JP3891259B2 - 可倒式視線誘導標識柱 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路のセンターライン、車線変更線、分離帯などを標示するために用いられる、フレキシブルな視線誘導標識に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の視線誘導標識柱の中で、本発明に最も近く、最も進歩したものとして特開平8−158319号公報「可倒式視線誘導標識柱」が公知である。
この公知発明は、標識柱のフレキシブルなポールの外周面に配置されている反射標識体(例えば再帰反射テープ)が、洗浄や気候によって損傷,劣化することを防止するために為されたものであって、次に述べるような構成である。
図6は、前記公知発明の構成を説明するために示したものであって、(A)図に示されているように、フレキシブルな中空のポール1に台座2が取り付けられている。上記ポール1の外周に、例えば再帰反射式の反射テープから成る反射体3が、円周方向に、所定の間隔で、巻きつけ貼付される。(B)図は巻付け貼付された状態の外観図であって、巻き付けられた反射体3には合せ目4が形成されている。
【0003】
前記の公知発明は、「反射体3を巻付け貼付されたポール1」から成る構造体の外周を、透明なカバーフィルム7で覆って外層を形成している。これによって洗浄による損傷が防止され、かつ耐候性が向上し、特に、寒冷時にも反射体3に亀裂や剥離を生じる虞れが無くなるという優れた実用的効果が達成された。
本図6(C)は、前記反射体3の合わせ目4についての詳細を説明するための拡大詳細図である。反射体3の反対側の面(図において外周側の面)は、反射性能を良くするため種々の加工が施されている。このため、合わせ目4付近に形成される重なり部において、該反射体3の表面と裏面とを接着することが難しく、剥離し易い。しかし、前記の公知発明によってカバーフィルム7で覆うと、この部分の剥離が防止される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図6を参照して以上に説明したように、「カバーフィルム7で覆って外層を形成する」ということは、前記公知発明が目的を達成するための主要な構成であるが、工業生産的に前記カバーフィルム7を形成することに伴って、以下に説明するような困難が有る。また、可倒式視線誘導標識が本来的に有している課題として、視認性をいっそう向上させたいという要望が有る。本発明は、これらを一挙に解決しようとするものである。
図7は、前記カバーフィルム7に関する問題を説明するために示したもので、(A)はカバーフィルム成形機6の構造機能を模式的に描いた斜視図である。上記カバーフィルム成形機6は、溶融した熱可塑性エラストマーを、成形ノズル6aから矢印a方向に、薄肉円筒状に押出成形する機能を有していて、
反射体3を巻付け貼付されたポール1をコアとして、その周囲をカバーフィルム7で覆って外層を構成するようになっている。
本図7(B)は、前掲の(A)図の右端部付近の拡大詳細図である。ポール1に巻付け貼付されたテープ状の反射体3は、厚さ寸法tを有している。
このため、反射体を巻き付けられたポール1から成る構造体は、単純な円柱面ではなく、半径寸法tの段差を有する段付き円柱面をなしている。
【0005】
図7(A)において、カバーフィルム成形機6に対してポール1を矢印g方向に移動させながらカバーフィルム7を押出し成形する際、反射体3によって形成されている段差が、全周同時に成形ノズル6aを通過する。
このため、「反射体3を巻付け貼付したポール1の外周面」と「成形ノズル6aの内周面」との間隔寸法が瞬時に変化し、押出し成形圧力が瞬時的に変動する。その結果(B)図に示したように、カバーフィルム7の外周面に、円周方向の輪状の突条7aが形成される。この突条は、竹の節の輪郭に類似しているので、以下、節状の突起と呼ぶことにする。この節状の突起が形成されると、製品の商品価値が著しく低下する。
本発明は、前記の公知発明に係る可倒式視線誘導標識柱を更に改良して、外層を構成しているカバーフィルムに節状の突起を生じることが無く、耐候性に優れ、しかも視認性が向上した可倒式視線誘導標識柱を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明の構成は、車両の接触を受けたとき弾性的に変形し得る中空のポールを有する可倒式視線誘導標識柱において、
ポールの本体部分を形成する、紫外線で変色しにくい顔料類を混入された熱可塑性エラストマーから成る内層と、
上記内層の外周面の1部を覆って配設された螺旋状の反射標識体と、
前記の内層と反射標識体とから成る構造体の外周面を覆う、全光線透過率80%以上、紫外線吸収率98%以上のカバーフィルムから成る外層と、を具備していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明の構成は、前記請求項1の発明の構成要件に加えて、反射標識体が、内層の周囲に反射テープを螺旋状に巻き付けて貼着された部材であり、
かつ請求項1における外層が、押出成形によって形成された部材であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明の1実施形態における製造工程の模式図である。
(A)図に示したように、汎用系熱可塑性エラストマーで作られた円筒状のポール1の片方の端に、再帰反射テープ8Aを斜めに当てがい、矢印cのように巻き付ける。符号dを付した仮想線は巻付けの計画線である。
(B)図は半ば巻き終えた状態を描いてある。全部巻き終えると(C)図のようになって、前記の反射テープ8Aによって反射標識体8Bが構成される。
(注)反射テープ8Aは使用材料を明確ならしめるための呼称、反射標識体8Bは作用を表現した呼称であって、物体としては同じものである。
図2(C)のように構成された、ポール1と反射標識体8Bとから成る構造体を得たならば、前掲の図7(A)に示したと同様のカバーフィルム成形機6によってカバーフィルム7をコーティングして外層を成形する。外層を形成されると、前記のポール1の本体部分は内層となる(詳細は図1(B)を参照して後述)。
【0011】
前述のようにして、得られた図2(C)の半製品を、図1(A)に示したようにカバーフィルム7で覆って外層を形成し、台座2を取り付けると完成品になる。
この図から容易に理解されるように、反射標識体8Bを螺旋状に巻き付けられたポール1を、カバーフィルム成形機の成形ノズル6a(図7)に通すとき、その外周面に「反射テープ8Aの厚さ寸法に相当する段差」が有っても、この段差は円周方向の円形をなしておらず、螺旋形をなしているので、該段差によって成形ノズル実効押出面積を絞られた「熔融状態のカバーフィルム用エラストマー」は、矢印b(図1(A))のように螺旋の斜面に沿って流動し、公知発明におけるがごとき節状の突起7a(図7(B)参照)が形成されない。
本実施例においては、前記のカバーフィルム7を「全光線透過率80%以上、紫外線吸収率98%以上の熱可塑性エラストマー」で形成した。このような構成によると、視線誘導標識柱としての視認性を妨げることなく紫外線をカットして、内層に含まれている顔料の褪色を防止することができ、耐候性が向上する。
【0012】
図1(A)に鎖線円で囲んだ部分を切断して拡大すると同図(B)のようになる。ポール1の本体部は円筒状をなしているが、(B)図には円筒壁の1部分が内層9として現れている。その外周面側に反射標識体8Bが形成され、これらを覆って、カバーフィルム7が外層を形成している。
先に述べたようにして節状突起の形成が防止されているから、上記外層の表面(図において右側の面)は平滑である。
従来例においては、前記の節状の突起の形成を抑制するため、反射テープの厚さ寸法が制約され、実用上、0.5mm以下でなければならなかった。本発明の適用によって反射テープの厚さを1.5mmまで増すことができた。
反射テープの厚さ寸法の制限が緩和されると、視認性その他の特性の良い反射テープの使用が可能となる。換言すれば反射テープの技術的進歩が促進される。
【0013】
図3に示すように、本実施形態においては、左巻き螺旋形の反射標識体を備えた左巻形標識柱10Lと、右巻き螺旋形の反射標識体を備えた右巻形標識柱10Rとが、それぞれ多数準備されていて、これらを取りまぜて配置できるようになっている。
図3の左半部のように、3本の左巻形標識柱10Lと3本の右巻形標識柱とのそれぞれを組として、これら2種類の組を交互に配置しても良い。
また本図3の右端部のように、右巻形標識柱10Rと左巻形標識柱10Lとを1本ずつ交互に配置することもできる。
このように、螺旋形式を異にする視線誘導標識柱を取りまぜて用いると、運転手の注意を惹き易く、交通安全に貢献する。
図4は、前掲の図3と異なる使用例を示し、従来例の標識柱11も取りまぜて配列してある。このように、異なる様式の反射標識体を備えた視線誘導標識柱が配置されていると、運転手の注意を喚起する効果が向上する。
【0014】
図5は、前記と更に異なる使用例を示しており、本線例(矢印e)に向かっている道路に設けられているゼブラゾーン12の手前で、通行車両を分岐側(矢印f)に誘導するように標識柱を列設してある。
このような場合、運転手から見てゼブラゾーン12のバンドが傾斜しているように見える傾斜方向と、視線誘導標識柱の螺旋形反射標識体が傾斜しているように見える傾斜方向とを揃えれば、これを見た運転手にとって調和のとれた光景と感じられ、運転し易い。
本発明において反射標識体を螺旋形状としたことによって、先に述べたようにカバーフィルムの成形が容易になって節状突起7a(図7)の発生を防止できるが、以上に図3〜図5を参照して説明したように、視認性を向上させるという効果も奏する。
【0015】
先に図2を参照して説明したように、反射テープ8Aを巻き付けて反射標識体8Bを構成した場合は、該反射テープ8Aが厚さを有しているに拘らず、これを螺旋状ならしめることによってカバーフィルムの押出成形を容易ならしめ、節状突起の発生を防止する。
前記反射標識体を、反射テープの巻き付けでなく塗装によって構成する場合は、この反射標識体の形状を必ずしも螺旋状にしなくても、カバーフィルムの成形に別段の困難を生じない。
しかしながら、前記反射標識体を螺旋状とすることによって、図3〜図5を参照して説明したように、視認性向上の効果が得られる。
【0016】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げて、その構成,作用を明らかならしめたように、請求項1の発明によると、紫外線で変色しにくい顔料類を混入された内層を、全光線透過率80%以上、紫外線吸収率98%以上のカバーフィルムからなる外層で覆っているので、耐候性が優れている。
請求項2の発明によると、外層の表面に節状の突起を生じる虞れ無く、反射テープの巻き付け作業によって反射標識体を構成するとともに、押出成形によって外層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態を示し、(A)は外観図、(B)はその部分拡大断面図である。
【図2】前掲の図1の実施形態における製造工程図である。
【図3】本発明に係る可倒式視線誘導標識柱の使用例を説明するための外観図である。
【図4】前掲の図3と異なる使用例の外観図である。
【図5】前掲の図3および図4と更に異なる使用例の外観図である。
【図6】従来例の可倒式視線誘導標識柱を説明するために示したもので、(A)は製造方法を表す分解図、(B)は完成品の外観正面図、(C)は反射体の単品斜視図である。
【図7】公知発明に係る可倒式視線誘導標識柱の外層を形成するカバーフィルムを説明するために示したもので、(A)はカバーフィルムを成形している状態のイメージ図、(B)は上記(A)図の右端部の拡大詳細図である。
【符号の説明】
1…ポール、2…台座、3…反射体としての反射テープ、6…カバーフィルム成形機、7…カバーフィルム(外層)、8A…反射テープ、8B…反射標識体、9…ポール本体(内層)、10…視線誘導標識柱、10L…左巻形標識柱、10R…右巻形標識柱、11…従来例の標識柱、12…ゼブラゾーン。
Claims (2)
- 車両の接触を被ったとき弾性的に変形し得る中空のポールを有する可倒式視線誘導標識柱において、
ポールの本体部分を形成する、紫外線で変色しにくい顔料類を混入された熱可塑性エラストマーから成る内層と、
上記内層の外周面の1部を覆って配設された螺旋状の反射標識体と、
前記の内層と反射標識体とから成る構造体の外周面を覆う、全光線透過率80%以上、紫外線吸収率98%以上のカバーフィルムから成る外層と、を具備していることを特徴とする可倒式視線誘導標識柱。 - 前記の反射標識体が、内層の周囲に反射テープを螺旋状に巻き付けて貼着された部材であり、
前記の外層が、押出成形によって形成された部材であることを特徴とする、請求項1に記載した可倒式視線誘導標識柱。
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