JP3887108B2 - 超高分子量ポリエチレンパイプ、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法に関し、より詳細には、耐磨耗性、非粘着性、自己湿潤性、耐薬品性に優れ、各種のロール、パイプ、鋼管等の内面被覆用パイプとして好適に使用することができる超高分子量ポリエチレンパイプを効率よく製造することができる製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、超高分子量ポリエチレンパイプは耐磨耗性、非粘着性、自己湿潤性、耐薬品性に優れているので、例えば、鉱石、石炭、穀物等の粉粒体の輸送管や岩石を含む泥水や生コンクリート等を輸送するスラリー管、或いは液体食品の輸送管等の内面被覆層として好適に使用されている。
【0003】
このような超高分子量ポリエチレンパイプの製造は、従来は圧縮成形による方法や超高分子量ポリエチレンの丸棒を機械切削する方法等により行われている。しかしながら、このような手段によっては薄肉で不定長のものが得られず、又、コストがかかり、経済的に製造することが困難であった。
【0004】
例えば、特開平4−312841号公報に記載されているように、超高分子量ポリエチレンをスクリュウ軸を備えた押出機により溶融混練し、スクリュウ軸の回転に伴って回転するインナーダイが設けられたダイから押し出して円筒状の粗成形体とし、粗成形体をインナーダイに連結されたテーパーコアにより拡径し、更にテーパーコアに連設された円筒状部で冷却固化させながら押出速度の3倍以下の引取速度で引き取ることにより超高分子量ポリエチレンパイプを製造する方法が知られている。
【0005】
又、本発明者等も超高分子量ポリエチレンパイプを製造する方法として、常温、常圧で気体状態の非反応性ガスを超高分子量ポリエチレンに高圧下で溶解させて比較的容易に成形できる状態とし、この比較的容易に成形できる状態の超高分子量ポリエチレンを押出機により溶融混練し、次いで押出機の先端に設けた金型から樹脂の降温時の結晶化ピーク温度以下まで冷却してパイプ状に押し出すことにより超高分子量ポリエチレンパイプを製造する方法について発明し、特願平10−115325号として出願した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来の2方法によって製造された超高分子量ポリエチレンパイプにおいては、加熱により外径が大して膨張することがないので、このような超高分子量ポリエチレンパイプを鉱石等の粉粒体の輸送管等の内面被覆材として使用する場合には、超高分子量ポリエチレンパイプを加熱し加圧空気により膨張させて輸送管等の内面に密接させ、更に冷却による超高分子量ポリエチレンパイプの収縮を防止するために輸送管等の内面に予め接着性樹脂層を塗布しておくことが必要であった。
【0007】
従って、従来の超高分子量ポリエチレンパイプを輸送管等の内面被覆材として使用する場合には、加圧空気による膨張工程及び接着性樹脂層塗布工程が必要となり、大規模設備が必要であってコスト高となる欠点があった。又、膨張工程において、内部空気を密封する必要があるために、製造が間欠的となり、生産速度が低下し、生産性の向上を図ることができない欠点があった。
【0008】
本発明は、従来の超高分子量ポリエチレンパイプにおける、このような問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、上記の問題を解決し、加熱により容易に外径が膨張することができる超高分子量ポリエチレンパイプを効率よく製造することができる製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法は、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンからなり、140℃のエアオーブン中において1時間加熱後、23℃の温度で24時間経過後の、式
外径膨張率(%)=(加熱後の外径−加熱前の外径)/(加熱前の外径)×100
で定義される外径膨張率が10%以上である超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法であって、常温、常圧で気体状態の非反応性ガスを超高分子量ポリエチレンに高圧下で溶解させて比較的容易に成形できる状態とし、この比較的容易に成形できる状態の超高分子量ポリエチレンを押出機により溶融混練し、次いで押出機の先端に設けた金型からパイプ状に押し出す超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法であって、金型には樹脂流路の上流側から樹脂流路の下流側にかけて樹脂流路の断面積及び外径が次第に縮小される流路縮小部が設けられ、流路縮小部の入口の流路断面積S1と出口の流路断面積S2の比(S1/S2)が2以上であり、且つ、入口の流路外径D1と出口の流路外径D2との比(D1/D2)が1.2以上であり、この流路縮小部の出口では融点以下となるように超高分子量ポリエチレンを冷却した後、更に超高分子量ポリエチレンを降温時の結晶化ピーク温度以下まで冷却して金型出口から押出成形することを特徴とするものである。
【0011】
又、請求項2の本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法は、請求項1記載の超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法において、非反応性ガスが二酸化炭素であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項1記載の本発明において、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンからなるものであり、粘度平均分子量が100万未満のポリエチレンは耐磨耗性、非粘着性、自己湿潤性、耐薬品性に優れていない。
【0013】
又、140℃のエアオーブン中において1時間加熱後、23℃の温度で24時間経過後の、式
外径膨張率(%)
=(加熱後の外径−加熱前の外径)/(加熱前の外径)×100
で定義される外径膨張率が10%以上であり、特に、本発明の超高分子量ポリエチレンパイプを輸送管等の内面被覆材として使用する場合には、輸送管等に対する被覆応力を大きくするためには、外径膨張率は20〜100%のものが一層好ましい。外径膨張率が100%を越えると被覆時に長手方向の収縮が過大となり被覆効率が低下する恐れが生じる。又、外径膨張率が10%未満の場合には、輸送管等に対する被覆応力が小さくなり、輸送管等に対する密着性が低下するため好ましくない。
【0014】
又、本発明の超高分子量ポリエチレンパイプの外径、厚みの寸法については、特に限定されないが、好ましくは外径10mm以上、厚みは0.2mm以上であり、高生産性が得られ経済的に製造できる範囲として更に好ましくは、外径15〜200mm、厚み0.3〜8mm程度である。又、通常の外径/厚みの比としては、10〜300程度であり、剛性の良好なものとしては15〜200程度である。
【0015】
請求項1記載の本発明において、常温、常圧で気体状態の非反応性ガスとしては、常温、常圧で気体である有機ないしは無機物質であって、超高分子量ポリエチレンを劣化させる恐れのないものであればよいものであって、特に限定されないが、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、酸素等の無機ガスやフロンガス、低分子量の炭化水素等の有機ガスが使用できる。環境に与える影響が少なく、ガスの回収を必要としない点で無機ガスが好ましい。超高分子量ポリエチレンに対する溶解度が高く、超高分子量ポリエチレンの溶融粘度の低下が大きいという観点から、二酸化炭素を使用するのが好ましい。尚、このような非反応性ガスは1種類のものを単独で使用してもよく、2種類のものを併用するようにしてもよい。
【0016】
非反応性ガスを超高分子量ポリエチレンに高圧下で溶解させる手段としては、非反応性ガスを溶融状態の超高分子量ポリエチレンに溶解させる方法によってもよく、固体状態の超高分子量ポリエチレンに溶解させる方法によってもよく、両者の方法を併用してもよい。
【0017】
非反応性ガスを溶融状態の超高分子量ポリエチレンに溶解させる方法としては、例えば、ベントタイプスクリュウを備えた押出機を使用し、シリンダーの途中からベント部分に非反応性ガスを混入する方法や、タンデム押出機を使用し、第1押出機内又は第2押出機への樹脂流入部付近において非反応性ガスを圧入させ、第2押出機において充分に溶解混練する方法等が採用できる。
【0018】
又、非反応性ガスを固体状態の超高分子量ポリエチレンに溶解させる方法としては、例えば、予め高圧容器等でペレット又はパウダー状態の超高分子量ポリエチレンに非反応性ガスを溶解させる方法や押出機の固体輸送部において非反応性ガスを超高分子量ポリエチレン中に溶解させる方法が採用できる。
【0019】
前者の方法を採用する場合には、非反応性ガスを溶解させた超高分子量ポリエチレンの押出機への供給は、超高分子量ポリエチレンに溶解した非反応性ガスが拡散によって大気中に抜けるのを防止するためにできるだけ速やかに行うのことが好ましい。
【0020】
後者の方法を採用する場合には、非反応性ガスが押出機外へ揮散しないように押出機のスクリュウ軸の駆動軸及びホッパーに耐圧シール構造を組み入れることが好ましい。
【0021】
非反応性ガスの供給は、ガスボンベから直接行ってもよく、プランジャーポンプ等を使用して加圧供給するようにしてもよい。
【0022】
超高分子量ポリエチレンに対する非反応性ガスの溶解量は、溶解によって超高分子量ポリエチレンの溶融粘度が成形に適したものとなればよいものであって、特に限定されるものではなく、超高分子量ポリエチレンの分子量、非反応性ガスの種類によって適宜選択できる。
【0023】
超高分子量ポリエチレンを金型の流路縮小部の出口では融点以下となるように冷却するものであるが、この場合、非反応性ガスを超高分子量ポリエチレン中に溶解することにより超高分子量ポリエチレンが可塑化されているので、超高分子量ポリエチレンが流路縮小部を通過する際の発生圧力が低減し、流路縮小部において超高分子量ポリエチレンを融点以下まで冷却することが可能となる。この際、非反応性ガスを超高分子量ポリエチレン中に溶解していない場合には、融点付近において圧力が急激に上昇することになり、押出機の耐圧不足やトルクオーバーとなり易く、押出が困難となる。
【0024】
金型の流路縮小部の入口の流路断面積S1と出口の流路断面積S2の比(S1/S2)が2未満の場合、或いは、入口の流路外径D1と出口の流路外径D2との比(D1/D2)が1.2未満の場合には、得られる超高分子量ポリエチレンの外径膨張率が小さく、輸送管等への被覆応力が小さくなり好ましくない。この場合、S1/S2の好ましい範囲は3〜60程度であり、60を越えると圧力が過大となり、押出が困難となる恐れが生じる。又、D1/D2の好ましい範囲は1.2〜3.0程度であり、3.0を越えると圧力が過大となり、押出が困難となる恐れが生じ、長手方向の収縮率が大きく、被覆効率が低下する恐れが生じる。
【0025】
超高分子量ポリエチレンを流路縮小部の中途部を通過させる際の超高分子量ポリエチレンの温度の好ましい範囲は、(降温時の結晶化ピーク温度−20℃)〜(融点+20℃)であり、更に好ましくは(降温時の結晶化ピーク温度)〜(融点+10℃)である。超高分子量ポリエチレンを流路縮小部の出口を通過させる際の温度は融点以下とする。出口を通過させる際の温度が融点を越える場合には、超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率が小さく、輸送管等への被覆応力が小さくなり好ましくない。
【0026】
超高分子量ポリエチレンを(降温時の結晶化ピーク温度−20℃)未満の温度で流路縮小部の中途部を通過させると超高分子量ポリエチレンの圧力が過大となり押出困難となる恐れが生じる。又、(融点+20℃)を越える温度で流路縮小部の中途部を通過させると冷却が不充分となり融点以下の温度で流路縮小部の出口を通過させることが困難となる。
【0027】
ここで、得られる超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は流路縮小部を通過する超高分子量ポリエチレンが融点以下となる位置及び流路縮小部の出口の超高分子量ポリエチレンの温度により調整することが可能であり、例えば、超高分子量ポリエチレンが融点以下となる位置が流路縮小部の入口に接近する程、又、流路縮小部の出口側での超高分子量ポリエチレンの温度が低い程、得られる超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は大きくなる。
【0028】
又、超高分子量ポリエチレンを金型の出口から押し出す際の温度が降温時の結晶化ピーク温度を越える温度では超高分子量ポリエチレン中に溶解している非反応性ガスにより発泡して発泡体となり、得られる超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は小さくなり好ましくない。
【0029】
尚、「降温時の結晶化ピーク温度」とは、溶融状態の超高分子量ポリエチレンが降温して結晶化する際の結晶化ピーク温度を意味し、より詳細には、このような降温の際に超高分子量ポリエチレンが発熱する熱量が最大となる温度を意味する。このような温度は大気圧下で示差走査型熱量計(DSC)により測定される。又、「結晶化ピーク温度」はJIS K 7121の9.2にその求め方等詳細が記載されている。
【0030】
非反応性ガスとして、二酸化炭素を使用する場合には、超高分子量ポリエチレンに対する二酸化炭素の溶解量は、1〜30重量%の範囲が好ましく、3〜20重量%の範囲がより好ましい。1重量%未満の場合には、超高分子量ポリエチレンの粘度が充分に低下しないため押出が困難となる恐れが生じる。又、30重量%を越える場合には、大規模設備を使用して溶解時の圧力を極端に高くする必要のある場合があり、生産効率上有利ではない。
【0031】
二酸化炭素の溶解量を叙上のように1〜30重量%の範囲とするためには、二酸化炭素の圧力を0.5〜50MPaとすることが好ましく、1.5〜35MPaとすることがより好ましい。
【0032】
〔作用〕
請求項1記載の本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法においては、金型には樹脂流路の上流側から樹脂流路の下流側にかけて樹脂流路の断面積及び外径が次第に縮小される流路縮小部が設けられ、流路縮小部の入口の流路断面積S1と出口の流路断面積S2の比(S1/S2)が2以上であり、且つ、入口の流路外径D1と出口の流路外径D2との比(D1/D2)が1.2以上であり、この流路縮小部の出口では融点以下となるように超高分子量ポリエチレンを冷却するものであるから、得られる超高分子量ポリエチレンパイプは、粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンからなり、外径膨張率が10%以上であるので、加熱により容易に外径が膨張し、輸送管等への被覆応力が大きく、輸送管等の内面に密着する。
【0034】
更に、超高分子量ポリエチレンを降温時の結晶化ピーク温度以下まで冷却して金型出口から押出成形するものであるから、超高分子量ポリエチレン中に溶解している非反応性ガスによる発泡を抑制することができ内部に欠陥となる気泡を含まないパイプを製造することができる。
【0035】
又、請求項2の本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法においては、非反応性ガスが二酸化炭素であるので、超高分子量ポリエチレンに対する溶解度が高く、可塑化効果が大きいため、超高分子量ポリエチレンを容易に成形することができる状態とすることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法に使用する押出機等を示す説明図、図2は図1のII−II線における断面図、図3は図1のIII−III線における断面図である。
図1において、1は単軸押出機、11は単軸押出機1のシリンダー、12はシリンダー11内に設けられているスクリュウ軸、13はシリンダー11の基部に設けられた耐圧ホッパー、14はシリンダー11の基部付近の固体輸送部111に設けられた第1のガス供給口、15はシリンダー11の中途部の溶融物輸送部112に設けられた第1のガス供給口である。
【0037】
2はシリンダー11の先端に設けられたパイプ成形用の金型であり、金型2には樹脂流路の上流側から樹脂流路の下流側にかけて樹脂流路の断面積及び外径が次第に縮小される流路縮小部21が設けられ、流路縮小部21の入口22の流路断面積S1と出口23の流路断面積S2の比(S1/S2)が2以上であり、且つ、入口22の流路外径D1と出口23の流路外径D2との比(D1/D2)が1.2以上である。24はインナーダイであり、インナーダイ24はスクリュウ軸12の先端に一体的に接続されている。
【0038】
3は第1のガスボンベであり、第1のガスボンベ3から配管31により第1のガス供給口14に非反応性ガスとして二酸化炭素が供給されるようになっている。32は配管31に設けられた加圧ポンプである。
【0039】
4は第2のガスボンベであり、第2のガスボンベ4から配管41により第2のガス供給口15に非反応性ガスとして二酸化炭素が供給されるようになっている。42は配管41に設けられた加圧ポンプである。
【0040】
押出機1のホッパー13から粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンをシリンダー11内に供給すると、超高分子量ポリエチレンは図示しない加熱装置により加熱溶融されながら、固体輸送部111において第1のガス供給口から供給される高圧状態の二酸化炭素に曝され、超高分子量ポリエチレンに二酸化炭素が溶解し、超高分子量ポリエチレンの粘度が低下する。
【0041】
更にスクリュウ軸12の回転によりシリンダー11中を進行する超高分子量ポリエチレンは図示しない加熱装置により完全に溶融し、溶融物輸送部112において、第2のガス供給口15から供給される高圧状態の二酸化炭素に曝され、超高分子量ポリエチレンに二酸化炭素が更に溶解し、超高分子量ポリエチレンの粘度が更に低下し、超高分子量ポリエチレンは容易に成形できる状態となる。
【0042】
このように容易に成形できる状態となった超高分子量ポリエチレンをスクリュウ軸12の回転により充分に溶融混練し、金型2に導入し、流路縮小部21を通過させながら融点以下まで冷却し、降温時の結晶化ピーク温度以下の温度で金型2から押し出して超高分子量ポリエチレンパイプを製造する。
【0043】
叙上の製造方法によれば、超高分子量ポリエチレンを、流路縮小部21の入口22の流路断面積S1と出口23の流路断面積S2の比(S1/S2)が2以上であり、且つ、入口22の流路外径D1と出口23の流路外径D2との比(D1/D2)が1.2以上である流路縮小部21を通過させながら融点以下に冷却し、降温時の結晶化ピーク温度以下の温度で金型2から押し出すことにより外径膨張率が10%以上の超高分子量ポリエチレンパイプを製造することができる。
【0044】
二酸化炭素は自然に放散するため、人為的に除去する装置等は必要としない。又、二酸化炭素は有機物質と比較して環境に与える悪影響は著しく低く、大気中に放散させても特別の害は生じない。
【0045】
このような外径膨張率が10%以上の超高分子量ポリエチレンパイプは、輸送管の内部に挿入した後、電熱ヒーター等により加熱して膨張させることにより輸送管の内面を被覆することができる。
【0046】
次に本発明の実施例を説明する。
〔実施例1〕
超高分子量ポリエチレン(三井石油化学工業株式会社製商品名「ハイゼックス・ミリオン240M」粘度平均分子量230万、融点136℃、降温時の結晶化ピーク温度118℃)を図1に示す押出機1(スクリュウ軸12の径40mm、L/D=30)のホッパー13からシリンダー11内に供給した。
非反応ガスとして、二酸化炭素を使用し、二酸化炭素を第1及び第2のガス供給口14、15から15MPaの圧力で圧入した。
【0047】
この圧力で超高分子量ポリエチレンに対する二酸化炭素の溶解量は、約10重量%であった。尚、この時、スクリュウ軸12の駆動軸の高圧軸シール機構と耐圧ホッパー構造及び溶融状態の超高分子量ポリエチレンにより押出機1内の二酸化炭素を高圧状態に保持した。
【0048】
次いで、押出機1に供給された超高分子量ポリエチレンは押出量2kg/h、スクリュウ軸12の回転数10rpm、シリンダー11の設定温度200℃の条件で充分に溶融し混練された。
【0049】
次いで、金型2(流路縮小部21の入口22の外径D1=40mm、内径33mm、出口23の外径D2=26mm、内径24mm、S1/S2=5.1、D1/D2=1.5)の温度を120℃に保持することにより、流路縮小部21を通過する超高分子量ポリエチレンの温度が入口22で140℃、出口23で120℃とし、更に金型2の先端温度を105℃に保持することにより、金型2の先端から押し出される超高分子量ポリエチレンの温度を105℃としてパイプ状に押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。
このようにして得られた超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は20%であった。
【0050】
〔比較例1〕
二酸化炭素を溶解させないこと以外は実施例1同様の条件で製造しようとしたが、超高分子量ポリエチレンの圧力が押出機1の耐圧100MPaを越えてしまい、製造不能となった。
【0051】
〔比較例2〕
金型2の流路縮小部21の温度を140℃に保持することにより、流路縮小部21を通過する超高分子量ポリエチレンの温度が入口22で165℃、出口23で140℃とすること以外は実施例1と同様の条件で押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。得られた超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は3%に過ぎなかった。
【0052】
〔比較例3〕
金型2の先端温度を125℃に保持することにより、金型2の先端を通過する超高分子量ポリエチレンの温度を125℃とすること以外は実施例1と同様の条件で押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。得られた超高分子量ポリエチレンパイプは充分に発泡した状態となり、外観が悪く所望の超高分子量ポリエチレンパイプは得られなかった。
【0053】
〔比較例4〕
二酸化炭素を溶解させないで、金型2の流路縮小部21の温度を140℃に保持することにより、流路縮小部21を通過する超高分子量ポリエチレンの温度が入口22で165℃、出口23で140℃とし、更に金型2の先端温度を140℃に保持することにより、金型2の先端を通過する超高分子量ポリエチレンの温度を140℃とすること以外は実施例1と同様の条件で押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。得られた超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は5%に過ぎなかった。
【0054】
〔実施例2〕
金型2の流路縮小部21の入口22の外径D1=40mm、内径33mm、出口23の外径D2=20mm、内径18mm、S1/S2=6.7、D1/D2=2.0とすること以外は実施例1と同様の条件で押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。得られた超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は38%であった。
【0055】
〔比較例5〕
金型2の流路縮小部21の入口22の外径D1=40mm、内径33mm、出口23の外径D2=26mm、内径19mm、S1/S2=1.6、D1/D2=1.5とすること以外は実施例1と同様の条件で押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。得られた超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は4%に過ぎなかった。
【0056】
〔比較例6〕
金型2の流路縮小部21の入口22の外径D1=40mm、内径33mm、出口23の外径D2=36mm、内径34mm、S1/S2=3.7、D1/D2=1.1とすること以外は実施例1と同様の条件で押し出し、超高分子量ポリエチレンパイプを製造した。得られた超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率は2%に過ぎなかった。
【0057】
以上、本発明の実施の形態を図により説明したが、本発明の具体的な構成は図示の実施の形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲の設計変更は本発明に含まれる。
【0058】
図に示す本発明の実施の形態のように、2個のガス供給口14、15を併用する代わりに、いずれか一方のガス供給口のみを使用するようにしてもよい。
【0059】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法においては、得られる超高分子量ポリエチレンパイプの外径膨張率が10%以上となり、輸送管等への被覆応力が大きく、輸送管等の内面に密着するものとなるため、従来のように、加圧空気による膨張工程及び接着性樹脂層塗布工程が不要となり、大規模設備が不要であって生産性の向上及びコストの低減化を図ることができる。
【0061】
更に、超高分子量ポリエチレン中に溶解している非反応性ガスによる発泡を抑制することができ内部に欠陥となる気泡を含まないパイプを製造することができるので、超高分子量ポリエチレンパイプを効率よく製造することができる。
【0062】
又、請求項2の本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法においては、超高分子量ポリエチレンを容易に成形することができる状態とすることができるので、超高分子量ポリエチレンパイプを一層効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法に使用する押出機等を示す説明図。
【図2】図1のII−II線における断面図。
【図3】図1のIII−III線における断面図。
【符号の説明】
1 押出機
11 シリンダー
12 スクリュウ軸
13 ホッパー
14 第1のガス供給口
15 第2のガス供給口
2 金型
21 流路縮小部
22 入口
23 出口
24 インナーダイ
25 切り込み部
3 第1のガスボンベ
31 配管
32 加圧ポンプ
4 第2のガスボンベ
41 配管
42 加圧ポンプ
Claims (2)
- 粘度平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンからなり、140℃のエアオーブン中において1時間加熱後、23℃の温度で24時間経過後の、式
外径膨張率(%)=(加熱後の外径−加熱前の外径)/(加熱前の外径)×100
で定義される外径膨張率が10%以上である超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法であって、
常温、常圧で気体状態の非反応性ガスを超高分子量ポリエチレンに高圧下で溶解させて比較的容易に成形できる状態とし、この比較的容易に成形できる状態の超高分子量ポリエチレンを押出機により溶融混練し、次いで押出機の先端に設けた金型からパイプ状に押し出す超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法であって、金型には樹脂流路の上流側から樹脂流路の下流側にかけて樹脂流路の断面積及び外径が次第に縮小される流路縮小部が設けられ、流路縮小部の入口の流路断面積S1と出口の流路断面積S2の比(S1/S2)が2以上であり、且つ、入口の流路外径D1と出口の流路外径D2との比(D1/D2)が1.2以上であり、この流路縮小部の出口では融点以下となるように超高分子量ポリエチレンを冷却した後、更に超高分子量ポリエチレンを降温時の結晶化ピーク温度以下まで冷却して金型出口から押出成形することを特徴とする超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法。 - 非反応性ガスが二酸化炭素であることを特徴とする請求項1記載の超高分子量ポリエチレンパイプの製造方法。
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