JP3888300B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等に搭載される自動変速機の油圧を制御する油圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用自動変速機では、前進用クラッチを係合させるために一定の油圧(クラッチ圧)が同クラッチに供給されるが、近年では、このクラッチ圧を可変制御することが考えられている。こういった制御は、例えば、シフトレバーが「N」ポジション、「P」ポジション等の非走行位置から、「D」ポジション等の走行位置へ操作された場合等において、アキュムレータ等の油圧緩衝装置を用いることなく、前進用クラッチを滑らかに係合させる場合に行われる。この制御は前進用クラッチの係合過渡制御(ガレージシフト制御)とも呼ばれる。
【0003】
そして、このガレージシフト制御中以外、例えばシフトレバーが「D」ポジション等の走行位置へ操作された場合には、モジュレータバルブ等の調圧バルブによって調圧された一定の第1油圧(モジュレータ油圧PM)がマニュアルバルブを介して前進用クラッチに供給されて、その前進用クラッチが係合される。また、シフトレバーが「P」ポジション、「N」ポジション等の非走行位置へ操作された場合には、前進用クラッチ内の作動油はマニュアルバルブからドレンされて、同クラッチが解放される。一方、ガレージシフト制御中には、リニアソレノイドバルブ等の調圧バルブによってモジュレータ油圧PMよりも低く調圧された可変の第2油圧(ガレージシフト油圧PG)が前進用クラッチに供給されて、その前進用クラッチが滑らかに係合される。
【0004】
さらに、前進用クラッチに供給される油圧(モジュレータ油圧PM及びガレージシフト油圧PG)は、切替えバルブ(ガレージシフトバルブ)によって切替えられる。このガレージシフトバルブでは、2種類のソレノイドバルブによる信号圧(油圧)がスプールに加えられる。そして、両ソレノイドバルブによる両信号圧に応じてスプールが軸方向へ移動し、前進用クラッチへの供給油圧が、モジュレータ油圧PMからガレージシフト油圧PGに、又はその逆に切替えられる。
【0005】
なお、本発明にかかる先行技術文献としては、以下の特許文献1及び特許文献2が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−180322号公報
【特許文献2】
特開平1−307552号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、シフトレバーが非走行位置から走行位置へ操作されてガレージシフト制御が開始された場合、作動油の粘性が大きくなる低温状態では、ガレージシフトバルブの切替えについての応答遅れが大きくなる。本来ならばガレージシフト油圧PGが供給されるところ、この応答遅れによりガレージシフト油圧PGよりも高いモジュレータ油圧PMが一時的に前進用クラッチに供給される。この供給により前進用クラッチが一時的に係合状態となって、ショックが発生するおそれがある。
【0008】
こういった問題は、シフト位置の非切替え時と切替え時とで切替えバルブ等の油圧切替え手段の出力油圧(第1油圧及び第2油圧)を異ならせるようにした自動変速機であれば、前記と同様にして起こり得る。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、低温状態下でガレージシフトバルブ等の油圧切替え手段の応答遅れが大きくなっても、クラッチ等の油圧サーボの作動に伴うショック発生を抑制することのできる自動変速機の油圧制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明では、第1油圧又は第2油圧が供給される自動変速機の油圧サーボと、前記油圧サーボへの油圧供給路に設けられ、前記第1油圧及び前記第2油圧を出力油圧とし、かつその出力油圧を切替え可能に構成した油圧切替え手段と、前記自動変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、前記シフト位置検出手段によるシフト位置の非切替え時には前記出力油圧が前記第1油圧となり、シフト位置の切替え時には前記出力油圧が前記第2油圧となるように前記油圧切替え手段を制御する切替え制御手段とを備える自動変速機の油圧制御装置であって、前記自動変速機の作動油の温度状態を検出する温度状態検出手段と、前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出され、かつ前記温度状態検出手段により低温状態が検出されたときには、前記切替え制御手段による前記油圧切替え手段の出力油圧を前記第2油圧に変更する油圧変更手段とを備え、前記切替え制御手段は、通電の状況に応じて前記油圧切替え手段を作動させるアクチュエータを備えており、前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出され、かつ前記温度状態検出手段により非低温状態が検出されたときには、前記アクチュエータに対する通電を停止し、前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出され、かつ前記温度状態検出手段により低温状態が検出されたときには、前記アクチュエータに通電するものであるとしている。
【0011】
上記の構成によれば、シフト位置検出手段の検出結果に基づく切替え制御手段の制御によって、油圧切替え手段の出力油圧が切替えられる。すなわち、基本的には、シフト位置の非切替え時には出力油圧が第1油圧となり、切替え時には出力油圧が第2油圧となるように油圧切替え手段が制御される。
【0012】
ところが、シフト位置が非走行位置にあることがシフト位置検出手段によって検出され、かつ作動油が低温状態であることが温度状態検出手段によって検出されると、油圧切替え手段の出力油圧が、前述したシフト位置の非切替え時とは異なる出力油圧に変更される。この場合には、本来(非低温状態)ならば第1油圧が出力されるところ第2油圧が出力される。換言すると、非走行位置から走行位置へのシフト位置の切替えに先立ち、第2油圧が油圧切替え手段から出力される。
【0013】
従って、低温状態のもと作動油の粘性が大きくなって油圧切替え手段の切替え時の応答遅れが非低温状態時よりも大きくなっても、シフト操作によってシフト位置が非走行位置から走行位置へ切替えられるときには、第2油圧が油圧サーボに供給されることとなる。その結果、低温状態下での油圧切替え手段の応答遅れに起因して第1油圧が油圧サーボに供給されることが抑えられ、油圧サーボの急激な作動に伴うショックの発生が抑制される。
【0015】
更に、上記の構成によれば、シフト位置が非走行位置にあり、かつ作動油が低温状態でないときにはアクチュエータに通電されず、油圧切替え手段は第1油圧を出力する。また、シフト位置が非走行位置にあり、かつ作動油が低温状態にあるときにはアクチュエータに通電され、油圧切替え手段は第2油圧を出力する。このように、シフト位置が非走行位置にある状況下では、作動油の温度状態に応じてアクチュエータに対する通電が行われたり、その通電が停止されたりする。
【0016】
ここで、通常、一定の時間において、作動油が非低温状態となる時間は低温状態となる時間に比して長い。従って、多くの時間にわたりアクチュエータに対する通電が停止され、作動油が低温状態となったときにのみ一時的にアクチュエータに通電されることとなり、電力消費が効果的に抑制される。
【0017】
請求項に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記第2油圧を調整する調圧バルブと、前記調圧バルブを作動させて前記第2油圧を変化させる第2油圧制御手段とをさらに備えるとする。
【0018】
上記の構成によれば、第2油圧制御手段によって調圧バルブが作動させられると、第2油圧が変化する。従って、シフト位置の切替えに伴い油圧サーボに供給される第2油圧を第2油圧制御手段によって可変制御することで、一定圧が供給された場合とは異なる態様で油圧サーボを作動させることが可能となる。例えば、シフト位置が非走行位置から走行位置へ切替えられた場合に、第2油圧制御手段によって第2油圧を徐々に変化させると、油圧サーボを滑らかに作動させることが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動変速機の油圧制御装置を具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。
【0020】
図1は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に横置きに搭載された駆動装置11の概略構成を示している。駆動装置11は、走行用の駆動力源としてエンジン(E/G)12を備えている。エンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ13、動力伝達機構としての前後進切替え装置14、ベルト式の無段変速機構(CVT)15及び減速歯車16を介して差動歯車装置17に伝達され、左右の駆動輪18R,18Lへ分配される。
【0021】
トルクコンバータ13は、エンジン12のクランク軸19に連結されたポンプ翼車13p、及びタービン軸21を介して前後進切替え装置14に連結されたタービン翼車13tを備えており、流体を介して動力伝達を行う。ポンプ翼車13p及びタービン翼車13tの間にはロックアップクラッチ22が設けられている。ロックアップクラッチ22の係合又は解放は、係合側油室及び解放側油室に対する油圧の供給が、油圧制御回路25(図2参照)によって切替えられることにより行われる。そして、ポンプ翼車13p及びタービン翼車13tは、ロックアップクラッチ22が完全係合させられることによって一体回転させられる。ポンプ翼車13pには機械式のオイルポンプ23が設けられている。このオイルポンプ23は、無段変速機構15を変速制御したりベルト挟圧力を発生させたり、或いは各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する。
【0022】
前後進切替え装置14は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されている。この前後進切替え装置14では、トルクコンバータ13のタービン軸21がサンギヤ14sに一体的に連結され、無段変速機構15の入力軸24がキャリヤ14cに一体的に連結されている。一方、前後進切替え装置14では、キャリヤ14c及びサンギヤ14sは、油圧サーボとしての前進用クラッチC1を介して選択的に連結される。また、リングギヤ14rは後進用ブレーキB1を介してハウジングに選択的に固定される。前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、いずれも油圧(クラッチ圧)で作動するピストンによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。前進用クラッチC1に供給される油圧としては、第1油圧としてのモジュレータ油圧PM(一定圧)と、第2油圧としてのガレージシフト油圧PG(可変圧)とがある。これらのモジュレータ油圧PM及びガレージシフト油圧PGについては後で詳述する。なお、ピストンは、前進用クラッチC1の解放時にリターンスプリングによって押し戻される。
【0023】
そして、前後進切替え装置14は、前進用クラッチC1が係合され、かつ後進用ブレーキB1が解放されることにより、前進走行用の駆動状態となって一体回転させられる。この一体回転に伴い、前進方向の駆動力が無段変速機構15側へ伝達される。一方、前後進切替え装置14は、後進用ブレーキB1が係合され、かつ前進用クラッチC1が解放されることにより、後進走行用の駆動状態となる。この状態では、入力軸24がタービン軸21に対して逆方向へ回転させられ、後進方向の駆動力が無段変速機構15側へ伝達される。また、前後進切替え装置14は、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1がともに解放されると、動力伝達を遮断する遮断状態(ニュートラル)になる。
【0024】
前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1の係合・解放は、油圧制御回路25のマニュアルバルブ26(図2参照)がシフトレバー27の操作に従って機械的に切替えられることにより行われる。マニュアルバルブ26はシフトレバー27にリンク等によって連結されており、シフトレバー27の動きに応じて変位して油路の切替えを行う。シフトレバー27は、駐車用の「P」ポジション、後進走行用の「R」ポジション、動力伝達を遮断する「N」ポジション、前進走行用の「D」ポジション及び「L」ポジションへ操作される。
【0025】
シフトレバー27が「P」ポジション及び「N」ポジションに操作された場合、前進用クラッチC1内の作動油、及び後進用ブレーキB1内の作動油がいずれもマニュアルバルブ26からドレンされる。このドレンにより前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1がともに解放される。
【0026】
シフトレバー27が「R」ポジションに操作された場合、モジュレータバルブ28によってモジュレータ油圧PMに調圧された作動油が、マニュアルバルブ26から後進用ブレーキB1に供給される一方、前進用クラッチC1内の作動油がマニュアルバルブ26からドレンされる。その結果、後進用ブレーキB1が係合され、前進用クラッチC1が解放される。
【0027】
シフトレバー27が「D」ポジション及び「L」ポジションに操作された場合、モジュレータ油圧PMに調圧された作動油がマニュアルバルブ26から前進用クラッチC1に供給されるとともに、後進用ブレーキB1内の作動油がマニュアルバルブ26からドレンされる。その結果、前進用クラッチC1が係合され、後進用ブレーキB1が解放される。
【0028】
図1に示すように、無段変速機構15は、入力軸24に設けられた入力側可変プーリ31と、出力軸32に設けられた出力側可変プーリ33と、各可変プーリ31,33の断面略V字状の溝(V溝)31a,33aに巻き掛けられた伝動ベルト34とを備えている。そして、無段変速機構15では、各可変プーリ31,33と伝動ベルト34との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。各可変プーリ31,33は、V溝31a,33aの幅を調整するための油圧シリンダを備えている。
【0029】
入力側可変プーリ31では、油圧シリンダに供給或いはそれから排出される作動油の流量が油圧制御回路25によって調整される。この調整により、V溝31a,33aの幅が変化し、伝動ベルト34の掛かり径(巻き掛け半径)、すなわち有効径が変更され、変速比(=入力軸回転速度/出力軸回転速度)が連続的に変化させられる。このように、入力側可変プーリ31はV溝31a,33aの幅(有効径)を可変に構成されている。
【0030】
また、出力側可変プーリ33では、伝動ベルト34を挟み込む力(挟圧力)が油圧シリンダ内の油圧に応じて変化する。この挟圧力は、伝動ベルト34の張力に対応している。油圧は、油圧制御回路25によって伝動ベルト34が滑りを生じないように調圧される。
【0031】
図2は、油圧制御回路25のうち前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1の係合・解放制御に関する部分を示しており、前述したマニュアルバルブ26、モジュレータバルブ28のほかに、ガレージシフトコントロールバルブ35及びガレージシフトバルブ36を備えている。ガレージシフトコントロールバルブ35は、ガレージシフト油圧PGを調整する調圧弁として用いられており、スプール35aと、そのスプール35aを軸方向の一方(図2の下方)へ付勢するスプリング35bとを備えている。ガレージシフトコントロールバルブ35は、後述する電子制御装置45によってデューティ制御されるリニアソレノイドバルブSLTの出力油圧をパイロット圧として、モジュレータ油圧PMを連続的に調圧制御することにより、同油圧PMよりも低いガレージシフト油圧PGを出力する。このガレージシフト油圧PGがガレージシフトバルブ36及びマニュアルバルブ26を経て前進用クラッチC1へ供給されることにより、その前進用クラッチC1の係合過渡油圧等が制御される。なお、リニアソレノイドバルブSLT及び電子制御装置45は、ガレージシフトコントロールバルブ35を作動させてガレージシフト油圧PGを変化させる第2油圧制御手段を構成している。
【0032】
ガレージシフトバルブ36は、前述したモジュレータ油圧PM又はガレージシフト油圧PGを出力油圧とし、かつそれらの出力油圧を切替えるための油圧切替え手段として用いられている。ガレージシフトバルブ36は、スプール36aと、そのスプール36aを軸方向の一方(図2の上方)へ付勢するスプリング36bとを備えている。スプール36aに加えられる力としては、スプリング36bの付勢力以外にも、ソレノイドバルブSLによる信号圧と、ソレノイドバルブDSUによる信号圧とがある。前者の信号圧はスプリング36bの付勢力に抗する油圧であり、後者の信号圧はスプリング36bの付勢力と同一方向の油圧である。ソレノイドバルブSL,DSUは、通電の状況に応じて自身の信号圧を変化させて、ガレージシフトバルブ36の出力油圧を切替えるアクチュエータとして用いられている。これらのソレノイドバルブSL,DSUとしては、通電の有無により信号圧が最大又は最小となるものを用いてもよいし、通電量に応じて信号圧が可変となるものを用いてもよい。いずれのタイプでも、各信号圧は通電が停止されたときに最小値となる。また、各信号圧は、前者のタイプでは通電されたとき、また後者のタイプでは通電量が最大となるときに最大値となる。なお、以下の説明では、各信号圧が最大となるときの通電の状態を、単に「通電」と表現するが、この状態には、通電量が最大の場合も含むものとする。
【0033】
ソレノイドバルブSLは、シフトレバー27が「N」ポジション、「P」ポジション等の非走行位置から「D」ポジション等の走行位置へ操作されるガレージシフト時に通電(ON)されて、その信号圧が最大となる。このとき、ソレノイドバルブDSUには通電されず、その信号圧が最小となる。そして、ソレノイドバルブSL及びソレノイドバルブDSUの各信号圧により、ガレージシフトバルブ36は、図2の左半分に示すようにスプール36aが押下げられた状態(ON状態)となる。このON状態では、ガレージシフトバルブ36は、ガレージシフトコントロールバルブ35から出力されるガレージシフト油圧PGを出力する。ガレージシフト油圧PGは、前述したようにリニアソレノイドバルブSLTの出力油圧に応じて調圧される。
【0034】
一方、ガレージシフト以外のとき、基本的には、ソレノイドバルブSL,DSUへの通電が停止(OFF)されて信号圧が最小となる。これらの信号圧により、ガレージシフトバルブ36は、図2の右半分に示すようにスプール36aが押上げられた状態(OFF状態)に保持される。このOFF状態では、ガレージシフトバルブ36はモジュレータバルブ28から直接供給されたモジュレータ油圧PMをそのまま出力する。このモジュレータ油圧PMにより前進用クラッチC1は係合状態になる。
【0035】
上記リニアソレノイドバルブSLT及びガレージシフトコントロールバルブ35は、前進用クラッチC1の係合油圧であるガレージシフト油圧PG、すなわち係合油圧を制御する係合油圧制御装置として機能している。また、ガレージシフトは、前後進切替え装置14を遮断状態から駆動状態へ切替える駆動切替えである。なお、後進走行用の「R」ポジションにおいても、N→Rシフト時にガレージシフト油圧PGにより後進用ブレーキB1を滑らかに係合させることが可能である。
【0036】
そして、前述したトルクコンバータ13、前後進切替え装置14、無段変速機構15等によって自動変速機が構成されている。
車両には、ニュートラルスタートスイッチ41、車速センサ42、油温センサ43をはじめとして、各種のセンサが取付けられている。ニュートラルスタートスイッチ41は自動変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段に相当するものである。ニュートラルスタートスイッチ41の信号としては、例えば図4に示すように、シフト位置が「N」ポジションであるかどうかを示すN接点信号、シフト位置が「D」ポジションであるかどうかを示すD接点信号等がある。車速センサ42は、無段変速機構15の出力軸32の回転速度等に基づき、車両の走行速度である車速を検出する。油温センサ43は、作動油の温度状態を検出する温度状態検出手段に相当するものであり、油圧制御回路25内の作動油の温度(油温)を検出する。
【0037】
また、前記センサ41〜43等の検出信号等に基づいて、前述したソレノイドバルブSL,DSU、リニアソレノイドバルブSLT等の駆動装置11の各部を制御するために、電子制御装置45が設けられている。電子制御装置45はマイクロコンピュータを中心として構成されており、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。
【0038】
電子制御装置45によって実行される制御の1つとして、ガレージシフトバルブ36の出力油圧を切替え制御すべく、ソレノイドバルブSL,DSUに対する通電を制御するものがある。この電子制御装置45によるガレージシフトバルブ36の切替え制御は切替え制御手段に相当する。次に、この制御の内容について説明する。図3のフローチャートは、ガレージシフトバルブ36の切替え制御ルーチンを示しており、所定のタイミング、例えば一定時間毎に繰り返し実行される。
【0039】
この制御に際し、電子制御装置45は、まずステップ110において、ニュートラルスタートスイッチ41の接点信号、車速センサ42の車速信号及び油温センサ43の油温信号をそれぞれ読込む。次に、ステップ120において、前記接点信号に基づき、シフト位置が「N」ポジション又は「P」ポジションであるかどうか、すなわち非走行位置にあるかどうかを判定する。
【0040】
この判定条件が満たされていない場合、すなわちシフト位置が走行位置にある場合、又は非走行位置から走行位置に切替えられる場合等には、ステップ170において、車両走行時等に行われる各種制御の態様に応じたパターンで、ソレノイドバルブSL,DSUに対する通電を制御する。この場合の各種制御には、ロックアップ制御、ガレージシフト時の係合過渡制御(ガレージシフト制御)等が含まれる。ガレージシフト制御は、前述したようにシフトレバーが「N」ポジション、「P」ポジション等の非走行位置から、「D」ポジション等の走行位置へ操作された場合等において、アキュムレータ等の油圧緩衝装置によることなく、前進用クラッチC1を滑らかに係合させるべく行われる制御である。
【0041】
ガレージシフト制御中には、電子制御装置45はソレノイドバルブSLに通電(ON)し、ソレノイドバルブDSUへの通電を停止(OFF)する。これに伴いソレノイドバルブSLによる信号圧がスプール36aに作用し、図2の左半分に示すように、スプール36aがスプリング36bに抗して押下げられてガレージシフトバルブ36がON状態にされる。このため、ガレージシフトコントロールバルブ35の出力圧、すなわち、リニアソレノイドバルブSLTの出力油圧に応じてモジュレータ油圧PMを調圧した油圧(ガレージシフト油圧PG)がガレージシフトバルブ36から出力される。なお、リニアソレノイドバルブSLTがデューティ制御されることについては既に説明したが、ガレージシフト制御中(図4のタイミングt1〜t5の期間)のデューティ制御に際しては、デューティ比に対応する指令値(図4ではSLT指令値として図示されている)が時間の経過に従い徐々に増加される。これに伴いガレージシフト油圧PGが徐々に増加して、すなわち前進用クラッチC1のクラッチ油圧が徐々に増加し、前進用クラッチC1が滑らかに係合させられる。そして、前記ステップ170の処理を行った後、この切替え制御ルーチンを一旦終了する。
【0042】
一方、ステップ120の判定条件が満たされていると、すなわち、シフト位置が非走行位置にあると、次にステップ130において、前記車速信号に基づき車両が停止しているかどうかを判定する。例えば、車速が所定値よりも小さいかどうかを判定する。この判定条件が満たされていない場合としては、例えばシフト位置として「N」ポジションが選択されている状態で車両が坂道を下っている場合が挙げられる。この場合には、前記ステップ170へ移行し、シフト位置が「D」ポジションにあるときと同じパターンでソレノイドバルブSL,DSUに対する通電を制御する。
【0043】
これに対し、ステップ130の判定条件が満たされている場合には、ステップ140において、前記油温信号に基づき、油温が所定値αよりも小さいかどうかを判定する。ここで、所定値αとしては、ガレージシフトバルブ36の切替え時において、応答遅れが許容される油温の最小値が設定されている。このステップ140の処理は、作動油が低温状態にあるかどうかを判定するための処理である。
【0044】
ステップ140の判定条件が満たされていない場合、すなわち作動油が低温状態にない場合には、ステップ160において、両ソレノイドバルブSL、DSUへの通電を停止(OFF)する。これに伴い図2の右半分に示すように、スプール36aがスプリング36bの付勢力により押上げられて、ガレージシフトバルブ36がOFF状態にされる。
【0045】
これに対し、ステップ140の判定条件が満たされている場合、すなわち作動油が低温状態にある場合には、ステップ150において、前述したガレージシフト制御中と同様に、ソレノイドバルブDSUへの通電を停止(OFF)し、かつソレノイドバルブSLに通電(ON)する。これに伴いソレノイドバルブSLによる信号圧がスプール36aに作用し、図2の左半分に示すように、スプール36aがスプリング36bに抗して押下げられてガレージシフトバルブ36がON状態にされる。電子制御装置45によるこのステップ150の処理は、ガレージシフトバルブ36の出力油圧を第2油圧(ガレージシフト油圧PG)に変更する油圧変更手段に相当する。
【0046】
なお、シフトレバー27が「P」ポジション又は「N」ポジションへ操作された場合には、前述したように前進用クラッチC1内の作動油はマニュアルバルブ26からドレンされる。このため、ガレージシフトバルブ36がOFF状態であってもON状態であっても前進用クラッチC1は解放される。
【0047】
そして、ステップ150又は160の処理を経た後、切替え制御ルーチンを一旦終了する。
前述した切替え制御が行われると、各部の作動状態は例えば図4に示すように変化する。ここでの各部の作動状態とは、ニュートラルスタートスイッチ41の接点信号、ソレノイドバルブSL,DSUに対する通電の状況、タービン軸21の回転速度(タービン回転速度)、無段変速機構15の出力軸32のトルク(出力軸トルク)、SLT指令値及びクラッチ油圧である。この例では、油温が所定値αよりも低く、かつシフト位置が「D」ポジションにあり、かつ車両が停車している状況下で、タイミングt0〜t1の期間に「N」ポジションに切替えるためのシフト操作が行われている。このシフト操作により、タイミングt0でN接点がONからOFFに切替わり、タイミングt1でD接点がOFFからONに切替わっている。
【0048】
タイミングt1よりも前のタイミングでは、シフト位置が「N」ポジションにある。このときには、切替え制御ルーチンでは、ステップ120,130,140の判定条件が満たされることから、ステップ110→120→130→140→150→リターンの順に処理が行われる。仮に、油温が所定値α以上(作動油が非低温状態)ならば、ソレノイドバルブSLへの通電が停止されてガレージシフトバルブ36がOFF状態となるところ(図4の二点鎖線参照)、上記一連の処理により、ソレノイドバルブSLへの通電が行われてガレージシフトバルブ36がON状態となる。このため、ガレージシフトバルブ36は、リニアソレノイドバルブSLTの出力油圧に応じて調圧されてガレージシフトコントロールバルブ35から出力されるガレージシフト油圧PGを出力する。
【0049】
一方、シフト位置が「N」ポジションにあるときには、前進用クラッチC1内の作動油はマニュアルバルブ26からドレンされる。このドレンによりクラッチ油圧が最小値(=「0」)となり、前進用クラッチC1が解放される。これに伴い無段変速機構15の出力軸トルクが最小値(=「0」)となる。また、タービン回転速度は、前進用クラッチC1の係合に伴う低下がないため、高い値となっている。なお、図4中、タイミングt1よりも前の期間においては、SLT指令値が図示されていないが、これはベルト挟圧力の制御のために状況に応じて同SLT指令値が種々の値を採るからである。
【0050】
タイミングt1において、D接点がOFFからONに切替わると、ステップ120の判定条件が満たされなくなることから、切替え制御ルーチンではステップ110→120→170→リターンの順に処理が行われる。ステップ170においてガレージシフト制御が行われる。ソレノイドバルブDSUに対する通電が停止され、ソレノイドバルブSLに対する通電が行われる。この場合には、前述したタイミングt1よりも前の状態が継続されて、ガレージシフトバルブ36がON状態を続ける。このため、ガレージシフトバルブ36は、リニアソレノイドバルブSLTの出力油圧に応じて調圧されてガレージシフトコントロールバルブ35から出力されるガレージシフト油圧PGを出力する。
【0051】
このときには、シフトレバー27の操作に従ってマニュアルバルブ26の位置が機械的に切替えられる。この切替えに伴い前進用クラッチC1内の作動油はドレンされなくなり、前記ガレージシフト油圧PGがマニュアルバルブ26を介して前進用クラッチC1に供給される。従って、低温状態のもとでは、作動油の粘性が大きくなってガレージシフトバルブ36の切替え時の応答遅れが非低温状態時よりも大きくなる。しかし、シフト位置が「N」ポジションにあるときから既にガレージシフトバルブ36がON状態にされていて、マニュアルバルブ26まではガレージシフト油圧PGが供給されている。このため、シフト操作に従ってマニュアルバルブ26の位置が切替えられると、前記のように応答遅れが大きくても、前進用クラッチC1にはガレージシフト油圧PGが供給される。その結果、低温状態下でのガレージシフトバルブ36の応答遅れに起因して、モジュレータ油圧PMが前進用クラッチC1に供給されることが抑制される。
【0052】
ここで、図4中の二点鎖線は、タイミングt1よりも前の期間において、作動油の油温に拘わらずソレノイドバルブSLへの通電を停止する場合(従来技術に相当)を示している。この場合、ガレージシフトバルブ36はOFF状態となっており、その出力油圧はモジュレータ油圧PMである。タイミングt1でソレノイドバルブSLに通電されると、低温のため作動油の粘性が大きく、ガレージシフトバルブ36の切替えについての応答遅れが大きくなっていることから、本来ならばガレージシフト油圧PGが供給されるところ、モジュレータ油圧PMが一時的に供給される。この供給により、タイミングt2〜t3において、前進用クラッチC1のクラッチ油圧がリターンスプリングの荷重に打ち勝つと、前進用クラッチC1が係合状態となる。この係合状態により、タービン回転速度が一時的に低下するとともに、無段変速機構15の出力軸トルクが一時的に増加してショックが発生する。
【0053】
しかし、シフト位置の「N」ポジションから「D」ポジションへの切替えに先立ち、ソレノイドバルブSLに通電してガレージシフトバルブ36をON状態にする本実施形態では、前述したようにシフト位置の切替えに伴い前進用クラッチC1にガレージシフト油圧PGが供給される。このため、図4において実線で示すように、タービン回転速度の低下や、出力軸トルクの上昇は見られず、ショックの発生が抑制される。
【0054】
なお、SLT指令値の増加に伴いクラッチ油圧が増加して、リターンスプリングの荷重に打ち勝つと(タイミングt4)、前進用クラッチC1が係合状態となる。この係合状態によりタービン回転速度が低下し、出力軸トルクが増加する。そして、タービン回転速度が最小値(=「0」)となり、出力軸トルクが最大となったところ(タイミングt5)でガレージシフト制御が終了される。
【0055】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)シフト位置が非走行位置(「N」ポジション又は「P」ポジション)にあり、かつ作動油が低温状態にある場合、ソレノイドバルブSLに通電して、ガレージシフトバルブ36をON状態にして、その出力油圧をガレージシフト油圧PGに変更している。
【0056】
従って、低温状態のもとでは、作動油の粘性が大きくなってガレージシフトバルブ36の切替え時の応答遅れが非低温状態時よりも大きくなるものの、その応答遅れに起因して、モジュレータ油圧PMが前進用クラッチC1に供給されるのを抑え、ショックの発生を抑制することができる。
【0057】
(2)シフト位置が非走行位置にあるときには、前進用クラッチC1の作動油をマニュアルバルブ26からドレン(排出)させている。従って、シフト位置が非走行位置であり、かつ作動油が低温状態であるときに、ガレージシフトバルブ36の出力油圧がモジュレータ油圧PMに変更されても、作動油の非低温状態時と同様に、前進用クラッチC1の作動油がマニュアルバルブ26からドレンされる。このため、ガレージシフトバルブ36の出力油圧がモジュレータ油圧PMからガレージシフト油圧PGに変更されることにより不具合が発生することはない。
【0058】
(3)シフト位置が非走行位置にあり、かつ作動油が低温状態にないときには、ソレノイドバルブSLへの通電を停止するようにしている。そして、シフト位置が非走行位置にあり、かつ作動油が低温状態となった場合にのみソレノイドバルブSLに通電するようにしている。ここで、車両の通常の使用環境下では、一定の時間において、作動油が非低温状態となる時間は低温状態となる時間に比して長い。従って、多くの時間にわたりソレノイドバルブSLに対する通電を停止し、低温状態となった場合にのみ一時的に通電を行うこととなり、電力消費を効果的に抑制することができる。
【0059】
(4)リニアソレノイドバルブSLTの出力油圧に応じて調圧されたガレージシフト油圧PGを第2油圧(可変圧)としている。このため、シフト位置の切替え時にガレージシフトバルブ36の出力油圧をガレージシフト油圧PGに切替えることにより、一定圧が供給された場合とは異なる態様で前進用クラッチC1を作動させることが可能となる。
【0060】
(5)上記(4)に関連するが、リニアソレノイドバルブSLTをデューティ制御することにより、ガレージシフト制御に際しガレージシフト油圧PGを時間の経過に従い徐々に増加させている。このため、シフト位置が「N」ポジションから「D」ポジションに切替えられたときに前進用クラッチC1を滑らかに係合させることができる。
【0061】
(6)モジュレータバルブ28によって一定の値(前進用クラッチC1の係合圧)に調圧されたモジュレータ油圧PMを第1油圧としている。このため、シフト位置の非切替え時に、ガレージシフトバルブ36の出力油圧をこのモジュレータ油圧PMにすることで、前進用クラッチC1を係合状態にすることができる。
【0062】
(7)シフト位置が非走行位置にあるときには第1油圧(モジュレータ油圧PM)が出力油圧となり、シフト位置が非走行位置から走行位置に切替えられたとき第2油圧(ガレージシフト油圧PG)が出力油圧となるようにガレージシフトバルブ36を切替え制御している。このように出力油圧を切替えることで、シフト位置が非走行位置から走行位置へ切替えられたときには、シフト位置が非走行位置にあるときとは異なる態様で前進用クラッチC1を作動させることができる。
【0063】
(8)作動油の温度(油温)を検出する油温センサ43を温度状態検出手段としている。そして、油温センサ43によって検出された油温が所定値αよりも低いとき作動油が低温状態にあるとして、ガレージシフトバルブ36の出力油圧を第2油圧に変更するようにしている。このようにして油温センサ43の検出値と所定値αとの比較結果に基づき、作動油が低温状態であるかどうかを確実に検出することができる。そして、この低温状態の検出に応じてガレージシフトバルブ36の出力油圧を変更することで、前述した(1)の効果をより確実なものとすることができる。
【0064】
(9)上記(8)に関連するが、ガレージシフトバルブ36の切替え時における応答遅れが許容される油温の最小値を所定値αとして設定している。従って、この所定値αを、油温センサ43による油温との比較に用いることで、ガレージシフトバルブ36の切替え時に応答遅れが大きくなるかどうかを確実に把握することができる。
【0065】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・本発明は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン12に代えて、電動モータ等の他の駆動力源を備える車両にも適用可能である。
【0066】
・流体式動力伝達装置としては、前記実施形態で示したようにトルク増幅作用を有するトルクコンバータ13が好適であるが、それ以外にも流体継手等の他の流体式動力伝達装置を採用してもよい。
【0067】
・図3の切替え制御ルーチンにおけるステップ130の処理を省略してもよい。
・作動油の温度状態を検出する温度状態検出手段として、前述した油温センサに代えて、水温センサ、外気温センサ等を用いてもよい。
【0068】
・前記実施形態では、第1油圧を一定圧とし第2油圧を可変圧としたが、その逆に第1油圧を可変圧とし第2油圧を一定圧としてもよい。そのほかにも、両油圧をともに一定圧としたり、可変圧としたりしてもよい。要は、本発明は、シフト位置の非切替え時と切替え時とで油圧切替え手段の出力油圧(第1油圧及び第2油圧)を異ならせる自動変速機であれば広く適用することができる。
【0069】
・本発明は、前進用クラッチC1以外の油圧サーボ、例えば後進用ブレーキB1に第1油圧及び第2油圧を供給し、それらの油圧を切替えるようにした自動変速機にも適用することができる。
【0070】
・自動変速機としては、前後進切替え装置と無段変速機構に代えて、複数の遊星歯車装置等からなる有段変速機を採用してもよい。
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
【0071】
(A)請求項1又は請求項2のいずれかに記載の自動変速機の油圧制御装置において、前記自動変速機は、シフト位置が非走行位置にあるときに油圧サーボから作動油を排出させる機構を備える。
【0072】
上記の構成によると、シフト位置が非走行位置にあれば作動油の温度状態に拘わらず油圧サーボから作動油が排出される。従って、非走行位置と作動油の低温状態とが検出されて油圧切替え手段の出力油圧が第2油圧に変更されても、作動油が非低温状態のときと同様に、油圧サーボから作動油が排出されることとなる。このため、第2油圧に変更されることによる不具合発生の心配がない。
【0073】
(B)請求項に記載の自動変速機の油圧制御装置において、前記第2油圧制御手段は、シフト位置の非走行位置から走行位置への切替えが前記シフト位置検出手段により検出されると、その切替えに応じて前記第2油圧が徐々に変化するように前記調圧バルブを作動させる。
【0074】
上記の構成によれば、シフト位置が非走行位置から走行位置へ切替えられると、その切替え後に第2油圧を徐々に変化させて、油圧サーボを滑らかに作動させることが可能となる。
【0075】
(C)請求項1又は請求項2、上記(A)及び(B)のいずれかに記載の自動変速機の油圧制御装置において、前記第1油圧を一定の値に調圧する手段をさらに備える。
【0076】
上記の構成によれば、シフト位置の非切替え時には、一定の値に調圧された第1油圧が油圧サーボに供給される。従って、この供給により油圧サーボに一定の作動をさせることが可能となる。例えば、油圧サーボがクラッチであって、第1油圧がクラッチの係合圧の場合、前記第1油圧の供給によりクラッチを係合状態にすることができる。
【0077】
(D)請求項1又は請求項2、上記(A)〜(C)のいずれかに記載の自動変速機の油圧制御装置において、
前記切替え制御手段は、前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出されたときには前記第1油圧が前記出力油圧となり、前記シフト位置検出手段により非走行位置から走行位置への切替えが検出されたときには前記第2油圧が前記出力油圧となるように前記油圧切替え手段を制御する。
【0078】
上記のように油圧切替え手段を制御して出力油圧を切替えることで、シフト位置が非走行位置から走行位置へ切替えられたときには、シフト位置が非走行位置にあるときとは異なる態様で油圧サーボを作動させることができる。
【0079】
(E)請求項1又は請求項2、上記(A)〜(D)のいずれかに記載の自動変速機の油圧制御装置において、
前記温度状態検出手段は、前記作動油の温度を検出する油温センサにより構成されており、
前記油圧変更手段は、前記油温センサによる作動油の温度が所定値よりも低いとき前記作動油が低温状態にあるとして、前記油圧切替え手段の出力油圧を前記第2油圧に変更する。
【0080】
上記の構成によれば、油温センサによって検出される作動油の温度と所定値との比較結果に基づき、作動油が低温状態であるかどうかを確実に検出することができる。従って、この低温状態の検出に応じて油圧切替え手段の出力油圧を変更することで、請求項1に記載の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【0081】
(F)上記(E)に記載の自動変速機の油圧制御装置において、
前記所定値は、前記油圧切替え手段の切替え時における応答遅れが許容される作動油の温度の最小値である。
【0082】
上記の所定値を、油温センサによる作動油の油温との比較に用いることで、油圧切替え手段の切替え時に応答遅れが大きくなるかどうかを確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動変速機の油圧制御装置の一実施形態についてその構成を示す略図。
【図2】油圧制御回路の一部を示す回路図。
【図3】ガレージシフトバルブの出力油圧を切替え制御する手順を示すフローチャート。
【図4】図3のフローチャートに従って切替え制御が行われた場合の各部の作動状態の変化を示すタイムチャート。
【符号の説明】
35…ガレージシフトコントロールバルブ(調圧バルブ)、36…ガレージシフトバルブ(油圧切替え手段)、41…ニュートラルスタートスイッチ(シフト位置検出手段)、43…油温センサ(温度状態検出手段)、45…電子制御装置(切替え制御手段、油圧変更手段、第2油圧制御手段)、C1…前進用クラッチ(油圧サーボ)、PM…モジュレータ油圧(第1油圧)、PG…ガレージシフト油圧(第2油圧)、SL…ソレノイドバルブ(アクチュエータ)、SLT…リニアソレノイドバルブ(第2油圧制御手段)。

Claims (2)

  1. 第1油圧又は第2油圧が供給される自動変速機の油圧サーボと、
    前記油圧サーボへの油圧供給路に設けられ、前記第1油圧及び前記第2油圧を出力油圧とし、かつその出力油圧を切替え可能に構成した油圧切替え手段と、
    前記自動変速機のシフト位置を検出するシフト位置検出手段と、
    前記シフト位置検出手段によるシフト位置の非切替え時には前記出力油圧が前記第1油圧となり、シフト位置の切替え時には前記出力油圧が前記第2油圧となるように前記油圧切替え手段を制御する切替え制御手段と
    を備える自動変速機の油圧制御装置であって、
    前記自動変速機の作動油の温度状態を検出する温度状態検出手段と、
    前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出され、かつ前記温度状態検出手段により低温状態が検出されたときには、前記切替え制御手段による前記油圧切替え手段の出力油圧を前記第2油圧に変更する油圧変更手段とを備え、
    前記切替え制御手段は、通電の状況に応じて前記油圧切替え手段を作動させるアクチュエータを備えており、前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出され、かつ前記温度状態検出手段により非低温状態が検出されたときには、前記アクチュエータに対する通電を停止し、前記シフト位置検出手段により非走行位置が検出され、かつ前記温度状態検出手段により低温状態が検出されたときには、前記アクチュエータに通電するものである
    ことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
  2. 前記第2油圧を調整する調圧バルブと、前記調圧バルブを作動させて前記第2油圧を変化させる第2油圧制御手段とをさらに備える請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
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