JP3894511B2 - イミド−アルカン過カルボン酸中の水分および極性不純物を減少させる方法 - Google Patents

イミド−アルカン過カルボン酸中の水分および極性不純物を減少させる方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、周知の化合物であり、洗剤組成物中の漂白剤として、あるいは殺菌消毒剤または酸化性組成物の主成分として利用されている、イミド−アルカン過カルボン酸を、水性スラリーから回収する方法に関する。これらの製品は、優れた漂白特性と優れた保存安定性を併せ持つ。
【0002】
【従来の技術】
前記イミド−アルカン過カルボン酸の製造方法は、文献において周知であり、過酸化水素とイミド−アルカンカルボン酸前駆体の強酸とを共存させての酸化反応が含まれる。
【0003】
フタルイミド−アルカン過カルボン酸である場合、該前駆体は、無水フタル酸またはフタル酸と、アミノ酸またはラクタムとを、無水または有水条件下に、気圧1〜30bar、温度100〜250℃、反応時間5〜20時間で縮合させることによって得られる。たとえば、欧州特許第325,289号、第325,288号、第349,940号が参照される。さらにまた、欧州特許第490,409号等も参照され、ここには、たとえばジクロロメタンやトリクロロメタンなどの特定の溶媒の存在下で反応を行うことにより、過カルボン酸を高収量で回収する方法が記述されている。そのようにして、硫酸や過酸化水素を含む水性相から、溶媒に溶けた過カルボン酸溶解物が分離される。
【0004】
有用な生成物を回収するために、過カルボン酸を含有する溶液に対して、溶媒除去処理を施す。たとえば欧州特許第560,155が参照され、ここには、たとえばジクロロメタンまたは酢酸エチルなどの有機溶媒を不純物として含む水性スラリーを、ろ過または遠心分離することによって、残留水分量が20重量%程度で、残留溶媒濃度が50〜2500ppmの、湿った結晶粉末(ケーク:cake)状の過カルボン酸(PAP)を得るという、含水溶液の処理方法が記載されている。
【0005】
一般に、アルカン過カルボン酸の製剤に許容される塩素含有溶媒濃度は非常に低いため、たとえば酢酸エチルなどの非塩素系の別の溶媒を用いてさらなる精製処理が行われる。この点に関して、たとえば、欧州特許第556,769号が参照される。
【0006】
しかしながら、このようにすると、アルカン過カルボン酸は、無視できない量の、酢酸エチルなどの別の溶媒を含むことになった。
【0007】
上述の全ての処理を行った後のアルカン過カルボン酸の含水量は、常に20重量%程度あるいはそれ以上である。
【0008】
アルカン過カルボン酸の製剤を製造するためにはこの水分量は多すぎる。したがって、乾燥処理によって水分量を減少させなければならないが、この乾燥処理は、過酸化化合物処理の際に頻発する爆発を防止するために非常にゆっくりと実施される。
【0009】
この工程は、危険性と低い生産性の両方を伴うため、工業プロセスにおいて決定的な段階となる。
【0010】
さらに、これらの工程において、減少させた水分量が、固形物に対するその後の製造工程で要求される一定値にまで達していなければならない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
工業的観点から見て遅くて危険な乾燥処理を行うことなしに、引き続く製剤のために、水分量を減少させて10重量%前後で一定した含水量を有するアルカン過カルボン酸を得ることのできる工業プロセスを利用可能にすることの必要性がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イミド−アルカン過カルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解するまで加熱することと、続いて水性相から有機相を分離することと、イミド−アルカン過カルボン酸を含む有機相を回収することとから成る、含水量12重量%以上のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法である。
【0013】
また本発明は、前記イミド−アルカン過カルボン酸が、一般式
【0014】
【化1】
Figure 0003894511
【0015】
で表され、該一般式においてAは、一般式
【0016】
【化5】
Figure 0003894511
【0017】
または、
【0018】
【化6】
Figure 0003894511
【0019】
の基を示し、たとえばフタルイミド−アルカン過カルボン酸は、
【0020】
【化7】
Figure 0003894511
【0021】
(式中、nは0,1,2のいずれかの整数であり、R1は水素、塩素、臭素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルキニル、アリール、あるいはアルキルアリールのいずれかであり、R2は水素、塩素、臭素、あるいは-SO3M、-CO2M、-CO3M、-OSO3Mの一般式で表される基のいずれかであり(該式中、Mは水素、アルカリ金属イオン、またはアンモニウムイオン、あるいはアルカリ土類金属イオンの均等物を表す)、XはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表す。)
であることを特徴とする。
また本発明は、前記酸が、フタルイミド−過酸化ヘキサン酸でることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記イミド−アルカン過カルボン酸が、
A)a1)次の一般式で表わされる酸無水物または対応する酸と、
【0023】
【化2】
Figure 0003894511
【0024】
b1)次の一般式で表わされるアミノ酸と、
【0025】
【化3】
Figure 0003894511
【0026】
c1)水とを、
あるいは、
a1)と、
b2)次の一般式で表わされるラクタムと、
【0027】
【化4】
Figure 0003894511
【0028】
c1)水とを、
(式中、XはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表し、YはXに等しく、好適にはC3〜C19アルキレンである。)
100℃〜250℃の温度で、圧力1〜30barの不活性ガス雰囲気において、2〜20時間反応させることによって得られるイミド−アルカンカルボン酸前駆体の強酸と、
過酸化水素と、を共存させての過酸化反応により得られるイミド−アルカン過カルボン酸であることを特徴とする。
【0029】
また本発明は、前記イミド−アルカン過カルボン酸が、フタルイミド−過酢酸、3−フタルイミド−過プロピオン酸、4−フタルイミド−過ブチル酸、2−フタルイミド−二過グルタル酸、2−フタルイミド−二過コハク酸、3−フタルイミド−過ブチル酸、2−フタルイミド−過プロピオン酸、3−フタルイミド−二過アジピン酸、ナフタルイミド−過酢酸、2−フタルイミド−一過コハク酸であることを特徴とする。
また本発明は、過酸化反応を溶媒中で実施することを特徴とする。
また本発明は、前記溶媒を、ジクロロメタンおよびトリクロロメタンの中から選択することを特徴とする。
また本発明は、前記酸がフタルイミド−過酸化ヘキサン酸であり、共晶物の融点が約72℃であることを特徴とする。
また本発明は、金属イオン封鎖剤を添加することを特徴とする。
また本発明は、前記金属イオン封鎖剤が、ヒドロキシカルボン酸、アミノポリカルボン酸、ピリジンカルボン酸、またはポリホスホン酸から選択されることを特徴とする。
また本発明は、前記融成物の有機相が、冷却したベルト上で固化されることを特徴とする。
また本発明は、前記融解させた有機相に対して減圧蒸気によるストリッピング処理を施すことを特徴とする。
また本発明は、前記蒸気を向流で通過させることを特徴とする。
また本発明は、イミド−アルカンカルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解するまで加熱することと、続いて水性相から有機相を分離することとイミド−アルカンカルボン酸を含む有機相を回収することとから成ることを特徴とするイミド−アルカンカルボン酸を極性不純物から精製する方法である。
また本発明は、イミド−アルカンカルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解するまで加熱することと、続いて水性相から有機相を分離することと、イミド−アルカンカルボン酸を含む有機相を回収することとから成ることを特徴とするイミド−アルカンカルボン酸を極性不純物から精製する方法である。
また本発明は、前記融成物の有機相を大量の冷水中で固化させることを特徴とする。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明の方法に従って処理することのできるイミド−アルカン過カルボン酸は、次の一般式で表される。
【0031】
【化1】
Figure 0003894511
【0032】
式中、AおよびXは以下で定義する意味を持ち、過酸化水素とイミド−アルカンカルボン酸前駆体の強酸とを共存させて、一般に5〜50℃の温度で既知の過酸化反応を行うことによって得られる。該イミド−アルカンカルボン酸前駆体は、以下の反応により得られる。
【0033】
A)a1)次の一般式で表わされる酸無水物または対応する酸と、
【0034】
【化2】
Figure 0003894511
【0035】
b1)次の一般式で表わされるアミノ酸と、
【0036】
【化3】
Figure 0003894511
【0037】
c1)水とを、
あるいは、
a1)と、
b2)次の一般式で表わされるラクタムと、
【0038】
【化4】
Figure 0003894511
【0039】
c1)水とを、
(式中、XはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表し、YはXに等しく、好適にはC3〜C19アルキレンである。)
100℃〜250℃の温度で、圧力1〜30barの不活性ガス雰囲気において、2〜20時間反応させる。
【0040】
ここで、Aは、
【0041】
【化5】
Figure 0003894511
【0042】
または、
【0043】
【化6】
Figure 0003894511
【0044】
の基を示し、たとえばフタルイミド−アルカン過カルボン酸は、
【0045】
【化7】
Figure 0003894511
【0046】
(式中、nは0,1,2のいずれかの整数であり、R1は水素、塩素、臭素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルキニル、アリール、あるいはアルキルアリールのいずれかであり、R2は水素、塩素、臭素、あるいは-SO3M、-CO2M、-CO3M、-OSO3Mの一般式で表される基のいずれかであり(該式中、Mは水素、アルカリ金属イオン、またはアンモニウムイオン、あるいはアルカリ土類金属イオンの均等物を表す)、XはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表す。)
となる。
【0047】
一般に、a1/(b1またはb2)/c1の間のモル比は、1/0.8〜1.2/0.5〜3である。好適には、a1/(b1またはb2)/c1のモル比は、1/1.01〜1.1/0.5〜2.5であり、さらに好適には1/1.05〜1.1/1〜2である。
【0048】
クラスa1)の化合物の中では、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、トリメリト酸、フタル酸、ピロメリト酸、および、アルキルまたはアルキニルコハク酸の、酸無水物または対応する酸を挙げることができる。無水フタル酸またはフタル酸が好適に用いられる。
【0049】
クラスb1)の化合物の中では、ω−アミノブチル酸、ω−アミノ吉草酸、ω−アミノカプロン酸、およびω−アミノラウリン酸を挙げることができる。
クラスb2)の化合物の中では、γ−ピロリドン、δ−ピペリドン、ε−カプロラクタム、およびω−ラウロラクタムを好適なものとして挙げることができるが、ε−カプロラクタム(CPL)が好適に用いられる。
好適には、工程A)における温度は130℃〜180℃、圧力は4〜8barである。
好適には、工程A)は溶媒、好ましくはジクロロメタンおよびトリクロロメタン、より好ましくはジクロロメタンの存在下で実施する。
欧州特許第490,409号に記載されるように、これらの最終溶媒は、実際のところ、続けて過酸化反応を行うのに最適である。
【0050】
イミド−アルカン過カルボン酸の中では、フタルイミド−過酢酸、フタルイミド−過酸化ヘキサン酸、3−フタルイミド−過プロピオン酸、4−フタルイミド−過ブチル酸、2−フタルイミド−二過グルタル酸、2−フタルイミド−二過コハク酸、3−フタルイミド−過ブチル酸、2−フタルイミド−過プロピオン酸、3−フタルイミド−二過アジピン酸、ナフタルイミド−過酢酸、2−フタルイミド−一過コハク酸が挙げられる。
【0051】
本願出願人によれば、本発明は、いかなる理論とも関連することなしに、以下の事実に基づいている。すなわち、有機溶液からたとえば結晶化などによって得られた純粋なイミド−アルカン過カルボン酸は、分解温度に非常に近い融点を有する。ところが驚くべきことに、イミド−過カルボン酸は、水が存在すると共晶物を形成することにより、融点よりもはるかに低い温度で融解可能となる。さらに、前記共晶物は実質的に水性相に不溶で、水そのものから容易に分離できる程度の粘度と密度とを有する。
【0052】
本発明を、フタルイミド−過酸化ヘキサン酸を例に挙げて詳細に説明する。
たとえば、フタルイミド−過酸化ヘキサン酸の場合、純粋な酸の分解温度が約92℃であるのに対して、水と共晶物を形成する温度は約72℃である。75℃における共晶物の密度および粘度は、それぞれ、1.229g/mlおよび15センチポアズである。
この事実は全く予想外であり、たとえば相分離器内でただデカンテーションするだけで、共晶物を水性相から容易に分離することができる。
【0053】
さらに驚いたことに、共晶物の含水量は、前記固形過カルボン酸を基に様々な製剤を調製するのに工業的に有利な約11.5重量%であることが見いだされた。
そのような驚くべき現象の観察から、以下のことに注目するに至った。すなわち、
72〜73℃において、前述の共晶物を形成するフタルイミド過酸化ヘキサン酸(PAP)に結合した水分量は、共晶物の形成に利用される水分量とは関係なく一定で、過酸化酸1モル当たり約2モル、重量に換算して約11.5重量%である。また、共晶物を、たとえば後述するようなフレーキングベルト(
flaking-belt)上で固化させれば、含有量をさらに減らすことができる。
共晶物の上に重なる水性相中に蓄積する過酸量は、ごく微量である。
72〜90℃、好適には75〜80℃の温度において処理した場合でさえ、共晶物に対するフタルイミド−過酸化ヘキサン酸の安定性は高い。
【0054】
さらに意外なことに、融解の際に、一般には100〜10000ppmとごく少量の金属イオン封鎖剤を使用することにより、72〜90℃での共晶物に対する過酸の安定性をさらに向上させることが可能であることも見いだされた。該金属イオン封鎖剤としては、たとえばヒドロキシカルボン酸を挙げることができ、中でも、クエン酸、アミノ−ポリカルボン酸、ピリジンカルボン酸、あるいはポリホスホン酸を挙げることができ、さらに該アミノ−ポリカルボン酸の中ではエチレンジアミノテトラメチルホスホン酸(EDTMP)、該ピリジンカルボン酸の中ではジピコリン酸、該ポリホスホン酸の中では簡略化のためHEDPと示す1−ヒドロキシ−エチリデン−1,1−ジホスホン酸を挙げることができる。
【0055】
上述のように、融成物を、冷却したフレーキングベルト上に注ぐなどして、72℃より低い温度で共晶物を固化させることにより、共晶物から容易にイミド−アルカン過カルボン酸の固形生成物を得ることができる。このようにして、この段階で既に粉末状でない過酸を得ることができるので、続く調製時および/または輸送時において処理を容易にするための、生成物の粒状化を行う必要がないという利点が生まれる。またこの方法により、共晶物の含水量よりも低い、およそ8〜10重量%という、実質的に一定の含水量を有する湿ったフレーク状の生成物が得られる。
【0056】
最終的な過酸の含水量が一定であるということは、続く生成物の処理を完結させるためには非常に重要な要素である。
【0057】
上述の共晶物形成は、カルボン酸前駆体の合成に使用した反応体、酸前駆体といった不純物などの生成物中に存在しうる極性物質から、また特に、前述した従来技術の過酸化物合成または精製処理に使用した最終生成物中には望ましくない痕跡量の溶媒から、イミドアルカン過カルボン酸を精製するさらなる効果も有する。
【0058】
この目的のために、融解した共晶物をたとえば15℃の大量の冷水中に導いて激しく撹拌することによって不均一な顆粒状の過酸を得るという、別の固化方法を挙げることができる。
【0059】
この場合、新たに得られたスラリーからろ過または遠心分離によって単離される生成物塊が、一定の湿度を有することはないが、上述の溶媒に由来するような極性不純物から過酸を精製する効果だけはある。
【0060】
またさらに本発明によれば、減圧蒸気によって融解した共晶物をストリッピング処理することにより、過酸化物合成から直接得られる過酸/水スラリーを、たとえば欧州特許第490,409号の塩素含有溶媒などの溶媒を分離した後、該塩素含有溶媒の除去のための、たとえば酢酸エチルなどの他の溶媒による洗浄を行うことなしに、直接精製できる。
【0061】
たとえば、ストリッピングは、融解した共晶物に対して、72〜75℃の温度で、たとえば約280〜300mmHgの真空条件下で、蒸気を用いて実施することができる。
【0062】
一般に蒸気が存在すると、共晶物はストリッピング温度において分解されるであろうと予測されるので、この本発明のさらなる対象はかなり意外なことであった。
【0063】
そのような方法論は、引き続く工業プロセスにも利用可能であり、また過酸化反応によって得られた共晶物と平衡状態にある融解中の水性相を、共晶物への融解処理のための、および、上述の不純物から共晶物を精製するための引き続く共晶物のストリッピングのための、生成物の新しいスラリーを得るために再利用することを可能にする。このようにして、上述の水性相に蓄積された過酸のわずかな損失も回避される。
【0064】
このように、ストリッピング法によって精製した過酸は、溶媒、たとえば塩素系溶媒をガスクロマトグラフィーによる分析限界よりも少量しか含まない、溶媒フリーのものである。
【0065】
ストリッピングは、たとえば、ラシヒリングと蒸気を充填したジャケット付カラム中で、好適には、72〜75℃において、カラムの底部から、精製すべき共晶物と向流して流入する減圧蒸気によって実施し、カラム内を280〜300mmHgの真空状態に保って実施する。溶融状態にある過酸/H2O共晶物を、好適には蒸気の流速よりも小さい流速で、共晶物/蒸気の重量比が2:1〜1:2になるようにカラム上部から供給する。
【0066】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1,2,3,4,5,6,7
純度98.1重量%のフタルイミド−過酸化ヘキサン酸(PAP)50gを脱イオン水244gと共に、底部に出口を設けたジャケット付の500ml円筒ガラス反応器に導入した。
このスラリーを連続的に撹拌しながら75℃に加熱し、この温度において、融解状態の過酸は、完全に、水性溶媒に混和しない密度1.229g/mlの共晶物を形成した。
表1に示す滞留時間経過後、撹拌を停止し、5分間デカンテーションしたところ、水性相から分離された少量の融成物が底部出口を通して得られ、この融成物を直ちに適量の溶媒に、たとえば、PAP含量の測定のための選択された分析方法(HPLC)に適するアセトニトリルまたはジオキサンなどの溶媒に溶解した。
【0067】
【表1】
Figure 0003894511
【0068】
等量の水を用いて、表1に示す安定剤を含む場合の試験を繰り返した。
表1からは、75℃で1〜3時間処理した時でさえ、いかに少量の安定剤で共晶物に含まれるPAPの分解が阻止されるかが判る。
75℃で1時間滞留後、脱イオン水から形成した共晶物の活性酸素の損失は実に42%に達したが、金属イオン封鎖剤を添加した水を用いて得た共晶物の1時間滞留後の同様の損失は、1.0〜2.6重量%であったと評価される。
滞留時間を3時間とした場合でさえ、過酸中の過酸化性酸素の損失は、水のみで処理した場合が72%であったのに対して、2.5〜5.6%の範囲であった。
【0069】
実施例8,9,10
実施例1〜7に記載したことに続いて、500ppmのHEDPを含む水性溶媒中、75,85,90℃の各温度において、純度98.1重量%のPAPの融解試験を実施した。PAP/H2O共晶物をこれらの温度に30分間滞留させた後の過酸が受けた分解について、活性酸素の損失として評価した。その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
Figure 0003894511
【0071】
表2からは、75〜90℃の高い温度でPAP/H2Oの融解を実施した場合であっても、分解は、工業的安全性の観点から適度と見なしうる程度であると評価される。
【0072】
実施例11,12,13,14
実施例1〜7の処理様式に従って、濃度と純度の異なる固形物を含み、HEDP500ppmを添加した、0.5〜5kgという大量の水性スラリーを、ジャケット付きの10lガラス反応器中、75℃で融解し、30分間デカンテーション後に形成された共晶物の含水量と、融解した共晶物をベルト長4m、ベルト幅30cmのフレーキングベルト上に注いで得たフレークの含水量とを、カールフィッシャー分析によって評価した。
表3から確認できるように、75℃における共晶物の含水量は一定であり、約11重量%であった。
【0073】
【表3】
Figure 0003894511
【0074】
融成物をフレーキングベルト上で冷却して得た1〜2mmの可変厚を有するPAPフレークの残留湿度もおよそ一定で、共晶物の含水量よりも低い、9重量%前後であった。
【0075】
実施例15,16,17,18,19
実施例11〜14に記載した方法に従って、ジクロロメタンまたは酢酸エチル(ET.AC.)を不純物として含む種々の純度のPAPを使用して、固形物含量の異なる各種水性スラリーを調製した。
これらのスラリーをHEDP500ppmの共存下に融解し、表4の実施例で示したようなフレークを得るための処理を施すか、あるいは、融成物を撹拌されている15℃の冷水中に放出して湿った顆粒PAPを得るかすることによって、最終生成物中の上述の不純物が、30〜68%と大幅に減少することが見いだされた。
【0076】
【表4】
Figure 0003894511
【0077】
実施例20
ジクロロメタン2000ppmを含有する純度97.2%の固形PAP2.31gを、Sequion(登録商標)10H 500ppmを含有する脱イオン水469gと共に、ストリッピングカラムの上部に配置したメルター/セパレータ内に導入した。
連続的に撹拌しながら、スラリーの温度を75℃まで上げ、固形物が融解したところで撹拌を停止して5分間放置した後、流速350g/時間で向流蒸気が供給され、75℃、288mmHgの絶対真空に保たれたストリッピングカラムへ、この融成物を流速250g/時間で供給することにより、1時間共晶物を形成させた。
ストリッピングから流出してくる融解状態の生成物を、1lの撹拌されている15℃の冷水中へ、カラム底部から連続的に放出した。
スラリーをろ過し、固形顆粒を40℃の換気乾燥器中で乾燥させたところ、残留ジクロロメタン5ppmを含有する、純度97.5%の顆粒状PAP236gが得られた。
ジクロロメタン含量は、ガスクロマトグラフィー分析によって測定した。
【0078】
実施例21
ジクロロメタン0.2%を含有する純度95.2%の結晶状固形PAP236gを、Sequion(登録商標)10H(金属イオン封鎖剤)500ppmを添加した水性溶媒中、75℃で融解した。デカンター/バッチャー中で分離することにより、ジクロロメタン約1600ppmを含有する共晶物254gが得られた。
融解した共晶物をストリッピングカラムに1時間供給し、最終的に、湿度約8重量%、厚さ1.4mm、残留ジクロロメタン8ppmとフタルイミド−過酸化ヘキサン酸89.24%とを含有する、湿ったフレーク状の精製PAP264gが得られた。
【0079】
実施例22
実施例21に記載した試験で用いたのと同じ融解用水400gを用いて、不純物としてジクロロメタン2000ppmを含有する純度97.2%のPAP200gを融解した。
形成されたPAP/H2O共晶物を、288mmHgの絶対真空に保たれたストリッピングカラム中で、流速350g/時間の蒸気向流によって処理し、湿ったフレーク208gを得た。このフレークを40℃の換気乾燥器中で2時間乾燥させた後のフタルイミド−過酸化ヘキサン酸含量は96.8%であり、ジクロロメタン含量は10ppmであった。
【0080】
実施例23
Sequion(登録商標)10H 1000ppmを添加した10lの脱イオン水と、フタルイミド−過酸化ヘキサン酸97.5%およびジクロロメタン890ppmを含有する精製すべき結晶状固形生成物3%とから成るスラリーを、40℃で撹拌しながら、流速8〜10l/時間でコイル交換器へ連続的に供給した。75℃に保たれた該交換器を通過させることによってPAPを融解状態にし、形成された共晶物を、ストリッピングカラムの上部に配置したバッチャー/セパレータ内で回収した。
セパレータで分離した水性相を、開始スラリー中に連続的に送り込むことにより、精製すべきPAPを流速250g/時間で常に連続的に追加した。
融解されたPAP/H2O共晶物を、常に連続的して流速250ml/時間で、流速350g/時間で向流蒸気が供給されるストリッピングカラムに(回分的に)送り込んだ。4時間後、湿度8重量%、平均してフタルイミド−過酸化ヘキサン酸88.8%およびジクロロメタン12ppmを含有する湿ったフレーク940gが得られた。
【0081】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、イミドアルカン−過カルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解および加熱し、続いて水性相から有機相を分離し、イミド−アルカン過カルボン酸を含む有機相を回収するので、工業的観点から見て遅くて危険な乾燥処理を行うことなしに、引き続く製剤の製造に適した10重量%前後の一定した含水量にまで水分を減少させたイミド−アルカン過カルボン酸が得られる。

Claims (16)

  1. イミド−アルカン過カルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解するまで加熱することと、続いて水性相から有機相を分離することと、イミド−アルカン過カルボン酸を含む有機相を回収することとから成る、含水量12重量%以上のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  2. 前記イミド−アルカン過カルボン酸が、一般式
    Figure 0003894511
    で表され、該一般式においてAは、一般式
    Figure 0003894511
    または、
    Figure 0003894511
    (式中、nは0,1,2のいずれかの整数であり、R1は水素、塩素、臭素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルキニル、アリール、あるいはアルキルアリールのいずれかであり、R2は水素、塩素、臭素、あるいは-SO3M、-CO2M、-CO3M、-OSO3Mの一般式で表される基のいずれかであり(該式中、Mは水素、アルカリ金属イオン、またはアンモニウムイオン、あるいはアルカリ土類金属イオンの均等物を表す)、XはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表す。)
    の基を示すことを特徴とする請求項1記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  3. 前記酸が、フタルイミド−過酸化ヘキサン酸でることを特徴とする請求項1または2記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  4. 前記イミド−アルカン過カルボン酸が、
    A)a1)次の一般式で表わされる酸無水物または対応する酸と、
    Figure 0003894511
    (式中、Aは、一般式
    Figure 0003894511
    または、
    Figure 0003894511
    (式中、nは0,1,2のいずれかの整数であり、R1は水素、塩素、臭素、C1〜C20アルキル、C2〜C20アルキニル、アリール、あるいはアルキルアリールのいずれかであり、R2は水素、塩素、臭素、あるいは-SO3M、-CO2M、-CO3M、-OSO3Mの一般式で表される基のいずれかである(該式中、Mは水素、アルカリ金属イオン、またはアンモニウムイオン、あるいはアルカリ土類金属イオンの均等物を表す)。)を表す。)
    b1)次の一般式で表わされるアミノ酸と、
    Figure 0003894511
    (式中、XはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表す。)
    c1)水とを、
    あるいは、
    a1)と、
    b2)次の一般式で表わされるラクタムと、
    Figure 0003894511
    (式中、YはC1〜C19アルキレン、またはアリレンを表す。)
    c1)水とを、
    100℃〜250℃の温度で、圧力1〜30barの不活性ガス雰囲気において、2〜20時間反応させることによって得られるイミド−アルカンカルボン酸前駆体の強酸と、
    過酸化水素と、を共存させての過酸化反応により得られるイミド−アルカン過カルボン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  5. 前記イミド−アルカン過カルボン酸が、フタルイミド−過酢酸、3−フタルイミド−過プロピオン酸、4−フタルイミド−過ブチル酸、2−フタルイミド−二過グルタル酸、2−フタルイミド−二過コハク酸、3−フタルイミド−過ブチル酸、2−フタルイミド−過プロピオン酸、3−フタルイミド−二過アジピン酸、ナフタルイミド−過酢酸、2−フタルイミド−一過コハク酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  6. 過酸化反応を溶媒中で実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  7. 前記溶媒を、ジクロロメタンおよびトリクロロメタンの中から選択することを特徴とする請求項6記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  8. 前記酸がフタルイミド−過酸化ヘキサン酸であり、共晶物の融点が約72℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のイミド−アルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  9. 金属イオン封鎖剤を添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のイミドアルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  10. 前記金属イオン封鎖剤が、ヒドロキシカルボン酸、アミノポリカルボン酸、ピリジンカルボン酸、またはポリホスホン酸から選択されることを特徴とする請求項9記載のイミドアルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  11. 前記融成物の有機相が、冷却したベルト上で固化されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のイミドアルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  12. 前記融解させた有機相に対して減圧蒸気によるストリッピング処理を施すことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のイミドアルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  13. 前記蒸気を向流で通過させることを特徴とする請求項12記載のイミドアルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法。
  14. イミド−アルカンカルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解するまで加熱することと、続いて水性相から有機相を分離することと、イミド−アルカンカルボン酸を含む有機相を回収することとから成ることを特徴とするイミド−アルカンカルボン酸を極性不純物から精製する方法。
  15. イミド−アルカンカルボン酸の水性懸濁液を固形物が完全に融解するまで加熱することと、続いて水性相から有機相を分離することと、イミド−アルカンカルボン酸を含む有機相を回収することとから成ることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のイミドアルカン過カルボン酸の含水量を減少させる方法を用いたイミド−アルカンカルボン酸を極性不純物から精製する方法。
  16. 前記融成物の有機相を大量の冷水中で固化させることを特徴とする請求項14または15記載のイミド−アルカンカルボン酸を極性不純物から精製する方法。
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