JP4775910B2 - 耐高温塩害腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

耐高温塩害腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼 Download PDF

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Description

本発明は、自動車排ガス経路部材のフレキシブルチューブオーステナイト系ステンレス鋼であって、特に融雪塩を道路に散布する地域で問題となる、NaCl、KCl、CaCl2などの塩化物塩による高温塩害腐食に対する腐食抵抗を高めたオーステナイト系ステンレス鋼に関するものである。
自動車排ガス経路部材のフレキシブルチューブに要求される特性としては、高温強度、耐高温酸化性、耐酸化スケール剥離性、加工性および溶接性などの基本的材料特性に加え、融雪塩を散布した道路上での使用を考慮すると、NaCl、KCl、CaCl2などの塩化物塩に対する耐高温塩害腐食性に優れていることが重要である。さらに、運転停止時には凝縮水による湿食の問題もある。このような環境下で使用されるフレキシブルチューブ用素材として、一般的な耐熱用表面処理鋼板では耐久性が十分とは言えず、従来、SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼が用いられていた。
ところが、SUS304、SUS316L、SUS316Ti、SUS321、SUS310Sなどのオーステナイト系ステンレス鋼を用いたフレキシブルチューブといえども、路面凍結防止剤を散布する地域でしばらく使用すると短期間で著しい腐食が生じ、さらに長期の使用によってその腐食箇所あるいはその周辺で破損してしまう事例が多々見られ、問題となった。Siを含有したSUS302B、SUS315J1、SUSXM15J1などもフレキシブルチューブ用として比較的多く用いられてきたが、これらの鋼種でも耐久性は必ずしも十分とは言えない。
フレキシブルチューブ破損の主たる原因は「高温塩害腐食」である。これは、材料表面に付着した塩化物塩が、排ガスの熱で高温になった材料の粒界を侵食していくものである。他の原因として「湿食」が挙げられる。これは主に孔食によって侵食されるものである。また、これらの腐食を起点として、高温疲労割れや応力腐食割れに進展した事例もある。いずれにしても、このような破損を防止して耐久性のあるフレキシブルチューブを得るには、高温塩害腐食に対する耐久性を高めることが最も重要である。その上で、湿食に対する抵抗力を付与する必要がある。
一般に高Si、高Moを含むオーステナイト系ステンレス鋼は、耐高温塩害腐食性の改善に有効であることが知られている。しかし反面、高合金化によって熱間加工性が劣化するため、歩留り低下・表面性状劣化といった鋼板製造上の問題が生じ、また造管性や溶接施工性の低下といったフレキシブルチューブ製造上の問題も生じた。そこで、これらの問題を解決するために、本出願人は特許文献1として開示される鋼を開発した。この鋼は実際に自動車排ガス用のフレキシブルチューブに適用されている。以下、本明細書では特許文献1に開示の開発鋼を「既開発鋼」という。
既開発鋼は、Cr:14〜20%レベルのオーステナイト系ステンレス鋼において「Si+Mo≧3%」かつ「2.5Si+Mo≦11%」を満たすようにSiとMoを含有するものである。この鋼は、耐高温塩害腐食性が大幅に改善され、熱間加工性・溶接性も良好に維持されるものであり、その性能は、例えば米国カリフォルニア州で定められる自動車排ガス部材の保証期間「8〜12年12万マイル」をクリアするものである。
特許第2530231号公報 特開昭62−20856号公報
しかし近年、欧米を中心に環境問題から自動車の排ガス規制が厳しくなり、それに伴って自動車排ガス部材に要求される耐久性も一段と厳しいものとなってきた。例えば、上記カリフォルニア州の保証期間「8〜12年12万マイル」は、最長で「15年15万マイル」に強化されつつある。発明者らが種々調査したところ、上記の既開発鋼では、この「15年15万マイル」の保証を必ずしも余裕をもってクリアできない可能性があることが判明した。
これに対処する手段として、素材の厚肉化や、スフェリカルジョイントへの移行が考えられる。しかし、厚肉のフレキシブルチューブを採用するためにはフレキシブルチューブの全長を長くする必要があり、省スペース化や軽量化のニーズに逆行するので好ましくない。また、近年フレキシブルチューブに替わり採用されているスフェリカルジョイントに関しては、振動抑制特性と排ガスのシールド性に劣るため、排ガス規制対策として万全とは言えない。
このような背景から、昨今、上記の既開発鋼に対し、少なくとも1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上の耐高温塩害腐食性を有するフレキシブルチューブ用オーステナイト系ステンレス鋼の出現が強く望まれている。加えて、上記「15年15万マイル」の保証期間内での孔食による板厚貫通状の損傷を防止するには、常温での耐孔食性を既開発鋼と同等以上に保つ必要がある。
本発明は、このような要求に対応すべく、既開発鋼の耐高温塩害腐食性をさらに向上させるとともに、優れた耐孔食性を維持し、かつ熱間加工性や溶接性も良好なオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
発明者らは、既開発鋼をベースに、耐高温塩害腐食性を更に大幅に向上させる手法を種々検討してきた。その結果、既開発鋼をはじめとするCr含有量が14〜20%レベルの高耐食鋼において、耐高温塩害腐食性を既開発鋼の1.3〜1.5倍に向上させるには、SiとMoを合計約10質量%以上添加しなければならないことが明らかになった。このような多量のSi、Mo添加は、製造性を著しく劣化させ、工業的には無理があるとの結論に達した。すなわち、Moの過剰添加は加熱中のσ相生成による製造性劣化を招く。Siの過剰添加は、σ相の生成に加え、Null点温度の低下による熱間加工性劣化と溶接割れ感受性の増大を招く。特に、Si+Moの合計含有量が8質量%を超えると現実的に大量生産現場での製造が非常に難しくなることが判明した。
一方で、Crは耐高温塩害腐食性に悪影響を及ぼすことが確かめられた。そうすると、耐孔食性を犠牲にしてよいなら、単純にCrを14%未満に低減することで既開発鋼の耐高温塩害腐食性を改善することは可能である。しかし耐孔食性を低下させるわけにはいかない。そこで、Crが14%未満の領域において、既開発鋼並みの優れた耐孔食性を具備させることが可能かどうか、詳細に検討する必要があった。このCr領域で自動車排ガス部材のフレキシブルチューブに要求される耐孔食性を付与する手段は知られておらず、未だ検討の余地が残されていたのである。鋭意研究の結果、このCr領域で耐孔食性を付与するにはSiとMoの複合添加が有効であり、Cr≧22.5−5(Si+Mo)の式を満たすようSiとMoを含有させたとき、例えばCrが10%未満と通常のステンレス鋼よりも低い領域においても、十分な耐孔食性が確保されることがわかった。
また、Crを14%未満に低減したからといって、耐高温塩害腐食性を既開発鋼の少なくとも1.3倍以上に向上できるかどうかは不明であった。この点についても詳細に検討した。その結果、、Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25の式を満たすようにCr量に応じて適量のSiとMoを添加すれば、これが可能であることを突き止めた。
これらの知見に基づき、発明者らは、上記目的を達成し得る成分組成上の解が存在することを見出すに至った。
すなわち、上記目的は、質量%で、C:0.06%以下、Si:1〜6%、Mn:0.2〜5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:8〜14%未満、Ni:7〜15%、Mo:1〜5%、N:0.2%以下、B:0.0002〜0.01%、Al:0.01〜0.5%、Cu:2.5%以下(ただし0.5%以上の部分を除く)を含有しREMの1種以上:0(無添加)〜合計0.1%、Nb:0(無添加)〜1.0%、Ti:0(無添加)〜1.0%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)〜(3)式の関係を満たす耐高温塩害腐食性に優れた自動車排ガス経路部材のフレキシブルチューブ用オーステナイト系ステンレス鋼によって達成される。
Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25 ……(1)
Cr≧22.5−5(Si+Mo) ……(2)
Si+Mo≦8 ……(3)
ここで、REMは希土類元素であり、Sc、Yおよびランタノイド(La、Ce、Nd等)の各元素を意味する。
REM、Nb、Tiの下限を0%(無添加)としたのは、これらの元素はC、P、S、N等とは異なり、通常の製鋼プロセスにおいては添加しない限り含有量はゼロ(測定限界以下)となるので、無添加の場合を含む点を明確にするためである。
(1)〜(3)式の元素記号の箇所には、質量%で表された各元素の含有量の値が代入される。
また、本発明では、上記の鋼において、特に、REMの1種以上を合計で0.005〜0.1%含有するもの、Nb:0.01〜1.0%、Ti:0.01〜1.0%の1種または2種を含有するものを提供する
本発明によれば、従来、耐高温塩害腐食性に優れた鋼としてフレキシブルチューブに使用されている既開発鋼に対し、耐高温塩害腐食性を少なくとも1.3倍以上に向上させる手段、および1.5倍以上に向上させる手段を明らかにした。しかも、既開発鋼より低合金化することにより耐高温腐食性を顕著に向上させ、かつ耐孔食性を同等もしくはそれ以上に維持する解を見出したのであるから、本発明はフレキシブルチューブ用オーステナイト系ステンレス鋼の性能向上とコストダウンを一挙に達成するものである
本発明の鋼は、一般的なオーステナイト系ステンレス鋼と同様の方法で溶製することができる。その後、熱間圧延や冷間圧延を経て鋼板にし、これを造管した後、自動車排ガス経路部材のフレキシブルチューブに加工される。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
Cは、強力なオーステナイト生成元素であり、本発明では熱間加工性や造管性を確保するための組成バランス調整に有用である。また、侵入型元素として鋼中に固溶し高温強度を向上させる。しかし、0.06質量%を超えると材料の脆化や加工性低下を招く恐れがある。特に好ましいC含有量は0.03〜0.06質量%である。
Siは、本発明において重要な元素である。すなわち発明者らの研究の結果、SiはMoと複合添加することにより、Cr含有量が低い領域においてオーステナイト系ステンレス鋼の耐孔食性を大幅に改善できることがわかった。通常、汎用鋼種であるSUS304でもCrは17〜18質量%程度含有させ、これにより耐食性を確保している。しかし、Cr含有量を14質量%未満、あるいは特に10質量%未満に低減したオーステナイト系鋼においても、(2)式;Cr≧22.5−5(Si+Mo)、を満たすようにSiをMoと複合添加したとき、SUS304を上回り、既開発鋼と同等もしくはそれ以上の優れた耐孔食性が発揮されるのである。この場合、Siは、ステンレス鋼に特有の孔食型の腐食形態を全面腐食的にする作用を呈するものと考えられる。これにより、腐食は分散されて孔食深さが浅くなり、「成長性の孔食」の発生が減ることで孔食の成長が抑制される。
また、Siは耐高温塩害腐食と耐酸化性を改善する。この効果は、高温環境において、i)材料の表面付近で母相(ステンレス鋼マトリクス)中のSiが、母相とCr23皮膜の界面に安定なSiO2皮膜を形成させる、ii)Si自体が母相の粒界へ濃化する、という作用を呈することによると考えられる。この効果を十分に得るには1質量%以上、好ましくは2質量%以上のSi含有が必要である。ただし、多量のSiはσ相の析出を促進して靱性低下をきたし、また熱間加工性、溶接性、成形性を低下させるので、6質量%以下にする必要がある。4質量%以下にするのが一層好ましい。なお、本発明において十分な耐高温塩害腐食性を付与するためには、後述のように、(1)式;Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25、を満たすようにSiとMoを複合添加する必要がある。また、製造性を確保するためには(3)式;Si+Mo≦8、を満たす必要がある。
Mnは、溶接高温割れに有害なSをMnSとして固定し、溶着金属中のSを除去または減少させる。Mn量が低すぎるとMnSは粒界に層状に生成し、高温での粒界強度低下を助長する。Mn量の増加に伴いMnSは球状化し、粒界強度への影響が少なくなる。検討の結果、本発明では0.2質量%以上のMn量を確保する必要がある。一方、Mnが5質量%を超えてもその効果は向上しない。
PおよびSは、溶接高温割れに対して有害である。本発明では、Pは0.04質量%まで、Sは0.02質量%まで許容される。ただしSについては0.005質量%以下に低減することが望ましい。
Crは、ステンレス鋼の耐食性および耐高温酸化性を維持する上で重要な元素である。しかし、高温塩化物環境下ではCrの酸化皮膜は保護性を失い、優先的に塩化物を形成し、溶出または昇華するので、高温塩害腐食に対してはむしろ有害である。前述のように、本発明では既開発鋼より耐塩害腐食性を向上させることを前提としてCr含有量が14質量%未満のオーステナイト系ステンレス鋼を対象としている。ただし、単にCr量を低減するだけで既開発鋼の少なくとも1.3倍以上の耐高温塩害腐食性が確保できるとは限らない。それにはSiとMoの作用を利用する必要がある。詳細な検討の結果、(1)式;Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25、を満たすようにSiとMoを複合で適量添加することでそれが可能になることが確かめられた。
また、Crを減量することによる耐孔食性の低下も懸念されるところであったが、これは前述のように(2)式を満たすSiとMoの複合添加により解消できた。特に注目すべきは、10質量%未満といった低Cr領域でも、SUS304を上回り、既開発鋼と同等もしくはそれ以上の良好な耐孔食性が実現できたことである。ただし、Cr含有量は最低8質量%は確保しなければならない。これを下回ると急激に耐食性が低下する。
Niは、オーステナイト系ステンレス鋼の基本的元素の1つである。本発明では特に溶接高温割れ防止の点からδフェライトが適量生成するよう組成バランスを調整する必要があるので、Ni含有量の範囲を7〜15質量%とした。コスト低減の観点から、Ni含有量は12質量%未満、あるいは特に10質量%未満に規定することができる。
Moは、Siと同様、耐孔食性および耐高温塩害腐食性を向上させるために重要な元素である。また、Moにはオーステナイト系ステンレス鋼の高温強度を向上させる効果がある。
前述のように、Cr含有量が14質量%未満、特に10質量%未満の領域で十分な耐孔食性を発現させるために、本発明では(2)式;Cr≧22.5−5(Si+Mo)、を満たすようにMoをSiと複合で添加する。ここで、Moは不動態皮膜を強化する作用を呈することにより耐孔食性の改善に寄与していると考えられる。
また、十分な耐高温塩害腐食性を付与するためには(1)式;Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25、を満たすようにMoをSiと複合で添加する。
以上のMoの作用を得るには1質量%以上のMoが必要である。一方、Moは高価であり、また、多量に添加すると熱間加工性が劣化するとともに、σ相の生成を促し靱性の低下を招くので、5質量%以下、好ましくは4質量%以下に抑えることが望ましい。
Nは、高温強度および耐孔食性を向上させる。しかし、過度のN含有は耐高温酸化性、加工性および熱間加工性を低下させるので、本発明では0.2質量%以下の含有量とする。
Bは、結晶粒界強度を高め、熱間加工性や溶接高温割れ性を改善することが知られている。ところが、発明者らの研究によれば、Bは、後述のREM、Yとともに耐高温塩害腐食性を向上させる作用をも有することが明らかになった。この理由は明確ではないが、粒界に優先的に析出したBが何らかのメカニズムにより塩化物による粒界侵食をくい止めているものと推測される。この耐高温酸化性向上効果は0.0002質量%以上のB添加で有効に発揮される。ただし、B含有量が0.01質量%を超えるとBの化合物をつくり、粒界強度や熱間延性は逆に低下する。
REM(希土類元素)は、溶接高温割れに有害なSを凝固の初期過程において高融点化合物として固定し、割れ感受性を低下させる。ところが、これに加え、耐高温塩害腐食性を改善する作用をも呈することが発明者らの研究により明らかになった。この理由は明確ではないが、表層に生成するSi系酸化物の剥離抵抗を高め、密着性の優れた保護スケールが形成するためではないかと考えられる。この効果は、REMの1種以上を合計で0.005質量%以上添加することによって現れる。ただし、REMを多量に添加すると粒界にこれらの酸化物が大量に析出し、高温における粒界強度を低下させ、高温割れ感受性を増大させるので、REMを添加する場合は0.01質量%以下の範囲で行う。
Alは、脱酸剤として働くとともに、高温腐食環境では表層に濃化してAl23皮膜を生成し、耐高温酸化性を改善する。これらの作用を十分に得るには0.01質量%以上の含有量となるように添加することが望ましい。ただし、Alは強力なフェライト生成元素であり、組成バランスおよび製造性を考慮すると、Alの添加は0.5質量%以下の範囲で行う必要がある。
Cuは、ステンレス鋼の耐酸性および耐応力腐食割れ性を大幅に改善する。しかし、多量に添加すると結晶粒界に偏析して熱間加工性の低下を招く。Cuの添加は2.5質量%以下の範囲(ただし0.5質量%以上の部分を除く)で行う。
Nb、Tiは、C、Nと結合して微細な析出物を形成し、耐食性のみならず高温強度、とりわけクリープ強度の改善に有効である。Nb、Tiともそれぞれ0.01質量%以上の添加で明確な効果を現す。これらの元素は1種を単独で添加してもよいし、2種を複合添加してもよい。ただし、いずれも添加量が多くなると加工性・靱性を劣化させるので、これらの元素を添加する場合はそれぞれ1.0質量%以下の範囲で行う。特に好ましい含有量範囲は、いずれも0.05〜0.4質量%である。
Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25 ……(1)
この式は、既開発鋼の少なくとも1.3倍以上の耐高温塩害腐食性を確保するためのSi、Moの含有量範囲を規定するものである。ただし、Crは14質量%未満に低減していることが前提である。
Cr≧22.5−5(Si+Mo) ……(2)
この式は、Crが14質量%未満と少ない場合に、オーステナイト系鋼の耐孔食性を既開発鋼と同等もしくはそれ以上に高めるためのSi、Moの含有量範囲を規定するものである。
Si+Mo≦8 ……(3)
この式は、工業的生産において、十分な製造性を確保するためのSi、Moの含有量範囲を規定するものである。
表1および表2に示す鋼を真空溶解し、30kgの鋼塊を作製した。表1中、A1〜A3はCr量を変化させたもの、A4〜A11はA1をベースにNb、Ti、V、REM、B、Cu、Caを添加または増量したもの、A12〜A15はSiおよびMo量を変化させたものである。表2中、B1〜B6はCr、Si、Moのいずれかが本発明規定範囲を外れるか(1)〜(3)式の規定を外れるもの、B7はSUS304、B8はSUS316L、B9はSUSXM15J1、B10は特許文献1の発明に係る既開発鋼である。
Figure 0004775910
Figure 0004775910
各鋼塊の柱状晶部から30mm厚さのサンプルを切り出し、これを1200℃に加熱して熱間圧延し、板厚5mmの熱延板とした。その後、通常の冷間圧延、焼鈍を経て板厚2mmの冷延焼鈍板を得た。なお、比較鋼B5、B6は熱間圧延時に耳切れが全長にわたって発生したので、冷延焼鈍板の作製を行わずに実験を中止した。得られた冷延焼鈍板を用いて、耐高温塩害腐食試験、および耐孔食性試験を実施した。
耐高温塩害腐食試験は、25×35mm、全面#400研磨仕上の試験片を用いて、「20℃飽和食塩水溶液中に5分間浸漬 → 大気中650℃×2時間加熱 → 室温で5分間空冷」を1サイクルとする処理を10サイクル繰り返した後、試験片表面のスケールを除去し、腐食減量を測定する方法で行った。B10鋼(既開発鋼)の耐高温塩害腐食性の1.3倍の性能に相当する腐食減量;20mg/cm2、および同1.5倍の性能に相当する腐食減量;17.5mg/cm2を基準とし、
◎:B10鋼の1.5倍以上の耐高温塩害腐食性を有するもの、
○:B10鋼の1.3倍以上1.5倍未満の耐高温塩害腐食性を有するもの、
×:B10鋼の1.3倍未満の耐高温塩害腐食性を有するもの、
として評価した。
耐孔食性試験はCCT試験により行った。すなわち、50×100mm、試験面#500乾式研磨仕上の試験片を用い、「5%NaCl水溶液を15分間噴霧 → 60℃、湿度35%で1時間保持 → 50℃、湿度95%で3時間保持」のサイクルを300サイクル繰り返した後、試験片端面より10mm以上内側に発生した食孔の最深10点の平均深さを求める方法で行った。B10鋼(既開発鋼)と同等の耐孔食性に相当する最深10点平均深さ;40μmを基準とし、
○:B10鋼と同等もしくはそれ以上の耐孔食性を有するもの、
×:B10鋼より耐孔食性に劣るもの、
として評価した。
これらの結果を表3に示す。
Figure 0004775910
A1〜A15はCr、Si、Moの適正添加により、耐高温塩害腐食性は既開発鋼の少なくとも1.3倍以上、耐孔食性は既開発鋼と同等もしくはそれ以上を有していた。特に、Bを含有するA2、A3、A7〜A15の耐高温塩害腐食性は既開発鋼の1.5倍以上であった。これに対し、比較鋼であるB1、B2、B8(SUS316L)、B9(SUSXM15J1)、B10(既開発鋼)はCr含有量が本発明規定より多く、耐高温塩害腐食性は目標レベルに達しなかった。B3、B7(SUS304)はMoの添加量が本発明規定より少なく、耐高温塩害腐食性、耐孔食性とも目標レベルを下回った。B4は少ないCr含有量を補完するMoの添加量が不足し、耐孔食性に劣った。
図1には、表1のA1、A4〜A10について、B+REM量と耐高温塩害腐食試験の腐食減量の関係をプロットした。これらはいずれもB10鋼の1.3倍以上の耐高温塩害腐食性を呈するものであるが、Bを0.0002質量%以上添加した鋼、およびREMを0.005質量%以上添加した鋼は特にB10鋼の1.5倍以上の耐高温塩害腐食性を示す。Nb、Ti、V、Cu、Caは高温塩害腐食に悪影響を及ぼしていない。
図2は、表1、表2の鋼(B5、B6を除く)について、耐高温塩害腐食性、耐孔食性および熱間加工性に及ぼす、Si+Mo量およびCr量の影響をプロットしたものである。図中にはCr:8〜14%で前記(1)〜(3)式を満たす領域をハッチングを付して示してある。なお、A1、A4〜A11はいずれもSi+Mo:約7%、Cr:約12%であるため、同一プロットとした。前記(1)〜(3)式を満たす鋼のみ、耐高温塩害腐食性、耐孔食性、熱間加工性とも良好であることがわかる。
耐高温塩害腐食試験の腐食減量に及ぼすB+REM量の影響を示すグラフである。 オーステナイト系ステンレス鋼について、耐高温塩害腐食性、耐孔食性および熱間加工性に及ぼす、Si+Mo量およびCr量の影響を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.06%以下、Si:1〜6%、Mn:0.2〜5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:8〜14%未満、Ni:7〜15%、Mo:1〜5%、N:0.2%以下、B:0.0002〜0.01%、Al:0.01〜0.5%、Cu:2.5%以下(ただし0.5%以上の部分を除く)を含有しREMの1種以上:0(無添加)〜合計0.1%、Nb:0(無添加)〜1.0%、Ti:0(無添加)〜1.0%であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)〜(3)式の関係を満たす耐高温塩害腐食性に優れた自動車排ガス経路部材のフレキシブルチューブ用オーステナイト系ステンレス鋼。
    Cr≦3/7(Si+Mo)+11.25 ……(1)
    Cr≧22.5−5(Si+Mo) ……(2)
    Si+Mo≦8 ……(3)
  2. REMの1種以上を合計で0.005〜0.1%含有する請求項1に記載の鋼。
  3. Nb:0.01〜1.0%、Ti:0.01〜1.0%の1種または2種を含有する請求項1に記載の鋼。
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