JP3895802B2 - 合わせガラス用多層中間膜及び合わせガラス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に耐貫通性およびガラスの飛散防止性に優れ、熱線反射性の高機能を有する合わせガラスに用いる合わせガラス用多層中間膜および合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より合わせガラスは、建築用および自動車のフロントガラス用等に広く使用されている。この合わせガラスの代表的なものとして、可塑化されたポリビニルアセタール樹脂組成物からなる中間膜を一対のガラス板間に介層して貼り合わせたものがある。このような合わせガラスは、外部から衝撃が加えられるとガラス部分が破損するが、ガラス間に介装された中間膜は容易に破損せず、また破損したガラスは中間膜に貼付した状態であるため、そのガラス破片が飛散することが少ない。従って、輸送機関や建造物の中の人間がガラスの破片により傷害を受けることを防止することができる。
【0003】
このような安全ガラスとしての機能を満足するためには、中間膜とガラスとの間の接着力をある範囲内に調整する必要がある。すなわち、ガラス板と中間膜との接着力が小さすぎる合わせガラスでは、外部からの衝撃によってガラスが膜から剥がれて飛散し、逆にガラス板と中間膜との接着力が大きすぎる合わせガラスでは、外部からの衝撃によってガラスと膜が共に破れて貫通するからである。
【0004】
ガラス板と中間膜との接着力を調整するには、通常、中間膜に接着力調整剤(衝撃強度増加剤と呼ばれることもある)を練り込んで含有させるか、あるいは表面に付着させる方法が採用されている。もちろん、中間膜中の含水量も調節される。
【0005】
接着力調整剤としては、一般にカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、変性シリコンオイル等が使用されている(例えば、特公昭45−32071号公報および特公昭55−29950号公報参照)。
【0006】
ところで、近年、ガラス板の内面側に高機能を有する層を設け、選択光線透過性や透明電導性等の高機能を付与した合わせガラスが提案されている。例えば、熱線反射ガラスや結露防止導電ガラス等であり、これら特殊な合わせガラスが建築物や自動車等に使用されはじめている。これらの特性は、主に高機能性の薄膜や真空蒸着法やスパッタリング法等によりガラス表面に形成することで得られる。
【0007】
高機能を有する層の構成としては、例えば、建築用熱線反射ガラスは、ガラス内側面に金属酸化物層(熱線反射層)を設けて構成されたものが多い。また、自動車用熱線反射ガラスでは、ガラス板の内側面に銀などの金属層を金属酸化物層で挟み込んだ層(熱線反射層)を設けて構成されたものが多い。
【0008】
これら金属酸化物層または金属層(熱線反射層)を用いた合わせガラスは、主に、ガラス板/熱線反射シート/中間膜/ガラス板、ガラス板/中間膜/熱線反射シート/中間膜/ガラス板という構成であり、ガラス板またはシートに設けられている高機能層はそれを保護するために合わせガラスの内側に配置されている。それゆえ、金属酸化物層または金属層と中間膜とが当接することになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような金属酸化物層または金属層を有する合わせガラスにおいても、高度の耐貫通性およびガラスの飛散防止性が要求されており、これらの性能を付与するためには、金属酸化物層または金属層と中間膜との接着力を高度に調整する必要がある。
【0010】
ところが、カルボン酸金属塩からなる接着力調整剤を中間膜に練り込むかあるいは表面に付着させたものは、金属酸化物層または金属層のない通常の合わせガラスと異なり、屋外暴露や紫外線照射により経時で両者間の接着力が低下しやすく、衝撃によりガラス板が中間膜より剥離しやすくなるという問題点があった。
【0011】
また、変性シリコンオイルからなる接着力調整剤を中間膜に練り込んだものは、屋外暴露や紫外線照射による経時変化は小さいが、温度により接着力の経時変化が大きくなり、衝撃などによりガラス板が中間膜より剥離しやすくなるという問題点があった。
【0012】
この接着力低下は、変性シリコンオイルが液体でありかつ樹脂および可塑剤と完全に相溶しないため、金属酸化物層または金属層と中間膜との界面に徐々にブリードアウトしてくるためと考えられる。
【0013】
なお、変性シリコンオイルからなる接着力調整剤を中間膜の表面に付着させたものは、熱線反射面側(金属酸化物層または金属層)とガラス板側とで、中間膜とガラス板との接着力に著しい差異が生じ、耐貫通性が悪くなるという問題点があった。
【0014】
本発明者は、上記の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する合わせガラス用多層中間膜を熱線反射ガラス等の少なくとも内面側に金属酸化物層または金属層が形成された透明板に用いることにより、屋外暴露や紫外線照射および温度により経時で接着力の低下がほとんど無く耐貫通性およびガラスの飛散防止性に優れている合わせガラスを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の目的は、屋外暴露や紫外線照射および温度により経時で接着力の低下がほとんど無く、耐貫通性およびガラスの飛散防止性に優れ、熱線反射性等の高機能性を有するガラスに用いる合わせガラス用多層中間膜および合わせガラスを提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層と、
アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)と、
アセタール化度が80〜95モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される高アセタール化度層とから構成されていて、
該基層が接着力調整層(A)と該高アセタール化度層との間に積層されていることを特徴とする合わせガラス用多層中間膜を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層と、
アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)とから構成されていて、
該接着力調整層(A)が該基層の両側の面に設けられていることを特徴とする合わせガラス用多層中間膜を提供するものである。
【0018】
さらに、本発明は、アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層と、
アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)と、
非極性変性シリコンオイルからなる接着力調整層(B)とから構成されていて、該基層が該接着力調整層(A)と該接着力調整層(B)との間に積層されていることを特徴とする合わせガラス用多層中間膜を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、ガラス板と、内面側に金属酸化物層または金属層が形成された透明板との間に上記記載の合わせガラス用多層中間膜が挟着されていて、アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)が前記金属酸化物層または金属層側に当接するように接着されていることを特徴とする合わせガラスを提供するものである。
【0020】
以下、本発明の構成について詳述する。
本発明に用いる合わせガラス用多層中間膜の基層は、アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂に可塑剤を含有させてなる可塑化ポリビニルアセタール樹脂より形成される。更に変性シリコンオイルを含有させても本発明の目的は達せられる。
【0021】
このポリビニルアセタール樹脂は、従来合わせガラス用中間膜に用いられている種類の樹脂、例えば、ポリビニルアルコールを炭素数4〜10のアルデヒドでアセタール化した樹脂が使用される。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が60モル%より低い場合には可塑剤との相溶性が悪く、また、樹脂のアセタール化度が75モル%より高い場合には合わせガラスにした際の種々の性能、例えば、耐貫通性が低下する。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂を作製するのに使用するポリビニルアルコールとしては、平均重合度800〜3000のものが好ましい。平均重合度が800未満であると合わせガラスの耐貫通性が劣り、平均重合度が3000を超えると強度が大きすぎて安全ガラスとして通常用いられない。
【0024】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は、透明性、耐熱性、耐光性を良好ならしめるために、95モル%以上であることが好ましい。
【0025】
上記ポリビニルアセタールに配合される可塑剤は、一塩基酸エステル、多塩基酸エステル等の有機系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤が用いられる。一塩基酸エステルの中では、トリエチレングリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2ーエチル酪酸、ヘプタン酸、n−オクチル酸、2ーエチルヘキシル酸、ペラスゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の有機酸等との反応によって得られたグリコール系エステルが望ましい。その他、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと上記の如き有機酸とのエステルも用いられる。
【0026】
多塩基酸のエステルとしてはアジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の有機酸と炭素数4〜8の直鎖状または分岐状アルコールとのエステルが望ましい。
【0027】
また、リン酸系可塑剤としてはトリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスファイト等が好ましい。
【0028】
より好ましい例としては、一塩基酸エステルでは、トリエチレングリコールージー2ーエチルブチレート、トリエチレングリコールージー2ーエチルヘキソエート、トリエチレングリコールージーカプロネート、トリエチレングリコールージーnーオクトエート等が挙げられる。
【0029】
このような可塑剤は、好適には樹脂100重量部に対して5〜80重量部が混合される。可塑剤含有量が5重量部未満であると耐貫通性が低下することがあり、逆に80重量部を越えると、可塑剤がブリードアウトして合わせガラスの透明性やガラス板等との接着性が低下することがある。
【0030】
また、上記基層には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、接着力調整剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
【0031】
上記合わせガラス用多層中間膜の基層は、ポリビニルアセタール樹脂に所要量の可塑剤を配合し、さらに必要に応じてその他の添加剤を配合し、これを、例えば押出機により混練溶融しシート状に成形することにより得ることができる。また、ロールで混練溶融した後プレスして得ることもできる。
【0032】
上記合わせガラス用多層中間膜の基層の厚さは、特に限定されるものではないが、安全合わせガラスとして必要な特性である耐貫通性を保持するためには、0.1〜2mmが好ましい。
【0033】
上記基層の片面に接して用いられる接着力調整層(A)、又は、基層の両側の面に用いられる接着力調整層(A)は、アセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂に可塑剤を含有させた可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物より形成される。
【0034】
このようなポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを炭素数4〜10のアルデヒドでアセタール化する事により得られ、通常主鎖のエチレン基にアセタール基とアセトキシ基と水酸基を有する。ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコールの平均重合度は800〜3000であることが好ましい。平均重合度が800未満であると得られた樹脂から形成される膜は機械的強度が劣り、これを用いた合わせガラスは当然のごとく耐貫通強度が低く、平均重合度が3000を越える場合には強度が強すぎて通常合わせガラスには用いられない。
【0035】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、アセトキシ基が結合しているエチレン基の量は8〜30モル%に限定される。この量が8モル%以下であると、衝撃荷重が負荷されたときの伸度が充分得られず、耐衝撃性は確保できず、逆に30モル%以上では透明性、アルデヒドの反応率が著しく低下するため好ましくない。
【0036】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は60〜75モル%に限定される。60モル%未満では、得たれた膜が硬くなりすぎて良好な伸びを示さず、また、可塑剤との相溶性も良くなく透明性が損なわれる。75モル%より大きくなると膜は逆に柔らかくなりすぎ機械的強度が低下するために好ましくない。
【0037】
また上記ポリビニルアセタール樹脂に配合される可塑剤種、可塑剤量は前記基層で使用したもの及びその量的範囲と同様である。また、本樹脂組成物の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.1〜2mmである。また、上記接着力調整層(A)は、紫外線吸収剤または酸化防止剤を含有させてもよく、これらは従来のものが使用される。
【0038】
上記基層の片面に接して使用される高アセタール化度層は、アセタール化度が80〜95モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂に可塑剤を含有させた可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物より形成される。
【0039】
このようなポリビニルアセタール樹脂としては、前述の基層に使用されている種類の樹脂、例えば、ポリビニルアルコールを炭素数4〜10のアルデヒドでアセタール化した樹脂が使用される。
【0040】
上記ポリビニルアセタール樹脂の調整方法としては、溶媒に30重量%以上のDMSOを用いて合成を行うか、あるいは50モル%以上アセタール化された樹脂を非極性溶媒中にて合成する方法を用いる。アセタール化度が80モル%以下では膜とガラスの接着力が強すぎて合わせガラスの耐貫通性が低下する。また、95モル%を越えると接着に寄与する水酸基の量が少ないため必要な接着力が得られない。
【0041】
上記アセタール化度が80〜95モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂に使用されるポリビニルアルコール、あるいは配合される可塑剤の種類及びその量は、前記基層で使用した種類および範囲と同様である。
【0042】
また、高アセタール化度層である樹脂組成物層の厚みは特に限定されるものではないが、通常0.1〜2mmである。また、上記高アセタール化度層には、紫外線吸収剤または酸化防止剤を含有させてもよく、これらは従来のものが使用される。
【0043】
なお、本発明の第2の発明は、第1の発明で使用される高アセタール化度層の代りに接着力調整層(A)を用いる合わせガラス用多層中間膜であり、上記基層の両側の接着力調整層(A)は、同一のものでも、異種のものでもよい。
【0044】
また、本発明の第3の発明は、第1の発明で使用される高アセタール化度層の代りに非極性変性シリコンオイルからなる接着力調整層(B)を用いる合わせガラス用多層中間膜であり、該接着力調整層(B)は上記基層とガラス板との間に設けられ合わせガラスを構成する。
【0045】
第3の発明において該接着力調整層(B)に使用される非極性変性シリコンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコンオイル、α−メチルスチレン変性シリコンオイル、アルキル基変性シリコンオイル、高級脂肪酸変性シリコンオイル、カルナバ変性シリコンオイル等が挙げられ、これらの非極性変性シリコンオイルは、ポリシロキサンに変性すべき化合物を反応させて得られる粘稠な液体である。
【0046】
これらの非極性変性シリコンオイルは、一般に適当な溶媒に溶解し、中間膜の基層の表面に塗工され、乾燥されて接着力調整層(B)が形成される。非極性変性シリコンオイルの塗布量は、通常10-7〜10-1g/m2、好ましくは10-5〜10-2g/m2である。この塗布量が10-7g/m2未満の場合は接着力調整の効果が得られず、逆に、10-1g/m2を越える場合は必要な接着力が得られない。
【0047】
これらの非極性変性シリコンオイルは、通常単独で1種類用いられるが、適宜2種以上を組合せて使用してもよい。また、必要に応じて他の成分を非極性変性シリコンオイルの中に含有させて接着力調整層(B)を形成してもよいが、好ましくは、非極性変性シリコンオイルがブリードアウトしてこないように基層に塗工する方法が挙げられる。
【0048】
非極性変性シリコンオイルの塗工方法としては、例えば、中間膜の基層面に非極性変性シリコンオイルあるいはその溶液を、スプレーにより噴射または塗布する方法、ロール表面から転写または印刷する方法、非極性変性シリコンオイルあるいはその溶液に浸漬する方法などが挙げられる。
【0049】
脱気性を良くするために、中間膜の押出工程において、エンボスロールにより基層表面にエンボスを付ける場合は、エンボスロールに非極性変性シリコンオイルあるいはその溶液を連続的に付けることにより、基層の表面にエンボス加工処理と同時に非極性変性シリコンオイルを塗工することも可能である。基層の表面にエンボスが付けられている場合には、例えば、表面のエンボスを変形させないためにも表面をあまり溶解しない溶剤を用いるか、またはある程度表面に馴染ませるために基層表面と相溶する溶剤を用いることもある。
【0050】
こうして得られる中間膜を用いて合わせガラスを製造するには、ガラス板と、内面側に金属酸化物層または金属層が形成された透明板との間に、金属酸化物層あるいは金属層側にアセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)が当接するように挟持する。
【0051】
ガラス板としては、いずれも一般に無機または有機の透明なガラス板が使用される。透明板は、透明であれば特に限定されず、通常は透明なガラス板が使用される。
【0052】
金属酸化物層または金属層は、透明電導性や熱線反射性等の高機能を付与するためのもので、透明電導性付与のためには、例えば酸化インジウムと酸化錫との混合物(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛、金、銀、銅等の被膜が形成される。
【0053】
熱線反射性付与のためには、例えば金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウムおよびこれらの合金あるいは混合物の金属被膜が形成される。
【0054】
これらの金属酸化物層または金属層は、ガラス板の内面側に直接形成してもよく、あるいは一旦適当なシートに金属酸化物層または金属層を形成しておき、この機能性シートをガラス板の内面側に適当な接着層(中間膜)を介して接着させてもよい。
【0055】
なお、金属酸化物層または金属層は、ガラス板の内面側のみならず、ガラス板の内面側と外面側の両面に形成してもよい。
【0056】
次いで、オートクレーブなどの装置を用いてこの積層体を加熱、加圧する。こうして、本発明の合わせガラスが製造される。この場合、金属酸化物層または金属層が形成されたガラス板と中間膜との接着力と、金属酸化物層または金属層が形成されていないガラス板と中間膜との接着力とは、ほぼ同等であることが耐貫通性の点から好ましい。
【0057】
金属酸化物層または金属層が形成されたガラス板と中間膜との接着力は、アセトキシ基量を変えることにより、また、金属酸化物層または金属層が形成されていないガラス板と中間膜との接着力は、アセトキシ基量、アセタール化度あるいは非極性シリコンオイルの種類及び量などをかえることにより調整することができる。
【0058】
図1には、本発明の合わせガラス用多層中間膜および合わせガラスの代表的な例を示す分解断面図が示してある。図1において、10はガラス板、11は金属酸化物層または金属層、21はアセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)、22はアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層、23はアセタール化度が80〜95モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される高アセタール化度層、あるいはアセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)、あるいは非極性変性シリコンオイルからなる接着力調整層(B)、22はアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層、20は合わせガラス用多層中間膜、30は合わせガラスである。
【0059】
【作用】
本発明によれば、金属酸化物層または金属層により高機能性(熱線反射性等)が付与され、アセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)を金属酸化物層または金属層側に配することにより、合わせガラス用多層中間膜と金属酸化物層または金属層との接着力が適度に調整される。
【0060】
また、アセタール化度が80〜95モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂からなる樹脂組成物より形成される高アセタール化度層、あるいはアセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)、あるいは非極性変性シリコンオイルからなる接着力調整層(B)を金属酸化物または金属層が形成されていないガラス側に配することによりガラス面と中間膜との接着力が適度に調整される。特に、非極性変性シリコンオイルはカルボン酸金属塩に比べ得られる中間膜の耐湿性がよく、また基層などの樹脂に練り込むのではなく表面に塗工するのでブリードアウトによる経時変化が少なく量も比較的少量で効果を発揮する。
【0061】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
「実施例1」
▲1▼合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)(アセトキシ基11.9モル%のポリビニルアセタール膜)の調製
純水2890gに重合度1700、ケン化度88.1%のポリビニルアルコール191gを加え加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35重量%塩酸201gとブチルアルデヒド140gを加えて、ポリビニルブチラール樹脂を析出させた。その後反応系を温度50℃で5時間保持し反応を完了させた。過剰の水での洗浄により、未反応アルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を中和、塩を除去し、乾燥を経て、ポリビニルブチラール樹脂の白色粉体を得た。このポリビニルブチラール樹脂のアセタール化度は62.4モル%、アセトキシ基量は11.9モル%であった。
【0063】
上記ポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージー2ーエチルブチレート14g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10gを混合する。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.2mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.15mmの膜(接着力調整層(A))を得た。その後、これを恒温恒湿室で含水率が0.4〜0.5重量%になるように調製した。
【0064】
▲2▼合わせガラス用多層中間膜の基層の調製
重合度1700、ケン化度99.2%、アセタール化度65モル%のポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージー2ーエチルブチレート20g、酢酸マグネシウム0.015g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10gを配合し、ライカイ機を用いて混合した。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.7mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.46mmの中間膜の基層を得た。
【0065】
▲3▼合わせガラス用多層中間膜の高アセタール化度層(アセタール化度85モル%のポリビニルアセタール膜)の調製
重合度1700、ケン化度99.2%、アセタール化度65モル%のポリビニルブチラール樹脂60gと、キシレン1768gをセパラブルフラスコに入れ、25℃で充分攪拌しながら樹脂を溶解させた。その後、n−ブチルアルデヒド95gを、一括投入後、約5分間攪拌により充分混合した。その後35%塩酸溶液15gを約15分かけて滴下ロートにより添加混合した。これらを添加混合してから約30分後、全系を60℃に昇温し3時間恒温保持し反応を完了させる。反応完了したものに重曹を溶解させた大過剰の水/メタノール(混合比1:1)を添加し、中和を行う。その後、これを大過剰のメタノール中に滴下し樹脂を再沈させ、水洗乾燥させ樹脂を得た。
【0066】
上記ポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージー2ーエチルブチレート15g、紫外線吸収剤0.08g、酸化防止剤0.08gを混合する。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.2mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.15mmの膜を得た。その後、これを恒温恒湿室で含水率が0.4〜0.5重量%になるように調整した。
【0067】
▲4▼合わせガラスの作製
こうして得られた合わせガラス用多層中間膜の基層、アセトキシ基11.9モル%のポリビニルブチラール膜(接着力調整層(A))および高ブチラール化度膜(高アセタール化度層)を305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO層が内側になるようにして、ガラス/ITO/アセトキシ基11.9モル%のポリビニルアセタール膜(接着力調整層(A))/中間膜基層/高ブチラール化度層/ガラスの構成で挟み込み、ロールで予備接着した。次いで、130℃のオートクレーブで13kg/cm2の圧力で圧着して合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、次の方法で、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表2に示す。
【0068】
〈耐光性試験〉
JIS R3212の耐光性試験に準じ、750Wの石英ガラス水銀灯から230mmの距離に合わせガラスを置き、45℃で200時間照射する。照射前後の合わせガラスのパンメル値を評価する。
【0069】
〈パンメル試験〉
照射前および照射後合わせガラスを−18℃±0.6℃の温度に16時間調整し、この合わせガラスの中央部(150mm×150mmの部分)を0.45Kgのヘッドを有するハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕し、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を、表1によってパンメル値で判断した。
【0070】
【表1】
【0071】
本発明においては、パンメル値が3〜8の範囲で、しかも両面で差異の小さい合わせガラスが、耐貫通性およびガラスの飛散防止性が優れるので好ましい。パンメル値が3未満では接着力が低くなり、衝撃等による飛散防止性が低下する。逆に、パンメル値が8を越えると接着力が高くなり、衝撃等による合わせガラスの耐貫通性が低下する。
【0072】
「実施例2」
ブチルアルデヒド仕込量を変え、その他の工程は実施例1と同様にしてアセトキシ基11.9モル%、アセタール化度70.0モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。このポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールー2ージーエチルブチレート12.5g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10gを混合し、実施例1と同様に0.15mmの合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)を得て、含水率が0.4〜0.5%になるように調整した。また、中間膜の基層は、実施例1と同一の膜を用いた。さらに、実施例1においてアルデヒド仕込量および可塑剤混練量を変え、その他の工程を実施例1と同様にして、ブチラール化度88モル%、可塑剤量25重量部の高ブチラール化度膜(高アセタール化度層)を調整した。
【0073】
こうして得られた接着力調整層のアセトキシ基11.9モル%のポリビニルアセタール膜、多層中間膜の基層および高アセタール化度層の高ブチラール化度膜を305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ZnO/Ag/ZnOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのZnO層が内側になるようにして、実施例1と同様にして合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表2に示す。
【0074】
「実施例3」
ポリビニルアセタール樹脂作製時に、ケン化度が82.1モル%のポリビニルアルコール樹脂を用い、またアルデヒド仕込量を変え、その他の工程は実施例1と同様にしてアセトキシ基17.9モル%、アセタール化度64.5モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。このポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールー2ージーエチルブチレート13g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10gを混合し、実施例1と同様に0.15mmの合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)を得て、含水率が0.4〜0.5%になるように調整した。また、中間膜の基層は、実施例1と同様の物を用いた。さらに、中間膜とガラス板との間に挟み込む膜(接着力調整層(A))として、実施例1に用いたアセトキシ基11.9モル%、アセタール化度62.4モル%、可塑剤部数28重量部のポリビニルブチラール膜を合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)として使用した。
【0075】
こうして得られた接着力調整層(A)のアセトキシ基17.9モル%のポリビニルブチラール膜、中間膜の基層および接着力調整層のアセトキシ基11.9モル%のポリビニルブチラール膜とを305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO層が内側で、かつアセトキシ基17.9モル%のポリビニルブチラール膜とITO層が直接接触するようにして、実施例1と同様にして合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表2に示す。
【0076】
「比較例1」
ポリビニルアセタール樹脂として、重合度1700、アセタール化度65モル%、ケン化度99%のポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージー2ーエチルブチレート20g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10g、下記化学式「化1」で表されるポリエーテル変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)0.015gおよび酢酸マグネシウム0.016gを混合した。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.8mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.76mmの中間膜を得た。
【0077】
この合わせガラス用多層中間膜を305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO層が内側になるようにして、積層し、ロールで予備接着した。次いで、130℃のオートクレーブで13kg/cm2の圧力で圧着して合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表2に示す。
【0078】
【化1】
【0079】
「比較例2」
比較例1における酢酸マグネシウムの配合量を0.018gに変えた以外は比較例1と同様にして、合わせガラスを作製した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた合わせガラス用中間膜のデータを表3に示す。
(注)表3中の比較例については中間膜は1層構成であり、その1層に用いている樹脂組成物の組成を表に示している。
【0082】
「実施例4」
▲1▼合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)の調製(アセトキシ基11.9モル%のポリビニルアセタール膜)
純水2890gに重合度1700、ケン化度88.1%のポリビニルアルコール191gを加え加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35重量%塩酸201gとブチルアルデヒド140gを加えて、ポリビニルブチラール樹脂を析出させた。その後反応系を温度50℃で5時間保持し反応を完了させた。過剰の水での洗浄により、未反応アルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を中和、塩を除去し、乾燥を経て、ポリビニルブチラール樹脂の白色粉体を得た。このポリビニルブチラール樹脂のアセタール化度は62.4モル%、アセトキシ基量は11.9モル%であった。
【0083】
上記ポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージ−2−エチルブチレート14g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10gを混合する。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.2mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.15mmの膜(接着力調整層(A))を得た。その後、これを恒温恒湿室で、含水率が0.4〜0.5重量%になるように調製した。
【0084】
▲2▼合わせガラス用多層中間膜の基層と接着力調整層(B)の調製
重合度1700、ケン化度99.2%、アセタール化度65モル%のポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージ−2−エチルブチレート20g、酢酸マグネシウム0.015g、紫外線吸収剤0.08g、酸化防止剤0.08gを配合し、ライカイ機を用いて混合した。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.7mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.60mmの中間膜の基層を得た。
【0085】
この中間膜の基層の一面に、前記化学式「化1」で表されるポリエーテル変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)のアセトン溶液をガーゼで薄く塗布して乾燥した。ポリエーテル変性シリコンオイルの塗布量は約10-4g/m2であった。その後、これを恒温恒湿室で、含水率が0.4〜0.5重量%になるように調整した。
【0086】
▲3▼合わせガラスの作製
こうして得られた非極性変性シリコンオイルを一面に塗布した合わせガラス用多層中間膜の基層及びアセトキシ基11.9モル%のポリビニルブチラール膜(接着力調整層(A))を305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO層が内側になるようにして、ガラス/ITO/アセトキシ基11.9モル%のポリビニルアセタール膜(ポリビニルブチラール膜:接着力調整層(A))/中間膜基層/非極性変性シリコンオイル層(接着力調整層(B))/フロートガラスの構成で挟み込み、ロールで予備接着した。次いで、130℃のオートクレーブで13kg/cm2の圧力で圧着して合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、実施例1と同様方法で、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0087】
「実施例5」
ブチルアルデヒド仕込量を変え、その他の工程は実施例4と同様にしてアセトキシ基11.9モル%、アセタール化度70.0モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。このポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコール−2−ジーエチルブチレート12.5g、紫外線吸収剤0.08g、酸化防止剤0.08gを混合し、実施例4と同様な方法で厚さ0.16mmの合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)を得て、含水率が0.4〜0.5%になるように調整した。また、中間膜の基層は、実施例4と同一の膜を用い、その基層の一面に、前記化学式「化1」で表されるポリエーテル変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)のアセトン溶液をガーゼで薄く塗布して乾燥し、含水率が0.4〜0.5重量%になるように調整した。ポリエーテル変性シリコンオイルの塗布量は約10-3g/m2であった。
【0088】
こうして得られた接着力調整層(A)のアセトキシ基11.9モル%のポリビニルアセタール膜と、非極性変性シリコンオイルを一面に塗布することにより接着力調整層(B)を設けた多層中間膜の基層とを305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ZnO/Ag/ZnOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのZnO層が内側になるようにして、実施例4と同様にして合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0089】
「実施例6」
ポリビニルアセタール樹脂作製時に、ケン化度が82.1モル%のポリビニルアルコール樹脂を用い、またアルデヒド仕込量を変え、その他の工程は実施例4と同様にしてアセトキシ基17.9モル%、アセタール化度64.5モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。このポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールー2ージーエチルブチレート9g、紫外線吸収剤0.08g、酸化防止剤0.08gを混合し、実施例4と同様な方法で厚さ0.16mmの合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)を得て、含水率が0.4〜0.5%になるように調整した。また、中間膜の基層は、実施例4と同様の物を用い、その基層の一面に、前記化学式「化1」で表されるポリエーテル変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)のアセトン溶液をガーゼで薄く塗布して乾燥し、含水率が0.4〜0.5重量%になるように調整した。ポリエーテル変性シリコンオイルの塗布量は約10-2g/m2であった。
【0090】
こうして得られたアセトキシ基17.9モル%のポリビニルブチラール膜(接着力調整層(A))と、非極性変性シリコンオイルを一面に塗布した中間膜基層(基層及び接着力調整層(B))とを305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO層が内側になるようにして、実施例4と同様にして合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0091】
「実施例7」
実施例4で用いたポリエーテル変性シリコンオイルの代わりに、下記化学式「化2」で表されるアルキル基変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)を用いた以外は実施例4と全く同様にして合わせガラスを作成した。なお、アルキル基変性シリコンオイルの塗布量は約10-4g/m2であった。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0092】
【化2】
【0093】
「実施例8」
実施例5で用いたポリエーテル変性シリコンオイルの代わりに、上記化学式「化2」で表されるアルキル基変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)を用いた以外は実施例5と全く同様にして合わせガラスを作成した。なお、アルキル基変性シリコンオイルの塗布量は約10-3g/m2であった。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0094】
「比較例3」
ポリビニルアセタール樹脂として、重合度1700、アセタール化度65モル%、ケン化度99%のポリビニルブチラール樹脂50gに、可塑剤としてトリエチレングリコールージー2ーエチルブチレート20g、紫外線吸収剤0.10g、酸化防止剤0.10g、前記化学式「化1」で表されるポリエーテル変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)0.0125gおよび酢酸マグネシウム0.1gを混合した。この混合物を80℃に加熱された二本ロールでよく混練して厚さ0.8mm程度に形成し、これをスペーサーで規制したプレスで150℃に加熱加圧して厚さ0.76mmの中間膜を得た。
【0095】
この合わせガラス用多層中間膜を305mm×305mmに裁断し、同じ寸法のガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO層が内側になるようにして、積層し、ロールで予備接着した。次いで、130℃のオートクレーブで13kg/cm2の圧力で圧着して合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0096】
「比較例4」
比較例3で用いたポリエーテル変性シリコンオイルの代わりに、前記化学式「化2」で表されるアルキル基変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)を用いた以外は比較例3と全く同様にして合わせガラスを作成した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0097】
「比較例5」
比較例3と同様にして厚さ0.76mmの中間膜を得た。この中間膜の両面に前記化学式「化1」で表されるポリエーテル変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)のアセトン溶液をガーゼで薄く塗布して乾燥した。ポリエーテル変性シリコンオイルの塗布量は約10-3g/m2であった。その後、これを恒温恒湿室で含水率が0.4〜0.5重量%になるように調整した。得られた中間膜を、ガラス/ZnO/Ag/ZnOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのZnO層が内側になるようにして、比較例3と同様にして合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す
【0098】
「比較例6」
比較例3と同様にして厚さ0.76mmの中間膜を得た。この中間膜の両面に前記化学式「化2」で表されるアルキル基変性シリコンオイル(m=10〜20、n=10〜20、X=2〜8)のアセトン溶液をガーゼで薄く塗布して乾燥した。アルキル基変性シリコンオイルの塗布量は約10-3g/m2であった。その後、これを恒温恒湿室で含水率が0.4〜0.5重量%になるように調整した。得られた中間膜を、ガラス/ITOの構造を持つ導電性ガラス(厚み2.5mm)とフロートガラス(厚み2.5mm)との間に、導電性ガラスのITO面が内側になるようにして、比較例3と同様にして合わせガラスを製造した。この合わせガラスについて、紫外線照射前と後とのパンメル試験を行った。その結果を表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
上記の実施例4〜8及び比較例3〜6で得られた合わせガラス用中間膜のデータを表5に示す。
(注)表5中の比較例については中間膜は1層構成である。
【0101】
【発明の効果】
本発明の合わせガラス用多層中間膜及び合わせガラスは、金属酸化物層または金属層により熱線反射性等の高機能性が付与され、特にアセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)が金属酸化物層あるいは金属層表面と適度な接着性を有する。
【0102】
また、アセタール化度が80〜95モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂からなる樹脂組成物より形成される高アセタール化度層、あるいはアセトキシ基が結合しているエチレン基の、主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%で、かつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)、あるいは非極性変性シリコンオイルからなる接着力調整層(B)がガラス面で適度な接着性を示し、中間膜のそれぞれの面で接着力に大きな差異を生じることなく適度に調整され、しかも屋外暴露や紫外線照射および温度による経時での接着力の低下が防止される。
【0103】
したがって、本発明によれば、長期にわたって耐貫通性およびガラスの飛散防止性に優れ、熱線反射性等の高機能を有する合わせガラスを得ることができ、この合わせガラスは、自動車、航空機、建築物などの窓ガラスに好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の合わせガラス用多層中間膜および合わせガラスの代表的な例を示す分解断面図である。
【符号の説明】
10:ガラス板
11:金属酸化物層または金属層
20:合わせガラス用多層中間膜
21:合わせガラス用多層中間膜の接着力調整層(A)
22:合わせガラス用多層中間膜の基層
23:合わせガラス用多層中間膜の高アセタール化度層又は接着力調整層(A)又は接着力調整層(B)
30:合わせガラス
Claims (4)
- アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層と、
アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)と、
アセタール化度が80〜95モル%のポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される高アセタール化度層とから構成されていて、
該基層が接着力調整層(A)と該高アセタール化度層との間に積層されていることを特徴とする合わせガラス用多層中間膜。 - アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層と、
アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)とから構成されていて、
該接着力調整層(A)が該基層の両側の面に設けられていることを特徴とする合わせガラス用多層中間膜。 - アセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される基層と、
アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)と、
非極性変性シリコンオイルからなる接着力調整層(B)とから構成されていて、該基層が該接着力調整層(A)と該接着力調整層(B)との間に積層されていることを特徴とする合わせガラス用多層中間膜。 - ガラス板と、内面側に金属酸化物層または金属層が形成された透明板との間に請求項1、2または3記載の合わせガラス用多層中間膜が挟着されていて、アセトキシ基が結合しているエチレン基の主鎖の全エチレン基に対するモル分率が8〜30モル%でかつアセタール化度が60〜75モル%の範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を主成分とする樹脂組成物より形成される接着力調整層(A)が前記金属酸化物層または金属層側に当接するように接着されていることを特徴とする合わせガラス。
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