JP3887696B2 - コネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パネルに取り付けられるコネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車のドアパネルに取り付けられるコネクタの一例として特開平8−293352号公報に記載されたものが知られている。このものは、図24に示すように、ハウジング1がパネルPに開口して設けられた取付孔Hに対して貫通させつつ取り付けられるようになっており、取り付けに際しては、パネルPの図示右面に対してハウジング1に設けられたフランジ2を当接させつつ係止部3を取付孔Hを通過させた後にパネルPの左面に係止させることで、係止部3とフランジ2によりパネルPを挟み込み、もってパネルPに対してハウジング1を取り付け状態に保持するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ハウジング1をパネルPに取り付ける際に、作業者は、ハウジング1が取り付け途中であるにも拘わらず正規に取り付けられたと勘違いして作業を終了してしまう場合がある。この取り付け途中の状態では、ハウジング1がパネルPに対してしっかりと固定されないため、このまま放置されるのは問題であった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、パネルに対してコネクタハウジングが取り付け途中の状態で放置されるのを防ぐことを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、パネルに開口して設けられた取付孔に貫通した状態で取り付けられるコネクタハウジングを備え、このコネクタハウジングには、前記パネルに対してコネクタハウジングを取付状態に保持するための保持手段が設けられているものにおいて、コネクタハウジングとパネルのいずれか一方には、待機位置から検知位置へ移動可能な検知部材が組み付けられるのに対し、コネクタハウジングとパネルの他方側には、前記検知部材に設けられた検知部に干渉可能な規制部が設けられ、パネルに対してコネクタハウジングが取り付け途中のときは、前記検知部が前記規制部に干渉することで検知部材の検知位置への移動動作が規制され、コネクタハウジングが正規に取り付けられると、検知部が規制部と非干渉になって検知部材を検知位置まで移動できるようになっており、且つ、前記検知部材を前記待機位置に保持するためのロック手段が設けられており、また、前記コネクタハウジングと前記パネルの他方側には、前記コネクタハウジングをパネルに取り付けるのに伴って、前記ロック手段による前記検知部材の保持状態を解除可能な解除手段が設けられ、さらに、前記保持手段は、前記コネクタハウジングに設けられるとともに、前記パネルのうちコネクタハウジングが取り付けられる側の面に当接可能な突き当て部と、パネルのうちコネクタハウジングが取り付けられる側とは反対側の面に係止することで前記突き当て部との間でパネルを挟み込む固定係止部及び弾性係止部とを備え、コネクタハウジングの取り付け時には、先に前記固定係止部を前記取付孔に通過させてパネルに係止させた後に、前記弾性係止部を取付孔の孔縁により撓ませつつ取付孔を通過させてパネルに係止させるようにし、前記検知部材が前記コネクタハウジングに組み付けられるとともに前記パネルに対するコネクタハウジングの取付方向と交差する向きに沿って移動可能とされており、前記ロック手段は、前記検知部材に設けられるとともに弾性変形可能とされ、且つパネルに対するコネクタハウジングの取り付けに伴って前記固定係止部と共に取付孔を通過するロック片と、コネクタハウジングに設けられるとともにロック片が係止されることで検知部材を待機位置に保持可能なロック部とにより構成される一方、前記解除手段は、コネクタハウジングの取り付けに伴って前記ロック片を押圧してロック部から解離させつつ撓み変形させる取付孔の孔縁により構成され、且つ、前記ロック片には、前記取付孔の孔縁により押圧されるのに伴って撓み方向へ案内可能な解除案内面が設けられているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記コネクタハウジングを前記パネルの裏側から取り付けるものにおいて、前記検知部材には、パネルの表側からの移動操作を可能とする操作部が設けられているところに特徴を有する。
【0008】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
コネクタハウジングがパネルに正規に取り付けられると、検知部が規制部と非干渉となるので検知部材を検知位置まで移動させることができる。一方、パネルに対してコネクタハウジングを取り付ける途中の段階で検知部材を移動させようとしても、検知部が規制部に干渉することで検知位置まで移動することができない。このように検知部材を検知位置まで移動できるか否かに基づいてパネルに対するコネクタハウジングの取付状態を検知することができる。
しかも、ロック手段により検知部材を待機位置に保持することができるから、コネクタハウジングをパネルに取り付ける前の段階で検知部材を不用意に検知位置側へ移動させるような事態を回避することができ、もって作業性が良好なものとなる。
また、パネルに対するコネクタハウジングの取付動作を利用して解除手段によりロック手段による検知部材の保持状態を解除するようにしたから、作業性が良好となる。
さらに、パネルに対してコネクタハウジングを取り付ける過程では、先に固定係止部及びロック片を取付孔に通過させるのに伴って、固定係止部をパネルに係止させるとともにロック片が取付孔の孔縁に押圧されることでロック部から解離されてその係止状態を解除しつつ撓み変形される。このとき、ロック片には、解除案内面が設けられているから、取付孔の孔縁によりロック片が円滑に撓まされる。その後、弾性係止部を取付孔に通過させてパネルに係止させる。
解除手段として既存構造である取付孔を利用しているから、パネルに対して解除手段専用の格別な構造を設ける必要がなく、低コストとすることができる。しかも、解除案内面によりロック片を円滑に撓ませることができ、作業性も良好となる。
【0009】
<請求項2の発明>
コネクタハウジングをパネルの裏側から取り付ける場合でも、パネルの表側、すなわち作業者側から検知部材の移動操作を行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1ないし図23によって説明する。この実施形態では、自動車のドアのパネルに取り付けられるコネクタを示す。このものは、パネルPに開口して形成された取付孔Hに対してパネルPの裏側から雄コネクタハウジング20(以下、単に雄ハウジング20という)が貫通した状態で取り付けられ、その雄ハウジング20に対して雌コネクタハウジング10(以下、単に雌ハウジング10という)がパネルPの表側から嵌合されるようになっている。なお、以下では、雄ハウジング20のパネルPに対する取付方向を前方として説明する。
【0013】
雌ハウジング10は、合成樹脂製とされ、図15及び図16に示すように、略ブロック状に形成されるとともに、内部には図示しない雌端子金具を収容可能なキャビティ11が複数室並んで設けられている。雌ハウジング10の長辺側外側面には、断面略コ字型をなすレバー12を回動可能に軸支する軸ピン13が一対設けられ、この軸ピン13が嵌合されるレバー12の軸孔14の周囲には、雄ハウジング20側の引っ掛け受け部24に引っ掛けるための引っ掛け部15と、嵌合凸部25を嵌合するための嵌合凹部16が設けられている。両ハウジング10,20をある程度嵌合させた後に、レバー12を図18に示す初期位置から図20に示す嵌合位置まで約90度反時計回り方向へ回動させることで引っ掛け部15が引っ掛け受け部24に係合し、そのてこ作用によって両ハウジング10,20が正規深さまで嵌合されるようになっている。雌ハウジング10のうち図15の右側外側面には、一段高くなって形成されるとともに前後方向に沿って延出する撓み規制部17が一対設けられており、この撓み規制部17は、両ハウジング10,20の嵌合に伴って後述する弾性係止部31に設けられた溝部33内に進入可能とされている。
【0014】
雄ハウジング20は、合成樹脂製とされ、図1及び図2に示すように、雄端子金具(図示せず)を収容可能なキャビティ21を雌ハウジング10側と対応する位置に複数室備えた端子収容部22と、端子収容部22から前方へ突出する略長方形の筒状に形成されるとともにその内側に前方から雌ハウジング10が嵌合可能とされるフード部23とを備えている。フード部23の長辺部分の内面には、共に内方に張り出す引っ掛け受け部24と嵌合凸部25とが前後に並んで形成されている。なお、フード部23の長辺部分には、雄ハウジング20の成形時に引っ掛け受け部24及び嵌合凸部25を型抜きするための型抜き孔26が側方へ開口して設けられており、この型抜き孔26を通して引っ掛け受け部24及び嵌合凸部25とレバー12の引っ掛け部15及び嵌合凹部16との位置関係を外部から視認可能となっている。
【0015】
フード部23の前端よりもやや後方位置の外周面には、雄ハウジング20のパネルPへの取り付けに伴ってパネルPの裏面Pa(パネルPのうち雄ハウジング20が取り付けられる側の面)に当接可能なフランジ27が張り出して設けられている。フード部23のうちフランジ27よりも前方へ突出した部分がパネルPへの取り付け時に取付孔Hに嵌合・貫通してパネルPの表側へ突出する貫通部28とされている。貫通部28のうち図1の下側には、検知部材50を収容可能な検知部材収容部29が連結して設けられており、この検知部材収容部29も貫通部28と共に取付孔Hに嵌合・貫通されてパネルPの表側へ突出されるようになっている。またフランジ27は、この検知部材収容部29の周囲をも取り囲んで設けられている。
【0016】
貫通部28のうち図1の右側の長辺部分における前端外面からは、フランジ27に対向するように張り出す固定係止部30が一対設けられる一方、図1の左側の長辺部分には、スリットを入れることで片持ち状の弾性係止部31が一対設けられている。弾性係止部31は、雄ハウジング20の短辺方向に沿って内方へ撓み変形可能とされており、図4に示すように、その前端外面からはフランジ27に対向する係止爪32が突設されている。弾性係止部31及び係止爪32の前面側には、後方へ向かって上り勾配をなすテーパ面が形成されている。
【0017】
これら固定係止部30及び弾性係止部31の係止爪32は、雄ハウジング20をパネルPに取り付けると、取付孔Hを通過した後にパネルPの表面Pb(パネルPのうち雄ハウジング20が取り付けられる側とは反対側の面)に係止されてフランジ27との間でパネルPを挟み込むことができるようになっている(図8)。この取り付け過程では、弾性係止部31は、テーパ面が取付孔Hの孔縁後部により押圧されることでその傾斜に案内されて内方へ撓まされるようになっている(図6)。なお図1の上側の固定係止部30と弾性係止部31は、上下位置がほぼ同じとされているが、下側の固定係止部30が検知部材収容部29に連結されるのに対し、下側の弾性係止部31がそれよりも上方位置に配されている。
【0018】
弾性係止部31の内面側には、弾性係止部31が撓み易くなるように溝部33が形成されており、この溝部33には、弾性係止部31が自然状態のときは雌ハウジング10の撓み規制部17の進入が許容される一方、弾性係止部31が内方へ撓まされた状態では撓み規制部17の進入が規制されるようになっている。そして、撓み規制部17が溝部33内に進入することで弾性係止部31の撓みが規制されるようになっている(図21)。なお、溝部33を含めた弾性係止部31よりも内方の所定空間が弾性係止部31の撓みを許容する撓み空間となっている。
【0019】
検知部材収容部29は、図1及び図3に示すように、貫通部28の短辺部分から長辺方向に沿って張り出す前後一対の前壁34及び後壁35を備え、両壁34,35のうち図1の下端部と右側端部とがそれぞれ側壁36とストッパ壁37とにより連結されることで、全体として図1の左側へ開口する袋状に形成されている。雄ハウジング20がパネルPに取り付けられると、検知部材収容部29のうち前壁34がパネルPの表側へ突出するのに対し、後壁35は、その前面がパネルPの表面Pbから僅かに突出する位置に配されるようになっている(図9)。そして、検知部材収容部29内には、図1の左側から検知部材50が収容されるようになっている。
【0020】
検知部材50は、全体が略長方形の板状に形成され、検知部材収容部29内において両壁34,35に挟まれた状態で雄ハウジング20の短辺方向、言い換えるとパネルPに対する雄ハウジング20の取付方向と略直交する方向(=パネルPの平面方向)に沿って図1の左右(図3の上下)に移動可能とされている。検知部材50のうち図1の右寄り(図3の下寄り)の位置には、一対のスリットを入れることで撓み変形可能な両持ち状の保持アーム51が設けられており、その後面側には保持アーム51を撓み易くするための溝52が形成されている。保持アーム51の前面には、保持突部53が設けられており、この保持突部53が検知部材収容部29の前壁34に穿設された待機位置用保持孔38と検知位置用保持孔39とに係止されることで、検知部材50が図9及び図10に示す待機位置と図11及び図12に示す検知位置との2位置に保持されるようになっている。この保持突部53は、各保持孔38,39に係止される両側面が傾斜面となった山形に形成されているので、検知部材50に対して所定以上の操作力を付与することで各保持孔38,39との係止状態を解除しつつ保持アーム51が撓まされて検知部材50を移動できるようになっている。
【0021】
検知部材50は、待機位置では、図9及び図10に示すように、その全体が検知部材収容部29内に収められるとともにストッパ壁37により図10の右側(図9の下側)への遊動が規制される。一方、検知位置では、図11及び図12に示すように、検知部材50の図12の左端部(図11の上端部)が検知部材収容部29から図12の左側(弾性係止部31側)へ突出されるようになっており、この突出部分が検知部54とされている。この検知部54は、雄ハウジング20がパネルPに対して正規に取り付けられて始めてその全体がパネルPの表側に突出する。従って、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける途中の段階では、検知部54が取付孔H内に配されているため、検知部材50を検知位置側へ移動させようとしても検知部54が取付孔Hの内周面に干渉することで検知位置までの移動が規制される(図13)。一方、雄ハウジング20がパネルPに正規に取り付けられると、検知部54がパネルPの表側に突出して取付孔Hの内周面とは非干渉となるので、検知部材50を検知位置まで移動するのが許容される。この検知位置では、検知部54は、固定係止部30側とは反対の弾性係止部31側においてパネルPの表面Pbに係止されることでフランジ27との間でパネルPを挟み込むようになっている。
【0022】
検知部54の先端部後面側には、図3に示すように、後方に向かって下り勾配をなす案内面55が形成されている。この案内面55は、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける途中において、検知部54のうち前端部のみがパネルPの表側に突出した段階にて検知部材50を検知位置側へ移動させようとしたときに取付孔Hの孔縁前部に当接可能とされている(図14)。そして、検知部材50を検知位置へと移動させるのに伴って、案内面55と取付孔Hの孔縁前部とが摺接されることで、雄ハウジング20が正規に取付状態へと引き込まれて矯正されるようになっている。
【0023】
検知部材50の前面のうち保持アーム51と検知部54との間には、図1に示すように、検知部材50を移動操作するための操作部56が前方へ突出して設けられている。操作部56は、検知部材50を検知部材収容部29内に収容すると前壁34に形成された切欠部40を通してその前方へ突出し、雄ハウジング20をパネルPに取り付けられると、パネルPの表側に突出される。従って、パネルPの表側から操作部56を押圧操作することで検知部材50を移動できるようになっている。また操作部56における図3の下面は、操作時に指などを引っ掛け易くなるよう階段状に形成されている。
【0024】
検知部材50のうち検知部54とは反対側の端部からは、図1及び図3に示すように、撓み変形可能な片持ち状のロック片57が突設されている。ロック片57は、検知部材50の約半分の幅寸法及び厚み寸法を有するとともに検知部材50における図1の手前側に配設されている。ロック片57の先端部後面には、後方へ突出する鈎状のロック爪58が設けられている。これに対し、検知部材収容部29のうちストッパ壁37には、図1の手前側半分を切欠することでロック片57の挿通を許容する挿通孔41が形成されるとともに、後壁35には、ロック爪58の進入を許容する進入許容溝42が短辺方向に沿って図1の左方へ開口して設けられており、この進入許容溝42の図1の右側に残された部分が、ロック爪58を係止可能なロック部43とされている。
【0025】
検知部材50を待機位置へと収容する過程では、ロック爪58が進入許容溝42内に進入され、ロック片57が挿通孔41に挿通される。ロック部43のうち進入許容溝42に臨んだ側面は、テーパ状に形成されることで、ロック爪58がロック片57を撓ませつつロック部43を乗り越える動作を案内できるようになっている。検知部材50が待機位置に達すると、ロック片57は挿通孔41を通って検知部材収容部29から外部(固定係止部30側)に突出するとともに弾性復帰し、ロック爪58はロック部43のうち外側面(後壁35の外側面)に係止することで、待機位置とした検知部材50の図1の左方への遊動が規制される。このロック部43とロック爪58との係止面は、共に検知部材50の移動方向と直交する端面とされているので、既述した保持突部53と待機位置用保持孔38との係止よりも大きな係止力でもって検知部材50を待機位置にしっかりと保持することができる。
【0026】
この待機位置では、ロック爪58は、固定係止部30に隣接するとともにフランジ27に対向して配されており、フランジ27との間の距離は、パネルPの厚み寸法よりも小さくなっている。従って、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける際に固定係止部30をパネルPに引っ掛ける動作に伴って、ロック片57は、ロック爪58が取付孔Hの孔縁前部によって押圧されることで、ロック爪58をロック部43から解離させつつ撓まされるようになっている。つまり、取付孔Hの孔縁前部が雄ハウジング20の取付動作によってロック爪58のロック部43に対する係止状態、すなわちロック片57による検知部材50の保持状態を解除する解除手段となっている。このとき、ロック爪58との係止面であるロック部43の外側面には、取付孔Hの内周面が当接されるようになっている。さらには、このロック片57及びロック爪58の後面には、後方へ向かって下り勾配をなす解除案内面59が設けられており、この解除案内面59が取付孔Hの孔縁前部によって押圧されることで、その傾斜によりロック片57を円滑に撓ませるよう案内できるようになっている。
【0027】
なお、後壁35の厚み寸法は、パネルPの厚みよりも僅かに大きく設定されているため、雄ハウジング20をパネルPに取り付けた状態では、ロック爪58に対するロック部43の係止代が僅かに残されるものの、その大きさは、検知部材50を操作する力によって容易に係止状態が解除できる程度のものとなっている。
【0028】
本実施形態は以上のような構造であり、続いてその作用について説明する。まず、雄ハウジング20の検知部材収容部29内に検知部材50を挿入して待機位置に取り付ける。待機位置では、図5に示すように、保持突部53が待機位置用保持孔38内に係止するのに加えて、ロック片57のロック爪58がロック部43の外側面に係止している。このロック爪58とロック部43とにおける係止面は、検知部材50の移動方向と直交する端面であるから、保持突部53と待機位置用保持孔38との係止よりも大きな係止力を発揮しており、これにより、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける前の段階において、検知部材50に他部材が干渉した場合でも、検知部材50が不用意に検知位置側へ移動するような事態を回避することができる。
【0029】
次に、雄ハウジング20をパネルPの裏側に配した状態でパネルPに取り付けるようにする。この取り付け作業は、ドアのパネルPの裏側には十分な作業スペースを確保できないという都合から、パネルPの表側に居る作業者がパネルPの裏側に手を回して、いわばパネル越しに雄ハウジング20を掴んで行うようにしている。取り付けに際しては、雄ハウジング20をその短辺方向に関して傾けて後傾姿勢としつつ両固定係止部30を先に取付孔Hに通過させるとともにパネルPの表面Pbに引っ掛ける。この過程では、ロック片57の解除案内面59が取付孔Hの孔縁前部によって押圧され、解除案内面59の傾斜によってロック片57がロック爪58をロック部43から解離させつつ撓むよう案内される。固定係止部30がパネルPに引っ掛かったところで、ロック片57は、ロック爪58がロック部43からほぼ完全に解離した状態まで撓まされて、ロック爪58の係止状態が解除される。この状態では、検知部材50は保持突部53と待機位置用保持孔38との係止によってのみ待機位置に保持される。
【0030】
固定係止部30をパネルPに引っ掛けた状態からその引っ掛け部分を支点として、雄ハウジング20を真直な姿勢へと回動させると、図6に示すように、弾性係止部31のテーパ面が取付孔Hの孔縁後部により押圧されることで弾性係止部31が撓み変形されつつ取付孔Hを潜り抜ける。この過程では、図7に示すように、待機位置とした検知部材50が取付孔Hを通過していく。そして、雄ハウジング20が真直な姿勢に達するのに伴って、図8に示すように、フランジ27が全域にわたってパネルPの裏面Paに当接するとともに、係止爪32が完全に取付孔Hを通過するのに伴い弾性係止部31が復帰し、係止爪32がパネルPの表面Pbに係止される。これにより、フランジ27と固定係止部30及び弾性係止部31の係止爪32との間にパネルPを挟んだ状態で雄ハウジング20がパネルPに対して正規の取り付け状態に保持される。
【0031】
このとき、貫通部28及び検知部材収容部29が取付孔Hに嵌合・貫通しており、図9及び図10に示すように、後壁35の前面がパネルPの表面Pbとほぼ面一になるとともに検知部材50が取付孔Hを完全に通過してパネルPの表側に配される。この状態でパネルPの表側から操作部56を押圧して検知部材50を検知位置へと操作すると、検知部54が取付孔Hの内周面とは非干渉となっているから、図11及び図12に示すように、検知部材50を検知位置まで移動させることができる。この過程では、ロック爪58がロック部43を乗り越えて進入許容溝42内に進入するとともにロック片57は、弾性復帰して検知部材収容部29内に収められる。検知部材50を検知位置へ移動できることをもって、雄ハウジング20がパネルPに対して正規に取り付けられたことが検知される。この検知位置では、検知部54がパネルPの表面Pbのうち固定係止部30側ではなく弾性係止部31側に係止される。従って、正規の取り付け状態において、仮に弾性係止部31が他部品の干渉などにより不用意に撓まされてその係止状態が誤解除された場合でも、検知部54が固定的にパネルPに係止されているから、固定係止部30と共に雄ハウジング20をパネルPに対してしっかりと保持することができる。
【0032】
一方、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける際には、必ずしも正規に取り付けられるとは限らず、図7に示すような雄ハウジング20が取り付け途中の状態であるにも拘わらず、作業者が正規に取り付けられたと勘違いする場合がある。その場合に検知部材50を検知位置へと移動させようとしても、図13に示すように、検知部材50は、僅かに移動したところで検知部54が取付孔Hの内周面に突き当たるために検知位置まで移動させることができない。これをもって雄ハウジング20が未だ取り付け途中の状態であることが検知されるので、改めて雄ハウジング20を正規に取り付けるようにする。このように検知部材50を検知位置まで移動できるか否かに基づいて雄ハウジング20のパネルPに対する取付状態を検知することができる。
【0033】
また、雄ハウジング20がパネルPに対して正規に取り付けられる直前であって検知部54の前端部のみがパネルPの表側に突出した状態で、検知部材50を検知位置へと移動させようとした場合には、図14に示すように、検知部材50が所定距離移動したところで案内面55が取付孔Hの孔縁前部に当接される。そして、検知部材50を検知位置へとさらに押し込むのに伴って、案内面55と取付孔Hの孔縁前部とが摺接されることで、雄ハウジング20が引き込まれて図11に示す正規の取付状態へと矯正される。この場合は、改めて雄ハウジング20の取付作業を行う必要がないので、作業性が良好となっている。
【0034】
次に、上記のようにしてパネルPに取り付けられた雄ハウジング20に対して、図16及び図17に示すように、パネルPの表側から雌ハウジング10を嵌合する作業を行う。図18に示すように、雌ハウジング10をフード部23内に所定深さまで嵌合させてから、レバー12を初期位置から反時計回り方向へ回動させる。レバー12を回動させるのに伴って、図19に示すように、引っ掛け部15が引っ掛け受け部24に係合することで、てこ作用が発揮されて両ハウジング10,20の嵌合が次第に深められる。そして、図20に示すように、レバー12が嵌合位置に達すると、両ハウジング10,20が正規深さまで嵌合されるとともに、嵌合凸部25が嵌合凹部16に嵌合されることで両ハウジング10,20が正規嵌合状態にロックされる。この過程では、図21及び図22に示すように、雌ハウジング10の撓み規制部17が弾性係止部31の内側の溝部33内に進入することで、弾性係止部31の撓みが規制される。これにより弾性係止部31が不用意に撓み変形するのを防ぐことができるから、両ハウジング10,20の嵌合状態において雄ハウジング20をパネルPに対してしっかりと保持することができる。
【0035】
ところで、この雄ハウジング20では、スペースの都合などの事情により長辺方向の一端側にのみ検知部材50を取り付けるようにしている。このため、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける際に、固定係止部30及び弾性係止部31の係止爪32とパネルPとのクリアランスによって雄ハウジング20がその長辺方向に関して傾いた姿勢のまま取り付けられた場合には、雄ハウジング20のうち検知部材50を取り付けた側が正規に取り付けられて検知部材50を検知位置へ移動できるにも拘わらず、その反対側が不完全な取付状態となっている可能性がある。つまり、検知部材50寄りの弾性係止部31の係止爪32がパネルPに係止しているのに対し、もう片方の弾性係止部31が撓んだままとされる事態を検知できないおそれがある。
【0036】
ところが、このような不完全な取り付けの状態の雄ハウジング20に対して雌ハウジング10を嵌合させようとすると、図23に示すように、撓んだ弾性係止部31が溝部33内に配されているので、撓み規制部17がその弾性係止部31に突き当たることで、両ハウジング10,20の嵌合動作が規制される。これをもって、弾性係止部31が撓んだままであり雄ハウジング20がパネルPに対して正規に取り付けられていないことが検知されるので、改めて雄ハウジング20を正規に取り付けた後に再度雌ハウジング10の嵌合作業を行うようにする。このように両ハウジング10,20が嵌合できるか否かによって雄ハウジング20のパネルPに対する取付状態を検知することができる。逆に言うと、両ハウジング10,20が嵌合した状態では、雄ハウジング20が確実にパネルPに対して正規に取り付けられていることが保証されることになる。
【0037】
以上説明したように本実施形態によれば、検知部材50を検知位置まで移動できるか否かに基づいて雄ハウジング20のパネルPに対する取付状態を検知することができるので、パネルPに対して雄ハウジング20が取り付け途中の状態のまま放置されるのを防ぐことができる。しかも、ロック片57のロック爪58により検知部材50を雄ハウジング20に対して待機位置に保持することができるから、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける前の段階で検知部材50を不用意に検知位置側へ移動させてしまい、パネルPへの取り付けに際して再度検知部材50を待機位置へ戻すという作業を行う必要がなくなるから、作業性が良好となる。
【0038】
さらには、雄ハウジング20をパネルPに取り付ける過程で、取付孔Hの孔縁前部によってロック片57をロック爪58がロック部43から解離するよう撓ませて、ロック片57による検知部材50の保持状態を解除するようにしたから、作業性が良好となる。しかも、ロック片57の解除手段としてパネルPにおける既存構造である取付孔Hを利用しているから、パネルPに対して解除手段専用の格別な構造を設ける必要がなく、パネルPの構造が簡単になるとともに低コストとなる。さらには、ロック片57に解除案内面59を設けたから、ロック片57を円滑に撓ませることができ、作業性も良好となる。
【0039】
また、作業スペースの都合などにより、パネルPの表側に居る作業者がパネル越しに雄ハウジング20をパネルPの裏側から取り付ける場合であっても、検知部材50の操作部56をパネルPの表側、すなわち作業者側から目視しつつ操作することができるから、仮に操作部をパネルの裏側から操作するようにした場合には、操作部を殆ど目視することができず、また操作状況も専ら作業者の指先の感覚に頼らざるを得ないのに比較して、本実施形態によれば検知部材50の操作性を良好なものとすることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0041】
(1)上記した実施形態では、検知部材が雄ハウジングの短辺方向に沿って移動されるものを示したが、検知部材が雄ハウジングの長辺方向に沿って移動するものや斜め方向に移動するものも本発明に含まれる。
【0042】
(2)上記した実施形態では、検知部が取付孔の内周面に突き当たるまでに検知部材が待機位置から僅かに検知位置側に移動されるものを示したが、検知部の長さ寸法などを調整することで、検知部材が待機位置から殆ど移動することなく検知部が取付孔の内周面に突き当たるようにしてもよい。このようにすれば、検知部材を移動できるか否かによって雄ハウジングの取付状態を検知できるから、検知精度を向上させることができる。
【0043】
(3)上記した実施形態では、取付孔の内周面が検知部材に対する規制部を兼用した場合を示したが、取付孔とは別途に規制部をパネルに設けるようにしてもよい。その場合、規制部の形状や配設位置によっては、雄ハウジングをパネルに取り付けたときでも検知部材を取付孔を通過させずにパネルの裏側に配することが可能となる。要は、検知部材が必ずしも取付孔を通過する必要はない。
(4)上記した実施形態では、検知部材の操作部がパネルの表側に突出するものを示したが、操作部がパネルの裏側に配されて裏側から操作するものも本発明に含まれる。
【0044】
(5)上記した実施形態では、検知部材を雄ハウジングの長辺方向の一端側にのみ取り付けた場合を示したが、スペースに余裕がある場合には、検知部材を雄ハウジングにおける長手方向両端部に一対取り付けるようにしてもよい。このようにすれば、雄ハウジングが長手方向に関して傾いた姿勢で取り付けられた場合でも雄ハウジングが取り付け途中であることを確実に検知することができる。
【0045】
(6)上記した実施形態では、雄ハウジングの弾性係止部の内側に溝部を設け、雌ハウジングに撓み規制部を突設した場合を示したが、弾性係止部の溝部を省略するとともに、雌ハウジングの外面によって弾性係止部の撓み規制を行うようにしてもよい。
(7)上記した実施形態では、パネルに雄ハウジングを取り付けるものを示したが、パネルに雌ハウジングを取り付けるものにも本発明を同様に適用することができる。
(8)上記した実施形態では、雄ハウジングに検知部材を組み付け、パネルの取付孔の孔縁を検知部材の検知部に干渉する規制部としたものを示したが、逆にパネルに検知部材を組み付けるようにし、雄ハウジングに検知部材の検知部が干渉可能な規制部を設けるようにしてもよい。その場合には、検知部材のロック片をパネルに設けたロック部に係止させるとともに雄ハウジングにパネルへの取り付けに伴ってロック片を解除するための解除部を設けるようにしてもよく、そのようなものも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る雄ハウジングと検知部材の正面図
【図2】雄ハウジングにおける図1のA−A線断面図
【図3】雄ハウジングと検知部材における図1のB−B線断面図
【図4】雄ハウジングとパネルにおける図1のC−C線断面図
【図5】検知部材を待機位置に取り付けた雄ハウジングとパネルにおける図1のB−B線断面図
【図6】パネルに雄ハウジングを取り付ける途中の状態を示す図1のC−C線断面図
【図7】パネルに雄ハウジングを取り付ける途中の状態を示す図1のB−B線断面図
【図8】パネルに雄ハウジングが正規に取り付けられた状態を示す図1のC−C線断面図
【図9】パネルに雄ハウジングが正規に取り付けられた状態を示す図1のB−B線断面図
【図10】パネルに雄ハウジングが正規に取り付けられた状態を示す正面図
【図11】検知部材を検知位置まで移動させた状態を示す図1のB−B線断面図
【図12】検知部材を検知位置まで移動させた状態を示す正面図
【図13】検知部が取付孔の内周面に干渉した状態を示す図1のB−B線断面図
【図14】案内面が取付孔の孔縁前部に当接した状態を示す図1のB−B線断面図
【図15】雌ハウジングの正面図
【図16】パネルに取り付けた雄ハウジングとレバーを初期位置に装着した雌ハウジングの平面図
【図17】図16のD−D線断面図
【図18】両ハウジングを所定深さ嵌合させた状態を示す平面図
【図19】レバーを回動する途中の状態を示す平面図
【図20】レバーが嵌合位置まで回動した状態を示す平面図
【図21】図20のD−D線断面図
【図22】パネルに取り付けられた雄ハウジングに雌ハウジングが嵌合した状態を示す正面図
【図23】撓んだ弾性係止部に雌ハウジングの撓み規制部が突き当たった状態を示す断面図
【図24】従来例の側面図
【符号の説明】
20…雄ハウジング(コネクタハウジング)
27…フランジ(突き当て部、保持手段)
30…固定係止部(保持手段)
31…弾性係止部(保持手段)
43…ロック部(ロック手段)
50…検知部材
54…検知部
56…操作部
57…ロック片(ロック手段)
59…解除案内面
P…パネル
Pa…裏面(パネルのうちコネクタハウジングが取り付けられる側の面)
Pb…表面(パネルのうち前記コネクタハウジングが取り付けられる側とは反対側の面)
H…取付孔
Claims (2)
- パネルに開口して設けられた取付孔に貫通した状態で取り付けられるコネクタハウジングを備え、このコネクタハウジングには、前記パネルに対してコネクタハウジングを取付状態に保持するための保持手段が設けられているものにおいて、
コネクタハウジングとパネルのいずれか一方には、待機位置から検知位置へ移動可能な検知部材が組み付けられるのに対し、コネクタハウジングとパネルの他方側には、前記検知部材に設けられた検知部に干渉可能な規制部が設けられ、
パネルに対してコネクタハウジングが取り付け途中のときは、前記検知部が前記規制部に干渉することで検知部材の検知位置への移動動作が規制され、コネクタハウジングが正規に取り付けられると、検知部が規制部と非干渉になって検知部材を検知位置まで移動できるようになっており、
且つ、前記検知部材を前記待機位置に保持するためのロック手段が設けられており、
また、前記コネクタハウジングと前記パネルの他方側には、前記コネクタハウジングをパネルに取り付けるのに伴って、前記ロック手段による前記検知部材の保持状態を解除可能な解除手段が設けられ、
さらに、前記保持手段は、前記コネクタハウジングに設けられるとともに、前記パネルのうちコネクタハウジングが取り付けられる側の面に当接可能な突き当て部と、パネルのうちコネクタハウジングが取り付けられる側とは反対側の面に係止することで前記突き当て部との間でパネルを挟み込む固定係止部及び弾性係止部とを備え、
コネクタハウジングの取り付け時には、先に前記固定係止部を前記取付孔に通過させてパネルに係止させた後に、前記弾性係止部を取付孔の孔縁により撓ませつつ取付孔を通過させてパネルに係止させるようにし、
前記検知部材が前記コネクタハウジングに組み付けられるとともに前記パネルに対するコネクタハウジングの取付方向と交差する向きに沿って移動可能とされており、
前記ロック手段は、前記検知部材に設けられるとともに弾性変形可能とされ、且つパネルに対するコネクタハウジングの取り付けに伴って前記固定係止部と共に取付孔を通過するロック片と、コネクタハウジングに設けられるとともにロック片が係止されることで検知部材を待機位置に保持可能なロック部とにより構成される一方、前記解除手段は、コネクタハウジングの取り付けに伴って前記ロック片を押圧してロック部から解離させつつ撓み変形させる取付孔の孔縁により構成され、
且つ、前記ロック片には、前記取付孔の孔縁により押圧されるのに伴って撓み方向へ案内可能な解除案内面が設けられていることを特徴とするコネクタ。 - 前記コネクタハウジングを前記パネルの裏側から取り付けるものにおいて、
前記検知部材には、パネルの表側からの移動操作を可能とする操作部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
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