JP3888102B2 - 配向膜、配向膜の形成方法、液晶装置、並びに投射型表示装置 - Google Patents
配向膜、配向膜の形成方法、液晶装置、並びに投射型表示装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、配向膜、配向膜の形成方法、液晶装置、並びに投射型表示装置に係り、特に、耐久性に優れた配向膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶プロジェクタ等の投射型表示装置に搭載される光変調手段や、携帯電話等に搭載される直視型表示装置として用いられる液晶装置は、液晶層を挟持して対向配置され、液晶層に電圧を印加するための電極を具備する一対の基板を主体として構成されており、液晶装置を構成する一対の基板の液晶層側最表面には、各々、電圧無印加時における液晶分子の配列を制御する配向膜が形成されている。そして、電圧無印加時、電圧印加時における液晶分子の配列を光学的に識別することにより表示を行うことが可能な構成になっている。
【0003】
従来、配向膜としては、ポリイミド等からなる有機膜の表面を、布等により所定の方向にラビングしたものが、液晶配向制御機能に優れることから広く用いられている。なお、本明細書において、「電圧無印加時」、「電圧印加時」とは、それぞれ「液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧未満である時」、「液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧以上である時」を意味しているものとする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、光束密度が2〜10lm/mm2程度の光強度の強い光が照射される投射型表示装置に搭載する場合には、配向膜が光や熱により次第に分解され、長期使用後に、電圧無印加時の液晶分子を所望のプレチルト角に配列することができないなど、液晶配向制御機能が低下し、表示品質が低下することがあった。この問題は特に、有機膜として、光や熱により分解されやすいイミド結合を有するポリイミド膜を用いる場合に顕著であった。なお、投射型表示装置に搭載する場合、液晶装置は50〜70℃程度の温度に曝されることが知られている。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れた配向膜及びその形成方法、耐久性に優れた配向膜を備えた液晶装置、並びに該液晶装置を備えた投射型表示装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の配向膜は、液晶分子の配向を制御する配向膜において、表面に配向制御層を有する有機膜と、該有機膜の前記配向制御層上に、該配向制御層の表面配向に沿って形成され、前記有機膜よりも光及び熱に対する安定性に優れた有機蒸着膜とを具備してなることを特徴とする。なお、本明細書において、「有機蒸着膜」とは、有機材料を蒸着することにより形成された膜のことを意味する。また、「光安定性に優れる」とは、液晶パネルに入射する可視光によって分解されにくいことを意味し、「熱安定性に優れる」とは、液晶装置を投射型表示装置に搭載した時の最高温度である70℃程度以下で分解されにくいことを意味する。
【0007】
従来の有機膜からなる配向膜では、配向膜全体が液晶分子の配向を制御するのではなく、ラビング処理等の配向処理を行った表面のみが液晶分子の配向を制御する配向制御層として機能するが、本発明では、表面に配向制御層を有する有機膜の配向制御層上に、有機膜よりも光及び熱に対する安定性に優れた有機蒸着膜を形成して配向膜を構成している。このように、配向制御層上に、有機膜よりも光及び熱に対する安定性に優れた有機蒸着膜を形成することにより、有機膜(配向制御層)を有機蒸着膜により保護することができ、配向膜の光や熱による分解を抑制することができる。
【0008】
また、本発明者は、配向制御層上に、配向制御層の表面配向に沿って有機蒸着膜を形成することにより、配向制御層と同等以上の液晶配向制御機能を有する有機蒸着膜を形成することができることを見出した。すなわち、配向制御層上に、配向制御層の表面配向に沿って有機蒸着膜を形成することにより、有機蒸着膜の表面配向機能を配向制御層の表面配向機能と略等しくすることができるので、有機蒸着膜を構成する有機分子と液晶分子との分子間相互作用によって、配向制御層と同等以上の液晶配向制御機能を発現することができることを見出した。
【0009】
したがって、本発明によれば、従来の配向膜と同等以上の液晶配向制御機能を有すると共に、光や熱に対する安定性に優れ、液晶配向制御機能を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れた配向膜を提供することができる。
【0010】
また、本発明者は、ポリイミドからなる従来の配向膜では、イミド結合が、液晶パネルに入射する可視光のうち、400〜450nm程度の短波長光を吸収しやすく、この短波長光を吸収して分解されることを見出した。したがって、有機膜よりも光安定性に優れた有機蒸着膜を得るためには、有機膜よりも、波長400〜450nmの光吸収の少ない材料により有機蒸着膜を構成すれば良い。
【0011】
また、有機蒸着膜を配向制御層の表面配向に沿って形成するには、有機材料を配向制御層の表面配向に沿って蒸着させることが必要であるが、本発明者は、イオン化蒸着法を採用することにより、蒸着条件を制御しやすく、有機材料を配向制御層の表面配向に沿って蒸着させることができることを見出した。したがって、前記有機蒸着膜はイオン化蒸着法により形成されたものであることが好ましい。
【0012】
このように、イオン化蒸着法を採用する場合には、蒸着材料として揮発性を有する有機高分子を用い、有機高分子を直接配向制御層上に蒸着して有機蒸着膜を形成することができる。
また、イオン化蒸着法を採用する場合には、蒸着材料としてモノマーを用いることも可能である。このように蒸着材料としてモノマーを用いる場合には、配向制御層上に蒸着されたモノマーの重合反応が進行してポリマー化するため、有機蒸着膜を形成することができる。
【0013】
さらに、本発明者は、モノマーとして配向性を有する配向性モノマーを用いることにより、モノマーが配向制御層の表面配向に沿って配向しながら蒸着してポリマー化するので、蒸着材料として、揮発性を有する有機高分子を用いる場合に比較して、より配向制御層の表面配向に沿って有機蒸着膜を形成することができ、形成される有機蒸着層を構成する有機高分子の配向性を高くすることができるので、有機蒸着膜を構成する有機高分子と液晶分子との分子間相互作用をより高くすることができ、液晶配向制御機能により優れた有機蒸着膜を形成することができることを見出した。
【0014】
なお、イオン化蒸着法以外の方法でモノマーを蒸着しても配向制御層上で重合反応が進行しないが、イオン化蒸着法を採用した場合には、モノマーをイオン化して蒸着するため、配向制御層上に蒸着されるモノマーの活性が高く、自然に重合反応が進行する。
【0015】
したがって、前記有機蒸着膜としては、蒸着材料として、揮発性を有する有機高分子若しくは配向性モノマーを用いて形成されたものが好適であるが、特に、配向性モノマーを用いて形成されたものであることが好ましい。また、配向性モノマーとしては下記一般式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される1種若しくは複数種の化合物を例示することができる。
【0016】
【化7】
【0017】
【化8】
【0018】
【化9】
【0019】
上記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物はいずれも棒状の分子構造を有し、それ自身が液晶相を有する液晶性モノマーまたは液晶分子に類似した性質を有するモノマーである。したがって、配向制御層上にイオン化蒸着法によりこれらのモノマーを蒸着すると、配向制御層の表面配向に沿って液晶分子が並ぶように、モノマーが配向制御層の表面配向に沿って配向しながら蒸着する。また、上記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物は、アクリレート系又はメタクリレート系のモノマーであるため重合反応性にも優れており、配向制御層上にイオン化蒸着法によりこれらのモノマーを蒸着すると、モノマーが自然に重合してポリマー化する。
【0020】
以上の本発明の配向膜は、以下の本発明の配向膜の形成方法により形成することができる。
本発明の配向膜の形成方法は、液晶分子の配向を制御する配向膜の形成方法において、表面に配向制御層を有する有機膜を形成する有機膜形成工程と、前記有機膜の前記配向制御層上に、該配向制御層の表面配向に沿って、前記有機膜よりも光及び熱に対する安定性に優れた有機蒸着膜を形成する有機蒸着膜形成工程とを有することを特徴とする。
【0021】
また、前記有機蒸着膜形成工程において、前記有機蒸着膜をイオン化蒸着法により形成することが好ましい。
また、前記有機蒸着膜形成工程において、蒸着材料として揮発性を有する有機高分子、若しくは配向性モノマーを用いて、前記有機蒸着膜を形成することができる。また、蒸着材料として配向性モノマーを用いる場合には、配向性モノマーとして、下記一般式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される1種若しくは複数種の化合物を用いることが好適である。
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
以上の本発明の配向膜の形成方法によれば、耐久性に優れた本発明の配向膜を形成することができる。
【0026】
また、上述の本発明の配向膜を備えることにより、以下の本発明の液晶装置を提供することができる。
本発明の液晶装置は、液晶層を挟持して対向配置された一対の基板のうち、少なくとも一方の基板の前記液晶層側最表面に、上記本発明の配向膜を備えたことを特徴とする。本発明の液晶装置は、従来の配向膜と同等以上の液晶配向制御機能を有すると共に、光や熱に対する安定性に優れ、液晶配向制御機能を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れた本発明の配向膜を備えたものであるので、従来と同等以上の表示品質を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れたものとなる。
【0027】
また、本発明の液晶装置を備えることにより、以下の本発明の投射型表示装置を提供することができる。
本発明の投射型表示装置は、光源と、前記光源からの光を変調する本発明の液晶装置からなる光変調手段と、前記光変調手段により変調された光を投射する投射手段とを備えたことを特徴とする。本発明の投射型表示装置は、本発明の液晶装置を備えたものであるので、従来と同等以上の表示品質を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れたものとなる。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る実施形態の液晶装置の構造について詳述する。
本実施形態の液晶装置は、スイッチング素子としてTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の透過型液晶装置である。また、本実施形態の液晶装置は、本発明の配向膜を備えたものであり、配向膜の構造が特に特徴的なものとなっている。
【0029】
以下、図1〜図4に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の構造について説明する。図1は本実施形態の透過型液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図である。図2はデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図である。図3は本実施形態の透過型液晶装置の構造を示す断面図であって、図2のA−A’線断面図である。図4は本実施形態の透過型液晶装置に備えられた配向膜を拡大して示す部分断面図である。なお、図3においては、図示上側が光入射側、図示下側が視認側(観察者側)である場合について図示している。また、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0030】
本実施形態の透過型液晶装置において、図1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極9と当該画素電極9を制御するためのスイッチング素子であるTFT素子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT素子30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。
【0031】
また、走査線3aがTFT素子30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT素子30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0032】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0033】
(平面構造)
次に、図2に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の平面構造について説明する。
図2に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と略す。)等の透明導電性材料からなる矩形状の画素電極9(点線部9Aにより輪郭を示す)が複数、マトリクス状に設けられており、画素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。本実施形態において、各画素電極9及び各画素電極9を囲むように配設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された各画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
【0034】
データ線6aは、TFT素子30を構成する例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのうち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、後述のチャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能する。
【0035】
容量線3bは、走査線3aに沿って略直線状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そして、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜11aが設けられている。
【0036】
より具体的には、第1遮光膜11aは、各々、半導体層1aのチャネル領域を含むTFT素子30をTFTアレイ基板側から見て覆う位置に設けられており、さらに、容量線3bの本線部に対向して走査線3aに沿って直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って隣接する後段側(すなわち、図中下向き)に突出した突出部とを有する。第1遮光膜11aの各段(画素行)における下向きの突出部の先端は、データ線6a下において次段における容量線3bの上向きの突出部の先端と重なっている。この重なった箇所には、第1遮光膜11aと容量線3bとを相互に電気的に接続するコンタクトホール13が設けられている。すなわち、本実施形態では、第1遮光膜11aは、コンタクトホール13により前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続されている。
【0037】
(断面構造)
次に、図3に基づいて、本実施形態の透過型液晶装置の断面構造について説明する。
図3に示すように、本実施形態の透過型液晶装置においては、TFTアレイ基板10と、これに対向配置される対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。TFTアレイ基板10は、石英等の透光性材料からなる基板本体10Aとその液晶層50側表面に形成された画素電極9、TFT素子30、配向膜40を主体として構成されており、対向基板20はガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面に形成された共通電極21と配向膜60とを主体として構成されている。
【0038】
より詳細には、TFTアレイ基板10において、基板本体10Aの液晶層50側表面には画素電極9が設けられ、各画素電極9に隣接する位置に、各画素電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用TFT素子30が設けられている。
画素スイッチング用TFT素子30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0039】
また、上記走査線3a上、ゲート絶縁膜2上を含む基板本体10A上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5、及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第2層間絶縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第2層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さらに、データ線6a上及び第2層間絶縁膜4上には、高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第3層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜4及び第3層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電極9に電気的に接続されている。
【0040】
また、本実施形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0041】
また、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面において、各画素スイッチング用TFT素子30が形成された領域には、TFTアレイ基板10を透過し、TFTアレイ基板10の図示下面(TFTアレイ基板10と空気との界面)で反射されて、液晶層50側に戻る戻り光が、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及び低濃度ソース、ドレイン領域(LDD領域)1b、1cに入射することを防止するための第1遮光膜11aが設けられている。また、第1遮光膜11aと画素スイッチング用TFT素子30との間には、画素スイッチング用TFT素子30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁するための第1層間絶縁膜12が形成されている。また、図2に示したように、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続するように構成されている。
【0042】
また、TFTアレイ基板10の液晶層50側最表面、すなわち、画素電極9及び第3層間絶縁膜7上には、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御する配向膜40が形成されている。
【0043】
他方、対向基板20には、基板本体20Aの液晶層50側表面であって、データ線6a、走査線3a、画素スイッチング用TFT素子30の形成領域に対向する領域、すなわち各画素部の開口領域以外の領域に、入射光が画素スイッチング用TFT素子30の半導体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに侵入することを防止するための第2遮光膜23が設けられている。さらに、第2遮光膜23が形成された基板本体20Aの液晶層50側には、そのほぼ全面に渡って、ITO等からなる共通電極21が形成され、その液晶層50側には、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御する配向膜60が形成されている。
【0044】
(配向膜)
上述したように、本実施形態においては、配向膜40、60の構造が特に特徴的なものとなっている。以下、図4に基づいて、配向膜40、60の構造及びその形成方法について説明する。なお、図4は、配向膜40(60)を拡大して示す部分断面図であり、図示上側が液晶層50に接する側である。また、図示するように、本実施形態では、TFTアレイ基板10側の配向膜40と対向基板20側の配向膜60とは同一の構造を有するものとなっている。
【0045】
図4に示すように、配向膜40(60)は、ポリイミド等からなり、液晶層50側表面に配向制御層42を有する有機膜41と、該有機膜41の配向制御層42上に形成された有機蒸着膜43とを具備して構成されている。配向制御層42は、有機膜41の表面にラビング処理、光配向処理等の配向処理を施すことにより形成された層であり、液晶配向制御機能を有する層である。なお、図面上は、有機膜41において、配向制御層42とそれ以外の部分とが明確に分離されているように図示しているが、実際は、配向制御層42とそれ以外の部分との境界は曖昧である。
【0046】
ここで、ラビング処理とは、有機膜41の表面を布等により所定の方向にラビング(擦る)する処理のことである。また、光配向処理とは、紫外線から所定の方向に振動する偏光のみを取り出して、有機膜41表面に対して所定の方向から照射することにより、紫外線が照射された部分のみが分解されることを利用して、配向制御層42を形成する処理、あるいは、有機膜41の表面に、光重合性を有する官能基を持つ高分子薄膜を形成し、紫外線から所定の方向に振動する偏光のみを取り出して、高分子薄膜に対して所定の方向から照射することにより、紫外線が照射された方向のみが重合することを利用して、配向制御層42を形成する処理のことである。
【0047】
本実施形態では、配向制御層42の表面配向に沿って、有機蒸着膜43が形成され、有機蒸着膜43の表面配向状態と配向制御層42の表面配向状態とは略等しいものとなっている。そして、有機蒸着膜43は、有機蒸着膜43を構成する有機分子と液晶分子との分子間相互作用によって、配向制御層42と同等以上の液晶配向制御機能を有するものとなっている。
【0048】
また、有機蒸着膜43は、ポリイミド等からなる有機膜41よりも、光及び熱に対する安定性に優れた材料により構成されており、400〜450nmの波長の光吸収率が少ない材料、すなわち、400〜450nmの波長の光吸収率が高いイミド結合、アミド結合等を有しない材料により構成されている。
【0049】
配向膜40(60)は、配向制御層42が未形成の有機膜41の表面に、ラビング処理、光配向処理等の配向処理を施して、配向制御層42を形成した後、配向制御層42の表面配向に沿って有機材料を蒸着することにより、有機蒸着膜43を形成することにより得られる。
また、本実施形態において、有機蒸着膜43はイオン化蒸着法により形成されたものである。以下、図5に、イオン化蒸着装置の構造を模式的に示し、この図に基づいて、イオン化蒸着法について簡単に説明する。
イオン化蒸着装置100には、真空ポンプに接続され、内部を減圧状態(真空状態)とすることができる蒸着室101が備えられており、この蒸着室101内の下方に、蒸着材料201を入れる蒸着材料容器102が備えられていると共に、上方に、蒸着を行う面を下側に向けて被蒸着基板200を設置することができるように構成されている。
【0050】
蒸着材料容器102内の蒸着材料201は加熱されて蒸発(揮発)し、蒸発した蒸着材料201は図示上方に導かれ、イオン化部103を通過する際にイオン化される。また、イオン化部103と被蒸着基板200との間には電界がかけられており、イオン化された蒸着材料201は電界により加速されて被蒸着基板200に蒸着されるように構成されている。なお、イオン化部103では、蒸着材料201に電圧を印加することにより、蒸着材料201をイオン化することができるようになっている。
【0051】
すなわち、イオン化蒸着法は、蒸着材料201を蒸発させた後、イオン化し、イオン化された蒸着材料201を加速させて、被蒸着基板200に蒸着する方法である。この方法によれば、イオン化部103でのイオン化条件や、イオン化された蒸着材料201の加速条件を制御することにより、蒸着材料201の被蒸着基板200への蒸着を制御することができるため、他の蒸着法に比較して、蒸着材料201の被蒸着基板200への蒸着条件を制御しやすい。このように、イオン化蒸着法では、蒸着条件を制御しやすいため、配向制御層42の表面配向に沿って有機蒸着膜43を形成することが可能となる。
【0052】
イオン化蒸着法を採用する場合には、蒸着材料として、揮発性を有する有機高分子若しくは配向性モノマーを用いることができる。
蒸着材料として揮発性を有する有機高分子を用いる場合には、蒸着材料である有機高分子を蒸発させた後、イオン化し、イオン化された有機高分子を直接配向制御層42上に蒸着して、有機蒸着膜43を形成することができる。
【0053】
これに対して、蒸着材料として配向性モノマーを用いる場合には、蒸着材料である配向性モノマーを蒸発させた後、イオン化し、イオン化されたモノマーを配向制御層42に蒸着するが、イオン化されたモノマーは活性が高いので、配向制御層42上に蒸着されたモノマーの重合反応が自然に進行してポリマー化することを利用して有機蒸着膜43を形成することができる。
【0054】
また、蒸着材料として、揮発性を有する有機高分子、配向性モノマーのいずれを用いても、イオン化蒸着法によれば、蒸着条件を制御しやすいため、配向制御層42の表面配向に沿って有機蒸着膜43を形成することができるが、特に、蒸着材料として配向性モノマーを用いることが、以下の理由により好ましい。
【0055】
すなわち、蒸着材料として配向性モノマーを用いる場合には、配向性モノマーが配向制御層42の表面配向に沿って配向しながら蒸着してポリマー化するので、蒸着材料として、揮発性を有する有機高分子を用いる場合に比較して、より配向制御層42の表面配向に沿って有機蒸着膜43を形成することができ、形成される有機蒸着層43を構成する有機高分子の配向性を高くすることができるので、有機蒸着膜43を構成する有機高分子と液晶分子との分子間相互作用をより高くすることができ、液晶配向制御機能により優れた有機蒸着膜43を形成することができる。なお、イオン化蒸着法以外の方法でモノマーを蒸着しても配向制御層42上でモノマーの重合反応は進行しないため、かかる効果は得られない。
【0056】
また、蒸着材料として有機高分子を用いる場合には、有機高分子の分子量が大きくなると揮発しないため、形成される有機蒸着膜43を構成する高分子の分子量は、数千程度が限界となっている。これに対して、蒸着材料として配向性モノマーを用いる場合には、配向制御層42上で重合させるため、形成される有機蒸着膜43を構成する高分子の高分子量化が可能である。高分子は分子量が大きくなる程、光や熱に対して安定になるので、蒸着材料として配向性モノマーを用いることにより、光や熱に対する安定性により優れた有機蒸着膜43を形成することができるという効果も得られる。
【0057】
ここで、用いる蒸着材料について具体的に説明する。
蒸着材料として有機高分子を用いる場合には、揮発性を有すると共に、有機膜41よりも光及び熱に対する安定性に優れた材料を選択すれば良く、これらの条件を満たすものとしては、ポリスチレン、ポリエチレンや、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と略す。)等のフッ素系高分子を例示することができる。特に、フッ素系高分子はガラス転移点(Tg)が高く、光や熱に対する安定性に優れるため、好適である。
【0058】
配向性モノマーとしては、下記一般式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される1種若しくは複数種の化合物を例示することができる。
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】
上記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物はいずれも棒状の分子構造を有し、それ自身が液晶相を有する液晶性モノマー、あるいは液晶分子に類似した性質を有するモノマーである。したがって、配向制御層42上にイオン化蒸着法によりこれらのモノマーを蒸着すると、配向制御層42の表面配向に沿って液晶分子が並ぶように、モノマーが配向制御層42の表面配向に沿って配向しながら蒸着してポリマー化し、液晶配向制御機能に優れた有機蒸着膜43を形成することができる。
【0062】
また、上記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物はアクリレート系又はメタクリレート系のモノマーであるため、重合反応性にも優れており、配向制御層42上にイオン化蒸着法によりこれらのモノマーを蒸着すると、モノマーが自然に重合してポリマー化する。
【0063】
上記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、表1又は表2に示す化合物M1〜M25が挙げられる。上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、表3又は表5に示す化合物M26〜M33、M38〜M45が挙げられる。上記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、表4又は表6に示す化合物M34〜M37、M46〜M51が挙げられる。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
上述したように、本実施形態では、配向膜40、60を、表面に配向制御層42を有する有機膜41と、配向制御層42上に、配向制御層42の表面配向に沿って形成され、有機膜41よりも光及び熱に対する安定性に優れた有機蒸着膜43とから構成した。
【0071】
このように配向制御層42上に、有機膜41よりも光及び熱に対する安定性に優れた有機蒸着膜43を形成することにより、有機膜41を有機蒸着膜43により保護することができ、配向膜40、60の光や熱による分解を抑制することができる。また、配向制御層42上に、配向制御層42の表面配向に沿って有機蒸着膜43を形成する構成としたので、有機蒸着膜43の表面配向状態を配向制御層42の表面配向状態と略等しくすることができるので、有機蒸着膜43を構成する有機分子と液晶分子との分子間相互作用によって、配向制御層42と同等以上の液晶配向制御機能を有する有機蒸着膜43を形成することができる。
【0072】
したがって、本実施形態の液晶装置に備えられた配向膜40、60は、従来の配向膜と同等以上の液晶配向制御機能を有すると共に、光や熱に対する安定性に優れ、液晶配向制御機能を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れている。また、配向膜40、60を備えた本実施形態の液晶装置は、液晶分子を長期に渡って良好に制御することができるので、従来と同等以上の表示品質を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れたものとなる。
【0073】
なお、有機蒸着膜43の膜厚は、10〜100nmであることが好ましい。有機蒸着膜43の膜厚が10nm未満では、有機蒸着膜43が部分的に剥離するなどして、配向制御層42を保護する効果が低減する恐れがあるため、好ましくない。また、有機蒸着膜43の膜厚が100nmを超えると、液晶層50と電極(画素電極9、共通電極21)との距離が増し、液晶層50の駆動電圧が増大するため、好ましくない。
【0074】
また、本実施形態では、TFTアレイ基板10と対向基板20の双方の配向膜40、60を上述の構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも一方の基板の配向膜を上述の構成とすることにより、従来よりも耐久性に優れた液晶装置を提供することができる。但し、双方の基板の配向膜を上述の構成とすることにより、より耐久性に優れた液晶装置を提供することができることは言うまでもない。
【0075】
また、本実施形態では、有機蒸着膜43を形成する方法としてイオン化蒸着法を採用したので、表面に配向制御層42を有する有機膜41と、配向制御層42上に、配向制御層42の表面配向に沿って形成された有機蒸着膜43とからなる配向膜40、60を簡易に、かつ安定して形成することができる。
但し、本発明はイオン化蒸着法により有機蒸着膜43を形成する場合に限定されるものではなく、蒸着条件の制御は難しくなるが、その他の蒸着法を用いて有機蒸着膜43を形成しても良い。
【0076】
また、本実施形態では、TFT素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、TFD(Thin-Film Diode)素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置やパッシブマトリクス型液晶装置等にも適用可能である。また、本実施形態では、透過型液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型や半透過反射型の液晶装置にも適用可能である。このように、本発明は、いかなる構造の液晶装置にも適用することができる。
【0077】
[投射型表示装置]
上記実施形態の液晶装置を光変調手段として備えた投射型表示装置の構成について、図6を参照して説明する。
図6は、上記実施形態の液晶装置を3個用意し、それぞれRGB用の液晶ライトバルブ962R、962G、962Bとして用いた投射型表示装置1100の光学系の概略構成図である。
【0078】
本例の投射型表示装置の光学系には、光源装置920と、均一照明光学系923が採用されている。そして、投射型表示装置は、この均一照明光学系923から出射される光束Wを赤(R)、緑(G)、青(B)に分離する色分離手段としての色分離光学系924と、各色光束R、G、Bを変調する変調手段としての3つのライトバルブ925R、925G、925Bと、変調された後の色光束を再合成する色合成手段としての色合成プリズム910と、合成された光束を投射面100の表面に拡大投射する投射手段としての投射レンズユニット906を備えている。また、青色光束Bを対応するライトバルブ925Bに導く導光系927をも備えている。
【0079】
均一照明光学系923は、2つのレンズ板921、922と反射ミラー931を備えており、反射ミラー931を挟んで2つのレンズ板921、922が直交する状態に配置されている。均一照明光学系923の2つのレンズ板921、922は、それぞれマトリクス状に配置された複数の矩形レンズを備えている。光源装置920から出射された光束は、第1のレンズ板921の矩形レンズによって複数の部分光束に分割される。そして、これらの部分光束は、第2のレンズ板922の矩形レンズによって3つのライトバルブ925R、925G、925B付近で重畳される。従って、均一照明光学系923を用いることにより、光源装置920が出射光束の断面内で不均一な照度分布を有している場合でも、3つのライトバルブ925R、925G、925Bを均一な照明光で照明することが可能となる。
【0080】
各色分離光学系924は、青緑反射ダイクロイックミラー941と、緑反射ダイクロイックミラー942と、反射ミラー943から構成される。まず、青緑反射ダイクロイックミラー941において、光束Wに含まれている青色光束Bおよび緑色光束Gが直角に反射され、緑反射ダイクロイックミラー942の側に向かう。赤色光束Rはこのミラー941を通過して、後方の反射ミラー943で直角に反射されて、赤色光束Rの出射部944からプリズムユニット910の側に出射される。
【0081】
次に、緑反射ダイクロイックミラー942において、青緑反射ダイクロイックミラー941において反射された青色、緑色光束B、Gのうち、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束Gの出射部945から色合成光学系の側に出射される。
緑反射ダイクロイックミラー942を通過した青色光束Bは、青色光束Bの出射部946から導光系927の側に出射される。本例では、均一照明光学素子の光束Wの出射部から、色分離光学系924における各色光束の出射部944、945、946までの距離がほぼ等しくなるように設定されている。
色分離光学系924の赤色、緑色光束R、Gの出射部944、945の出射側には、それぞれ集光レンズ951、952が配置されている。したがって、各出射部から出射した赤色、緑色光束R、Gは、これらの集光レンズ951、952に入射して平行化される。
【0082】
このように平行化された赤色、緑色光束R、Gは、ライトバルブ925R、925Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報が付加される。すなわち、これらの液晶装置は、図示を省略している駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。一方、青色光束Bは、導光系927を介して対応するライトバルブ925Bに導かれ、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。尚、本例のライトバルブ925R、925G、925Bは、それぞれさらに入射側偏光手段960R、960G、960Bと、出射側偏光手段961R、961G、961Bと、これらの間に配置された液晶装置962R、962G、962Bとからなる液晶ライトバルブである。
【0083】
導光系927は、青色光束Bの出射部946の出射側に配置した集光レンズ954と、入射側反射ミラー971と、出射側反射ミラー972と、これらの反射ミラーの間に配置した中間レンズ973と、ライトバルブ925Bの手前側に配置した集光レンズ953とから構成されている。集光レンズ946から出射された青色光束Bは、導光系927を介して液晶装置962Bに導かれて変調される。各色光束の光路長、すなわち、光束Wの出射部から各液晶装置962R、962G、962Bまでの距離は青色光束Bが最も長くなり、したがって、青色光束の光量損失が最も多くなる。しかし、導光系927を介在させることにより、光量損失を抑制することができる。
【0084】
各ライトバルブ925R、925G、925Bを通って変調された各色光束R、G、Bは、色合成プリズム910に入射され、ここで合成される。そして、この色合成プリズム910によって合成された光が投射レンズユニット906を介して所定の位置にある投射面100の表面に拡大投射されるようになっている。上記構造を有する投射型表示装置1100は、上記の実施形態の液晶装置を備えたものであるので、従来と同等以上の表示品質を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れたものとなる。
【0085】
【実施例】
次に、本発明に係る実施例、及び従来例について説明する。
(実施例1)
可溶性ポリイミドを溶剤に溶解してポリイミド溶液を調製し、このポリイミド溶液を、電極やTFT素子等の配向膜以外の必要な要素を形成したガラス基板上にスピンコート法により塗布し、80℃で10分間仮焼成し、溶剤を揮発させた後、180℃で1時間本焼成し、約50nmの膜厚のポリイミド膜を形成した。このポリイミド膜の表面に、ラビング密度を450としてラビング処理を施し、配向制御層を形成した。配向制御層を形成したポリイミド膜の表面に、蒸着材料としてPTFEを用いて、イオン化蒸着法により蒸着を行い、約10nmの膜厚の有機蒸着膜(PTFE膜)を形成した。
以上のようにして、TFTアレイ基板と対向基板とを作製し、これらをセルギャップ5μmとして貼着した後、基板間にフッ素系の液晶を注入して封止し、液晶パネルを作製した。さらに、液晶パネルの光入射側、光出射側の外表面に各々偏光子を貼着し、本発明のアクティブマトリクス型の透過型液晶装置を作製した。なお、TFTアレイ基板と対向基板は、配向膜の配向方向が互いに直交するように貼着し、TN(Twisted Nematic)モードの液晶装置を作製した。
【0086】
(実施例2)
電極やTFT素子等の配向膜以外の必要な要素を形成したガラス基板上に、実施例1と同様にして、表面に配向制御層を有するポリイミド膜を形成した。さらに、配向制御層を形成したポリイミド膜の表面に、蒸着材料として、表3に示した配向性モノマーM26(ビフェニル−4−イルメタクリレート)を用いて、イオン化蒸着法により蒸着を行い、約10nmの膜厚の有機蒸着膜(ポリビフェニル−4−イルメタクリレート膜)を形成した。
以上のようにして、TFTアレイ基板と対向基板とを作製し、実施例1と同様にして、TNモードのアクティブマトリクス型の透過型液晶装置を作製した。
【0087】
(従来例)
表面に配向制御層を有するポリイミド膜上に有機蒸着膜を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、TNモードのアクティブマトリクス型の透過型液晶装置を作製した。
【0088】
(耐久性試験)
以下のようにして、各実施例、従来例において、得られた液晶装置の耐久性試験を行った。
液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧未満の時、液晶分子は配向膜の表面配向に従って小さいプレチルト角で配列し、液晶層への印加電圧が液晶のしきい値電圧を超えると、液晶分子は電界方向に沿うように配列を変化させる。そして、液晶分子の配列によって、液晶層を透過した後の光の偏光方向が変わるので、光出射側の偏光子を通過する光量が変化する。つまり、液晶装置においては、印加電圧(V)と光透過率(T)との間には所定の関係がある。
各実施例、従来例において得られた液晶装置を70℃の温度下で、10lm/mm2の光束密度の可視光を照射した時の、印加電圧(V)と光透過率(T)との間の関係、すなわちV/T曲線を経時的に測定し、印加電圧が低い時の光透過率が大きく変動し、V/T曲線が大きく変動するまでの耐久時間を測定した。なお、印加電圧が低い時の光透過率が大きく変動するということは、配向膜の液晶配向制御機能が低下し、印加電圧が低い時の液晶分子のプレチルト角が大きくなったことを意味する。
【0089】
(評価結果)
実施例1、2において得られた液晶装置の耐久時間は、従来例において得られた液晶装置の耐久時間に比較して、各々3倍、2倍であり、本発明によれば、配向制御層を有する有機膜上に有機蒸着膜を形成することによって、配向膜の耐久性を大幅に向上できることが判明した。また、実施例1、2において得られた液晶装置の表示特性は、従来例において得られた液晶装置とほぼ同等であり、形成した有機蒸着膜の液晶配向制御機能は配向制御層とほぼ同等であることが判明した。
【0090】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、液晶配向制御機能を長期に渡って維持することができ、耐久性に優れた配向膜及びその形成方法を提供することができる。また、本発明の配向膜を備えることにより、耐久性に優れた液晶装置を提供することができる。また、本発明の液晶装置を備えることにより、耐久性に優れた投射型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る実施形態の透過型液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図である。
【図2】 図2は、本発明に係る実施形態の透過型液晶装置のTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を示す平面図である。
【図3】 図3は、本発明に係る実施形態の透過型液晶装置の構造を示す断面図である。
【図4】 図4は、本発明に係る実施形態の透過型液晶装置に備えられた配向膜の構造を示す拡大断面図である。
【図5】 図5は、イオン化蒸着装置の構造を模式的に示す図である。
【図6】 図6は、上記実施形態の液晶装置を備えた投射型表示装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
10…TFTアレイ基板
20…対向基板
10A、20A…基板本体
1a…半導体層
11a…第1遮光膜
23…第2遮光膜
12…第1層間絶縁膜
4…第2層間絶縁膜
7…第3層間絶縁膜
30…画素スイッチング用TFT素子
9…画素電極
21…共通電極
6a…データ線
3a…走査線
50…液晶層
40、60…配向膜
41…有機膜
42…配向制御層
43…有機蒸着膜
Claims (5)
- 前記有機蒸着膜が、前記有機膜よりも、波長400〜450nmの光吸収が少ないことを特徴とする請求項1に記載の配向膜。
- 液晶層を挟持して対向配置された一対の基板のうち、少なくとも一方の基板の前記液晶層側最表面に、請求項1または請求項2に記載の配向膜を備えたことを特徴とする液晶装置。
- 光源と、前記光源からの光を変調する請求項4に記載の液晶装置からなる光変調手段と、前記光変調手段により変調された光を投射する投射手段とを備えたことを特徴とする投射型表示装置。
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