JP3886572B2 - 排水の脱硫、脱臭方法、その装置およびシステム - Google Patents

排水の脱硫、脱臭方法、その装置およびシステム Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水の脱硫、脱臭方法、脱硫、脱臭装置およびそのシステムに関する。
【0002】
【従来技術】
工場排水や家庭用下水などの各種排水中にはいおう化合物が含有されており、これに基因する悪臭が発生する。
【0003】
排水中のいおう化合物を除去する手段としては、硝酸塩の添加(下水道協会誌第33巻、1996年8月号、第62から71頁)などのように従来からいろいろな手段が提案されているが、その手段は排水中に含有されているいおう化合物の分解・除去にかかるものであり、その処理中に排水中から気化した空気中のいおう化合物の除去手段についてまでも配慮した排水の脱硫、脱臭に関する技術は、いまだ知られていない。
【0004】
本発明者らは、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層が、排水中のいおう化合物の分解除去に非常に有効であることを見出したが、この活性炭中には酸素をリッチに存在させる必要がある。
そのために、前記活性炭層に供給される排水にエアレーションを施して、酸素リッチの排水として供給することが考えられる。ところが、排水中に空気を吹き込むと排水中に溶解していた硫化水素やメルカプタンなどが気化し、悪臭発生の原因となってしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、本発明者らが先に開発した好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層をうまく利用し、かつこの層の利用に伴って発生する排水中の硫化水素、メルカプタン、アルキルサルファイドなどのような悪臭・いおう化合物の同時的除去を可能とした排水の脱硫、脱臭方法、その装置とシステムを提供する点にある。
【0006】
本発明の第一は、
▲1▼好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)に一定時間排水を散水し、また排水の散水に伴って排水から気化したいおう化合物を、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性の木炭層または活性炭層により脱臭する工程
▲2▼散水を止めて前記酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)の水きりを行う工程
▲3▼前記酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)の下方から空気を吹き込み、前記酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)を通過した空気を、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性の木炭層または活性炭層(補助的いおう化合物分解層)を通して排気する工程
よりなることを特徴とする排水中のいおう化合物を除去することを特徴とする排水の脱硫、脱臭方法に関する。
【0007】
本発明の第二は、
(A)▲1▼好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層よりなるいおう化合物分解層、
▲2▼その上部に設けられた排水の散水器、
よりなる排水中のいおう化合物分解手段
(B)排水を散水することによりいおう化合物が前記いおう化合物分解層で分解される前に塔上部より排出される空気および下記(C)の空気吹き込み手段に由来する空気中のいおう化合物を捕捉、分解するための、好気性いおう酸化細菌を担持した通気性の木炭層または活性炭層よりなる補助的いおう化合物分解手段
(C)前記(A)のいおう化合物分解層の下方から空気を吹き込む手段
(D)前記(A)の散水器に排水を供給するための手段
よりなることを特徴とする排水の脱硫、脱臭装置に関する。
【0008】
本発明の第三は、請求項2記載の排水の脱硫、脱臭装置を複数個設け、各装置を切換可能に結合したことを特徴とする排水の脱硫、脱臭システムに関する。
【0009】
活性炭は、それに水分が水きりした状態まで担持されたとき(飽和湿潤状態という)が最も酸素を吸着し、担持する水分が少なくなるほど酸素吸着量が減少する。
したがって、できるだけ飽和湿潤状態を保って処理すれば、活性炭層(分解層)は酸素リッチな状態を維持でき、いおう酸化細菌によるいおう化合物を酸化分解するのに極めて有効な環境を形成できる。一方、湿潤活性炭はメタンや炭酸ガスはほとんど吸着しないという特性を持っているので、本発明はこの特性を有効利用するものである。
【0010】
前記好気性いおう酸化細菌は、一般に活性汚泥中に含まれているので、活性汚泥含有水を活性炭層上に散水してやれば、活性炭層に好気性いおう酸化細菌を担持させることができる。したがって、運転開始条件を整えるためには、活性汚泥含有水を活性炭層上方より散水しつつ、下方から空気を吹き込むことにより活性炭層を飽和湿潤状態としかつ充分な酸素吸着状態にすることができる。排水の導入中は、酸素ガスや空気の吹き込みは許されないので、一定時間排水を散布した後は、排水の散布を止めて前記活性炭層(分解層)中の水分が水きりされるのを待って、この層に空気を吹き込むことにより、活性炭層(分解層)を酸素リッチな状態に回復させることが必要である。
【0011】
工場排水や家庭用下水などの排水中のH2S、メルカプタン類あるいはアルキルサルファイド類は、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着活性炭層(分解層)において酸化され、いおうまたはその酸化物(硫酸を含む)となり、活性炭層(分解層)に析出する。このため、析出物がある程度層中に溜ったときには水などを用いた逆洗などの方法により洗浄して析出物を除去する必要がある。
【0012】
本発明の分解層に使用する活性炭については格別の制限はない。細孔の形状は、ボトル型(びん型)のものが好ましく、細孔の入口径は3〜4Åのものが好ましい。また、活性炭の粒度範囲は一般に4〜200メッシュ程度で、平均粒径は、1〜10mm程度のものを使用することができ、その比表面積は800〜1500m2/g(N2BET法)のものが使用される。
【0013】
本発明における前記活性炭表面近傍における酸素濃度は1〜20%(vol/vol)程度に達しているものと推定される。
【0014】
補助的分解層を形成する木炭層や活性炭層は、前記好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性の層であることが必要であるため、活性な炭素としては活性炭よりむしろ木炭層の方が粒度が大きく、通気性が優れているので好ましい。
【0015】
前記木炭層を形成する木炭としては、オガ屑を圧縮成型した後、これを炭化し、破砕、選別して得られたオガ炭の粒状体で、下記の物性を有するものが使用できる。
【0016】
【表1】
Figure 0003886572
そのうちで、とくに下記の物性を有するものが好ましい。
【0017】
【表2】
Figure 0003886572
【0018】
前記木炭層や活性炭層に、好気性いおう酸化細菌を担持させ、酸素吸着湿潤状態とする手段は、前記分解層における手段と同様の手段を採用することができる。
【0019】
この補助的分解層は、操業中意図的に水分を補給しなくても、分解層を経てこの層に流れてくるガス層が高い湿度を保っており、これにより自動的に補助的分解層は湿潤状態に保たれる。
【0020】
前記分解層の厚みは、とくに制限するものではないが、通常50cmから150cm程度の厚みがあることが好ましい。
【0021】
前記分解層に散水する排水の空塔速度は、とくに制限するものではないが5〜15m/時程度とすることができる。
【0022】
前記分解層の下方から空気を吹き込むときの空塔速度もとくに制限をするものではないが、通常0.1〜0.6m/秒程度とすることができる。
【0023】
前記補助的分解層の厚みは、とくに制限するものではないが通常20〜50cm程度とすることができる。
【0024】
本発明においては、1つの脱硫、脱臭装置は、
▲1▼散水工程、
▲2▼水きり工程、
▲3▼エアレーション工程
の順で操業するものであるため、1つの装置では散水を連続的に行うことはできない。したがって、例えばNo.1の脱硫、脱臭装置が散水工程を実施している間は、No.2の脱硫、脱臭装置は、水きり工程とエアレーション工程を順次行っているようにすれば、システム全体としては、連続的な処理が可能である。
【0025】
また、分解層中にいおうやいおう酸化物がたくさん析出した段階では、これらの析出物を逆洗などの手段で除去する必要があるので、このような操作を実施しているときも、排水の処理を連続的におこなおうとするためには必要に応じた脱硫、脱臭装置の数を並設することが好ましい。
【0026】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれにより限定されるものでない。
【0027】
実施例1
図1に示すように2つの脱硫、脱臭塔1、1′を併設し、各脱硫、脱臭塔1、1′内には、活性炭層(予備処理後、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層すなわち分解層2、2′となる層)、散水器3、3′およびオガ炭層(予備処理後、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性のオガ炭層すなわち補助的分解層4、4′となる層)を設け、脱硫、脱臭塔1、1′の下方には空気導入ライン9、9′と洗浄水導入ライン12、12′を設け、底部には浄化水排出ライン11、11′の開口部を設ける。
脱硫、脱臭塔1、1′の間には、排水溜8を設け、ここに排水7をプールしておき、ここからポンプ6、6′により、排水導入ライン5、5′を通して散水器3、3′に排水を供給できるようにする。
【0028】
実施例1の装置の操業に先立ち、活性汚泥水(活性汚泥濃度MLSA3000ppm)を塔の最上部より充分散布し、ライン9、9′よりエアポンプ10、10′の力でエアーブローを約1日間行う。この予備処理により活性炭層とオガ炭層は、それぞれ好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層すなわち分解層2、2′と、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性のオガ炭層すなわち補助的分解層4、4′となる。
【0029】
ついで、ポンプ6を駆動し、ライン5より排水7を排水溜8より汲み上げて散水器3より排水7を前記分解層2の上に散布し、第1の脱硫、脱臭塔1の底部より浄化水排出ライン11より処理水を汲み出して放水する。この作業は10分間行った。
【0030】
第1の脱硫、脱臭塔1における排水7の散水を止めると同時に、第2の脱硫、脱臭塔1′の浄化処理作業を開始する。
【0031】
1方、第1の脱硫、脱臭塔1は、5分間静置し、この間に、分解層1の水きりを行う。5分経過後、エアポンプ10を駆動し、ライン9より空気を吹きこんで5分間エアーブローを行う。
【0032】
第2の脱硫、脱臭塔1′は10分間浄化処理を行った後、第1の脱硫、脱臭塔1と同様に5分間の水きり、5分間のエアーブローを行う。
【0033】
このようにして、第1の脱硫、脱臭塔1と第2の脱硫、脱臭塔1′とを交互に使用して、排水の連続的浄化処理を行う。
【0034】
第1、第2の脱硫、脱臭塔1、1′の分解層2、2′や補助分解層4、4′にいおうやいおう酸化物が多量に析出してきたら、洗浄水導入ライン12、12′よりポンプ13、13′の力で洗浄水を第1、第2の脱硫、脱臭塔1、1′の下方より導入し、分解層2、2′や補助分解層4、4′を逆洗して清浄化することができる。
【0035】
【効果】
本発明により、排水の脱硫を簡単な装置で悪臭の発生を伴うことなく容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いる脱硫、脱臭装置の概略図である。
【符号の説明】
1 脱硫、脱臭塔
1′ 脱硫、脱臭塔
2 好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層、すなわち分解層
2′ 好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層、すなわち分解層
3 散水器
3′ 散水器
4 好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性のオガ炭層、すなわち補助分解層
4′ 好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性のオガ炭層、すなわち補助分解層
5 排水導入ライン
5′ 排水導入ライン
6 ポンプ
6′ ポンプ
7 排水
8 排水溜
9 空気導入ライン
9′ 空気導入ライン
10 エアポンプ
10′ エアポンプ
11 浄化水排出ライン
11′ 浄化水排出ライン
12 洗浄水導入ライン
12′ 洗浄水導入ライン
13 ポンプ
13′ ポンプ

Claims (3)

  1. ▲1▼好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)に一定時間排水を散水し、また排水の散水に伴って排水から気化したいおう化合物を、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性の木炭層または活性炭層により脱臭する工程
    ▲2▼散水を止めて前記酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)の水きりを行う工程
    ▲3▼前記酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)の下方から空気を吹き込み、前記酸素吸着湿潤活性炭層(いおう化合物分解層)を通過した空気を、好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤状でかつ通気性の木炭層または活性炭層(補助的いおう化合物分解層)を通して排気する工程
    よりなることを特徴とする排水中のいおう化合物を除去することを特徴とする排水の脱硫、脱臭方法。
  2. (A)▲1▼好気性いおう酸化細菌を担持した酸素吸着湿潤活性炭層よりなるいおう化合物分解層、
    ▲2▼その上部に設けられた排水の散水器、
    よりなる排水中のいおう化合物分解手段
    (B)排水を散水することによりいおう化合物が前記いおう化合物分解層で分解される前に塔上部より排出される空気および下記(C)の空気吹き込み手段に由来する空気中のいおう化合物を捕捉、分解するための、好気性いおう酸化細菌を担持した通気性の木炭層または活性炭層よりなる補助的いおう化合物分解手段
    (C)前記(A)のいおう化合物分解層の下方から空気を吹き込む手段
    (D)前記(A)の散水器に排水を供給するための手段
    よりなることを特徴とする排水の脱硫、脱臭装置。
  3. 請求項2記載の排水の脱硫、脱臭装置を複数個設け、各装置を切換可能に結合したことを特徴とする排水の脱硫、脱臭システム。
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