JP3892099B2 - スリーブ用型枠 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般に、鉄筋コンクリート建築物のコンクリート躯体にスリーブを形成するためのスリーブ用型枠に関し、より詳細には、繰り返し使用できるスリーブ用型枠に関する。なお、ここでコンクリート躯体に設ける「スリーブ」とは、コンクリート躯体に設ける孔をいうものとする。
【0002】
【従来の技術】
ビルディングやマンションのような鉄筋コンクリート建築物においては、給排水、蒸気、温水、電気等の配管を通すため、梁やスラブ等のようなコンクリート躯体にスリーブが設けられる。
【0003】
従来、このようなスリーブをコンクリート躯体に形成する方法として、図9に示されるように、型枠内のスリーブを形成すべき箇所に紙製のスリーブ用型枠を型枠アンカー等を用いて固定した後、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリートが硬化するのを待ってスリーブ用型枠をコンクリート躯体から抜き取る方法が知られている。
【0004】
或いは、上述の方法において、紙製のスリーブ用型枠の代わりに薄い鉄板製のスパイラルダクト管を使用し、コンクリートが硬化した後もスパイラルダクト管を埋め込んだままにしておく方法も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の従来の方法では、紙とコンクリートの摩擦抵抗により、スリーブ用型枠をコンクリート躯体から抜き取るのに手間がかかるという課題があった。
【0006】
また、スリーブ用型枠の素材が紙であるため、型枠自体が水に弱く変形し易いとともに、形成すべきスリーブの長さが長い場合には施工精度が悪くなるという課題があった。
【0007】
一方、後者の従来の方法では、スリーブ内に配管を敷設した後にスリーブを埋める場合に、スパイラルダクト管にモルタル等が付着しにくいという課題があった。
【0008】
また、年月を経るとスパイラルダクト管の小口が錆びてくるという課題もあった。
【0009】
また、両方の従来の方法とも、高コストの紙製スリーブ用型枠やスパイラルダクト管を使用するため、施工費用が高くつく問題があった。特に、マンション工事現場では、各住戸のスリーブの数は多く、また、住戸タイプ毎に共通の寸法を有している場合が多いにもかかわらず、上述の方法では、形成すべきスリーブの数だけ、紙製スリーブ用型枠やスパイラルダクト管を用意しなければならないため、無駄が多く、改善の必要性が叫ばれていた。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、型枠への取付けと取り外しが簡単であり、繰り返し使用できるスリーブ用型枠を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願請求項1に係るスリーブ用型枠は、鉄筋コンクリート建築物のコンクリート躯体にスリーブを形成するためのスリーブ用型枠であって、形成すべきスリーブとほぼ同じ外径を有するパイプを備え、前記パイプの壁には、パイプの長さ全体にわたってパイプの長さ方向に延びた切断部が設けられ、前記切断部を前記パイプの周方向に互いに離れるように押し広げる拡張部材を備えており、前記パイプの切断部の端部に、面取り部が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本願請求項2に係るスリーブ用型枠は、前記請求項1のスリーブ用型枠において、
前記拡張部材は、切断部に挿入されるくさび要素と、リブとを有し、
前記リブは、先端にくさび要素が固定された一つのリブ片と、くさび要素が切断部に挿入されたときに先端が前記パイプの内壁に当接する複数のリブ片とを有していることを特徴とするものである。
【0013】
本願請求項3に係るスリーブ用型枠は、前記請求項2のスリーブ用型枠において、
前記くさび要素には、その長さ方向の両縁部に、前記くさび要素を前記切断部に挿入したときに前記切断部の両縁部が嵌まる段部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
本願請求項に係るスリーブ用型枠は、前記請求項1のスリーブ用型枠において、前記拡張部材が、前記パイプの内径とほぼ等しいか又は僅かに大きな外径を有するパイプからなり、前記パイプの切断部の切断面は、パイプの内側に向かって拡開する傾斜面に形成され、前記パイプに前記拡張部材を挿入したときに、拡開した前記パイプの切断部の空隙に嵌合する横断面形状を有する分離したくさび要素を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
本願請求項に係るスリーブ用型枠は、前記請求項1ないしのいずれかのスリーブ用型枠において、前記拡張部材の一端に、把手の付いた蓋が取付けられていることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠10を示している。スリーブ用型枠10は、形成すべきスリーブとほぼ同じ径と長さを有するパイプ12を備えている。
【0019】
パイプ12は好ましくは、塩化ビニル樹脂で作られている。パイプ12の壁には、パイプ12の長さ全体にわたってパイプ12の長さ方向に延びた切断部14が設けられている。
【0020】
スリーブ用型枠10は又、切断部14をパイプ12の周方向に互いに離れるように押し広げる拡張部材16を備えている。拡張部材16は、切断部14に挿入されるくさび要素18と、くさび要素18に取付けられたリブ20とを有している。
【0021】
本実施形態のリブ20は、図2(A)に示されるように、4つのリブ片20a、20b、20c、20dからなる十字形の横断面を有しており、隣接するリブ片は、互いに90°の角度をなすように設けられている。そして、一つのリブ片20aの先端にくさび要素18が固定されており、他のリブ片20b、20c、20dの先端は、拡張部材16を切断部14に挿入したとき、パイプ12の内壁に当接するようになっている(図2(A)において、点線は、拡張部材16を切断部14に挿入したときのパイプ12を示している)。
【0022】
これらのリブ片20a、20b、20c、20dにより、コンクリート打設後にコンクリートの圧力によってパイプ12が変形するのが防止される。
【0023】
なお、図1、図2(A)に示されるリブ20は、互いに90°の角度を隔てた4つのリブ片から形成されているが、リブを、互いに360°/n間隔を隔てたn個のリブ片(n=3、5又は6以上)によって形成してもよい。図3(A)にはn=3の場合が示されており、図3(B)にはn=5の場合が示されている。
【0024】
くさび要素18には、図2(B)に最も良く示されるように、長さ方向の両縁部に、拡張部材16を切断部14に挿入したときに切断部14の両縁部が嵌まる段部18aが設けられている。これにより、パイプ12を拡張状態に確実に保持することが可能になる。
【0025】
また、くさび要素18の切断部14への挿入を容易にするため、くさび要素18の先端には好ましくは、図2(C)に示されるように、面取り部18bが設けられている。
【0026】
同様に、図2(D)に示されるように、パイプ12の切断部14の端部にも、面取り部14aが設けられている。
【0027】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るスリーブ用型枠30を示している。図4(A)に示すように、スリーブ用型枠30は、切断部34が設けられたパイプ32を備えている点でスリーブ用型枠10と共通しているが、切断部34の切断面に傾斜を設けている点、拡張部材としてパイプ36を使用している点、くさび要素として横断面が拡開した切断部34の空隙に嵌合する分離したくさび要素37を使用する点でスリーブ用型枠10と相違している。
【0028】
スリーブ用型枠30の拡張部材(パイプ36)は、パイプ32の内径とほぼ等しいか、或いはパイプ32の内径よりも僅かに大きな外径を有するパイプからなる。パイプ36とパイプ32の挿入、被挿入の端部は、挿入を容易にするように面取りをすることが好ましい。たとえば、挿入されるパイプ32の端部の内周面に外方に向かって拡開する傾斜面をつけ、挿入するパイプ36の端部を尖端状に形成することができる。
【0029】
図4(B)にこの実施形態によるスリーブ用型枠30を組み立てたところの横断面を示す。
【0030】
図4(B)に示すように、パイプ32にパイプ36を挿入すると、パイプ32の切断部34が拡開する。切断部34の切断面は、内側に向かって広がるような傾斜面に形成されているので、拡開した切断部34の空隙は、内周が長い円弧状の横断面形状を有している。くさび要素37は、好ましくはパイプの一部を使用して形成したものであり、上記拡開した切断部34の空隙に嵌合する横断面形状にする。このくさび要素37を拡開した切断部34の空隙に挿入することにより、図4(B)に示すような状態になる。くさび要素37は、切断部34と嵌合した状態では脱落することがない。
【0031】
この実施形態のスリーブ用型枠30によれば、コンクリート硬化後撤去する時に、最初にパイプ36のみを取り外す。このとき、パイプ32に対してパイプ36を相対的に回転させる動作を行うことができるので、パイプ36の取り外しが容易になる。
【0032】
さらに、パイプ36の外周面にグリース等の潤滑剤を塗布したり、パイプ36の外周面に摩擦抵抗を減少させる凹凸をつけたり、また、前記両者を組み合わせパイプ36の外周面に摩擦抵抗を減少させる凹凸をつけ、さらに潤滑剤を塗布することにより、パイプ36の取り外しがさらに容易になる。
【0033】
パイプ36を取り外した後は、くさび要素37を取り外す。このとき、くさび要素37は、切断部34の切断面と干渉することなく、スリーブ内側に向かって取り外すことができる。従って、くさび要素37の取り外しを容易に行うことができる。
【0034】
くさび要素37を取り外した後は、パイプ32がそれ自体の弾性によって縮み、コンクリートから離脱するので、簡単に撤去することができる。
【0035】
なお、後述するような垂直のスリーブを形成する場合に、スリーブ用型枠10のコンクリート躯体からの抜取りを容易にするため、好ましくは、拡張部材16の一端に、把手の付いた蓋16aが取付けられている(図7参照)。同様に、図示されていないが、拡張部材36の一端に蓋を取付けてもよい。
【0036】
以上のように構成された本発明のスリーブ用型枠を用いてスリーブを形成する方法について説明する。
【0037】
最初に、コンクリート躯体に水平なスリーブを形成する方法について説明する。まず、図5に示されるように、コンクリート躯体の型枠(図示せず)の所定箇所に、1組のスリーブ用型枠アンカー22を釘等で固定する。このスリーブ用型枠アンカー22は、市販品を使用してもよい。
【0038】
次いで、第1の実施の形態の場合には、図6(A)に示されるように、パイプ12の切断部14が拡張部材16のくさび要素18によって押し広げられるように、拡張部材16をパイプ12内に挿入する。すると、パイプ12は、拡張部材16によって押し広げられた分だけ、径が大きくなる。
【0039】
また、第2の実施の形態の場合には、すでに説明したように、パイプ36をパイプ32内に挿入し、くさび要素37を挿入して組み立てる。
【0040】
その後、型枠内にコンクリートを打設する。コンクリートが硬化するのを待って、拡張部材16、36、くさび要素37をパイプ12、32から抜き取ると、パイプ12、32は、元の径に戻り、図6(B)に示されるように、コンクリートとパイプ外壁との間に隙間が形成される。これにより、図6(C)に示されるように、コンクリート躯体からパイプ12、32を容易に抜き取ることができる。
【0041】
次に、図7と図8とを参照して、スラブ等のコンクリート躯体に垂直なスリーブを形成する方法について説明する。まず、スリーブ用型枠を組み立てる。この際、パイプ12の安定性を良くするため、高さhの高いスリーブ用型枠底板22を使用するのが好ましい。
【0042】
次いで、第1の実施の形態の場合には、図7に示されるように、パイプ12の切断部14が拡張部材16のくさび要素18によって押し広げられるように、蓋16aの付いた拡張部材16をパイプ12内に挿入する。また、第2の実施の形態の場合には、パイプ36をパイプ32内に挿入する。このようにして、パイプ12、32を拡張する。第2の実施の形態の場合には、くさび要素37を挿着する。
【0043】
次に、図8に示すように、拡張部材16のくさび要素18にネジ孔を2か所設け、先端に雄ネジを取付けたスペーサを介して、拡張部材16を型枠に固定する。第2実施形態の場合は好ましくは、くさび要素37とパイプ36の双方を固定するネジ孔を設け、型枠に固定する。
【0044】
なお、パイプ12,32の底部に配置される底板は、手摺壁や擁壁内に埋め込んだ状態にされるので、薄い金属製のものを使用するのが好ましい。
【0045】
その後、型枠内にコンクリートを打設する。コンクリートが硬化した後、拡張部材16、36、くさび要素37をパイプ12、32から抜き取ると、パイプ12、32は、元の径に戻り、コンクリートとパイプ外壁との間に隙間が形成される。これにより、コンクリート躯体からパイプ12、32を容易に抜き取ることができる。
【0046】
なお、拡張部材に蓋が設けられているため、抜き取りが容易であるとともに、コンクリートの打設時にパイプ12、32内へのコンクリートの流入が阻止される。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、スリーブ用型枠を繰り返して使用することができるので、コスト削減が可能になる。特に、同じ寸法のスリーブを多数作る必要のあるマンション工事現場において効果的である。
【0048】
また、従来のように廃棄材が発生しないので、廃棄に要する手間が省けるとともに、廃棄材の発生による環境破壊のおそれが回避される。
【0049】
また、パイプが変形しにくいため、従来の方法よりも、スリーブの施工精度が向上する。
【0050】
さらに、型枠への取付けが容易であるため、作業の省力化が図られ、ひいてはコスト削減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠を示した斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠の各部を示した図であって、(A)は、図1の線2A−2Aに沿って見た側面図、(B)は、図1の部分2Bの拡大図、(C)は、図1の部分2Cの拡大図、(D)は、図1の部分2Dの拡大図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠の拡張部材の変形形態を示したものであって、(A)は、隣接するリブが互いに120°間隔を隔てている拡張部材、(B)は、隣接するリブが互いに72°間隔を隔てている拡張部材を示した図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るスリーブ用型枠を示した図であって、図4(A)は第2の実施の形態に係るスリーブ用型枠の構成要素を分解して示した斜視図、図4(B)は組み立てた状態の第2実施形態のスリーブ用型枠の横断面図。
【図5】水平なスリーブを形成する際の本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠の設置を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠によるスリーブの施工手順を示した図である。
【図7】垂直なスリーブを形成する際の本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠の設置を示した図である。
【図8】擁壁の天端にスリーブを形成する際の本発明の第1の実施の形態に係るスリーブ用型枠の設置を示したものであって、(A)は、全体断面図、(B)は、(A)の線8B−線8Bに沿った断面図である。
【図9】従来のスリーブの形成方法を示した断面図である。
【符号の説明】
10 スリーブ用型枠
12 パイプ
14 切断部
14a 面取り部
16 拡張部材
16a 蓋
18 くさび要素
18a 段部
18b 面取り部
20 リブ
20a リブ片
20b リブ片
20c リブ片
20d リブ片
22 スリーブ用型枠アンカー
30 スリーブ用型枠
32 パイプ
34 切断部
36 パイプ
37 くさび要素

Claims (5)

  1. 鉄筋コンクリート建築物のコンクリート躯体にスリーブを形成するためのスリーブ用型枠であって、形成すべきスリーブとほぼ同じ外径を有するパイプを備え、前記パイプの壁には、パイプの長さ全体にわたってパイプの長さ方向に延びた切断部が設けられ、前記切断部を前記パイプの周方向に互いに離れるように押し広げる拡張部材を備えており、前記パイプの切断部の端部に、面取り部が設けられていることを特徴とするスリーブ用型枠。
  2. 前記拡張部材は、切断部に挿入されるくさび要素と、リブとを有し、前記リブは、先端にくさび要素が固定された一つのリブ片と、くさび要素が切断部に挿入されたときに先端が前記パイプの内壁に当接する複数のリブ片とを有していることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ用型枠。
  3. 前記くさび要素には、その長さ方向の両縁部に、前記くさび要素を前記切断部に挿入したときに前記切断部の両縁部が嵌まる段部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のスリーブ用型枠。
  4. 前記拡張部材が、前記パイプの内径とほぼ等しいか又は僅かに大きな外径を有するパイプからなり、前記パイプの切断部の切断面は、パイプの内側に向かって拡開する傾斜面に形成され、前記パイプに前記拡張部材を挿入したときに、拡開した前記パイプの切断部の空隙に嵌合する横断面形状を有する分離したくさび要素を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスリーブ用型枠。
  5. 前記拡張部材の一端に、把手の付いた蓋が取付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のスリーブ用型枠。
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