JP3890223B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、耐すきま腐食性および熱間加工性に優れた排煙脱硫装置用オーステナイト系ステンレス鋼および海水用オーステナイト系ステンレス鋼の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼は、その良好な耐食性から様々な分野で利用されているが、塩素イオンが多く存在する環境下、たとえば海水中や排煙脱硫装置内で用いられる場合には、孔食やすきま腐食等極めて有害な腐食が生じ易く、汎用ステンレス鋼であるSUS304やSUS316等を使用するには大きな制約があった。そこで、CrやMo含有量を増加させたり、Nを添加したりして耐食性を向上させる試みがなされてきており、たとえば特開昭52−95524号に代表されるように、Mo含有量が6.0%を超えるオーステナイト系ステンレス鋼が開発されてきた。しかしながら、Cr、Moの含有量が増加すると、ステンレス鋼の製造過程である鋳造時にσ相やχ相といった金属間化合物が析出し易くなる。その結果、局所的なCr、Moの欠乏により耐食性が劣化したり、熱間圧延の加熱時に金属間化合物が消失しきれず、熱間圧延工程で熱延材の端部で厚さ方向へ二つに割れる二枚割れが生じる等、熱間加工性が低下することがあった。
【0003】
σ相等の金属間化合物の析出を回避するために、たとえば特開昭57−28740に開示されているように、Nの添加量を増加することも提案されているが、Nの含有量を多くすると熱間での変形抵抗が上昇し、熱間圧延が不可能になることもある。そこで、たとえば特開昭62−192530で開示されているように、σ相等の金属間化合物が生じるような合金組成でも熱間圧延の前後で均熱処理を施すことにより、析出物を材質や耐食性に影響を与えることの少ない形態にすることが提案されている。しかしながら、均熱処理を行うと当然ながら製造コストが割高となり、実用化の大きな障害となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、σ相等の金属間化合物の析出を抑制し、これにより、優れた熱間加工性を有するとともに高濃度の塩素イオン環境において耐すきま腐食性に優れ、しかも製造コストの増加を回避することができる排煙脱硫装置用オーステナイト系ステンレス鋼および海水用オーステナイト系ステンレス鋼を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オーステナイト系ステンレス鋼の耐すきま腐食性と金属間化合物の析出程度を観察しながら詳細な成分の検討を行った。その結果、まず、海水用あるいは排煙脱硫装置用としての使用に耐えうるには、少なくとも60゜C以上の環境で耐食性を有する必要があることが判った。そして、Cr、MoおよびNは、耐すきま腐食性を向上させる元素であって、耐食性への寄与の程度から各元素がほぼ等価となるように重み付けした総量は「Cr+3.3Mo+20N(但し、Cr、Mo、Nは各成分元素の含有量(質量%))」であり、上記環境で耐食性を有するには、この総量が51以上必要であることを見い出した。
【0006】
ただし、前述のように、CrおよびMoの含有量が増加すると、金属間化合物の析出が助長される。そこで、本発明者等は、SiおよびMnの含有量を通常のレベルに対して極力低くすることを考えた。すなわち、CrおよびMoは、Feと結合して金属間化合物を生成するが、その生成を助長するのがSiおよびMnである。そして、その生成を助長する程度から各元素がほぼ等価となるように重み付けした総量は「5Si+Mn」であり、この総量が「32−(Cr+Mo)(但し、Cr、Mo、Si、Mnは各成分元素の含有量(質量%))」よりも小さければ、凝固時の金属間化合物の析出が抑制され、二枚割れ等の熱間加工性の劣化が生じ難くなることが判った。すなわち、Cr、Moの含有量増加による金属間化合物の析出は、Si、Mnの存在によって著しく助長されるが、逆に、Si、Mnの含有量を大幅に低減することで、比較的高Cr、高Mo含有鋼でも金属間化合物の析出が抑制されるという新たな知見を得たのである。
【0007】
本発明の排煙脱硫装置用オーステナイト系ステンレス鋼および海水用オーステナイト系ステンレス鋼は、以上のような知見に基づいてなされたもので、C:0.05質量%以下、Si:0.25質量%以下、Mn:0.40質量%以下、P:0.040質量%以下、S:0.003質量%以下、30.0質量%≦Ni≦40.0質量%、20.0質量%≦Cr≦26.0質量%、5.0質量%≦Mo≦8.0質量%、Al:0.1質量%以下、0.001質量%≦B≦0.010質量%、0.15質量%≦N≦0.30質量%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、下記(1)、(2)式を満足することを特徴としている。
【0008】
【数6】
Cr+3.3Mo+20N≧51 (1)
【数7】
5Si+Mn<32−(Cr+Mo) (2)
(式中Cr、Mo、N、Si、Mnは各成分元素の含有量(質量%)を示す)
【0009】
以下、上記数値限定の根拠を本発明の作用とともに説明する。
C:Cは耐食性を低下させる元素であるので少ない方が望ましいが、極端に低減させることは製造コストの増加を招く。Cの含有量は0.05質量%までは許容できるのでこの値を上限値とした。
Si:Siは前述の通りσ相やχ相などの金属間化合物の析出を抑制する上で極力低減させる必要のある元素であり、そのためには0.25%以下にする必要がある。望ましくは0.20%以下、より望ましくは0.10%以下が良い。
Mn:Mnも同様にσ相やχ相などの金属間化合物の析出を抑制する上で極力低減させる必要のある元素であり、そのためには0.40%以下にする必要がある。望ましくは0.30%以下、より望ましくは0.20%以下が良い。
【0010】
P:Pは不純物として不可避的に混入する元素であり、結晶粒界に偏析し易く耐食性および熱間加工性の観点からは少ない方が望ましい。しかしながら、Pの含有量を極端に低減させることは製造コストの増加を招く。Pの含有量は0.040質量%までは許容できるのでこの値を上限値とした。ただし、望ましくは0.030質量%以下が良い。
S:SはPと同様に不純物として不可避的に混入する元素であり、結晶粒界に偏析し易く耐食性および熱間加工性の観点からは少ない方が望ましい。特に、0.003質量%を超えて含有するとその有害性が顕著に現れるので、含有量を0.003質量%以下とした。ただし、望ましくは0.02質量%以下が良い。
Ni:Niはσ相やχ相などの金属間化合物の析出を抑制する上で有効な元素であり、その含有量が30.0質量%を下回るとδフェライトの生成、さらには金属間化合物の析出を助長する。一方、40.0質量%を上回ると、熱間加工性の劣化や熱間変形抵抗の増大を招く。よって、Niの含有量は30.0質量%〜40.0質量%とした。
【0011】
Cr:Crは耐すきま腐食性を向上させるのに有効な元素であり、その効果を得るためには20.0質量%以上含有する必要がある。しかしながら、26.0質量%を超えて含有するとσ相やχ相などの金属間化合物が残存し、かえって耐すきま腐食性を劣化させるので、20.0質量%〜26.0質量%とした。なお、Crの含有量は22.0質量%以上であることが好ましく、23.0質量%以上であればさらに好ましい。
Mo:Moも耐すきま腐食性を向上させるのに有効な元素であり、その効果を得るためには5.0質量%以上含有する必要がある。しかしながら、8.0質量%を超えて含有すると、SiおよびMnの含有量を低くした効果が減殺されて金属間化合物の析出を抑制することができなくなるので、5.0質量%〜8.0質量%とした。なお、Moの含有量は6.0質量%以上であることが好ましく、7.0質量%以上であればさらに好ましい。
【0012】
Al:Alは強力な脱酸剤であり、同様に脱酸機能を有するSi、Mnの含有量を少なくした本発明では積極的に添加する必要があるが、0.10質量%を超えて含有させると金属間化合物の析出を助長させるので、その含有量を0.10質量%以下とした。
B:Bは熱間加工性の向上に極めて有効であるが、0.001質量%以下ではその効果が少なく、0.010質量%を上回ると逆に加工性が劣化する。よって、Bの含有量は0.001質量%〜0.010質量%とした。
【0013】
N:NはCr、Moと同様に耐すきま腐食性を向上させるとともに、金属間化合物の析出を抑制する有効な元素であり、その効果を得るためには、0.15質量%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.30質量%を超えて含有すると、熱間変形抵抗が極めて上昇して熱間加工性を阻害するので、Nの含有量は0.15質量%〜0.30質量%とした。
【0014】
このように、上記成分組成を有するオーステナイト系ステンレス鋼は、σ相等の金属間化合物の析出を抑制して優れた熱間加工性を有し、しかも、高濃度の塩素イオン環境で優れた耐すきま腐食性を示す。さらに、金属間化合物を無害化するための均熱処理などを必要としないので、低コストで製造することができる等優れた効果を得ることができる。
【0015】
ここで、前述のように、SiおよびMnに重み付けした総量(5Si+Mn)も金属間化合物の生成を抑制する重要なファクターである。本発明者等は、種々の実験の結果、総量(5Si+Mn)が1.3質量%以下のときに金属間化合物の析出を確実に抑制できるという知見を得た。よって、総量(5Si+Mn)は1.3質量%以下にすることが望ましい。
【0016】
また、CrおよびMoの総量(Cr+Mo)も耐すきま腐食性を向上させるためには無視できないファクターである。本発明者等は、種々の実験の結果、CrおよびMoの総量が29質量%以上のときに耐すきま腐食性が非常に安定するとともに、32質量%以下のときに金属間化合物の析出率が極めて低くなることを見い出した。よって、CrおよびMoの総量は29質量%〜32質量%であることが望ましい。
【0017】
さらに、本発明では、上記成分に加えて0.01質量%≦Cu≦1.0質量%、0.01質量%≦W≦1.0質量%、0.01質量%≦Co≦1.0質量%の1種または2種以上を含有することができる。これら元素は、一般的な耐食性の向上に有効であるが、その効果を得るためには0.01質量%以上含有させる必要がある。一方、1.0質量%を超えて含有すると熱間加工性を阻害するので、それぞれの含有量を0.01質量%〜1.0質量%とした。
【0018】
【発明の実施の形態】
A.第1実施例
次に、この発明の実施の形態について説明する。まず、大気溶解炉によってNi約35質量%、N約0.2質量%を含む12種類の供試材を5Kgづつ溶製し、これに鍛造、冷間圧延および溶体化処理を施して厚さ2mmの冷延板を作製した。次いで、2mm冷延板から採取した試験片を両面からテフロン製円柱で挟み込み、種々の温度の6%FeCl3+1/20NHCl水溶液中に24時間浸漬して、すきま腐食が生じない臨界温度を測定した。
【0019】
この試験で用いた溶液は塩素イオン濃度が約41,000ppmであり、海水の塩素イオン濃度よりも高い。また、酸化剤としてFe3+イオンを含むので、溶液の酸化還元電位が著しく上昇し、海水中での電位よりも高くなる。したがって、本試験溶液ですきま腐食試験を行ってすきま腐食が発生しなければ、海水中でも当該試験温度ですきま腐食は生じないと推認することができる。
表1に供試材である鋼1〜鋼12の成分組成と臨界すきま腐食発生温度を示した。また、Cr、MoおよびNに重み付けした総量(Cr+3.3Mo+20N)
を表1に併記し、この総量と臨界すきま腐食発生温度との関係を図1に示した。なお、図1において黒丸印に付した添字は鋼の番号を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
前述の通り、海水中や排煙脱硫装置内で良好な耐すきま腐食性を与えるためには、臨界すきま腐食発生温度は60゜C以上であることが求められるが、表1および図1から明らかなように、成分組成が本発明の範囲内である鋼4,7,8はいずれもこの要求を満足した。また、鋼11,12は、N以外の元素は本発明の範囲内であるため、臨界すきま腐食発生温度は60゜C以上を示した。ただし、鋼11,12はNの含有量が高い(本発明の上限値は0.3質量%)ため、熱間加工性が劣化することが予想される。
【0022】
また、図1から判るように、鋼9,10はCr、MoおよびNの総量が多いにもかかわらず臨界すきま腐食発生温度は50゜Cとなっている。これは、Crの含有量が本発明の範囲(上限は26質量%)を上回っているため、σ相等の金属間化合物が析出して耐すきま腐食性が低下したためである。このように、鋼9,10を除外すれば、臨界すきま腐食発生温度を60゜C以上にするためには、Cr、MoおよびNの総量が51質量%以上であることが必要であり、本発明の数値限定の根拠を確認する結果となった。
【0023】
B.第2実施例
次に、表2に示す成分組成を有する合金を大気誘導炉によってNi約35質量%、N約0.2質量%を含む14種類の供試材を5Kgづつ鋳造した。この場合において、工業規模での鋳造では、一般に連続鋳造にてインゴットを製造するが、この場合と冷却速度が等しくなるように凝固条件を調整した。そして、5Kgの鋼塊の中心部に析出したσ相やχ相等の金属間化合物の析出率を求めた。なお、析出率は、顕微鏡で観察される視野を格子状に分割し、金属間化合物と重なり合う格子点の数を計数して全格子点数に対する割合から算出した。次いで、熱間圧延を行って熱延板後端部に二枚割れが生じているか否かを確認し、析出率と二枚割れの有無を表2に併記した。また、SiおよびMnに重み付けした総量(5Si+Mn)と、CrおよびMoの総量とを表2に併記し、それら総量をXY軸にとって各供試材(鋼13〜鋼26)の試験結果を図2にプロットした。なお、図2において黒丸印または×印に付した添字は鋼の番号を示す。
【0024】
【表2】
【0025】
表2から判るように、成分組成が本発明の範囲内である鋼13,16,20〜22および25,26では、金属間化合物の析出率がいずれも2%以下であり、しかも、二枚割れは一切発生しなかった。特に、鋼13,21,22,26では、CrおよびMoの含有量が多いにもかかわらず、Siが0.25%以下、Mnが0.40%以下とそれらの含有量が極めて少ないために、金属間化合物の析出が良好に抑制されることが判った。これに対して、成分組成が本発明の範囲外である他の鋼種では、金属間化合物の析出率が2%を上回り、しかも、全てに二枚割れが生じていた。特に、鋼18では、CrおよびMoの含有量がさほど多くないにもかかわらず析出率が2%を上回っているが、これは、Mnの含有量が0.55質量%であり本発明の上限値である0.4質量%を上回っているからである。
【0026】
次に、図2を参照してこの試験結果をさらに詳細に検討する。図2から、良好な結果を示した鋼種とそうでない鋼種は、図中斜めの破線で区画された下記式(2)で示される領域によって明確に峻別されていることが判る。
【数6】
5Si+Mn<32−(Cr+Mo) (2)
(式中Cr、Mo、N、Si、Mnは各成分元素の含有量(質量%)を示す)
【0027】
図2の斜めの破線よりも右側の領域のもの、つまり、上記式(2)を満たさない鋼14,15,17,19,24では、全て析出率が2%以上であり、しかも、二枚割れが生じていた。特に、鋼24では、CからAlまでの各成分元素単独の含有量は本発明の範囲内でありながら、Cr、Mo、N、Si、Mnが上記式(2)を満たさないために金属間化合物の析出が顕著となった。このように、この試験結果は上記式(2)をほぼ完全に裏打ちするものであり、本発明の数値限定の信憑性を確認するものとなった。
なお、鋼18,23は上記式(2)を満たしているが、鋼18はMn、鋼23はSiの含有量が本発明の上限値を上回っているため、金属間化合物の析出が顕著となった。
【0028】
次に、良好な結果が得られた本発明の鋼のうち、鋼20,25,26では、金属間化合物の析出率が1.0%前後であるが、それ以外のものでは、最高でも0.6とかなり低い値となっている。そして、これら鋼種は、図2から明らかなように、SiおよびMnの含有量を重み付けした総量(5Si+Mn)が1.3質量%を超えるか否かにより明確に峻別されている。すなわち、総量(5Si+Mn)が1.3質量%以下である場合には、この試験結果が示すように、金属間化合物の析出率が大幅に抑制されている。以上のように、この試験結果も本発明の数値限定の根拠を裏付けるものとなった。
【0029】
C.第3実施例
次に、表3に示す成分組成を有する合金を大気誘導炉により溶解し、10種類の10Kg鋼塊を作製した。この鋼塊を1200゜Cに1時間で昇温するように加熱し、昇温後直ちに熱間圧延して厚さ6mmの熱延板を作製した。さらに、熱延板を1150゜Cに30分間加熱後に水冷する溶体化処理を行い、厚さ2mmまで冷間圧延した後、1150゜Cにて1分間熱処理を行った。次いで、以下のような各種評価試験を行ない、その結果を表4に示した。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
〔1〕金属間化合物の析出程度:10Kgの鋼塊の中心部に析出したσ相やχ相等の金属間化合物の析出率を求めた。
〔2〕熱間加工性:熱間圧延後に熱延板後端部に二枚割れが生じているか否かを確認した。
〔3〕耐すきま腐食性:2mm冷延板から採取した試験片を両面からテフロン(登録商標)製円柱で挟み込み、種々の温度の6%FeCl3+1/20NHCl水溶液中に24時間浸漬してすきま腐食が生じない臨界温度を測定した。
【0033】
表4から明らかなように、成分組成が本発明の範囲である鋼27〜32では、鋼塊の金属間化合物析出率がいずれも2%以下で熱延板の二枚割れも生じなかった。また、臨界すきま腐食発生温度はいずれも60゜C以上であり、良好な熱間加工性と耐すきま腐食性を示した。特に、この実施例の本発明鋼では、耐すきま腐食性が全て70゜C以上で安定していることは勿論のこと、金属間化合物の析出率が最高でも0.3%で2%を大きく下回っている。これは、SiおよびMnの総量が1.3質量%以下であること、CrおよびMoの総量が29質量%〜32質量%以下であること、加えてCu、WおよびCoの含有量が0.01質量%〜1.0質量%であることの相乗効果であると推察される。
【0034】
一方、比較鋼である鋼33〜35では、SiおよびMnの総量が多い(具体的には「5Si+Mn<32−(Cr+Mo)」を満たさない)ために、金属間化合物の析出率が高く、かつ、全てに二枚割れが生じていた。また、鋼36では、SiおよびMnの総量が少ないために金属間化合物の析出も二枚割れの発生も生じなかったが、「Cr+3.3Mo+20N」が51質量%未満であるため、臨界すきま腐食発生温度がわずか40゜Cであった。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の排煙脱硫装置用オーステナイト系ステンレス鋼および海水用オーステナイト系ステンレス鋼では、Cr、MoおよびNの総量に独自の重み付けをして所定以上とし、しかも、SiおよびMnの含有量を少なく設定しているから、σ相等の金属間化合物の析出を抑制し、これにより、優れた熱間加工性を有するとともに高濃度の塩素イオン環境において耐すきま腐食性に優れ、しかも製造コストの増加を回避することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Cr、MoおよびNの総量と臨界すきま腐食発生温度の関係を示す線図である。
【図2】 CrおよびMoの総量を横軸、SiおよびMnの総量を縦軸にして各供試材をプロットした線図である。
Claims (4)
- 0.01質量%≦Cu≦1.0質量%、0.01質量%≦W≦1.0質量%、0.01質量%≦Co≦1.0質量%のうち1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
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