JP3893658B2 - 感光性ポリイミド前駆体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水銀灯の輝線のi線、g線のどちらでも露光可能なネガ型の感光性ポリイミド前駆体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
露光した部分が現像により残るネガ型の感光性ポリイミド前駆体組成物としては次のものが知られていた。
(a)ポリアミド酸に化学線により2量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合およびアミノ基又はその四級化塩を添加した組成物(例えば特公昭59−52822号公報)。
【0003】
(b)ポリアミド酸にアクリルアミド類を添加した組成物(例えば特開平3−170555号公報)。
【0004】
(c)炭素−炭素二重結合基を有するポリイミド前駆体と、特定のオキシム化合物と、増感剤を含有してなる組成物(例えば特開昭61−118423号公報、特開昭62−184056号公報、特開昭62−273259号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかるこれらの従来の先行技術は、i線露光を行うと光線透過率が低いために、基板付近で光反応が進行せず逆テーパーが生じる欠点があった。また、i線露光用に開発された感光性ポリイミド前駆体(例えば、特開平6−342211号公報、特開平7−5688号公報、特開平7−120921号公報)では、g線の光線透過率が大き過ぎるために、g線露光では光エネルギーが十分に利用されず、感度が大幅に低下する欠点があった。
【0006】
また、芳香族ジアミンのアミノ基よりオルト位にアルキル基を有したものと3、3´、4、4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物より構成された溶剤可溶性ポリイミドは、それ自体で感光性があることが報告されている(例えば、J.Pfeifer and O. Rohde, Proceeding of Second International Conference on Polyimides, 130-150 (1985)。しかし、このものでは、得られるポリイミド膜の対溶剤性が悪いという欠点があった。
【0007】
本発明は、このような欠点を解決し、水銀灯のi線でもg線でも露光可能な感光性ポリイミド前駆体を提供するため、多数の感光性ポリイミド前駆体を合成し、そのポリイミド前駆体を構成する酸無水物の電子親和力とジアミンのイオン化ポテンシャルとの間に一定の関係を満足するポリイミド前駆体を使用することで目的性能を満足することを見出だし本発明に至ったものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題を解決せしめ、水銀灯の輝線のi線にもg線においても実用的な感度で露光、現像可能な感光性ポリイミド前駆体組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、(A)(a)前記式で表されるPMDA(電子親和力1.90eV)、DSDA(電子親和力1.57eV)、BTDA(電子親和力1.55eV)、BPDA(電子親和力1.38eV)、ODPA(電子親和力1.30eV)、BSDA(電子親和力1.12eV)、6FDA(電子親和力1.56eV)、P6DA(電子親和力3.20eV)からなる群より選ばれる、平均した電子親和力が1.35eV以上1.80eV以下である酸2無水物であり、かつ3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物を酸2無水物成分全体の50モル%以下含有する酸2無水物成分と、(b)下記式で表されるPDA(イオン化ポテンシャル6.88eV)、MDA(イオン化ポテンシャル7.40eV)、3DAE(イオン化ポテンシャル7.32eV)、4DAE(イオン化ポテンシャル7.22eV)、DAM(イオン化ポテンシャル7.28eV)、3DDS(イオン化ポテンシャル7.58eV)、4DDS(イオン化ポテンシャル7.75eV)、DAS(イオン化ポテンシャル7.45eV)、MDX(イオン化ポテンシャル7.09eV)、MED(イオン化ポテンシャル7.07eV)、APB(イオン化ポテンシャル7.47eV)、BAPS(イオン化ポテンシャル7.75eV)、BAPP(イオン化ポテンシャル7.34eV)、BEM−S(イオン化ポテンシャル7.37eV)、DPX(イオン化ポテンシャル6.88eV)、BAPS−M(イオン化ポテンシャル7.45eV)、TFMB(イオン化ポテンシャル7.59eV)、FDAE(イオン化ポテンシャル7.53eV)、TPE(イオン化ポテンシャル7.45eV)からなる群より選ばれるジアミン成分であって、一般式(2)または(3)で表されるジアミン残基を、ジアミン成分全体の50モル%以上含有し、かつその他のジアミン残基としてアミノ基よりオルト位の位置に水素原子以外の置換基がないジアミン残基をジアミン成分全体の20モル%以下含有し、かつ、全ジアミン成分を平均したイオン化ポテンシャルが7.25eV以上7.44eV以下であり、アミノ基の水素の核磁気共鳴スペクトル(NMR)のテトラメチルシランを基準にした化学シフトの全ジアミン成分の平均値が4.7ppm以上5.2ppm以下であるジアミン成分から構成され、さらに(c)前記全ジアミン成分を平均したイオン化ポテンシャルより酸2無水物の平均した電子親和力を引いた差が5.55eV以上5.80eV以下となるよう構成された一般式(1)で表される構造単位からなるポリマーであって、かつ(e)前記ポリマーの250℃〜500℃の熱処理によるイミド化後のガラス転移温度が250℃以上であるポリマーと、(B)増感剤を含有することを特徴とする感光性ポリイミド前駆体組成物より達成される。
【0010】
【化4】
(式(1)中、R1は少なくとも2個以上の炭素原子を有する3価または4価の酸残基を示し、R2は、次式(2)または(3)で表される構造を有するジアミン残基から選ばれた成分が少なくともR2成分全体の50モル%以上を占め、かつその他のR2成分は結合手よりオルト位の位置に水素原子以外の置換基を含まない芳香族ジアミン残基か、あるいは少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の脂肪族ジアミン残基を示し、R3は、−OR4、−NHR4、−O-N+R4R5R6R7から選ばれた基を示す。ただし、R4は少なくとも1種のエチレン性不飽和結合を有する基、R5、R6、R7はそれぞれ水素原子または炭素数1から10までの炭化水素基を表す。nは1または2である。)
【化5】
(式(2)および(3)において、R8,R9,R10はそれぞれ炭素数1から10までの有機基、フルオロ有機基、塩素原子、フッ素原子、臭素原子またはヨウ素原子を有する基を示し、アミノ基からオルト位以外の位置に存在する基を示し、p、q、rはそれぞれ0から3の数を示す。また、Yは結合,−O−,−S−、−SO2−,−SO−,−CH2−、−CF2−,−CO−,−C(CH3)2−および−C(CF3)2−並びに次式(4)〜(8)で表される基から選ばれた結合基を示す。)
【化6】
【0011】
本発明において使用するポリマーは上記式(1)で表される構造単位からなるポリマーであり、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環や、その他の環状構造を有するポリマー(以下「ポリイミド系ポリマー」という)となり得るものである。
【0012】
上記式(1)中、R1は酸2無水物の酸残基を表しており、この酸2無水物の形で芳香族環を含有し、かつ、炭素数6〜30の3価または4価の酸残基であることが好ましい。具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ジフェニルスルホン基、ジフェニルエーテル基、ナフチル基、ヘキサフルオロジフェニルプロパン基、ジフェニルプロパン基、ビス(フェノキシフェニル)プロパン基、ベンゾフェノン基などが挙げられるが、該酸無水物の平均した電子親和力が1.35eV以上で1.80eV以下であるものであればこれらに限定されない。
【0013】
本発明における、酸2無水物の電子親和力は、V.M.Svetlichnyi,K.K.Kalnin´sh,V.V.Kudryavtsev, and M.M.Kotton, Dokl.Akad.Nauk.,237,612-615 (1977) に記載されている。この範囲にはいる酸2無水物としては、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物(電子親和力(以後、Eaと略す)=1.55eV)、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(Ea=1.38eV)、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物(Ea=1.57eV)などがある。この中で3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物を使用する場合、このものは酸成分の中で全体の50モル%以下にすることが必要である。この範囲を外れると溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などに接触した場合にクラックが入るなどの問題が生じる恐れがある。また、酸無水物成分を2種類以上使用する場合の電子親和力はそれらの酸無水物の加重平均を用いれば良い。例えば、無水ピロメリット酸(Ea=1.90eV)50モル%と3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(Ea=1.38eV)50モル%の組み合わせで使用する場合のEaは1.90×0.5+1.38×0.5=1.64eVとなる。また、Eaが不明の酸無水物を使用する場合、酸無水物の炭素13−核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定し、カルボニル基のケミカルシフト(CCS)よりEaを推定することができる。この場合のEaとCCSとの関係は、
Ea=-0.379×CCS+62.90
となる。
【0014】
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物を構成している酸成分の50モル%以上が、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸2無水物、あるいはこれらの混合物となると、熱処理によりイミド化した後の耐薬品性が低下し、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの極性有機溶媒と接触した場合にポリイミド膜にクラックなどが入るために好ましくない。
【0015】
上記式(1)中、R2はジアミンの構造成分を表しており、アミノ基よりオルト位に水素原子以外の置換基が存在しない場合、酸無水物成分とジアミン成分との間に電荷移動錯体を形成するが、この電荷移動錯体の吸収がポリイミド前駆体の吸収を決定している。
【0016】
本発明者らは、ジアミンの構造により電荷移動錯体の形成に違いがあることを見出だした。本発明においては、アミノ基よりオルト位の位置に水素原子以外の置換基がなくかつその構造が一般式(2)または(3)で表されるジアミン残基を、ジアミン成分全体の50モル%以上含有し、かつその他のジアミン残基としてアミノ基よりオルト位の位置に水素原子以外の置換基がないジアミン残基をジアミン成分全体の20モル%以下含有するジアミンを用いてポリマーを構成することが重要である。上記式(2)および(3)において、R8,R9,R10はそれぞれ炭素数1から10までの有機基、フルオロ有機基、塩素原子、フッ素原子、臭素原子またはヨウ素原子を有する基を示し、アミノ基からオルト位以外の位置に存在する基を示し、例えば、次式で表される基を示す。
【0017】
【化7】
(上記各式中,R1は水素原子またはメチル基を示し、nは1〜10の数、mは0〜21の数、pは0〜21の数、sは1〜5の数を示す。)
【0018】
上記式(2)で表わされる構造のジアミンを主たるジアミン成分に用いると、ジアミンの結合手とアミノ基がメタの位置にあるのでジアミン内での電子の共鳴が起こりにくい。このため、得られるポリイミド前駆体での電荷移動錯体の吸収は、比較的小さなものとなる。この場合、電荷移動錯体を形成しにくいイオン化ポテンシャルの大きなジアミンを使用すると、g線での光線透過率が高くなり過ぎるために、g線の光エネルギーをうまく利用することができなくなる。また、イオン化ポテンシャルが小さ過ぎると、電荷移動錯体の吸収が大きくなり過ぎるために、i線の光線透過率が低下するために、基板付近での光反応が進行しないために得られるパターンは逆テーパー状となり好ましくない。このため、用いられるジアミンのイオン化ポテンシャルは、全ジアミン成分を平均したイオン化ポテンシャルが、7.25eVから7.44eVの範囲にあることが必要である。
【0019】
このようなジアミンのイオン化ポテンシャルについては、幾つかが、V.V.Kudryavtsev, and V.M.Svetlichnyi, Zh.Org.Khim.,17,1682-1688 (1981)に記載されている。また、イオン化ポテンシャルについては水素1のNMRスペクトルのケミカルシフトと対応関係にあり、アミノ基の水素原子のケミカルシフトが大きくなる(低磁場シフト)ほどイオン化ポテンシャルが大きくなることが判っている(S.Ando,T.Matsuura,S.Sasaki, J.Polym.Sci.PartA,30,2285-2293(1992))。これによると、イオン化ポテンシャル(IP)はとケミカルシフト(CS)の関係は、
IP=4.72×log(CS)+4.07
の関係が得られる。よって、イオン化ポテンシャルの不明なジアミンについても水素1のNMRを測定し、ケミカルシフトを得ることで推定することができる。水素1−NMRを用いたときの好ましい範囲は、4.7ppmから5.4ppmの範囲である。
【0020】
また本発明においては、全ジアミン成分を平均したイオン化ポテンシャルより酸2無水物の平均した電子親和力を引いた差が5.55eV以上5.80eV以下となるようポリマー(A)を構成する必要がある。
【0021】
さらに本発明においては、ポリマー(A)がさらに(d)該ポリマーを構成するジアミンの水素の核磁気共鳴スペクトル(NMR)のテトラメチルシランを基準にした全ジアミン成分の平均したアミノ基の水素の化学シフトの値が4.7ppm以上5.2ppm以下でありかつ(e)前記ポリマーの250℃〜500℃の熱処理によるイミド化後のガラス転移温度が250℃以上であるポリマーである。
【0022】
本発明における、ガラス転移温度(Tg)は示差熱分析(DSC)装置により検出されるもので、熱機械分析(TMA)や動的粘弾性により検出されるTgより一般に20度〜30度低い温度となる。このTgが250度以下であると、ポリイミドの耐熱性が低下するために、封止樹脂に封入するとき、樹脂封止したLSIをプリント基板などと半田で接続する場合にポリイミドにクラックが発生するなどの問題があり好ましくない。また、Tgが400度以上になるかDSC法でTgが明確に現れない場合、ポリイミドと下地基板との接着性が低くなるなどの問題が生じる。よって好ましいTgの範囲は、250度〜400度であり、さらに好ましくは270度から350度である。
【0024】
R3は、−OR4、−NHR4、−ONR4R5R6R7から選ばれた基を示す。ただし、R4は少なくとも1種のエチレン性不飽和結合を有する基、R5、R6、R7はそれぞれ水素原子または炭素数1から10までの炭化水素基を表している。
【0025】
−COR3が−COOR4で表されるエステル基である場合は、R3の好ましい具体例として、2−アクリロイルオキシエチルカルボニル基、2−メタクロイルオキシエチルカルボニル基、2−(1−アクロイルオキシ)プロピルオキシカルボニル基、2−(1−メタクロイルオキシ)プロピルオキシカルボニル基、2−メタクリルアミノエチルオキシカルボニル基、3−メタクロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシカルボニル基、アクリルアミノメチルオキシカルボニル基などのエチレン性不飽和結合を有する基を含むことが必要であるが、これ以外に、エトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基などのエチレン性不飽和結合を含まない基を全体の50モル%以下含有することも可能である。
【0026】
−COR3が−CONHR4で表されるアミド基である場合、R3の好ましい具体例として、N−(2−アクロイルオキシエチル)−アミノカルボニル基、N−(2−メタクロイルオキシエチル)−アミノカルボニル基などのエチレン性不飽和結合を含むことが必要であるが、エチルアミノカルボニル基、N−(2−エトキシエチル)アミノカルボニル基などのエチレン性不飽和結合を含まない基を全体の50モル%以下含有することも可能である。
【0027】
−COR3が−COO-N+R4R5R6R7で表される置換アンモニウム付加塩型のカルボン酸残基である場合、−COR3の好ましい具体例として、メタクロイルオキシエチル・トリメチルアンモニウム付加塩型カルボン酸残基、アクロイルオキシエチル・ジメチルアンモニウム付加塩型カルボン酸残基、メタクロイルオキシエチル・ジメチルアンモニウム付加塩型カルボン酸残基、ビニルピリジニウム付加塩型カルボン酸残基などのエチレン性不飽和結合を含むことが必要であるが、これ以外にR4R5R6R7の全てが、水素あるいは炭化水素基であるような基を全体の50モル%以下含有することも可能である。さらに、ポリアミド酸やポリアミド酸の炭素数1〜10までのアルキルエステル、ポリアミド酸の炭素数1〜10までのアルキルアミドなどを全体の50モル%以下含有することもできる。
【0028】
さらに、不飽和2重結合を有したポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリアミド酸の置換アンモニウム付加塩の中の全て、あるいは各々2種を混合することも出来る。
【0029】
ポリマー(A)は、R1、R2、R3がこれらのうち各々1種から構成されていても良いし、各々2種以上から構成される共重合体であつてもよい。
【0030】
ポリマー(A)は、上記式(1)で表される構造単位のみからなるものであっても良いし、他の構造単位との共重合体あるいはブレンド体でであっても良い。その際、上記式(1)で表される構造単位を90モル%以上含有していることが好ましい。共重合あるいはブレンドに用いられる構造単位の種類および量は最終加熱処理によって得られるポリイミド系ポリマの耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。
【0031】
これらのポリアミド酸およびそのエステル化合物は公知の方法によって合成される。すなわち、ポリアミド酸の場合はテトラカルボン酸二無水物とジアミンを選択的に組み合わせ、これらをN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどを主成分とする極性溶媒や、γ−ブチロラクトン中で反応させることにより合成される。ポリアミド酸のエステル化合物は例えば、特開昭61−72022号公報、特開昭55−30207号公報に記載されている方法などで合成される。
【0032】
増感剤としては、芳香族2級または3級アミン化合物、チオール化合物などを好ましく使用することができる。この好ましい具体例としては、N−フェニルグリシン、ジエチルアミノ安息香酸エチル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−エチルアニリン、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾールなどが挙げられる。感度向上の点からは、N−アリ−ルグリシン化合物がとくに好ましい。この化合物の例としては、N−フェニルグリシン、N−(3−メトキシフェニル)グリシン、N−(4−ニトロフェニル)グリシン、N−(4−メトキシフェニル)グリシン、N−(3−ニトロフェニル)グリシン、N−ナフチルグリシン、N−フェニルグリシンのエチルエステルなどが挙げられるがこれらに限定されない。また、芳香族2級または3級アミン化合物とチオール化合物を併用して使用することもできる。 これらの化合物の添加量はポリマーに対して、0.1から20重量%、さらに好ましくは、0.2から10重量%である。
【0033】
さらにg線露光に対する感度を向上させるために、クマリン類を増感剤として使用しても良い。好ましいクマリンの具体例としては、3−(4−メトキシベンゾイルクマリン)、7−ジエチルアミノ−3−ベンゾイルクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイルクマリン)、5,7−ジメトキシ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)クマリン、3,3´−カルボニルビスクマリン、3,3´−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3´−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、9−(7−ジエチルアミノ−3−クマノイル)−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H,6H,10H[1]ベンゾピラノ[9,9a,1−gh]キノラジン−10−オンなどが挙げられるがこれに限定されるわけではなく、実際に水銀灯のg線である436nmに吸収をもつ化合物であれば使用することができる。
【0034】
さらに、ミヒラーケトン、フルオレノン、ベンズアントロンなどの芳香族カルボニル化合物、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4−アジドベンザルアセトフェノンなどのアジド化合物、3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−フェニル−2−プロペン−1−オン、1−(3−クロロフェニル)−5−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1,4−ペンタジエン−3−オンなどのアミノ芳香族不飽和ケトン、1,3,−ジフェニル−1,2,3−プロパントリオン−2−(O−アセチル)オキシム、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、ビス(α−イソニトロソプロピオフェノン)イソフタルなどのオキシム類、チタノセン系などの有機金属錯体、メロシアニン色素などが増感剤として有効であるが、これらに限定されない。また、これらの中より2種以上のものを併用して用いても良い。これらの好ましい添加量は、ポリマーに対して、0.1から20重量%、さらに好ましくは、0.2から10重量%である。
【0035】
本発明の組成物には、さらに光反応性モノマーとして、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどのアクリルモノマー類をポリマー(A)に対して1から20重量%添加しても良い。
【0036】
上記のポリマー(A)、増感剤、その他添加剤や光反応性モノマーを溶媒と混合することにより感光性ポリイミド前駆体組成物を得ることができる。この時に用いられる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどを主成分とする溶媒が単独もしくは2種以上の混合物として好ましく用いられるがこれらに限定されない。
【0037】
また、必要に応じて上記感光性ポリイミド前駆体組成物と基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を混合しても良い。また、2酸化ケイ素、2酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを添加することもできる。
【0038】
次に、本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物を用いてポリイミドパターンを形成する方法について説明する。
【0039】
本発明の感光性ポリイミド前駆体組成物を基板上に塗布する。基板としてはシリコンウエハー、セラミックス類、ガリウムヒ素などが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法としてはスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティングなどの方法がある。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが通常、乾燥後の膜厚が、0.1から150μmになるように塗布される。
【0040】
次に感光性ポリイミド前駆体組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性ポリイミド前駆体組成物皮膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50度から120度の範囲で1分から数時間行うのが好ましい。
【0041】
次に、この感光性ポリイミド前駆体組成物皮膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)とg線(436nm)を用いるのが好ましい。
【0042】
ポリイミドパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて未露光部を除去することによって達成される。現像液としては、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、キシレンなどの炭化水素類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、水などを単独あるいは数種を組み合わせたものが好ましく用いられる。現像後、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などでリンスをする。
【0043】
現像後、200度から500度の温度を加えてポリイミド皮膜に変換する。このイミド化は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130度、200度、350度で各30分づつ熱処理する。あるいは室温より400度まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0044】
本発明による感光性ポリイミド前駆体組成物により形成したポリイミド皮膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜などの用途に用いられる。
【0045】
【実施例】
以下実施例により本発明の効果を具体的に説明する。実施例中の物性の測定は次の方法によって行った。
【0046】
特性の測定方法
ガラス転移温度の測定
感光性ポリイミド前駆体のワニスを350度の熱処理後に5μmになるようにシリコンウエハにスピンコートした。このウエハを大日本スクリーン社製SKW−636のホットプレートを用いて100度で3分熱処理した。このウエハを窒素流量20l/分のオーブンに入れ、室温より140度に昇温し、30分この温度で熱処理した。さらに1時間かけて350度に昇温して、60分熱処理した後、オーブンの加熱を止め200度に温度が低下するまで放置した。200度以下になった後、中からウエハを取りだした。このウエハの周りに切目を付けて、45%のフッ化水素酸に3分間漬けた。これにより、ポリイミドフィルムをシリコンウエハより剥離した。このポリイミドフィルム10mgを秤量し、直径2mmのアルミパンに入れアルミ製のふたをした。これを島津製熱示差分析装置DSC−50に入れて、最初300度で10分間アニール処理をして、その後急激に100度まで冷却し、次いで40度/分で昇温して400度にし、その間に測定を行った。再度、冷却して同様に40度/分で測定した。
【0047】
耐薬品性
ポリイミド前駆体膜のパターンをシリコンウエハの上に以下の実施例に従い形成した。このウエハを窒素流量20l/分のオーブンに入れ、室温より140度に昇温し、30分この温度で熱処理した。さらに1時間かけて350度に昇温して、60分熱処理した後、オーブンの加熱を止め200度に温度が低下するまで放置した。200度以下になった後、中からウエハを取りだした。このウエハにN−メチル−2−ピロリドンを1滴落として光学顕微鏡で、そのまわりを観察してクラックの発生の有無を調べた。ここで、クラックが発生すると耐薬品性に問題があることになる。
【0048】
膜厚の測定
大日本スクリーン社製光学式膜厚測定装置ラムダエースを用いて、屈折率1.64で感光性ポリイミド前駆体の膜厚を測定した。また、現像前の膜厚(T1)と現像後の膜厚(T2)がT2/T1(残膜率)<0.6である場合、このものは感度が不良であるとした。
【0049】
パターンの断面の観察
現像終了後のウエハを5mm×10mm程度にポリイミドのパターンを痛めないように切断した。この試料を走査型電子顕微鏡(SEM)の試料台に取り付け、金−パラジウムを蒸着してSEM用の試料を作成した。
【0050】
この試料を明石ビームテクノロジー社製走査型電子顕微鏡ABT−40を用いて倍率2000倍で感光性ポリイミド前駆体のパターンの断面を観察した。
【0051】
ここで、垂直あるいは60度〜90度の角度でパターンが形成されている場合を良好とした。90度以上の角度でパターンが形成されるものをオーバーハングがあり問題であり、60度以下の角度でパターンが形成されるものは膜減り量が大きいか解像度が悪いため問題がある。
【0052】
以下、ポリマー(A)の合成法方を具体的に説明する。ここで使用された酸無水物の電子親和力と13C−NMRの化学シフトの値、およびジアミノイオン化ポテンシャルと1H−NMRのアミノ基の化学シフトの値を表1および表2におのおの示した。
【0053】
【表1】
【化8】
【化9】
【0054】
【表1】
【化9】
【化10】
【化11】
【0055】
合成例1
窒素気流下、1lの4つ口フラスコに3,4´−ジアミノジフェニルエーテル(3DAE)(水素1−NMRによるケミカルシフト=4.78、4.97ppm、これより推定されるイオン化ポテンシャル(IP)=7.32eV)9.01g(0.045モル)と3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3DDS)(IP=7.58eV)13.7g(0.03モル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4DAE)(IP=7.22eV)4.00g(0.02モル)、と1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.2g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに入れ溶解させた(ジアミン成分の平均IP=7.43eV)。ここに無水ピロメリット酸(PMDA)(電子親和力(以後、Eaと略す)=1.90eV)10.47g(0.048モル)と3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)(Ea=1.38eV)14.12g(0.048モル)(酸無水物成分の平均Ea=1.64eV))を加え、室温で6時間反応を行いポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を得た(このEaとIPの差は5.79eV)。この溶液に、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(DEM)33g(0.18モル)、N−フェニルジエタノールアミン(NDA)1.25g、N−フェニルグリシン(NPG)1.25g、クマリン7(コダック社製)0.5gを加え感光性ポリイミドのワニスAを得た。
【0056】
このポリイミドのTgは285度であった。耐薬品性は問題なかった。
【0057】
合成例2
乾燥空気気流下、無水ピロメリット酸(PMDA)(Ea=1.90eV)10.9g(0.05モル)と3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物(BTDA)(Ea=1.55eV)16.1g(0.05モル)(平均Ea=1.73eV)をガンマブチロラクトン(GBL)200gに溶解させた。ここに26gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(0.2モル)、ピリジン14gを加えて50度で1時間反応を行った。この溶液に氷冷下42.0gの温めて溶液状態にしたジシクロヘキシルカルボジイミド(0.2モル)を15分かけて滴下した。さらに3DAE(IP=7.32eV)20.0g(0.1モル)をGBL100gに溶解させた溶液を10分かけて滴下した。この溶液を氷冷下3時間反応させ、次いで50度で1時間反応させた。反応終了後、析出した尿素化合物を濾過で除いた。濾液を3lの水に投入してポリアミドエステルの沈殿を生成した(このEaとIPの差は5.59eV)。この沈殿を集めて、水とメタノールで洗浄の後に真空乾燥機で50度で24時間乾燥した。このポリアミドエステルの粉体15gと0.75gの2−メルカプトベンズイミダゾール、1gのトリメチロールプロパントリアクリレート、2gのエチレングリコールジメタクリレート、0.03gのp−tert−ブチルカテコール、0.5gのミヒラーケトン、0.5gの3−メタクリロキシ−プロピル−ジメトキシシラン、0.5gの1−フェニル−プロパンジオン2−(o−ベンゾイル)オキシムを加えた感光性ポリイミドワニスBを得た。
【0058】
このポリイミドのTgは295度であった。耐薬品性も問題なかった。
【0059】
合成例3
窒素気流下、1lの4つ口フラスコにメタフェニレンジアミン(MDA)(IP=7.40eV)5.19g(0.048モル)と3DAE(推定IP=7.32eV)9.41g(0.047モル)と1、3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.2g(0.005モル)をNMP100gに入れ溶解させた(この平均IP=7.35eV)。ここにPMDA(Ea=1.90eV)10.8g(0.050モル)とBPDA(Ea=1.38eV)15.0g(0.047モル)を加え(平均Eaは1.64eV)、室温で6時間反応を行いポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を得た(このEaとIPの差は5.71eV)。ここにグリシジルメタクリレート13gを加え、室温で12時間反応させた。このワニスにエチレングリコールジメタクリレート5gとN−フェニルグリシン2.5g、0.2gの3,3´−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)を加え、感光性ポリイミドのワニスCを得た。
【0060】
このポリイミドのTgは290度であった。耐薬品性も問題なかった。
【0061】
合成例4
窒素気流下、1lの4つ口フラスコにMDA(IP=7.40eV)5.95g(0.055モル)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4DAE)(IP=7.22eV)8.01g(0.040モル)1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.2g(0.005モル)をNMP100gに入れ溶解させた(平均IP=7.33eV)。ここにBTDA(Ea=1.55eV)30.93g(0.096モル)を加え、室温で6時間反応を行いポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を得た(このEaとIPの差は5.78eV)。ここに15gのN−メチロールメタクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート5gとN−フェニルグリシン2.5g、0.2gの3,3´−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)を加え、感光性ポリイミドのワニスDを得た。
【0062】
このポリイミドのTgは295度であった。耐薬品性は、問題がなかった。
【0063】
参考例1
4インチシリコンウエハ上に、感光性ポリイミド前駆体のワニスAをプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン社製SKW−636)を用いて、100℃で3分プリベークすることにより、感光性ポリイミド前駆体膜を得た。ついで、露光機(ニコン製g線ステッパNSR−1505−g6E)に、パターンの切られたレチクルをセットし、(露光量400mJ/cm2(436nmの強度)でg線露光を行った。同様の方法により露光機(ニコン製i線ステッパNSR−1755−i7A)に、パターンの切られたレチクルをセットし、露光量300mJ/cm2(365nmの強度)でg線露光を行った。
【0064】
現像の直前に80度で1分の熱処理をホットプレート(大日本スクリーン社製SKW−636)を用いて行った。現像は、大日本スクリーン製造社製SKW−636の現像装置を用い、100回転で現像液DV−605(東レ製)を3秒間噴霧した。この後、60秒静止し、次いで1000回転で5秒間現像液を噴霧、1000回転で5秒間イソプロピルアルコールを噴霧してリンス処理、3000回転で8秒振り切り乾燥した。
【0065】
現像後のパターンを光学顕微鏡で目視した結果、15ミクロンのホールが解像していた。また、残膜率はi線露光で0.92、g線露光で0.84と良好であり、現像後のパターンの形状もオーバーハングもなく良好であった。
【0066】
実施例1
6インチシリコンウエハ上に、感光性ポリイミド前駆体のワニスBをプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン社製SKW−636)を用いて、100℃で3分プリベークすることにより、感光性ポリイミド前駆体膜を得た。ついで、露光機(ニコン社製g線ステッパーNSR−1505−g6E)に、パターンの切られたレチクルをセットし露光量400mJ/cm2(436nmの強度)でg線露光を行った。同様の方法により露光機(ニコン社製i線スッテパ−NSR−1755−i7A)に、パターンの切られたレチクルをセットし、露光量200mJ/cm2(365nmの強度)でi線露光を行った。
【0067】
現像は、大日本スクリーン製造社製SKW−636の現像装置を用い、1000回転でNMPとキシレン(体積比7:3)の現像液を30秒間噴霧した。この後、1000回転で5秒間乳酸エチルを噴霧してリンス処理、3000回転で8秒振り切り乾燥した。
【0068】
現像後のパターンを光学顕微鏡で目視した結果、20ミクロンのホールが解像していた。また、残膜率はi線露光で0.91、g線露光で0.86と良好であり、現像後のパターンの形状もオーバーハングもなく良好であった。
【0069】
参考例2
6インチシリコンウエハ上に、感光性ポリイミド前駆体のワニスCをプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン製造社製SKW−636)を用いて、100℃で3分プリベークすることにより、感光性ポリイミド前駆体膜を得た。ついで、露光機(ニコン社製g線ステッパーNSR−1505−g6E)に、パターンの切られたレチクルをセットし露光量400mJ/cm2(436nmの強度)でg線露光を行った。同様の方法により露光機(ニコン社製i線スッテパーNSR−1755−i7A)に、パターンの切られたレチクルをセットし、露光量200mJ/cm2(365nmの強度)でi線露光を行った。
【0070】
現像の直前に80度で1分の熱処理をホットプレート(大日本スクリーン社製SKW−636)を用いて行った。現像は、大日本スクリーン製造社製SKW−636の現像装置を用い、100回転でNMPとエタノール(体積比8:2)の現像液を3秒間噴霧した。この後、90秒静止し、次いで1000回転で5秒間現像液を噴霧、1000回転で5秒間メチルイソブチルケトン処理してリンス、3000回転で8秒振り切り乾燥した。
【0071】
現像後のパターンを光学顕微鏡で目視した結果、20ミクロンのホールが解像していた。また、残膜率はi線露光で0.88、g線露光で0.76と良好であり、現像後のパターンの形状もオーバーハングもなく良好であった。
【0075】
実施例2〜8、比較例1〜8
表3に示すごとく感光性ポリイミド前駆体のワニスを作成した。これを合成例1の方法で合成したものは参考例1の方法で、合成例2の方法で合成したものは実施例1の方法で、合成例3の方法で合成したものは参考例2の方法で、パターン加工を行い、特性を調べた。合成例4の方法で合成したものは以下に示す方法にてパターン加工を行い、特性を調べた。4インチシリコンウエハ上に、感光性ポリイミド前駆体のワニスDをプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(大日本スクリーン製造社製SKW−636)を用いて、100℃で3分プリベークすることにより、感光性ポリイミド前駆体膜を得た。ついで、露光機(キャノン社製PLA501F)に、パターンの切られたマスクをセットし、ケンコーガラス製U−350フィルター(透過光線のピークは350nmで、ここではi線(365nm)を選択的に露光)(露光量300 mJ/c m 2 (365nmの強度))でi線露光を行った。同様の方法により露光機(キャノン社製PLA501F)に、パターンの切られたマスクをセットし、東芝ガラス製Y−42フィルター(420nm以下の光線カット、ここではg線(436nm)を選択的に露光)(露光量400 mJ/c m 2 (436nmの強度))でg線露光を行った。現像の直前に80度で1分の熱処理をホットプレート(大日本スクリーン社製SKW−636)を用いて行った。現像は、大日本スクリーン製造社製SKW−636の現像装置を用い、100回転で現像液DV−605(東レ製)を3秒間噴霧した。この後、60秒静止し、次いで1000回転で5秒間現像液を噴霧、1000回転で5秒間イソプロピルアルコールを噴霧してリンス処理、3000回転で8秒振り切り乾燥した。
結果を表4に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、水銀灯のi線でもg線でも露光可能な感光性ポリイミド前駆体を提供することができる。
Claims (1)
- (A)(a)下記式で表されるPMDA(電子親和力1.90eV)、DSDA(電子親和力1.57eV)、BTDA(電子親和力1.55eV)、BPDA(電子親和力1.38eV)、ODPA(電子親和力1.30eV)、BSDA(電子親和力1.12eV)、6FDA(電子親和力1.56eV)、P6DA(電子親和力3.20eV)からなる群より選ばれる、平均した電子親和力が1.35eV以上1.80eV以下である酸2無水物であり、かつ3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物を酸2無水物成分全体の50モル%以下含有する酸2無水物成分と、(b)下記式で表されるPDA(イオン化ポテンシャル6.88eV)、MDA(イオン化ポテンシャル7.40eV)、3DAE(イオン化ポテンシャル7.32eV)、4DAE(イオン化ポテンシャル7.22eV)、DAM(イオン化ポテンシャル7.28eV)、3DDS(イオン化ポテンシャル7.58eV)、4DDS(イオン化ポテンシャル7.75eV)、DAS(イオン化ポテンシャル7.45eV)、MDX(イオン化ポテンシャル7.09eV)、MED(イオン化ポテンシャル7.07eV)、APB(イオン化ポテンシャル7.47eV)、BAPS(イオン化ポテンシャル7.75eV)、BAPP(イオン化ポテンシャル7.34eV)、BEM−S(イオン化ポテンシャル7.37eV)、DPX(イオン化ポテンシャル6.88eV)、BAPS−M(イオン化ポテンシャル7.45eV)、TFMB(イオン化ポテンシャル7.59eV)、FDAE(イオン化ポテンシャル7.53eV)、TPE(イオン化ポテンシャル7.45eV)からなる群より選ばれるジアミン成分であって、一般式(2)または(3)で表されるジアミン残基を、ジアミン成分全体の50モル%以上含有し、かつその他のジアミン残基としてアミノ基よりオルト位の位置に水素原子以外の置換基がないジアミン残基をジアミン成分全体の20モル%以下含有し、かつ、全ジアミン成分を平均したイオン化ポテンシャルが7.25eV以上7.44eV以下であり、アミノ基の水素の核磁気共鳴スペクトル(NMR)のテトラメチルシランを基準にした化学シフトの全ジアミン成分の平均値が4.7ppm以上5.2ppm以下であるジアミン成分から構成され、さらに(c)前記全ジアミン成分を平均したイオン化ポテンシャルより酸2無水物の平均した電子親和力を引いた差が5.55eV以上5.80eV以下となるよう構成された一般式(1)で表される構造単位からなるポリマーであって、かつ(e)前記ポリマーの250℃〜500℃の熱処理によるイミド化後のガラス転移温度が250℃以上であるポリマーと、(B)増感剤を含有することを特徴とする感光性ポリイミド前駆体組成物。
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