JP3889876B2 - 連鋳ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は製鉄用連続鋳造装置の鋳片のガイドロール、連鋳ロール(ロールとのみ記す)の耐亀裂性構造に関する技術である。
【0002】
【従来の技術】
製鉄における連続鋳造装置の一例を図1に示す、この場合、鋳型内で半凝固状態となり表面層のみが凝固し、内部は未凝固の状態である鋳片は、二次冷却帯でスプレー状の水を吹き付けられ内部の凝固が促進される。
この際、鋳片は溶鋼の静圧、冷却による熱応力等のため変形するが、ガイド機構として多数のロールが配置されている。ロールは同一円弧上に配置される場合が多く、このロール上で鋳片の凝固、矯正引き抜きが行われる。
従ってロールは、高温の鋳片と接触し、その後、冷却水により冷却されるという加熱・冷却サイクルを受ける。この加熱・冷却の繰り返しと鋳片から加えられる機械的負荷(曲げなど)により、ロール表面に亀裂が発生し、ロール中心に向け進展して折損に至ることもある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このクラックのために、通常、折損時期を見込んだロール使用周期を定め、定期的に、あるいは、定修の都度クラック深さを測定し状態管理のもとでロールはある期間使用の後交換される。これは、連続鋳造装置のメンテナンスコストの大半を占め、経済的に大きな問題となっている。
【0004】
クラックは、図2に示す様に、ロールの円周方向にほぼ並行して発生し、表面から内部に向かって進展することで、接触面積を順次減少させ、ついには、構造的に曲げやせん断応力に耐えられず折損に至るという挙動を示す。クラックは軸方向断面で見るとほぼ直線的に進展している。
【0005】
従来より技術的な課題としては、このクラックの発生を抑制すること、またはクラックを分散させ、進展の開始時期を遅らせることにあった。一例として、特開昭53−51136号公報、特開昭63−47337号公報の様な溶接肉盛材料に合金を採用しかつ表面にクラック分散を目的とした熱処理をほどこしたり、特開昭59−14101号公報の様に、硬質なNi合金を薄く被覆し、さらなるクラックの分散を狙ったものもある。
また一方で、特開平9−192808号公報に見られる様に、クラックの要因である熱負荷を低減すべく、冷却水路を工夫し表層を冷却するといった方法もある。
【0006】
しかしながら、これらの対策によってもクラックは発生し、進展する現象は起きており、その程度を減少させてはいるものの、尚、一層の改善が望まれている。従って、本発明は前記問題点を解決し、長寿命の連鋳ロールを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の様に、クラックの発生・進展は、ロール材質や冷却構造、ロール表面形状といった改善によっても、程度の差はあれ、必ず発生し害をなすものである。本発明では、クラックの進展により害が発生しない、ある程度の深さで、完全にクラックをストップさせ、ロール折損をなくし、ロールの交換周期を大幅に延長させるものである。
【0008】
一般に、構造体(橋脚や機械のフレームなど)において、クラックが発生した場所の補修を行う際に、それ以上のクラック進展を阻止するため、クラック先端にクラックの進展を阻止するに十分な曲率をもった孔加工を施すことが知られている(ストップホール)。あるいは、クラックが浅い場合には、クラックの周辺を切削してかつ、除去したクラック先端位置にクラックの進展を阻止するに十分な曲率を与えた形状に整えるといったことも知られている(ラウンドオフ)。
【0009】
さて、連鋳ロールについて考えてみると、クラックの発生した時点でこれらの方法(ストップホール、ラウンドオフ)をとることは、その時点でロールの取り外し、交換を余儀なくされるため、ロール交換周期の延長といった経済的な問題には、無意味である。クラックの進展を防止しロールの交換周期を延長させるためには、クラックの進展を阻止するに充分な曲率をもつ形状を予めロール構造内に付与させることが必要になる。
【0010】
本発明では、クラック先端においてクラックの進展を阻止すべく、クラック進展方向に充分な曲率をもった形状の粒子を、ロール断面で見て、ロール表面からある深さの位置に同心円状に配置させ、クラック進展阻止に充分な曲率を有する、見かけ上の空孔を異材質粒子により、予め配置させていることが特徴である。
【0011】
クラック進展を阻止するに充分な曲率の考え方として、破壊力学でいう亀裂進展、亀裂進展速度に関する研究結果を適用したり、あるいは、一般に機器の設計に用いられる切り欠き率、応力集中率の適用が挙げられる。
ここでは、簡単のために、応力集中率を適用した場合の考え方を一例として示す。クラック進展方向(ロール中心方向)の先端部曲率半径ρは、粒子が配置された深さdplにおける機械的応力と、粒子を囲むマトリクス金属の許容応力により定まる許容応力集中率αa によって決まるとすると、2次元平面応力場を想定した場合、以下の関係式で概ね踏襲される。(式1、式2)
α=3(dc /2ρ)1/2 −1+4/(2+(dc /2ρ)1/2 )…(1式)
dc :クラックのロール表面からの進展深さ
ρ :クラック進展方向の粒子先端部曲率半径
α :応力集中率
α≦αa …(2式)
αa :粒子の配置深さdplにおいて許容できる応力集中率
【0012】
さて、この粒子の材質は、先に述べたように、クラックの直進を防止し、仮想の空孔を成す必要があることから、粒子を囲むマトリクス金属とは大きく異なった機械的性質(硬さ、強度、靱性)である必要があり、かつ、粒子とマトリクス金属の密着強度が、マトリクス金属自身及び粒子材質自身の強度よりも弱いことが要求される。
【0013】
仮に、粒子がマトリクス金属に近い材質である場合には、製造方法にもよるが、通常の肉盛溶接などの一般的な方法では粒子とマトリクス金属の密着が良くなってしまい、また、機械的特性も類似しているためクラックは直進して粒子内を貫通し、より中心側のマトリクス金属に伝播され、当初の狙いを果たし得ないことになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図3に本発明における具体的な実施形態を示す。ここでも、前述した例のように、応力集中率を適用した考え方で解説する。まず、クラック進展を阻止する、同心円状の層の表面からの深さdplを定める。これは、ロールが折損しない程の断面積が維持できる深さよりも浅くする必要がある。
【0015】
次に、クラック進展方向(ロール中心方向)における粒子先端部の曲率半径を求める。クラック進展を阻止するに充分な曲率の考え方として、破壊力学でいう亀裂進展、亀裂進展速度に関する研究結果を適用したり、あるいは、一般に機器の設計に用いられる切り欠き率、応力集中率の適用が挙げられるが、ここでは、簡単のために、一例として、応力集中率を用いた考え方で解説する。
【0016】
粒子層深さdplまでクラックが進展してきた場合を想定すると、前記の式1ではdc =dplとなる。この時、1式により、粒子の先端部曲率半径ρとの関係から応力集中率αが求まる。仮に、dc =dpl=65mmとすると、1式は図4のような関係にある。
【0017】
一方、マトリクス金属材料の設計上の許容応力を仮に40kgf/mm2 とし、かつ、ロールにかかる熱負荷、曲げ負荷の複合した負荷が、この層レベルにおいて最大12kgf/mm2 発生したとすると、この深さdplにおいて許容できる応力集中率はαa =3.3である。
よって、粒子の先端部曲率半径ρは、式2の関係α≦αa からα≦3.3を満たすρの値とすれば良い。ちなみに、図4からdc =65mmの場合で見るとρ>30mmとなる。
この時、クラック進展方向の粒子の先端部曲率半径ρを満たす形状としては、球や円筒など(図3の実施例a、b,c)といった形状が例として挙げられる。この形状は、クラック進展方向に曲率を有するならば、いかなる形状でもよい。
【0018】
次に、粒子の材質であるが、一例として、炭化物粒子(WC:タングステンカーバイドなど)とステンレス溶接肉盛材の組み合わせが挙げられる。炭化物粒子は硬く、かつ溶接時にも溶解することがない。母材(一般には鋳造品、円筒形状)の表面に溶接肉盛で径を増していき成形する途中、dplの位置で炭化物粒子を供給しながら溶接肉盛を施し、さらに、また、粒子を含まない溶接肉盛による層を形成して最終径寸法に至らせる。このように製作することで粒子形状を保ったまま必要な深さで粒子を層状、かつ同心円状に施工出来る。炭化物粒子とステンレス肉盛材との機械的特性の相違及び、2材質間の合金化特性により、マトリクスを直進伝播してきたクラックは、粒子とマトリクス境界の密着強度が粒子自体及びマトリクス金属自体の強度より弱いことから、粒子を貫通せずに方向を変え、粒子周辺に沿って進展し、ついには、空孔を形成し粒子先端曲率半径による応力集中の緩和によって、クラックの進展が防止できる。
【0019】
これら粒子の配置については、不規則なクラックの発生を考慮すると、隣接して2層以上配置することが望ましく、クラックが粒子を通らず中心方向に進展することが無いようにすべきである。
【0020】
【実施例】
本発明の効果として、図5に示すようなシミュレーション評価を行った例を示す。表層8mmにdplを設定し、粒子先端曲率半径を3mmとした炭化物粒子を配置した。この場合、α=3.8となる。
【0021】
図6に、αa =4となる様に、マトリクス金属材質及び曲げ応力、加熱温度を設定し、所用の加熱温度に達するまで360°回転毎に同位置で停止させる試験を実施した結果を示す。
【0022】
従来のような、クラックの進展を阻止する様な機構を持たない構造では、クラックが進展し続けるのに対して、本発明の構造では、規定したdplの深さよりクラックは進展していない。これによりロール交換周期を大幅に延長し、クラック進展による交換理由を無くし、大幅な連鋳ロールの長寿命化を達成した。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造設備概要の説明図。
【図2】連続鋳造ロールに発生するクラック形態の説明図。
【図3】本発明の構成を説明する図。
【図4】粒子曲率の考え方を解説する図。
【図5】本発明の効果評価した試験装置の説明図。
【図6】本発明の効果を示す試験結果の図。
Claims (4)
- クラック進展方向に曲率をもつ粒子を、ロール断面で見て、ロール表面からある深さ(dpl)の位置に同心円状に配置するとともに、前記粒子の材質の機械的特性と前記粒子を取り囲むマトリクス金属の機械的特性が異なるようにしたことを特徴とする連鋳ロール。
- クラック進展方向に曲率をもつ粒子を、ロール断面で見て、ロール表面からある深さ(dpl)の位置に同心円状に配置するとともに、前記粒子とマトリクス金属との境界の密着強度がマトリクス金属自体及び粒子材料自体の強度よりも弱くした請求項1記載の連鋳ロール。
- クラック進展方向に曲率をもつ粒子の、曲率をクラックが進展しえない曲率以上とした請求項1または2記載の連鋳ロール。
- クラック進展方向に曲率をもつ粒子が、ロール断面で見て2層以上の複数の列で同心円状に配置し、ロール表面のいかなる点から発生したクラックも、必ず粒子を通過するように配置した請求項1〜3いずれかに記載の連鋳ロール。
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JP07100198A JP3889876B2 (ja) | 1998-03-19 | 1998-03-19 | 連鋳ロール |
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-
1998
- 1998-03-19 JP JP07100198A patent/JP3889876B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11267807A (ja) | 1999-10-05 |
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