JP3887041B2 - 2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬および農薬の製造原料として有用な、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬および農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの一般的な製造法としては、2−クロロ−5−メチルピリジン類の塩素化により得る方法[DE-3630046(EP-A-0260485), 特公平7-94441, 特開平5-230024, 特開平5-230025(EP-A-0557967)]が知られている。その原料となる2−クロロ−5−メチルピリジン類は、テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters, 1971年, 2807頁)記載の方法により3−メチルピリジンを酸化して得られる3−メチルピリジン N−オキシドを、ケミストリー オブ ヘテロサイクリック コンパウンズ(Chemistry of Heterocyclic Compounds, 14巻, 補巻2, 1974年)記載の方法により塩素化して得られる。従って、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンは3−メチルピリジンより3工程を経て製造されており、工程全体を通算するとその収率は低い。
【0003】
また、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンは3−メチルピリジンの直接塩素化によっても製造されている[USP-5247093(WO94/13640), USP-4577027, USP-4564681]。しかし、反応には300℃から500℃の高温を要し、さらに、低収率であることから工業的製法としては用いえない。
【0004】
また、EP-A-0393453記載の方法では3−メチルピリジンの塩素化により得られる3−ジクロロメチルピリジンを2−メトキシ−5−メトキシメチルピリジンとし、さらに酸塩化物および/またはリン塩化物による塩素化を行うことにより2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを製造している。これらいずれの方法においても2−クロロ−5−クロロメチルピリジンは3−メチルピリジンより3工程を経て製造されるため、工程全体としては低収率である。
【0005】
2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの他の製造原料として、EP-A-0477828記載の2−クロロ−5−ヒドロキシメチルピリジンが挙げられるが、微生物変換による製法のため生産効率の低さが問題になっている。
すなわち、これまで、医薬および農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを工業的にかつ安価に製造しうる方法は存在しなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、医薬、および、農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを工業的にかつ安価に製造しうる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために種々の検討を行い、その結果、2−アルコキシ−5−メチルピリジン類に分子状塩素を作用させ、次いで、酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させると2−クロロ−5−クロロメチルピリジンが選択的に製造しうること、ならびに、2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類に酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させると2−クロロ−5−クロロメチルピリジンが選択的に製造しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記の一般式
【0009】
【化10】
【0010】
(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される2−アルコキシ−5−メチルピリジン類に分子状塩素を作用させ、次いで、酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させることを特徴とする、下記の式(II)
【0011】
【化11】
【0012】
で示される2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0013】
また、本発明は、下記の一般式(III)
【0014】
【化12】
【0015】
(式中、R1は低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示されるスルホニルシアニドと、下記の一般式(IV)
【0016】
【化13】
【0017】
(式中、R3はアシロシキ基を表す。)で示される1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエンとを反応させることにより、下記の一般式(V)
【0018】
【化14】
【0019】
(式中、R2は低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジン類を製造し、さらに、得れらた上記一般式(V)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジン類に、一般式:R1OM(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または置換されてもよいアンモニウムを表す。)で示されるアルコール塩を作用させることにより、下記の一般式(I)
【0020】
【化15】
【0021】
(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される2−アルコキシ−5−メチルピリジン類を製造し、次いで、得られた2−アルコキシ−5−メチルピリジン類に分子状塩素を作用させ、次いで、酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させることを特徴とする、下記の式(II)
【化16】
で示される2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0022】
さらに、本発明は、下記の一般式(VI)
【化17】
(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類に酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させること特徴とする、下記の式(II)
【化18】
で示される2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0023】
【発明の実施の形態】
上記一般式中、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、ハロゲン化低級アルキル基としては、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。低級アルケニル基としては、アリル基、1−プロペニル基などが挙げられ、これらはメチル基、エチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、プロポキシ基などの低級アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基などにより適宜置換されても良い。また、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、これらは上記置換基により適宜置換されても良い。そして、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられ、これらは上記置換基により適宜置換されてもよい。
【0024】
本発明の2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法は下記のスキームで示される。
【0025】
【化19】
【0026】
(式中、R1、R2、およびR3は上記と同じである。)
【0027】
本発明の第一の方法における出発物質である上記一般式(I)で示される2−アルコキシ−5−メチルピリジン類は、ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー パーキン トランスアクション I(Journal of Chemical Society Perkin Transaction I, 1984年, 1839頁)記載の方法により製造することができ、また、上記一般式(V)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジン類に一般式:R1OM(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよい低級アルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または置換されてもよいアンモニウム)で示されるアルコール塩を作用させることにより製造することができる。
【0028】
一般式R1OMで示されるアルコール塩の原料となるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどの低級アルキルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアルコールなどのハロゲン化低級アルキルアルコール、アリルアルコール、イソプロペニルアルコールなどの置換されてもよい低級アルケニルアルコール、シクロヘキサノール、そして、ベンジルアルコール、p−フルオロベンジルアルコールなどの置換されてもよいアラルキルアルコールが挙げられる。また、アルコールの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または、置換されてもよいアンモニウム塩が挙げられる。
【0029】
アルカリ金属塩としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。また、アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、エチルアンモニウム塩などのアルキルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩などのジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩などのトリアルキルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩、ベンジルアンモニウム塩などのアラルキルアンモニウム塩、ジベンジルアンモニウム塩などのジアラルキルアンモニウム塩、ベンジルメチルアンモニウム塩などのアラルキルアルキルアンモニウム塩、ベンジルジメチルアンモニウム塩などのアラルキルジアルキルアンモニウム塩、そして、ベンジルトリメチルアンモニウム塩などのアラルキルトリアルキルアンモニウム塩が挙げられる。これらのうち、好ましくはアルカリ金属塩が用いられ、より好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0030】
反応に際して、溶媒を用いることができる。溶媒としてはアルコール塩に対応するアルコール類を用いることができ、さらに、反応に関与しないものであればいかなるものでも用いうるが、例えば、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。また、反応は、一般に、20℃から120℃で行われ、より好ましくは、60℃から80℃で行われる。
【0031】
分子状塩素による塩素化に用いる塩素化剤としては、ラジカル発生条件下で分子状塩素(塩素ラジカル)を発生するものであればいかなるものであってもよいが、反応効率およびコストの点で、塩素または塩化スルフリルが好ましい。塩素化剤は、反応中に連続的にもしくは逐次的に加えることが好ましい。
【0032】
分子状塩素を発生させるためには、ラジカル開始剤を使用することができる。かかるラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)などのニトリル類、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルなどの過酸化物が挙げられる。ラジカル開始剤は、反応前および/または反応中に連続的にもしくは逐次的に添加することができる。ラジカル開始剤の添加量は0.001当量から3.0当量であり、好ましくは0.05当量から1.0当量である。また、光照射等によっても、分子状塩素を発生させることができる。
【0033】
本反応は好ましくは溶媒中で行われ、溶媒としては反応に関与しないものであればいかなるものでも用いられるが、例えばアセトニトリル、二硫化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、ピリジンなどの含窒素芳香族炭化水素、ヘキサンなどの炭化水素などが挙げられ、これらは混合して用いることもできる。
【0034】
また、反応は、20℃から溶媒還流温度で行われることが好ましく、60℃から120℃がより好ましい。
【0035】
酸塩化物および/またはリン塩化物による塩素化に用いる酸塩化物としては、オキシ塩化リン、塩化チオニル、オキザリルクロリドなどが挙げられ、塩化リンとしては五塩化リン、三塩化リンなどが挙げられる。酸塩化物および/またはリン塩化物は、反応前および/または反応中に連続的にもしくは逐次的に添加することができる。酸塩化物および/またはリン塩化物の添加量は1当量から20当量であり、より好ましくは2当量から10当量である。
【0036】
本反応に際して、溶媒を用いることもできる。上記酸塩化物および/またはリン塩化物を溶媒として用いることができるが、その他反応に関与しないものであればいかなる溶媒でも用いられ、例えばテトラクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、トルエン、クロロベンゼンなどの置換芳香族炭化水素などがあげられる。
【0037】
本反応には塩化水素の存在が好ましく、塩化水素は反応前および/または反応中に連続的にもしくは逐次的に添加することができる。塩化水素の添加量は溶媒に対する飽和量でよいが、好ましくは、1当量から10当量である。
【0038】
本反応は封管中などの閉鎖系で行うことが好ましいが、開放系で行うこともできる。また、反応は、20℃から200℃で行われることが好ましく、60℃から150℃がより好ましい。
【0039】
本発明の第二の方法における出発物質であるスルホニルシアニド(III)は、対応するスルフィン酸ナトリウムよりオーガニック シンセシス(Organic Synthesis, 57巻, 88頁, 1977年)記載の方法で得ることができる。他方の出発物質である1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン(IV)は、例えば、インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー(Industrial and Engineering Chemistry, 41巻, 12号, 2920頁, 1949年)記載の方法で得ることができる。
【0040】
反応に供するスルホニルシアニド(III)の具体例としては、メタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニドなどの低級アルカンスルホニルシアニド、シクロヘキサンスルホニルシアニド、シクロオクタンスルホニルシアニドなどのシクロアルカンスルホニルシアニド、ベンゼンスルホニルシアニド、p−トルエンスルホニルシアニドなどのアレンスルホニルシアニド、そして、フェニルメタンスルホニルシアニドなどのアリールアルカンスルホニルシアニドが挙げられる。
【0041】
反応に供する、一般式(IV)で示される1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエンのアシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
【0042】
上記一般式(III)で示されるスルホニルシアニドと上記一般式(IV)で示される1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエンとの反応は、ディールス−アルダー反応条件下に行うことができ、重合禁止剤の存在下、あるいは、非存在下に行われる。本反応においては、一旦、ディールス−アルダー付加体が生成した後、反応条件下で脱離反応が進行して、一般式(V)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジンが得られるものと考えられる。
【0043】
重合禁止剤としては、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール類、ヒドロキノン、ジ−t−ブチルヒドロキノンなどのヒドロキノン類、1−ナフトール、2−ナフトールなどのナフトール類、そしてカテコール、p−t−ブチルカテコールなどのカテコール類が挙げられる。重合禁止剤の添加量はジエンの重量の1/100000から1/100であることが好ましく、1/10000から1/100であることがより好ましい。
【0044】
反応に際して、溶媒を用いることもできる。溶媒としては反応に関与しないものであればいかなるものでも用いうるが、例えば、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0045】
反応は、一般に、20℃から120℃で行われることが好ましく、60℃から100℃がより好ましい。
【0046】
本発明の第三の出発物質である2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類(VI)は、例えば、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry, 56巻, 15号, 4636頁, 1991年)記載の方法、または、ジャーナル オブ メジシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry, 34巻, 1028頁, 1991年)記載の方法により得ることができる。
【0047】
反応に供する2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類(VI)の具体例としては、5−クロロメチル−2−メトキシピリジン、5−クロロメチル−2−エトキシピリジン、5−クロロメチル−2−プロポキシピリジン、5−クロロメチル−2,2,2−トリフルオロエトキシピリジン、5−クロロメチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシピリジン、2−ベンジロキシ−5−クロロメチルピリジン、および、5−クロロメチル−2−p−フルオロベンジロキシピリジンが挙げられる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0049】
実施例1
5−メチル−2−フェニルスルホニルピリジンの合成
【0050】
【化20】
【0051】
室温下、4−メトキシフェノール(5.2mg, 0.04mmol)を加えた1−アセトキシイソプレン(17.3g, 0.14mol)にベンゼンスルホニルシアニド(14.4g, 85.7mmol)を加え80℃で1時間撹拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えアルカリ性とし室温まで放冷した後、生じた固体を水(200ml)で二度洗浄し、続いて、ジエチルエーテル(200ml)で洗浄し、減圧下に溶媒を留去することにより下記の物性を有する5−メチル−2−フェニルスルホニルピリジンを白色固体(19.0g, 81.5mmol, 収率95%)として得た。
【0052】
1H-NMR(200MHz, CDCl3) δ : 2.40(s, 3H, -CH3), 7.52-7.60(m, 3H, Ar-H), 7.70(dd, 1H, J = 1.8 and 8.6Hz, H-4), 8.03-8.07(m, 2H, Ar-H), 8.09(d, 1H, J = 8.6Hz, H-3), 8.49(d, 1H, J = 1.8Hz, H-6)
CIMS(m/z) : 234(M++1), 169(M+-SO2)
融点 : 118℃〜120℃
【0053】
実施例2
2−メトキシ−5−メチルピリジンの合成
【0054】
【化21】
【0055】
室温下、5−メチル−2−フェニルスルホニルピリジン(100g, 0.43mol)のトルエン(100ml)溶液に、メタノール(100ml)を加え、さらに、ナトリウム メトキシド(46.0g, 0.85mol)を加え、2時間加熱還流した。反応液を室温まで放冷後、生じた固体を濾別し、得られた濾液より溶媒を留去した。得られた残渣を減圧蒸留に付し63℃から65℃(18mmHg)の留分として下記の物性を有する2−メトキシ−5−メチルピリジンを無色液体(47.7g, 0.39mol, 収率91%)として得た。
【0056】
1H-NMR(200MHz, CDCl3) δ : 2.23(s, 3H, -CH3), 3.90(s, 3H, -OCH3), 6.65(d, 1H, J = 8.4Hz, H-3), 7.36(dd, 1H, J = 1.1 and 8.4Hz, H-4), 7.96(d, 1H, J = 1.1Hz, H-6)
【0057】
実施例3
2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの合成
【0058】
【化22】
【0059】
2−メトキシ−5−メチルピリジン(10.0g, 81.3mmol)の四塩化炭素(150ml)溶液に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(67.0mg, 0.41mmol)を加え5分間加熱還流した。還流している反応液に塩素(毎分30ml)を通じ、15分毎に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(67.0mg, 0.41mmol)を加えながら2時間加熱還流した。反応液を熱時氷(100g)に注ぎ込み飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、アルカリ性とした。有機層を分離し、水層を四塩化炭素(20ml×3)で洗浄し、これを先の有機層に加えた。得られた有機層を飽和食塩水(200ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、四塩化炭素を留去した。得られた残渣を減圧蒸留に付し、出発物質である2−メトキシ−5−メチルピリジンを回収し、残渣(3.8g)を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析において、転化率は21%であった。
【0060】
室温下、得られた蒸留残渣(2.0g)のオキシ塩化リン(10ml)溶液に塩化水素(毎秒0.3ml)を5分間通じた後、封管中120℃で2時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷後、減圧下オキシ塩化リンを留去し、得られた残渣を氷(100g)に注ぎ込み、炭酸ナトリウムをアルカリ性となるまで加え、塩化メチレン(40ml×5)により抽出した。得られた有機層を飽和食塩水(200ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、塩化メチレンを留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 5/1)に付し、下記の物性値を有する2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを白色半固体(640mg, 4.0mmol)として得た。これは、出発物質である2−メトキシ−5−メチルピリジン転化分の44%に相当する。
【0061】
1H-NMR(200MHz, CDCl3) δ : 4.57(s, 2H, -CH2-), 7.35(d, 1H, J = 8.1Hz, H-3), 7.50(dd, 1H, J = 2.3 and 8.1Hz, H-4), 8.40(d, 1H, J = 2.3Hz, H-6)
EIMS(m/z) : 161(M+), 126(M+-Cl)
実施例4
2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの合成
【0062】
【化23】
【0063】
室温下、5−クロロメチル−2−メトキシピリジン(1.02g, 6.5mmol)のオキシ塩化リン(3ml)溶液に、塩化水素(毎秒0.3ml)を20秒間通じた後、封管中120℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷後、氷(100g)に注ぎ込み、炭酸ナトリウムをアルカリ性となるまで加え、塩化メチレン(40ml×5)により抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去することにより2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを白色半固体(784mg, 4.8mmol, 収率74%)として得た。
【0064】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、医薬および農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを工業的にかつ安価に製造しうる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬および農薬の製造原料として有用な、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医薬および農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの一般的な製造法としては、2−クロロ−5−メチルピリジン類の塩素化により得る方法[DE-3630046(EP-A-0260485), 特公平7-94441, 特開平5-230024, 特開平5-230025(EP-A-0557967)]が知られている。その原料となる2−クロロ−5−メチルピリジン類は、テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters, 1971年, 2807頁)記載の方法により3−メチルピリジンを酸化して得られる3−メチルピリジン N−オキシドを、ケミストリー オブ ヘテロサイクリック コンパウンズ(Chemistry of Heterocyclic Compounds, 14巻, 補巻2, 1974年)記載の方法により塩素化して得られる。従って、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンは3−メチルピリジンより3工程を経て製造されており、工程全体を通算するとその収率は低い。
【0003】
また、2−クロロ−5−クロロメチルピリジンは3−メチルピリジンの直接塩素化によっても製造されている[USP-5247093(WO94/13640), USP-4577027, USP-4564681]。しかし、反応には300℃から500℃の高温を要し、さらに、低収率であることから工業的製法としては用いえない。
【0004】
また、EP-A-0393453記載の方法では3−メチルピリジンの塩素化により得られる3−ジクロロメチルピリジンを2−メトキシ−5−メトキシメチルピリジンとし、さらに酸塩化物および/またはリン塩化物による塩素化を行うことにより2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを製造している。これらいずれの方法においても2−クロロ−5−クロロメチルピリジンは3−メチルピリジンより3工程を経て製造されるため、工程全体としては低収率である。
【0005】
2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの他の製造原料として、EP-A-0477828記載の2−クロロ−5−ヒドロキシメチルピリジンが挙げられるが、微生物変換による製法のため生産効率の低さが問題になっている。
すなわち、これまで、医薬および農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを工業的にかつ安価に製造しうる方法は存在しなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、医薬、および、農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを工業的にかつ安価に製造しうる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために種々の検討を行い、その結果、2−アルコキシ−5−メチルピリジン類に分子状塩素を作用させ、次いで、酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させると2−クロロ−5−クロロメチルピリジンが選択的に製造しうること、ならびに、2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類に酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させると2−クロロ−5−クロロメチルピリジンが選択的に製造しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記の一般式
【0009】
【化10】
【0010】
(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される2−アルコキシ−5−メチルピリジン類に分子状塩素を作用させ、次いで、酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させることを特徴とする、下記の式(II)
【0011】
【化11】
【0012】
で示される2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0013】
また、本発明は、下記の一般式(III)
【0014】
【化12】
【0015】
(式中、R1は低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示されるスルホニルシアニドと、下記の一般式(IV)
【0016】
【化13】
【0017】
(式中、R3はアシロシキ基を表す。)で示される1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエンとを反応させることにより、下記の一般式(V)
【0018】
【化14】
【0019】
(式中、R2は低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジン類を製造し、さらに、得れらた上記一般式(V)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジン類に、一般式:R1OM(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または置換されてもよいアンモニウムを表す。)で示されるアルコール塩を作用させることにより、下記の一般式(I)
【0020】
【化15】
【0021】
(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される2−アルコキシ−5−メチルピリジン類を製造し、次いで、得られた2−アルコキシ−5−メチルピリジン類に分子状塩素を作用させ、次いで、酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させることを特徴とする、下記の式(II)
【化16】
で示される2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0022】
さらに、本発明は、下記の一般式(VI)
【化17】
(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよいアルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表す。)で示される2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類に酸塩化物および/またはリン塩化物を作用させること特徴とする、下記の式(II)
【化18】
で示される2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法に関する。
【0023】
【発明の実施の形態】
上記一般式中、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、ハロゲン化低級アルキル基としては、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。低級アルケニル基としては、アリル基、1−プロペニル基などが挙げられ、これらはメチル基、エチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、プロポキシ基などの低級アルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基などにより適宜置換されても良い。また、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、これらは上記置換基により適宜置換されても良い。そして、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられ、これらは上記置換基により適宜置換されてもよい。
【0024】
本発明の2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの製造法は下記のスキームで示される。
【0025】
【化19】
【0026】
(式中、R1、R2、およびR3は上記と同じである。)
【0027】
本発明の第一の方法における出発物質である上記一般式(I)で示される2−アルコキシ−5−メチルピリジン類は、ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー パーキン トランスアクション I(Journal of Chemical Society Perkin Transaction I, 1984年, 1839頁)記載の方法により製造することができ、また、上記一般式(V)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジン類に一般式:R1OM(式中、R1は低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、シクロアルキル基、置換されてもよい低級アルケニル基、または置換されてもよいアラルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または置換されてもよいアンモニウム)で示されるアルコール塩を作用させることにより製造することができる。
【0028】
一般式R1OMで示されるアルコール塩の原料となるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどの低級アルキルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアルコールなどのハロゲン化低級アルキルアルコール、アリルアルコール、イソプロペニルアルコールなどの置換されてもよい低級アルケニルアルコール、シクロヘキサノール、そして、ベンジルアルコール、p−フルオロベンジルアルコールなどの置換されてもよいアラルキルアルコールが挙げられる。また、アルコールの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または、置換されてもよいアンモニウム塩が挙げられる。
【0029】
アルカリ金属塩としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、アルカリ土類金属塩としてはマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。また、アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、エチルアンモニウム塩などのアルキルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩などのジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩などのトリアルキルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩、ベンジルアンモニウム塩などのアラルキルアンモニウム塩、ジベンジルアンモニウム塩などのジアラルキルアンモニウム塩、ベンジルメチルアンモニウム塩などのアラルキルアルキルアンモニウム塩、ベンジルジメチルアンモニウム塩などのアラルキルジアルキルアンモニウム塩、そして、ベンジルトリメチルアンモニウム塩などのアラルキルトリアルキルアンモニウム塩が挙げられる。これらのうち、好ましくはアルカリ金属塩が用いられ、より好ましくはナトリウム塩が挙げられる。
【0030】
反応に際して、溶媒を用いることができる。溶媒としてはアルコール塩に対応するアルコール類を用いることができ、さらに、反応に関与しないものであればいかなるものでも用いうるが、例えば、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。また、反応は、一般に、20℃から120℃で行われ、より好ましくは、60℃から80℃で行われる。
【0031】
分子状塩素による塩素化に用いる塩素化剤としては、ラジカル発生条件下で分子状塩素(塩素ラジカル)を発生するものであればいかなるものであってもよいが、反応効率およびコストの点で、塩素または塩化スルフリルが好ましい。塩素化剤は、反応中に連続的にもしくは逐次的に加えることが好ましい。
【0032】
分子状塩素を発生させるためには、ラジカル開始剤を使用することができる。かかるラジカル開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)などのニトリル類、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルなどの過酸化物が挙げられる。ラジカル開始剤は、反応前および/または反応中に連続的にもしくは逐次的に添加することができる。ラジカル開始剤の添加量は0.001当量から3.0当量であり、好ましくは0.05当量から1.0当量である。また、光照射等によっても、分子状塩素を発生させることができる。
【0033】
本反応は好ましくは溶媒中で行われ、溶媒としては反応に関与しないものであればいかなるものでも用いられるが、例えばアセトニトリル、二硫化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素、ピリジンなどの含窒素芳香族炭化水素、ヘキサンなどの炭化水素などが挙げられ、これらは混合して用いることもできる。
【0034】
また、反応は、20℃から溶媒還流温度で行われることが好ましく、60℃から120℃がより好ましい。
【0035】
酸塩化物および/またはリン塩化物による塩素化に用いる酸塩化物としては、オキシ塩化リン、塩化チオニル、オキザリルクロリドなどが挙げられ、塩化リンとしては五塩化リン、三塩化リンなどが挙げられる。酸塩化物および/またはリン塩化物は、反応前および/または反応中に連続的にもしくは逐次的に添加することができる。酸塩化物および/またはリン塩化物の添加量は1当量から20当量であり、より好ましくは2当量から10当量である。
【0036】
本反応に際して、溶媒を用いることもできる。上記酸塩化物および/またはリン塩化物を溶媒として用いることができるが、その他反応に関与しないものであればいかなる溶媒でも用いられ、例えばテトラクロロエタン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素、トルエン、クロロベンゼンなどの置換芳香族炭化水素などがあげられる。
【0037】
本反応には塩化水素の存在が好ましく、塩化水素は反応前および/または反応中に連続的にもしくは逐次的に添加することができる。塩化水素の添加量は溶媒に対する飽和量でよいが、好ましくは、1当量から10当量である。
【0038】
本反応は封管中などの閉鎖系で行うことが好ましいが、開放系で行うこともできる。また、反応は、20℃から200℃で行われることが好ましく、60℃から150℃がより好ましい。
【0039】
本発明の第二の方法における出発物質であるスルホニルシアニド(III)は、対応するスルフィン酸ナトリウムよりオーガニック シンセシス(Organic Synthesis, 57巻, 88頁, 1977年)記載の方法で得ることができる。他方の出発物質である1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエン(IV)は、例えば、インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー(Industrial and Engineering Chemistry, 41巻, 12号, 2920頁, 1949年)記載の方法で得ることができる。
【0040】
反応に供するスルホニルシアニド(III)の具体例としては、メタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニドなどの低級アルカンスルホニルシアニド、シクロヘキサンスルホニルシアニド、シクロオクタンスルホニルシアニドなどのシクロアルカンスルホニルシアニド、ベンゼンスルホニルシアニド、p−トルエンスルホニルシアニドなどのアレンスルホニルシアニド、そして、フェニルメタンスルホニルシアニドなどのアリールアルカンスルホニルシアニドが挙げられる。
【0041】
反応に供する、一般式(IV)で示される1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエンのアシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
【0042】
上記一般式(III)で示されるスルホニルシアニドと上記一般式(IV)で示される1−アシロキシ−2−メチル−1,3−ブタジエンとの反応は、ディールス−アルダー反応条件下に行うことができ、重合禁止剤の存在下、あるいは、非存在下に行われる。本反応においては、一旦、ディールス−アルダー付加体が生成した後、反応条件下で脱離反応が進行して、一般式(V)で示される5−メチル−2−スルホニルピリジンが得られるものと考えられる。
【0043】
重合禁止剤としては、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール類、ヒドロキノン、ジ−t−ブチルヒドロキノンなどのヒドロキノン類、1−ナフトール、2−ナフトールなどのナフトール類、そしてカテコール、p−t−ブチルカテコールなどのカテコール類が挙げられる。重合禁止剤の添加量はジエンの重量の1/100000から1/100であることが好ましく、1/10000から1/100であることがより好ましい。
【0044】
反応に際して、溶媒を用いることもできる。溶媒としては反応に関与しないものであればいかなるものでも用いうるが、例えば、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
【0045】
反応は、一般に、20℃から120℃で行われることが好ましく、60℃から100℃がより好ましい。
【0046】
本発明の第三の出発物質である2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類(VI)は、例えば、ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry, 56巻, 15号, 4636頁, 1991年)記載の方法、または、ジャーナル オブ メジシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry, 34巻, 1028頁, 1991年)記載の方法により得ることができる。
【0047】
反応に供する2−アルコキシ−5−クロロメチルピリジン類(VI)の具体例としては、5−クロロメチル−2−メトキシピリジン、5−クロロメチル−2−エトキシピリジン、5−クロロメチル−2−プロポキシピリジン、5−クロロメチル−2,2,2−トリフルオロエトキシピリジン、5−クロロメチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシピリジン、2−ベンジロキシ−5−クロロメチルピリジン、および、5−クロロメチル−2−p−フルオロベンジロキシピリジンが挙げられる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0049】
実施例1
5−メチル−2−フェニルスルホニルピリジンの合成
【0050】
【化20】
【0051】
室温下、4−メトキシフェノール(5.2mg, 0.04mmol)を加えた1−アセトキシイソプレン(17.3g, 0.14mol)にベンゼンスルホニルシアニド(14.4g, 85.7mmol)を加え80℃で1時間撹拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えアルカリ性とし室温まで放冷した後、生じた固体を水(200ml)で二度洗浄し、続いて、ジエチルエーテル(200ml)で洗浄し、減圧下に溶媒を留去することにより下記の物性を有する5−メチル−2−フェニルスルホニルピリジンを白色固体(19.0g, 81.5mmol, 収率95%)として得た。
【0052】
1H-NMR(200MHz, CDCl3) δ : 2.40(s, 3H, -CH3), 7.52-7.60(m, 3H, Ar-H), 7.70(dd, 1H, J = 1.8 and 8.6Hz, H-4), 8.03-8.07(m, 2H, Ar-H), 8.09(d, 1H, J = 8.6Hz, H-3), 8.49(d, 1H, J = 1.8Hz, H-6)
CIMS(m/z) : 234(M++1), 169(M+-SO2)
融点 : 118℃〜120℃
【0053】
実施例2
2−メトキシ−5−メチルピリジンの合成
【0054】
【化21】
【0055】
室温下、5−メチル−2−フェニルスルホニルピリジン(100g, 0.43mol)のトルエン(100ml)溶液に、メタノール(100ml)を加え、さらに、ナトリウム メトキシド(46.0g, 0.85mol)を加え、2時間加熱還流した。反応液を室温まで放冷後、生じた固体を濾別し、得られた濾液より溶媒を留去した。得られた残渣を減圧蒸留に付し63℃から65℃(18mmHg)の留分として下記の物性を有する2−メトキシ−5−メチルピリジンを無色液体(47.7g, 0.39mol, 収率91%)として得た。
【0056】
1H-NMR(200MHz, CDCl3) δ : 2.23(s, 3H, -CH3), 3.90(s, 3H, -OCH3), 6.65(d, 1H, J = 8.4Hz, H-3), 7.36(dd, 1H, J = 1.1 and 8.4Hz, H-4), 7.96(d, 1H, J = 1.1Hz, H-6)
【0057】
実施例3
2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの合成
【0058】
【化22】
【0059】
2−メトキシ−5−メチルピリジン(10.0g, 81.3mmol)の四塩化炭素(150ml)溶液に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(67.0mg, 0.41mmol)を加え5分間加熱還流した。還流している反応液に塩素(毎分30ml)を通じ、15分毎に2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(67.0mg, 0.41mmol)を加えながら2時間加熱還流した。反応液を熱時氷(100g)に注ぎ込み飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加え、アルカリ性とした。有機層を分離し、水層を四塩化炭素(20ml×3)で洗浄し、これを先の有機層に加えた。得られた有機層を飽和食塩水(200ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、四塩化炭素を留去した。得られた残渣を減圧蒸留に付し、出発物質である2−メトキシ−5−メチルピリジンを回収し、残渣(3.8g)を得た。ガスクロマトグラフィーによる分析において、転化率は21%であった。
【0060】
室温下、得られた蒸留残渣(2.0g)のオキシ塩化リン(10ml)溶液に塩化水素(毎秒0.3ml)を5分間通じた後、封管中120℃で2時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷後、減圧下オキシ塩化リンを留去し、得られた残渣を氷(100g)に注ぎ込み、炭酸ナトリウムをアルカリ性となるまで加え、塩化メチレン(40ml×5)により抽出した。得られた有機層を飽和食塩水(200ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、塩化メチレンを留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 5/1)に付し、下記の物性値を有する2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを白色半固体(640mg, 4.0mmol)として得た。これは、出発物質である2−メトキシ−5−メチルピリジン転化分の44%に相当する。
【0061】
1H-NMR(200MHz, CDCl3) δ : 4.57(s, 2H, -CH2-), 7.35(d, 1H, J = 8.1Hz, H-3), 7.50(dd, 1H, J = 2.3 and 8.1Hz, H-4), 8.40(d, 1H, J = 2.3Hz, H-6)
EIMS(m/z) : 161(M+), 126(M+-Cl)
実施例4
2−クロロ−5−クロロメチルピリジンの合成
【0062】
【化23】
【0063】
室温下、5−クロロメチル−2−メトキシピリジン(1.02g, 6.5mmol)のオキシ塩化リン(3ml)溶液に、塩化水素(毎秒0.3ml)を20秒間通じた後、封管中120℃で1時間攪拌した。反応溶液を室温まで放冷後、氷(100g)に注ぎ込み、炭酸ナトリウムをアルカリ性となるまで加え、塩化メチレン(40ml×5)により抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去することにより2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを白色半固体(784mg, 4.8mmol, 収率74%)として得た。
【0064】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、医薬および農薬の製造中間体として有用な2−クロロ−5−クロロメチルピリジンを工業的にかつ安価に製造しうる。
Claims (3)
- 下記の一般式(III)
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