である請求項1又は2に記載の蒸気サイクルシステム。
  4. 前記高圧蒸発器において、前記高温熱源として使用された後のエンジン排ガスが保有する余熱を、前記中温熱源として使用する請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気サイクルシステム。
  5. 前記中温熱源として、水冷式エンジンにおける水冷過程を経て加熱された状態にある水冷水が保有する熱を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸気サイクルシステム。
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