JP3895810B2 - 車両用自動クラッチ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のエンジンと変速機の間の動力伝達部に介装され、運転者のギヤシフトレバー操作に応じて摩擦係合機構の接続と遮断を自動的に行う自動クラッチに関し、とりわけ、運転者の操作意志に応じた速度での摩擦係合機構の接続を可能にした車両用自動クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車両用自動クラッチとして、従来、実開昭61−166236号公報に示されるようなものが案出されている。
【0003】
この自動クラッチは、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素とから成る摩擦係合機構が、エアシリンダ等の操作アクチュエータによって両摩擦要素を圧接させる方向(クラッチ接続方向)または離反させる方向(クラッチ遮断方向)に操作されるようになっており、操作アクチュエータはコントローラによって駆動制御されるようになっている。そして、このコントローラは、ギヤシフトレバーに付設された歪ゲージから信号電圧を受け、この信号電圧の入力に応じて操作アクチュエータを駆動させるようになっている。つまり、変速や発進に際して運転者がギヤシフトレバーを動かすと、そのときのギヤシフトレバーの撓みに応じて歪ゲージが電圧を発生し、この電圧がコントローラに入力されると、コントローラが操作アクチュエータに駆動指令を出し、それによって操作アクチュエータが即時にクラッチを(摩擦係合機構の接続を)遮断すると共に、ギヤシフトの完了を待ってクラッチ(摩擦係合機構)を所定の速度でもって接続する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の自動クラッチの場合、クラッチの接続速度が常に一定であって、クラッチを素早く接続したい、或いは、ゆっくりと接続したいといった運転者の意志を反映する手段を全く備えていないため、運転者によるシフトワーク(ギヤシフトレバーの操作)と、クラッチ接続時に運転者が実際に受ける感覚とに大きなギャップを生じ、素早いシフトワークを行ったにも拘わらず、レスポンスが遅くなるといった違和感を運転者に覚えさせる不具合がある。
【0005】
また、上記従来の自動クラッチにおいては、運転者によるギヤシフトレバーの操作の有無を歪ゲージによって検知するようにしているため、出力電圧が小さく不安定になりがちな歪ゲージの特性上、精度の高いクラッチの制御を実現することが難しいという別の不具合もある。
【0006】
そこで本発明は、運転者の意志に応じた速度でのクラッチ接続を正確に行えるようにして、車両の運転操作時に運転者に違和感を与えることのない車両用自動クラッチを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、この圧電セラミックスの出力電圧を受け、その出力電圧の変化状態に応じて操作アクチュエータのクラッチ接続方向のストローク速度を制御するコントローラと、を備えた構成とした。圧電セラミックスは入力荷重の変化速度と大きさに応じて、出力電圧も同様の変化速度と大きさで変化する特性を有し、しかも、入力荷重に対して比較的大きな出力電圧を得ることができることから、ギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度で操作アクチュエータをストロークさせ、クラッチの接続を行うことができる。
【0008】
また、請求項2の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、変速機でのギヤシフトの完了を検出するシフト完了検出器と、前記圧電セラミックスの出力電圧を受け、所定のしきい電圧と比較するしきい電圧比較手段と、このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに操作アクチュエータにクラッチを遮断するストローク指令を出力する遮断ストローク指令出力手段と、前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、前記シフト完了検出器の完了検出信号と前記電圧変化演算手段の演算結果を受け、出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる接続ストローク制御手段と、を備えた構成とした。変速時や発進時に運転者がギヤシフトレバーを操作すると、圧電セラミックスの出力電圧が所定のしきい電圧以上となるため、まず、遮断ストローク指令出力手段から操作アクチュエータにクラッチ遮断方向のストローク指令が為されてクラッチが一旦遮断され、その後に、変速機でのギヤシフトが完了し、シフト完了検出器から接続ストローク制御手段に完了検出信号が入力されると、接続ストローク制御手段が出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる。これにより、クラッチの接続はギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度で行われることとなる。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明の電圧変化演算手段が出力電圧の変化速度を演算するようにした。
【0010】
さらに、請求項4の発明は、請求項2または3の発明の電圧変化演算手段が出力電圧の最大変化量を演算するようにした。
【0011】
さらにまた、請求項5の発明は、請求項3または4の発明の電圧変化演算手段が出力電圧の変化速度の変化率をも演算するようにした。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図2は、本発明の実施例の全体概略構成を示すもので、同図において、1は、車両のエンジンと変速機の間に介装された本発明にかかる自動クラッチであり、2は、この自動クラッチ1の摩擦係合機構を含むクラッチ本体部である。このクラッチ本体部2は、エンジンのクランクシャフト4に結合されたフライホイール5と、このフライホイール5に結合されたクラッチカバー6と、このクラッチカバー6内で変速機の入力軸7にスプライン嵌合されたクラッチディスク8と、フライホイール5と共にこのクラッチディスク8の外周側の摩擦板9a,9bを挟圧するプレッシャプレート10と、このプレッシャプレート10を前記摩擦板9a,9b方向に付勢するダイヤフラムスプリング11と、このダイヤフラムスプリング11の内周端をフライホイール5方向に変位させてプレッシャプレート10をクラッチディスク8から離反させるレリーズベアリング12と、エンジンに結合されるクラッチハウジング13に枢支され、その回動操作によってレリーズベアリング12を進退操作させるレリーズレバー14とを備えている。
【0014】
そして、上記のクラッチ本体部2は、常態においてダイヤフラムスプリング11がプレッシャプレート10をクラッチディスク8に押し付け、クランクシャフト4から入力軸7への動力伝達を可能にしており(以下、この状態をクラッチの接続と呼ぶ。)、その状態からレリーズベアリング12が前進操作されると、ダイヤフラムスプリング11によるプレッシャプレート10の押し付け力が解除されて、クランクシャフト4と入力軸7の間の動力伝達が遮断される(以下、この状態をクラッチの遮断と呼ぶ。)ようになっている。また、クラッチディスク8の一対の摩擦板9a,9bはクッショニングプレート15を介して連結されていて、この摩擦板9a,9bがプレッシャプレート10とフライホイール5によって挟圧されたときに、クッショニングプレート15によって両者を離反させる方向のばね反力が作用するようになっている。このため、エンジン側摩擦要素であるプレッシャプレート10及びフライホイール5と、駆動輪側摩擦要素であるクラッチディスク8とは、レリーズレバー14の変位に応じた力で摩擦係合される。尚、この実施例においては、プレッシャプレート10及びフライホイール5と、クラッチディスク8とによって摩擦係合機構が構成されている。
【0015】
また、前記クラッチハウジング13の外側には油圧シリンダ16が取り付けられ、この油圧シリンダ16から延出したピストンロッド17の先端が前記レリーズレバー14の基端に結合されている。この油圧シリンダ16は、供給油圧に応じてピストンロッド17を進退動作させるものであるが、その油圧経路には供給油圧を調整するための電磁弁18が介装されている。この実施例においては、油圧シリンダ16とこの電磁弁18とが本発明における操作アクチュエータを構成しており、電磁弁18の通電電流を後述するコントローラ19によって制御することにより、ピストンロッド17のストロークを適宜調整するようになっている。
【0016】
前記油圧シリンダ16につながる油圧経路は、オイルタンク20の作動油を供給する供給通路21と、作動油をオイルタンク20に戻すドレン通路22とが並列に設けられ、これらの通路21,22が、前記油圧シリンダ16に接続された給排通路23に前記電磁弁18を介して接続された概略構成となっている。そして、前記供給通路21には、電動モータ24によって駆動される油圧ポンプ25と、この油圧ポンプ25による吐出圧を蓄圧するアキュムレータ26と、このアキュムレータ26の圧力を検出する圧力スイッチ27とが配設されており、アキュムレータ26の圧力が圧力スイッチ27を通してコントローラ19によって監視され、その圧力が常に設定圧力範囲内に維持されるように、電動モータ24のオン・オフがコントローラ19で制御されるようになっている。したがって、供給通路21の供給圧は常時設定圧力の範囲に維持されている。尚、図中28は、リリーフ弁を示し、29は、逆止弁を示す。また、電磁弁18は、給排通路23に対する供給通路21とドレン通路22の連通面積の割合を通電電流iに応じて可変制御し、それによって油圧シリンダ16のストローク量及び速度を適宜制御するようになっている。
【0017】
一方、コントローラ19は、図2で示す各種の検出器30〜32から信号を入力され、これらの入力信号に基づいて電磁弁18に通電する電流iを制御するようになっている。以下、コントローラ19に信号を入力する30〜32の検出器について簡単に説明する。
【0018】
30は、出力回路33に接続された圧電セラミックスであり、この圧電セラミックス30は、変速機のギヤ機構を手動操作するためのギヤシフトレバー38に付設され、出力回路33を介してコントローラ19にその出力電圧を入力するようになっている。出力回路33は、図3に示すように、電圧オフセット回路34、フィルタ回路35、温度補償回路36、及び、増幅回路37から成り、圧電セラミックス30の出力電圧を外乱による影響を受けることなく常に安定したかたちでコントローラ19に入力できるようになっている。また、圧電セラミックス30は、周知のように、出力電圧が入力荷重の変化速度と大きさに応じて、同様の変化速度と大きさで変化する特性を有しており、したがって、圧電セラミックス30からコントローラ19には、運転者がギヤシフトレバー38に加えた荷重の変化に応じた電圧が入力されることとなる。
【0019】
尚、この圧電セラミックス30の出力電圧の具体的な特性は、例えば、図4及び図5(A)に示すようになる。図4及び図5(A)は、運転中にギヤシフトレバー38を2速から3速にシフトし、後にさらに3速から2速にシフトした場合の、2.5Vを中立電圧とする出力電圧の特性図であって、同図中の実線は運転者がギヤシフトレバー38を素早く操作したとき、つまり、入力荷重の変化速度と大きさが大きいときの特性を示し、鎖線は運転者がギヤシフトレバー38をゆっくりと操作したとき、つまり、入力荷重の変化速度と大きさが小さいときの特性を示している。
【0020】
また、31は、油圧シリンダ16のストローク量を検出するストロークセンサであり、32は、変速機の現在のギヤポジションと、変速機がギヤシフトを完了したことを検出するギヤポジション・センサである。尚、このギヤポジション・センサ32は、本発明におけるシフト完了検出器を構成する。
【0021】
ここで、コントローラ19の備える主な構成を図1に基づいて説明する。
【0022】
コントローラ19は、圧電セラミックス30の出力電圧を受け、その出力電圧をしきい電圧ΔE0と比較するしきい電圧比較手段と、このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、圧電セラミックス30の出力電圧がしきい電圧ΔE0以上のときに油圧シリンダ16をクラッチ遮断方向に最大ストロークさせる電流iを電磁弁18に出力する遮断ストローク指令出力手段と、前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、圧電セラミックス30の出力電圧がしきい電圧ΔE0以上のときにこの出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、ギヤポジション・センサ32からのシフト完了信号とこの電圧変化演算手段の演算結果を受けて、電磁弁18にその演算結果に応じた電流i、つまり、圧電セラミックス30の出力電圧の変化状態に応じた速度で油圧シリンダ16をクラッチ接続方向にストロークさせる電流iを出力する接続ストローク制御手段とを備え、これらの構成によってクラッチの接続と遮断を制御するようになっている。
【0023】
ここで、しきい電圧比較手段で用いるしきい電圧ΔE0は、発進時や変速時に運転者がギヤシフトレバー38に力を加えたことを判断するためのもので、図4及び図5(A)に示すように極めて小さな値に設定されている。また、遮断ストローク指令出力手段で電磁弁18に出力する電流iは、図5(C)中a〜b,a'〜b'で示すように、油圧シリンダ16をクラッチ遮断方向に即時に最大ストロークさせられる値に設定されている。
【0024】
また、電圧変化演算手段においては、出力電圧の変化状態として、出力電圧の出力初期の変化速度ΔE/dtと最大変位ΔEmaxを演算し、接続ストローク制御手段においては、前記演算手段で求めた出力電圧の変化速度ΔE/dtに応じた速度で油圧シリンダ16をクラッチ接続方向にストロークさせ、その制御判断を出力電圧の最大変位ΔEmaxを基にしてチェックする。尚、このクラッチ接続方向のストローク制御は、出力電圧の変化速度ΔE/dtのみに応じて行うことや、最大変位ΔEmaxのみに応じて行うことも可能である。また、このクラッチ接続方向のストローク制御は、ギヤシフトレバー38を素早く操作した場合の制御精度を高めるために、さらに電圧速度ΔE/dtの変化率をも制御判断の一つに加えることも可能である。
【0025】
さらに、この実施例の場合、接続ストローク制御手段による油圧シリンダ16のストローク速度の制御は、シリンダ16のストロークを複数の区分に分け、ストロークセンサ31からの信号の入力を基にそのストローク区分毎に別々に行うようにしている。即ち、ストローク区分としては、図5(C)に示す、最大ストローク位置jから半クラッチ領域直前の位置kまで、この位置kから半クラッチ領域内の位置mまで、この位置mから半クラッチ領域を越えた位置nまで、さらにこの位置nから最小ストローク位置pまでで夫々分け、n〜pの区分では出力電圧の変化速度ΔE/dtにかかわらず常に最大速度でストロークさせ、j〜kの区分ではn〜pの区分を除く3区分の中で最も速い速度VAに、k〜mの区分では最もゆっくりとした速度VB、m〜nの区分では速度VBよりも僅かに速い速度VCとなるように、各速度VA,VB,VCを出力電圧の変化速度ΔE/dtに応じて制御するようにしている。したがって、クラッチの接続は、圧電セラミックス30の出力電圧の変化がいかなる状態の場合にもストローク区分毎にきめ細かく制御されることとなり、常にスムーズで、かつロス時間の少ないものとなる。
【0026】
以下、この車両用自動クラッチ1の作動をコントローラ19の制御を中心として図6のフローチャートを参照して説明する。尚、発進時も含めていずれの変速段のギヤシフト時にも、すべてほぼ同様のクラッチ制御が行われるため、以下では、ギヤシフトレバー38を2速から3速にシフト操作する場合についてだけを説明し、他のシフト操作を行う場合については説明を省略するものとする。
【0027】
変速機を2速にシフトした状態で車両が運転されているときに、運転者がギヤシフトレバー38を3速に操作すると、運転者が最初にギヤシフトレバー38に加えた僅かな荷重が圧電セラミックス30で検出され、圧電セラミックス30からその荷重に応じた出力電圧がコントローラ19に入力される。すると、コントローラ19は、図6のステップ100においてこの出力電圧を受け、つづくステップ101において、この出力電圧がしきい電圧ΔE0以上であるかどうかを判断し、出力電圧がしきい電圧ΔE0以上のときにだけ次のステップ102に進み、同ステップ102において電磁弁18にクラッチを最大速度で遮断するための電流iを電磁弁18に出力する。これにより、クラッチは図5(C)のa〜b,a'〜b'に示すように即時に遮断されることとなる。
【0028】
次に、ステップ103において、ギヤポジション・センサ32からのシフト完了信号の入力の有無を判断し、シフト完了信号が入力された場合(図5(B)参照。)には、ステップ104に進んで、出力電圧の入力初期の電圧変化速度ΔE/dtと最大変位ΔEmaxを演算すると共に、ステップ105において、油圧シリンダ16のストローク速度VAをこの演算結果に応じて制御すべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のc〜d,c'〜d'参照。
【0029】
この後、ストロークセンサ31からの入力信号を基に、ステップ106において、クラッチが半クラッチ直前の位置kに達したかどうかの判断を行い、位置kに達したと判断した場合には次のステップ107に進んで、このステップ107において、油圧シリンダ16のストローク速度VBを前記の演算結果に応じて制御すべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のd〜e,d'〜e'参照。
【0030】
次に、ステップ108において、ストロークセンサ31からの入力信号を基にしてクラッチが半クラッチ領域内の位置mに達したかどうかの判断を行い、位置mに達したと判断した場合にはさらに次のステップ109に進んで、このステップ109において、油圧シリンダ16のストローク速度VCを前記の演算結果に応じて制御すべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のe〜f,e'〜f'参照。
【0031】
さらにこの後、ステップ110において、ストロークセンサ31の信号を基にしてクラッチが半クラッチ領域を越えた位置nに達したかどうかの判断を行い、位置nに達したと判断した場合にはステップ111に進み、同ステップ111で油圧シリンダ16を最大速度でストロークさせるべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のf〜g,f'〜g'参照。
【0032】
そして、最後にステップ112において、ストロークセンサ31の信号からクラッチが初期位置pに達したかどうかの判断を行い、位置pに達したと判断したところでクラッチの制御を終了する。
【0033】
この自動クラッチ1は以上のように、ギヤシフトレバー38に付設した圧電セラミックス30の出力電圧の変化速度ΔE/dtと最大変位ΔEmaxに応じてクラッチの接続速度を制御するようにしているため、運転者が素早いギヤシフトレバー38の操作を行うと、図5(C)中の実線で示すように、その操作荷重の変化に応じた素早いクラッチ接続が行われ、逆に、運転者がゆっくりとしたギヤシフトレバー38の操作を行うと、図5(C)の破線で示すようにゆっくりとしたクラッチ接続が行われることとなる。したがって、この自動クラッチ1を採用した場合には、クラッチを素早く接続したい、或いは、ゆっくりと接続したいといった運転者の意志に応じた速度でクラッチを適確に接続することができるようになり、その結果、運転者のレバー操作とクラッチ接続時に運転者が実際に受ける感覚とにギャップを覚えることがなくなる。
【0034】
また、この自動クラッチ1の場合、入力荷重に対する電圧出力の大きい圧電セラミックス30を用いているため、その出力電圧を利用するにあたってさして大きな増幅を必要とせず、そのため入力信号の誤差が少なくなって制御の精度が高まるという利点もある。
【0035】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、この圧電セラミックスの出力電圧を受け、その出力電圧の変化状態に応じて操作アクチュエータのクラッチ接続方向のストローク速度を制御するコントローラと、を備えた構成としたため、入力荷重の変化速度と大きさに応じて、出力電圧が同様の変化速度と大きさで変化する圧電セラミックスの特性から、ギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度で正確にクラッチの接続を行うことができる。したがって、クラッチを素早く接続したい、或いは、ゆっくりと接続したいといった運転者の意志に応じた速度でクラッチが接続されることから、運転者の操作意志とクラッチ接続時に運転者が実際に受ける感覚とに大きなギャップが生じることがなく、運転者にまったく違和感を与えることがない。また、入力荷重に対して圧電セラミックスの電圧の出力が大きいことから、入力信号の信号処理にあたって信号の増幅率を小さくすることができ、その分、クラッチの制御制精度を高めることができるという利点もある。
【0036】
また、請求項2〜5の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、変速機でのギヤシフトの完了を検出するシフト完了検出器と、前記圧電セラミックスの出力電圧を受け、所定のしきい電圧と比較するしきい電圧比較手段と、このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに操作アクチュエータにクラッチを遮断するストローク指令を出力する遮断ストローク指令出力手段と、前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、前記シフト完了検出器の完了検出信号と前記電圧変化演算手段の演算結果を受け、出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる接続ストローク制御手段と、を備えた基本構成としたため、ギヤシフトレバーの操作に伴う圧電セラミックスの出力電圧を基にして、クラッチの速やかな遮断と、ギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度でのクラッチの接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の一実施例を示す全体概略構成図。
【図3】同実施例を示す出力回路の構成図。
【図4】同実施例を示す出力電圧の特性図。
【図5】同実施例を示すタイミングチャート。
【図6】同実施例を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…自動クラッチ、
5…フライホイール(エンジン側摩擦要素)、
8…クラッチディスク(駆動輪側摩擦要素)、
10…プレッシャプレート(エンジン側摩擦要素)、
16…油圧シリンダ(操作アクチュエータ)、
18…電磁弁(操作アクチュエータ)、
19…コントローラ、
30…圧電セラミックス、
32…ギヤポジション・センサ(シフト完了検出器)、
38…ギヤシフトレバー。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のエンジンと変速機の間の動力伝達部に介装され、運転者のギヤシフトレバー操作に応じて摩擦係合機構の接続と遮断を自動的に行う自動クラッチに関し、とりわけ、運転者の操作意志に応じた速度での摩擦係合機構の接続を可能にした車両用自動クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車両用自動クラッチとして、従来、実開昭61−166236号公報に示されるようなものが案出されている。
【0003】
この自動クラッチは、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素とから成る摩擦係合機構が、エアシリンダ等の操作アクチュエータによって両摩擦要素を圧接させる方向(クラッチ接続方向)または離反させる方向(クラッチ遮断方向)に操作されるようになっており、操作アクチュエータはコントローラによって駆動制御されるようになっている。そして、このコントローラは、ギヤシフトレバーに付設された歪ゲージから信号電圧を受け、この信号電圧の入力に応じて操作アクチュエータを駆動させるようになっている。つまり、変速や発進に際して運転者がギヤシフトレバーを動かすと、そのときのギヤシフトレバーの撓みに応じて歪ゲージが電圧を発生し、この電圧がコントローラに入力されると、コントローラが操作アクチュエータに駆動指令を出し、それによって操作アクチュエータが即時にクラッチを(摩擦係合機構の接続を)遮断すると共に、ギヤシフトの完了を待ってクラッチ(摩擦係合機構)を所定の速度でもって接続する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の自動クラッチの場合、クラッチの接続速度が常に一定であって、クラッチを素早く接続したい、或いは、ゆっくりと接続したいといった運転者の意志を反映する手段を全く備えていないため、運転者によるシフトワーク(ギヤシフトレバーの操作)と、クラッチ接続時に運転者が実際に受ける感覚とに大きなギャップを生じ、素早いシフトワークを行ったにも拘わらず、レスポンスが遅くなるといった違和感を運転者に覚えさせる不具合がある。
【0005】
また、上記従来の自動クラッチにおいては、運転者によるギヤシフトレバーの操作の有無を歪ゲージによって検知するようにしているため、出力電圧が小さく不安定になりがちな歪ゲージの特性上、精度の高いクラッチの制御を実現することが難しいという別の不具合もある。
【0006】
そこで本発明は、運転者の意志に応じた速度でのクラッチ接続を正確に行えるようにして、車両の運転操作時に運転者に違和感を与えることのない車両用自動クラッチを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するための手段として、請求項1の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、この圧電セラミックスの出力電圧を受け、その出力電圧の変化状態に応じて操作アクチュエータのクラッチ接続方向のストローク速度を制御するコントローラと、を備えた構成とした。圧電セラミックスは入力荷重の変化速度と大きさに応じて、出力電圧も同様の変化速度と大きさで変化する特性を有し、しかも、入力荷重に対して比較的大きな出力電圧を得ることができることから、ギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度で操作アクチュエータをストロークさせ、クラッチの接続を行うことができる。
【0008】
また、請求項2の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、変速機でのギヤシフトの完了を検出するシフト完了検出器と、前記圧電セラミックスの出力電圧を受け、所定のしきい電圧と比較するしきい電圧比較手段と、このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに操作アクチュエータにクラッチを遮断するストローク指令を出力する遮断ストローク指令出力手段と、前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、前記シフト完了検出器の完了検出信号と前記電圧変化演算手段の演算結果を受け、出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる接続ストローク制御手段と、を備えた構成とした。変速時や発進時に運転者がギヤシフトレバーを操作すると、圧電セラミックスの出力電圧が所定のしきい電圧以上となるため、まず、遮断ストローク指令出力手段から操作アクチュエータにクラッチ遮断方向のストローク指令が為されてクラッチが一旦遮断され、その後に、変速機でのギヤシフトが完了し、シフト完了検出器から接続ストローク制御手段に完了検出信号が入力されると、接続ストローク制御手段が出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる。これにより、クラッチの接続はギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度で行われることとなる。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明の電圧変化演算手段が出力電圧の変化速度を演算するようにした。
【0010】
さらに、請求項4の発明は、請求項2または3の発明の電圧変化演算手段が出力電圧の最大変化量を演算するようにした。
【0011】
さらにまた、請求項5の発明は、請求項3または4の発明の電圧変化演算手段が出力電圧の変化速度の変化率をも演算するようにした。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図2は、本発明の実施例の全体概略構成を示すもので、同図において、1は、車両のエンジンと変速機の間に介装された本発明にかかる自動クラッチであり、2は、この自動クラッチ1の摩擦係合機構を含むクラッチ本体部である。このクラッチ本体部2は、エンジンのクランクシャフト4に結合されたフライホイール5と、このフライホイール5に結合されたクラッチカバー6と、このクラッチカバー6内で変速機の入力軸7にスプライン嵌合されたクラッチディスク8と、フライホイール5と共にこのクラッチディスク8の外周側の摩擦板9a,9bを挟圧するプレッシャプレート10と、このプレッシャプレート10を前記摩擦板9a,9b方向に付勢するダイヤフラムスプリング11と、このダイヤフラムスプリング11の内周端をフライホイール5方向に変位させてプレッシャプレート10をクラッチディスク8から離反させるレリーズベアリング12と、エンジンに結合されるクラッチハウジング13に枢支され、その回動操作によってレリーズベアリング12を進退操作させるレリーズレバー14とを備えている。
【0014】
そして、上記のクラッチ本体部2は、常態においてダイヤフラムスプリング11がプレッシャプレート10をクラッチディスク8に押し付け、クランクシャフト4から入力軸7への動力伝達を可能にしており(以下、この状態をクラッチの接続と呼ぶ。)、その状態からレリーズベアリング12が前進操作されると、ダイヤフラムスプリング11によるプレッシャプレート10の押し付け力が解除されて、クランクシャフト4と入力軸7の間の動力伝達が遮断される(以下、この状態をクラッチの遮断と呼ぶ。)ようになっている。また、クラッチディスク8の一対の摩擦板9a,9bはクッショニングプレート15を介して連結されていて、この摩擦板9a,9bがプレッシャプレート10とフライホイール5によって挟圧されたときに、クッショニングプレート15によって両者を離反させる方向のばね反力が作用するようになっている。このため、エンジン側摩擦要素であるプレッシャプレート10及びフライホイール5と、駆動輪側摩擦要素であるクラッチディスク8とは、レリーズレバー14の変位に応じた力で摩擦係合される。尚、この実施例においては、プレッシャプレート10及びフライホイール5と、クラッチディスク8とによって摩擦係合機構が構成されている。
【0015】
また、前記クラッチハウジング13の外側には油圧シリンダ16が取り付けられ、この油圧シリンダ16から延出したピストンロッド17の先端が前記レリーズレバー14の基端に結合されている。この油圧シリンダ16は、供給油圧に応じてピストンロッド17を進退動作させるものであるが、その油圧経路には供給油圧を調整するための電磁弁18が介装されている。この実施例においては、油圧シリンダ16とこの電磁弁18とが本発明における操作アクチュエータを構成しており、電磁弁18の通電電流を後述するコントローラ19によって制御することにより、ピストンロッド17のストロークを適宜調整するようになっている。
【0016】
前記油圧シリンダ16につながる油圧経路は、オイルタンク20の作動油を供給する供給通路21と、作動油をオイルタンク20に戻すドレン通路22とが並列に設けられ、これらの通路21,22が、前記油圧シリンダ16に接続された給排通路23に前記電磁弁18を介して接続された概略構成となっている。そして、前記供給通路21には、電動モータ24によって駆動される油圧ポンプ25と、この油圧ポンプ25による吐出圧を蓄圧するアキュムレータ26と、このアキュムレータ26の圧力を検出する圧力スイッチ27とが配設されており、アキュムレータ26の圧力が圧力スイッチ27を通してコントローラ19によって監視され、その圧力が常に設定圧力範囲内に維持されるように、電動モータ24のオン・オフがコントローラ19で制御されるようになっている。したがって、供給通路21の供給圧は常時設定圧力の範囲に維持されている。尚、図中28は、リリーフ弁を示し、29は、逆止弁を示す。また、電磁弁18は、給排通路23に対する供給通路21とドレン通路22の連通面積の割合を通電電流iに応じて可変制御し、それによって油圧シリンダ16のストローク量及び速度を適宜制御するようになっている。
【0017】
一方、コントローラ19は、図2で示す各種の検出器30〜32から信号を入力され、これらの入力信号に基づいて電磁弁18に通電する電流iを制御するようになっている。以下、コントローラ19に信号を入力する30〜32の検出器について簡単に説明する。
【0018】
30は、出力回路33に接続された圧電セラミックスであり、この圧電セラミックス30は、変速機のギヤ機構を手動操作するためのギヤシフトレバー38に付設され、出力回路33を介してコントローラ19にその出力電圧を入力するようになっている。出力回路33は、図3に示すように、電圧オフセット回路34、フィルタ回路35、温度補償回路36、及び、増幅回路37から成り、圧電セラミックス30の出力電圧を外乱による影響を受けることなく常に安定したかたちでコントローラ19に入力できるようになっている。また、圧電セラミックス30は、周知のように、出力電圧が入力荷重の変化速度と大きさに応じて、同様の変化速度と大きさで変化する特性を有しており、したがって、圧電セラミックス30からコントローラ19には、運転者がギヤシフトレバー38に加えた荷重の変化に応じた電圧が入力されることとなる。
【0019】
尚、この圧電セラミックス30の出力電圧の具体的な特性は、例えば、図4及び図5(A)に示すようになる。図4及び図5(A)は、運転中にギヤシフトレバー38を2速から3速にシフトし、後にさらに3速から2速にシフトした場合の、2.5Vを中立電圧とする出力電圧の特性図であって、同図中の実線は運転者がギヤシフトレバー38を素早く操作したとき、つまり、入力荷重の変化速度と大きさが大きいときの特性を示し、鎖線は運転者がギヤシフトレバー38をゆっくりと操作したとき、つまり、入力荷重の変化速度と大きさが小さいときの特性を示している。
【0020】
また、31は、油圧シリンダ16のストローク量を検出するストロークセンサであり、32は、変速機の現在のギヤポジションと、変速機がギヤシフトを完了したことを検出するギヤポジション・センサである。尚、このギヤポジション・センサ32は、本発明におけるシフト完了検出器を構成する。
【0021】
ここで、コントローラ19の備える主な構成を図1に基づいて説明する。
【0022】
コントローラ19は、圧電セラミックス30の出力電圧を受け、その出力電圧をしきい電圧ΔE0と比較するしきい電圧比較手段と、このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、圧電セラミックス30の出力電圧がしきい電圧ΔE0以上のときに油圧シリンダ16をクラッチ遮断方向に最大ストロークさせる電流iを電磁弁18に出力する遮断ストローク指令出力手段と、前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、圧電セラミックス30の出力電圧がしきい電圧ΔE0以上のときにこの出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、ギヤポジション・センサ32からのシフト完了信号とこの電圧変化演算手段の演算結果を受けて、電磁弁18にその演算結果に応じた電流i、つまり、圧電セラミックス30の出力電圧の変化状態に応じた速度で油圧シリンダ16をクラッチ接続方向にストロークさせる電流iを出力する接続ストローク制御手段とを備え、これらの構成によってクラッチの接続と遮断を制御するようになっている。
【0023】
ここで、しきい電圧比較手段で用いるしきい電圧ΔE0は、発進時や変速時に運転者がギヤシフトレバー38に力を加えたことを判断するためのもので、図4及び図5(A)に示すように極めて小さな値に設定されている。また、遮断ストローク指令出力手段で電磁弁18に出力する電流iは、図5(C)中a〜b,a'〜b'で示すように、油圧シリンダ16をクラッチ遮断方向に即時に最大ストロークさせられる値に設定されている。
【0024】
また、電圧変化演算手段においては、出力電圧の変化状態として、出力電圧の出力初期の変化速度ΔE/dtと最大変位ΔEmaxを演算し、接続ストローク制御手段においては、前記演算手段で求めた出力電圧の変化速度ΔE/dtに応じた速度で油圧シリンダ16をクラッチ接続方向にストロークさせ、その制御判断を出力電圧の最大変位ΔEmaxを基にしてチェックする。尚、このクラッチ接続方向のストローク制御は、出力電圧の変化速度ΔE/dtのみに応じて行うことや、最大変位ΔEmaxのみに応じて行うことも可能である。また、このクラッチ接続方向のストローク制御は、ギヤシフトレバー38を素早く操作した場合の制御精度を高めるために、さらに電圧速度ΔE/dtの変化率をも制御判断の一つに加えることも可能である。
【0025】
さらに、この実施例の場合、接続ストローク制御手段による油圧シリンダ16のストローク速度の制御は、シリンダ16のストロークを複数の区分に分け、ストロークセンサ31からの信号の入力を基にそのストローク区分毎に別々に行うようにしている。即ち、ストローク区分としては、図5(C)に示す、最大ストローク位置jから半クラッチ領域直前の位置kまで、この位置kから半クラッチ領域内の位置mまで、この位置mから半クラッチ領域を越えた位置nまで、さらにこの位置nから最小ストローク位置pまでで夫々分け、n〜pの区分では出力電圧の変化速度ΔE/dtにかかわらず常に最大速度でストロークさせ、j〜kの区分ではn〜pの区分を除く3区分の中で最も速い速度VAに、k〜mの区分では最もゆっくりとした速度VB、m〜nの区分では速度VBよりも僅かに速い速度VCとなるように、各速度VA,VB,VCを出力電圧の変化速度ΔE/dtに応じて制御するようにしている。したがって、クラッチの接続は、圧電セラミックス30の出力電圧の変化がいかなる状態の場合にもストローク区分毎にきめ細かく制御されることとなり、常にスムーズで、かつロス時間の少ないものとなる。
【0026】
以下、この車両用自動クラッチ1の作動をコントローラ19の制御を中心として図6のフローチャートを参照して説明する。尚、発進時も含めていずれの変速段のギヤシフト時にも、すべてほぼ同様のクラッチ制御が行われるため、以下では、ギヤシフトレバー38を2速から3速にシフト操作する場合についてだけを説明し、他のシフト操作を行う場合については説明を省略するものとする。
【0027】
変速機を2速にシフトした状態で車両が運転されているときに、運転者がギヤシフトレバー38を3速に操作すると、運転者が最初にギヤシフトレバー38に加えた僅かな荷重が圧電セラミックス30で検出され、圧電セラミックス30からその荷重に応じた出力電圧がコントローラ19に入力される。すると、コントローラ19は、図6のステップ100においてこの出力電圧を受け、つづくステップ101において、この出力電圧がしきい電圧ΔE0以上であるかどうかを判断し、出力電圧がしきい電圧ΔE0以上のときにだけ次のステップ102に進み、同ステップ102において電磁弁18にクラッチを最大速度で遮断するための電流iを電磁弁18に出力する。これにより、クラッチは図5(C)のa〜b,a'〜b'に示すように即時に遮断されることとなる。
【0028】
次に、ステップ103において、ギヤポジション・センサ32からのシフト完了信号の入力の有無を判断し、シフト完了信号が入力された場合(図5(B)参照。)には、ステップ104に進んで、出力電圧の入力初期の電圧変化速度ΔE/dtと最大変位ΔEmaxを演算すると共に、ステップ105において、油圧シリンダ16のストローク速度VAをこの演算結果に応じて制御すべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のc〜d,c'〜d'参照。
【0029】
この後、ストロークセンサ31からの入力信号を基に、ステップ106において、クラッチが半クラッチ直前の位置kに達したかどうかの判断を行い、位置kに達したと判断した場合には次のステップ107に進んで、このステップ107において、油圧シリンダ16のストローク速度VBを前記の演算結果に応じて制御すべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のd〜e,d'〜e'参照。
【0030】
次に、ステップ108において、ストロークセンサ31からの入力信号を基にしてクラッチが半クラッチ領域内の位置mに達したかどうかの判断を行い、位置mに達したと判断した場合にはさらに次のステップ109に進んで、このステップ109において、油圧シリンダ16のストローク速度VCを前記の演算結果に応じて制御すべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のe〜f,e'〜f'参照。
【0031】
さらにこの後、ステップ110において、ストロークセンサ31の信号を基にしてクラッチが半クラッチ領域を越えた位置nに達したかどうかの判断を行い、位置nに達したと判断した場合にはステップ111に進み、同ステップ111で油圧シリンダ16を最大速度でストロークさせるべく電流iを電磁弁18に出力する。このときのクラッチのストローク速度は図5(C)のf〜g,f'〜g'参照。
【0032】
そして、最後にステップ112において、ストロークセンサ31の信号からクラッチが初期位置pに達したかどうかの判断を行い、位置pに達したと判断したところでクラッチの制御を終了する。
【0033】
この自動クラッチ1は以上のように、ギヤシフトレバー38に付設した圧電セラミックス30の出力電圧の変化速度ΔE/dtと最大変位ΔEmaxに応じてクラッチの接続速度を制御するようにしているため、運転者が素早いギヤシフトレバー38の操作を行うと、図5(C)中の実線で示すように、その操作荷重の変化に応じた素早いクラッチ接続が行われ、逆に、運転者がゆっくりとしたギヤシフトレバー38の操作を行うと、図5(C)の破線で示すようにゆっくりとしたクラッチ接続が行われることとなる。したがって、この自動クラッチ1を採用した場合には、クラッチを素早く接続したい、或いは、ゆっくりと接続したいといった運転者の意志に応じた速度でクラッチを適確に接続することができるようになり、その結果、運転者のレバー操作とクラッチ接続時に運転者が実際に受ける感覚とにギャップを覚えることがなくなる。
【0034】
また、この自動クラッチ1の場合、入力荷重に対する電圧出力の大きい圧電セラミックス30を用いているため、その出力電圧を利用するにあたってさして大きな増幅を必要とせず、そのため入力信号の誤差が少なくなって制御の精度が高まるという利点もある。
【0035】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、この圧電セラミックスの出力電圧を受け、その出力電圧の変化状態に応じて操作アクチュエータのクラッチ接続方向のストローク速度を制御するコントローラと、を備えた構成としたため、入力荷重の変化速度と大きさに応じて、出力電圧が同様の変化速度と大きさで変化する圧電セラミックスの特性から、ギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度で正確にクラッチの接続を行うことができる。したがって、クラッチを素早く接続したい、或いは、ゆっくりと接続したいといった運転者の意志に応じた速度でクラッチが接続されることから、運転者の操作意志とクラッチ接続時に運転者が実際に受ける感覚とに大きなギャップが生じることがなく、運転者にまったく違和感を与えることがない。また、入力荷重に対して圧電セラミックスの電圧の出力が大きいことから、入力信号の信号処理にあたって信号の増幅率を小さくすることができ、その分、クラッチの制御制精度を高めることができるという利点もある。
【0036】
また、請求項2〜5の発明は、エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、変速機でのギヤシフトの完了を検出するシフト完了検出器と、前記圧電セラミックスの出力電圧を受け、所定のしきい電圧と比較するしきい電圧比較手段と、このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに操作アクチュエータにクラッチを遮断するストローク指令を出力する遮断ストローク指令出力手段と、前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、前記シフト完了検出器の完了検出信号と前記電圧変化演算手段の演算結果を受け、出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる接続ストローク制御手段と、を備えた基本構成としたため、ギヤシフトレバーの操作に伴う圧電セラミックスの出力電圧を基にして、クラッチの速やかな遮断と、ギヤシフトレバーの操作状況に応じた速度でのクラッチの接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の一実施例を示す全体概略構成図。
【図3】同実施例を示す出力回路の構成図。
【図4】同実施例を示す出力電圧の特性図。
【図5】同実施例を示すタイミングチャート。
【図6】同実施例を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…自動クラッチ、
5…フライホイール(エンジン側摩擦要素)、
8…クラッチディスク(駆動輪側摩擦要素)、
10…プレッシャプレート(エンジン側摩擦要素)、
16…油圧シリンダ(操作アクチュエータ)、
18…電磁弁(操作アクチュエータ)、
19…コントローラ、
30…圧電セラミックス、
32…ギヤポジション・センサ(シフト完了検出器)、
38…ギヤシフトレバー。
Claims (5)
- エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、
この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、
運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、
このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、
この圧電セラミックスの出力電圧を受け、その出力電圧の変化状態に応じて操作アクチュエータのクラッチ接続方向のストローク速度を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とする車両用自動クラッチ。 - エンジン側摩擦要素と駆動輪側摩擦要素を近接離反させてトルクの伝達と遮断を行う摩擦係合機構と、
この摩擦係合機構を接続方向と遮断方向に変位させる操作アクチュエータと、
運転者によって操作されるギヤシフトレバーと、
このギヤシフトレバーに付設された圧電セラミックスと、
変速機でのギヤシフトの完了を検出するシフト完了検出器と、
前記圧電セラミックスの出力電圧を受け、所定のしきい電圧と比較するしきい電圧比較手段と、
このしきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに操作アクチュエータにクラッチを遮断するストローク指令を出力する遮断ストローク指令出力手段と、
前記しきい電圧比較手段の比較結果に基づき、前記出力電圧がしきい電圧以上のときに出力電圧の変化状態を演算する電圧変化演算手段と、
前記シフト完了検出器の完了検出信号と前記電圧変化演算手段の演算結果を受け、出力電圧の変化状態に応じた速度で操作アクチュエータをクラッチ接続方向にストロークさせる接続ストローク制御手段と、を備えたことを特徴とする車両用自動クラッチ。 - 電圧変化演算手段は、出力電圧の変化速度を演算することを特徴とする請求項2に記載の車両用自動クラッチ。
- 電圧変化演算手段は、出力電圧の最大変化量を演算することを特徴とする請求項2または3に記載の車両用自動クラッチ。
- 電圧変化演算手段は、出力電圧の変化速度の変化率をも演算することを特徴とする請求項3または4に記載の車両用自動クラッチ。
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