JP3887084B2 - 光学部材検査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、レンズ等の光学部材の不良要因を検出するための光学部材検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レンズ,プリズム等の光学部材は、入射した光束が規則正しく屈折したり、平行に進行したり、一点又は線状に収束したり発散するように設計されている。しかしながら、光学部材の形成時において糸くず等が光学部材内に混入してしまっていたり(いわゆる「ケバ」)、成形後の人的取り扱いによって光学部材の表面上にキズ等が生じていると、入射した光束が乱れてしまうので、所望の性能を得ることができなくなる。
【0003】
そのため、光学部材の不良要因を検出して自動的に当該光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置が、従来、種々提案されている。このような光学部材検査装置によると、検出した各不良要因の図形的特徴量が数値化され、かかる数値が所定の判定基準値と比較されて、良否判定が行われる。
【0004】
ところで、例えば眼鏡レンズ等には、レンズの種類等の識別のために、その外周縁近傍に刻印やマークが付されているものがある。このような刻印やマークが付されているレンズについても正確な良否判定を可能とするには、上述した光学部材検査装置は、かかる刻印及びマークを本来の不良要因から峻別して数値化対象から除外するように、構成されなければならない。
【0005】
そのため、従来の光学部材検査装置においては、原画像中の不良要因と思しき全ての領域に対して、予め用意しておいた刻印及びマークのマスタ画像とのパターンマッチングを行っていた。そして、パターンマッチングの結果マスタ画像に近似している領域については、不良要因ではなく刻印又はマ−クを示すものである認識して、これを原画像データからマスクしていた。
【0006】
図10は、原画像から切り出された画像(被検査画像)に対するマスタ画像とのパターンマッチングの手法を示している。この例においては、図10(a)に示すように、マークは升型であり、ノイズなくこのマークを撮像した後に二値化して得た画像データと等価なマスタ画像は、7×7ドットから構成されている。一方、図10(b)に示すように、レンズ全体を撮像して得られた画像データから切り出されて二値化された被検査画像は、不良要因と思しき領域の回りに若干のマージンをとるために、13×13ドットから構成されている。
【0007】
そして、図10(c)に示すように、最初に両画像は、その原点(左上隅の画素)同士を一致させた状態で重ね合わされる(1stスキャン)。そして、マスタ画像を構成する各画素のうち、重なっている被検査画像の画素と同じ輝度を有するものの数がカウントされる。そして、マスタ画像の全画素数(49)に対するカウントされた画素数の比率が計算され、算出された比率が「一致率」とされる。図10の例では、カウントされた画素数が14であるので、一致率は14/49=28.6%となる。
【0008】
次にマスタ画像は、図10(d)に示すように、被検査画像に対してx方向に1ドットずらされる(2ndスキャン)。そして、上述したようにして、一致率の算出がなされる。図10の例では、カウントされた画素数が12であるので、一致率は12/49=24.5%となる。
【0009】
以後、同様にしてマスタ画像がx方向に1ドットずらされる毎に、一致率の算出がなされる。そして、7thスキャンがなされると、マスタ画像は、被検査画像に対して、1stスキャン時における位置からy方向に1ドットずれた位置に移動される。以後同様にして、7スキャン行われる毎にマスタ画像がy方向に1ドットづつずらされる。図10(e)は、マスタ画像が1stスキャン時における位置からy方向に3ドットずれた位置に移動した状態(22ndスキャン)を示す。この時には、カウントされた画素数が19であるので、一致率は19/49=38.8%となる。また、図10(f)は、マスタ画像が22ndスキャン時における位置からx方向に3ドットずれた位置に移動した状態(25thスキャン)を示す。この時には、カウントされた画素数が46であるので、一致率は46/49=93.9%となる。このように、一致率が80%を超えた状態においては、被検査画像がマークを撮像して得られたものである蓋然性が非常に高いので(100%に満たないのはノイズの影響であると考えられる。)、この被検査画像はマークに対応するものであると認識されるのである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の光学部材検査装置においては、検査対象光学部材を撮像して得られた原画像中に不良要因と思しき領域を検出すると、検出した全ての領域に対してパターンマッチングを施していた。その結果、一個の検査対象光学部材の検査に要する総処理時間が非常に長くなってしまっていた。
【0011】
しかも、パターンマッチングにおいては、上述したように、検査対象画像とマスタ画像との原点同士を一致させた状態からスキャンを開始していたので、図10の例では最大49回のスキャンを要していた。そして、この事も、一個の検査対象レンズの検査に要する総処理時間を非常に長くする原因であった。
【0012】
また、パターンマッチングにおいては一致率の閾値が一定であるので、例えば実際のマークを撮像して得られた画像がかすれていた場合には、一致率が低くなってしまう。このような場合には、これがマークであると認識できないので、結局、残りの全ての不良要因に対するパターンマッチンを行わざるを得なくなってしまう。この事も、一個の検査対象レンズの検査に要する総処理時間を非常に長くする原因であった。
【0013】
そこで、本発明の課題は、一個の検査対象光学部材の検査に要する総処理時間を長くする事無く、検査対象光学部材に付された刻印やマークを正確且つ高速に認識することができる光学部材検査装置を、提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
各請求項記載の発明は、上記課題を解決するためになされたものである。請求項1記載の発明は、刻印又はマークがその表面上であって外縁近傍の環状領域内の何れかの箇所に付されている円形の光学部材を検査する光学部材検査装置であって、前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、この画像メモリに格納されている画像データ中から周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、この領域特定手段によって特定された領域が、前記光学部材の表面の前記環状領域内に対応する領域であるか否かを判定する領域位置判定手段と、前記光学部材の表面の前記環状領域内に対応すると前記領域位置判定手段によって判定された領域に対してのみ前記刻印又はマークを示すマスタ画像とのパターンマッチングを行うパターンマッチング手段と、このパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する比較手段と、前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段とを、備えたことを特徴とする。
【0015】
このように構成されると、パターンマッチング手段は、領域位置判定手段によって前記光学部材の表面の前記環状領域内に対応すると判定された領域以外の領域に対しては、パターンマッチングを行わない。従って、パターンマッチング手段及び比較手段の処理量は、全領域に対してパターンマッチングを行う場合よりも大幅に削減される。それにも拘わらず、刻印やマークに起因する可能性のある領域は、確実にパターンマッチングの対象になる。その結果、従来に比して、検査対象光学部材に付された刻印やマークを正確且つ高速に認識することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1撮像装置が前記光学部材に対してその中心軸を中心に相対回転するラインセンサによって撮像を行い、画像メモリが前記画像データを極座標データとして格納することで、特定したものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1の領域特定手段が、前記画像メモリに格納されている画像データを複写する複写手段とこの複写手段によって得られた画像データを二値化する二値化手段とを有し、この二値化手段によって得られた画像データ内において周囲の画素とは異なる輝度を有する一群の画素を前記領域として特定することで、特定したものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、刻印又はマークがその表面上に付されている光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置であって、前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、この画像メモリに格納されている画像データ中から周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、この領域特定手段によって特定された領域が前記光学部材の良否判定に影響を及ぼす程度の面積を有するか否かを判定する領域面積判定手段と、前記光学部材の良否判定に影響を及ぼす程度の面積を有すると前記領域面積判定手段によって判定された領域に対してのみ前記刻印又はマークを示すマスタ画像とのパターンマッチングを行うパターンマッチング手段と、このパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する比較手段と、前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段とを、備えたことを特徴とする。
【0019】
このように構成されると、前記光学部材の良否判定に影響を及ぼす程度の面積を有すると前記領域面積判定手段によって判定された領域以外に対しては、パターンマッチング手段はパターンマッチングを行わない。従って、パターンマッチング手段及び比較手段の処理量は、全領域に対してパターンマッチングを行う場合よりも、大幅に削減される。それにも拘わらず、刻印やマークに起因する可能性のある領域は、確実にパターンマッチングの対象になる。その結果、従来に比して、検査対象光学部材に付された刻印やマークを正確且つ高速に認識することができる。
【0020】
請求項5記載の発明は、刻印又はマークがその表面上に付されている光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置であって、前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、この画像メモリに格納されている画像データ中から周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、この領域特定手段によって特定された領域を含む画像を前記画像メモリに格納されている画像データ中から切り出す切出手段と、この切出手段によって切り出された画像に対して直交する2方向への投影を行う投影手段と、この投影手段による投影の結果得られた輝度分布情報に基づいて前記切り出された画像内における周囲と輝度が異なる領域の座標を特定する座標特定手段と、前記切り出された画像内における前記座標が示す場所に前記刻印又はマークを示すマスタ画像を重ねてパターンマッチングを行うパターンマッチング手段と、このパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する比較手段と、前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段とを、備えたことを特徴とする。
【0021】
このように構成されると、切出手段によって切り出された画像内において、座標特定手段によって特定された座標が示す場所は、刻印又はマークに対応する画像の存在している可能性が非常に高くなる。従って、パターンマッチング手段は、この場所にマスタ画像を重ねた状態からパターンマッチングを行うので、閾値より高い一致率を直ちに得ることが可能となる。従って、従来のように広範囲のスキャンを行う必要がない。その結果、従来に比して、検査対象光学部材に付された刻印やマークを正確且つ高速に認識することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5のパターンマッチング手段が、前記切り出された画像に対して前記座標が示す場所を起点に前記マスタ画像をずらしつつパターンマッチングを行うことで、特定したものである。
【0023】
請求項7記載の発明は、刻印又はマークがその表面上に付されている光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置であって、前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、この画像メモリに格納されている画像データ中から周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、この領域特定手段によって特定された領域に対して前記刻印又はマークを示すマスタ画像とのパターンマッチングを行う第1パターンマッチング手段と、この第1パターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する第1比較手段と、前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記第1比較手段によってなされなかった領域に関してその領域の画像及び前記マスタ画像を膨張させる膨張手段と、この膨張手段によって膨張された前記領域の画像及び前記マスタ画像に対してパターンマッチングを行う第2パターンマッチング手段と、この第2パターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する第2比較手段と、前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記第1比較手段又は前記第2比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段とを、備えたことを特徴とする。
【0024】
このように構成されると、例えば刻印又はマークがかすれた様に撮影された場合、第1パターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率は、第1比較手段によって、所定の閾値を超えていないと判定される。しかし、その場合には、膨張手段がその領域の画像及びマスタ画像を膨張するので、第2のパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られる一致率は、所定の閾値を超えることができる。従って、第2比較手段によって、その一致率が所定の閾値を超えた判定されるので、第1パターンマッチング手段が、それ以降、本来の不良要因に起因する残りの全領域に対してパターンマッチングを実行してしまう事態を、回避することができる。その結果、従来に比して、検査対象光学部材に付された刻印やマークを正確且つ高速に認識することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
<光学部材検査装置の構成>
本第1実施形態による光学部材検査装置の概略構成を、図1の側面断面図に示す。この図1に示すように、光学部材検査装置を構成する照明ランプ1,拡散板2,及び撮像装置3は、同一の光軸l上に配置されている。
【0026】
この撮像装置3は、正レンズ系である撮像レンズ4と、この撮像レンズ4によって収束された光による像を撮像する撮像素子(複数の画素を一方向に並べてなるCCDラインセンサ)5とから、構成されている。図1において、撮像素子5は、左右にその画素列を向かせるように設置されている。また、撮像素子5の画素列は、その中央において、撮像レンズ4の光軸lと垂直に交わっている。なお、撮像レンズ4は、撮像装置3内において撮像素子5に対して進退自在(ピント調節可能)であり、撮像装置3自体も、光軸l方向に進退調整し得る様に光学部材検査装置の図示せぬフレームに取り付けられている。
【0027】
撮像素子5は、所定時間(各画素に電荷が適度に蓄積する程度の時間)毎にライン状に画像を繰り返し撮像し、画素の並び順に各画素を自己走査して、各画素に蓄積した電荷を出力する。このようにして撮像素子5から出力された電荷は、所定の増幅処理やA/D変換処理を受けた後に、1ライン分の輝度信号からなる画像データとして、制御装置6に入力される。
【0028】
検査対象光学部材14は、撮像装置3側から見た平面図である図2に示す様に円形のレンズであり、光学部材検査装置の図示せぬフレームに取り付けられたホルダ15によって、撮像レンズ4に関してその表面(撮像レンズ4に対向する面)が撮像素子5の撮像面と共役となるように、保持されている。
【0029】
このホルダ15は、撮像レンズ4の光軸lに対して平行にオフセットした中心線Oを中心とした環状の形状を有しており、検査対象光学部材14の周縁をその全周に亘って保持する。また、ホルダ15は、中心線Oを中心として、光軸lに直交する面内で回転可能となっている。そして、このホルダ15の周縁には、環状ギア16が形成されている。この環状ギア16は、駆動モータ8の駆動軸に取り付けられたピニオンギア7に噛合している。従って、駆動モータ8がその駆動軸を回転させると、両ギア7,16を介してホルダ15が回転駆動を受け、ホルダ15に保持されている検査対象光学部材14が、光軸lに直交する面内において回転駆動される。
【0030】
なお、撮像レンズ4の倍率(即ち、撮像装置3自体の位置,及び撮像レンズ4の撮像素子5に対する位置)は、検査対象光学部材14の表面における中心Oから外周縁までの領域を撮像素子5の撮像面に結像し得るように、調整されている。図2においては、撮像素子5によって撮像され得る一ライン分の撮像対象領域が、二点鎖線によって示されている。
【0031】
照明ランプ1は、照明光(白色光)を発光する白熱ランプであり、光学部材検査装置の図示せぬフレームに固定されている。
この照明ランプ1と検査対象光学部材14との間に配置されている拡散板2は、図2に示すように、検査対象光学部材14の半径以上の直径を有する円盤形状を有しており、その表面は粗面として加工されている。従って、この拡散板2は、照明ランプ1から出射された照明光をその裏面全面で受けて、検査対象光学部材14に向けて拡散することができる。なお、この拡散板2は、その中心において撮像レンズ4の光軸lと直交する様に、光学部材検査装置の図示せぬフレームに固定されている。
【0032】
この拡散板2の表面上には、帯状の形状を有する遮光板9が、その長手方向を撮像素子5の画素列の方向と平行な方向に向けて、貼り付けられている。この遮光板9の中心は撮像レンズ4の光軸lと一致している。また、遮光板9は、検査対象光学部材14の半径よりも長い。そして、図2に示すように、撮像装置3の位置から見ると、遮光板9は、検査対象光学部材14の半径に対して完全に重なっている。また、遮光板9の幅は、撮像素子5の画素列の方向に直交する方向における光学部材検査装置の断面図である図4に示すように、撮像素子5の各画素に入射する光の周縁光線m,mの間隔よりも広い。
【0033】
制御装置6は、撮像装置3から入力された画像データに基づいて検査対象光学部材14が良品であるか不良品であるかの判定を行うとともに、この判定に伴って駆動モータ8に駆動電流を供給する処理装置である。
【0034】
図3は、この制御装置6の内部回路構成を示すブロック図である。図3に示す様に、制御装置6は、バスBを介して相互に接続されたCPU60,フレームメモリ61,ホストメモリ62,及びモータ駆動回路63から、構成されている。
【0035】
フレームメモリ61は、撮像装置3から入力された画像データが書き込まれるバッファである。
ホストメモリ62は、画像メモリ領域62a,第1作業メモリ領域62b,第2作業メモリ領域62c,及び、画像処理プログラム格納領域62dを、含んでいる。このうち、画像メモリ領域62aは、フレームメモリ61に書き込まれた画像データが所定時間毎に先頭行から行単位で書き込まれる領域である。この画像メモリ領域62aに書き込まれた画像データは、撮像装置3での撮像方式故に極座標系によるデータ(極座標データ)である。第1作業メモリ領域62bは、画像メモリ領域62a内の画像データが書き写され、その後当該画像データに対して二値化処理が行われる領域である。第2作業メモリ領域62cは、第1作業メモリ領域62b内の二値化画像データからCPU60によって切り出された不良要因と思しき領域(以下、「不良要因候補領域」という)が一次格納され、その後当該不良要因候補領域に対してパターンマッチング処理が行われる領域である。画像処理プログラム格納領域62dは、CPU60にて実行される画像処理プログラムを格納するコンピュータ可読媒体としての領域である。
【0036】
モータ駆動回路63は、撮像装置3側から見てホルダ15及び検査対象光学部材14が反時計方向に等速回転する様に駆動モータ8を駆動させる駆動電流を、この駆動モータ8に供給する。
【0037】
CPU60は、制御装置6全体の制御を行うコンピュータであり、領域特定手段,領域位置判定手段,領域面積判定手段,切出手段,投影手段,座標特定手段,パターンマッチング手段(第1パターンマッチング手段,第2パターンマッチング手段),比較手段(第1比較手段,第2比較手段),マスク手段,及び、良否判定手段に、相当する。即ち、CPU60は、ホストメモリ62の画像処理プログラム格納領域62cに格納されている画像処理プログラムを実行し、フレームメモリ61に書き込まれた画像データを定期的にホストメモリ62の画像メモリ領域62aに書き写すとともに、画像メモリ領域62a中に検査対象光学部材14全体に対応する画像データ(極座標データ)が合成された時点で、この画像データを第1作業メモリ領域62bに書き写して2値化する。そして、CPU60は、第1作業メモリ領域62bに格納されている二値化画像データ中に不良要因候補領域があるか否かを検知し、検知した各不良要因候補領域近傍の画像データを切り出して第2作業メモリ62cに貼り付けて、第2作業メモリ62c上においてマスタ画像とのパターンマッチングを行う。このパターンマッチングの結果、刻印やマークを示す領域が認識されると、画像メモリ領域62a内に残されている画像データ(原画像データ)に対して、認識した領域をマスクする処理を施す。以上の後に、CPU60は、画像メモリ領域62a内の原画像データに基づいて良否判定を行う。また、CPU60は、フレームメモリ61からの画像データ取り込みを行うのと同期して、モータ駆動回路63に対して、駆動電流を駆動モータ8に供給させる指示を行う。
【0038】
<不良要因検出の原理>
以上のように構成される光学部材検査装置において、図4の面内では、撮像レンズ4に入射して撮像素子5の各画素に入射し得る光は、撮像レンズ4の光軸lに沿った光線を主光線とする光束であり且つ図4に示される周縁光線m,m間を通る光のみである。この周縁光線m,mを逆方向に辿ると、検査対象光学部材14の表面において交差した後に、拡散板2に向かって拡がっている。そして、拡散板2上において、この周縁光線m,mの間が遮光板9によって遮られている。従って、図4に示すように、検査対象光学部材14における撮像素子5による撮像対象領域(撮像レンズ4に関して撮像素子5の画素列の受光面と共役な部位及び光軸方向におけるその近傍)に不良要因がないとすると、撮像素子5の各画素に入射する光はない。即ち、拡散板2の表面における遮光板9の側方箇所から拡散した光nは、検査対象光学部材14における撮像対象領域を透過するが、周縁光線m,mの外側を通るので、撮像レンズ4には入射しない。また、拡散板2の表面における遮光板9の側方箇所から拡散して検査対象光学部材14における撮像対象領域以外の箇所を透過した光は、撮像レンズ4に入射し得るが、撮像素子5の各画素上には収束されない。そのため、撮像装置3から出力される画像データは、検査対象光学部材14の外縁に対応する明部(側面での拡散光に因る)を除き、全域において暗くなっている。
【0039】
これに対して、図2に示すように、検査対象光学部材14表面における撮像対象領域内にキズC及びゴミDがある場合、図5に示すように、拡散板2の表面における遮光板9の側方箇所から拡散した光nがこれらキズC及びゴミDに当たると、この光がこれらキズC及びゴミDによって拡散される。この拡散光n’は、周縁光線m,mの交点を中心として発散するので、その一部は、撮像レンズ4を介して撮像素子5の画素上に入射する。従って、キズC及びゴミDの像(周囲よりも明るい像)が撮像素子5の撮像面に形成される。
【0040】
撮像素子5による撮像(電荷蓄積及び走査)は、駆動モータ8による検査対象光学部材14の回転と同期して、この検査対象光学部材14が所定角度だけ回転する毎に行われる。そして、撮像素子5による撮像(電荷蓄積及び走査)がなされる毎に、ライン状の画像データが、制御装置6のフレームメモリ61に書き込まれて、ホストメモリ62の画像メモリ領域62aに取り込まれる。その結果、検査対象光学部材14が回転するにつれて、画像メモリ領域62aの各行には、撮像装置3によって撮像された各ライン状画像データが、先頭行から順に書き込まれる。
【0041】
検査対象光学部材14が1回転した時点でホストメモリ62の画像メモリ領域62aに格納されている画像データ(極座標データ)を、図6に示す。この画像データの横軸(x軸)は、検査対象光学部材14の中心(光軸)Oから半径方向への距離を示し、縦軸(y軸)は、中心Oから点Aに至る半径を基準とした検査対象光学部材14の回転角を示す。なお、検査対象光学部材14表面において刻印やマークが付されるのは、外周縁に沿って一定幅を有する環状領域内に限られる。この領域は、図6に示す画像メモリ領域62a内では、横軸方向(x座標)がx1乃至x2(x2は検査対象光学部材14の外周縁に一致)である帯状領域に対応する。従って、この帯状領域内に存在する不良要因候補のみが、刻印やマークを示すものである可能性を有しているのである。
【0042】
CPU60は、上述したように、この画像メモリ領域62aに格納されている画像データ(原画像データ)に基づいて、検査対象光学部材14の良否判定を行う。具体的には、CPU60は、原画像データ内の各不良要因候補領域のうち、刻印やマークを示すものをマスクし、それ以外を全て不良要因として確定する。そして、確定した全ての不良要因の特徴量を数値化し、数値化された特徴量が夫々に用意された判定閾値を超えたか否かに基づいて、検査対象光学部材14が良品であるか不良品であるかの判定を行うのである。
<パターンマッチングの原理>
次に、本実施形態において第2作業メモリ領域62c上でCPU60が実行するパターンマッチングの原理を、図7に基づいて説明する。図7(a)は、第2作業メモリ62cに貼り付けられた不良要因候補領域近傍の画像データ(被検査画像)である(網掛けされた部位は高輝度画素を示す)。この図7(a)では、被検査画像の中央に不良要因候補領域が明らかに存在するように被検査画像が切り出されているが、実際には、被検査画像の切り出しは大まかに行われるので、被検査画像の中央に不良要因候補領域が存在している保証はない。
【0043】
そこで、本実施形態では、CPU60は、図7(b)及び図7(c)に示すように、第2作業メモリ領域62cのx軸方向及びy軸方向に、夫々、不良要因候補領域の投影を行う。即ち、被検査画像に含まれる高輝度画素のうち同一のx座標の値を有するものの数を、各x座標の値毎に計数する。そして、計数した数のx軸方向における分布を、x軸上のグラフとしてまとめるのである。なお、このグラフを、「x投影された輝度分布情報」と定義する。同様に、被検査画像に含まれる高輝度画素のうち同一のy座標の値を有するものの数を、各y座標の値毎に計数する。そして、計数した数のy軸方向における分布を、y軸上のグラフとしてまとめるのである。なお、このグラフを、「y投影された輝度分布情報」と定義する。
【0044】
次に、CPU60は、x投影された輝度分布情報に基づいて高輝度領域のx座標の範囲を読み取るとともに、y投影された輝度分布情報に基づいて高輝度領域のy座標の範囲を読み取る。これにより、CPU60は、被検査画像中の高輝度領域の範囲を見当付けることができる。
【0045】
次に、CPU60は、見当付けた範囲に、図7(d)に示すマスタ画像を重ね合わせ、マスタ画像を構成する各画素のうち、重なっている被検査画像の画素と同じ輝度を有するものの数をカウントする。図7の例では、カウントされた画素数が46であるので、一致率は46/49=93.9%となる。
【0046】
このように、本実施形態によるパターンマッチングを用いれば、最初のスキャン(1stスキャン)にていきなり高い一致率を得ることが期待できる。
但し、実際には、ノイズの影響により、高輝度領域の範囲にゆらぎが生じる場合もある。そのため、本実施形態でも、最初のスキャン(1stスキャン)での位置を起点としてx/y方向に+/−1ドットの範囲でマスタ画像をスキャンしつつ、マッチング(一致率の算出)を行う。
<制御処理>
次に、上述した不良要因検出の原理及びパターンマッチングの原理に基づいた良否判定を行うために、画像処理プログラム格納領域62dから読み出した画像処理プログラムに従って制御装置6(CPU60)が実行する制御処理の内容を、図8及び図9のフローチャートを用いて説明する。
【0047】
図8の制御処理は、制御装置6に接続された図示せぬ検査開始ボタンが押下されることによりスタートする。スタート後最初のS001では、CPU60は、モータ駆動回路63に対して駆動モータ8への駆動電流の供給を指示し、検査対象光学部材14を等速回転させる。
【0048】
次のS002では、CPU60は、撮像装置3からフレームメモリ61に書き込まれた画像データを、ホストメモリ62の画像メモリ領域62aへ格納する。
次のS003では、CPU60は、S002での画像データの格納によって画像メモリ領域62a内に検査対象光学部材14全体に対応する画像データ(極座標データ)が合成されたかどうかをチェックする。そして、未だ検査対象光学部材14全体に対応する画像データ(極座標データ)が合成されていない場合には、処理をS002に戻し、撮像装置3が次の撮像による画像データをフレームメモリ61に書き込むのを待つ。
【0049】
これに対して、検査対象光学部材14全体に対応する画像データ(極座標データ)が合成された場合には、CPU60は、S004において、この画像データを複写して、第1作業メモリ領域62bに書き写す。従って、第1作業メモリ領域62bでも画像データは、図6に示す極座標系に従ったデータとなる。
【0050】
次のS005では、CPU60は、刻印,マーク認識処理を実行する。図9は、S005にて実行される刻印,マーク認識処理サブルーチンを示すフローチャートである。このサブルーチンに入って最初のS101では、CPU60は、第1作業メモリ領域62bに格納されている画像データに対して二値化処理を行う(二値化手段に相当)。即ち、当該画像データを構成する各画素の輝度値について、所定の閾値との比較を行い、この閾値よりも低ければ最低値(低輝度値)に書き換え、この閾値よりも高ければ最高値(高輝度値)に書き換える。
【0051】
次のS102では、CPU60は、ラベリング工程を実行する。即ち、CPU60は、第1作業メモリ領域62bに書き込まれている画像データ(二値化画像データ)から、高輝度値を有する一群の画素からなる領域を不良要因候補領域として抽出し、抽出した各不良要因候補領域に対して夫々一意の番号(ラベル)n(n=1,2,3,……)を付与する(領域特定手段に相当)。
【0052】
次のS103では、CPU60は、ラベル順に、不良要因候補領域を一つ特定する(領域特定手段に相当)。
次のS104では、CPU60は、S103にて特定した不良要因候補領域の重心の第1作業メモリ領域62b内での座標を調べ、その座標が刻印又はマークが存在し得る領域(x座標がx1〜x2である領域)内であるか否かをチェックする(領域位置判定手段に相当)。そして、重心の座標が当該領域外であれば処理をS106に進め、重心の座標が当該領域内であれば処理をS105に進める。
【0053】
S105では、CPU60は、S103にて特定した不良要因候補領域の面積が所定の閾値以上であるか否かをチェックする(領域面積判定手段に相当)。ここでの閾値は、検査対象光学部材に対する最終的良否判定(S008)に際して個々の不良要因が無視可能な程小さいか否かを判定するために用いられるものと、同一値である。なぜならば、良否判定において無視される程小さい不良要因候補領域であれば、それが本来の不良要因に起因するものであると刻印又はマークに起因するものであるとに拘わらず、そのまま残しておいても最終的良否判定に影響を及ぼさないからである。また、ここでの閾値は一定値である。なぜならば、S105のチェック対象となる不良要因候補領域は、検査対象光学部材14の中心からほぼ一定距離の範囲に存在する不良要因,若しくは、刻印又はマークに起因するものに限られているからである。そして、CPU60は、不良要因候補領域の面積が閾値未満であれば処理をS106に進め、閾値以上であれば処理をS107に進める。
【0054】
S107では、CPU60は、S103にて特定した不良要因候補領域及びその周囲の画像を切り出して、これを第2作業メモリ領域62cに書き写す(切出手段に相当)。
【0055】
次のS108では、CPU60は、S107にて切り出した画像(被検査画像)を、第2作業メモリ領域62c内において、x軸方向及びy軸方向に夫々投影する(投影手段に相当)。
【0056】
次のS109では、CPU60は、x投影された輝度分布情報及びy投影された輝度分布情報に基づいて高輝度領域の座標上の範囲を見当付け、パターンマッチングのスキャン開始位置を決定する(座標特定手段に相当)。
【0057】
次のS110では、CPU60は、上述したパターンマッチングを、S109にて決定したスキャン開始位置から実行開始する((第1)パターンマッチング手段に相当)。
【0058】
次のS111では、CPU60は、S110でのパターンマッチングによって得られた各一致率のうち最高ものが閾値M(80%)を超えているか否かをチェックする((第1)比較手段に相当)。そして、CPU60は、最高一致率が閾値Mを超えている場合には処理をS115に進め、閾値M以下であれば、処理をS112に進める。
【0059】
S112〜S114の処理は、S103にて特定された不良要因候補領域が刻印やマークをかすれた様に撮影して得たものであった場合に備えた処理である。即ち、S112では、CPU60は、被検査画像及びマスタ画像に対して膨張処理を行う(膨張手段に相当)。
【0060】
次のS113では、CPU60は、S112にて得た被検査画像及びマスタ画像に基づいてS110と同様(スキャン開始位置も同位置)にパターンマッチングを行う(第2パターンマッチング手段に相当)。
【0061】
次のS114では、CPU60は、S113でのパターンマッチングによって得られた各一致率のうち最高ものが閾値M(80%)を超えているか否かをチェックする(第2比較手段に相当)。そして、CPU60は、最高一致率が閾値Mを超えている場合には処理をS115に進め、閾値M以下であれば、当該不良要因候補領域は本来の不良要因に起因するものであると確定して、処理をS106に進める。
【0062】
S115では、CPU60は、S103にて特定した不良要因候補が刻印又はマークに起因するものであると認識する。その後、CPU60は、この刻印・マーク認識処理サブルーチンを終了し、処理を図8のメインルーチンに戻す。
【0063】
一方、S106では、CPU60は、S102にてラベリングを施した全ての不良要因候補領域に対してS103以下の処理を実行完了しているかどうかをチェックする。そして、未だ全ての不良要因候補領域に対してS103以下の処理を実行完了していない場合には、CPU60は、処理をS103に戻す。これに対して、S115の処理を実行することなく、全ての不良要因候補領域に対してS103以下の処理を実行し終わったと、S106にて判定した場合には、CPU60は、全ての不良要因候補領域が本来の不良要因に起因すると認識して、この刻印・マーク認識処理サブルーチンを終了し、処理を図8のメインルーチンに戻す。
【0064】
処理が戻された図8のメインルーチンでは、CPU60は、次のS006において、刻印又はマークに起因するとS005にて認識した不良要因候補領域を、画像メモリ領域62aに残されている原画像データからマスキング(消去)する(マスク手段に相当)。従って、全ての不良要因候補領域が本来の不良要因に起因すると認識した場合には、CPU60は何も行わない。このS006でのマスキングの結果、原画像に残された全ての不良要因候補領域は、本来の不良要因に起因する不良要因領域として確定する。
【0065】
次のS007では、CPU60は、マスキング後の原画像データに含まれる不良要因領域の図形的特徴量(面積,フィレ,等)を数値化する。なお、原画像データが極座標データであることに鑑み、ここでの数値化に際しては、各図形的特徴量に対して、検査対象光学部材14の中心からの距離に応じた補正がなされる。
【0066】
次のS008では、CPU60は、S007にて数値化された各図形的特徴量を夫々に用意された判定閾値と比較し、検査対象光学部材14が良品であるか不良品であるかの判定を行う(良否判定手段に相当)。この判定の結果、良品であると判定した場合には、CPU60は、S009において、当該検査対象光学部材14が良品である旨を外部出力(画像表示,音声出力)する。これに対して、判定結果が不良品を示している場合には、CPU60は、S010において、当該検査対象光学部材14が不良品である旨を外部出力(画像表示,音声出力)する。以上の後に、CPU60は、この制御処理を終了する。
<実施形態の作用>
以上のように構成された本実施形態によると、検査対象光学部材14を透過して撮像レンズ4に入射するとともに撮像素子5の各画素に入射し得る様な光は、遮光板9によって、予め拡散板2上にて遮られる。従って、撮像素子5による撮像対象領域内において検査対象光学部材14に不良要因が生じていなければ、撮像素子5によって撮像される画像データ中の各画素の輝度値は、全て黒の値(8ビットグレースケールにおける“0”)となっている。
【0067】
これに対して、撮像素子5によって撮像され得る範囲において検査対象光学部材14に不良要因が生じている場合には、遮光板9の側方からこの領域内に入射した光が不良要因によって拡散され、その拡散光の一部が撮像レンズ4に入射する。この結果、遮光板9の暗い陰を背景とした不良要因の明るい像が、撮像素子5の撮像面に形成される。このとき、画像データ中の不良要因の明るい像を撮像して得られた画素の輝度値は、その像の明るさ(及び、像と撮像素子5の画素との重なり具合)に応じた値(8ビットグレースケールにおける“1〜255”)となっている。
【0068】
そして、検査対象光学部材14が1回転する間に、撮像素子5による撮像が一定周期でなされ、各撮像によって得られたライン状の画像データが画像メモリ領域62aに蓄積される(S002)。
【0069】
制御装置6のCPU60は、画像メモリ領域62aに蓄積された画像データ(極座標データ)を第1作業メモリ領域62bに複写して(S004)、二値化する(S101)。そして、二値化後の画像データから不良要因候補領域を切り出して(S107)、パターンマッチングを実行する(S110)。
【0070】
但し、CPU60は、全ての不良要因候補領域に対してパターンマッチングを実行すると処理時間が長くなり過ぎるので、刻印やマークが本来あるべき範囲内(x座標がx1〜x2の範囲内)に重心座標がある不良要因候補領域に対してのみ、パターンマッチングを実行する(S104)。これにより、処理ステップ数を大幅に削減できるので、高速処理が可能になる。
【0071】
また、刻印やマークが本来あるべき範囲内(x座標がx1〜x2の範囲内)に不良要因候補領域の重心座標があったとしても、その不良要因候補領域の面積が最終的良否判定(S008)にて無視される程度の大きさしかないのであれば、それが仮に刻印やマークの一部であったとしても、最終的良否判定(S008)での判定結果には何等の影響も及ぼさない。従って、このような面積しかない不良要因候補領域に対しては、パターンマッチングを実行しない(S105)。これにより、処理ステップ数を大幅に削減できるので、高速処理が可能になる。
【0072】
さらに、パターンマッチングにおいては、被検査画像を切り出した後(S107)、x軸方向及びy軸方向にこの被検査画像を夫々投影することにより、高輝度領域の位置の見当を付ける(S109)。このように見当を付けた高輝度領域にマスタ画像を重ね合わせて、この状態からスキャンを開始するので(S110)、(当該被検査画像が刻印又はマークに起因する不良要因候補領域を含む限り、)閾値を超える一致率を直ぐに得ることができる。これにより、スキャン回数を大幅に節約できるので、高速処理が可能になる。
【0073】
さらに、閾値を超える一致率が得られない場合には、処理対象の不良要因候補領域は、刻印又はマークをかすれた様に撮影して得られたものであるかも知れない。このような場合に、閾値を超える一致率が得られないからといってパターンマッチング対象を直ちに次の不良要因候補領域に移してしまうと、結局、全ての不良要因候補領域に対してパターンマッチングを実行しなければならなくなってしまい、しかも、刻印又はマークに起因する不良要因候補領域は最後まで認識できない。そのため、本実施形態では、このような場合には検査対象画像及びマスタ画像に対して膨張処理を行う。従って、処理対象の不良要因候補領域が刻印又はマークに起因するものであれば、一致率が上昇するので、結果として、処理ステップ数を大幅に削減して、高速処理を可能とすることができる。
【0074】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明の光学部材検査装置によれば、一個の検査対象光学部材の検査に要する総処理時間を長くする事無く、検査対象光学部材に付された刻印やマークを正確且つ高速に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態による光学部材検査装置の概略構成を示す側面断面図
【図2】 図1の検査対象光学部材等を撮像装置の位置から見た平面図
【図3】 図1の制御装置の内部回路構成を示すブロック図
【図4】 検査対象光学部材に不良要因がない場合における光の進行状態を示す図
【図5】 検査対象光学部材に不良要因がある場合における光の進行状態を示す図
【図6】 画像データの説明図
【図7】 パターンマッチングの説明図
【図8】 図3のCPUにて実行される制御処理を示すフローチャート
【図9】 図9のS005にて実行される刻印・マーク認識処理サブルーチンを示すフローチャート
【図10】 従来のパターンマッチングの説明図
【符号の説明】
3 撮像装置
6 制御装置
8 駆動モータ
14 検査対象光学部材
60 CPU
62 ホストメモリ
62a 画像メモリ領域
62b 第1作業メモリ領域
62c 第2作業メモリ領域
62d 画像処理プログラム格納領域

Claims (7)

  1. 刻印又はマークがその表面上であって外縁近傍の環状領域内の何れかの箇所に付されている円形の光学部材を検査する光学部材検査装置であって、
    前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、
    この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、
    この画像メモリに格納されている画像データ中から、周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、
    この領域特定手段によって特定された領域が、前記光学部材の表面の前記環状領域内に対応する領域であるか否かを判定する領域位置判定手段と、
    前記光学部材の表面の前記環状領域内に対応すると前記領域位置判定手段によって判定された領域に対してのみ、前記刻印又はマークを示すマスタ画像とのパターンマッチングを行うパターンマッチング手段と、
    このパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する比較手段と、
    前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、
    前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段と
    を備えたことを特徴とする光学部材検査装置。
  2. 記撮像装置は、前記光学部材に対してその中心軸を中心に相対回転するラインセンサによって撮像を行い、
    前記画像メモリは、前記画像データを極座標データとして格納する
    ことを特徴とする請求項1記載の光学部材検査装置。
  3. 前記領域特定手段は、
    前記画像メモリに格納されている画像データを複写する複写手段と、この複写手段によって得られた画像データを二値化する二値化手段とを有し、
    この二値化手段によって得られた画像データ内において周囲の画素とは異なる輝度を有する一群の画素を、前記領域として特定する
    ことを特徴とする請求項1記載の光学部材検査装置。
  4. 刻印又はマークがその表面上に付されている光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置であって、
    前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、
    この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、
    この画像メモリに格納されている画像データ中から、周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、
    この領域特定手段によって特定された領域が、前記光学部材の良否判定に影響を及ぼす程度の面積を有するか否かを判定する領域面積判定手段と、
    前記光学部材の良否判定に影響を及ぼす程度の面積を有すると前記領域面積判定手段によって判定された領域に対してのみ、前記刻印又はマークを示すマスタ画像とのパターンマッチングを行うパターンマッチング手段と、
    このパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する比較手段と、
    前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、
    前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段と
    を備えたことを特徴とする光学部材検査装置。
  5. 刻印又はマークがその表面上に付されている光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置であって、
    前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、
    この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、
    この画像メモリに格納されている画像データ中から、周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、
    この領域特定手段によって特定された領域を含む画像を、前記画像メモリに格納されている画像データ中から切り出す切出手段と、
    この切出手段によって切り出された画像に対して、直交する2方向への投影を行う投影手段と、
    この投影手段による投影の結果得られた像に基づいて、前記切り出された画像内における周囲と輝度が異なる領域の座標を特定する座標特定手段と、
    前記切り出された画像内における前記座標が示す場所に前記刻印又はマークを示すマスタ画像を重ねて、パターンマッチングを行うパターンマッチング手段と、
    このパターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する比較手段と、
    前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、
    前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段と
    を備えたことを特徴とする光学部材検査装置。
  6. 前記パターンマッチング手段は、前記切り出された画像に対して、前記座標が示す場所を起点に前記マスタ画像をずらしつつ、パターンマッチングを行う
    ことを特徴とする請求項5記載の光学部材検査装置。
  7. 刻印又はマークがその表面上に付されている光学部材の良否判定を行う光学部材検査装置であって、
    前記光学部材を撮像して当該光学部材の像を含む画像データを出力する撮像装置と、
    この撮像装置から出力された画像データを格納する画像メモリと、
    この画像メモリに格納されている画像データ中から、周囲と輝度が異なる領域を特定する領域特定手段と、
    この領域特定手段によって特定された領域に対して、前記刻印又はマークを示すマスタ画像とのパターンマッチングを行う第1パターンマッチング手段と、
    この第1パターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する第1比較手段と、
    前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記第1比較手段によってなされなかった領域に関して、その領域の画像及び前記マスタ画像を膨張させる膨張手段と、
    この膨張手段によって膨張された前記領域の画像及び前記マスタ画像に対してパターンマッチングを行う第2パターンマッチング手段と、
    この第2パターンマッチング手段によるパターンマッチングの結果得られた一致率が所定の閾値を超えたか否かを比較する第2比較手段と、
    前記一致率が前記閾値を超えたとの判定が前記第1比較手段又は前記第2比較手段によってなされた領域を前記画像データからマスクするマスク手段と、
    前記マスク手段によってマスクされた前記画像データに基づいて良否判定を行う良否判定手段と
    を備えたことを特徴とする光学部材検査装置。
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