JP3892298B2 - 細菌性疾患を経皮治療するためのプロウロムチリン(pleuromutilin)誘導体の使用 - Google Patents
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Description
本発明は、プロウロムチリンおよびバルネムリン(valnemulin)誘導体に関する。より具体的には、本発明は、以下に定義される式Iの化合物を含み、ヒトおよび動物における細菌感染を経皮治療するための薬剤の製造に関する。前記薬剤は、全身性細菌感染、好ましくは有蹄動物における趾皮膚炎(安定腐蹄症)、趾足皮部皮膚炎(足指間の慢性炎症;腐蹄症)、および趾壊死桿菌症(趾蜂窩織炎、趾間腐爛(foul−in−the−foot)、クリットイル(clit−ill)など)などの感染の予防または治療に用いられる。
【0002】
本発明の好ましい一実施形態は、全身効果または遠隔効果のために式Iの化合物を皮膚に塗布することである。
【0003】
【化3】
[式中、R1はエチルまたはビニルであり、
Yは、COOH、−CH2−R2、および下式から選択される1個の基を表し、
【0004】
【化4】
【0005】
R2はH、ハロゲン、OH、NH2、SCN、N3、COOH、C(S)S−[C1〜5アルキル]、−S−ピリジル、1個または2個のヒドロキシル基によって置換された−S−ピリジル、C1〜5アルキルチオ、1個または複数個のアミノ、ヒドロキシルまたはカルボキシル基によって置換されたC1〜5アルキルチオ、−O−SO2−(4−メチルフェニル)、−S−(CH2)m−X、−(CH2−Z)r−(CH2)s−Q、または−S−C(CH3)2−CH2−NH−C(O)−Q、または−S−C(CH3)2−CH2−NH−C(O)−CH(NH2)−CH(CH3)2であり、
Xは、炭素原子を介して−S−(CH2)m−基に結合し、O、S、Nまたは−N(R3)からなる群から選択される1個または複数個のヘテロ基を含む飽和または不飽和の5から6員複素環であり、前記複素環は非置換であるか、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、C1〜5アルキル、C1〜5アルカノイル、C1〜5アルキル−スルホキシル、ニトロ、ホルミル、C1〜5アルコキシカルボニルおよびC1〜5ヒドロキシアルキルからなる群から選択される1個または複数個の置換基によって一置換もしくは多置換され、
R3は水素またはC1〜5アルキルであり、
Qは基−N(R4)(R5)を表し、R4およびR5はそれぞれ互いに独立してC1〜5アルキルであるか、それらが結合する窒素原子と一緒になって、場合によって硫黄または=N−(C1〜5アルキル)から選択される第二のヘテロ部分を含む飽和または不飽和の5〜6員複素環を形成し、
ZはO、Sまたは=N(C1〜5アルキル)であり、
mは0、1、2、3、4または5であり、rは0または1であり、sは2、3、4または5であり、細菌感染によって引き起こされるヒトまたは家畜の疾病治療においては遊離塩基または医薬的に許容される塩の形態である。]
本発明の範囲内では、指示された炭素原子数に応じて用語「アルキル」は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソブチルなどの直鎖および分枝基を意味すると理解するべきである。
【0006】
「ハロゲン」は、塩素、臭素、フッ素またはヨウ素、好ましくは塩素、臭素またはフッ素、より好ましくは塩素を意味する。
【0007】
好ましい複素環は、窒素および硫黄から選択される1個または複数個のヘテロ原子を含む5および6員環である。より好ましい環は、少なくとも1個の窒素原子を含む。
【0008】
このような複素環の1個の基は、唯一のヘテロ原子として窒素を、特に1、2または3個の窒素ヘテロ原子を含むことができる。単一の窒素原子を含む適当な5または6員複素環には、ピリジン、ピロールおよび4,5−ジヒドロ−3H−ピロールが含まれる。2個の窒素原子を含む適当な5または6員環にはイミダゾール、ピリダジン、ピリミジンが含まれる。このような環は、例えば1個または複数個のベンゼン環と縮合し、例えばベンゾイミダゾールまたはペリミジンを形成することができる。3個の窒素原子を含む適当な5または6員複素環には1,2,4−トリアゾールが含まれる。
【0009】
複素環の別の基は、1個の窒素原子および1個の硫黄原子を含み、例えばチアゾール、4,5−ジヒドロチアゾールおよびベンゾチアゾールであってもよい。複素環の別の基は、2個の窒素および1個の硫黄原子を含み、例えば1,3,4−チアジアゾールである。
【0010】
本発明の範囲内では、式Iの化合物(式中、R1はエチルまたはビニルであり、R1は基−S−C(CH3)2−CH2−NH−C(O)−Qを表し、Qは基−N(R4)(R5)を表し、R4およびR5はそれぞれ互いに独立してC1〜5アルキルであるか、それらが結合する窒素原子と一緒になって、場合によって硫黄または=N−(C1〜5アルキル)から選択される第二のヘテロ部分を含む飽和または不飽和の5〜6員複素環を形成する)の遊離塩基または医薬的に許容される塩の形態での使用がより好ましい。
【0011】
R2が基−S−C(CH3)2−CH2−NH−C(O)−CH(NH2)−CH(CH3)2を表す式Iの化合物の遊離塩基または医薬的に許容される塩の形態での使用がより好ましい。
【0012】
式Iの化合物(式中、R1はエチルまたはビニルであり、Yは基−(CH2−Z)r−(CH2)s−Qを表し、Zは硫黄であり、rは1であり、sは2であり、Qは基−N(R4)(R5)を表し、R4およびR5はそれぞれ互いに独立してC1〜5アルキルであるか、それらが結合する窒素原子と一緒になって、場合によって硫黄または=N−(C1〜5アルキル)から選択される第二のヘテロ部分を含む飽和または不飽和の5〜6員複素環を形成し、エチルであることが最も好ましい)の遊離塩基または医薬的に許容される塩の形態での使用も好ましい。
【0013】
最も好ましい化合物は、遊離塩基または医薬的に許容される塩の形態でのバルネムリンおよびチアムリン、特にバルネムリンである。
【0014】
式Iの範囲内では、基本的抗生物質は、Kavanagh他[Proc.Natl.Acad.Soc.、37巻、570〜574ページ、1951年]によって1951年に単離されたプロウロムチリン(XはOH、R1はビニルである)である。R1がビニルであり、Xがβ,D−キシロフラノシル基を表す式(I)の別のプロウロムチリン誘導体は、US−4’247’542に記載されている。式Iのごく典型的な代表例はバルネムリンおよびチアムリンである。バルネムリンは商品名Econor(登録商標)として知られており、チアムリンは商品名Tiamutin(登録商標)として知られている。それらは以下の化学構造を有している。
【0015】
【化5】
【0016】
遊離塩基の形態または生理学的に許容される塩の形態のバルネムリンは、例えばEP−0’153’277、特にその中の実施例12として、およびWO98/01127によって知られている。遊離塩基の形態または生理学的に許容される塩の形態のチアムリンおよびその誘導体ならびに他のプロウロムチリン誘導体は、例えばUS−4’032’530、US−4,148,890、US−5’578’585、US−4,428,953、4,060,542、WO98/01127、およびEP−0,153,277によって知られている。
【0017】
WO99/51219は、鼻咽頭のコロニー形成に関係する細菌感染の予防的治療として鼻咽頭への投与に適合した薬剤の製造のために、プロウロムチリンまたは医薬的に許容されるある種の誘導体について記載している。すなわち、この参考文献は、上部鼻咽頭の粘膜を介した活性成分の取り込みを対象としている。これとは対照的に、本発明は、活性成分が患者の皮膚(表皮)または動物の皮膚もしくは毛皮へ局所的に塗布された場合の経皮的取り込みを対象としている。
【0018】
バルネムリン、チアムリンおよび他のプロウロムチリン誘導体の活性スペクトルはよく知られており、上記の参照特許および多くの科学論文に記載されている。
【0019】
引用文献によれば、式Iの化合物は経口または非経口投与後にそれらの抗菌活性を示す。経口治療は、消化管の粘膜を介する活性成分の取り込みを表し、細菌感染の予防および治療が含まれる。獣医学の分野では、食物または飲料水として家畜に投与することが好ましい。
【0020】
今回、意外にも式Iの化合物が代謝も不活性化もされずに、本明細書では表皮を意味する皮膚を透過することが判明した。このような複雑な化学構造の抗生物質が皮膚バリアを通過して組織に浸透し、血液に達し、細菌感染をうまくコントロールするのに十分な血漿濃度に達することは全く予測できなかった。これらの細菌感染には、腸の細胞、組織または器官に細菌がコロニー形成する全身性感染、および皮膚のより小さなまたはより大きな部分に細菌がコロニー形成する非全身性感染が含まれる。このことは、全身性感染の治療に経口または経皮などの従来の全身経路によって投与する代わりに、抗生物質を皮膚に塗布することができる例外的なケースの1つである。この新規な使用は、病原菌が侵入した皮膚の領域を殺菌するために抗生物質を従来のように皮膚に使用する方法と混同してはならない。驚くべきことは、式Iの化合物が皮膚を透過して動物の身体および身体全体で病原菌に対する感染防御能を有しているという事実であった。
【0021】
本発明の方法によって治療することができる代表的な温血動物宿主には、ヒトならびに好ましくはウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、家禽、ブタ、イヌ、ネコおよび動物園の動物などの家畜が含まれる。
【0022】
このことは、細菌感染、特に全身性細菌感染を治療するための一連の新たな代替方法を提供する。これらの新たな代替方法は、農業従事者および獣医師にとって、錠剤、丸薬または注射による従来の投薬法よりは好都合で労働集約的でないと考えられる。
【0023】
したがって、本発明は、動物において細菌感染に対する感染防御の新たな技法であって、動物の皮膚にある量の式(I)の抗生物質化合物を塗布し、それによって化合物が皮膚(表皮)を介して動物によって吸収される技法を提供する。
【0024】
本技法は、哺乳動物、特にヒツジ、ブタ、子ウシまたはウシ、ウマ、ヤギ、イヌおよびネコなどの家畜(domestic animal)または家畜(farm animal)である哺乳動物に適用することが好ましい。本技法はまた、ヒトにも適用することができる。本技法はまた、ラット、マウスおよびモルモットなどの実験動物にも適用することができる。この化合物を用いて、感染を予防もしくは抑制し、またすでに感染した場合は治療することができる。
【0025】
本技法では、動物はその皮膚を介して化合物を吸収する。化合物は通常、生理学的に許容される坦体を含有する組成物として塗布する。広範囲の適当な坦体を用いることができる。組成物は、クリームでもよい。しかしながら、例えば投与量の量り分けを容易にし、皮膚を介する吸収を容易にするには、液体組成物を用いることが特に好都合である。したがって、化合物の液体坦体溶液または懸濁液が好ましい。皮膚を介して化合物を送達するには水剤が特にふさわしく、したがって最も好ましい。
【0026】
式Iの化合物は、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、シャンプー剤、散剤、噴霧剤(例えば、ハンドスプレーによるかスプレーレース(spray race)として)、ディップ剤(例えば、プランジディップ(plunge dip)として)、エアロゾル剤、点滴薬(例えば、点眼剤または点鼻剤)、ポアオン/スポットオンとして獣医学および医学で用いるために、または手動方法(例えば、ハンドドレッシング(hand−dressing))により用いるために皮膚/局所塗布用に製剤化することができる。ウシ、ウマ、サル、ラクダ、イヌ、ネコ、家禽、ヒツジ、ヤギなどの家畜またはペットに投与する場合には、いわゆる「ポアオン」または「スポットオン」製剤が特に適している。これらの液体または半液体製剤は、皮膚または羽毛の狭い領域に製剤を塗布するだけでよく、展着性の油または他の展着性添加物のおかげで製剤自体がより広い領域に分散し、それによって表皮を通過し吸収が増すという利点を有している。
【0027】
例えば、軟膏剤およびクリーム剤は、適当な濃厚剤および/またはゲル化剤を添加した水性または油性基剤と共に製剤化することができる。眼に投与するための軟膏剤は、殺菌した成分を用いて無菌方法で製造することができる。例えば、ポアオンおよびスポットオンは、家畜に使用するために有機溶媒を含有する油剤として、場合によっては製剤補助剤、例えば安定化剤および可溶化剤と共に製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性基剤と共に製剤化できるが、一般的に1種類または複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、濃厚剤、または着色剤を含有する。散剤は、適当ないかなる粉末基剤を用いても生成することができる。点滴剤は、1種類または複数の分散剤、安定化剤、可溶化剤または懸濁剤をも含む水性または非水性基剤と共に製剤化することができる。それらはまた、保存剤を含有することもできる。
【0028】
ポアオンおよびスポットオン製剤は、本発明の好ましい実施形態である。それらの特徴は、皮膚に耐容性である適当な溶媒または溶媒混合物中に、場合によってはさらに補助剤の添加によって活性成分を溶解、乳化または懸濁し、治療すべき動物の皮膚に適当な装置、例えば計量カップまたは噴霧瓶を用いて塗布することである。
【0029】
ポアオンおよびスポットオン技術は、獣医学ではよく知られているが、主に外部寄生虫または内部寄生虫制御の分野で周知である。
【0030】
予防および治癒効果は薬物の吸入によっても得られることは言うまでもない。この目的の場合には、本発明の活性成分は、エアゾールスプレー投与または吸入器の形態で医薬または獣医薬として使用するために送達することができる。
【0031】
式Iの化合物および動物の皮膚を化合物が通過するのに有効な坦体の他に、組成物は、例えば動物での使用を容易にするための添加物を含有することができる。例えば、組成物は、動物の皮膚との接触を容易にし、さもないと坦体によって引き起こされる刺激などの望ましくない作用から皮膚を保護し、あるいは動物体内での組成物の保持力を改善するための添加物を含有することができる。
【0032】
液体組成物の粘度は、粘度を増加させる濃厚剤を含めることにより増加させることができる。このことは、組成物の動物からの流出を遅延または予防するのに望ましいであろう。
【0033】
添加物には、例えば、界面活性剤、動物脂肪またはワックス、例えばラノリン、鉱油、例えば流動パラフィン、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、トウモロコシ油もしくはヒマシ油、またはポリマー、例えばポリイソブテンなどの炭化水素ポリマーが含まれる。
【0034】
界面活性剤は、陰イオン化合物、例えば石けん、ドデシル硫酸ナトリウムなどの脂肪族硫酸エステル、アルキル−ベンゼンスルホン酸塩もしくはブチル−ナフタレンスルホン酸塩などの脂肪族芳香族スルホン酸塩、オレイン酸およびN−メチルタウリンのアミド縮合生成物などのより複雑な脂肪族スルホン酸塩またはジオクチルコハク酸塩のナトリウムスルホン酸塩を含む。
【0035】
経口治療または注射治療に比べ、ポアオンおよびスポットオン製剤は、獣医師業務で極めて重要である明確な利点を提供する。典型的な利点を以下に挙げる。
【0036】
1)取扱いが容易である。
【0037】
2)群のすべての動物に対して容易に投薬することができる。
【0038】
3)治療を受ける動物およびヒトを傷つける危険が低下する。
【0039】
4)注射による疾患の伝染の危険がかなり低下する。
【0040】
5)局所の不耐容現象が注射の場合よりもかるかに少ない。および、
6)製造における機器の費用がより少ない。
【0041】
経口投与されるか注射治療の場合の製剤の作用は通常、対応するポアオンまたはスポットオン塗布の場合よりもはっきりしている。しかしながら、上記の列挙した利点を考慮すると、一般にこのはっきりしない作用を我慢することができる。経口または経皮治療の場合に匹敵する有効性に達するために、望ましくない効果を引き起こすことなく、式Iの活性化合物の量を増やすことができる。
【0042】
本発明の範囲内では、治療が殺菌する上で有効な量の式Iの化合物を皮膚(表皮)を透過させることを含む、細菌、好ましくは全身性細菌感染を予防または治療する際の抗生物質ポアオンおよびスポットオン製剤に最も好ましい活性成分はチアムリン、特にバルネムリンである。
【0043】
式Iの化合物はまた、他の適当な医薬活性成分と組み合わせて投与し、活性の範囲を広げることができる。総投与量は、同一活性成分であっても、動物の種間、ならびに動物の種の中でも異なるが、それは、とりわけ動物の体重および体格に依存するためである。獣医薬および医薬双方で用いる本発明の化合物の総1日量は、体重1kg当たり0.01〜2000mgが適当であり、体重1kg当たり0.1〜1000mgが好ましく、1〜100mg/kgがより好ましく、これらは単回または分割投与とすることができる。しかしながら、毎週、毎月、またはより長い間隔で投与することもできる。このような場合には、投与量は毎日の投与よりはるかに多く、投与の形態、体重および具体的な適応症に適合していなければならない。適当な投与量はモデル試験、好ましくは動物モデルによって行うことにより決定することができる。投与に最も適当な間隔は、ケースバイケースを基本に決定しなければならない。
【0044】
このような製剤には一般に、適当な坦体または希釈剤に関連する化合物が含まれる。このような坦体は液体または固体であり、塗布される場所で化合物を分散させることによって化合物の塗布を助けるか、ユーザーが分散可能な調製物とすることができる製剤を提供するように設計することができる。このような製剤は当技術分野では周知であり、坦体または希釈剤、例えば固体坦体、溶媒または界面活性剤と一緒に活性成分を、例えば混合および/または粉砕するなどの従来の方法によって調製することができる。
【0045】
ダスト剤(dusts)、顆粒剤および散剤などの製剤で使用するのに適当な固体坦体は、例えば、珪藻土、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、プロフィライト(prophyllite)またはアタパルガイトなどの天然無機増量剤から選択することができる。所望の場合、高分散酸または高分散吸収剤ポリマーを組成物に含めることができる。粒状の吸着性坦体が使用可能であり、多孔性(軽石、グラウンドブリック(ground brick)、海泡石またはベントナイトなど)または非多孔性(方解石または砂など)であってよい。適当な顆粒化前の材料も使用可能であり、ドロマイトおよび粉末植物残渣(ground plant residue)を含む有機または無機であってよい。坦体または希釈剤として用いるのに適当な溶媒には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコールおよびグリコールまたはそのエーテル、エステル、ケトン、酸アミド、強力な極性溶媒、場合によってエポキシド化された植物油および水が含まれるが、これらに限定されるものではない。従来の非イオン性、陽イオン性または陰イオン性界面活性剤、例えば、エトキシル化されたアルキルフェノールおよびアルコール、アルキルベンゼンスルホン酸、リグノスルホン酸もしくはスルホコハク酸のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩または重合体フェノールのスルホン酸塩は良好な乳化、分散および/または湿潤特性を有し、組成物中で単独あるいは組み合わせて使用することもできる。
【0046】
所望の場合、安定剤、凝結防止剤、消泡剤、粘度調節剤、結合剤および接着剤、光安定化剤、ならびに肥料、食事刺激薬または他の活性物質を組成物中に含めることができる。本発明の化合物はまた、他の治療上活性な化合物との混合物として製剤化することができる。この製剤では、活性材料の濃度は一般に0.01から99重量%、より好ましくは0.01重量%と40重量%の間である。市販用の製品は一般に、使用に際して適当な濃度、例えば0.1から0.01重量%まで希釈される濃縮組成物として提供される。
【0047】
驚いたことには、遊離塩基の形態または医薬的に許容される塩の形態の式Iの化合物が、ヒツジ、ヤギ、ウマなどの家畜、特に乳牛、および肉牛によく見られる(安定腐蹄症)趾皮膚炎に対して優れた活性を示すことも判明した。それらの化合物はまた、趾足皮部皮膚炎、または腐蹄症、主にヒツジで、一般に足指間(指の裂け目)の領域内の皮膚の慢性的炎症に対して優れた活性を示す。この感染は、細菌Dichelobacter nodosusによって引き起こされる。指の裂け目の領域内の皮膚は乾いた滲出物でむくんで見え、これが痂皮の形成を引き起こす。この状態は時々足の不自由さまたは踵割れ(heel crack)/踵糜爛(heel erosion)を引き起こすが、一般的には動物の歩行に変化をもたらす。Fusobacterium necrophorumによる二次感染が通例で、結果として起こる重篤な足の不自由とともに蹄のアンダーランニング(under−running)となる。
【0048】
趾壊死桿菌症(趾蜂窩織炎、趾間腐爛、クリットイルなど)は、有蹄動物、特にウシの急性感染症である。この疾患の特徴は、1本または複数本の足の腫脹および不自由である。治療をしないか遅れると慢性化する。これは、Fusobacterium necrophorumが原因である。Bacteroides melaninogenicusなどの他の生物体が関与することがある。いずれの生物体も病変から普通に培養される非運動性、嫌気性、グラム陰性細菌である。しかしながら、Fusobacterium necrophorumは、指の間の皮膚に実験的に注射された場合に、それ自体で腐蹄症を引き起こす能力がある。ヒツジの腐蹄症を引き起こす病因であるBacteroides nodosusも関与することがある。趾壊死桿菌症の特徴は、蹄冠および指の間の腫脹を伴う軽度から重度の不自由さが突然発症することである。指の間は壊死して亀裂を生じることが多く、特徴的な悪臭を伴うが滲出物はほとんどない。体温は上昇することが多く、食欲が低下し、体調が損なわれる。罹患動物は食欲不振であることが多く、放牧された動物では注視することが減少する。繁殖用の雄牛は、特に後足が関係する場合には無能力である。
【0049】
主に乳牛の趾皮膚炎は、最近知られた疾患である。その病因は不確実であるが、スピロヘータにおそらく他の細菌が関連し、原因となっていると考えられている。この疾患の特徴は、指の皮膚、特に踵の表面の炎症であり、足が不自由となり牛乳収量の低下をもたらす。
【0050】
蹄の前記感染症は、ほとんどの国でよく見られ、足の不自由さの最もよく見られる原因である。罹患率は、群れまたは囲いの中の1頭または2頭の動物から、極めて高い罹患率を伴う爆発的な流行まで様々である。この疾患は、一年中見られる。すべての年齢で感受性があるが、この疾患は離乳の年齢以上の動物で最も一般的に見られる。同じ動物が繰り返し罹患する。趾皮膚炎、趾足皮部皮膚炎、および趾壊死桿菌症は、過去において趾間皮膚炎、趾間足皮部皮膚炎、および趾間壊死桿菌症と誤って述べられてきた。
【0051】
今回、驚いたことには、遊離塩基の形態または医薬的に許容される塩の形態で式Iの化合物を投与すると治療に対する素早い反応と素早い治癒につながり、牛乳に関していかなる問題も生じないことが判明した。早期の場合には1回の治療で十分である。生物体が隣接する腱鞘、関節莢膜、および/または骨まで透過し、ひどく進行した場合には、治療を繰り返す必要がある。遊離塩基の形態または医薬的に許容される塩の形態で1種類または複数の式Iの化合物を含有する足浴を用いることにより、容易に予防策を講じることができる。
【0052】
したがって、本発明の他の目的は、足の感染症、好ましくはDichelobacter nodosus、Fusobacterium necrophorum、Bacteroides nodosusおよびBacteroides melaninogenicusから選択される1種類または複数の細菌が原因となる疾患を予防または治療するための抗菌組成物であって、活性成分として遊離塩基または医薬的に許容される塩の式Iの化合物および生理学的に許容される坦体を含む組成物を提供することである。組成物および本発明の方法は、広範囲の条件および希釈の下で有効である。本発明の組成物はまた他の添加物を含むことができ、それらは、他の特性の中でも表面張力および粘度などの特性に関連し、他の成分の溶解性または分散の改善、罹患した蹄領域への組成物の接着の改善、湿潤特性の制御および安定性の改善に関して組成物を機能強化させるいかなる物質であってもよい。本発明の組成物はまた、着色剤を含み、塗布された場合に目で見える組成物を提供し、適切かつ完全な塗布を保証することができる。
【0053】
遊離塩基の形態または医薬的に許容される塩の形態の式Iの化合物は、様々な経路により、例えば、皮膚または全身に投与することができる。皮膚投与が最も好ましい。したがって、本発明は、動物における蹄の感染症を予防または治療する方法であって、本発明の抗菌組成物を好ましくは感染領域またはその近くに皮膚投与することを含む方法を包含する。組成物を用いて腐蹄症を治療することがより好ましい。組成物は、感染領域上またはその近くに注加、噴射、洗い流し、スポンジ洗い、もしくは噴霧することにより、またはフットラップ(footwrap)に組み入れることにより塗布することができる。好ましい実施形態では、噴霧することによって本発明の組成物を塗布する。あるいは、特許請求の範囲に記載の組成物中に動物の蹄を浸し、沈め、または漬けることができる。
【0054】
上記の説明により、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確かめることができ、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、様々な有用性および条件に適合するように本発明の様々な変形形態および変更形態を実施することができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲内にある。
【0055】
これ以上詳しく述べなくても、当業者は、本明細書の説明に基き、本発明を十分に利用できると考えられる。したがって、以下の具体的な実施例は、単に例示的であると解釈するべきであって、いかなる形態であっても本開示の残余を制限することは一切ない。本明細書に記載した刊行物を参照により本明細書に組み込む。
【0056】
調製および塗布についての以下の実施例は、これらの実施例の個々の態様に制限することなく本発明を説明する役割を果たす。
【0057】
製剤実施例
【0058】
ダスト剤:
バルネムリン:0.1から10%、好ましくは0.1から1%
固体坦体:99.9から90%、好ましくは99.9から99%
【0059】
懸濁濃縮物:
バルネムリン:5から75%、好ましくは10から50%
水:94から24%、好ましくは88から30%
界面活性剤:1から40%、好ましくは2から30%
【0060】
徐放製剤:
バルネムリン:0.1〜1.0g
ラッカセイ油:加えて 100ml
または
バルネムリン:0.1〜1.0g
ゴマ油:加えて 100ml
調製:撹拌し、適当に緩やかに加熱しながら油の一部に活性成分を溶かし、次いで所望の容積とし孔径0.22μmの適当な膜ろ過器を通して滅菌濾過する。
【0061】
水剤
2,2−ジメチル−4−ヒドロキシ メチル1−1,3−ジオキソランに溶かした15%バルネムリン
ジエチレングリコールモノメチルエーテルに溶かした10%バルネムリン
ポリエチレングリコール(分子量300)に溶かした10%バルネムリン
グリセロールに溶かした5%バルネムリン
【0062】
【表1】
【0063】
生物学的実施例
1.予備試験:ブタにおける経皮研究
試験動物:ブタ(動物番号1および動物番号2)
動物番号1の試験製剤:10%バルネムリンを含有する水溶液
動物番号2の試験製剤:10%バルネムリンを含有する40%エタノール/水溶液
試験投与量:体重1kg当たり2×25mg
試験溶液を動物の皮膚に皮膚投与し、肝臓、肺、皮膚、胆汁および血漿濃度を測定する。表1に結果を示す。
【0064】
【表2】
濃度(血漿1mlまたは組織1g当たりμg)の測定には血漿中のバルネムリンの検量線を用いる。これらの検討は、正確な値を決定することではなくイエスまたはノーの答えを提供することを意味している。これらは、被験製品の経皮能力を示している。
【0065】
2.ウシに皮膚投与した後のバルネムリン型化合物の全身吸収の評価
疾患:腐蹄症
投与のタイプ:足浴またはスプレーとして直接
試験プロトコル:ウシ指皮膚炎の臨床徴候のある4頭の授乳している大人のウシを試験に組み入れる。足浴として、または直接足に噴霧することにより10%バルネムリンを含有する水/エタノール溶液を塗布する前、およびその後に間隔を置いて血液および牛乳サンプルを採取する。
【0066】
試験製剤:10%バルネムリンを含有する水/エタノール溶液
バルネムリン 10.65g*
p−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル 0.02g
p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル 0.18g
エタノール 5.00g
水(精製)を加えて100mlにする
*93.9%バルネムリン(基剤)の含有量に基づく初期重量
【0067】
足浴溶液は、各治療日に新たに調製する。試験製品の計算量を、前もって足浴に入れた推定容積の水に加える。
【0068】
ウシを個々に足浴中に追い立て、そこで2分間、ウシの足を足浴溶液によって覆われるようにした。
【0069】
足噴霧は、試験生成物100mlが入った噴霧装置を手で操作して使用するものである。前記100mlをそれぞれのウシの足の間に割り当て、下肢領域およびそれぞれの足の周囲および下部に直接塗布する。
【0070】
サンプルのバルネムリン含有量は、バリデーションを行った高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって測定する。1日目;午前初回の治療の前に搾乳サンプル(50ml/サンプル)を取り、対照測定として用いる。試験中は11回にわたってそれぞれのウシの尾骨静脈から血液サンプル(20ml/サンプル)を取る。
【0071】
治療のスケジュール(D=日)(a.m.=朝;p.m.=午後)
1日(D)目 水100リットル当たり3リットルの割合で10%溶液としてバルネムリンを含有する足浴150〜200L中に立たせることによって個々に治療する。
3日(D)目 水100リットル当たり3リットルの割合で10%溶液としてバルネムリンを含有する足浴150〜200L中に立たせることによって個々に治療する。
5日(D)目 罹患および健康な足に、10%バルネムリンを含有する水溶液25mlを噴霧した。
【0072】
初回の治療前、および治療後の定められた時間に血液サンプルを採取する。治療の時点およびその後の搾乳時に牛乳サンプルを採取する。驚くことには、大部分の牛乳および血液サンプル中にバルネムリン濃度が見いだされる。化合物が皮膚を透過する能力を有することは明らかである。病変の重症度と血液または牛乳濃度との間には相関関係はない。1週間後、治療されたウシのいずれも、腐蹄症のいかなる症状も示さない。
【0073】
ブタおよびウシによる追加実験は、スポットオンとしてバルネムリンを局所塗布した後で、多くの組織、例えば脳、肝臓、筋肉、脾臓、および肺にかなり多量の活性成分が見いだされる。
Claims (5)
- 薬剤がポアオン、スポットオン、ディップまたはスプレーであることを特徴とする、式Iの化合物を含む請求項1に記載の医薬組成物。
- 有蹄動物の足の細菌感染症が、趾間皮膚炎、趾間足皮部皮膚炎、または趾間壊死桿菌症である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
- 有蹄動物の足の細菌感染症が、Dichelobacter nodosus、Fusobacterium necrophorum、Bacteroides nodosusおよびBacteroides melaninogenicusから選択される1種類または複数の細菌によって引き起こされる、請求項3に記載の医薬組成物。
- 請求項1に記載の式Iの化合物が動物の皮膚または毛皮に投与されることを特徴とする、有蹄動物の足の細菌感染症の予防又は治療に用いるための、経皮治療用医薬組成物。
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