JP3891642B2 - 摩擦撹拌接合方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム等の金属製構造材等の接合に用いられる摩擦撹拌接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム等の金属製構造材の接合方法として、摩擦撹拌接合法と称される接合法がある。
【0003】
この摩擦撹拌接合法は、構造材同士を固相接合させるもので、図2に示されるような回転子(1)を用いる。この回転子(1)は、円柱状回転子本体(2)の先端軸芯部に、この円柱状回転子本体(2)よりも径小なピン状プローブ(3)を同軸一体に突設させたもので、硬質で耐熱性に優れた、鋼などの材料にて製作されている。また、プローブ(3)の周面には、素地を効果的に摩擦撹拌できるように、所定の凹凸が形成されている。
【0004】
接合は、図3に示されるように、この回転子(1)を自軸回りで回転させながら、そのピン状プローブ(3)の先端を、ワーク(6)(7)の突き合わせ境界部(8)ないしはその近傍部に押付け状態に当接させ、その摩擦熱で当接部分を軟化可塑化させる。そして、回転子(1)を更にワーク(6)(7)に押し付けて、ピン状プローブ(3)をワーク(6)(7)の肉厚方向に挿入させていき、円柱状回転子本体(2)の先端の平坦な環状肩面(4)をワーク(6)(7)に押付け状態に当接させる。しかる後、その状態を維持しながら、回転子(1)をワーク(6)(7)の突き合わせ境界部(8)に沿って移動させていく。回転子(1)の通過する突き合わせ境界部では、周辺の材料が、回転子(1)の回転による摩擦熱で軟化撹拌され、かつ、円柱状回転子本体(2)の肩面(4)にて飛散を規制されながらピン状プローブ(3)の通過溝を埋めるように塑性流動したのち、熱を急速に失って冷却固化される。こうして、突き合わせ部(8)における材料の軟化、密着変形、撹拌、冷却固化が回転子(1)の移動に伴って順次繰り返されていき、突き合わせ部(8)においてワーク(6)(7)同士が互いに一体化され、順次接合されていく。なお、摩擦撹拌接合法による重ね合わせ接合の場合も、同様に行われる。
【0005】
この摩擦撹拌接合法は、材料を溶融させることなく軟化状態でワーク(6) (7)同士を直接接合させるものであり、溶接の場合のような熱影響等による品質面での問題が発生せず、高品質で強固な接合部(12)を形成でき、しかも、上記のような回転子(1)を用いることにより、凹凸のないスッキリとしたきれいな外観の接合部(12)を形成することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、摩擦撹拌接合法では、回転子(1)のプロフィールがワーク(6) (7)の接合の良否を大きく左右するところ、回転子(1)は、上記のように材料との激しい摩擦、高温環境下にさらされて摩耗していくことから、初期プロフィールを長期にわたって維持するのは困難であった。これに対しては、回転子 (1)に表面処理を施すなどの処置法も考えられるが、それでは回転子(1)の製作コストが高くなる。
【0007】
また、摩擦撹拌接合法は、材料を溶融させることなく軟化状態で固相接合させるものであるところ、回転子(1)のごく近傍部においては材料が摩擦熱によって一部溶融してしまうことがあり、溶接の場合と同様の熱影響による品質面での問題も危惧されないではなかった。
【0008】
本発明は、上記のような技術背景のもと、回転子の初期プロフィールを長く維持してその寿命を延ばすことができ、しかも、熱影響による品質面での問題のない高品質の接合部を形成することができる摩擦撹拌接合方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、回転子を冷却媒体にて冷却しながらワーク同士を摩擦撹拌接合することを特徴とする摩擦撹拌接合方法によって解決される。
【0010】
即ち、接合中、回転子は、冷却媒体による冷却を受けることによって、材料との摩擦による昇温を抑制されて、その摩耗の進行が抑制される。これにより、回転子は、その初期プロフィールを長く維持し、寿命を延ばすことができる。
【0011】
しかも、回転子は、冷却によって摩擦熱による昇温を抑制されることから、接合中、回転子のごく近傍部において材料が摩擦熱によって一部溶融してしまうというようなことも抑制ないしは防止され、熱影響による品質面での問題のない高品質な接合部を形成することができる。
【0012】
回転子としては、円柱状回転子本体の先端軸芯部に、該円柱状回転子本体よりも径小なピン状プローブを同軸一体に突設させたものを好適に用いることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1(イ)に示される第1実施形態は、回転子(1)を外部から冷却するもので、回転子(1)の側方にノズル(9)を配備させ、回転子(1)を回転、移動させながら接合を行っていく間、このノズル(9)から冷却媒体(10)を噴出させ、回転子(1)に吹き付けるようにしたものである。冷却媒体(10)としては、例えば、エアーや液体窒素などを好適に用いることができる。この冷却により、接合中、回転子(1)、特にピン状プローブ(3)は、ワーク(6)(7)との摩擦による摩耗の進行を効果的に抑制され、初期プロフィールを長く維持して、ワーク(6)(7)を接合安定長さ長く接合していくことができる。また、この冷却により、ピン状プローブ(3)のごく近傍部においてワーク(6)(7)が摩擦熱によって一部溶融してしまうというようなことも抑制ないし防止され、熱影響による品質面での問題のない高品質な接合部(12)が形成されていく。
【0015】
図1(ロ)に示される第2実施形態は、回転子(1)をその内部から冷却するもので、回転子(1)の円柱状回転子本体(2)の内部に冷却媒体の通路(11)が設けられている。通路(11)の先端は、円柱状回転子本体(2)の先端部周側面において開口され、冷却媒体(10)は、円柱状回転子本体(2)内を通過して回転子(1)を冷却したのち、側方へと放出される。本実施形態方法においても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0016】
因みに、エアーにて冷却を行った場合と、冷却を行わなかった場合とについて摩擦撹拌接合を実施した。冷却を行わなかった場合は、接合中の回転子(1)の温度が約400℃となり、接合安定長さは7mであった。これに対し、冷却を行った場合は、接合中の回転子(1)の温度は約300℃で、接合安定長さは10mであった。なお、接合安定長さとは、一定の表面状態が得られる長さをいう。以上の試験から、接合中、回転子(1)を冷却することにより、接合安定長さを長くでき、回転子(1)の寿命を延ばし得ることを確認し得た。
【0017】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、各種の変更が可能である。例えば、回転子(1)の構造は、ワーク(6)(7)同士を摩擦撹拌にて固相接合させるものであればよく、各種構造のものが用いられてよい。また、接合中、ワーク(6)(7)と回転子(1)とは互いに相対移動されればよく、従って、固定されたワーク(6)(7)に対して回転子(1)を移動させていく形式の他、固定された回転子(1)に対してワーク(6)(7)を移動させていく形式、あるいは回転子(1)もワーク(6)(7)もともに移動させる形式などであってもよい。また、ワーク(6)(7)も、アルミニウム材のほか、各種金属材、その他の材料によるものであってもよい。
【0018】
【発明の効果】
上述の次第で、本発明の摩擦撹拌接合方法は、回転子を冷却媒体にて冷却しながらワーク同士を摩擦撹拌接合するものであるから、接合中、回転子は、材料との摩擦による摩耗の進行を効果的に抑制され、その初期プロフィールを長く維持し、寿命を延ばすことができる。また、コスト的に安く寿命を延ばすことができる。
【0019】
しかも、回転子は、冷却によって摩擦熱による昇温を抑制されることから、接合中、回転子のごく近傍部において材料が摩擦熱によって一部溶融してしまうというようなことも抑制ないし防止しえて、熱影響による品質面での問題のない高品質な接合部を形成することができる。
【0020】
更に、回転子を冷却することにより、高速回転による接合速度の向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるもので、図(イ)は第1実施形態法による接合中のワークの断面正面図、図(ロ)は第2実施形態法による接合中のワークの断面正面図である。
【図2】摩擦撹拌接合に用いる回転子を示すもので、図(イ)は側面図、図(ロ)の先端面図である。
【図3】従来の摩擦撹拌接合法を示すもので、図(イ)は接合中のワークの断面正面図、図(ロ)は平面図である。
【符号の説明】
1…回転子
2…回転子本体
3…プローブ
6…ワーク
7…ワーク
9…ノズル
10…冷却媒体
11…通路

Claims (3)

  1. 回転子を冷却媒体にて冷却しながらワーク同士を摩擦撹拌接合する摩擦撹拌接合方法であって、
    回転子の円柱状回転子本体の内部に冷却媒体の通路が設けられ、通路の先端は、円柱状回転子本体の先端部周側面において開口され、冷却媒体は円柱状回転子本体内を通過して回転子を冷却することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
  2. 前記回転子が、円柱状回転子本体の先端軸芯部に、該円柱状回転子本体よりも径小なピン状プローブを同軸一体に突設させたものからなる請求項1に記載の摩擦撹拌接合方法。
  3. 摩擦撹拌接合する前記ワークは金属材ワークである請求項1または2に記載の摩擦撹拌接合方法。
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