JP3892313B2 - 体液吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液を吸収処理する、使い捨ての紙おむつ、生理用ナプキンなどの体液吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の体液吸収性物品は、基本的に、身体の肌に面する側に設けられた液透過性の表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、および両者の間に設けられた体液吸収性部を有する。
【0003】
この場合における、体液吸収性部の構成は、種々のものが知られているが、吸収性素材として、高吸水性ポリマー、綿状パルプ(フラッフパルプ)、クレープ紙などの吸収紙を主としている。近年の高吸水性ポリマー技術の進展に伴い、より薄型化した体液吸収性部の形成が可能となり、したがって製品の吸収部分の身体へのフィット性が向上し、モレが少なくなってきている。
【0004】
この製品の吸収特性の改善は、需要者にとって、薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐えるさらに新たな製品開発の要求となってあらわれる。
【0005】
しかるに、この要求を満たすためには、例えば、尿の場合であっては多数回の排尿量のすべてを体液吸収性部が吸収しなければならない。しかし、排尿が繰り返えされるごとに体液吸収性部の吸収速度は遅くなり、特に体液吸収性部の長手方向端部まで体液が吸収されないことが多い。この原因としては、体液の縦方向(製品の長手方向)への拡散が十分でないこと、高吸水性ポリマーの膨潤による拡張濡れが阻害されるいわゆるゲルブロッキング現象が起こるためとされている。
【0006】
これらの現象を解決する手法として、特表2000−510031号、及び特表2000−510033号などの縦方向への濡れ拡がりを助ける技術、特表2000−510031号、特表2000−510033号などの高吸水性ポリマーのゲルブロッキングを防ぐ技術、高吸水性ポリマーの形状や組み込みの工夫、濡れによって膨潤する空間を確保する方法などが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしいずれの方法を用いても、十分な解決策となっていない。この原因を改めて検討すると、従来の体液吸収性物品の体液吸収性部は縦長とし製品の長手方向に沿って配置し、体液排出部位が体液吸収性部のほぼ中心に位置するように設計し、排出部位からの体液は長手方向端部まで濡れ拡がる(拡散する)であろうことを前提としていた。したがって、体液の長手方向拡散が十分でない限り、本質的に、体液吸収性部全体で体液を吸収することはできない。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、体液吸収性部内での体液の拡散には限界があることを踏まえ、体液との接触により収縮する収縮性材を利用して、体液の吸収部が位置変化するように構成することにより、吸収材全体を有効的に利用し、全体としてみれば、薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐え得る体液吸収性物品を提供することにある。
【0009】
他の課題は、体液排出部位に対してその吸収部が体液の排出に伴なって更新されるようにすることにある。別の課題は、高吸水性ポリマーの膨潤による拡張濡れが阻害されるいわゆるゲルブロッキング現象がなく、高吸水性ポリマーの機能が十全に発揮される体液吸収性物品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
身体の肌に面する側に設けられた液透過性の表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、および両者の間に設けられた体液吸収性部を有する吸収性物品であって、
体液との接触により収縮する所定長さの吸収材が、前記体液吸収性部内にあって収縮可能に配置されるとともに、この吸収材の一部が物品に対して固定されていることを特徴とする体液吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
体液との接触により収縮する所定長さの吸収材が、体液吸収性部内にあって収縮可能に配置されるとともに、この吸収材の一部が物品に対して固定されているから、吸収材が体液と接触すると収縮する結果、体液排出部位に対して、吸収材における先に体液を吸収した部位が逃げるようになり、これに代わって吸収材の新たな部位が位置するようになる。つまり体液排出部位に対して、吸収材の吸収部が体液の排出に伴なって更新され、位置変化する。したがって、吸収材全体を有効的に利用でき、全体としてみれば、体液吸収性部が薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐え得る体液吸収性物品を得ることができる。
【0012】
<請求項2記載の発明>
吸収材は、体液との接触により収縮する所定長さの収縮性材と、この収縮性材に対して実質的に一体化されている体液吸収性材とからなるものとされた請求項1記載の体液吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
体液との接触により収縮する所定長さの収縮性材と、この収縮性材に対して実質的に一体化されている体液吸収性材とからなる吸収材が、体液吸収性部内にあって収縮材が収縮可能に配置されているから、収縮性材が体液と接触すると収縮し、これに伴なって実質的に一体化された体液吸収性材も収縮する。その結果、体液排出部位に対して、体液吸収性材が先に吸収した部位が逃げるようになり、これに代わって体液吸収性材の新たな部位が位置するようになり、つまり体液排出部位に対して、体液吸収性材の吸収部が体液の排出に伴なって更新され、位置変化する。したがって請求項1記載の発明と同様に、吸収材全体を有効的に利用でき、全体としてみれば、体液吸収性部が薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐え得る体液吸収性物品を得ることができる。
【0014】
<請求項3記載の発明>
吸収材は、高吸水性ポリマー、及びこの高吸水性ポリマーの担体からなる体液吸収性材と、収縮性材とを有し、この収縮性材に対して前記体液吸収性材とが実質的に一体化されている請求項1または2記載の体液吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
体液吸収性材は、高吸水性ポリマーとこの高吸水性ポリマーの担体とからなる。したがって、体液との接触による収縮性材の収縮に伴なって体液吸収性材が収縮するとき、体液排出部位に対して、体液吸収性材の高吸水性ポリマー吸収部が体液の排出に伴なって更新されるので、高吸水性ポリマーの膨潤による拡張濡れが阻害されるいわゆるゲルブロッキング現象がなく、高吸水性ポリマーの機能が十全に発揮されるものとなる。
【0016】
<請求項4記載の発明>
収縮性材と、体液吸収性材とは、長手方向に間欠的に固定されることにより実質的に一体化されている請求項2または3記載の体液吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
収縮性材と、体液吸収性材とは、長手方向に間欠的に固定されているので、体液吸収性材が効果的に収縮する。
【0018】
<請求項5記載の発明>
体液吸収性材が、自重の10倍以上の体液を吸収する能力を有する繊維状高吸収性ポリマーからなる糸状部材または紐状部材とされた、請求項3記載の体液吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
かかる糸状または紐状の体液吸収性材は、周囲の接触面に対する接触面積が小さいため、接触抵抗が小さい。よって収縮性材の収縮力が小さくても本発明の更新機能を発揮することができる。換言すれば、同レベルの更新機能を発揮させるにしても、必要な収縮性材の量を低減する或いは性能を低くすることが可能となり、収縮性材のコストを低減することができるようになる。また、糸状または紐状の体液吸収性材は、従来から吸収性物品の分野で用いられてきた粒子状の高吸収性ポリマーを集合させて用いる場合と比べて空隙を少なくできるため、同じ吸収能力であっても容積を小さくでき、体液吸収性部の薄型化を図ることができる。さらに、かかる糸状または紐状の体液吸収性材は、収縮性材との一体化を容易・確実に行えるため好ましい。
【0020】
<請求項6記載の発明>
収縮性材と体液吸収性材とが束ねられ、長手方向に間欠的に固定されることにより実質的に一体化されている請求項5記載の体液吸収性物品。
【0021】
(作用効果)
糸状または紐状の体液吸収性材を収縮性材と束ねて一体化することによって、吸収材が非常にコンパクトになる。よってこの場合、吸収材の周囲の接触面に対する接触抵抗を更に小さくでき、より確実に本発明の更新機能を発揮させることができる。
【0022】
<請求項7記載の発明>
吸収材が、自重の10倍以上の体液を吸収する能力を有し且つ体液吸収により収縮する繊維状高吸収性ポリマーからなる糸状部材または紐状部材のみからなるものとされた、請求項1記載の体液吸収性物品。
【0023】
(作用効果)
この場合、高吸収性ポリマーが、請求項2〜5記載の発明における収縮性材と体液吸収性材とを兼ねているため、部材数の低減、製造の簡略化および体液吸収性部の薄型化を図ることができるようになる。特に吸収材が糸状または紐状なので粒子状の高吸収性ポリマーを集合させて用いる場合と比べて容積を小さくでき、体液吸収性部を更に薄型化できる。また一般に、吸収能力の高い高吸収性ポリマーは収縮力が小さくなる傾向がある。しかるに、吸収材が糸状または紐状であると周囲の接触面に対する接触面積が小さく、接触抵抗が小さくなるため、吸収材の吸収能力を高めることにより収縮力が小さくなっても本発明の更新機能を発揮させることができる。
【0024】
<請求項8記載の発明>
体液が透過可能な使用面側シート及び裏面側シートを有し、前記使用面側シートと裏面側シートとが製品の幅方向に間隔を置いた位置に長手方向に沿う固定部を有し、隣接する固定部の間が長手方向に沿うチャンネル空間とされ、前記チャンネル空間内に吸収材が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
チャンネル空間内に吸収材が設けられているから、吸収材の収縮が円滑かつ確実に行われる。さらに、チャンネル空間内を体液がその長手方向に沿って移動及び拡散可能である。また、製品の装着時、チャンネル空間が緩衝部またはクッション部となり、肌に対する接触性が良好となる。
【0026】
<請求項9記載の発明>
体液を吸収するが収縮しない非収縮吸収材を備えた、請求項1〜8のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
【0027】
(作用効果)
従来のこの種の吸収性物品においては、体液吸収性部内に、体液を吸収するが収縮しない非収縮吸収材が備え付けられている。本発明の収縮により移動更新する吸収材はこのような収縮しない吸収体と併せて設け、体液吸収を両吸収要素でそれぞれ分担するように構成することも可能である。この場合、本発明の吸収材は体液吸収性部の内部および外部の少なくとも一方の一部に設けることができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながらさらに詳説する。
前述のように、本発明は使い捨ての紙おむつ、生理用ナプキンなどの体液吸収性物品一般に適用されるが、おむつ使用時(装着時)に背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、これらをテープファスナー(粘着剤テープファスナー及び面ファスナーを含む)により接合するタイプのいわゆるテープ式紙おむつに対する適用例を説明すれば、パンツ型使い捨ておむつやパッド型使い捨て吸収性物品での実施の形態や、生理用ナプキンでの実施の形態も直ちに推測できると思われるので、後二者の例についてはその説明を省略する。
【0029】
(吸収性物品の基本的形態例)
本実施形態例に係る使い捨ておむつは、図1及び図2に示すように、身体の肌に面する側に設けられた液透過性の不織布、あるいは孔開きフィルムなどからなり、着用者の肌に直接触れる長方形の表面シート2、身体の肌から遠ざかる側に設けられたポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシートなどからなる防漏層3、および両者の間に設けられた体液吸収体20のみからなる体液吸収性部1を有する。
【0030】
さらに、防漏層3より裏面側たる製品の裏面側には、可撓性の外形シート4を有し、この外形シート4は1枚の不織布または複数枚の通気・撥水性の不織布を積層固定したものからなる。
【0031】
製品の両側部には、使用面側に突出する脚周り起立カフスC,Cがそれぞれ形成され、この起立カフスCは、実質的に幅方向に連続した起立シート8と、たとえば糸ゴムからなる一本のまたは複数本の伸縮部材9とにより構成されている。さらに詳細には、起立カフスCは、起立シート8を二重にして形成され、伸縮部材9を包んでホットメルト接着剤などにより固着した状態で形成されたものである。各起立カフスC,Cを形成する起立シート8は、透液性でなく不透液性もしくは疎水性であるのが望ましい。また、不織布などの透液性シートに対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。さらに、通気もしくは蒸気透過性を有しているのが望ましい。起立シート8の間に不透液性フィルムシートを挟み込み、さらに防漏性を高めることができる。
【0032】
二重の起立シート8の内面は、表面シート2及び外形シート4にホットメルト接着剤などにより固着されている。その結果、二重の起立シート8のこの固着始端は、起立カフスCの起立端を形成している。この起立端より先端側は、製品本体に固定されていない自由部分である。
【0033】
他方、二重の起立シート8の長手方向前後端部は、ホットメルト接着剤などにより、自由部分がその先端を物品の中央側に向かう状態で物品に、具体的には表面シート2外面に固定されている。左右の起立カフスC,Cで囲まれる空間は、尿または軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性表面シート2を通って体液吸収性部1内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスCがバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。
【0034】
他方、前身頃及び後身頃の長手方向端部において、ウエスト部における外形シート4の不織布間に、ウエスト周りのフィット性を高めるために、ウエスト開口部の端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材10,10…を配置し、これらが伸縮するように伸長下にホットメルト接着剤などにより固定されている。ウエスト伸縮部材10,10…の間隔および本数は適宜定めることができるが、例えば間隔としては4〜8mm程度、本数としては3〜10本程度が好ましい。11は背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、接合するためのテープファスナーである。
【0035】
(体液吸収性部について)
さて、本発明の体液吸収性部とは、身体の肌に面する側に設けられた液透過性の表面層と、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層との間にあって、表面層を通った体液を受け入れて吸収する部分である。したがって、この体液吸収性部の構成は、以下に説明する本発明の体液吸収体を備える条件の下で、種々の形態及び形状を備えることができる。
【0036】
<体液吸収体の第1の実施の形態>
図3及び図4に示すように、第1の実施の形態に係る体液吸収体20は、体液が透過可能な使用面側シート21及び透液性または不透液性の裏面側シート22を有し、使用面側シート21と裏面側シート22とが製品の幅方向に間隔を置いた位置に長手方向に沿う固定部23を有し、隣接する固定部23,23の間が長手方向に沿うチャンネル空間24とされ、各チャンネル空間24,24…内に吸収材25が設けられているものである。
【0037】
吸収材25は、図5に示すように、高吸水性ポリマー26A、及びこの高吸水性ポリマー26Aの担体26Bからなる体液吸収性材26と、収縮性材27とを有し、この収縮性材27に対して体液吸収性材26とが実質的に一体化されているものである。
【0038】
担体26Bは、リボン状の不織布などからなるものであり、これに高吸水性ポリマー26Aが付着もしくは接着されている。高吸水性ポリマー26Aの担体26Bへの付着もしくは接着は、わずかな水分の添加により付着させるほか、接着剤を用いて接着させるなど公知の高吸水性ポリマーの固定方法により行うことができる。高吸水性ポリマー26Aの担体26Bへの配設量は、当該吸収性物品の吸収量の設定により決定されるもので、ライトユースとヘビーユースとでは、担体26Bの形状を変更するのが望ましい。図3〜図5の例は、ライトユースに適したものであるが、ヘビーユースの場合には、袋状リボンを担体とし、その中に高吸水性ポリマー26Aを閉じ込めるなどの形態を採ることができる。
【0039】
収縮性材27と、体液吸収性材26とは、長手方向に間欠的に接着剤28などにより固定するか、後述例で示すようにミシン縫いなどの機械的に絡ませるなどの形態で実質的に一体化されている。
【0040】
高吸水性ポリマーは、この種の使い捨て吸収性物品において用いられる、自重のたとえば20倍以上の体液を吸収して保持するものを使用できる。この例として、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などを挙げることができる。高吸水性ポリマーの吸収特性としては10秒間で10倍以上吸収し膨潤するものが望ましい。またその表面が部分的に接着剤になじみやすいよう改質されたものが望ましい。接着剤の性能は粘着性があれば加工上有利であるがとくに限定されない。高吸水性ポリマー26Aと担体26Bとの接着は吸水膨潤した後、最低でも数分間維持されていれば良いが、それ以上持続していてもよい。
【0041】
体液吸収性材26を得るに際しては、担体26Bの素材シートに高吸水性ポリマー26Aを接着剤を用いて接着固定した後、これを所定の幅及び長さに切断してたとえばリボン状に形成したものとすることができる。
【0042】
収縮性材27は、体液との接触により収縮するものであり、たとえば特公平6−102068号、特許第2656245号に開示されている技術によって製造できる。また、市販のものとしては、株式会社ニチビの商品名「ソルブロン」を用いることができる。収縮性材27は、横断面円形のほか四角など適宜の形状とすることができる。
【0043】
一つの体液吸収性材26に対して、複数の収縮性材27をたとえば幅方向に間隔を置いて並べて設けることもできる。また、複数の収縮性材27相互を長手方向に間隔を置いた位置において相互に接着させたものを、体液吸収性材26に対して固定することもできる。また、複数本を収縮率の調節のために撚りをかけて用いることもできる。
【0044】
担体26Bに高吸水性ポリマー26Aを接着させた体液吸収性材26を得た後、収縮性材27と接合するほか、担体26Bと収縮性材27とを接合した後、高吸水性ポリマー26Aを担体26Bに接着させることもできる。また、高吸水性ポリマー26Aは担体26Bに接着させるほか、担体26Bを用いることなく、収縮性材27のみに接着させ、これを吸収材とすることができる。したがって、この後者の場合には、高吸水性ポリマー26A自体が体液吸収性材26として機能する。さらに、高吸水性ポリマー26Aは、担体26Bと収縮性材27との両者に接着させることもできる。
【0045】
かかる体液吸収体20が体液吸収性部1内に配置されることにより、排液、たとえば尿が表面シート2を通り、使用面側シート21を通して担体26Bに接触し、担体26Bに沿って拡散し、その尿が収縮性材27に接触するとこれ自体が収縮し、これに伴なって実質的に一体化された体液吸収性材26も収縮する。その結果、体液排出部位に対して、体液吸収性材26が先に吸収した部位が逃げるようになり、これに代わって体液吸収性材26の新たな部位が位置するようになり、つまり体液排出部位に対して、体液吸収性材26の吸収部が体液の排出に伴なって更新されるように位置変化する。したがって、吸収材25全体を有効的に利用でき、全体としてみれば、体液吸収体20が薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐え得る体液吸収性物品を得ることができる。
【0046】
実施の形態のように、チャンネル空間24内に吸収材25を設けると、収縮性材27の収縮に伴なう吸収材25の収縮が円滑かつ確実に行われる。さらに、チャンネル空間24内を体液がその長手方向に沿って移動及び拡散可能である。また、製品の装着時、チャンネル空間24が緩衝部またはクッション部となり、肌に対する接触性が良好となる。
【0047】
また、体液との接触による収縮性材27の収縮に伴なって体液吸収性材26が収縮するとき、体液排出部位に対して、体液吸収性材26の高吸水性ポリマー26Aによる吸収部が更新されるので、高吸水性ポリマー26Aの膨潤による拡張濡れが阻害されるいわゆるゲルブロッキング現象がなく、高吸水性ポリマー26Aの機能が十全に発揮されるものとなる。
【0048】
<体液吸収体の第2の実施の形態>
チャンネル空間24の横断面形状、その数などは適宜選択できる。一つのチャンネル空間24内に吸収材25を複数並べて設けることもできる(図示せず)。
【0049】
収縮性材27の物性で大切なのは収縮力と吸水収縮率である。チャンネル空間24内を吸収材25が移動するとき、吸収材25の吸収部分とチャンネル内壁との摩察により収縮力が低下することにかんがみ、チャンネル空間24の断面積と高吸水性ポリマー26Aの膨潤度を勘案して決定するのが望ましい。収縮性材27の収縮率は原糸で30%以上、望ましくは70%以上あれば吸収後の高吸水性ポリマー26Aの移動が十分可能である。
【0050】
チャンネル空間24の断面積Sは吸収材25の形態によって異なり、次式で計算される面積が好ましい。a=吸収材の1cmあたりの高吸水性ポリマー量グラム数、b=吸収材の収縮率(収縮後の長さ/収縮前の長さ)、S=断面積(cm2)として:
S=(30〜200)×a/b……(1)
【0051】
図6に示すように、体液吸収体20は、必要ならば2層以上に積層することもできる。この場合、上下層の位置を半ピッチずらすのが望ましい。
【0052】
チャンネル空間24を形成するための使用面側シート21は液透過性である限り、その材質に限定はなく、たとえば不織布のほか孔開きフィルムなどによってもよい。この場合、高吸水性ポリマー26Aを透過させない程度の空隙を有するのが望ましい。使用面側シート21と接合する裏面側シート22としては、不織布、防漏シート、耐湿紙、吸収紙などから選ぶことができる。
【0053】
<体液吸収体の第3及び第4の実施の形態>
体液吸収体としては、図7に示すように、高吸水性ポリマー26Aが接着された糸状の担体26B1と収縮性材27とをミシンなどにより縫うことにより接合した吸収材25を用いる形態も採用できる。必要ならば、糸状の担体26B1と収縮性材27とを編成することもできる。
【0054】
図8に示すように、高吸水性ポリマー26Aが接着された糸状の担体26B1と収縮性材27とを接着剤28により接合することもできる。
【0055】
<体液吸収体の第5の実施の形態>
体液吸収体20は、図9に示すように、チャンネル空間24が製品の長手方向(前後方向)に沿うように配設するのが望ましい。本発明では、吸収材25は、一部をたとえば接着剤や熱溶着(溶融)などにより固定した固定部30を有する。吸収材25の固定は、裏面側シート22に接着剤により接合することにより行うことができる。図示の形態においては、吸収材25,25…群の共通の端部を固定部30とするものである。
【0056】
この形態において、図10に示すように、ゾーンZに排尿され、その尿が表面シート2を通して収縮性材27に接触するとこれ自体が収縮し、これに伴なって一体化された体液吸収性材26も収縮する。その結果、図10に示すように、体液排出部位に対して、体液吸収性材26が先に吸収した部位が逃げるようになり、これに代わって体液吸収性材26の新たな部位が位置するようになり、つまり体液排出部位に対して、体液吸収性材26の吸収部が体液の排出に伴なって更新される位置変化する。したがって、吸収材25全体を有効的に利用できるものである。
【0057】
他方、図11に示すように、並設される吸収材25,25…に対して、固定部30を千鳥にする形態も有効なものである。
【0058】
固定部30は吸収材25の末端のほか、端部近傍であってもよい。固定部30の反対側の端部は、収縮性材27の収縮力が働いたとき、その収縮力で外れる程度の仮止めされていてもよい。この仮止めは、製品の製造過程や運送過程で吸収材25の位置ずれを生じさせないために望まれるものである。
【0059】
他方、図12に示すように、チャンネル空間24及び吸収材25を製品の幅方向に沿って配設することもできる。
【0060】
(その他の形態)
上記の実施の形態では、体液吸収体20は、表面シート2の下に配置してある。しかし、使用面側シート21と裏面側シート22との間に吸収材25を配置した、図3〜図6の形態などにおいては、使用面側シート21そのものが体液を透過するから、使用面側シート21そのものを本発明で言う「表面層」とすることができ、すなわち表面シート2を省略することができる。
【0061】
上記各例では、吸収材25を使用面側シート21と裏面側シート22とで形成されるチャンネル空間24内に配置したものである。しかるに、本発明において、吸収材25が収縮可能である限り、チャンネル空間24内に配置することに限定されることなく、配置位置は適宜選択できる。
【0062】
現在市販の紙おむつでは、綿状パルプ(フラッフパルプ)を主体とし、ある程度の剛性を有する(半剛性の)長方形の吸収コアをクレープ紙で包むなどして、体液吸収性部を構成している。したがって、この形態を利用する場合には、表面シートとクレープ紙との間、クレープ紙と吸収コアとの間、吸収コアの内部、クレープ紙と防漏層との間などに配置することもできる。
【0063】
収縮性材27としては、フィラメント状や紡績糸であることができる。担体26Bについても、フィラメント状や紡績糸であることができる。さらに、先に触れたように、担体26Bは短繊維もしくは長繊維のシートをリボンもしくはテープ状にスリットしたものであることができる。担体26Bは、複数層の袋状構造や、マトリックス構造にすることができる。したがって、高吸水性ポリマー26Aも複数層の担体26B間や表面に、あるいはマトリックス構造内及び表面に固定することができる。
【0064】
特に好適な形態では、自重の10倍以上の体液を吸収する能力を有し且つ体液吸収により収縮する繊維状高吸収性ポリマーからなる糸状部材または紐状部材のみからなる吸収材を用いることができる。吸収材の太さは適宜選択することができるが5mm以下であるのが好ましい。また、かかる繊維状高吸収性ポリマーは、特許第2656245号公報に開示された「カルボキシル基を0.5〜10モル%含有する変性ポリビニルアルコールからなり、水の存在下において収縮する繊維」を基本とし、極性基の導入数を増やして吸収性を挙げたり、溶解性を制限するために架橋度を調節したりすることで、得ることができる。なお、見た目には図2〜4に示した例から体液吸収性材26を省略したものと同じになる。
【0065】
この場合、高吸収性ポリマーが、前述の形態における収縮性材27と体液吸収性材26とを兼ねることになるため、部材数の低減、製造の簡略化および体液吸収性部の薄型化等を図ることができるようになる。特に吸収材が糸状または紐状なので粒子状の高吸収性ポリマーを集合させて用いる場合と比べて容積を小さくでき、体液吸収性部を更に薄型化できる。また一般に、吸収能力の高い高吸収性ポリマーは収縮力が小さくなる傾向がある。しかるに、吸収材が糸状または紐状であると周囲の接触面に対する接触面積が小さく、接触抵抗が小さくなるため、吸収材の吸収能力を高めることにより収縮力が小さくなっても本発明の更新機能を発揮させることができる。
【0066】
また、体液吸収性材を自重の10倍以上の体液を吸収する能力を有する繊維状高吸収性ポリマーからなる糸状部材または紐状部材のものとなし、これを収縮性材と一体化させて用いるのも好ましい形態である。特に収縮性材と体液吸収性材とを束ねて、長手方向に間欠的に固定することにより一体化する形態が望ましい。かかる繊維状高吸収性ポリマーとしては、前述の特許第2656245号公報に開示されたもの(体液との接触により収縮する)のほか、レーヨンフィラメントまたはレーヨン紡績糸をカルボキシメチル化し、エポキシ系等の適宜の架橋剤を用いて溶解性を制限したもの(体液と接触しても実質的に収縮しない)を用いることができる。この場合、レーヨンの代わりに綿、キュプラなどのセルロース系繊維も利用できる。さらにアクリル系繊維を加水分解した吸収繊維も利用可能である。また特開平11−200209号公報に開示されたものも使用できる。市販品としてはランシール(東洋紡績(株)製)を挙げることができる。
【0067】
かかる糸状または紐状の体液吸収性材は、周囲の接触面に対する接触面積が小さいため、接触抵抗が小さい。よって収縮性材の収縮力が小さくても本発明の更新機能を発揮することができる。この効果は特に収縮性材と体液吸収性材とを束ねた形態で顕著である。換言すれば、同レベルの更新機能を発揮させるにしても、必要な収縮性材の量を低減する或いは性能を低くすることが可能となり、収縮性材のコストを低減することができるようになる。また、糸状または紐状の体液吸収性材は、従来から吸収性物品の分野で用いられてきた粒子状の高吸収性ポリマーを集合させて用いる場合と比べて空隙を少なくできるため、同じ吸収能力であっても容積を小さくでき、体液吸収性部の薄型化を図ることができる。さらに、かかる糸状または紐状の体液吸収性材は、収縮性材との一体化を容易・確実に行えるため好ましい。
【0068】
他方、現在市販の紙おむつでは、綿状パルプ(フラッフパルプ)を主体とし、ある程度の剛性を有する(半剛性の)長方形の吸収コアをクレープ紙で包むなどして形成した非収縮吸収材が、体液吸収性部内に備え付けられている。本発明では、この非収縮吸収材とともに前述の収縮吸収材25を設けることができ、この場合収縮する吸収材25は、非収縮吸収材の内外の適宜の位置、具体的には、表面シートとクレープ紙との間、クレープ紙と吸収コアとの間、吸収コアの内部、クレープ紙と防漏層との間などの部位に配置することができる(図示せず)。
【0069】
【実施例】
(実施例)
図1〜図4に示す形態であり、かつ、図11に示す形態で吸収材25を固定したテープ式紙おむつを得た。吸収材25は、長さ400mm、幅8mmの熱溶融複合繊維を用い坪量18g/m2、不織布リボンで、高吸水性ポリマー26Aとして、三菱化学社製「アクアパアール」を用い、その1gが、図5に示す形態で脱落しないように接着されている。収縮性材27としては、ニチビ社製の「ソルブロン」(250dtex)を4本束ね、1m当たり100回撚りをかけて、図5に示す形態で体液吸収性材26に固定して使用した。
【0070】
(比較例)
体液吸収体として、実施例の体液吸収体20に代えて、次記の従来例に沿った形態のものを使用した。すなわち、フラッフパルプ12gと、高吸水性ポリマー26Aとして、三菱化学社製「アクアパアール」9gとをほぼ均一に混合、積繊し、長さ400mm、幅150mmのシート状としたものを、高吸水性ポリマー26Aが脱落しないように長さ400mm、幅340mmの19g/m2のクレープ紙により包んだものである。
【0071】
(試験及び結果)
図13に示すように、紙おむつ40を水平に設置し、その上方に注入筒42を有するアクリル板41を配し、注入筒42が紙おむつ40の中心線上で前身頃端から16cmの位置に設置した。
【0072】
・吸収速度測定:この状態で、注入筒42から人工尿60mlが完全に吸収されるまでの吸収時間(秒)を吸収速度として求めた。さらに30分放置後に再度人工尿60mlの注入を行い、完全に吸収された後、30分放置後に再度人工尿60mlの注入を行い、それぞれ吸収速度を求めた。
【0073】
・人工尿注入位置からの移動距離:前身頃端から16cmの位置にマーキングを行い、吸収速度測定と同様に注入筒42から人工尿60mlを注入し、マーキング位置からの移動距離を、吸収速度測定ごと求めた。
【0074】
・面積更新率:吸収速度測定時、人工尿60mlを尿が完全に吸収された直後の人工尿の吸収領域(「初期吸収領域」)をマーキングし、人工尿が完全に吸収された後、30分放置し、「初期吸収領域」内に残る吸収領域(「残存吸収領域」)をマーキングし、画像分析を行う。2回目及び3回目の吸収速度測定後においても同様に「残存吸収領域」をマーキングし、画像解析を行う。次記の(2)式により面積更新率を求めた。
面積更新率=(「初期吸収領域」−「残存吸収領域」)/「初期吸収領域」…(2)
【0075】
結果を表1に示した。この結果から、本発明によるものは、吸収速度が速く、かつ尿の移動が大きく、しかも吸収部位の更新がなされることが判る。このことからも、本発明によるものは、吸収材の吸水収縮により吸収部位に新しい未吸収高吸水性ポリマーが移動してくるので、ゲルブロッキングが起こらないで繰り返される数回の排出下でも、吸収が低下せず速やかな吸収が達成されることが判る。
【0076】
【表1】
【0077】
【発明の効果】
以上のとおり、体液との接触により収縮する収縮性材を利用して、体液の吸収部が位置変化するように構成することにより、吸収材全体を有効的に利用し、全体としてみれば、薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐え得る体液吸収性物品を提供することができる。
【0078】
さらに、体液排出部位に対してその吸収部が体液の排出に伴なって更新されるので、高吸水性ポリマーの膨潤による拡張濡れが阻害されるいわゆるゲルブロッキング現象がなく、高吸水性ポリマーの機能が十全に発揮されるなどの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】使い捨て紙おむつの展開状態平面図である。
【図2】その要部横断面図である。
【図3】体液吸収体の配置形態横断面図である。
【図4】体液吸収体の斜視図である。
【図5】吸収材の斜視図である。
【図6】体液吸収体の他の配置形態横断面図である。
【図7】吸収材の他例の正面図である。
【図8】吸収材の別例の正面図である。
【図9】体液吸収体の製品に対する配置形態平面図である。
【図10】排尿時の体液吸収体の吸収材の移動を説明する製品に対する配置形態平面図である。
【図11】体液吸収体の製品に対する他の配置形態平面図である。
【図12】体液吸収体の製品に対する別の配置形態平面図である。
【図13】試験の概要説明図である。
【符号の説明】
1…体液吸収性部、2…表面シート(表面層)、3…防漏層、4…外形シート、20…体液吸収体、21…使用面側シート、22…裏面側シート、23…固定部、24…チャンネル空間、25…吸収材、26…体液吸収性材、26A…高吸水性ポリマー、26B,26B1…担体、27…収縮性材、28…接着剤、30…固定部、Z…排尿部。
Claims (9)
- 身体の肌に面する側に設けられた液透過性の表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、および両者の間に設けられた体液吸収性部を有する吸収性物品であって、
体液との接触により収縮する所定長さの吸収材が、前記体液吸収性部内にあって収縮可能に配置されるとともに、この吸収材の一部が物品に対して固定されていることを特徴とする体液吸収性物品。 - 吸収材は、体液との接触により収縮する所定長さの収縮性材と、この収縮性材に対して実質的に一体化されている体液吸収性材とからなるものとされた請求項1記載の体液吸収性物品。
- 吸収材は、高吸水性ポリマー、及びこの高吸水性ポリマーの担体からなる体液吸収性材と、収縮性材とを有し、この収縮性材に対して前記体液吸収性材とが実質的に一体化されている請求項1または2記載の体液吸収性物品。
- 収縮性材と、体液吸収性材とは、長手方向に間欠的に固定されることにより実質的に一体化されている請求項2または3記載の体液吸収性物品。
- 体液吸収性材が、自重の10倍以上の体液を吸収する能力を有する繊維状高吸収性ポリマーからなる糸状部材または紐状部材とされた、請求項3記載の体液吸収性物品。
- 収縮性材と体液吸収性材とが束ねられ、長手方向に間欠的に固定されることにより実質的に一体化されている請求項5記載の体液吸収性物品。
- 吸収材が、自重の10倍以上の体液を吸収する能力を有し且つ体液吸収により収縮する繊維状高吸収性ポリマーからなる糸状部材または紐状部材のみからなるものとされた、請求項1記載の体液吸収性物品。
- 体液が透過可能な使用面側シート及び裏面側シートを有し、前記使用面側シートと裏面側シートとが製品の幅方向に間隔を置いた位置に長手方向に沿う固定部を有し、隣接する固定部の間が長手方向に沿うチャンネル空間とされ、前記チャンネル空間内に吸収材が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
- 体液を吸収するが収縮しない非収縮吸収材を備えた、請求項1〜8のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
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