JP3890436B2 - 特異な光特性を有する高分子化合物からなるレーザー発光材料及び電界発光材料 - Google Patents

特異な光特性を有する高分子化合物からなるレーザー発光材料及び電界発光材料 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、特異な光特性を有する高分子化合物からなるレーザー発光材料及び電界発光材料に関し、特に、側鎖にC、H及び/又はC、H、X(Xはヘテロ原子である)からなる芳香族性を有する環状部分(以下芳香環とする)を含む官能基を有し、スタック構造を取って淡色効果を示したり、効率の良いエキシマー発光を可能とする高分子化合物からなるレーザー発光材料及び電界発光材料に関する。
【0002】
William Rhodea,JACS,83,3690(1961)にあるように、DNAの塩基を構成する複素環は紫外線の光(260mm付近)を強く吸収する一方、2重らせんの中では塩基の複素環は積み重なり(スタック構造)、光の吸収が減少するという淡色効果が知られている。しかしながらこのような高分子材料の合成は困難であり、また、光特性を制御する事も困難である。例えば、特許第2659245号明細書に記載されているように、トリフェニルメチル基をエステル基として持つメタクリル酸エステルを重合することによって、側鎖が芳香環を持つ官能基であるポリマーを得ることができることが知られていた。しかしながら、この場合には側鎖の官能基における芳香環同士が互いに平行となりえず、十分に重なり合った構造を取ることが困難であるために、光特性を発現させることは困難であった。
【0003】
また、Yokoyama,M.Macromolecules,8,(1975),101及びItaya,A,Chem Phys lett 138,(1987),231にあるように、ポリ(N-ビニルカルバゾール)は、側鎖が芳香環を持つ官能基であるポリマーであり、フィルム状態ではカルバゾールエキシマーに由来する青色発光を示すことが知られていた。しかしながら、このポリマーの側鎖にある官能基が安定したスタック構造を取ることができないため、効率の良いエキシマー発光は起こらない。
また、中野、第48回高分子討論会予稿集、48(7),1279(1999)にあるように、ジベンゾフルベンが重合することは知られているが、得られる高分子は溶解性や他の高分子との相溶性が劣る上、その詳細な光特性は知られていない。
【0004】
本発明者は、ジベンゾフルベンを含む高分子の光特性について研究した結果、置換基を有するジベンゾフルベンを使用した場合に得られる高分子は溶解性が改善されること、及び、一定の芳香環を有する基を側鎖に有する一定の高分子化合物が、電界発光材料、或いはレーザー発光材料等としての応用可能性を示唆する特異な光特性を有することを見出し、本発明に到達した。
【0005】
従って本発明の第1の目的は、高効率なエキシマー発光を示し、紫外線領域から青色領域で発光する、特異な光特性を有する高分子化合物からなるレーザー発光材料を提供することにある。
本発明の第2の目的は、高効率なエキシマー発光を示し、紫外線領域から青色領域で発光する、特異な光特性を有する高分子化合物からなる電界発光材料を提供することにある。
【0006】
本発明の上記の諸目的は、下記構造式1で表される、側鎖にCとH及び/又はC、H及びヘテロ原子からなる芳香環を含む官能基を有すると共に数平均分子量が250〜1,000,000の高分子化合物であって、前記芳香環に起因するモル吸光係数が、前記芳香環を導入する為に用いられた重合性単量体における該芳香環に起因するモル吸光係数より30%以上小さいことを特徴とするレーザー発光材料及び電界発光材料によって達成された。
【0007】
構造式1
但し、Arは芳香環、R1及びR2は置換基、R5及びR6は水素原子、アルキル基、芳香族基、-CN及びエステル基の中から選択される基、Xはなし、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C(=O)-、及びヘテロ原子の中から選択される何れかであり、mは2以上の整数である。
【0008】
本発明の高分子化合物の数平均分子量は250〜10,000であることが好ましく、特に250〜5,000であることが好ましい。また、芳香環に起因する高分子化合物のモル吸光係数は、重合性単量体における芳香環に起因するモル吸光係数より40%以上小さいことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における、C、Hからなる芳香環を含む官能基とは、フェニル基やナフチル基等の1つもしくは複数のベンゼン環からなる官能基、フルオレンのような環状炭化水素基に芳香環がついた構造を持つ官能基、もしくは、これらの芳香環に置換基を導入した官能基のことであり、C、H、Xからなる芳香環を含む官能基とは、上記C、Hからなる芳香環や環状炭化水素基の代りにC、H及びヘテロ原子からなる芳香環が導入されている場合である。ヘテロ原子は、直接環を形成する原子として入っていても、環と共役系を形成するように、環の置換基等として導入されていても良い。本発明においては、上記C、Hからなる芳香環とC、H及びヘテロ原子からなる芳香環が同時に含まれていても良い。何れにしても、本発明の高分子の状態で芳香環が互いに積み重なるスタック構造を取り易くなることが好ましい。上記の観点から、本発明において特に好ましい芳香環はフルオレン環である。このフルオレン環には適宜置換基を導入することができる。尚、ここでスタック構造とは、側鎖の官能基中の芳香環同士が積層している構造を意味する。
【0010】
このように芳香環同士が重なり合っている時は、当然両芳香環同士が相互作用する。重なり合う芳香環の面間距離が小さい程上記相互作用は大きくなり、高分子化合物としての光特性の特異性も増す。
例えば、平面構造を取る芳香環の場合には、その面間距離が0.5nm以下になった場合にお互いの電子同士が十分に相互作用することができる。0.5nm以上では、その芳香環間でのエネルギー移動や電子移動の効率が悪くなる。従って、本発明の高分子化合物における芳香環同士の面間距離は0.5nm以下であることが好ましい。
【0011】
上記芳香環の面間距離は、高分子化合物の重合度にも依存する。特にエキシマー発光特性を持たせるという観点から、重合度は4以上であることが好ましい。重合度が4以下では、エキシマー発光以外に重合性単量体と同じ発光波長に発光を示すことがある。従って、本発明の高分子化合物には、通常のポリマーの他にオリゴマーも包含される。このような重合度を考慮すると、本発明の高分子化合物の分子量は250〜1,000,000であることが必要であるが、製造容易性も加味すると250〜10,000であることが好ましく、高分子化合物としての取り扱い容易性や発光特性をも考慮すると250〜5,000であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、上記芳香環のスタック構造を取り易くしたり安定化させ、或は芳香環同士の相互作用を大きくする為に、本発明の高分子化合物に電子受容性化合物又は電子供与性化合物を添加した組成物とすることが好ましい。
【0013】
上記の電子受容性化合物とは、本発明の高分子化合物より電子親和力の強い化合物を意味し、その具体例としては、例えば、I2、Br2、Cl2、ICl、ICl3、IBr、IF等のハロゲン類、BF3、PF5、AsF5、SbF5、SO3、BBr5、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、ClO4-等のルイス酸、HNO3、H2SO4、HClO4、HF、HCl、FSO3H、CFSO3H等のプロトン酸、FeCl3、MoCl5、WCl5、SnCl4、MoF5、FeOCl、RuF5、TaBr5、SnI4、LnCl3(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Sm)等の遷移金属ハロゲン、9-フルオレニリデンアセトニトリル、9-フルオレニリデンマロニトリル、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレニリデンアセトニトリル、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレニリデンマロニトリル、o-ジニトロベンゼン、m-ジニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、2,4,7-トリニトロベンゼン、2,4,7-トリニトロトルエン、TCNQ、TCNE、DDQ等が挙げられる。
【0014】
また、前記電子供与性化合物とは、本発明の高分子化合物よりイオン化ポテンシャルの小さい化合物のことを意味し、その具体例としては例えば、ヘキサメチルベンゼン、アルカリ金属、アンモニウムイオン、ランタノイドなどが挙げられる。
【0015】
本発明の高分子化合物を得るための重合性単量体としては、CとH又はC、H、Xからなる香環を含む重合性単量体の少なくとも1種が必要であり、必要に応じて、上記芳香環を含まない重合性単量体を併用しても良い。CとH又はC、H、Xからなる香環を含む重合性単量体としては、下記一般式(1)で表される重合性単量体を使用することが好ましい。
【0016】
但し、R1、R2、R3、R4は置換基であって、例えば、水素原子、アルキル基、-OR、香族基、-NRR’、-SR、ハロゲン
の群のなかから選択された基であり、これらは同一であっても異なっても良いが、全てが同時に水素原子とはならないことが好ましい。
また、X1は、なし(両端の原子が直結している)、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-CO-、-S-、-O-,-Si(R)(R’)-、-NR-、及び-N(COR)-から選択される何れかであることが好ましい。R5及びR6は、水素原子、アルキル基、香族基、-CN、エステル基の群から選択される基であることが好ましく、これらは同一であっても異なっていても良い。尚、R及びR’はH又は炭素数1〜50のアルキル基である。また、点線部分の・・・Ar1・・・及び・・・Ar2・・・は芳香族性を示す環状部分であり、ヘテロ原子X2を含むヘテロ環であっても良い。また、・・・Ar1・・・と・・・Ar2・・・は同一であっても異なっていても良い。上記X2の例としては、N、O、S、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Se、Teを挙げることができるが、本発明においてはN、O、Si、Geが好ましく、特にN又はOであることが好ましい。
【0017】
本発明においては、上記重合性単量体の中でも、特に、下記式で表されるものが好ましい。
R1、R2、R3、R4は置換基であり、例えば、水素原子、アルキル基、-OR、香族基、-NRR’、-SR又はハロゲンであり、R1〜R4の全てが同時に水素原子とはならないことが好ましい。但し、R5及びR6は、水素原子、直鎖アルキル基、香族基、-CN、又はエステル基であり、nは0、1、又は2である。
R1、R2、R3、R4は置換基であって、例えば水素原子、アルキル基、-OR、香族基、-NRR’、-SR又はハロゲンであり、R1〜R4の全てが同時に水素原子とはならないことが好ましい。但し、R5及びR6は、水素原子、アルキル基、香族基、-CN、又はエステル基であり、nは0、1、又は2である。
また、X1は、-S-、-O-、-Si(R)(R’)-又は-NR-であり、R及びR’はH又は炭素数1〜50のアルキル基である。
【0018】
R1、R2、R3、R4は置換基であって、例えば水素原子、アルキル基、-OR、香族基、-NRR’、-SR又はハロゲンであり、R1〜R4の全てが同時に水素原子となることはない。但し、R5及びR6は、水素原子、直鎖アルキル基、香族基、-CN、又はエステル基であり、nは0、1、又は2である。
これらの中でも、特に下記ジベンゾフルベンが好ましい。
【0019】
R1、R2、R3、R4は置換基であって、例えば水素原子、アルキル基、-OR、香族基、-NRR’、-SR、ハロゲン
【0020】
が挙げられる。尚、R及びR'はH又は炭素数1〜50のアルキル基である。
また、R1、R2が-C5H11でR3、R4が水素原子である場合、R1、R2が-C12H25でR3、R4が水素原子である場合、R1、R2が-C18H37でR3、R4が水素原子である場合、R1、R2が-C(O)C4H9でR3、R4が水素原子である場合、及び、R1、R2が-C(O)C11H23でR3、R4が水素原子の組み合わせであることが、溶解性に優れた高分子化合物を得る観点から特に好ましい。
【0021】
必須成分である、CとH又はC、H、Xからなる芳香環を含む重合性単量体は、Bull. Chem. Soc. Jpn.,59,97-103(1986)に記載されている方法によって得ることが出来る。即ち、例えば芳香環がフルオレン環である場合には、フルオレン誘導体をCrO3により酸化した後、ウィッティヒ試薬と反応させることによって得ることが出来る。
【0022】
また、R1,R2,R3,R4にカルボニル基を導入する方法としては、例えばフリーデル−クラフツ反応を用い、AlCl3とCS2の存在化でフルオレン若しくはその類似化合物とバレロイルクロライドを反応させることにより得られる化合物を、n-BuLiのような塩基の存在下でパラホルムアルデヒドと反応させ、その後、t-BuOKと反応させることによって得ることが出来る。これにより、例えば、X1がなし、-CH2-、-CH2-CH2-又は-CH=CH-であり、R1
でR2〜R6が水素原子である化合物や、R1及びR4
でR2、R3、R5及びR6が水素原子である化合物が得られる。
【0023】
また、アルキル基を導入する方法としては、例えば、フリーデル−クラフツ反応を用いて、フルオレンやその類似化合物(以下フルオレン等とする)とバレロイルクロライドをAlCl3とCS2の存在化で反応させることにより得られる化合物を、ヒドラジン・モノハイドレートとジエチレングリコールの存在下で、130℃、2時間加熱する。次いでKOHを添加し、200℃で3時間加熱することにより得られる化合物をCrO3により酸化した後、ウィッティヒ試薬と反応させることにより目的物を得ることが出来る。これにより、X1がなし、-CH2-又は-CH=CH-であり、R1が-C5H11でR2〜R6が水素原子である化合物や、R1及びR4が-C5H11でR2、R3、R5、R6が水素原子である化合物が得られる。
【0024】
R5及びR6に官能基を導入する方法としては、例えばフルオレン等とジブロモマロン酸エステル、またはフルオレン等とジヨウドマロン酸エステル、またはフルオレン等とジクロロマロン酸エステル、またはフルオレン等とジアルキルジブロモメタン、またはフルオレン等とジアリールジブロモメタンを、n-BuLi等の塩基の存在下で、ジオキサン等の有機溶剤中でt-BuOKと反応させる方法が挙げられる。これにより導入できる基としては、アルキル基、芳香族基、-CN、エステル基等が挙げられる。R5とR6の少なくとも一方が水素原子でない場合には、得られるモノマーの安定性が向上するので好ましい。R5とR6の好ましい組み合わせとしては、エステル基とエステル基、シアノ基とシアノ基、芳香族基と芳香族基、アルキル基とアルキル基等が挙げられる。アルキル基としては、特に直鎖アルキル基が好ましい。
【0025】
各X1に対応する単量体は、例えばX1が-CH2-の場合にはジヒドロアントラセンを出発原料とするというように、各X1に対応する出発原料を適宜選択し、フルオレン等の場合と同様の反応を行わせることによって容易に得ることができる。
【0026】
このようにして得られた重合性単量体の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など、既知の重合方法を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカル重合を開始できるもの、あるいは、加熱によりラジカルを発生する化合物であればよい。特に、光照射によりラジカル重合を開始できるものが好ましく、例えば、直接開裂型ラジカル重合開始剤として、アリールアルキルケトン、オキシムケトン、アシルホスフィンオキシド、アリールアルキルケトン、チオ安息香酸S-フェニル、チタノセン、水素引き抜き型ラジカル重合開始剤として、芳香族ケトン、チオキサントン、ベンジルとキノン誘導体、3-ケトクマリン等を挙げることができる。
【0027】
複合型ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物/電子供与型色素、ビスイミダゾール、オニウム塩/電子供与型色素、N-フェニルグリシン/電子吸引型色素、N-フェニルグリシン/ジフェニルヨードニウム塩/増感剤等が挙げられる。
【0028】
また、アニオン重合開始剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムのような対イオンと、炭素、窒素、酸素、硫黄のようなアニオンからなるアニオン重合開始剤が用いられる。このようなアニオン重合開始剤の例としては、例えば、RMgX、R2Mg、RCaX、Al(C2H5)3、LiAlH4、NaR、KR(Rは、ブチル、ベンジル、フェニル基などの炭素数1から50、好ましくは1から20のアルキル基、アルアルキル基または芳香族基、本明細書では、上記の化合物を表示する限りにおいて、Xはハロゲンを表す。)等が挙げられる。また、例えば(R1)(R2)NM(R1,R2は炭素数1から50、好ましくは1から20のアルキル基、アルアルキル基または芳香族基Mは対イオン)で表されるような、2級アミンから得られるアニオン重合開始剤を用いることもできる。
【0029】
本発明のポリマーは、固相重合、溶液重合、塊状重合、乳化重合、シード乳化重合、懸濁重合、分散重合等の重合方法を用いて重合することができる。
例えば、真空乾燥した後窒素置換を行ったアンプル管にTHFに溶解したモノマーを入れ、-78℃に冷却する。その溶液にモノマーの約1/20等量のn-BuLiを添加し、24時間反応させる。その後、MeOHでn-BuLiを不活性化した後、溶液と等量のMeOHを添加する。このようにして生じた沈殿物を遠心分離により回収し、THFに溶解すると言った方法が挙げられる。
【0030】
また、本発明においては、本発明の重合性単量体の少なくとも1種を重合又は共重合させることができるだけではなく、これらと共重合可能な他の単量体と共重合させることもできる。このような他の単量体としては、例えば、R-C=C-R’や、R-C≡C-R’(R,R’:有機基)のような重合性不飽和結合をもつ化合物や、ビニル基として、(メタ)アクリロイル基を持つ化合物、その他のラジカル重合性二重結合を持つ化合物等が挙げられる。
【0031】
ビニル基として(メタ)アクリロイル基を持つ化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸;アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n-プロピルエステル、(メタ)アクリル酸イソプロピルエステル、(メタ)アクリル酸n-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸sec-ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチルエステル、(メタ)アクリル酸イソオクチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソノニルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸イソミリスチルエステル、(メタ)アクリル酸イソステアリルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸トリプロモフェニル、(メタ)アクリル酸2,3−ジクロロプロピル、ε-(ポリ)カプロラクトンアクリレート、テトラヒドロフラニルアクリレート等に代表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;等が挙げられる。
【0032】
更に、イソシアネート基を持つ化合物と活性水素を持つ(メタ)アクリルモノマーとの反応等により得られるウレタンアクリレート、エポキシ基を持つ化合物をアクリル酸、または、水酸基を持つ(メタ)アクリルモノマーとの反応等によって得られるエポキシエステル化合物;ポリエステルアクリレート;エチレングリコールやプロピレングリコールとのアルキレングリコールとアクリル酸との反応によって得られるアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、ジアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート類、グリセリンジ(メタ)アクリレート類、グリセリントリ(メタ)アクリレート類;トリメチロールアルカントリ(メタ)アクリレート類;アクリルアミド類;シリコンアクリレート;ポリブタジエンアクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1、4-フ゛タンシ゛オールシ゛メタクリレート、1,6-ヘキサンシ゛オールシ゛メタクリレート、1,9-ノナンシ゛オールシ゛メタクリレート、トリメチロールフ゜ロハ゜ン、トリメタクリレート、ク゛リセリンシ゛メタクリレート、2-ヒト゛ロキシ-3-アクリロイロキシフ゜ロヒ゜ルメタクリレート、ヒ゛スフェノールAのエチレンオキサイト゛付加物シ゛メタクリレート等;トリメチロールフ゜ロハ゜ントリメタクリレート、トリメチロールフ゜ロハ゜ンPO変性トリメタクリレート、トリメチロールフ゜ロハ゜ンEO変性トリメタクリレート、ヘ゜ンタエリスリトールトリアクリレート、シ゛ヘ゜ンタエリスリトールヘ゜ンタアクリレート、シ゛ヘ゜ンタエリスリトールヘキサアクリレート、シ゛トリメチロールフ゜ロハ゜ンテトラアクリレート、ヘ゜ンタエリスリトールテトラアクリレート等も使用することができる。
【0033】
その他のラジカル重合性二重結合を持つ化合物としては、例えば、アクリル酸N,N-シ゛メチルアミノエチル、アクリル酸N,N-シ゛エチルアミノエチル、アクリル酸N,t-ブチルアミノエチル等のアクリル酸アミノアルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル;ブタジエン;イソプレン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルケトン;N-ビニルピロリドン;ビニルピリジン;(メタ)アクリルアミド;ビニルカルバゾール等;ジビニルベンゼン;α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、t−ブチルスチレン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等に代表されるビニルエーテル系単量体;フマル酸;マレイン酸;イタコン酸;フタル酸;フマル酸のモノアルキルエステル、フマル酸のジアルキルエステル;マレイン酸のモノアルキルエステル、マレイン酸のジアルキルエステル;イタコン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸のジアルキルエステル;フタル酸のモノアルキルエステル、フタル酸のジアルキルエステルが挙げられる。
【0034】
以上のようにして得られる本発明に用いられる高分子化合物は、側鎖にC、H及び/又はC、H、Xからなる芳香環を有することになるが、この芳香環が容易にスタック構造を取るので淡色効果を生じ、前記芳香環に起因する吸光係数が、該芳香環を導入する為に用いた重合性単量体の、対応する吸光係数の70%以下となる。また、エキシマー発光を利用して、レーザー発光材料や、電界発光材料としての応用の可能性もある。特に、青色〜紫外にかけてエキシマー発光させることも可能であるので、その産業上の利用可能性は大きい。
【0035】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜4.
<モノマーの合成>
フレームドライした後窒素置換を行った、メカニカルスターラーおよび塩化水素トラップ付きの3リットルの4つ口フラスコに、フルオレン(和光純薬社製)30.1g、AlCl3(和光純薬社製)100gとCS2 400mlを入れて攪拌した。次いでバレロイルクロライド(和光純薬社製)64mlを30分かけてゆっくりと滴下した後、その反応混合溶液を室温で8時間攪拌し、氷の入った2リットルのマイヤーフラスコにゆっくりと攪拌しながら注ぎ入れて反応を停止させた。HClで中和した後、塩化メチレンを用いて有機層を2回抽出し、抽出した有機層を2重量%のNaOH水溶液で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥後の溶液をセライト濾過し、減圧下で濃縮して茶色の粘ちょうな液体61gを得た。これを酢酸エチルに溶解した後再結晶し、赤色の固体52gを得た。こうして得られた化合物を化合物1とする。得られた化合物1のNMRスペクトルは下記の通りであった。
1H-NMR(500MHz、CDCl3、CHCl3) d 8.164(s,2H), 8.028(d,J=8.0Hz,2H), 7.880(d,J=8.0Hz,2H) , 4.002(s,2H), 3.019(t,J=7.5Hz,4H), 1.752(quin,J=7.5Hz,4H), 1.435(sex,J=7.5Hz,4H), 0.970(t,J=7.5Hz,6H)
13C-NMR (125MHz, CDCl3、CHCl3)d 200.289 144.798 136.420 127.484 124.837 120.617 38.534 36.931 26.592 22.494 13.948
【0037】
1リットルのナスフラスコに環流管付きのDean-Starkトラップをつけ、得られた化合物1を30.4g、ヒドラジンモノハイドレート(和光純薬社製)44.2ml、及びジエチレングリコール(和光純薬社製)400mlを入れ、130℃で2時間加熱した後、KOH(和光純薬社製)20.6gを入れ、200℃で更に3時間加熱した。反応液を室温に戻した後水を入れて反応を停止させ、有機層をエーテルで2回抽出した。その有機層を1N-HCl、飽和炭酸水素ナトリウム水、水(2回)および飽和食塩水で順次洗浄した後、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥した溶液を濾過し、減圧下で濃縮して黄色の固体27.7gを得た。得られた個体から、シリカゲルクロマトラフィー(ヘキサン)によって白色の固体26.2gを得た。これを化合物2とする。化合物2のNMRスペクトルは下記の通りであった。
1H-NMR(500MHz、CDCl3、CHCl3) d 7.694(d,J=7.5Hz,2H),7.174(d,J=7.5Hz,2H),3.840(s,2H), 3.019(t,J=7.5Hz,4H),1.697-1.636(m,4H),1.370-1.340(m,8H), 0.912(t,J=7.0Hz,6H)13C-NMR(125MHz, CDCl3、CHCl3) d 143.326 141.220 139.419 126.897 124.989 119.220 36.695 36.115 31.575 31.521 22.586 14.055
Anal.Calcd for C23H30 C,90.13;H,9.87. Found;C,90.40;H10.0
【0038】
フレームドライした後窒素置換を行った1リットルの3つ口フラスコに、化合物2を5.0g、トルエン280ml、及びTMEDA7.4mlを入れ、0℃で10分間攪拌した。その反応混合溶液にn-BuLi/ヘキサン(1.6M、31ml)(和光純薬社製)を10分かけて滴下し、更に5分間攪拌した。その溶液にパラホルムアルデヒド(和光純薬社製)1.58g、及びトルエン20mlを入れ、0℃で80分間攪拌した後、その反応混合溶液に水を加えて反応を停止させ、次いで酢酸エチルで有機層を2回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥後の溶液を濾過し、減圧下で濃縮し、黄色の液体8.5gを得た。この液体から、シリカゲルクロマトラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15:1)によって、ピンク色の固体3.1gを得た。これを化合物3とする。得られた化合物3のNMRスペクトルは下記の通りであった。
1H-NMR(500MHz、CDCl3、CHCl3)、d 7.6621(d,J=7.5Hz,2H), 7.394(s,2H), 7.191(d,J=8.0Hz,2H), 4.045(s,3H),2.669(t,J=7.5Hz,4H), 1.660(quin,J=7.0Hz,4H),1.363-1.334(m,8H), 0.901(t,J=7.0Hz,6H)
13C-NMR(125MHz, CDCl3、CHCl3)d 144.363 141.685 139.251 127.736 124.623 119.449 65.287 50.148 36.161 31.605 31.483 22.563 14.055
【0039】
環流管付き200mlナスフラスコに、化合物3を1.62g、MeOH 30ml及びTHF230mlを入れ、0℃で10分間攪拌した。その反応混合溶液にt-BuOKを1.63g入れ、環流温度で5分間攪拌した後水を加えて反応を停止させた。次いで、反応液からヘキサンを用いて有機層を2回抽出し、抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4を用いて乾燥した。乾燥後の溶液をセライト濾過し、減圧下で濃縮し、黄色の液体1.57gを得た。この黄色の液体から、シリカゲルクロマトラフィーを用いて、黄色の液体1.4gを得た。これを化合物4とする。
化合物4の構造式
【0040】
<ポリマーの合成>
真空乾燥した後窒素置換を行ったアンプル管に、THF8mlに化合物4を0.4g溶解させた溶液を入れ、-78℃に冷却した後、化合物4の1/5等量のn-BuLiを添加して24時間反応させた。反応後にMeOHを加えて反応を停止させた後、溶液と等量のMeOHを添加し、生じた沈殿物を遠心分離により回収した(0.38g)。このようにして得られたポリマーをポリマー1とする。このポリマー1の数平均分子量は1,000であった(実施例1)。
n-BuLiの量を1/10等量添加したことを除き、ホ゜リマー1の場合と全く同様に合成したホ゜リマーをホ゜リマー2とする。このホ゜リマー2の数平均分子量は2,000であった(実施例2)。
n-BuLiの量を1/15等量添加したことを除き、ホ゜リマー1の場合と全く同様に合成したホ゜リマーをホ゜リマー3とする。このホ゜リマー3の数平均分子量は3,000であった(実施例3)。
n-BuLiの量を1/25等量添加したことを除き、ホ゜リマー1の場合と全く同様に合成したホ゜リマーをホ゜リマー4とする。このホ゜リマー4の数平均分子量は5,000であった(実施例4)。
【0041】
比較例1〜4.
<モノマーの合成>
フレームドライした後窒素置換を行った1リットルの3つ口フラスコに、フルオレン5.0g、トルエン280ml及びTMEDA7.4mlを入れ、0℃で10分間攪拌した後、n-BuLi/ヘキサン(1.6M、31ml)(和光純薬社製)を10分かけて滴下し、更に5分間攪拌した。次いで、その溶液にパラホルムアルデヒド(和光純薬社製)1.58g及びトルエン20mlを入れ、0℃で80分間攪拌した後、水を加えて反応を停止させた。次に、反応液から酢酸エチルを用いて有機層を2回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した後濾過し、減圧下で濃縮し、黄色の液体8.5gを得た。この黄色の液体から、シリカゲルクロマトラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=15:1)を用いて、ピンク色の固体3.1gを得た。これを化合物5とする。
【0042】
環流管付きの200mlナスフラスコに、化合物5を1.62g、MeOH30ml及びTHF230mlを入れ、0℃で10分間攪拌した後t-BuOK1.63gを入れて環流温度で更に5分間攪拌した。次いで反応混合溶液に水を入れて反応を停止させた後、ヘキサンを用いて有機層を2回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4を用いて乾燥し、次いで溶液をセライト濾過し、減圧下で濃縮して黄色の液体1.57gを得た。この液体からシリカゲルクロマトラフィーを用いて、黄色の液体1.4gを得た。これを化合物6とする。
化合物6の構造式
【0043】
<ポリマーの合成>
真空乾燥し次いで窒素置換を行ったアンプル管に、THF8mlに化合物6を0.4g溶解した溶液を入れ、-78℃に冷却した後、化合物6の約1/5等量のn-BuLiを添加し、24時間反応させた。MeOHを加えて反応を停止させた後、溶液と等量のMeOHを添加して生じた沈殿物を、遠心分離により回収した。こうして得られたポリマーをポリマー5とする。このポリマー5の数平均分子量は1,000であった(比較例1)。
n-BuLiの量を1/10等量添加したことを除き、ホ゜リマー5の場合と全く同様に合成したホ゜リマーをホ゜リマー6とする。このホ゜リマー6の数平均分子量は2,000であった(比較例2)。
n-BuLiの量を1/15等量添加したことを除き、ホ゜リマー5の場合と全く同様に合成したホ゜リマーをホ゜リマー7とする。このホ゜リマー7の数平均分子量は3,000であった(比較例3)。
n-BuLiの量を1/25等量添加したことを除き、ホ゜リマー5の場合と全く同様に合成したホ゜リマーをホ゜リマー8とする。このホ゜リマー8の数平均分子量は5,000であった(比較例4)。
【0044】
THFへの溶解性
得られたホ゜リマー1から8を、THF100gに対して5g添加し、室温で1時間攪拌して溶解性を調べた。完全に溶解したものを○、僅かに溶け残りがあるものを△、ほとんど溶けないものを×として評価した結果を表1に示す。
【表1】
【0045】
上記の結果は、置換基を持たないフルオレン環を有する高分子化合物は、分子量が大きくなるにつれて、急激に溶解性が悪くなるのに対し、-C5H11を置換基として有するフルオレン環を有する場合には、溶解性が改善されることを実証するものである。
【0046】
実施例5.
ジベンゾフルベンの合成
9-ヒト゛ロキシメチルフルオレン10gとKOH1gをメタノール90mlに溶解し、60℃で1時間反応させた後メタノールを揮発させた。このようにして得られた固体から、ヘキサンと水を用いてジベンゾフルベンを抽出分離し、ジベンゾフルベンを含むヘキサン相が中性になるまで水で洗浄した。ヘキサン相を分離した後ヘキサンを揮発させ、得られた固体をヘキサン−ジエチルエーテルの混合溶媒(4/6 v/v)から再結晶させることにより、ジベンゾフルベンを得た。得られたジベンゾフルベンの融点は50-52℃であった。
【0047】
ジベンゾフルベンの重合
得られたジベンゾフルベン0.5モルをTHFに溶解し、重合開始剤としてn-BuLiを0.025モル用い、-78℃で24時間反応させることによりジベンゾフルベンの重合体を得た。その後、ジベンゾフルベンの2量体から17量体までの重合物を、重合度に応じてGPCにより分離した。
【0048】
モル吸光係数の測定
THF溶液の室温における吸光度を測定することにより、モル吸光係数を測定した(図1参照)。
【0049】
蛍光スペクトルの測定
THF溶液について、室温で、267nmの励起光を用いて発光スヘ゜クトルを測定した(図2参照)。
【0050】
吸光スペクトルの測定から、重合度が3以上の重合体は、モノマーの265nmのモル吸光係数と比較して、モル吸光係数が約40%小さくなったことが確認された。このことから、このジベンゾフルベンの重合体のフルオレン環がスタック構造を取っていることが実証された。また、吸収端がモノマーの吸収端306nmから318nmへとシフトした。更に、蛍光スペクトルの測定から、重合度が4以上の場合に、モノマーの発光ピーク波長305nm(ヒ゜ーク幅295nm〜375nm)とは異なる波長400nm(ヒ゜ーク幅340〜550nm)にエキシマー発光による発光ピークが観察された。このことからも、このジベンゾフルベンの重合体におけるフルオレン環がスタック構造を取っていることが分かる。
【0051】
実施例6(共重合)
<2,7-ジ-t-ブチルジベンゾフルベンの合成>
フレームドライした後窒素置換を行った、メカニカルスターラー及び塩化水素ガストラップ付き1リットルの3つ口フラスコに、フルオレン(30.4764g,183.5928mmol)、FeCl3(0.5eq.,14.7517g)、及びCS2(300ml)を入れて攪拌した。その中にt-BuCl(2.5eq.,50ml)を10分間かけて滴下した。その反応混合溶液を室温で7時間攪拌した後、水を入れてクエンチした。次いで塩化メチレンを用いて有機層を2回抽出し、抽出した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。得られた溶液をろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(49.4598g,茶色の固体)を得、該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)によって精製し、目的生成物2,7-ジ-t-ブチルフルオレン(43.6058g,85%,白色の固体)を得た。反応に用いるものはこれ以上の精製を行なわず、分析データの測定にはEtOHから再結晶した試料を用いた。mp:120.1-120.6; 1H-NMR (500MHz,CDCl3,CHCl3) δ:7.68 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.58 (s, 2H), 7.41 (d, J=8.0Hz, 2H), 3.88 (s, 2H), 1.40(s, 18H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:149.42, 143.25, 139.12, 123.76, 121.84, 119.07, 37.08, 34.80, 31.62; IR (KBr):2959, 2895, 2868, 1473, 1358, 1261, 1163, 817, 716cm-1; HRMS (EI) Calcd for C21H26:278.2034. Found:278.2038.
【0052】
フレームドライし、窒素置換を行った1リットルの三ツ口フラスコに、上で得られた2,7-ジ-t-ブチルフルオレン(10.0083g,36.9712mmol)、トルエン(570ml)、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(17ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した。その反応混合溶液にn-BuLiのヘキサン溶液(1.6M,68ml)を10分かけて滴下し、さらに5分間攪拌した。得られた溶液にパラフォルムアルデヒド(3.2467g)、及びトルエン(30ml)を入れ、0℃で150分攪拌し、次いで反応混合溶液を水でクエンチし、有機層を酢酸エチルを用いて2回抽出した。
【0053】
得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和食塩水で洗浄した後硫酸マグネシウムで乾燥した。その溶液を濾過し、減圧下で濃縮し、粗成生物(21.0154g, 黄色の液体)を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)により精製し、2,7-ジ-t-ブチル-9-ヒドロキシメチルフルオレン(6.7477g, 59%, 薄黄色の固体)を単離した。mp:101.5-103.0℃;1H-NMR(500MHz,CDCl3, TMS) δ:7.64 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.61 (d, J=2.0Hz,2H), 7.34 (dd, J=8.0, 2.0Hz,2H), 4.06(s, 3H), 1.54(br s, 1H), 1.37(s, 18H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:149.89, 144.29, 138.93, 124.66, 121.39, 119.26, 65.33, 50.47, 34.87, 31.61; IR (KBr):3322, 2955, 2866, 1476, 1361, 1259, 1058, 817, 735cm-1; HRMS (EI) Calcd for C22H28O:308.2140. Found:308.2138.
【0054】
還流管付きの200mlナスフラスコに2,7-ジ-t-ブチル-9-ヒドロキシメチルフルオレン(2.0383g,6.6179mmol)、MeOH(40ml)、THF(40ml)、及びt-BuOK(2.3048g)を入れ、還流温度で10分間攪拌した。その反応混合溶液を水でクエンチし、ヘキサンを用いて有機層を2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。
【0055】
得られた溶液をろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(1.8975g,黄色の固体)を得た。得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、2,7-ジ-t-ブチルジベンゾフルベン(1.7840g,93%,黄色の固体)を単離した。mp:158.6-160.5℃;1H-NMR (500MHz, CDCl3, TMS) δ:7.74 (d, J=1.0Hz, 2H), 7.56 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.39 (dd, J=8.0, 2.0 Hz, 2H), 6.05 (s, 2H), 1.38 (s, 18H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:149.81, 144.02, 138.12, 137.70, 125.97, 119.04, 117.68, 106.47, 34.89, 31.52; IR (KBr):2959, 1474, 1361, 1253, 1102, 888, 823, 754, 684cm-1; HRMS (EI) Calcd for C22H26:290.2034. Found:290.2029; Anal. Calcd for C22H20: C, 90.98; H, 9.02. Found: C, 91.02; H, 9.07.
【0056】
<2,7-ジ-t-ブチルジベンゾフルベンとジベンゾフルベンの共重合による可溶性π-スタックポリマーの合成>
フレームドライした後窒素置換したアンプルに、2,7-ジ-t-ブチルジベンゾフルベン(499.6mg,1.7202mmol)、DBFのTHF溶液(0.87M,1.8ml)、及びTHF(3.9ml)を入れた。反応混合溶液を-78℃に冷却し、n-BuLiのヘキサン溶液(1.6M, 0.05ml)を入れて重合を開始し、-78℃で24時間重合させた。24時間後、反応混合溶液にその温度でMeOH(0.2ml)を加えて重合を停止させた。反応混合物をCDCl3に入れて1H-NMR測定し、溶媒を内部標準としてモノマーの転化率を求めた(モノマー転化率:DBF=>99%,2,7-t-ブチルジベンゾフルベン=6%)。反応混合溶液から溶媒を除去した後、THF不溶分(117.6mg,15%)と可溶分に分け、THF可溶部にMeOHを加えて再沈殿させ、MeOH不溶分(156.0mg, 20%)を得た。THF可溶でMeOHに不溶な部分:分子量、Mn=7900,Mw/Mn=1.13[GPC,vs.ポリスチレン];吸収スペクトル、ε=22792(222nm),ε=10714(264nm),淡色化率49%(264nm)[THF,23°C][参考データ(モノマー単位モデル、2,7-ジ-t-ブチルフルオレン):ε=28988(222nm),ε=26477(264nm)][参考データ(モノマー単位モデル、フルオレン)、:ε=19638(222nm),ε=20486(264nm);発光スペクトル、λmax=397nm[λEx.=265nm,THF,23°C] [参考データ(モノマー単位モデル、2,7-ジ-t-ブチルフルオレン):λmax=311nm][参考データ(モノマー単位モデル、フルオレン)、λmax=311nm]
【0057】
実施例7(側鎖に置換基のあるポリマー1)
<2,7-ジ-n-ペンチルジベンゾフルベンの合成>
フレームドライした後窒素置換を行った、メカニカルスターラー及び塩化水素ガストラップ付き3リットルの4つ口フラスコに、フルオレン(30.0855g,181.2380mmol)、AlCl3(100.1639g)、及びCS2(400ml)を入れて攪拌した。その中にバレロイドクロライド(64ml)を30分かけてゆっくりと滴下した。この工程ではかなりの塩化水素ガスが発生した。得られた反応混合溶液を室温で8時間攪拌した後、その反応混合溶液を氷の入った2リットルのマイヤーにゆっくりと攪拌しなが注ぎ入れてクエンチし、塩化メチレンを用いて有機層を2回抽出し、その有機層を2重量%のNaOH水溶液で2回、次いで飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。次いで該有機層溶液をセライトろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(61.0123g,茶色の固体)を得た。得られた粗生成物を酢酸エチルで再結晶し、2,7-ジ(1-オキソペンチル)フルオレン(52.4458g,87%,赤色の固体)を得た。mp:147.3-149.1℃;1H-NMR(500MHz, CDCl3, TMS) δ:8..18 (s, 2H), 8.04 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.90 (d, J=8.0Hz, 2H), 4.02 (s,2H), 3.03 (t, J=7.0Hz, 4H),0.76(quin, J=7.0Hz, 4H), 1.44 (sex, J=7.0Hz, 4H), 0.98 (t, J=7.0Hz, 6H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:200.29, 144.77, 144.46, 136.44, 127.43, 124.81, 120.59, 38.51, 36.92, 26.58, 22.49, 13.93; IR (KBr):2957, 2937, 2895, 2870, 1680, 1605, 1213, 1137, 843, 798, 754, 731cm-1; HRMS (EI) Calcd for C23H26O2:334.1933. Found:334.1933.
【0058】
1リットルのナスフラスコに還流管付きのDean-Starkトラップを付け、2,7-ジ(1-オキソペンチル)フルオレン(30.4129g,91.0566mmol)、ヒドラジン・1水和物(44.2ml)、及びジエチレングリコール(400ml)を入れて130℃で加熱した。2時間後、KOH(20.5628g)を入れ、200℃で加熱した。3時間後に反応溶液を室温に戻し、水を入れ、有機層をエーテルを用いて2回抽出した。その有機層を1N-HCl、飽和炭酸水素ナトリウム水、次いで水で2回、及び飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。得られた溶液をろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(27.6591g,黄色の固体)を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、2,7-ジ-n-ペンチルフルオレン(26.2137g,94%,白色の固体)を得た。mp:98.9-99.6℃;1H-NMR(500MHz, CDCl3, TMS) δ:7.63 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.33 (s, 2H), 7.16 (d, J=8.0Hz, 2H), 3.83 (s,2H), 2.67-2.64 (m, 4H),1.68-1.62 (m, 4H), 1.53-1.33 (m, 8H), 0.91-0.88 (m, 6H);13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:143.33, 141.24, 139.43, 126.91, 124.80, 119.23, 36.70, 36.12, 31.56, 31.51, 22.59, 14.06; IR (KBr):2953, 2925, 2870, 2855, 1467, 1420, 2397, 864, 811 cm-1; HRMS (EI) Calcd for C23H30:306.2348, Found:306.2339; Anal. Calcd for C23H30: C, 90.13; H, 9.87. Found: C, 90.40; H, 10.0.
【0059】
フレームドライし、窒素置換を行った1リットルの3ツ口フラスコに、2,7-ジ-n-ペンチルフルオレン(5.0407g,16.4727mmol)、トルエン(280ml)、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(7.4ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した。その反応混合溶液にn-BuLiのヘキサン溶液(1.6M,31ml)を10分かけて滴下し、その温度で5分間攪拌した。その溶液にパラフォルムアルデヒド(1.5844g)、及びトルエン(20ml)を入れ、0℃で80分間攪拌した。その反応混合溶液を水でクエンチし、酢酸エチルを用いて有機層を2回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した後ろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(8.5301g, 黄色の液体)を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)により精製し、9-ヒドロキシメチル-2,7-ジ-n-ペンチルフルオレン(3.1360g,57%,肌色の固体)を得た。mp:61.3-63.7; 1H-NMR (500MHz, CDCl3, TMS) δ:7.62 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.39 (s, 2H), 7.19 (d, J=8.0Hz, 2H),4.05 (s, 3H), 2.68-2.65 (m, 4H), 1.69-1.63 (m, 4H), 1.51(br s, 1H), 1.36-1.33 (m, 8H), 0.91-0.89 (m, 6H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:144.36, 141.69, 139.25, 127.74, 124.62, 119.45, 65.29, 50.15, 36.16, 31.61, 31.48, 22.56, 14.06; IR (KBr):3311, 2926, 2855, 1467, 1418, 1062, 023,896,809,732 cm-1; HRMS (EI) Calcd for C24H32O:336.2453. Found:336.2446.
【0060】
還流管付きの200mlナスフラスコに9-ヒドロキシメチル-2,7-ジ-n-ペンチルフルオレン(1.6210g,4.8171mmol)、MeOH(30ml)、及びTHF(230ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した。その反応混合溶液にt-BuOK(1.6330g)をその温度で入れ、還流温度で5分間攪拌した。次いで反応混合溶液に水を入れてクエンチし、ヘキサンを用いて有機層を2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。その溶液をセライトろ過した後減圧下で濃縮し、粗生成物(1.5743g,黄色の液体)を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、2,7-ジ-n-ペンチルジベンゾフルベン(1.4020g,91%,黄色の液体)を得た。尚、この化合物は、溶媒の無いオイル状態で室温で放置すると重合を開始してしまうため、すばやく抽出してカラムクロマトで精製し、重合に用いた。1H-NMR (500MHz, CDCl3, CHCl3)δ:7.56 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.54(s,2H),7.19 (d, J=8.0Hz, 2H), 6.05 (s, 2H), 2.71-2.68 (m,4H),1.72-1.66 (m, 4H), 1.39-1.37 (m, 8H), 0.95-0.92 (m, 6H). 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:143.66, 141.59, 138.28, 138.06, 128.98, 120.90, 119.17, 106.81, 36.16, 31.54, 31.40, 22.57, 14.04; IR (neat) 2929, 2855, 1465, 1376, 1298, 889, 817, 754cm-1; HRMS (EI) Calcd for C24H30:318.2348. Found:318.2363.
【0061】
<2,7-ジ-n-ペンチルジベンゾフルベンの重合による可溶性π-スタックポリマーの合成>
フレームドライした後窒素置換したアンプルに、2,7-ジ-n-ペンチルジベンゾフルベンの乾燥ヘキサン溶液(0.97M,1.65ml,1.60mmol)を入れ、減圧下でヘキサンを留去した。乾燥THF(2.6ml)を入れてモノマーを溶解し、溶液を-78℃に冷却した。n-BuLiのヘキサン溶液 (1.6M,0.1ml)を入れて重合を開始し、24時間重合させた。反応混合溶液を-78℃に保ったままMeOH(0.2ml)を加え、重合を停止させた。反応混合物の一部をCDCl3で希釈して1H-NMR測定を行い、内部標準としての溶媒のピークの吸収と残存モノマーのビニルプロトンの吸収の強度比から、モノマーの転化率を決定した(モノマー転化率:>99%)。反応混合溶液から溶媒を留去して得られた粗生成物をTHFに溶解した後MeOHで再沈殿させ、MeOH不溶部(320.8mg, 62%)を得た。MeOH不溶部:分子量、Mn=3100, Mw /Mn =1.24 (GPC, vs. ポリスチレン);吸収スペクトル,ε= 12751 (282nm),ε= 12701 (274 nm), 淡色化率 55% (274 nm) [THF, 25] [参考データ(モノマー単位モデル、2,7-ジ-n-ペンチルフルオレン):ε= 20436 (282 nm),ε= 28315 (274nm) [THF, r.t.]];発光スペクトル, λmax= 404nm,) [λEx.= 282nm, THF, r.t.] ] [参考データ(モノマー単位モデル、2,7-ジ-n-ペンチルフルオレン):λmax=315nm][Ex.= 282nm, THF, r.t.]。溶解性:トルエン、クロロホルム、THFに溶解。
【0062】
実施例8(側鎖に置換基のあるポリマー2).
フレームドライした後窒素置換を行った滴下漏斗付き1リットル三ツ口フラスコに、2,7-ジブロモフルオレン(25.1251g,77.5442mmol)、NiCl2dppp(4.2480g)及びEt2O(300ml)を入れ、0℃で15分間攪拌した。その反応混合溶液に3-メチルプロピルマグネシウムブロミドのEt2O溶液(1.53M,302ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した後、室温で40時間攪拌した。その反応混合溶液を2リットルの氷入りマイヤーにゆっくりと注ぎ入れてクエンチし、酢酸エチルを用いて2回抽出し、その有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥した。その溶液をセライトろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(22.3459g,茶色の固体)を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で濾過し(17.2926g)、それをEtOH可溶分(16.9854g)及び不溶分(0.3072g)に分けた。EtOH可溶分をEtOHから再結晶し2,7-ジ(2-メチルプロピル)フルオレン(5.6111g,26%,うす黄色の固体)を得た。mp:76.0-77.5; 1H-NMR (500MHz, CDCl3,CHCl3) δ:7.65 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.31 (s, 2H), 7.13 (d, J=8.0Hz, 2H), 3.84 (s,2H), 2.54 (t, J=7.0Hz, 4H), 1.87-1.95 (m, 2H), 0.93 (d, J=7.0Hz, 12H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:143.18, 139.99, 139.47, 127.62, 125.69, 119.07, 45.62, 36.70, 30.48, 22.41; IR (KBr):2950, 2922, 2866, 1465, 839, 800, 745, 703cm-1; HRMS (EI) Calcd for C21H26:278.2034. Found:278.2029.
【0063】
フレームドライし、窒素置換を行った2リットルの2ツ口フラスコに、2,7-ジ(2-メチルプロピル)フルオレン(10.0194g,35.9853mmol)、トルエン(600ml)、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(16.3ml)を入れ、0℃で15分間攪拌した。その反応混合溶液にn-BuLiのヘキサン溶液(1.6M,68ml)を入れ、さらに5分間攪拌した。次いでその溶液にパラフォルムアルデヒド(3.3552g)を入れ、0℃で70分攪拌した後水を加えてクエンチし、酢酸エチルを用いて有機層を2回抽出した。その有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した後ろ過し、減圧下で濃縮して粗生成物(25.1026g,黄色の液体)を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製し、目的生成物9-ヒドロキシメチル-2,7-ジ(2-メチルプロピル)フルオレン(6.3921g,58%,白色の固体)を得た。mp:104.6-105.4; 1H-NMR (500MHz, CDCl3,CHCl3) δ:7.63 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.63 (s, 2H), 7.16 (d, J=8.0Hz, 2H), 4.07-4.04 (m,3H), 2.55 (d, J=7.0Hz, 4H), 1.94-1.86 (m, 2H), 1.50-1.48 (m, 1H), 0.94-0.92 (m, 12H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:144.25, 140.44, 139.30, 128.48, 125.34, 119.30, 65.35, 50.16, 45.63, 30.46, 22.42, 22.38; IR (KBr):3347, 2952, 2922, 1467, 1059, 1025, 887, 838, 791, 636cm-1; HRMS (EI) Calcd for C22H28O:308.2140. Found:308.2139.
【0064】
還流管付きの200mlナスフラスコに9-ヒドロキシメチル-2,7-ジ(2-メチルプロピル)フルオレン(4.0273g,13.0563mmol)、MeOH(50ml)、及びTHF(50ml)を入れ、0℃で10分間攪拌した。その反応混合溶液にt-BuOK(4.4273g)をその温度で入れ、還流温度で10分間攪拌した後水を入れてクエンチし、ヘキサンを用いて2回有機層を抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、MgSO4で乾燥した。次いで溶液をろ過した後、減圧下で濃縮して粗生成物(3.7852g,黄色の固体)を得た。該粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により精製し、2,7-ジ(2-メチルプロピル)ジベンゾフルベン(3.5023g,92%,薄黄色の固体)を得た。mp:71.9-73.7; 1H-NMR (500MHz, CDCl3,CHCl3) δ:7.54 (d, J=8.0Hz, 2H), 7.49 (s, 2H), 7.14 (d, J=8.0Hz, 2H), 6.02 (s,2H), 2.54 (d, J=7.0Hz, 4H), 1.96-1.88 (m, 2H), 0.94 (d, J=7.0Hz, 12H); 13C-NMR (125MHz, CDCl3) δ:143.68, 140.39, 138.17, 138.11, 129.71, 121.58, 119.03, 106.81, 45.65, 30.42, 22.38; IR (KBr):2947, 1463, 1427, 896, 833, 801, 754, 667cm-1; HRMS (EI) Calcd for C22H26:290.2034. Found:290.2028.
【0065】
<2,7-ジ-イソブチルジベンゾフルベンの重合による可溶性π-スタックポリマーの合成>
フレームドライした後窒素置換したアンプル管中で、2,7-ジ-イソブチルベンゾフルベン(233mg,0.80mmol) を乾燥トルエン(1.3ml)に溶解した。溶液を-78℃に冷却した後n-BuLi(1.6M,0.05ml)を加えて重合を開始させ、-78℃で24時間重合させた。反応混合溶液を-78℃に保ったまま、MeOH(0.2ml)を加えて重合を停止した。反応混合物の一部をCDCl3で希釈して1H-NMR測定を行い、内部標準としての溶媒のピークの吸収と残存モノマーのビニルプロトンの吸収の強度比からモノマーの転化率を決定した(モノマー転化率:>99%)。反応混合溶液から溶媒を留去して得られた粗生成物をTHFに溶解した後MeOHで再沈殿させ、MeOH不溶部(210.7mg,89%)を得た。MeOH不溶部:分子量、Mn=3150,Mw/Mn=1.17(GPC, vs. polystyrene);吸収スペクトル,ε= 11486 (294nm), ε= 10813 (274 nm), 淡色化率 64% (264 nm) [THF, 25] [参考データ(モノマー単位モデル、2,7-ジイソブチルフルオレン):ε= 7075 (294 nm),ε= 30021 (274nm) [THF, r.t.]];発光スペクトル,λmax= 405nm,) [λEx.= 294nm, THF, r.t.] ] [参考データ(モノマー単位モデル、2,7-ジイソブチルフルオレン):λmax=315nm][Ex.= 294nm, THF, r.t.]。溶解性:トルエン、クロロホルム、THFに溶解。
【0066】
実施例9(エネルギー移動).
<開始末端に1-ピレニルオキシ基を有するポリジベンゾフルベンの合成>
フレームドライし、乾燥窒素置換したアンプルにTHF(0.97ml)を入れ、-78℃で1-ピレニルメトキシカリウムTHF溶液(0.4M,2.5ml)を加え、さらに、DBF THF溶液(0.654M,1.53ml)を滴下して重合を開始させた。1-ピレニルメトキシカリウム THF溶液は、フレームドライした後乾燥窒素で置換したアンプルに、1-ピレニルメタノール(464.6mg,2.0mmol)及び水素化カリウム(81.3mg,2.0mmol)を入れ、更にTHF(4.5ml)を加えて10分間室温で放置することにより調製した。反応混合物をCDCl3に入れて1H NMRを測定し、溶媒を内部標準としてモノマーの転化率を求めた(モノマー転化率:24時間後、>99%)。-78℃で24時間重合させた後、反応混合物にメタノール(1.0 ml)を加えて重合を停止させた。反応混合物に約50mlのTHFを加え、THF可溶分(313mg、開始剤の残りを差し引くと60mg,27%)、及び不溶分(164mg,73%)に分け、THF可溶分を分取GPCで精製し、開始末端に1-ピレニルメトキシ基を有するポリジベンゾフルベンを得た(GPC[Mn=1522, Mw/Mn=1.06]; 1H NMRの末端基定量[Mn=3066])。
【0067】
<エネルギー移動効率の測定>
開始末端に1-ピレニルメトキシ基を有するポリジベンゾフルベンの蛍光スペクトル(THF中、10分間窒素バブリング、室温、励起光287nm,濃度7.50M)には、ピレニル基のみに由来する発光が見られ、その蛍光収率ΦFLは0.43であった(標準試料:9,10-ジフェニルアントラセン(ΦFL=0.90))。励起方法によらず蛍光収率の値が変化しないことおよび開始末端に1-ピレニルメトキシ基を有するポリジベンゾフルベンの末端のピレニル基の蛍光収率が1-ピレニルメタノールのそれ(ΦFL=0.49、ポリジベンゾフルベンと同様の方法で測定)と一致すると仮定し、エネルギー移動効率ΦETを求めた(ΦET=0.86)。
【0068】
実施例10(導電性:可溶性オリゴマーの飛行時間測定測定).
重合度2〜20程度の混合物(主成分は2量体−5量体)をCH2Cl2溶液とし、これに2,4,7-トリニトロフオレンマロノニトリル1%を加えて溶解した後、溶液をITOガラス基板上にキャストして乾燥し、薄膜(1μm厚)を作製した。この薄膜上にアルミニウムを真空蒸着した(厚さ1000A、面積5mm×5mm)。TOF301(株式会社オプテル製)を用いて、ITO-アルミニウム間に5.0Vの電圧を印可し、同時にITO側から337nmのパルスレーザ光(窒素レーザ、パルス幅1ns,150μJ)を照射して飛行時間測定を行なった。室温での測定結果より、ホール移動度を1.02×10-4cm2V-1sec-1と決定した。
【0069】
実施例11(導電性:電気抵抗測定).
重合度20程度以上の溶媒に不溶のポリマーと、2,4,7-トリニトロフオレンマロノニトリル(TNFMN)とを乳鉢を用いて練り合わせ、その後テーブルプレスを用いて厚さ約0.2mmの膜状に圧縮成型した。これをガラス板上にエポキシ接着剤を用いて固定した後、幅5mmで厚さ1000Aのアルミニウム電極を90μmの電極間距離で蒸着し、暗所で100kHz、10mVの交流電圧を印可して電気伝導度を測定した。その結果TNFMNのドープ量が0.1%のとき4.29×10-6S/cm、TNFMNのドープ量が1%のとき1.13×10-5S/cmとの値が得られた。また、電気抵抗は非オーム抵抗型であり、5-7vの間に閾値が観測され、半導体の性質を有することが明らかになった。
【0070】
実施例12(単結晶構造解析:π-スタック構造の証明).
<開始末端にメチル基、停止末端にエチル基を有するジベンゾフルベン6量体の合成、単離、単結晶作成、構造解析>
フレームドライし、乾燥窒素置換したアンプルにTHF(33.1ml)を入れ、-78℃でメチルリチウムTHF溶液(1.0M,2ml)を加えた後、さらに、DBFのTHF溶液(0.67M、14.9ml)を滴下して重合を開始させた。反応混合物をCDCl3に入れて1H NMRを測定し、溶媒を内部標準としてモノマーの転化率を求めた(モノマー転化率:48時間後で84%)。-78℃で48時間重合をさせた後、反応混合物にヨウ化エタン(2.0ml、25mmol)を加えて重合を停止させた。反応混合物に約50mlのTHFを加え、THF可溶部(758mg、98%)と不溶部(15mg,2%)に分け、THF可溶部をリサイクル分取GPCで分離し、6量体を得た(MALDI-Massによる質量数M/z=1135.25,計算値1136.46)。1H NMRから6量体はメチル基及びエチル基を1つずつ持つフルオレンユニットを6つ有することが判明した。これを、クロロホルムから再結晶することにより1mm×1mm×1mmの無色透明な単結晶を得た(結晶セル定数a=10.4024A;b=19.7052 A;c=29.916 A;b=92.6521°:空間群P21/n:R=0.097,Rw=0.145)。結晶解析の結果、芳香環の面間隔が0.37-0.46nmであることが明らかになった(図3参照)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る高分子化合物エキシマー発光を利用して、レーザー発光材料や、電界発光材料として応用することが可能である。特に、青色〜紫外にかけてエキシマー発光させることも可能であるので、その産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1図は実施例で得られた高分子化合物の光吸収スヘ゜クトルである。図において、Aはフルオレンを測定した場合、Bはフルオレンの2量体を測定した場合であり、Cはフルオレンの3量体〜17量体のTHF溶液を測定した場合である。
【図2】第2図は実施例で得られた高分子化合物の蛍光スペクトルである。
【図3】第3図はDBF6量体の単結晶構造を表す図である。

Claims (4)

  1. 下記構造式1で表される、側鎖にCとH及び/又はC、H、Xからなる芳香族性を有する環状部分を含む官能基を有すると共に数平均分子量が250〜1,000,000の高分子化合物であって、前記芳香族性を有する環状部分に起因するモル吸光係数が、前記芳香族性を有する環状部分を導入する為に用いられた重合性単量体における該芳香族性を有する環状部分に起因するモル吸光係数より30%以上小さいことを特徴とするレーザー発光材料;但し、Arは芳香環、R1及びR2は置換基、R5及びR6は水素原子、アルキル基、芳香族基、-CN及びエステル基の中から選択される基、Xはなし、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C(=O)-、及びヘテロ原子の中から選択される何れかであり、mは2以上の整数である。
    構造式1
  2. 更に、電子受容性化合物又は電子供与性化合物を添加してなる請求項1に記載されたレーザー発光材料。
  3. 下記構造式1で表される、側鎖にCとH及び/又はC、H、Xからなる芳香族性を有する環状部分を含む官能基を有すると共に数平均分子量が250〜1,000,000の高分子化合物であって、前記芳香族性を有する環状部分に起因するモル吸光係数が、前記芳香族性を有する環状部分を導入する為に用いられた重合性単量体における該芳香族性を有する環状部分に起因するモル吸光係数より30%以上小さいことを特徴とする電界発光材料;但し、Arは芳香環、R1及びR2は置換基、R5及びR6は水素原子、アルキル基、芳香族基、-CN及びエステル基の中から選択される基、Xはなし、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C(=O)-、及びヘテロ原子の中から選択される何れかであり、mは2以上の整数である。
    構造式1
  4. 更に、電子受容性化合物又は電子供与性化合物を添加してなる請求項3に記載された電界発光材料。
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