JP3895409B2 - 形状安定な肩パット及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、形状が長期に渡って安定した肩パット及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
肩パットは近年婦人服、紳士服から軽装用衣服に至るまで幅広く使用されている。従来技術では厚み或いは大きさの異なる繊維シート状物を積層し、ニドリング或いは粉末接着剤又はこれらの併用によりこれらを一体化し、立体的に加熱加圧成形したり、或いは裁断片に切り込みを入れたり、マチを入れて立体的に縫合した後、加熱加圧成形を行って肩パットが成形されている。
【0003】
これらの肩パットは初期段階では所望の形状を呈するが、着用或いは洗濯を繰り返し、又は長期間重ねて保存したような場合は、初期の形状が序々に変化し、初期の形状に戻らず、所謂形くずれを生じる欠点がある。そこでこれらの欠点を解決するために形状記憶合金を肩パット内に挿入した肩パットが特開平7−173702号公報或いは特開平8−81812号公報に示されている如く考案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの肩パットに入れた形状記憶合金は、一種の金属であり、繊維とは異質のものであり、繊維シート状物にはなじみが悪く、また線状体であるため、その先端を曲げる等により処理されているが、着用中或いは保管中にもその先端等が突出する可能性がある。また挿入した部分の全てが同じ硬さの形状であるため、身体の動きに順応する部分が存在せず、繊維と金属との併用であり、その反発性も異なり、着用時に異物感を感じる。また製造段階で形状を記憶したものを使用するため、すべての任意の形状にすることができない。さらに形状記憶合金は高価であり、経済的負担も見逃せない。
【0005】
この発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、繊維から成る形状安定素材を繊維シート状物に入れることにより、着用の際の違和感、異物感のない、かつ耐久性のある形状安定な肩パット及びその製造方法を提供し、上記課題を解決するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1の発明は、繊維シート状物をパット素材とし、これらの裁断片を積層して縫合、ニードリング或いは接着し、型セット等により適宜の形状に立体成形した肩パットにおいて、低融点の繊維と高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を、肩パットの形状保持を要する部位に適合するよう裁断し、この裁断片を上記繊維シート状物の間に挿入してこれを固定し、当該挿入の前又は後に当該繊維シート状物を加熱加圧し、適宜の形状に成形した際、上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置に形成し、又は上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置と当該肩パットの湾曲した尾根に当たる位置に沿ってT型形状を成すように形成した形状安定な肩パットとした。
【0007】
また、請求項2の発明は、繊維シート状物をパット素材とし、これらの裁断片を積層して縫合、ニードリング或いは接着し、型セット等により適宜の形状に立体成形する肩パットの製造方法において、低融点の繊維と高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を、肩パットの形状保持を要する部位に適合するよう裁断し、この裁断片を上記繊維シート状物の間に挿入してこれを固定し、肩パットを加熱加圧して適宜の形状に成形する際、上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置に形成し、又は上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置と当該肩パットの湾曲した尾根に当たる位置に沿ってT型形状を成すように形成する形状安定な肩パットの製造方法とした。
【0008】
また、請求項3の発明は、繊維シート状物をパット素材とし、これらの裁断片を積層して縫合、ニードリング或いは接着し、型セット等により適宜の形状に立体成形する肩パットの製造方法において、低融点の繊維と高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を、肩パットの形状保持を要する部位に適合するよう裁断し、これを加熱加圧して所定の形状に成形し、この裁断片を上記繊維シート状物の間に挿入してこれを固定することにより肩パットを適宜の形状に成形する際、上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置に形成し、又は上記形状保持素材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置と当該肩パットの湾曲した尾根に当たる位置に沿ってT型形状を成すように形成する形状安定な肩パットの製造方法とした。
【0009】
上記の肩パット及びその製造方法に使用する特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材は、断面形状が芯の外周に鞘を被せた二層構造とし、芯部より鞘部の融点が低い構成であり、これを加熱加圧成形することにより、鞘部分の低融点部分が溶解し、芯部分を補強材とする一種の硬化した板状成形物になる。
【0010】
この形状保持素材は、上記の断面形状が芯の外周に鞘を被せた二層構造が好ましいが、これ以外の二層構造を有する繊維でも作ることができる。例えば一方が低融点で他方が高融点を有する繊維を張り合わせたバイメタル形状の熱可塑性繊維でもよい。特殊繊維を用いたシート状物による形状安定のレベルは、特殊繊維100%で構成されたものが最も強い形状安定性が得られるが、肩パットの種類によっては特殊繊維70%以上であれば、その効果は得られる。さらに融点差のある親和性の良い低融点繊維と高融点繊維の混合においても形状安定効果を得ることができる。この場合低融点繊維は40%以上が好ましい。
【0011】
【実施の形態例】
以下この発明の実施の形態例を図をもとにして説明する。
図1乃至図3はこの発明の第1の実施の形態例における肩パットの製造方法を示し、大きさの異なる大型、中型、小型の楕円形の繊維シート状物1、2、3を設けて、これらを下から順に積層し、さらにこれらの上に大型の繊維シート状物1を重ねる際、図4(A)に示す断面形状が芯4aの外周に鞘4bを被せた二層構造とし、芯4a部より鞘4b部の融点が低い構成とした特殊繊維を用いた、一定巾のシート状の形状保持素材4を、大型の繊維シート状物1と中型の繊維シート状物2との間であってこれらの中央部に挿入する。
【0012】
なおこの形状保持素材4の特殊繊維の芯4a部分は融点が250°Cのポリエステルであり、また鞘4b部分は融点が110°Cの共重合ポリエステルとし、この芯鞘からなる繊維を図5に示す様に不織布状にウェッブをニードリングなどで結節し、シート状としたものである。
【0013】
この積層した楕円形の繊維シート状物1、2、3、1及び形状保持素材4を縫製、ニドリング或いは粉末接着剤等により一体化し、中央部で上から裁断して二つの対称な肩パット素材5、5を作り、その後これらを加熱、加圧して立体的に成形し、図3に示すごとく肩パットのアームホールに沿って湾曲した肩パット素材5を製造するものである。この加熱加圧する際、上記形状保持素材4は鞘4b部分の低融点部分が溶解し、芯4a部分を補強材とする一種の硬化した板状成形物になる。
【0014】
この製造方法において、形状保持素材4を必要形状に裁断した後、加熱加圧して適宜形状に立体成形し、その後上記大型の繊維シート状物1と中型の繊維シート状物2との間であってこれらの中央部に当該形状保持素材4を挿入してこれらを縫製、ニードリング或いは接着材により一体化し、これにより立体成形された肩パット素材5を製造する場合もある。
【0015】
また図6乃至図8はこの発明の第2の実施の形態例を示し、この第2の実施の形態例では、上記形状保持素材4´はT型形状であり、これは肩パット素材5のアームホール及び肩線に沿って形状保持素材4´を当てたものである。その他の構成は上記第2の実施の形態例と同様である。
【0016】
図4(B)は形状保持素材の他の構成例を示し、一方が低融点の繊維6aで他方が高融点を有する繊維6bを張り合わせたバイメタル形状の熱可塑性繊維であって、これをシート状にして形状保持素材6を形成したものであり、この形状保持素材6も加熱加圧することにより、低融点の繊維6aが溶解し、高融点を有する繊維6b部分を補強材とする一種の硬化した板状成形物になる。
【0017】
なお上記各実施の形態例においては、肩パット素材5を製造したが、これはそのまま肩パットとして使用する場合もあるが、これをさらに加工して肩パットにする場合もある。また上記実施の形態例では形状保持素材を肩パットのアームホールや肩線に沿って設けたが、これに限らず、肩パットの適宜の部位に当ててもよい。また形状保持部材は上記実施の形態例に限るものではない。要は一方が低融点の繊維と他方が高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いた物であれば良い。
【0018】
【発明の効果】
請求項1項乃至3項の発明は、積層された繊維シート状物間に、特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を適宜形状に裁断して挿入配置し、加熱加圧成形により極めて簡単に形状安定な肩パットを製造することができる。しかもこの形状保持素材は特殊繊維シート状物であるため、任意の形状、大きさに容易に裁断することができ、かつ挿入する部位によっては、これを重ねることもできる。またこの形状保持部材は繊維からなるもののた、他の繊維シート状物と容易になじみ、これらを従来の縫合、ニードリング又は接着剤により一体化することが容易である。
【0019】
しかも形状保持部材は加熱加圧成形することにより、硬化した板状成形物となり、幾度の着用、洗濯、又は長期の保管においても変形することがない。また着用にあたっては上記形状保持素材は任意の形状に裁断して挿入それているため、肩部分に異物感を与えず、衣服に良くマッチした形状の安定した肩パットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態例の肩パットの繊維シート状物の積層状態を示す一部破断平面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態例の肩パットの繊維シート状物の積層状態のA−A線断面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態例の肩パット素材の斜視図である。
【図4】この発明の形状保持素材を成す繊維の実施の形態例の斜視図である。
【図5】この発明のシート状の形状保持素材の実施の形態例の斜視図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態例の肩パットの繊維シート状物の積層状態を示す一部破断平面図である。
【図7】この発明の第2の実施の形態例の肩パットの繊維シート状物の積層状態のB−B線断面図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態例の肩パット素材の斜視図である。
【符号の説明】
1 大型の繊維シート状物 2 中型の繊維シート状物
3 小型の繊維シート状物 4 形状保持素材
4a 芯 4b 鞘
5 肩パット素材 6 形状保持部材
6a 低融点の繊維 6b 高融点を有する繊維
Claims (3)
- 繊維シート状物をパット素材とし、これらの裁断片を積層して縫合、ニードリング或いは接着し、型セット等により適宜の形状に立体成形した肩パットにおいて、
低融点の繊維と高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を、肩パットの形状保持を要する部位に適合するよう裁断し、この裁断片を上記繊維シート状物の間に挿入してこれを固定し、当該挿入の前又は後に当該繊維シート状物を加熱加圧し、適宜の形状に成形した際、上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置に形成し、又は上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置と当該肩パットの湾曲した尾根に当たる位置に沿ってT型形状を成すように形成したことを特徴とする、形状安定な肩パット。 - 繊維シート状物をパット素材とし、これらの裁断片を積層して縫合、ニードリング或いは接着し、型セット等により適宜の形状に立体成形する肩パットの製造方法において、
低融点の繊維と高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を、肩パットの形状保持を要する部位に適合するよう裁断し、この裁断片を上記繊維シート状物の間に挿入してこれを固定し、肩パットを加熱加圧して適宜の形状に成形する際、上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置に形成し、又は上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置と当該肩パットの湾曲した尾根に当たる位置に沿ってT型形状を成すように形成することを特徴とする、形状安定な肩パットの製造方法。 - 繊維シート状物をパット素材とし、これらの裁断片を積層して縫合、ニードリング或いは接着し、型セット等により適宜の形状に立体成形する肩パットの製造方法において、
低融点の繊維と高融点の繊維とから成る特殊繊維を用いたシート状の形状保持素材を、肩パットの形状保持を要する部位に適合するよう裁断し、これを加熱加圧して所定の形状に成形し、この裁断片を上記繊維シート状物の間に挿入してこれを固定することにより肩パットを適宜の形状に成形する際、上記形状保持部材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置に形成し、又は上記形状保持素材を、肩パットのアームホールに沿って湾曲した端縁に沿った位置と当該肩パットの湾曲した尾根に当たる位置に沿ってT型形状を成すように形成することを特徴とする、形状安定な肩パットの製造方法。
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JP31569196A JP3895409B2 (ja) | 1996-11-13 | 1996-11-13 | 形状安定な肩パット及びその製造方法 |
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JPH10140411A JPH10140411A (ja) | 1998-05-26 |
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1996
- 1996-11-13 JP JP31569196A patent/JP3895409B2/ja not_active Expired - Lifetime
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