JP3109273U - 装束の首上 - Google Patents

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Abstract

【課題】首上に耐摩耗性等の耐久性を付与し、洗濯の都度、取り外す必要がなく、型崩れし難い構造にした装束の首上を提供する。
【解決手段】首上21は、装束1の襟部分に設けられると共に、紐部材を掛け合わすことによりリング状となって首を囲むように着用される。樹脂からなる横長薄板状の型板と、樹脂からなる横長シート状の貼合シートとが粘着剤を介して重ね合わせられることにより芯材が形成され、芯材が装束1の布片11によって覆われる。この装束1は、これをリング状にする際に、型板と貼合シートとを相互にずらした状態で、綴糸を通すことにより、相互のずれを固定して仕立てられる。
【選択図】図2

Description

本考案は、神主等が着用する装束の襟部分を構成する首上に関する。
神主等が着用する装束は、古来より伝承された伝統的衣服であり、束帯、衣冠、直衣、狩衣などと称される衣服の総称であって、今日、神社神職の服装となっている。このような装束は、伝統的に神宮の境内において着用される他、祭事でも着用され、首周りを丸首にして立ち上げ、首上と称する部位を形成している。この首上は装束に用いる布片によって芯材を覆った構造となっており、芯材としては従前より厚紙が用いられている。また、首上には、受緒及びとんぼからなる紐部材が取り付けられており、これらの受緒及びとんぼを掛け合わすことによりリング状態が維持されるようになっている。因みに、首周りを丸首にして襟を構成する技術としては、特開2001―49508号公報に襟部材をストレッチ素材で構成するシャツが開示されている。
特開2001―49508号公報
従来の首上では、芯材として厚紙が使用されているため、汗に弱く、且つ、芯材が摩耗し易く耐久性が小さい問題を有している。また、洗濯の際には、芯材を逐一取り外し、その後に再度取り付ける必要があり、極めて面倒なものとなっている。さらに、芯材として厚紙をリング状にしているので、厚紙が折れることによる型崩れが生じ、取り扱いが難しいものとなっていた。
本考案は、このような問題点を考慮してなされたものであり、汗に強く、耐摩耗性等の耐久性があり、しかも洗濯の都度、芯材を取り外す必要がなく、型崩れし難い首上を提供することを目的とする。
請求項1記載の考案は、装束の襟部分に設けられると共に、紐部材を掛け合わすことによりリング状となって首を囲むように着用される首上であって、樹脂からなる横長薄板状の型板と、樹脂からなる横長シート状の貼合シートとが粘着剤を介して重ね合わせられることによって芯材が形成されており、この芯材が前記装束の布片によって覆われていることを特徴とする。
請求項2記載の考案は、請求項1に記載の首上であって、前記首上が、これをリング状にする際に、前記型板と貼合シートとを相互にずらした状態で、綴糸を通すことにより、相互のずれを固定して仕立てられていることを特徴とする。
請求項3記載の考案は、請求項1または2に記載の首上であって、前記型板及び貼合シートのいずれか一方または双方が低発泡樹脂によって形成されていることを特徴とする。
本考案によれば、共に樹脂からなる型板と貼合シートとによって芯材が形成されるため、摩耗が小さく、長期間使用することができる。また、耐水が良好なものとなることから、汗で汚れ難く、且つ、洗濯の都度、芯材を取り外す必要がなくなる。このような芯材で、首上を形成した場合には、芯材が折れることがないので型崩れし難い首上となる。
本考案では、首上の芯材を構成する型板及び貼合シートが粘着剤によって重ね合わされている。これにより、首上をリング状としたときに型板及び貼合シートが相互にずれるが、この相互のずれ状態を綴糸で固定して仕立てられるものである。このような型板及び貼合シートの相互のずれが維持された状態は、首上をリング状に保持することができ、出来映えが良いものとなる。
図1は本考案が適用された装束1の斜視図、図2は装束1の展開図、図3は本考案の一実施形態における首上を成形するための工程図であり、図4〜図7は装束の部品を示し、図8は装束を作製する工程を示す。
装束1は神主等が神事の際に着用するものであり、前身頃2と後身頃3とが連設されることにより、着用者の肩部を覆うようになっている。前身頃2及び後身頃3は、裏地4及び上布5を重ね合わせることにより作製される。図4は上布5を、図5は裏地4を示し、共に着用者の首が挿入される襟孔4a,5aが開口されており、この襟孔4a,5aにはスリット(切り込み)4b、5bが設けられている。スリット4b、5bには、図6及び図7に示す下前衽6及び上前衽7が縫合されることによりスリット4b、5bが閉じられるようになっている(図1参照)。
次に、装束1の作製を図8により説明する。同図(a)で示すように、裏地4上に上布5を重ね合わせる。この重ね合わせは、それぞれの襟孔4a,5aが相互に一致すると共に、スリット4b、5bが相互に一致するように行う。この重ね合わせの後、裏地4及び上布5を縫糸8によって縫い合わせる。縫い合わせは、対向する長辺に対して行う。
図8(b)は、下前衽6を取り付ける工程であり、下前衽6は一方の端部がZ状に折り畳まれており、この折り畳み部分に裏地4および上布5のスリット側部分を差し込み、差し込んだ部分を縫糸8aによって縫い付ける。この縫い付けにより、下前衽6は、スリット部分からさらに上前10の下方で重なり合うように取り付けられる。因みに、上前10は上布5の前部分(図1参照)で左前で着用される装束1の左側部分である。
図8(c)は、上前衽7を取り付ける工程であり、上前衽7は下前衽6と同様に一方の端部がZ状に折り畳まれており、この折り畳み部分に裏地4および上布5のスリット側部分を差し込み、差し込んだ部分を縫糸8bによって縫い付ける。この縫い付けにより、上前衽7は、スリット部分からさらに下前11の上方で重なり合うように取り付けられる。この上前衽7は下前衽6と重なり合った状態となって前身頃2の中央部分を覆うようになる。
図1及び図2に示すように、首上21は装束1の襟部分に設けられるものであり、全体がリング状となっている。これにより、装束1を着用したときに着用者の首を囲むようになっている。リング状に巻回された首上21は、内側重なり部21aに対して外側重なり部21bが重なり合った状態となり、この重なり部分が前身頃2の中央に位置するようになっている。
内側重なり部21aに近接した部位には、受緒22が取り付けられ、外側重なり部21bにはとんぼ23が取り付けられる。これらの受緒22及びとんぼ23は、相互に掛け合わされる紐部材を構成するものであり、受緒22は基端部が内側重なり部21aに近接した部位に縫い付けられた状態で先端部が外側重なり部21bまで延びており、とんぼ23は外側重なり部21bの内側面に縫い付けらる。そして、とんぼ23を受緒22の先端部分に挿入して掛け合わせる。これにより、首上21をリング状態に維持することができる。
首上21の形成手順を図3により説明する。図3(a)は装束1を展開した状態を示したものであり、首上布11が横長状となっている。首上布11の下部には裏地4、上布5、下前衽6及び上前衽7が縫い付けられている。この場合、下前衽6の上端部分は、首上21の内側重なり部21a(図2参照)に縫い付けられ、上前衽7は首上21の外側重なり部21bに縫い付けられる。
図3(b)で示すように、貼合シート27を首上布11の表面上に載置する。貼合シート27は、その表面に粘着剤が塗布されており、粘着剤が塗布されていない裏面を首上布11の上面に当接させるように載置する。貼合シート27は、横長シート状の樹脂によって形成されており、その幅(図3における上下方向の長さ)は後述する型板26よりも広い寸法となっている。また、貼合シート27は首上布11の内方に位置するように首上布11に載置されるものであり、貼合シート27の周囲には、首上布11が4周方向にはみ出た状態となっている。
尚、図中、網掛けで示した重なり部分15は、装束1の襟孔部分であり、首上布11が、上布5、裏地4、下前衽6、上前衽7に縫合されて重なりあっている部分である。
図3(c)は、貼合シート27に型板26を重ね合わせた状態を示す。型板26の重ね合わせは、貼合シート27の表面に対して行う。貼合シート27の表面には、粘着剤が塗布されているため、型板26及び貼合シート27は粘着剤の粘着力によって接合状態となるが、粘着剤を介しての重ね合わせのため、これらは相互にずれ移動可能となる。なお、この場合、型板26の表面にも粘着剤が塗布される。
型板26は、貼合シート27と同様に樹脂によって成形されるものであり、横長板状となっている。型板26の長さは貼合シート27と略同等となっているが、その幅(図3における上下方向の長さ)は貼合シート27の幅よりも小さく、約半分程度の寸法となっている。これにより、型板26を貼合シート27の下半分に重ね合わせると、貼合シート27の上半分が表面に露出した状態となる。この状態で、貼合シート27の上部には、首上布11が延びているので、これを内側に折畳み、貼合シート27の上方部分(図中、斜線部分)に貼り付ける。
これにより、貼合シート27の上縁は、首上布11で覆われた上縁部分11aとなっている。
図3(d)は、首上布11の左右両端部11b、11bを内側に折畳み、貼合シート27を型板26の上縁付近で内側に折り曲げたことを示したものである。このとき、型板26の表面には、粘着剤が塗布されているため、折り畳まれた首上布11の上部は、粘着力によって型板26の表面にある程度保持される。そして、この状態で、首上布11で覆われた上縁部分11aと、重なり部分15とを糸で縫い合わせる。これにより、貼合シート27及び型板26からなる芯材25が首上布11によって覆われた状態となる。
その後、受緒22及びとんぼ23の縫い付けを行う。受緒22及びとんぼ23の縫い付けは、首上21をリング状にして、型板26及び貼合シート27を相互にずらした状態で、綴糸を通すことにより、相互のずれを固定して仕立てられる。このような型板及び貼合シートの相互のずれが維持された状態は、首上をリング状に保持することができる。
本実施の形態では、芯材25を構成する型板26及び貼合シート27が共に樹脂によって形成されているため、摩耗が小さく、長期間使用することができると共に、耐水が良好なものとなり、汗で汚れ難く、且つ、洗濯の都度、芯材25を取り外す必要がなくなる。また、展開状態からリング状態への変更を繰り返し行っても芯材25がへたることがなく、常に良好なリング形状を保持することができる。かかる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いた低発泡樹脂が良好であり、これにより軽量化及び繰り返し使用への耐久性を向上させることが可能となる。
また、上述したように、芯材25を構成する型板26及び貼合シート27が粘着剤によって接合されるものであり、これらが固定されることなく、製作段階で、相互にずれ移動することが可能となっている。このようにずれ移動が可能となっていることにより、首上をリング状としたときに型板26及び貼合シート27が相互にずれることができる。そして、首上をリング状とすることにより、型板26及び貼合シート27を相互にずらし、綴糸で固定して仕立てられる。このような型板及び貼合シートの相互のずれが維持された状態は、首上をリング状に保持する。よって、出来映えが良いものとなる。
本考案の一実施形態が適用された装束の斜視図である。 装束における首上部分の展開図である。 (a)〜(d)は首上を組み立てる手順を示す展開図である。 上布の正面図である。 裏地の正面図である。 下前衽及び裏地の縫い合わせ状態を示す斜視図である。 上前衽及び上布の縫い合わせ状態を示す斜視図である。 (a)〜(c)は装束を縫い付ける手順を示す正面図である。
符号の説明
1 装束
2 前身頃
3 後身頃
4 裏地
5 上布
6 下前衽
7 上前衽
21 首上
22 受緒
23 とんぼ
25 芯材
26 型板
27 貼合シート

Claims (3)

  1. 装束の襟部分に設けられると共に、紐部材を掛け合わすことによりリング状となって首を囲むように着用される首上であって、
    樹脂からなる横長薄板状の型板と、樹脂からなる横長シート状の貼合シートとが粘着剤を介して重ね合わせられることによって芯材が形成されており、この芯材が前記装束の布片によって覆われていることを特徴とする装束の首上。
  2. 前記首上は、これをリング状にする際に、前記型板と貼合シートとを相互にずらした状態で綴糸を通すことにより、相互のずれを固定して仕立てられていることを特徴とする請求項1に記載の装束の首上。
  3. 前記型板及び貼合シートのいずれか一方または双方が低発泡樹脂によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装束の首上。
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