JP2002287153A - 液晶装置及びその製造方法、並びに電子機器 - Google Patents

液晶装置及びその製造方法、並びに電子機器

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JP2002287153A
JP2002287153A JP2001291026A JP2001291026A JP2002287153A JP 2002287153 A JP2002287153 A JP 2002287153A JP 2001291026 A JP2001291026 A JP 2001291026A JP 2001291026 A JP2001291026 A JP 2001291026A JP 2002287153 A JP2002287153 A JP 2002287153A
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film
voltage
crystal device
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Kosuke Fukui
甲祐 福井
Shuhei Yamada
周平 山田
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 配向膜の耐久性を確保することができるとと
もに、電圧無印加時における液晶層内の液晶分子の配向
状態を維持することができる、表示品質に優れた液晶装
置及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 TFTアレイ基板10、対向基板20の
液晶層50側最表面に、それぞれ一段階の斜方蒸着法に
より形成された無機斜方蒸着膜からなる配向膜40、6
0を設け、液晶層50内には液晶分子50aの初期配向
状態に従って所定の形状に形成され、電圧無印加時にお
ける液晶分子50aの配向状態を維持する機能を有する
ポリマー分散体51を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶装置及びその
製造方法、並びに電子機器に係り、特に、耐光性や耐熱
性に優れるとともに、電圧無印加時における液晶層内の
液晶分子の配向状態を安定して維持することが可能な液
晶装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液晶プロジェクタ等の投射型表示装置に
搭載される光変調手段や、携帯電話等に搭載される直視
型表示装置として用いられる液晶装置は、液晶層を挟持
して対向配置され、液晶層に電圧を印加するための電極
を具備する一対の基板を主体として構成されており、液
晶装置を構成する一対の基板の液晶層側最表面には、各
々、電圧無印加時における液晶分子の配列を制御する配
向膜が形成されている。そして、電圧無印加時、電圧印
加時における液晶分子の配列を光学的に識別することに
より表示を行うことが可能な構成になっている。
【0003】配向膜としては、一般にポリイミドなどの
配向性高分子などからなり、表面にラビング処理を施さ
れたものが用いられており、かかる構造の配向膜を用い
ることにより、表面形状効果及び配向性高分子と液晶分
子との分子相互作用の双方により、電界無印加時におけ
る液晶分子の配向状態を規制することが可能な構造にな
っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構
造の配向膜を備えた液晶装置を、直視型表示装置に比較
して強い光源を用いる投射型表示装置に搭載する場合に
は、有機高分子からなる配向膜の耐光性や耐熱性が十分
でないため、光や熱によって配向膜が劣化し、その結
果、配向膜による液晶分子の配向規制力が低下して、液
晶分子の配向状態が乱れ、コントラストが低下する等の
表示不良が生じることがある。
【0005】そこで、この問題を解決するために、配向
膜を、斜方蒸着法により形成され、液晶分子を配向させ
ることが可能な所定の表面形状を有し、酸化シリコンな
どの無機材料からなる無機斜方蒸着膜により構成するこ
とが提案されている。無機斜方蒸着膜からなる配向膜
は、透明電極を形成した基板上に、基板に対して所定の
方向から無機材料を蒸着させ、基板に対して所定の角度
で配列した柱状構造物を成長させることにより形成され
る。このようして形成される配向膜は無機材料からなる
ため耐光性や耐熱性に優れ、液晶装置の耐久性を向上す
ることができるという利点を有している。
【0006】しかしながら、ポリイミドなどの配向性高
分子からなる配向膜では、先に述べたように、表面形状
効果及び配向性高分子と液晶分子との分子相互作用の双
方によって液晶分子の配向状態を規制するのに対し、無
機斜方蒸着膜からなる配向膜では、表面形状効果によっ
てのみ液晶分子の配向状態を規制するため、配向性高分
子からなる配向膜に比較して液晶分子の配向規制力が弱
いという問題点を有している。
【0007】そのため、無機斜方蒸着膜からなる配向膜
を形成した場合には、液晶セル内に液晶を注入した直後
には液晶層内のすべての液晶分子を所定の配向状態に規
制することができるものの、時間の経過とともに、画素
周辺部などから液晶分子の配向状態が乱れ始め、液晶分
子の初期配向状態、すなわち電圧無印加時における液晶
分子の配向状態を維持できず、コントラスト等の表示品
質が悪化するという恐れがある。
【0008】また、無機斜方蒸着膜からなる配向膜を形
成する際に、基板を固定して一方向からのみ蒸着を行う
一段階の斜方蒸着法を採用した場合は、形成される配向
膜の配向規制力が弱いため、基板を回転させて蒸着を行
う回転斜方蒸着法や、基板の向きを変えて二回蒸着を行
う二段階の斜方蒸着法などを採用せざるを得ず、その結
果、配向膜の形成工程が複雑化するという問題点も有し
ている。
【0009】そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされ
たもので、配向膜の耐久性を確保することができるとと
もに、電圧無印加時における液晶層内の液晶分子の配向
状態を安定して維持することができる、表示品質に優れ
た液晶装置及びその製造方法を提供することを目的とす
る。また、この液晶装置を備えることにより、耐久性に
優れるとともに表示品質の優れた電子機器を提供するこ
とを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、液晶層内に
おいて、初期配向状態の液晶分子間にネットワーク状の
ポリマー分散体を形成することにより、無機斜方蒸着膜
からなる配向規制力の弱い配向膜を形成する場合におい
ても、ポリマー分散体の存在によって、電圧無印加時に
おける液晶層内の液晶分子の配向状態を安定して維持す
ることができることを見出し、本発明を完成するに到っ
た。
【0011】本発明の液晶装置は、液晶層を挟持して対
向配置された一対の基板の前記液晶層側表面に、前記液
晶層の液晶分子を配向させるための配向膜がそれぞれ形
成された液晶装置であって、前記配向膜が一段階の斜方
蒸着法により形成された無機斜方蒸着膜からなるととも
に、前記液晶層内にポリマー分散体が形成されたことを
特徴とする。すなわち、無機斜方蒸着膜からなる配向膜
を形成した従来の液晶装置では、配向膜が、特定の方向
に傾斜して配列した柱状構造物を具備して構成され、そ
の表面形状によってのみ液晶分子の配向状態を規制して
いたのに対し、本発明の液晶装置では、配向膜とポリマ
ー分散体の双方により液晶分子の配向状態を規制するこ
とができる構造になっている。
【0012】また、液晶層に電圧を印加して液晶分子が
配向状態を変化させても、ポリマー分散体の形状は変化
せず、電圧無印加時、電圧印加時の双方において、ポリ
マー分散体の形状を維持することができる。さらに、ポ
リマー分散体は、液晶層に電圧を印加する際には液晶分
子の配向状態の変化を阻害しないように、液晶層内にお
いて所定の濃度で形成される。
【0013】このように、液晶層内にポリマー分散体を
形成することにより、電圧無印加時においてはポリマー
分散体の存在によって液晶分子の配向状態を安定して維
持することができるとともに、電圧印加時にはポリマー
分散体が液晶分子の配向状態の変化を阻害しないため、
液晶分子が良好に配向状態を変化させることができ、コ
ントラストの良い表示品質の優れた液晶装置を提供する
ことができる。
【0014】さらに、本実施形態の液晶装置では、無機
斜方蒸着膜からなる配向膜を形成する構成としたので、
配向膜が耐光性や耐熱性に優れた無機材料からなるた
め、投射型表示装置などの強い光源を用いる電子機器に
備えられる場合においても、配向膜の耐久性を確保する
ことができる。なお、本明細書において、「電圧無印加
時」、「電圧印加時」とは、それぞれ「液晶層への印加
電圧が液晶のしきい値電圧未満であるとき」、「液晶層
への印加電圧が液晶のしきい値電圧以上であるとき」を
意味している。
【0015】また、本発明者は、本発明の液晶装置では
配向膜とポリマー分散体の双方により液晶分子の配向状
態を規制する構造としているため、一段階の斜方蒸着法
により、配向規制力の弱い配向膜を形成した場合におい
ても、ポリマー分散体により、液晶分子を良好に配向さ
せることができることを見出した。すなわち、一段階の
斜方蒸着法により形成された配向膜は、柱状構造物が一
方向にのみ傾斜して配列した、一方向性を有する斜方蒸
着膜となるが、本発明では、かかる構成の配向規制力の
弱い配向膜を形成した場合においても、ポリマー分散体
により、液晶分子を良好に配向させることができること
を見出した。したがって、本発明の液晶装置によれば、
無機斜方蒸着膜からなる配向膜を形成する際に、一段階
の斜方蒸着法により配向膜を形成すればよく、また、ラ
ビング処理等も不要であるため、配向膜の形成工程を簡
略化することができる。
【0016】また、本発明の液晶装置において、前記一
対の基板のうち少なくとも一方の基板には、前記液晶層
に電圧を印加するための電極が設けられるが、前記電極
を具備する基板において、前記電極と前記配向膜との間
には、前記電極から前記液晶層側に不純物が拡散するこ
とを防止するための不純物拡散防止膜を形成することが
好ましい。
【0017】本発明の液晶装置に備えられた無機斜方蒸
着膜からなる配向膜は、特定の方向に傾斜して配列した
柱状構造物を具備して構成されるが、かかる配向膜にお
いては、隣接する柱状構造物間が空隙になっている。し
たがって、電極から拡散した金属やイオン等の不純物が
配向膜の空隙を通過して液晶層にまで拡散し、液晶やポ
リマー分散体を劣化させる恐れがあるが、電極と配向膜
との間に、不純物拡散防止膜を形成することにより、金
属やイオン等の不純物が電極から液晶層に拡散すること
を防止することができるので、液晶やポリマー分散体の
劣化を防止することができ、液晶装置の耐久性を一層向
上することができる。なお、不純物拡散防止膜として
は、酸化シリコン等からなる膜を例示することができ
る。
【0018】また、上述のように、本発明の液晶装置に
備えられた無機斜方蒸着膜からなる配向膜は、特定の方
向に傾斜して配列した柱状構造物を具備して構成される
が、本発明を、一対の基板の双方が、液晶層に電圧を印
加するための電極を具備すると共に、液晶層が負の誘電
率異方性を有する液晶からなる液晶装置に適用する場合
には、配向膜を構成する無機材料の蒸着方向を、基板の
法線方向から50〜65°傾斜した方向とすることが好
ましい。
【0019】一対の基板の双方が、液晶層に電圧を印加
するための電極を具備すると共に、液晶分子の短軸方向
が長軸方向に比較して分極しやすい、負の誘電率異方性
を有する液晶層を具備する液晶装置では、電圧無印加時
に、液晶層内の液晶分子が配向膜によって制御され、所
定の方向に配列するのに対し、電圧印加時には、液晶層
内の液晶分子が、その長軸方向を一対の基板間に発生す
る縦電界の方向に対して略垂直な方向に向けて配列する
ため、電圧無印加時、電圧印加時における液晶分子の配
列を光学的に識別し、表示を行うことができる。
【0020】かかる構造の液晶装置では、電圧無印加時
の液晶のプレチルト角は、基板の法線方向と基板近傍の
液晶分子の長軸方向とのなす角に相当するが、本発明者
は、配向膜を構成する無機材料の蒸着方向と基板の法線
方向とのなす角が50°未満では、電圧無印加時の液晶
のプレチルト角が1°未満となり、液晶分子の長軸方向
が基板面に対して垂直状態となるため、液晶分子の向き
が変化していく方向を制御することができず、配向膜に
よる液晶の配向規制力が低下し、コントラストが低下す
る恐れがあることを見出した。
【0021】また、本発明者は、配向膜を構成する無機
材料の蒸着方向と基板の法線方向とのなす角が65°超
では、電圧無印加時の液晶のプレチルト角が5°超と大
きくなりすぎ、電圧印加時の液晶分子の配列方向に近づ
くため、電圧無印加時と電圧印加時における液晶装置の
光透過率の差が小さくなり、コントラストが低下する恐
れがあることを見出した。これに対して、配向膜を構成
する無機材料の蒸着方向を、基板の法線方向から50〜
65°傾斜した方向とすることにより、電圧無印加時に
おける液晶のプレチルト角を1〜5°程度とすることが
でき、コントラストの良い液晶装置を提供することがで
きることを見出した。
【0022】また、本発明を、一対の基板の双方が、液
晶層に電圧を印加するための電極を具備すると共に、液
晶層が正の誘電率異方性を有する液晶からなる液晶装置
に適用する場合にも、配向膜を構成する無機材料の蒸着
方向を、基板の法線方向から50〜65°傾斜した方向
とすることが好ましい。
【0023】一対の基板の双方が、液晶層に電圧を印加
するための電極を具備すると共に、液晶分子の長軸方向
が短軸方向に比較して分極しやすい、正の誘電率異方性
を有する液晶層を具備する液晶装置では、電圧無印加時
に、液晶層内の液晶分子が配向膜によって制御され、所
定の方向に配列するのに対し、電圧印加時には、液晶層
内の液晶分子が、その長軸方向を一対の基板間に発生す
る縦電界の方向に対して略平行方向に向けて配列するた
め、電圧無印加時、電圧印加時における液晶分子の配列
を光学的に識別し、表示を行うことができる。
【0024】かかる構造の液晶装置では、電圧無印加時
の液晶のプレチルト角は、基板の表面と基板近傍の液晶
分子の長軸方向とのなす角に相当するが、本発明者は、
配向膜を構成する無機材料の蒸着方向と基板の法線方向
とのなす角が50°未満では、電圧無印加時の液晶のプ
レチルト角が1°未満となり、電圧無印加時において、
液晶分子の長軸方向が基板面に対して平行状態となるた
め、液晶分子の向きが変化していく方向を制御すること
ができず、配向膜による液晶の配向規制力が低下し、コ
ントラストが低下する恐れがあることを見出した。
【0025】また、本発明者は、配向膜を構成する無機
材料の蒸着方向と基板の法線方向とのなす角が65°超
では、電圧無印加時の液晶のプレチルト角が5°超と大
きくなりすぎ、電圧印加時の液晶分子の配列方向に近づ
くため、電圧無印加時と電圧印加時における液晶装置の
光透過率の差が小さくなり、コントラストが低下する恐
れがあることを見出した。これに対して、配向膜を構成
する無機材料の蒸着方向を、基板の法線方向から50〜
65°傾斜した方向とすることにより、電圧無印加時に
おける液晶のプレチルト角を1〜5°程度とすることが
でき、コントラストの良い液晶装置を提供することがで
きることを見出した。
【0026】また、前記液晶層において、前記ポリマー
分散体の濃度が、液晶の重量に対して0.1〜5重量%
であることが望ましい。ポリマー分散体の濃度が液晶の
重量に対して0.1重量%未満では、ポリマー分散体に
よる液晶分子の配向規制力が弱くなる恐れがあり、液晶
の重量に対して5重量%を超えると液晶分子の所定の配
向動作を妨げる恐れがあるためである。
【0027】上記の本発明の液晶装置は、以下の本発明
の液晶装置の製造方法によって製造することができる。
本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板の表面に、
それぞれ一段階の斜方蒸着法により無機斜方蒸着膜から
なる配向膜を形成する工程と、前記配向膜を形成した前
記一対の基板を貼着して液晶セルを形成する工程と、前
記液晶セル内に、液晶と高分子前駆体との混合物を注入
する工程と、前記液晶セル内に注入された前記高分子前
駆体から前記ポリマー分散体を形成する工程とを有する
ことを特徴とする。
【0028】高分子前駆体としては、例えば液晶性紫外
線硬化型モノマーあるいは液晶性紫外線硬化型オリゴマ
ーを用いることができ、この場合には、液晶セル内に注
入された高分子前駆体に紫外線を照射することにより、
高分子前駆体を重合させて高分子化することにより、ポ
リマー分散体を形成することができる。
【0029】液晶セル内に液晶と高分子前駆体との混合
物を注入した後、液晶分子は無機斜方蒸着膜からなる配
向膜の表面形状に従って配向する。上述したように、ポ
リイミドなどの配向性高分子からなる配向膜に比較し
て、一段階の斜方蒸着法により形成された無機斜方蒸着
膜からなる配向膜の液晶分子に対する配向規制力は小さ
いが、液晶を注入した後の初期において液晶層内の液晶
分子をすべて良好に配向することができる程度の配向規
制力は有している。
【0030】したがって、本発明の液晶装置の製造方法
によれば、液晶セル内に液晶と高分子前駆体との混合物
を注入し、液晶分子を配向膜の表面形状に従って良好に
配向させた後、液晶セル内に注入された高分子前駆体に
紫外線を照射するなどして、高分子前駆体を高分子化し
てポリマー分散体を形成することにより、初期配向状態
の液晶分子間に所定の形状に形成され、液晶分子の初期
配向状態(電圧無印加時における液晶分子の配向状態)
を維持する機能を有するポリマー分散体を容易に形成す
ることができる。
【0031】なお、本明細書において、「液晶性紫外線
硬化型モノマー(オリゴマー)」とは、「それ自身が液
晶相を持つ紫外線硬化型モノマー(オリゴマー)、ある
いは、それ自身は液晶相を持たないが、液晶と混合して
もその液晶性を崩さない紫外線硬化型モノマー(オリゴ
マー)」と定義する。
【0032】また、本発明の液晶装置では配向膜とポリ
マー分散体の双方により液晶分子の配向状態を規制する
構造としているため、一段階の斜方蒸着法により、配向
規制力の弱い配向膜を形成した場合においても、ポリマ
ー分散体により、液晶分子を良好に配向させることがで
きる。したがって、本発明の液晶装置の製造方法によれ
ば、無機斜方蒸着膜からなる配向膜を形成する際に、一
段階の斜方蒸着法により配向膜を形成すればよく、ま
た、ラビング処理等も不要であるため、配向膜の形成工
程を簡略化することができる。
【0033】また、上記の本発明の液晶装置を備えるこ
とにより、耐久性に優れるとともに表示品質の優れた電
子機器を提供することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る実施形態につ
いて詳細に説明する。なお、各実施形態においては、図
面を参照しながら説明するが、各図において、各層や各
部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各
層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0035】[第1実施形態]図1〜図5に基づいて、
スイッチング素子としてTFT(Thin-Film Transisto
r)素子を用いた、垂直配向モードのアクティブマトリ
クス型の透過型液晶装置を例として、本発明に係る第1
実施形態の液晶装置の構造について詳述する。本実施形
態においては、配向膜及び液晶層の構造が特に特徴的な
ものとなっている。
【0036】図1は本実施形態の透過型液晶装置の画像
表示領域を構成するマトリクス状に配置された複数の画
素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図で
ある。図2はデータ線、走査線、画素電極等が形成され
たTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の構造を
示す平面図である。図3は本実施形態の透過型液晶装置
の構造を示す断面図であって、図2のA−A’線断面図
である。図4、図5は、それぞれ電界無印加時、電界印
加時の液晶分子の配向状態を模式的に示す拡大概略断面
図である。また、本実施形態では、後述する対向基板側
から光が入射し、TFTアレイ基板側から光が出射して
表示が行われる場合を例として説明する。
【0037】本実施形態の透過型液晶装置において、図
1に示すように、画像表示領域を構成するマトリクス状
に配置された複数の画素には、画素電極9と当該画素電
極9を制御するためのスイッチング素子であるTFT素
子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給され
るデータ線6aが当該TFT素子30のソースに電気的
に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S
1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給される
か、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグ
ループ毎に供給される。
【0038】また、走査線3aがTFT素子30のゲー
トに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対し
て走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングで
パルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はT
FT素子30のドレインに電気的に接続されており、ス
イッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオ
ンすることにより、データ線6aから供給される画像信
号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込
む。
【0039】画素電極9を介して液晶に書き込まれた所
定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する
共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加さ
れる電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化する
ことにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここ
で、保持された画像信号がリークすることを防止するた
めに、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容
量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0040】(平面構造)次に、図2に基づいて、本実
施形態の透過型液晶装置の平面構造について説明する。
図2に示すように、TFTアレイ基板上に、インジウム
錫酸化物(以下、「ITO」と略す。)等の透明導電性
材料からなる矩形状の画素電極9(点線部9Aにより輪
郭を示す)が複数、マトリクス状に設けられており、画
素電極9の縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査
線3a及び容量線3bが設けられている。本実施形態に
おいて、各画素電極9及び各画素電極9を囲むように配
設されたデータ線6a、走査線3a、容量線3b等が形
成された領域が画素であり、マトリクス状に配置された
画素毎に表示を行うことが可能な構造になっている。
【0041】データ線6aは、TFT素子30を構成す
る例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち、
後述のソース領域にコンタクトホール5を介して電気的
に接続されており、画素電極9は、半導体層1aのう
ち、後述のドレイン領域にコンタクトホール8を介して
電気的に接続されている。また、半導体層1aのうち、
後述のチャネル領域(図中左上がりの斜線の領域)に対
向するように走査線3aが配置されており、走査線3a
はチャネル領域に対向する部分でゲート電極として機能
する。
【0042】容量線3bは、走査線3aに沿って略直線
状に伸びる本線部(すなわち、平面的に見て、走査線3
aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交
差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中上向
き)に突出した突出部(すなわち、平面的に見て、デー
タ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。そ
して、図2中、右上がりの斜線で示した領域には、複数
の第1遮光膜11aが設けられている。
【0043】より具体的には、第1遮光膜11aは、各
々、半導体層1aのチャネル領域を含むTFT素子30
をTFTアレイ基板側から見て覆う位置に設けられてお
り、さらに、容量線3bの本線部に対向して走査線3a
に沿って直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差
する箇所からデータ線6aに沿って隣接する後段側(す
なわち、図中下向き)に突出した突出部とを有する。第
1遮光膜11aの各段(画素行)における下向きの突出
部の先端は、データ線6a下において次段における容量
線3bの上向きの突出部の先端と重なっている。この重
なった箇所には、第1遮光膜11aと容量線3bとを相
互に電気的に接続するコンタクトホール13が設けられ
ている。すなわち、本実施形態では、第1遮光膜11a
は、コンタクトホール13により前段あるいは後段の容
量線3bに電気的に接続されている。
【0044】(断面構造)次に、図3に基づいて、本実
施形態の透過型液晶装置の断面構造について説明する。
図3に示すように、本実施形態の透過型液晶装置におい
ては、TFTアレイ基板10と、これに対向配置される
対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。T
FTアレイ基板10は、石英等の透光性材料からなる基
板本体10Aとその液晶層50側表面に形成された画素
電極9、TFT素子30、配向膜40を主体として構成
されており、対向基板20はガラスや石英等の透光性材
料からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面に形
成された共通電極21と配向膜60とを主体として構成
されている。
【0045】より詳細には、TFTアレイ基板10にお
いて、基板本体10Aの液晶層50側表面には画素電極
9が設けられ、各画素電極9に隣接する位置に、各画素
電極9をスイッチング制御する画素スイッチング用TF
T素子30が設けられている。画素スイッチング用TF
T素子30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を
有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界に
よりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域
1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート
絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース
領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの
高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備
えている。
【0046】また、上記走査線3a上、ゲート絶縁膜2
上を含む基板本体10A上には、高濃度ソース領域1d
へ通じるコンタクトホール5、及び高濃度ドレイン領域
1eへ通じるコンタクトホール8が開孔した第2層間絶
縁膜4が形成されている。つまり、データ線6aは、第
2層間絶縁膜4を貫通するコンタクトホール5を介して
高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。さら
に、データ線6a上及び第2層間絶縁膜4上には、高濃
度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が開孔
した第3層間絶縁膜7が形成されている。つまり、高濃
度ドレイン領域1eは、第2層間絶縁膜4及び第3層間
絶縁膜7を貫通するコンタクトホール8を介して画素電
極9に電気的に接続されている。
【0047】また、本実施形態では、ゲート絶縁膜2を
走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として
用い、半導体膜1aを延設して第1蓄積容量電極1fと
し、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積
容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されて
いる。
【0048】また、TFTアレイ基板10の基板本体1
0Aの液晶層50側表面において、各画素スイッチング
用TFT素子30が形成された領域には、TFTアレイ
基板10を透過し、TFTアレイ基板10の図示下面
(TFTアレイ基板10と空気との界面)で反射され
て、液晶層50側に戻る戻り光が、少なくとも半導体層
1aのチャネル領域1a’及び低濃度ソース、ドレイン
領域(LDD領域)1b、1cに入射することを防止す
るための第1遮光膜11aが設けられている。また、第
1遮光膜11aと画素スイッチング用TFT素子30と
の間には、画素スイッチング用TFT素子30を構成す
る半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的に絶縁す
るための第1層間絶縁膜12が形成されている。また、
図2に示したように、TFTアレイ基板10に第1遮光
膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を
介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線
3bに電気的に接続するように構成されている。
【0049】また、TFTアレイ基板10の液晶層50
側最表面には、画素電極9及び画素電極9が形成されて
いない領域の第3層間絶縁膜7を覆うように、電圧無印
加時における液晶層50内の液晶分子の配向を制御する
ための配向膜40が形成されている。本実施形態におい
て、配向膜40は、酸化シリコン(SiO、SiO
2等)などの無機材料を斜方蒸着法により蒸着すること
により形成され、特定の方向に傾斜して配列した多数の
柱状構造物を具備する無機斜方蒸着膜により構成されて
おり、その表面形状によって、電圧無印加時における液
晶分子の配向状態を規制することが可能な構造になって
いる。また、本実施形態において、配向膜40は、一段
階の斜方蒸着法により形成されたものであり、配向膜4
0は、多数の柱状構造物が一方向にのみ傾斜して配列し
た、一方向性を有する斜方蒸着膜となっている。なお、
図3では、第3層間絶縁膜7の表面が多数の段差を有す
る場合について図示しているが、配向膜40を形成する
際に、段差の陰になり無機材料が蒸着されない部分が生
じる恐れがある場合には、第3層間絶縁膜7の表面をC
MP(化学的機械的研磨)法等により平坦化しておくこ
とが好ましい。かかる構成とすることにより、良好な配
向膜40を形成することができる。
【0050】また、TFTアレイ基板10において、配
向膜40の直下、すなわち、画素電極9及び第3層間絶
縁膜7と配向膜40との間には、金属やイオン等の不純
物が画素電極9から液晶層50側に拡散することを防止
するための不純物拡散防止膜41が形成されている。こ
の不純物拡散防止膜41は、酸化シリコン(SiO、S
iO2等)などの無機材料からなっている。なお、配向
膜40は柱状構造物を多数具備して構成されているた
め、隣接する柱状構造物間に空隙を有するのに対し、不
純物拡散防止膜41は空隙のない緻密な膜により構成さ
れている。また、TFTアレイ基板10の液晶層50側
と反対側の表面には、所定の偏光のみを透過する偏光子
15が貼着されている。
【0051】他方、対向基板20には、基板本体20A
の液晶層50側表面であって、データ線6a、走査線3
a、画素スイッチング用TFT素子30の形成領域に対
向する領域、すなわち各画素部の開口領域以外の領域
に、入射光が画素スイッチング用TFT素子30の半導
体層1aのチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1
b、低濃度ドレイン領域1cに侵入することを防止する
ための第2遮光膜23が設けられている。さらに、第2
遮光膜23が形成された基板本体20Aの液晶層50側
には、そのほぼ全面に渡って、ITO等からなる共通電
極21が形成されている。
【0052】また、対向基板20の液晶層50側最表面
には、電圧無印加時における液晶層50内の液晶分子の
配向を制御するための配向膜60が形成されている。ま
た、共通電極21と配向膜60との間には、金属やイオ
ン等の不純物が共通電極21から液晶層50側に拡散す
ることを防止するための不純物拡散防止膜61が形成さ
れている。これら配向膜60、不純物拡散防止膜61
は、各々、TFTアレイ基板10の配向膜40、不純物
拡散防止膜41と同一の構造を有するものである。ま
た、対向基板20の液晶層50側と反対側の表面には、
所定の偏光のみを透過する偏光子25が貼着されてい
る。
【0053】(液晶層の内部構造)次に、図4、図5に
基づいて、電圧無印加時及び電圧印加時における液晶層
50の内部構造について説明する。図4、図5は、それ
ぞれ電圧無印加時、電圧印加時の液晶分子の配向状態を
示す拡大概略断面図である。図4、図5において、符号
50aは液晶分子、符号51は後述するポリマー分散体
を示している。なお、図4、図5においては、TFT素
子30、画素電極9、共通電極21等の図示を省略して
いる。
【0054】液晶層50に用いる液晶としては、垂直配
向し得るものであればいかなる液晶を用いても良いが、
例えば、液晶分子の短軸方向が長軸方向に比較して分極
しやすい、負の誘電率異方性を有する液晶を用いること
ができ、配向膜40、60の表面形状と液晶とを適宜組
み合わせることにより、電圧無印加時において、図4に
示すように、液晶層50内の各液晶分子50aを、TF
Tアレイ基板10(対向基板20)の表面に対して略垂
直な方向、具体的にはTFTアレイ基板10(対向基板
20)の法線方向Lに対して所定のチルト角θだけ傾斜
した方向に配向させることができる。本実施形態におい
ては、配向膜40、60を構成する無機材料の蒸着方向
を基板法線Lから50〜65°傾斜した方向になるよう
に、配向膜40、60を形成することが好ましく、かか
る構成とすることにより、電圧無印加時における液晶分
子50aのプレチルト角θを1〜5°程度とすることが
できる。
【0055】一方、電圧印加時には、図5に示すよう
に、液晶層50内の液晶分子50aがTFTアレイ基板
10(対向基板20)の表面に対して略平行方向に配向
するように構成されており、図4、図5に示す配向状態
を光学的に識別することにより、表示を行うことが可能
な構造になっている。
【0056】図4に示すように、液晶層50内には、初
期配向状態(電圧無印加時の配向状態)の液晶分子50
a間に互いにネットワーク状に連鎖されたポリマー分散
体51が形成されており、このポリマー分散体51によ
って、電圧無印加時における液晶分子50aの配向状態
を維持できる構造になっている。なお、図4において
は、ポリマー分散体51の形状を模式的に示しており、
ポリマー分散体51の形状は図4に示すものに限定され
るものではない。
【0057】また、詳細については後述するが、ポリマ
ー分散体51は高分子前駆体を重合することにより形成
されたものであり、液晶層50に電圧を印加することに
より液晶分子50aの配向状態を変化させても、ポリマ
ー分散体51の形状は影響を受けない。したがって、図
4、図5に示すように、電圧無印加時、電圧印加時の双
方においてポリマー分散体51の形状は維持される。
【0058】また、ポリマー分散体51は、電圧無印加
時における液晶分子50aに対して配向規制力を有する
とともに、液晶による表示特性、すなわち電圧無印加
時、電圧印加時の液晶分子50aの所定の配向動作を妨
げないように、液晶層50内に所定の濃度で形成されて
いる。ポリマー分散体51の濃度は、例えば、液晶の重
量に対して0.1〜5重量%程度とすることが望まし
い。液晶の重量に対して0.1重量%未満では、ポリマ
ー分散体51による液晶分子50aの配向規制力が弱く
なる恐れがあり、液晶の重量に対して5重量%を超える
と液晶分子50aの所定の配向動作を妨げる恐れがある
ためである。
【0059】このように液晶層50内にポリマー分散体
51を形成することにより、電圧無印加時においては、
配向膜40、60とポリマー分散体51の双方により液
晶分子50aの配向状態を規制することができるので、
配向膜40、60近傍の液晶分子50aのみならず、液
晶層50全体に渡って液晶分子50aを図4に示した配
向状態に良好かつ安定に維持させることができる。
【0060】そして、電圧印加時においては、液晶分子
50aの配向状態の変化がポリマー分散体51によって
阻害されないため、液晶層50内の液晶分子50aを図
5に示したように、良好に水平配向させることが可能と
なり、コントラスト等の表示特性のよい垂直配向モード
の液晶装置を得ることができる。
【0061】(液晶装置の製造方法)次に、上記構造の
液晶装置の製造方法を例として、本発明に係る実施形態
の液晶装置の製造方法について説明する。本実施形態の
液晶装置の製造方法においては、特に、配向膜40、6
0及び液晶層50の形成方法が特に特徴的なものとなっ
ている。
【0062】はじめに、基板本体10Aの表面に、第1
遮光膜11a、TFT素子30、画素電極9等を形成し
た後、画素電極9が形成された側の表面に対して法線方
向から、酸化シリコンなどの無機材料を蒸着するなどし
て、空隙のない緻密な不純物拡散防止膜41を形成す
る。
【0063】次に、不純物拡散防止膜41を形成した基
板本体10Aに対して、所定の方向から、酸化シリコン
などの無機材料を斜方蒸着することにより、特定の方向
に傾斜して配列した多数の柱状構造物を具備する無機斜
方蒸着膜からなる配向膜40を形成する。なお、配向膜
40を形成する際の蒸着方向を制御することにより、電
圧無印加時の液晶のプレチルト角θを制御することがで
きる。すなわち、本実施形態では、蒸着角度(蒸着方向
と基板法線Lとのなす角)を50〜65°として、配向
膜40を形成することが好ましい。以上のようにして、
偏光子15以外の必要な要素が形成されたTFTアレイ
基板10を製造することができる。
【0064】一方、基板本体20Aの表面に、第2遮光
膜23、共通電極21を順次形成した後、不純物拡散防
止膜61と配向膜60とを順次積層形成することによ
り、偏光子25以外の必要な要素が形成された対向基板
10を製造することができる。不純物拡散防止膜61、
配向膜60の形成方法は、TFTアレイ基板10の不純
物拡散防止膜41、配向膜40の形成方法と同様である
ので、説明は省略する。
【0065】なお、従来は、斜方蒸着法により配向膜を
形成する際に、回転斜方蒸着法や二段階の斜方蒸着法な
どを採用することにより、表面形状が均一な配向膜を形
成する必要があったが、本実施形態では、配向膜40、
60とポリマー分散体51の双方により液晶分子50a
の配向状態を規制する構造としているため、配向膜4
0、60の配向規制力が弱い場合においても液晶分子5
0aを良好に配向させることができる。したがって、回
転斜方蒸着法や二段階の斜方蒸着法などを採用せずに一
段階の斜方蒸着法により配向膜40、60を形成すれば
良い。このように、本実施形態では、一段階の斜方蒸着
法により配向膜40、60を形成すればよく、また、ラ
ビング処理等も不要であるため、配向膜40、60の形
成工程を簡略化することができる。
【0066】次に、配向膜40、60を形成したTFT
アレイ基板10と対向基板20のうち一方の基板の周縁
部に、熱硬化性接着剤や光硬化性接着剤などからなる未
硬化のシール材を塗布した後、未硬化のシール材を介し
て、配向膜40と60とが互いに対向配置されるよう
に、TFTアレイ基板10と対向基板20とを貼着し、
その後未硬化のシール材を硬化することにより、液晶セ
ルを作製する。
【0067】次に、液晶に、ポリマー分散体51を形成
し得る所定の濃度の高分子前駆体を均一に混合させた混
合物を調製し、この混合物を液晶セルのシール材の一部
に形成された液晶注入孔から液晶セル内に、真空注入法
などの方法により注入することにより、所定の濃度の高
分子前駆体を含有する液晶層50を形成する。その後、
液晶注入孔を熱硬化性接着剤や光硬化性接着剤からなる
封止材により封止する。
【0068】液晶セル内に液晶と高分子前駆体との混合
物を注入した後、液晶分子50aは配向膜40、60の
表面形状に従って配向する。なお、ポリイミドなどの配
向性高分子からなる配向膜に比較して、無機斜方蒸着膜
からなる配向膜40、60の液晶分子50aに対する配
向規制力は弱いが、液晶を注入した後の初期において液
晶層50内のすべての液晶分子50aを良好に配向する
ことができる程度の配向規制力は有している。
【0069】高分子前駆体としては、それ自身が液晶相
を持つものを用いることができ、例えば液晶性紫外線硬
化型モノマーあるいはそれらのオリゴマーを用いること
ができる。用いる高分子前駆体の詳細な構造については
後述する。液晶層50を図4に示した初期配向状態とし
た後、液晶層50内に含有された高分子前駆体からポリ
マー分散体51を形成する。高分子前駆体として、紫外
線硬化型モノマーあるいはそれらのオリゴマーを用いた
場合には、液晶セルに、例えば300〜400nm程度
の紫外線を3〜15mW/cm2程度の強度で、10〜
60分間程度照射し、高分子前駆体を重合して高分子化
することにより、初期配向状態の液晶分子50a間に、
図4に示した所定の形状を有するポリマー分散体51を
容易に形成することができる。最後に、液晶セルの外側
に偏光子15、偏光子25を取り付けることにより、上
記構造の液晶装置が製造される。
【0070】ここで、用いる高分子前駆体の詳細な構造
について説明する。高分子前駆体としては、上述したよ
うに、それ自身が液晶相を持つものを用いることがで
き、例えば液晶性紫外線硬化型モノマーあるいはそれら
のオリゴマーを用いることができ、具体的には、例えば
下記表1または表2に記載した構造を有するモノマー、
もしくはこれらのモノマーを重合させて得られるオリゴ
マーから、1種もしくは複数種組み合わせて使用するこ
とができる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】また、上記表1および表2以外に記載した
高分子前駆体以外にも例えば下記〔化1〕の一般式
(A)で表される高分子前駆体を1種もしくは複数種組
み合わせて使用することもできる。
【化1】
【0074】なお上記式中、Y1およびY2は、メタク
リレート基、アクリレート基、水素原子、アルキル基、
アルコキシ基、フッ素原子、シアノ基のいずれかを示す
が、Y1およびY2の少なくとも一方はメタクリレート
基またはアクリレート基のいずれかを示し、A1は存在
せずその両側のベンゼン環同士が単結合で直結している
か、またはA1は下記〔化2〕の一般式(B)〜(E)
のいずれかの基または酸素原子、あるいは硫黄原子のい
ずれかを示し、A1の両側のベンゼン環の水素原子はす
べて水素原子であるか、または少なくとも1つの水素原
子がハロゲン原子によって置換されているものであって
もよい。
【0075】
【化2】
【0076】また、本発明に用いられる高分子前駆体と
しては、上記以外にもそれ自身が液晶相を持つものであ
るか、あるいは、それ自身は液晶相を持たないが、液晶
と混合してもその液晶を崩さないものを用いることがで
き、これらの高分子前駆体を総称して液晶性を有する高
分子前駆体と呼ぶ。
【0077】また、上記高分子前駆体には、光吸収剤、
脱励起剤、抗酸化剤のうちから選択される一種または二
種以上の添加剤を添加してもよい。上記光吸収剤として
は、例えば、光吸収帯域が270〜450nmに存在す
るものを用いることができ、具体的には、ベンゾトリア
ゾール、ヒンダードアミン、セラミック粒子などを使用
できる。上記脱励起剤としては、ビフェニル、カルバゾ
ール、ベンゾフェノンなどを用いることができる。上記
抗酸化剤としては、ヒドロキノン、2,5−ジ−ter
t.−ブチルヒドロキノン、フェノール類、リン化合
物、硫黄化合物などを用いることができる。上記のよう
な添加剤の添加量は、上記高分子前駆体の0.1〜10
重量%程度とすることが望ましい。
【0078】なお、本実施形態においては、液晶性の高
分子前駆体として液晶性紫外線硬化型モノマーあるいは
それらのオリゴマーを用いる場合について説明したが、
例えば熱硬化型のモノマーを使用することもできる。具
体的には、例えば下記〔化3〕に示すようなエポキシ基
を持つ化合物(例えば、Epon 828,MK−10
7,EGDE)とアルコール(例えば、Capcure
3−800)またはアミン(例えば4−(ω−アミノ
アルコキシ)−4’−シアノビフェニル)の混合モノマ
ーを使用することができる。
【0079】このような熱硬化型のモノマーを使用する
場合には、液晶と高分子前駆体との混合物を液晶セル内
に注入し、液晶分子50aを初期配向状態とした後、熱
硬化型のモノマーを重合するために加熱するが、その
際、例えばEpon 828とCapcure 3−8
00では60℃で3時間程度加熱すればよい。
【化3】
【0080】また、前記のようにして形成されるポリマ
ー分散体51の形状は、用いる高分子前駆体の種類や重
合条件(紫外線照射により重合する場合には温度や紫外
線強度、加熱により重合する場合には温度や加熱時間)
により異なる。すなわち、ポリマー分散体51を構成す
る各ポリマーは、例えば線状や粒状など種々の形状に形
成される。また、液晶層50内において、ポリマー分散
体51を構成する各ポリマーの分布も同様に異なる。す
なわち、各ポリマーは液晶層50の深さ方向に対して均
一に分布することもあるし、基板(TFTアレイ基板1
0、対向基板20)付近において密度が高くなることも
ある。
【0081】このようにポリマー分散体51を構成する
各ポリマーはいかなる形状や分布状態を有していても良
いが、液晶層50内にポリマー分散体51を形成するこ
とによって、液晶分子50aのプレチルト状態を良好に
維持させることが可能になり、たとえ、画素間に生じる
横電界により画素周辺部にプレチルト方向と異なる方向
に液晶分子50aを倒す力が作用したり、実際に画素周
辺部の液晶分子50aが倒れたとしても、画素周辺部の
みに留まり、画素中心部への波及が防止され、コントラ
スト等が良好な明るい表示が可能となればよい。
【0082】本実施形態によれば、液晶層50内にポリ
マー分散体51を形成する構成としたので、電圧無印加
時においてはポリマー分散体51の存在によって液晶分
子50aの配向状態を安定して維持することができると
ともに、電圧印加時にはポリマー分散体51が液晶分子
50aの配向状態の変化を阻害しないため、液晶分子5
0aが良好に配向状態を変化させることができ、コント
ラストの良い表示品質の優れた液晶装置を提供すること
ができる。
【0083】さらに、本実施形態では、無機斜方蒸着膜
からなる配向膜40、60を形成する構成としたので、
配向膜40、60が耐光性や耐熱性に優れた無機材料か
らなるため、投射型表示装置などの強い光源を用いる電
子機器に備えられる場合においても、配向膜40、60
の耐久性を確保することができる。
【0084】また、無機斜方蒸着膜からなる配向膜は、
隣接する柱状構造物間に空隙を有するため、電極から拡
散した金属やイオン等の不純物が配向膜の空隙を通過し
て液晶層に拡散し、液晶やポリマー分散体を劣化させる
恐れがあるが、本実施形態では、画素電極9と配向膜4
0との間、共通電極23と配向膜60との間に、各々不
純物拡散防止膜41、61を形成する構成としているの
で、金属やイオン等の不純物が画素電極9、共通電極2
1から液晶層50側に拡散することを防止し、液晶やポ
リマー分散体の劣化を防止することができ、液晶装置の
耐久性を一層向上することができる。
【0085】なお、不純物拡散膜41、61の膜厚は、
10〜100nmであることが好ましい。不純物拡散膜
41、61の膜厚が10nm未満では、上述の効果を十
分に得られない恐れがあり、100nmを超えた場合に
は、液晶層50と電極(画素電極9、共通電極21)と
の距離が増し、液晶層50の駆動電圧が増大するため、
好ましくない。
【0086】また、本実施形態では、配向膜40、60
を構成する無機材料の蒸着方向を基板法線Lから50〜
65°傾斜した方向になるように、配向膜40、60を
形成する構成とした。かかる構成とすることにより、電
圧無印加時における液晶分子50aのプレチルト角θを
1〜5°程度とすることができ、コントラストの良い液
晶装置を提供することができる。
【0087】なお、配向膜40、60を構成する無機材
料の蒸着方向と基板の法線方向Lとのなす角が50°未
満では、電圧無印加時の液晶のプレチルト角θが1°未
満となり、液晶分子50aの長軸方向が基板面に対して
垂直状態となるため、液晶分子50aの向きが変化して
いく方向を制御することができず、配向膜40、60に
よる液晶の配向規制力が低下し、コントラストが低下す
る恐れがある。
【0088】また、配向膜40、60を構成する無機材
料の蒸着方向と基板の法線方向Lとのなす角が65°超
では、電圧無印加時の液晶のプレチルト角が5°超と大
きくなりすぎ、電圧印加時の液晶分子の配列方向に近づ
くため、電圧無印加時と電圧印加時における液晶装置の
光透過率の差が小さくなり、コントラストが低下する恐
れがある。
【0089】また、本実施形態の液晶装置の製造方法に
よれば、液晶セル内に液晶と高分子前駆体との混合物を
注入し、液晶分子を初期配向状態にした後、液晶セル内
に注入された高分子前駆体に紫外線を照射するなどし
て、高分子前駆体を高分子化してポリマー分散体51を
形成することにより、初期配向状態の液晶分子間に所定
の形状に形成され、液晶分子の初期配向状態(電圧無印
加時における液晶分子の配向状態)を維持する機能を有
するポリマー分散体51を容易に形成することができ
る。
【0090】なお、本実施形態においては、垂直配向モ
ードの液晶装置についてのみ説明したが、本発明はこれ
に限定されるものではなく、本発明は、STN(Super
Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モ
ードなど、電圧無印加時の液晶分子50aの配向状態が
いかなる液晶装置にも適用することができる。本発明
を、STNモード、TNモード等の表示モードの液晶装
置に適用する場合には、液晶層を、液晶分子の長軸方向
が短軸方向に比較して分極しやすい、正の誘電率異方性
を有する液晶により構成すれば良い。この場合には、電
圧無印加時に、液晶層内の液晶分子が配向膜によって制
御され、所定の方向に配列するのに対し、電圧印加時に
は、液晶層内の液晶分子が、その長軸方向を一対の基板
間に発生する縦電界の方向に対して略平行方向に向けて
配列するため、電圧無印加時、電圧印加時における液晶
分子の配列を光学的に識別し、表示を行うことができ
る。
【0091】また、このように、液晶層を、正の誘電率
異方性を有する液晶により構成し、STNモード、TN
モード等の表示を行う場合には、電圧無印加時の液晶の
プレチルト角は、基板の表面と基板近傍の液晶分子の長
軸方向とのなす角に相当するが、配向膜を構成する無機
材料の蒸着方向と基板の法線方向とのなす角を50〜6
5°とすることにより、コントラストの良い液晶装置を
提供することができる。
【0092】[第2実施形態]次に、図6に基づいて、
パッシブマトリクス型の透過型液晶装置を例として、本
発明に係る第2実施形態の液晶装置について説明する。
図6は本実施形態の液晶装置の全体構成を示す斜視図で
ある。図6に示すように、本実施形態の透過型液晶装置
は、液晶層(図示略)を挟持して対向配置された下側基
板70と上側基板80とを具備して概略構成されてい
る。
【0093】より詳細には、下側基板70は、基板本体
71の液晶層側表面に、ストライプ状に形成された多数
の透明電極72と不純物拡散防止膜(図示略)と配向膜
(図示略)とを順次具備して構成され、上側基板80
は、基板本体81の液晶層側表面に、ストライプ状に形
成された多数の透明電極82と不純物拡散防止膜(図示
略)と配向膜(図示略)とを順次具備して構成されてい
る。なお、図示するように、下側基板70の透明電極7
2と上側基板80の透明電極82とは互いに交差する方
向に形成されている。また、本実施形態の透過型液晶装
置を構成する液晶層、配向膜、不純物拡散防止膜の構造
は、第1実施形態の液晶装置と全く同様である。
【0094】このように、本発明は、パッシブマトリク
ス型液晶装置にも適用することができ、第1実施形態の
アクティブマトリクス型液晶装置と同様の効果を得るこ
とができる。すなわち、本実施形態によれば、配向膜の
耐久性を確保することができるとともに、電圧無印加時
における液晶層内の液晶分子の配向状態を安定して維持
することができる、表示品質に優れた液晶装置を提供す
ることができる。
【0095】なお、上記の各実施形態においては、TF
T素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置、パッ
シブマトリクス型液晶装置についてのみ説明したが、本
発明はこれに限定されるものではなく、TFD(Thin-F
ilm Diode)素子に代表される2端子型素子を用いたア
クティブマトリクス型液晶装置等にも適用可能である。
また、上記の各実施形態においては、透過型液晶装置を
取り上げて説明したが、本発明はこれに限定されるもの
ではなく、反射型液晶装置、半透過反射型液晶装置にも
適用可能であり、いかなる構造の液晶装置にも適用する
ことができる。
【0096】[電子機器]次に、本発明の上記第1、第
2実施形態の透過型液晶装置のいずれかを備えた電子機
器の具体例について説明する。図7は、上記第1、第2
実施形態の液晶装置のいずれかを光変調装置として用い
た投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。図7
において、810は光源、813、814はダイクロイ
ックミラー、815、816、817は反射ミラー、8
18は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出
射レンズ、822、823、824は液晶光変調装置、
825はクロスダイクロイックプリズム、826は投写
レンズを示す。
【0097】光源810はメタルハライド等のランプ8
11とランプの光を反射するリフレクタ812とからな
る。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー813
は、光源810からの光束のうちの赤色光を透過させる
とともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色
光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用液晶光変
調装置822に入射される。
【0098】一方、ダイクロイックミラー813で反射
された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイック
ミラー814によって反射され、緑色光用液晶光変調装
置823に入射される。一方、青色光は第2のダイクロ
イックミラー814も透過する。青色光に対しては、長
い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リ
レーレンズ819、出射レンズ820を含むリレーレン
ズ系からなる導光手段821が設けられ、これを介して
青色光が青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0099】各光変調装置により変調された3つの色光
はクロスダイクロイックプリズム825に入射する。こ
のプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その
内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘
電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電
体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像
を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系で
ある投写レンズ826によってスクリーン827上に投
写され、画像が拡大されて表示される。
【0100】また、図8(a)は、携帯電話の一例を示
した斜視図である。図8(a)において、500は携帯
電話本体を示し、501は上記第1、第2実施形態の液
晶装置のいずれかを備えた液晶表示部を示している。図
8(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理
装置の一例を示した斜視図である。図8(b)におい
て、600は情報処理装置、601はキーボードなどの
入力部、603は情報処理本体、602は上記第1、第
2実施形態の液晶装置のいずれかを備えた液晶表示部を
示している。図8(c)は、腕時計型電子機器の一例を
示した斜視図である。図8(c)において、700は時
計本体を示し、701は上記第1、第2実施形態の液晶
装置のいずれかを備えた液晶表示部を示している。
【0101】図7、図8(a)〜(c)に示す電子機器
は、上記実施形態の液晶装置を備えたものであるので、
耐久性に優れるとともに表示品質の優れたものとなる。
また、本発明は、特に、強い光源を用いる図7に示す電
子機器において有効である。なお、本発明の技術範囲は
上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨
を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可
能である。
【0102】
【実施例】次に、本発明に係る実施例について説明す
る。 (実施例1)画素毎にインジウム錫酸化物からなる画素
電極とTFT素子を形成したTFTアレイ基板と、共通
電極を形成した対向基板に、それぞれ電子ビーム蒸着法
を用い、基板の法線方向から65°傾斜した方向から酸
化シリコン(SiO)を蒸着し、膜厚50nm程度の無
機斜方蒸着膜からなる配向膜を形成した。なお、TFT
アレイ基板上の配向膜を形成する際の蒸着方向と、対向
基板上の配向膜を形成する際の蒸着方向とを180°ず
らして配向膜を形成した。このようにして作製したTF
Tアレイ基板と対向基板とをセル厚3μmで貼着して液
晶セルを作製した。
【0103】液晶として、負の誘電率異方性を示すフッ
素系液晶組成物を用い、高分子前駆体として液晶性モノ
アクリレート(大日本インキ化学工業株式会社製、UV
キュアラブル液晶 Mixture C)を用い、この高分子前
駆体を液晶の重量に対して1%添加した混合物を液晶セ
ル内に注入し、液晶注入孔を封止した後、50℃で35
0nmの紫外線を3.5mW/cm2の強度で約30分
間照射することにより、液晶セル内にポリマー分散体を
形成した。さらに、液晶セルの光入射側、光出射側の外
表面に各々偏光子を貼着し、本発明の垂直配向モードの
アクティブマトリクス型液晶装置を作製した。なお、電
圧無印加時に黒表示となるように、偏光子の偏光軸等を
設計した。
【0104】(従来例)配向膜として、ポリイミドから
なり表面にラビング゛処理を施したものを形成し、液晶
層内にポリマー分散体を形成しなかった以外は実施例1
と同様にして、従来の垂直配向モードのアクティブマト
リクス型液晶装置を作製した。
【0105】(耐久性試験)上記の実施例1、従来例に
おいて、得られた液晶装置の耐久性試験を行った。垂直
配向モードの液晶装置では、図4、図5に基づいて説明
したように、電圧無印加時、電圧印加時において、液晶
分子は配列を変化させるが、液晶分子の配列によって、
液晶層を透過した後の光の偏光方向が変わるので、光出
射側の偏光子を透過する光量が変化する。すなわち、液
晶分子の配列によって液晶装置の光透過率は変化する。
実施例1、従来例において得られた液晶装置を、50℃
の温度下で、15lm/mm2の光束密度の可視光を照
射した時の、白表示時の光透過率の経時変化を測定し
た。なお、実施例1、従来例において得られた液晶装置
の作製直後の白表示時の光透過率を各々100%として
評価した。
【0106】(評価結果)実施例1、従来例において得
られた液晶装置の白表示時の光透過率の経時変化を測定
した結果を図9に示す。図9に示すように、実施例1に
おいて得られた液晶装置では、3000時間近くまで試
験を続けても白表示時の光透過率はほとんど変化しなか
った。これに対して、従来例において得られた液晶装置
では、約900時間試験を行ったところで、白表示時の
光透過率は0%となり、白表示を行うことができなかっ
た。これは、従来例の液晶装置では、配向膜が劣化し、
配向膜による液晶分子の配向規制力が低下したためであ
る。
【0107】以上の結果から、本発明によれば、無機斜
方蒸着膜からなる配向膜を形成すると共に、液晶層内に
ネットワーク状のポリマー分散体を形成することによ
り、強い光源を照射した場合においても、配向膜の耐久
性を確保することができるとともに、電圧無印加時にお
ける液晶層内の液晶分子の配向状態を安定して維持する
ことができる、表示品質に優れた液晶装置を提供するこ
とができることが判明した。また、実施例1において得
られた液晶装置を、液晶プロジェクタのライトバルブと
して、また携帯電話や腕時計およびワープロやパソコン
等の電子機器の表示装置として用いることによって、耐
久性に優れるとともに、コントラストが良く表示品質の
優れた電子機器を得ることができた。
【0108】(実施例2)配向膜を形成する際の蒸着角
度(蒸着方向と基板法線とのなす角)を50〜80°の
範囲で変えて、上記実施例1と同様の垂直配向モードの
アクティブマトリクス型液晶装置を複数種類作製した。
得られた液晶装置の電圧無印加時における液晶のプレチ
ルト角及びコントラスト比を測定し、蒸着角度と電圧無
印加時の液晶のプレチルト角との関係、及び液晶のプレ
チルト角と表示のコントラスト比との関係について評価
を行った。ここで、コントラスト比は、クロスニコル下
における電圧印加時の最大透過光強度値を、電圧無印加
時の透過光強度値で、除したものである。
【0109】得られた結果を図10、図11に示す。図
10、図11に示すように、配向膜を形成する際の蒸着
角度を大きくするにつれて、電圧無印加時の液晶のプレ
チルト角が大きくなり、蒸着角度を50〜65°とする
ことにより、電圧無印加時の液晶のプレチルト角を1〜
5°程度とすることができ、300以上のコントラスト
比が得られることが判明した。
【0110】なお、コントラスト比が300以上では、
コントラスト比の異なる画像を肉眼で観察してもその違
いはほとんど認識されないが、コントラスト比が300
以上の画像と300未満の画像とを肉眼で観察すると明
らかに違いが感じられることから、コントラスト比が3
00以上あれば、コントラストに優れていると言える。
したがって、配向膜を形成する際の蒸着角度を基板の法
線方向から50〜65°とすることにより、電圧無印加
時の液晶のプレチルト角を1〜5°程度とすることがで
き、コントラストに優れた液晶装置を提供することがで
きることが判明した。
【0111】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
無機斜方蒸着膜からなる配向膜を設け、液晶層内にポリ
マー分散体を形成する構成としたので、配向膜の耐久性
を確保することができるとともに、電圧無印加時におけ
る液晶層内の液晶分子の配向状態を安定して維持するこ
とができる、表示品質に優れた液晶装置を提供すること
ができる。また、本発明によれば、斜方蒸着法により無
機斜方蒸着膜からなる配向膜を形成した一対の基板を貼
着して液晶セルを形成した後、液晶セル内に液晶と高分
子前駆体との混合物を注入し、液晶分子を初期配向状態
にしてから、高分子前駆体を高分子化してポリマー分散
体を形成することにより、液晶分子の初期配向状態に従
って所定の形状を有し、液晶分子の初期配向状態を維持
する機能を有するポリマー分散体を容易に形成すること
ができる液晶装置の製造方法を提供することができる。
また、本発明の液晶装置を備えることにより、耐久性に
優れるとともに、表示品質の優れた電子機器を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る第1実施形態の透過型
液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に配置
された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等
の等価回路図である。
【図2】 図2は、本発明に係る第1実施形態の透過型
液晶装置のTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群
の構造を示す平面図である。
【図3】 図3は、本発明に係る第1実施形態の透過型
液晶装置の構造を示す断面図である。
【図4】 図4は、本発明に係る第1実施形態の透過型
液晶装置において、電圧無印加時における液晶分子の配
向状態を模式的に示す概略断面図である。
【図5】 図5は、本発明に係る第1実施形態の透過型
液晶装置において、電圧印加時における液晶分子の配向
状態を模式的に示す概略断面図である。
【図6】 図6は、本発明に係る第2実施形態の透過型
液晶装置を示す斜視図である。
【図7】 図7は、上記実施形態の液晶装置を光変調装
置として用いた投射型表示装置の要部を示す概略構成図
である。
【図8】 図8(a)は、上記実施形態の液晶装置を備
えた携帯電話の一例を示す図、図8(b)は、上記実施
形態の液晶装置を備えた携帯型情報処理装置の一例を示
す図、図8(c)は、上記実施形態の液晶装置を備えた
腕時計型電子機器の一例を示す図である。
【図9】 図9は、実施例1、従来例において得られた
液晶装置の白表示時の光透過率の経時変化を測定した結
果を示す図である。
【図10】 図10は、実施例2で作製した液晶装置
の、蒸着角度と電圧無印加時の液晶のプレチルト角との
関係を示す図である。
【図11】 図11は、実施例2で作製した液晶装置
の、液晶のプレチルト角と表示のコントラスト比との関
係を示す図である。
【符号の説明】
10…TFTアレイ基板 20…対向基板 30…画素スイッチング用TFT素子 9…画素電極 21…共通電極 50…液晶層 50a…液晶分子 40、60…配向膜 41、61…不純物拡散防止膜 51…ポリマー分散体 70…下側基板 80…上側基板 72、82…透明電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H089 HA04 JA04 KA08 QA01 QA12 QA13 QA15 TA04 TA05 UA05 2H090 HA03 HC01 HD15 KA11 MA02 MB06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液晶層を挟持して対向配置された一対の
    基板の前記液晶層側表面に、前記液晶層の液晶分子を配
    向させるための配向膜がそれぞれ形成された液晶装置で
    あって、 前記配向膜が一段階の斜方蒸着法により形成された無機
    斜方蒸着膜からなるとともに、 前記液晶層内にポリマー分散体が形成されたことを特徴
    とする液晶装置。
  2. 【請求項2】 前記一対の基板のうち少なくとも一方の
    基板が、前記液晶層に電圧を印加するための電極を具備
    すると共に、 前記電極を具備する基板において、前記電極と前記配向
    膜との間に、前記電極から前記液晶層側に不純物が拡散
    することを防止するための不純物拡散防止膜が形成され
    たことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
  3. 【請求項3】 前記不純物拡散防止膜が酸化シリコンか
    らなることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
  4. 【請求項4】 前記一対の基板の双方が、前記液晶層に
    電圧を印加するための電極を具備すると共に、 前記配向膜を構成する無機材料の蒸着方向が、前記基板
    の法線方向から50〜65°傾斜した方向であることを
    特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に
    記載の液晶装置。
  5. 【請求項5】 前記液晶層において、前記ポリマー分散
    体の濃度が、液晶の重量に対して0.1〜5重量%であ
    ることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれ
    か一項に記載の液晶装置。
  6. 【請求項6】 一対の基板の表面に、それぞれ一段階の
    斜方蒸着法により無機斜方蒸着膜からなる配向膜を形成
    する工程と、 前記配向膜を形成した前記一対の基板を貼着して液晶セ
    ルを形成する工程と、 前記液晶セル内に、液晶と高分子前駆体との混合物を注
    入する工程と、 前記液晶セル内に注入された前記高分子前駆体から前記
    ポリマー分散体を形成する工程とを有することを特徴と
    する液晶装置の製造方法。
  7. 【請求項7】 用いる前記高分子前駆体が液晶性紫外線
    硬化型モノマーあるいは液晶性紫外線硬化型オリゴマー
    からなるとともに、 前記液晶セル内に注入された前記高分子前駆体に紫外線
    を照射することにより、前記ポリマー分散体を形成する
    ことを特徴とする請求項6に記載の液晶装置の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 請求項1から請求項5までのいずれか一
    項に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機
    器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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