JP3885565B2 - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状混合物の選択分離、特に低塩濃度水溶液中の電解質除去に有用な複合半透膜およびその製造方法、および多段式逆浸透膜処理による高純度水の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
微多孔性支持膜上に半透膜層を被覆してなる複合半透膜は、一般に良く知られている。また、半透膜層を架橋芳香族ポリアミドから形成した場合には、ベンゼン環を含むことによって剛直性に富み、芳香族多官能アミンと芳香族多官能酸ハライドとの界面重縮合により容易に製膜できるという利点があり、さらに高塩排除率、高透過流束であることが知られている(例えば、特開平1−180208号公報、特開平2−115027号公報、特開平2−229538号公報、特開平4−90835号公報、特開平4−104825号公報、特開平4−161234号公報など)。
【0003】
しかしながら、上記の架橋芳香族ポリアミドからなる半透膜層を微多孔性支持膜上に被覆してなる複合半透膜の性能は、水溶液中の電解質濃度に依存し、電解質濃度が数ppm以下という低濃度領域においては電解質除去性能が低下する欠点がある。特に、陽イオンの除去性能が大きく低下することが知られている。このため、例えば、通常の超純水製造プロセスでは、逆浸透膜装置の後段に再生型イオン交換樹脂塔が設置されているのが一般的である。
【0004】
近年、再生型イオン交換樹脂塔からのTOC溶出が問題視され始め、また、再生工程の省略という面からも、かかる再生型イオン交換樹脂塔を用いなくてすむプロセスの開発が望まれている。特許第2505631号公報に記載の複合膜は、4級アンモニウム基が共有結合によって膜に導入されていることから、長時間運転によっても4級アンモニウム基がはずれることなく、高い低濃度陽イオン除去性能を維持することができ、また、造水量も低下せず、逆に4級アンモニウム基の導入により高造水量化を可能にする複合膜であるが、実ラインなどにおいては、殺菌剤や洗浄剤などに接触すると膜のカチオン性が低下し、透過液の水質が低下する欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の複合膜には、高効率で除去できるイオン種の選択性や耐薬品性等の問題があり、これらを同時に満足する複合膜は得られていないのが現状であった。
【0006】
そこで、本発明は、半透膜層を微多孔性支持膜上に被覆してなる複合半透膜において、洗浄剤や殺菌剤などに対する耐薬品性を有し、高塩排除率、高透過流束を達成できる複合半透膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。すなわち、本発明は、
(1)微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドからなる半透膜層が形成された複合半透膜であって、前記半透膜層の表面は、4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基から選ばれるカチオン性基を含む化合物が、少なくとも2個の共有結合によって結合され、前記半透膜層の表面が、pH9において+10mV以上のゼータ電位を有するとともに、前記複合半透膜の100ppmに調整した温度25℃の亜硫酸水素ナトリウム溶液の接触による劣化速度定数が0.01以下であることを特徴とする複合半透膜。
(2)架橋ポリアミドが架橋芳香族ポリアミドであることを特徴とする(1)に記載の複合半透膜。
(3)カチオン性基が4級アンモニウム基であることを特徴とする(1)に記載の複合半透膜。
(4)微多孔性支持膜上に、多官能アミン化合物と多官能ハロゲン化物との反応物からなる半透膜層を形成し、該半透膜層にさらに多官能アミン水溶液を接触させて、該半透膜層に残存する酸ハライドと重縮合させた後、少なくとも2つのエポキシ基、アジリジン基、エピスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、カルボン酸基、ハロゲン化カルボニル基、ヒドロキシル基から選ばれる反応性官能基、および4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基から選ばれるカチオン性基を含む化合物を半透膜層と反応させ、共有結合を形成させることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
(5)反応性官能基がエポキシ基であることを特徴とする(4)に記載の複合半透膜の製造方法。
(6)カチオン性基が4級アンモニウム基であることを特徴とする(4)または(5)に記載の複合半透膜の製造方法。
(7)X線光電子分光法(ESCA)の測定による、カチオン性基を含む化合物と反応する前の半透膜層の表面のアミノ基濃度が、0.002以上であることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載の複合半透膜を有していることを特徴とする複合半透膜エレメント。
(9)(8)に記載の複合半透膜エレメントを設けたことを特徴とする流体分離装置。
(10)複合半透膜エレメントを多段に配する流体分離装置において、少なくとも最終段に(8)に記載の複合半透膜エレメントを配置したことを特徴とする流体分離装置。
(11)(8)に記載の複合半透膜エレメントを使用し、被処理液のpHを8以上12以下の範囲に調整してから該複合半透膜エレメントに供給することを特徴とする液体の処理方法。
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の複合半透膜は、実質的にイオン等の分離性能を有する半透膜層が、実質的に分離性能を有さない微多孔性支持膜上に設けられたものであって、該半透膜層の表面が、pH9において+10mV以上のゼータ電位を有することが必要である。前記半透膜層の表面は、4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基から選ばれる少なくとも一種のカチオン性基を含む化合物が、少なくとも2個の共有結合によって結合されていることが必要であり、好ましくは架橋ポリアミドまたは架橋ポリアミドを主成分としてなる材料からなることである。
【0009】
架橋ポリアミドとは、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合により形成され、少なくとも1つのアミンまたは酸ハロゲン化物成分が3官能以上の化合物を含んでいるものである。
【0010】
ここで、多官能アミンとは、一分子中に少なくとも2個のアミノ基を有するアミンをいい、たとえば、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼンに結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5ートリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸などの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、1,3−ビスピペリジルプロパン、4−アミノメチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。中でも、膜の選択分離性や透過性、耐熱性を考慮すると芳香族多官能アミンであることが好ましく、このような多官能芳香族アミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好適に用いられるが、入手の容易性や取り扱いのしやすさから、m−フェニレンジアミン(以下、m−PDAと記す)を用いることがより好ましい。これらの多官能アミンは、単独で用いたり、混合して用いたりしてもよい。
【0011】
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいい、たとえば、3官能酸ハロゲン化物ではトリメシン酸クロライド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロライド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロライドなどを挙げることができ、2官能酸ハロゲン化物では、ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、ビフェニレンカルボン酸ジクロライド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸クロライドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロライド、セバコイルクロライドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロライドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物を挙げることができる。多官能アミンとの反応性を考慮すると、多官能酸ハロゲン化物は多官能酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、芳香族多官能酸塩化物であることが好ましい。中でも、入手の容易性や取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロライドを用いるとより好ましい。これらの多官能酸ハロゲン化物は、単独で用いたり、混合して用いたりしてもよい。
【0012】
半透膜層の表面は、4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基から選ばれるカチオン性基を含む化合物が、少なくとも2個の共有結合によって結合されていることが必要である。前記カチオン性基を導入する方法としては特に限定されないが、たとえば、前記カチオン性基を有する多官能アミンを多官能酸ハロゲン化物と反応させて架橋ポリアミドを形成させる方法や、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応によって形成された架橋ポリアミド中に残存するアミン末端を、ハロゲン化アルキルで4級化する方法や、カチオン性基を有し、かつ、架橋ポリアミドに対して反応性の官能基を有する化合物を架橋ポリアミドと反応させる方法等を用いることができる。
【0013】
中でも、膜性能を大きく低下させることなく簡便に4級アンモニウム基を導入する方法として、4級アンモニウム基を有し、かつ、架橋ポリアミドに対して少なくとも2個の反応性の官能基を有する化合物を架橋ポリアミドと反応させる方法を用いることが推奨される。かかる反応性の官能基としては、エポキシ基、アジリジン基、エピスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、カルボン酸基、ハロゲン化カルボニル基、ヒドロキシル基をあげることができ、これらを同種あるいは異種組み合わせて用いることができる。中でも、エポキシ基は入手が容易であるなどの観点からより好ましい。
【0014】
架橋ポリアミドは多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合によりその骨格が形成されることから、必然的に未反応アミン末端や未反応酸末端が存在する。エポキシ基やアジリジン基、エピスルフィド基は、架橋ポリアミドが有する末端アミノ基などにより求核攻撃を受けて開環し、架橋ポリアミドに結合する。ハロゲン化アルキル基は、架橋ポリアミドが有する末端1級アミノ基との反応により2級アミンを与え、カルボン酸基は架橋ポリアミドが有する末端アミノ基と脱水縮合してアミド結合を形成し、ハロゲン化カルボニル基は架橋ポリアミドが有する末端アミノ基をアシル化してアミド結合を形成し、アミノ基やヒドロキシル基は架橋ポリアミドが有する末端カルボン酸基と脱水縮合してアミド結合あるいはエステル結合を形成する。したがって、これらの官能基を有し、かつ、カチオン性基を有する化合物を用いることにより、共有結合を介してカチオン性基を複合半透膜に導入することができる。
【0015】
ここでいうカチオン性基とは、4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基が挙げられる。この中で、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさから4級アンモニウム基がより好ましい。
【0016】
ここでいう4級アンモニウム基とは、下記化学式1に示す基に含まれている窒素原子のことを言う。
【0017】
【化1】
【0018】
(ただし、R1、R2、R3はそれぞれ独立に置換もしくは非置換の脂肪族基または芳香族基を表し、Xはハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオンなどの陰イオンを表す。)。
【0019】
なお、以後、上記4級アンモニウム基を、N+ で表すことにする。
【0020】
4級アンモニウム基を有し、かつ、2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、下記化学式2で表されるエポキシ化合物がある。
【0021】
【化2】
【0022】
(ただし、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子、または、置換もしくは非置換の脂肪族基または芳香族基を表し、n、mは0以上の整数を表す。)。
【0023】
架橋ポリアミドに対する反応性、得られた膜の性能、入手の容易さを考慮すると、好ましいエポキシ化合物として、ヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロライド、エチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロライド、オクタメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロライド等をあげることができる。
【0024】
4級アンモニウム基を有し、かつ、2個以上のアジリジン基を有する化合物としては、下記化学式3で表されるアジリジン化合物がある。
【0025】
【化3】
【0026】
(ただし、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、または、置換もしくは非置換の脂肪族基または芳香族基を表し、n、mは0以上の整数を表す。)。
【0027】
4級アンモニウム基を有し、かつ、2個以上のエピスルフィド基を有する化合物としては、下記化学式4で表されるエピスルフィド化合物がある。
【0028】
【化4】
【0029】
(ただし、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子、または、置換もしくは非置換の脂肪族基または芳香族基を表し、n、mは0以上の整数を表す。)。
【0030】
4級アンモニウム基を有し、かつ、架橋ポリアミドに対して少なくとも2個の反応性の官能基を有する化合物は、その分子量が100〜500の範囲であるのが好ましい。分子量が500を越えると透過水量が低くなる傾向にあるからである。
【0031】
架橋ポリアミドからなる半透膜層は、アミン末端やカルボン酸末端を有するが、アミン末端は低pH領域でイオン的に解離して膜にカチオン荷電性を与え、カルボン酸末端は高pH領域でイオン的に解離して膜にアニオン荷電性を与える。そのため、pHによって半透膜層の荷電性が変化し、高pH領域ではアニオン荷電性が比較的高くなり、膜の反対荷電の陽イオンの排除率が低下する。例えば、4級アンモニウム基は、強塩基性官能基であるので、すべてのpH領域でイオン的に解離しており、高pH領域で比較的アニオン荷電性の高い架橋ポリアミド膜にカチオン荷電性を付与する効果を有する。したがって、低濃度領域および高pH領域における電解質除去性能低下の原因となっている陽イオン除去性能は、半透膜層のカチオン荷電性の増加にともない向上する。
【0032】
半透膜層の表面のカチオン荷電性を増加させ得る方法としては、カチオン性化合物を静電的な力で半透膜層の表面に付着させる方法や、カチオン性化合物と半透膜との反応性を向上させ膜との結合量を増加させる方法、カチオン性基が多く導入されている重合体を用いて半透膜と反応させる方法、半透膜の表面の未反応酸末端をエステル化、アミド化などをすることにより半透膜のアニオン荷電性を減少させ、相対的にカチオン荷電性を増加させるという方法がある。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて用いることにより、半透膜の表面のカチオン荷電性を増加させることができる。
【0033】
本発明において微多孔性支持膜は、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する半透膜層に強度を与えるために用いられる。孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは片面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもっていって、支持膜表面での微細孔の大きさが100nm以下であるような構造の支持膜が好ましい。
【0034】
微多孔性支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されないが、たとえばポリエステルまたは芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種を主成分とする布帛により強化されたポリスルホンや酢酸セルロースやポリ塩化ビニル、あるいはそれらを混合したものが好ましく使用される。マトリックスに使用される素材としては、化学的、機械的、熱的に安定性の高いポリスルホンを使用するのが特に好ましい。
【0035】
具体的には、下記化学式5に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
ポリスルホンの製造方法としては、たとえば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した微多孔性支持膜を得ることができる。
【0038】
次に、本発明の複合半透膜の製造方法について説明する。
【0039】
複合半透膜を構成する半透膜層は、例えば、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、多官能酸ハロゲン化物を含有する水と非混和性の有機溶媒溶液とを用い、微多孔性支持膜の表面で界面重縮合を行うことによりその骨格を形成できる。
【0040】
ここで、多官能アミン水溶液における多官能アミンの濃度は0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜5.0重量%の範囲内である。濃度が0.1重量%を下回ると反応の進行が遅くなる傾向があり、10重量%を越えると超薄膜層が厚くなり透水性が不十分となりやすい。多官能アミン水溶液には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や有機溶媒、アルカリ性化合物、酸化防止剤などが含まれていてもよい。界面活性剤は、多孔性支持膜表面の濡れ性を向上させ、アミン水溶液と非極性溶媒との間の界面張力を減少させる効果があり、有機溶媒は界面重縮合反応の触媒として働くことがあり、添加することにより界面重宿合反応を効率よく行える場合がある。
【0041】
界面重縮合を多孔性支持膜上で行うために、まず、上述の多官能アミン水溶液を多孔性支持膜に接触させるとよい。接触は、多孔性支持膜面上に均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、たとえば、多官能アミン水溶液を多孔性支持膜にコーティングする方法や多孔性支持膜を多官能アミン水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。多孔性支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、1〜10分間の範囲内であると好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
【0042】
多官能アミン水溶液を多孔性支持膜に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りする。液滴が残ると、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能の低下を招きやすい。液切りの方法としては、たとえば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多官能アミン水溶液接触後の多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の水溶液を自然流下させる方法、さらに、その後でエアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の一部を除去することもできる。
【0043】
次いで、こうして得られた多官能アミン水溶液接触後の支持膜に、多官能酸ハライドを含む有機溶媒溶液を接触させ、界面重縮合により架橋ポリアミド超薄膜層の骨格を形成させる。
【0044】
有機溶媒溶液中の多官能酸ハライドの濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であると好ましく、0.02〜2.0重量%の範囲内であるとさらに好ましい。0.01重量%を下回ると反応の進行が遅くなる傾向があり、10重量%を越えると副反応が起こりやすい。さらに、この有機溶媒溶液にN,N−ジメチルホルムアミドのようなアシル化触媒を含有させると、界面重縮合が促進され、さらに好ましい。
【0045】
上記の有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ酸ハロゲン化物を溶解し微多孔性支持膜を破壊しないことが望ましく、アミノ化合物および酸ハロゲン化物に対して不活性であるものであればよい。好ましい例としては、たとえば、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカンなどの炭化水素化合物が挙げられる。
【0046】
多官能酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液のアミノ化合物水溶液相への接触の方法は、多官能アミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。
【0047】
上述したように、酸ハロゲン化物の有機溶媒溶液を接触させて界面重縮合を行い、多孔性支持膜上に架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成したあとは、余剰の溶媒を液切りするとよい。液切りの方法は、たとえば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1〜5分間の間にあることが好ましく、1〜3分間であるとより好ましい。
【0048】
上述の方法により得られた複合半透膜は、さらに、多官能アミン水溶液と接触させて、残存する酸ハライドと重縮合させ酸末端を減少させることにより、複合半透膜の排除性能をより一層向上させることができる。
【0049】
複合半透膜の多官能アミン水溶液相への接触の方法は、上述のアミン水溶液の微多孔性支持膜への被覆方法と同様に行えばよい。
【0050】
上述の方法により得られた複合半透膜は、50〜150℃の範囲内、好ましくは70〜130℃の範囲内で1〜10分間、より好ましくは2〜8分間熱水処理する工程などを付加することで、複合半透膜の排除性能や透水性をより一層向上させることができる。
【0051】
このようにして製造された架橋ポリアミドの半透膜層に、カチオン性基を有し、少なくとも2個の反応性官能基を有する化合物(以下カチオン化反応性化合物と称する)を接触させる。かかるカチオン化反応性化合物としては、エポキシ基、アジリジン基、エピスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、カルボン酸基、ハロゲン化カルボニル基、ヒドロキシル基からなる群から選ばれる官能基を2個以上有し、かつ、4級アンモニウム基などのカチオン性基を含む化合物をあげることができる。これらの化合物は、単独で用いることもできるが、2種類以上を混合して用いてもよい。架橋ポリアミドに対する反応性や得られた膜の性能や入手の容易さを考慮すると、かかるカチオン化反応性化合物としては4級アンモニウム基を含む化合物が好ましい。特に好ましい化合物としては、ヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロライドがあげられる。
【0052】
カチオン化反応性化合物を接触させる方法としては、前記のカチオン化反応性化合物を複合半透膜を侵さない溶媒に溶解し、この溶液を複合半透膜に塗布する方法や、この溶液に複合半透膜を浸漬する方法を用いることができる。複合半透膜を侵さない溶媒とは、複合半透膜の半透膜層骨格や微多孔性支持膜層を溶解あるいは大きく膨潤させず、膜性能を大きく損なうことのない溶媒であり、好ましい例として、水やアルコールや炭化水素などをあげることができる。中でも、カチオン化反応性化合物の溶解性や取り扱いの容易さや経済性を考慮すると、水を用いることが好ましい。
【0053】
半透膜の荷電量は、接触させるカチオン化反応性化合物の濃度によりコントロールできる。すなわち、濃度が低い場合には、膜への4級アンモニウム基の導入量が少なく荷電量も少なくなり、高い場合には、膜へのカチオン性基の導入量が多く荷電量も多くなる。カチオン化反応性化合物の濃度は、溶媒に対し0.1〜20重量%の範囲内が好ましく、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲内である。
【0054】
荷電量を測定する手段としてはゼータ電位があげられる。ゼータ電位とは超薄膜層表面の正味の固定電荷の尺度であり、本発明の薄膜層表面のゼータ電位は、電気移動度から、下記数式1に示すヘルムホルツ・スモルコフスキー(Helmholtz-Smoluchowski)の式によって求めることができる。
【0055】
【数1】
【0056】
(式中、Uは電気移動度、εは溶液の誘電率、ηは溶液の粘度である。)。
ここで、溶液の誘電率、粘度は、測定温度での文献値の値を使用した。
【0057】
ゼータ電位の測定原理について説明する。
材料に接した(水)溶液には、材料表面の電荷の影響で、表面の近傍に流動できない静止層が存在する。ゼータ電位は、材料の静止層と流動層の境界面(すべり面)での溶液に対する電位である。
【0058】
ここで、石英ガラスセル中の水溶液を考えると、石英表面は通常マイナスに荷電されているため、セル表面付近にプラス荷電のイオンや粒子が集まる。一方、セル中心部にはマイナス荷電のイオンや粒子が多くなり、セル内でイオン分布が生じている。この状態で電場をかけると、セル内ではイオン分布を反映し、セル内の位置で異なる泳動速度でイオンが動く(電気浸透流という)。泳動速度はセル表面の電荷を反映したものであるので、この泳動速度分布を求めることにより、セル表面の電荷(表面電位)を評価することができる。
【0059】
ゼータ電位の測定は、大きさ20mm×30mmの膜試料を用い、電気泳動させるための標準粒子は表面をヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたポリスチレン粒子(粒径520nm)を10mmol/lのNaCl水溶液に分散させたものを用いた。測定装置は大塚電子製電気泳動光散乱光度計ELS−800を用い、光源はHe−Neレーザーを使用した。
【0060】
本発明の複合半透膜は、半透膜層の表面が、pH9において+10mV以上のゼータ電位を有する必要がある。ゼータ電位は、好ましくは+11mV以上である。
【0061】
かかるゼータ電位を与えるには、カチオン化反応性化合物と反応するアミノ基が、膜表面上に均一かつ高濃度で存在することが好ましく、例えば、上述した製造方法により、そのような複合半透膜を得ることができる。
【0062】
カチオン化反応性化合物と反応する前の半透膜層の表面のアミノ基濃度は、X線光電子分光法(ESCA)を用いて分析でき、その値が0.002以上であることが好ましい。アミノ基濃度が0.002未満であると、カチオン化反応性化合物の反応量が少なくなり、膜のカチオン性が低下傾向となる。
【0063】
ここで、アミノ基濃度とは、半透膜層の表面近傍の全炭素量(モル数)に対するアミノ基量(モル数)の割合のことであり、次の式により算出される値をいう。
アミノ基濃度=アミノ基量(モル)/全炭素量(モル)
アミノ基濃度についてはラベル化試薬による気相化学修飾法により求めることができ、ラベル化試薬としてはペンタフルオロベンズアルデヒドなどが用いられる。
【0064】
本発明の複合半透膜を得るに当たり、カチオン化反応性化合物と半透膜との反応は、50〜150℃で行うと反応速度が速くなり、製造に要する時間を1〜30分に短縮することができ、好ましい。また、加熱処理工程の前に過剰のカチオン化反応性化合物を半透膜に接触させる際、カチオン化反応性化合物の溶液を50〜100℃に加熱し、これに膜を浸漬する事によっても、製造に要する時間を1〜30分に短縮することができる。
【0065】
本発明の複合半透膜は、100ppmに調整した温度25℃の亜硫酸水素ナトリウム溶液の接触による劣化速度定数が0.01以下であることが必要である。
【0066】
ここで、劣化速度定数は以下のようにして求める。複合半透膜を、100ppmに調整した温度25℃の亜硫酸水素ナトリウム水溶液に40時間浸漬した後、pHを9に調整した1ppm塩化ナトリウム水溶液を、操作圧力が10kg/cm2、温度25℃の条件下で前記複合半透膜に供給した場合において、その透過水のナトリウムイオン透過率と前記亜硫酸水素ナトリウム溶液に浸漬する前の複合半透膜に前記塩化ナトリウム水溶液を透過させたときの透過水のナトリウムイオン透過率を求め、下記数式2より劣化速度定数を算出する。
【0067】
【数2】
【0068】
本発明の複合半透膜は、通常、所望の容器に収納して複合半透膜エレメントとして使用する。このようなエレメントは、低塩濃度水溶液の脱塩に好適に用いることができ、特に複合半透膜エレメントを多段に配した流体分離装置において、後段への供給される被処理水が、炭酸を含み、ナトリウムイオン濃度が1ppm以下である場合の後段の半透膜エレメントに好適に用いることができる。
【0069】
炭酸を含んだ原水を被処理水として、流体分離装置を用いて処理する場合、効率よく炭酸を除去するためには少なくとも最終段への逆浸透膜への被処理水のpHを8〜12、好ましくは8〜10、より好ましくは8.5〜9.5に調整し、運転することが好ましい。
【0070】
従来の複合半透膜を用いた場合は、供給水のpHが8以上のとき、炭酸は効率よく取り除くことはできても透過水中の陽イオン濃度が増大し、透過水中の電解質濃度が増大するため実用的ではない。また、pH12以上ではアミド結合の加水分解が起こり膜の性能劣化が起こる。そのため、かかる従来の複合半透膜を用いた場合、透過水中の全電解質濃度を最小にするためにはpH8未満での運転が必要となるが、pH8未満では効率よく炭酸を除去することができない。 本発明の複合半透膜を用いた場合、流体分離装置において、少なくとも最終段の逆浸透膜への被処理水のpHが8〜12の範囲において、低濃度陽イオンが良好に除去される。その結果、炭酸が効率よく除去され、透過水中の全電解質濃度を低減することができる他、膜の劣化防止にも有効である。
【0071】
複合半透膜を用いる経済性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は、30kg/cm2以下であることが好ましい。
【0072】
次に、本発明の複合半透膜エレメントを用いた流体分離装置による造水方法について説明する。
【0073】
本発明による流体分離装置による造水は、炭酸を含む原水にアルカリを添加し、次いでこのアルカリ添加水を前段の複合半透膜エレメントで処理して一次透過水を得、次いでこの一次透過水を後段の逆浸透膜エレメントで処理して高純度水である二次透過水を得ることにより行う。なお、アルカリの添加は一次透過水に添加してもよい。
【0074】
ここで、本発明の複合半透膜エレメントは、後段の逆浸透膜装置に用いられることが好ましい。本願発明のような低濃度電解質除去性能に優れた逆浸透膜エレメントは、前段あるいは後段の逆浸透膜装置のいずれに用いても効果は得られるが、前段では比較的電解質濃度が高い原水を処理するため、従来膜と比較して効果がさほど顕著に現れないことがあり、後段の逆浸透膜装置に用いた場合に効果が大きい。
【0075】
また、硬度成分を有する水を原水とする場合は、逆浸透膜面でのスケール析出防止のために、脱炭酸装置を設けたり、スケール防止剤や酸を添加したりする工程を加えてもよい。さらに、溶存ガスを脱気したり、殺菌剤を注入したり、殺菌剤を除去したりする工程など、公知の多段式逆浸透膜処理方法で用いられている他の水処理工程が含まれていてもよい。また、本多段式逆浸透膜処理方法により、効率よく炭酸を除去し、かつ、得られた高純度水中の全電解質濃度を最小にするためには、添加するアルカリの量を調整し、一次透過水のpHが8〜12、好ましくは8〜10、より好ましくは8.5〜9.5になるように調整するのが好ましい。
【0076】
【実施例】
実施例および比較例を以下に記載する。使用した複合半透膜の前準備方法および評価方法をまず記載する。
【0077】
(参考例1:複合半透膜の前準備方法)
ポリエステル繊維からなるタフタ(縦糸、横糸とも166デシテックスのマルチフィラメント糸を用いた。織密度は縦90本/インチ、横67本/インチ、厚さ160μ)上にポリスルホンの15.7重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200μの厚みで室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって繊維補強ポリスルホン支持膜(以下FR−PS支持膜と略す)を作製した。このようにして得られたFR−PS支持膜(厚さ210〜215μm)を、m−フェニレンジアミン1.5重量%を含むアミン水溶液中に2分間浸漬し、該支持膜を垂直方向にゆっくりと引き上げ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた後、トリメシン酸クロリド0.06重量%を含むn−デカン溶液を表面が完全に濡れるように塗布して1分間静置した。つぎに、膜を垂直にして1分間把持し、余分な溶液を液切りして除去した後、エチレンジアミン3%を含むアミン水溶液を膜上にFF法で塗布し、エアーノズルで窒素を吹き付け膜表面から余分な水分を取り除き、その後、90℃で2分間熱水洗浄した。得られた複合膜を、プレ複合半透膜と呼ぶことにする。X線光電子分光法(ESCA)で測定したところ、プレ複合半透膜の半透膜層の表面のアミノ基濃度は0.170であった。プレ複合半透膜は実施例および比較例に供した。
【0078】
(ナトリウムイオン排除率)
複合半透膜に、温度25℃、操作圧力10kg/cm2で、pHを9に調整した1ppm塩化ナトリウム水溶液を供給し、イオンクロマトグラフから含まれるナトリウムイオン濃度を測定し、ナトリウムイオン排除率を求めた。ナトリウム排除率は、次の式により求めた。
ナトリウムイオン排除率={(被処理液のナトリウムイオン濃度−透過液のナトリウムイオン濃度)/被処理液のナトリウムイオン濃度}×100
(膜透過流束)
被処理液としてナトリウムイオン排除率に用いた液を供給し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)から膜透過流束(m3/m2・日)を求めた。
【0079】
(実施例1)
参考例1により得られたプレ複合半透膜の半透膜層に、ヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロリドの5重量%水溶液を塗布して2分間静置した後、膜を垂直にして余分な溶液を液切りして除去し、120℃で2分間乾燥機中で熱処理し、水洗した。その後、10%イソプロピルアルコール水溶液に10分間浸漬して親水化処理を行い、複合半透膜を得た。複合半透膜のナトリウムイオン排除率は98.3%、膜透過流束は0.9m3/m2・日、劣化速度定数は0.0046、膜表面のゼータ電位は12mVであった。
【0080】
(実施例2)
実施例1で用いたヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロリドをオクタメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロライドに変更した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。このときのナトリウムイオン排除率は98.9%、膜透過流束は1.0m3/m2・日、劣化速度定数は0.0072、膜表面のゼータ電位は11mVであった。
【0081】
(比較例1)
実施例1で用いたヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロリドをグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドに変更した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。このときのナトリウムイオン排除率は98.9%、膜透過流束は1.2m3/m2・日、劣化速度定数は0.0345、膜表面のゼータ電位は8mVであり、劣化速度定数が大きかった。
【0082】
(実施例3)
実施例1で用いたヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロリドの水溶液の濃度を2、10重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。このときの評価結果を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例1での熱処理の温度を80、100℃に変更した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。このときの評価結果を表2に示す。
【0084】
(実施例5)
実施例1での熱処理時間を1、5分に変更した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。このときの評価結果を表3に示す。
【0085】
(比較例2)
ヘキサメチレンビス(ジメチルアンモニウム)ジクロリドの水溶液で処理する前の複合半透膜について、同様に評価した。このときのナトリウムイオン排除率は70.3%、膜透過流束は1.4m3/m2・日、劣化速度定数は0.0002、膜表面のゼータ電位は−1.2mVであり、ナトリウムイオン排除率が低かった。
【0086】
表1はヘキサメチレンビス(グリシジルジメチルアンモニウム)ジクロリドの水溶液の濃度をパラメータにしてまとめた表、表2は熱処理温度をパラメータにしてまとめた表、表3は熱処理時間をパラメータにしてまとめた表である。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、低濃度領域においても陽イオン排除率が高く、かつ洗浄剤や殺菌剤などに対する耐薬品性に優れた複合半透膜およびその製造方法を提供することができ、特に、アルカリ性条件下においても低濃度陽イオン排除率の高い複合半透膜およびその製造方法を提供することができる。
Claims (11)
- 微多孔性支持膜上に架橋ポリアミドからなる半透膜層が形成された複合半透膜であって、前記半透膜層の表面は、4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基から選ばれるカチオン性基を含む化合物が、少なくとも2個の共有結合によって結合され、前記半透膜層の表面が、pH9において+10mV以上のゼータ電位を有するとともに、前記複合半透膜の100ppmに調整した温度25℃の亜硫酸水素ナトリウム溶液の接触による劣化速度定数が0.01以下であることを特徴とする複合半透膜。
- 架橋ポリアミドが架橋芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の複合半透膜。
- カチオン性基が4級アンモニウム基であることを特徴とする請求項1に記載の複合半透膜。
- 微多孔性支持膜上に、多官能アミン化合物と多官能ハロゲン化物との反応物からなる半透膜層を形成し、該半透膜層にさらに多官能アミン水溶液を接触させて、該半透膜層に残存する酸ハライドと重縮合させた後、少なくとも2つのエポキシ基、アジリジン基、エピスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、カルボン酸基、ハロゲン化カルボニル基、ヒドロキシル基から選ばれる反応性官能基、および4級アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、オキソニウム基、アルソニウム基、セレノニウム基から選ばれるカチオン性基を含む化合物を半透膜層と反応させ、共有結合を形成させることを特徴とする複合半透膜の製造方法。
- 反応性官能基がエポキシ基であることを特徴とする請求項4に記載の複合半透膜の製造方法。
- カチオン性基が4級アンモニウム基であることを特徴とする請求項4または5に記載の複合半透膜の製造方法。
- X線光電子分光法(ESCA)の測定による、カチオン性基を含む化合物と反応する前の半透膜層の表面のアミノ基濃度が、0.002以上であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の複合半透膜を有していることを特徴とする複合半透膜エレメント。
- 請求項8に記載の複合半透膜エレメントを設けたことを特徴とする流体分離装置。
- 複合半透膜エレメントを多段に配する流体分離装置において、少なくとも最終段に請求項8に記載の複合半透膜エレメントを配置したことを特徴とする流体分離装置。
- 請求項8に記載の複合半透膜エレメントを使用し、被処理液のpHを8以上12以下の範囲に調整してから該複合半透膜エレメントに供給することを特徴とする液体の処理方法。
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